無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

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拳王技界:オリジン④

変わらず出久には体に教え込んでいるが、学校があるので最近は重りをつけつつ授業して、終わればパオズ山。

休みの日はひたすら来て、学校の日の何日かは休みに割り当てる、としつつ起きたことを全部、師匠に伝えた。

ちなみに師匠と呼ぶことになったのはつい最近。

爆豪にぶっ飛ばされて俺もまだまだと知って、覚悟の証明みたいなものだ。

あと事情説明した時に名前じゃなくて師匠って話したから、その方が俺も悟空さんの名前を誤って流さなくて済むし。

慣れてないと間違いなくやらかす。

師匠も好きに呼べばいいって言ってくれたしな。

なんだか懐かしいとは言ってたけど、多分”ウーブ“って人のことだろう。

元々弟子だったらしいから生きてるなら俺の兄弟子に当たる人。

”魔人ブウ“という存在の生まれ変わりらしい。

それはともかく。

 

「人に教えることも大切だと思うぞ。オラもそうだったけど、新しい発見ってのも生まれるもんだからな」

 

とのこと。

流石師匠だ。

師匠がそう言うなら続けるべきなのだろう。

 

「界、おめえ明日休みって言ってたっけ?」

「はい。祝日なので三日間休みです」

「そっか、ならおめえにはそろそろ次の段階に行ってもらうとすっか!体も結構出来上がってきたからな、伸びしろがなくなっちまってるだろ?」

「それは…はい。でも次の段階って……?」

「へへ、そりゃあ明日からのお楽しみってやつだ。けんど、それでおめえは一気に強くなれる。それだけは伝えとくぞ」

「さらに……分かりました!」

 

そう、肉体に関しては伸びしろがなくなってきた。

以前までは貧相だったからすぐ筋肉ついたし力も強くなったし大岩動かせる程度にはなっていたが、今は微妙だ。大して変わってない。

重りが30kgに増えてるし”武術“も結構取り入れることが出来てるから成長はしてるんだろうけど、大きく成長した感じはない。

師匠がそう言うなら、大きく成長出来るのだろう。

ひとまず俺は、師匠のために調味料を使って料理した。

といっても簡単にピザだったり肉だったりと拾ってきて毒のないキノコだったりとほぼパオズ山で出来るものだが。

ちなみにどれが食べれるか分からなくて誤って毒キノコを食ったことは何十回もある。あれは本当にヤバかった。

キノコの知識身につけても引っかかるとか難しすぎるだろ、あれ。今は平気だけど。

最初の頃なんて師匠に休むように言われたくらいだし。

俺が師匠に鍛えられてなきゃ死んでた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出久や爆豪の誘いを断って、早速パオズ山に入った俺は師匠の元へ走っていく。

滝を登ったり崖を登ったり動物に妨害されたり、修行になるショートカットをしつつ多少荒くなった息を整え、師匠が待つ場所に辿り着くと師匠は拳を作った両手を腰につけて待っていた。

 

「師匠!」

「よっ、ちょっとずつ速くなってきたな!」

「数時間かかってる時点でまだまだです…!それで早速するんですよね!」

「おう。まずは見てもらいたいもんがある。オラの戦いの記憶で知ってると思うけどよ、こうやって見直接せるのは二度目だっけ」

 

そう言って師匠は辺りを見渡したかと思うと、山の方を見て頷く。

何もいないみたいなこと言ってたけど、何をするつもりなのだろうか。

 

「教える前に見た方が早いとオラは思う。だからよーく見とけよ、界」

「?はい」

 

言われたからにはいつも通り師匠の一挙一動を見逃さないように俺の全部を持って師匠に集中する。

師匠の体に白いオーラ纏わりつき、可視化されたそれは一切の揺らぎがない。

両足を肩幅くらいまで伸ばし、鳥の嘴のような形に両手を合わせるようにして前に突き出す。

その動作はかつて一度だけ見たことがあり、記憶の中では何度も見たことがある動き。

まさか、と思いながらも目は決して離さないようにする。

 

 

 

 

 

 

孫悟空というサイヤ人が幾度も放ってきた必殺の一撃。

この技があったからこそ、これほどの高みへと登ったといっても過言ではない。

 

 

 

 

 

 

 

自然、いや一体と言ってもいいほどにスムーズな動き。

もはや表現する言葉としては美しいとすら思えるほどに完成された動きで腰部に添えられた。

 

 

 

 

 

 

両手に集まるのは、この先の未来で拳王技界という人間が放つ必殺技より遥かに大きなエネルギーと威力を誇る破壊のエネルギー。

いつかの未来、雄英体育祭という舞台で放つ技よりも数段上の威力。

 

 

めぇ---

 

込められたエネルギーが最大限に達し、その姿を目に焼き付けていた。

これから先も、この光景は忘れることがないだろう。

そして。

 

 

 

 

 

 

 

波---ッ!!

 

 

 

 

 

両手を前に突き出す動作までしっかりと見ていた俺は師匠から放たれたかめはめ波を目で追って。

その先にあるのは、一つの山。

凄まじい轟音を立てながら軌道が上に逸れて。

エネルギーが消えたかと思えば、()()()()()()()()()

埃すら、塵芥一つない。

正しい言葉があるならば、このことこそ完全消滅と言うのだろうと思った。

凄いだの次元じゃない。

凄すぎる。

それに師匠から感じられた()()がとんでもなくて、吹き飛ばないように耐えるので精一杯だった。

それでもその情景を俺は忘れられなくて---

 

 

 

 

 

「こいつがかめはめ波。おめえの中にある”気“を使って放つ技だ。まずはこれを身に---」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「波-ッ!」

 

 

真似たら、両手から野球ボールくらいの大きさの多いエネルギーが出てきて、滅茶苦茶焦る。

 

 

 

 

「いっっっ!?」

 

師匠が酷く驚く姿は珍しいので脳裏に保存しつつ―――

 

「う、うわぁあああああ!?」

 

そんなことをしてる余裕がなかった。

師匠と違って全く真っ直ぐ撃てなかった俺は自分に跳ね返ってきたことに慌ててとりあえず手を動かすと、かめはめ波がぐるぐると回り始めた。

よく分からないままひたすら動かしはするが、変な絵が出来上がっている。

同時に頭の中が混乱する。

全然消えないし制御出来ないし体から力抜けてくるしどうすれば……!?

勝手にやるんじゃなかったっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(し、信じられねえ。”気“を自覚しないままかめはめ波を自在に動かしてやがる…!それも”気“に一切の乱れがねぇ…。いくら初めて会った時に()()覚醒してたとはいえ、ここまでとはな…。もしかしたら界の”気“を扱う才能に関してはオラどころかクリリン以上、もしかしたら()()()()()()にも匹敵するかもしれねえぞ。界ならオラが界王様から教わった、()()()をオラ以上に使えるかもな……)

 

 

「し、ししょぉおおおおお!た、たすけ、助けてぇえええ!」

「わりぃわりぃ、今助けて…あっ」

「あっ」

 

 

 

 

 

ドガン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に見えたのは自分の顔面にかめはめ波が迫ってくる瞬間で、痛む顔を抑えながら意識を取り戻した俺は体を起こす。

なんというか、今まで感じたことがないくらい身体が怠い。

 

「おっ、起きたか」

「師匠……すみません」

「気にすんなって。大した怪我もなかったみたいだしな。なんか出来そうな感じがしたんだろ?」

「はい……」

「オラも最初は同じだったからな。何より界は元々半分”気“に目覚めてたもんな。オラもちゃんとそのことを頭に入れとくべきだった」

「そ、そんな。師匠は悪くないです。俺が勝手にやったから……!」

「界だけのせいじゃねぇけど…んー…ま、もう過ぎたことはしょうがねぇよ。後は体内の”気“を上手く扱えるようにしていけばいいさ。こっからは”気“を自覚してコントロール技術を磨いていくぞ。感覚を覚えてりゃ扱うのも簡単になる。だからこのことはもうおしまいだ。な?」

「師匠が、そう言うなら……」

 

俺のことを気遣ってくれたのだろう。

師匠の優しさが胸に染みる。

なら俺もいつまでもうだうだ言ってられない。

頬をパンッ!と叩いて一度リセットだ。

修行に集中しなくちゃ。

 

「次からは頑張ります…!」

「おう。ただ今日はもうやめだ。身体が怠いんじゃねえか?」

「え? まぁ、なんというか体が重いというか…身体が怠いですね……力があんまり入らないというか」

「”気“が減った証だ。いいか?”気“ってのはオラたちの中にある活力。つまり生命エネルギー、精神エネルギーと呼ぶものだ。それらをオラ達は力に変換してる。その分パワーだろうとスピードだろうと防御力だろうと破壊力だろうと上げれる代わりに消費しちまうんだ」

「なるほど……自分の中にある活動量を糧に身体能力を強化したりさっきのようにエネルギーとして撃つことで破壊力を出してると…。生命力ってことは最初に体を鍛えたり”武術“を鍛えたのはここに繋がって……次の段階というのは肉体を鍛えるだけじゃいずれ限界が来るからということなんですね!」

「その通りだ。すぐに理解するなんてちっと驚いたぞ」

「えへへ、師匠から勉強も大切と教わったので勉強はちゃんとしてますから!自分の学年の分まではもう頭に入れてるので成績も問題ないです!」

「おー、そりゃいいことだ。修行もしてんのによくやってるな。すげえな!」

 

師匠に褒められてしまった…!

これからも続けよう…!

勉強はあまり好きではないが、師匠が褒めてくれるなら話は別だ。

それに今みたいに頭を良くしとけば色んなことに使えるかもしれない。ヒーローになるなら学力も必要だし!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず”気“を自覚するところから始まった。

あれから一度やってみたが、ポスン、と音を立てるだけで出なかったのだ。

師匠曰く、俺が無自覚に同じことにならないようセーブしているらしい。

治すためにも制御するためにも自覚するためにも方法は瞑想。

心を無にして余計な思考を消すことから始まった。

---が、何度も寝ていた。

修行が終わったあとでやるから肉体の疲労、脳が疲れてるせいで寝てしまうのだろう。

最初から瞑想すればいいのでは?と思ったのだが、師匠は”気“を扱う際には強い集中力が必要になるとのこと。

だからこそ、どんな状態であれ”気“を練られるようにするのが目的らしい。

なるほど、確かに自覚してからやっても二度手間かもしれない。そもそも自覚したとしても集中力がなければ使うことが出来ない。

自覚し、同時に使えた方が分かりやすいのもあるのだろう。

とりあえず目が腫れててクソ痛いが、頑張っても無理だった。

あのハチ野郎……!!体を縛り付けられて避ける修行をしたことがあるからある程度はいけるが、まさか挟み撃ちしてくるとは思わなかった。

料理のために蜂蜜が欲しかっただけなのに。

 

 

 

 

 

 

 

3年生になって、はや半年以上。

師匠に師事したのが6歳と考えたら俺も大きくなったものだ。

当然学校には慣れたといえば慣れたのだが、復学後すぐに”無個性“だとあっさり周囲にバレてしまい、身体能力を発揮したら何故か周りから人が居なくなるという悲しい事件が起きた。

普通に身体測定で20mまで跳躍しただけなのだが。

まあいいか。ぼっちじゃなくて出久や爆豪が居るし、どうせ遊ぶ時間はあまり取れないのだ。友達を作ってもハブられていたに違いない。

 

そんなことより、自覚してかめはめ波を撃てるようになった。

約一年近くかかったことから、やっぱり俺には才能がないのだろう。

とりあえず体を追い詰めたり瀕死だったり筋肉痛だったりとかそんな状況でもかめはめ波を撃てるようにしたのだ。

たまに死にかけたことは何回もあった。修行のためだ、致し方がない。

 

それに伴い、1段階目である”気“の集中。

手や足などに集中的に集めることで普段よりも破壊力を引き出せる。防御力もスピードしかり。

 

次に2〜3段階目である”気“のコントロール。

これは”爆発“と”開放“、”抑える“こと。

つまり集中する力を全体に。長時間維持することと言っていいだろう。

特に”開放“状態にすることで”戦闘力“を最大限にすることが出来るのだ。

また”気“を抑えながら溜めることで、開放状態の瞬発力および持続力を強化することができる。

無駄な消費を消すことにおいても必須な技術と言えるだろう。

安定的な出力で戦えるわけだし、日常生活で困ることも無くなるし、かめはめ波などの高威力な技を放とうとも被害を減らす技術にも活かせる。

その点に関してはヒーローとして必須だし、師匠のように強い力を持つならば地球の安全のためにも必要だ。

それに解放状態ならば、集中によるアップではなく常時可能になるのだ。まぁ、”気“が無くなれば無くなるほど弱体化するデメリットがあるから使い分けが必要だろうけど。

 

そして。

 

”空のようにしずかにかまえ、雷よりもすばやくうごくこと“

 

その師匠の教えがあったからこそ、辿り着けたといっても過言じゃない。

 

瞑想しながら自分の中に入る。

そこに”在る“と自覚出来るのは、間違いなく”気“だ。

まるで太陽の光。

まだまだ師匠に比べれば少量でしかないが…。

今の俺でまだ”戦闘力“にして200未満だろう。このままじゃ何年かかっても追いつけそうにない。

とりあえず俺に出された課題は、今はそんなに上げるのが難しいとのことで”戦闘力“を上げるのではなく”気“のコントロールを上手くすること。師匠から言われたが、次に教える”技“に必須らしい。

色んな形の”気弾“を作り出す。

丸くしたり、細長くしたり、太くしたり、形を変えてみたり、ちょっと遊び感覚で人形っぽい形にしたり、武器のような形に変えたり、と。

まだ不安定ながらも形になってきてると言ってもいいだろう。強い集中力がまだ必要なのと、一点集中させるタイプはそれ以上に必要なことが課題だ。一番難しいのは遠隔型だろうか。分身体のような状態で動かすのがなかなか…。

それはともかく、あとは応用して、”技“に昇華させたらいいかもしれない。

例えば円盤型にして、こうエンジンカッターのように切断力がある---

 

「うわっ!」

 

地面が切断されてしまった。

あっ、ダメだこれ。人に向けたら死ぬ。

即封印確定が決まった。

 

「おっ気円斬か!懐かしいなぁ。オラも昔使ったことあんだ。もうその段階に行くなんてよ」

「きえんざん?」

「オラの仲間が使ってた技さ。あのフリーザの尻尾を切断したことがあるんだぜ?」

 

そう言われて記憶を思い起こす。

宇宙の帝王と呼ばれる者との戦い。ナメック星と呼ばれる星で激戦を繰り広げ、師匠にとって大切な親友とも言うべき仲間が殺され、超サイヤ人に覚醒した師匠が星が完全に爆発するまでに打ち倒した戦いだ。

師匠の戦いの記録は知っているが、あまりにレベルの違う戦いだし夢の中で見てるだけで全部を覚えてるわけじゃないしな。一つ一つを覚えてたら俺の頭がぶっ壊れてしまう。

だいたいは印象に強く残る部分だけだ。

 

でも師匠がそういうなら、これは俺の技ではなく借りることになるわけだ。

同じ発想に至ったのは間違いないけど、どうせなら名前もお借りしよう。

他にも編み出してみたいものだな。

 

こうして俺は、”気“の技術を高める修行に移行していき、4年生になった頃には爆豪を完封出来るようになり、色んな形の”気“のコントロールも安定して技も一気に増えていった。

現実世界で台風が発生したらそん時は現実世界で。パオズ山の気候が荒くなったらこっちで、とあらゆる環境でも集中出来るようにもなったし、なんというか格闘技術よりも自分の中で進化が早い気がする。

もしかして俺はこっちに向いてるのか? 自分なりの戦い方だと全然強くもなれなかったのに、”気“に関しては色んな技を生み出せたし……。

結局、”気弾系“の技で初めて教えてもらったというのもあって、ずっと練習してきたかめはめ波に落ち着くんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

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