無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

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拳王技界:オリジン③

俺が悟空さんに師事して一年半と数週間経った頃だ。

ある程度力もついてふと幼馴染のことを思い出したのだ。

今の俺は何も出来ないよりかは強くなった。

悟空さんの戦い方をコピーして自分なりに落とし込むことで戦い方を身につけた。

ならここから戻ることも出来るんじゃないかと。

何より一度家に戻りたかった。

スーパーに行って調味料とかも欲しいし。

師匠と過ごすのが嫌なわけじゃない。むしろ好きなくらいだ。なんなら一番大好きだ。

ただ俺と両親を繋ぐ思い出である家がどうなってるのか、あとついでに俺の扱いがどうなってるか気になった。

そういや出久も気になるな。あいつ虐められてヒーローになる夢を諦めてなければいいけど。

 

だから悟空さんに話してみた。

 

「いいんじゃねえか?」

「……へ?」

「はは、なんだその顔。おもしれえ顔してっぞ?」

「い、いや止められるかなと思いまして」

「いつまでもここに居ても仕方ねえからなぁ。それに休むにはちょうどいいだろ? コンを詰めすぎても意味がねぇよ。おめえが問題ねえなら好きにすりゃいいさ。なんならオラが連れてってやろうか?」

「いえ…もし行方不明扱いになってたら悟空さんが大変な目に逢うので大丈夫です。それに修行になるので!」

「そっか。ま、今のおめえなら大丈夫さ。オラはここで待ってっから戻ってきたくなったら戻ってこい」

「はい。終わったらすぐ戻ってくるので1日も掛からないと思います!」

「お、おう。そうしてえなら任せっけどよ、別にゆっくりしてもいいからな」

「はい、では!」

「元気なやつだなぁ。ま、いいか。その方がいいもんな!」

 

1分も無駄にしたくなかった俺は水と所持金と必要そうなものだけ持って、重りをつけたままパオズ山を下山していった。

俺はまだ”気“がないから師匠のように飛べないため、走って入り口に行くしかない。

修行になるからこれはこれでいいだろう。

こうして俺は、一年半ぶりにパオズ山というか山から出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一年程度で出たら何かが変わってる、訳はなく。

去年の記憶を掘り起こし、そのせいで時折襲ってきたサイヤ人のことを思い出して不快な思いをしながら当初の目的地を目指す。

自分の家がある場所。

そこに向かうまでにボロボロな服装が原因なのか、やけに視線を感じたりしたが見て見ぬふりをされるだけだ。

俺としても警察を呼ばれると困るし助かるからいいが、長居しないために少し早めに駆けた。

ゆっくりしてヒーローにバレたらどう言い訳したらいいか分からない。

保護されても親がいないし孤児として保護されて拘束されるかもしれない。そうしたら抜け出すが…。

どちらにせよだいたい小学生くらいの子がボロボロな格好でいるんだから目を向けられるのは仕方がないとは思っている。

俺のスマホが狂ってなければ今日は休日のはず。

だいたい昼頃か。

自分の家に辿り着いた俺は特に取り壊しもされてないことに安心する。

よかった、俺が暮らしてきた全てがまだ残ってる。

ほっと安堵の息を吐くと、何かが落ちる音が近くで聞こえた。

誰か落としてしまったのだろうかと目を向ければ。

 

「か、界くん……?」

 

しまった。

人に見つかることなく去るつもりが見つかってしまった。

直ぐに戻るつもりなのに。

一体誰なのか、とじっと見ると、だんだんと記憶が蘇ってきた。

俺の記憶とは少々見た目に変化はあるが、間違いなく出久の母親だった。

 

「い……」

「い?」

「い、い、いいいいいいずくぅううううううう!!」

「あ、ちょっ……!!」

 

まずい、と思った時には時すでに遅し。

急いで出久の名前を呼びながら家に向かったであろう引子さんを見送るしかなく、手だけが虚しく伸びていた。

仕方がない。事情を説明する必要が出来たため、俺は引子さんが落とした荷物を拾ってため息を吐いた。

これは時間が掛かるな、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がいぐぅううん!」

「だれそれ」

 

外で待っていたら余計に騒がしくなりそうで急いで引子さんの後を追ったら玄関が開かれて視線が交差。

すぐさま泣きつかれ、俺は尻もちをついたのだ。

流石に外で泣かれると困るのですぐ家に入らせてもらって引子さんの荷物は引子さんに渡したが、リビングに入ってもこれである。

心配させてしまったことに対して罪悪感はあるが、それはそうとがいって誰だよ。

しかも涙で俺がびちゃびちゃなんだけど、お前それ”個性“じゃないの?

 

 

とりあえず落ち着くのを待って数分。

鼻を啜りながら目に雫を未だに貯めている姿の出久がある。

それと引子さんも半ばパニック状態が収まったようで、俺は出久と引子さんに正座して向かい合う形で対面していた。

 

「えー…大丈夫ですか?」

「ごめんなさい、取り乱して…。その、今までどこに言ってたのかしら?服も体もその、結構ボロボロだし。それに大地さんや結空さんの姿が見当たらなかったけれど…?」

 

早速本題に入ってきたが、引子さんの横ではぶんぶん、と勢いよく首を縦に振る出久が居て首を痛めないか心配になるレベルだ。

全然変わってないなあ。

 

「少し話しづらいことなんですけど」

 

それはそうと、俺は隠しても仕方がないので素直に話した。

俺の母親と仲良かった人だし、話すことが誠意だと思ったから。

ただ宇宙人だのサイヤ人だの”個性“じゃない大猿だのオールマイトより強い人だの現実感があまりないものは少し話を変えて、山でヴィランに襲われたこと。

両親が庇ってくれたおかげで一人生き延びたこと。

でも結局逃げられなくて殺されかけたところで、助けてくれた人が居たこと。

一年半もの間帰ってこなかったのはその人にお世話になっていたこと。

全部話したら抱きしめられてまた泣かれた。

辛かったね…と。

俺や両親のことで泣いてくれることは嬉しいけど洪水は勘弁して欲しい。出久も泣いてるから余計にだ。

 

それに俺には悟空さんが居たので寂しくはなかった。

一緒に寝てくれるし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少しして、学校やこれからどうするか言われて、また暫くはお世話になってるところで暮らすこと。

復学するなら中途半端よりも3年になってからの方が色々と動きやすいためだ。行事とかあっても参加しづらいし。

ひとまず学校には時期を見ても行くつもりだけどお金が無いことを伝えたり、一緒に暮らすかと言われたことは断った。

そこまで世話になるつもりは無いし、引子さんも女手一つで出久を育てている。

俺が居たら余計に負担がかかるだろう。

何より俺の両親は変わらないし、戻るつもりだからな。

家が無事だったのは不思議だったけど、それを伝えたら引子さんから聞いたこともない話が聞かされた。

 

”もし自分たちに何かあったとき、子供のことを助けて欲しい“と伝えられたとのこと。

それで預かっていたものがある、と言って渡されたのは通帳やこれから必要だと思われるものばかりだった。

普通なら渡さないが、俺の母さんが引子さんを強く信頼していたということだろう。

予めそうなると分かっていたのか、それとも俺の将来を考えてくれてたのか。

お金だって大人から見ても大金と呼べるほどの貯金額だ。

当然驚いた。

 

この話は爆豪の父親や母親―――勝さんや光己さんも知っているとのこと。

聞いた時は冗談だと思ったらしいが、普段の優しげな表情が消え去ってあまりに真剣だったから承諾したらしい。

家が無事なのも、俺が行方不明期間中にその言葉が本当だったんだと気付いてしてくれていたとか。

例え俺や両親が戻ってこなかったとしても、何年経ったとしてもするつもりで---。

 

 

 

 

俺は頭が上がらなくなった。

俺のことを亡くなってもなお、思って遺してくれた両親。

そんな両親の頼みを何一つメリットがないのに引き受けてくれた引子さんや爆豪の両親に。

友達だからといって、そこまでする義理はない。

でもしてくれたということは、それほど好いてくれてて、”本物の友情“ってやつがあったんだろう。

なら俺も返せるもので返そうと思って、出久と話をすることにした。

引子さんは出久が”無個性“で”ヒーロー“になれないことに心を痛めていた。

今の俺なら多分、解消出来るはずだ。

それに俺もこいつはヒーローになるべきだと思っている。

 

あとは本人次第だ。

 

「は、話って……?」

「久しぶりだろ?だから出久がヒーローになりたいって思う気持ちが変わってないか確かめたくてさ」

「か、変わってないよ。ヒーローになりたい……でも僕は…」

 

言いたいことはすぐに分かった俺は、その言葉を遮る。

そこはどうでもいい。もうその辺の答えは俺は出したんだ、聞ければ十分だ。

 

「出久、さっき話した通り俺は両親を喪って、助けてくれた人のところでお世話になってた」

「うん……」

「それで決めたんだ。俺もヒーローになる」

 

真っ直ぐに見つめて決意を話す。

言葉を咀嚼するのに時間がかかったのか、頭で理解したであろう出久が驚いたような表情を浮かべて、眩しいものを見るかのように。

 

「そう、なんだ……うん。界くんならヒーローになれるかも」

 

自分はまるで、なれないというようにそう言った。

どうやら伝わってなかったらしい。

俺は別に()()とは言ってないだろ?

 

 

「何言ってるんだよ出久。お前もヒーローになるんだろ。俺はお前がヒーローになれるって確信してる。だから一緒になろうぜ、ヒーローにさ。”無個性“だろうが関係ない。なりたくなったならそんなの目指すしかないだろ!」

 

そう、なるしかないのだ。

動かなければ理想を語るだけで叶うことは無い。

俺があの時動いたから、悟空さんに助けられたように。

何もしなければ俺もまた、両親と同じように死んでいたんだ。

それと同じようなもんだ。

 

「僕、が……?」

「昔から言ってるだろ?出久はヒーローになれる!そのために俺が力になってやる。まだまだ弱い俺が教えるのは良くないとは思うが、ないよりかはマシだろ?それにこれでも結構鍛えたからな。あとはお前次第だ、出久。どうするかはお前が選べ。俺の手を取るか、それとも大人しくしているのか」

 

そう言って俺は手を差し伸べた。

強制はしない。

どうするかは出久次第で、本当になりたいなら手を取ればいいだけの話。

でも俺は、不思議と答えが分かっていた。

 

俺の顔と手を見て、そして出久は俯いたかと思うと、小さな、涙声で口を開いた。

 

「ぼく……なれる、かな…”無個性“なのに、ヒーローに……」

「なれる。何度も言ってやる。ヒーローになれる!」

「っっっ……!!」

 

迷いなく肯定した俺が肯定すると、出久は拳を強く握りしめていた。

ぽたぽた、と地べたに雫が何度も落ちるのを咽び泣く姿を見て見ぬふりをして、ただ待ち続けた。

そしてどれだけ経ったのか。

 

「僕も…なりたい…。ヒーローになりたい……みんなから出来損ないって言われても、”無個性“でも、木偶の坊でも…!! 界くんが言ってくれるから…だから、だからお願い…!」

「よし、じゃあ決まりだ!ほら、泣いてる暇なんてねぇぞ。修行しなきゃなんだからな!」

「う、うん…!」

「そういや爆豪とは変化あったのか?」

「へっ!?う、ううん前と同じ、かな……」

「ならちょうどいいか……」

「?」

「半年後、お前には爆豪に勝ってもらうぞ。仲直りだ」

「うん…え?」

「とりあえず簡単にメニューから考えるか。うん、とりあえず俺がやってきたことやらせるからひとまずそれぞれ筋トレ100回くらいからやろうな!」

「はんとし、かっちゃん、きんとれ、ひゃっ…え? え? えぇええええええ!?」

 

急に叫ばれ、耳を抑える。

なんだよ。100回くらい良いだろ別に。

俺なんて最初にやったとき1000回なんだからだいぶマイルドだと思う。心配はいらないぞ、100回なら腕が痛い程度だ。

俺みたいに全身がちぎれそうなくらい痛くはならないだろう。

俺の場合その状態でさらにまた続行してたけど。

 

まぁそもそも俺の場合足を止めたら死んでたからな……。

筋トレを終えて体が限界を迎えてるのに足を止めたら死ぬ巨大なイノシシとかに追われる、とかそういったことするわけじゃないんだし。

今は重りを追加されてるわけだが、その状態でも筋トレしてるし。

最近は動けないギリギリの重りで動くようにしているところだ。

そのせいで恐竜に吹っ飛ばされたりサメに食われかけたり肉食獣に殺されかけたりとかあるけど、生きてるから何とかなっている。

ガチでやばかったら悟空さんも助けてくれるし。

 

とにかく俺は、何週間分かのトレーニングメニューと絶対に無理をしないこと、ちゃんと書いたところは休むことを強く言いつけて、引子さんにも説明した。

それで出久の夢が叶うなら応援する、とのことで『出久のことをよろしくお願いします』とも言われてしまったが、もし無理をしようとしてたら止めてくれるだろう。俺も破ったら協力しないと言ったし。

ただこれで引子さんの負担や恩返しになればいいけど。

 

その他にはたまに帰ってくることを出久と引子さんに言って一日だけ泊めてもらって戻ることにした。

光己さんたちには引子さんが伝えてくれるらしく、助かる。

 

 

 

 

 

 

 

こうして俺は、大量の調味料を買い込んでパオズ山に戻った。

 

「あれ、悟空さん誰か来てたんですか?」

「ん?ああ、ちっと昔の知り合いとな。んー…ま、おめえも近いうちに会えるさ」

「?」

 

俺以外にもパオズ山に誰か来たらしいことは不思議だったが、師匠の知り合いってことは誰だろう。

考えても仕方ないため、いつか会えるのだろうと思いつつ時折出久の様子を見て、ちゃんと無理してないかチェックして、3年に入る一ヶ月前には出久に”武術“を叩き込み、問題なさそうなくらいレベルアップしたのを確認した後に復学したら速攻で爆豪に喧嘩売って、戦いは無傷で勝利しつつあいつの思いを受け止めるために受けた攻撃は体力も削れて痛かったが、出久と喧嘩させて出久が勝って仲直りして…となかなか大変な一日を終えた。

そこから一週間後。

その時と同じように再戦しろと言われたから同じように足だけで戦ったらボコボコにされてぶっ飛ばされた。

そうじゃねー!って言われた。

俺悪くないよな? 同じようにって言ったの爆豪だよな?

 

それはそうと足だけで勝てたのに急に強くなって爆豪、バグりすぎじゃね?と思いつつまた再戦して”個性“を使われたら見事に苦戦。

やはり俺もまだまだらしい。

体鍛えるだけじゃ”個性“相手に戦うのは厳しいものがあるか…。

 

 

 

 

 

 

 

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