無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ? 作:絆蛙
「そういう、ことだったんか…。つーか……」
何か思うところがあったのだろう。
こいつもオールマイトに憧れてるしな。
なんて思ってたら。
次々と爆豪が指差していく。
「すぐに顔に出るやつと」
「このナードと」
「あんた」
「この面子で!ポンコツ三人衆で隠そうと思ってたってか!?正気かテメェら!?」
「う……」
「言われてるぞ出久」
「いや界くんも入ってるからね!?どうして自分は違うと思ったの!?」
「いやいやオールマイトも出久も分かりやすいが、俺は違うだろ。なあ?」
「自分の言動を思い返せ鈍感」
なんて酷いこと言いやがるんだ。
俺は嘘をついたことなんてたくさん…たく、さん……。
「…聞かれたら答えるかも」
「やめてね!?」
「こういうこった。俺を呼んだのはそのためでもあるんだろーが」
「まぁな。お前も秘密を知ったんだから誤魔化すのには協力しなくちゃならないよな?」
「知ったというよりは彼が教えたよね…?」
「あ、はは…ま、まぁ界くん頭は良いけど純粋で嘘が下手ですから。…少なくとも僕ら以上に」
バカにされてるのか褒められてるのかよく分からない評価やめろ。
俺は嘘が下手なんじゃなくて嘘をつかないだけだぞ。
ちゃんと隠し事は出来るし。
「そもそもオールマイトから”個性“授かっておいて何界に負けてんだ出久ゥ!!」
「ひいい、なんでか僕に飛び火した!?」
「一番強え人にもらっておいて負けてンだから当然だろうが!そんな力もらって、オールマイト以外の力ももらってんならこいつくらいぶちのめせっての!」
「な、何も否定できない……!」
「まぁ一対九だからな……」
「うう……」
未だに”無個性“な俺はまだしも、出久はNo.1ヒーローであるオールマイトから”個性“を授かり、歴代の継承者の力すら受け継いでなお俺に勝つことは出来ていない。
いくら引き分けたとはいえ。
「でも正直驚いたぞ。あんなに強くなってるとは思わなかった。しかも急にな。俺もUSJでかなりパワーアップしたはずなんだけど、”本気“を出す必要があったわけだしな。うかうかしてたら超えられちまいそうだ」
「ったりめーだろ」
「うん。このままでは終わらないから。絶対!」
俺の最大倍率である10倍が必要になるレベル。
まぁ今じゃ15倍が最大なわけだが。
少なくとも体育祭で見せた出久のアレが常時可能状態の威力になったら互角になるだろう。
もしくは超えられるか。
こいつらなら並のサイヤ人くらい、大猿化しても倒せるんじゃないだろうか。
「…三人とも、私が口に出さなくてもいい関係を築けてるみたいだな」
「こんなもんですよ、小3くらいから。にしても何らかの理由があるのか?お前らUSJから考えても短期間でもはや別人レベルじゃねぇか」
数ヶ月経ってるなら納得出来るが、数週間であの実力だ。
俺には一度たりとも起こらなかったことから俺は対象外だとは思うが。
「理由…と言われても。せいぜい夢を見たくらい…かな?」
「夢?」
「うん。声が聞こえたんだ。炎のような緑の光が人の形を作ってて、僕はそこで初代継承者から話を聞いて”OFA“の
「どこかの…か。爆豪は?」
「似たようなもんだ。俺は赤かったけどな。ただ…随分昔に、
「あっ、それは私もあるよ。つい最近だけどね」
話に入ってなかったオールマイトも思い出したかのように告げてきた。
俺の中でピースが次々と埋まっていく。俺が言っているバグとやらの現象。
突き止めるには足りない。
何かが抜け落ちているようで、ピースが揃わない。
これだけじゃ決定的な証拠にならないんだ。もっと何か、大きなものを逃してるような。
「オールマイトも?そうか…他になにか言ってたことは?」
「そういえば特異点は過ぎ去った…って初代は言ってた」
「!特異点……まさか、そういうことなのか……?」
「…なんか気づいたんか?」
出久の言葉で、最後のピースが埋まったような気がした。
師匠、”孫悟空“の存在。
俺が扱う”気“の存在。
どこかの”自分“。
”特異点“。
もし、もし俺の予想が正しいならば。
出久や爆豪、そして切島に起きた現象や俺の知り合いが急激にパワーアップしたことにも納得がいく。
少なくとも特異点は過ぎ去ったというのは。
「”個性“特異点……」
「それって終末論の?」
「ああ。ここからは俺の予想になるけどな」
”個性特異点“。
親から世代を経るごとにより強力、かつ複雑に混ざり変化していくことが知られている。
ただこれはオカルト話として知られているだけだ。
簡単に言えば、将来的に人が"個性"をコントロールできなくなることを予測した概念。
これらが正しいならば数世代後には全人類規模で起きる危険性がある。
だが俺としては間違ってない気もするんだよな。雄英に通って思うのが強力な”個性“がかなり多い。
轟も出久も爆豪も既にプロでも通用するレベルだしな。
「”OFA“は”継承“という形で次からまた次へと受け継がれてきたんですよね?」
「ああ、元々は大した力はなかった。私の代で大きく成長させたが、体育祭での出来事---あの時に緑谷少年がさらに強くしたのだろう。恐らくだが、”OFA“は緑谷少年の代で最後かもしれない」
「僕が…最後……」
「圧をかけたいわけじゃないんだけどね。なんたって拳王技少年が鍛えた緑谷少年ですら最初は100%で怪我してたんだぜ」
「そういや出久も耐えきれてなかったな。つーことはもし継げるとすりゃ……」
全員の視線が何故か俺に集中した。
思わず周りを見渡すが、他に誰も居ない。
「え?俺?」
「正直私は緑谷少年の次に継げるのは拳王技少年、君しか無理だと思う」
「だろうよ。俺でも無理だわ」
「えぇ……?まぁそこは置いとくとして」
「あっ、置いとくんだ…」
「だっていらんし」
「い、いらない……」
「お、落ち込まないでくださいオールマイト!僕は大切にしてますから!」
「緑谷少年……っ!!」
「何そこ手を握ってイチャついてんだ。あと爆豪はもっと無理だと思うぞ」
「あ?」
「”個性“ってのは容量が決まってんだろ?恐らく”OFA“を受け継ぐことが出来るのは、何も無い”無個性“だけだ。”個性“があると寿命を縮めるか最悪死に至る可能性がある。まぁ身体に定着しない短い間なら可能だと思うけど…実際にオールマイト、歴代の継承者も早死だったのでは?」
「……!驚いた。君の言う通りだよ。実は緑谷少年から話を聞いた際に私も出来るだけ歴代の継承者について調べてね。これを見て欲しい」
出されたノートに全員が覗く。
いやちょっと陰が出来て見づらいって。お前ら下がれよ。一斉に見たら見えないだろ。
仕方がないので”気“で光源を作って改めて見ると、二代目〜七代目までの”個性“と死因が書かれていた。
順番に『変速』。『発勁』。『危機感知』。『黒鞭』。『煙幕』。『浮遊』。
出久が見せた力というのもあって、だいたいどんな力を持つのか分かる。
”変速“ってのは物理法則を無視する速度変化だろう。”発勁“は威力を上げる赤いオーラのやつ。”危機感知“は明らかに避けられない俺の攻撃を先に察知することで避けたやつ。”黒鞭“は利便性に長けたもので、相手にするなら厄介な鞭。”煙幕“は目くらましのやつ。”浮遊“はまぁそのまんまだが、ぶっちゃけ劣化版”舞空術“。
浮く程度かよ。
「けっ、どいつもこいつも大した”個性“じゃねぇな。三つくらいしか大して使えねえ。名前も聞いた事ねぇやつばっかだな。なんだったら二つくらい界の劣化版じゃねーか」
「おいバカ。やめてやれ。彼らも頑張ったんだぞ、知らんけど」
「何のフォローにもなってないよ…界くん……」
「爆豪少年の言葉も間違ってない。AFOは”OFA“に固執していた。強い”個性“を次々と潰し、地獄の中をもがき、息絶える中で歴代はこの力に”未来“を託し、紡いでいった。彼らは選ばれし者ではなく、託された者であり託した者だったんだ」
見る感じ、歴代継承者はみんな早死しているようだ。
気になるのが四代目。
彼だけが
そりゃ俺たちよりは昔の人だから寿命は短い可能性はあるが、そうじゃないだろう。
時代的にも平均すれば平均寿命は40じゃない時代だ。
そしてオールマイトの”個性“は”OFA“。わざわざここで隠す必要もないことからここまで来ると理解する。
つまりオールマイトは”無個性“だ。
「やっぱり誰もが”個性“がある、か。例えば爆豪の”個性“の器を50としたら受け継いだ際には50以上のものを継ぐことになる。
そうなりゃ単純計算で100を超えてしまう。だからこそ、何も無い0の”無個性“じゃなきゃダメなんだろうな。享受出来ずに馴染まねーんだろ。オールマイトが早死してないのもこれしかないだろ」
「確かに……!」
「拳王技少年…君はここまで頭が良かったのか…!」
「ひょっとして俺のことバカと思ってたのかあんた!?これでも成績トップクラスですけどっ!!」
「自業自得」
「普段の行いが原因でしょ」
「お前らは庇えよ!だいたい俺は”気“を感覚的に使ってるわけじゃねーからな!考えて使ってるから頭使うんだよ!俺がバカだと技なんてもっと少ないからな!?”界王拳“がどれだけ大変で難しい技なのか、お前らは分かってねぇ…!!こっちとらこれの習得に何年かかったと…!」
「そ、そう言われても私たちは使えないからね。とにかく落ち着いて、拳王技少年」
まさかの事実に思わず席を立って文句を言うと、オールマイトは両手を挙げながら困ったような表情をしながら落ち着くように言ってきた。
あんたのせいだろ…!
忘れてるかもしれないけど”界王拳“ってのは使い方をミスったら死ぬ危険性のある技だからな?
こっちとらこれを身につけるのに”気“の自覚から始めて3年近く掛かったんだぞ…!!
会得したのは小6だからな!!
「…まぁいい。話を戻すとして、とにかく歴代の”個性“が発現してる今、出久が誰かに譲渡するのは非常に危険を伴う行為だ。というか多分無理。諦めろ、お前が何とかしろ」
「急に投げやりに…!」
「最悪界に渡すしかねえな」
「うわいらね」
「やめて……?」
「ねえ、なんか悲しそうな感情が伝わってきたんだけど……」
マジか、聞いてんのか歴代継承者。
プライバシー守ってやれ。あとガチで涙目になるなよオールマイト。
いらないのは本音だが。
俺はこのまま師匠を超えるって決めてんだよ。あと俺と相性最悪だからマジでいらん。
仮に貰ったとして”界王拳“と”ワン・フォー・オール“使ってみろ。
絶対死ぬわ。
問題なくても短い間しか絶対無理だし、そんなデメリット背負うくらいなら慣れてる界王拳を使うしな。
「にしても明らかに出久と歴代の”個性“は違いすぎる。恐らく”個性“そのものが強化されてると見るべきか。特異点…ってよりも能力が拡張されたことから”覚醒“と言うべきかもな。そして爆豪、お前もだ」
「……クラスターの副作用か」
「ああ。多分だけどお前らが見た”夢“はお前らの言ってた通り”どこかの自分“。でもそれは”未来“ではない。もし未来だったなら過去の自分にインストールする形になる…にしては体育祭で見せた力はそれ以上の力だ。普通なら未来から得た力の何割かを使う…という形になるはずだろう。知らんけど。だが未来と現代じゃ肉体が違うからな、そのまま使えるとは思えない」
「それは…そうかも」
「じゃあ他に何かあるってのか?」
ここで俺だからこそ辿り着けたもんがある。
それは。
「並行世界…いわゆるパラレルワールドってやつからお前らは”継承“したんじゃないのか?戦闘経験も、使い方もな」
「パラレルワールド…?んなの存在すんのか?いや……確かにそうかもしんねえ」
「そうだね…あの時、僕が思ったことと
「俺もだ」
二人もそれぞれ思うところがあったのかもしれない。
だけど、そうなのだ。
同じ世界線の未来の自分と過去の自分が別々の考えを持つか?と言われればNOだ。
同じ世界線なら同じ考えでなければその未来に繋がらず、そこで分岐してしまう。その割には二人は継承の際には異なることを思ったらしい。
つまり二人が継承したのは同じ世界線の自分では無いといえるんじゃないか?
どんな考えだったのか。
…そこは聞いても教えてくれなかった。大事なところだろ、教えろよ。
爆豪はオールマイトを超えるという想い。出久は最高のヒーローであるオールマイトのようになるという想いは同じだったらしいが、もうひとつは違ったと言っていた。
いややっぱりそこ教えてくれないと困るんだけど、言ってくれなさそうなので諦めた。
ならば、何らかのエネルギーか?願いだとか希望だとか、そういった抽象的な概念の。
ちなみにだが、俺が並行世界なんじゃないかと思った理由は師匠の存在だ。
あの人はこの世界の、この宇宙の人物ではない。
別の宇宙からやってきた存在であり、別の宇宙が存在する証明でもある。異なる歴史を歩んだ師匠も居るらしい…というかそもそも正確には正しい歴史だと師匠は亡くなってて、絶望の未来だけが残っていたらしい。
師匠も未来から来た人物が病気ということもあって仙豆では治せない心臓病を治すべく特効薬を持ってきてくれたからこそ、歴史が変わったから生きることが出来たらしいしな。結局その時の最後の戦いで亡くなったらしいが。
ある意味、それは歴史の集束と言えるかもしれない。
つまり異なる歴史を歩んだ出久たちが居たって何一つおかしな話ではないのである。
何よりこの世界の概念には存在しない潜在エネルギーたる”気“の存在。
俺がここまで力を引き上げられるんだから実際にあるなら俺以外も使えてなきゃ可笑しい。の割には俺しか扱えないのだ。
正確には俺しか使った人が見たことない、だが。
「恐らくだが、炎が宿ったってやつは成長速度を促進させるものなんだろう。明らかにおかしかったし、いわゆるバッシブスキルみたいなバフを得られる……これを第一段階としようか」
「ふむ……確かに以前に比べて力が戻ってるような錯覚を覚えたが…」
「第一段階?」
「ってことはまだあるってわけか」
「能力の上がり幅的に分けた方が分かりやすいからな。んで二段階目は”個性“の成長。これは小森さんが分かりやすい例かな。範囲指定に”個性“を元にした新しい力を使えるようになってただろ?」
「使ってたね!あれは戦略を大きく広がるような使い方だった…!」
「まるで拳王技少年に引っ張られる形で成長したように思えたが……」
「菌糸のやつか…」
「それだ。それは偶然じゃないですかね。で、三段階目は継承。これはお前らの身に起きたこと。切島にも起きたもんだ」
「あん時のだな。確かに急激に強くなったように見えたが」
「切島から聞いたけど、先にある力と言ってたんだ。つまり本来なら先の未来で発現したはずの力と見ていい。それを現在に持ってきたんだろう。戦闘経験と共にな。そして”継承“ってのは肉体の器や強度も一緒に高めたと見ていい。だから出久が使える出力も跳ね上がったんだ。言うなら並行世界である未来の自分と一体化…同化が近いか?その未来がどこの未来かまでは俺にも分からないけどな」
師匠の世界で言う、”
それならば急激なパワーアップの上昇量にも納得が行く。師匠もそれで仲間がとんでもなくパワーアップしたと言っていた。
そもそも前者のふたつは条件がある。
片方は制限時間有りで特殊なポーズを取る。
もうひとつは特殊のアイテムが必要という条件が備わっている。
一応ポーズはどんなのかは知ってるが、俺としては独りで戦いたいので使うことは絶対ないだろう。ポタラも同様というか、ポタラに関しては人間の俺が手に入れるのは不可能だしな。
「未来と同化か…緑谷少年の出力が急激に上昇した理由には確かになるが……」
「なるほど……」
「何処か分からねぇのはそりゃそうだろ」
「観測する方法がないからな。そして四段階目が、”覚醒“。爆豪の全身爆破や出久の100%を超えた力が該当するんだと思う。三段階目を遥かに凌駕する現象なんだろう。ぶっちゃけここまでバグってたのは俺もお前ら二人が初めてだ。二段階目までは見たことあるんだけどな」
師匠で分かりやすく言うと、一段階目が界王拳。二段階目が
ちなみに
つまり三段階目〜四段階目の間にはそれほどに差が出来る現象ってわけだ。
「あくまで仮説に過ぎない。でもまあ、有り得る話だと俺は思う。この宇宙には別の宇宙が広がってるからな」
「?まるで見たことでもあるような言い方をするね」
「あんまり言うべきじゃないんですけど、見たことあるというか俺の師匠が別の宇宙から来た人なんですよ。それ以上は守秘義務なので話せませんが」
「え?」
「…へ?」
「……マジか」
「マジ。証明出来るもんはないけどな」
話したくないことだが、この説明に説得力を持たせるために少し開示すべきだろう。
信じる信じないかは三人次第だけど。
「界がわざわざ嘘をつくとは思えねえ。それに顔が本当ですって言ってやがるな」
「どんな顔だよ」
「そ、そんなことが…!でもそれが本当なら過去にあった説が本当だということになるぞ。元々パラレルワールドの存在は長らく存在する存在しないという論争になっていたけれど、超常社会となってから今に続いても未だに存在するかどうかは観測されず不明瞭のまま存在する存在しないの話は決着がつかないままだった。けれど界くんの言葉が本当ならばパラレルワールドは存在する!例えば僕が知らないだけで別の世界では解決されてない事件が解決されていたり明かされてないオールマイトの活躍やまずこの世界では起こらなかった事件などに関わっているかもしれないしということはオールマイトのグッズもこの世界とは異なる物があるのでは?うわあ、それはすごいレアだ!この世界じゃ手に入らないとなると唯一無二の物!そんなものがあるなら欲しい!是非とも手に入れたい…!それに他のヒーローの活躍だって---」
「うるせえ」
「静かにしろ出久」
「緑谷少年!緑谷少年ー!」
「---でもそれなら他の世界の界くんはどんな感じなのかな。性格が違ったり…いや変わらなそうだな。オールマイトもオールマイトだろうしかっちゃんはもしかしたら仲直りする前のかっちゃんである可能性もあるな。だけどなんでか界くんだけはどの世界でも全く変わってないんだろうなって思えるのは不思議だよね---」
「緑谷少年!戻ってこい!!」
「……はっ!?す、すみません。思わず!!」
「いつも以上に暴走してたなお前」
オールマイトが肩を滅茶苦茶揺らしてようやく戻ってきた。
正直何言ってるか分からなかった。
そもそもなんでこんな話になったんだっけ。
やべ、出久のせいで俺も記憶が混乱してきた。
話終わらせるか。
「いずれにせよOFAのことは口外しないようにする…って形でいいですかね」
「ああ、出来るならば秘密は少数にしておきたい。このことを知ってるのは私の友人と学校では校長とリカバリーガールくらいだ」
「ってらしいぞ爆豪」
「俺が話すわけねえだろ。問題はてめぇだ」
「ハッハッハッ!心配すんなって!」
「どうしよう、全然安心出来ないんだけど。凄く不安だ……」
「ま、まぁ僕たちでフォローすれば……」
「出久、てめえもだ。どうせ動揺してまともに話せなくなるだろ」
「そ、そそそんなことは…!!」
「言われてやんの」
「界くんはお願いだから数分前の出来事思い出して???」
なんのことだろうか。
俺の記憶は師匠との思い出で詰まってるからちょっと無理。
断る。
「さて、んなことより最後の問題も解決するとすっか」
「界くんが話を広げたよね!?」
「で、問題ってのは?」
「オールマイトの体。それを治す」
「…はい?」
「は?」
「…え?私の体を……治す!?」
二人からは意味が分からないと言いたげに見られ、オールマイトは驚愕していた。
まぁ驚くのも無理は無い。俺も当事者だったらそうなる。
「ご、ごめん。聞き間違いだったら申し訳ないのだが、今私の体を治すと言ったのかな?」
「です」
「……すまない。もう一度」
「難聴かよ!オールマイト!体!治す!!以上!!!!」
今度は聞こえるように比較的大きめの声で告げると、無言の空間が出来上がった。
もしかして俺なんかやったか?
「は、HAHA…気持ちは嬉しいが、いくら君でも無理だ。私の体は---」
「さっき聞いた」
「…もしかして、”気“で治すの?」
「いや俺はまだ”気“で治す力は持っていない。せいぜい疲労を癒したり温もりを与えたり分け与える程度だ」
神妙な顔付きで出久が聞いてきたが、残念ながらその段階には至っていない。
どうやるのかすら分からないのだから辿り着けないのも当然っちゃ当然なのだが。
「オールマイト、これを」
懐から取り出した袋から取り出した俺はオールマイトを治すためのものを机の上に置く。
「…豆?」
「豆だ……」
「豆だな」
そう、それは一粒の豆。
見たまんま、緑色の豆だ。
ふざけてんのかと言いたそうな爆豪に手を出して言葉を止め、俺は真面目に告げる。
もちろん残りの数については絶対言わない。この人、それ知ったら絶対食わないからな。
残り数は二粒だ。師匠から貰ったものなので、残念ながら俺には増やす手段がない。
全部使う前に真実に気づいて良かったと言うべきか。
半分に割っても効果あったりするが、そうすると半減なので怪我を治すならおすすめできない。
「これは仙豆と言います。仙人の仙と豆と書いて仙豆。どんな怪我だろうと病気ではない限り治すことが出来る、奇跡の豆です。騙されたと思って食べてください。無理だとしても無理矢理にでも飲み込んでください。なんなら押し込みますが」
「仙豆……そんなものが実在するのか…?」
「そうか、別の宇宙から来た…っていうてめぇの師匠とやらから貰ったもんか?あの言葉も円滑に進めるためってわけか」
「……そ、そうだ」
「ちげえってのは分かった」
そういうことにしておこうと思ったのに。
「オールマイト……界くんを信じて見ませんか?オールマイトの体が治るなら、活動時間も解決すると思いますし血を吐いたりすることもなくなります」
「だが……貴重な物では?」
まぁそうなるだろう。
だが悪いが、ノーコメントとさせてもらおうか。
食べさせる方向に行かせればいい。
「オールマイト、頭の中で考えてみてください。体が治れば食事が出来る。今の体じゃもう食べなれないであろう肉!魚!麺!炭水化物や菓子やらスイーツ!なにより、白米!!それがもう気にせずに食べれるようになるんですよ?」
「……!!」
オールマイトがイメージしたのか息を呑んだ。
よし、上手く少し意識させることが出来たな。
ここからは卑怯だが俺を犠牲にして食べてもらうしかない。
「それに俺はヒーローを目指してる。目の前の救える命を救わずしてヒーローになれると思いますか?
「界くん……」
そう言って俺は頭を下げる。
平和の象徴として戦ってきたオールマイトは報われなければ不公平だ。
この人はきっと自分の身を粉にして多くの人を救ってきた。
じゃあ…誰がこのヒーローを助ける?
ヒーローが人々を助けるなら、頂点に位置するヒーローを助ける人なんて居ないだろう。
そんなことあっていいわけが無い。誰も手を伸ばさなかったなら、俺がこの人に手を伸ばす。
例えこれが、オールマイトなら断れない卑怯な言い方と理解していようとも。
なぜなら雄英の生徒で、ヒーローの卵の未来を潰す可能性のある選択を俺は叩きつけたからな。
この人がそんなこと出来るはずがない。
出来るなら俺はこの人を幻滅する。
「拳王技少年……。頭を上げてくれ」
顔を挙げると目が見えないのでなんとも言えないが、不思議と目を伏せてる気がした。
「…君にそこまで言わせて断るなんて私には出来ないな。これは有難く頂くとするよ」
「…はい」
オールマイトも俺がそう仕向けたことには気づいているはずだ。
俺の中で罪悪感が何度も突き刺してくるが、表に出さないように努める。
強引にでもしないと食べてくれないから、仕方がない。
「じゃあ……」
空気が変わり、静かな緊張感が生まれる。
オールマイトが仙豆を手に取り、仙豆を凝視していた。
どこからどう見ても豆だ。
これがどんな怪我でも治すって信じられないよな。俺も食ったことあるけど嘘みたいな回復力だった。
そりゃ師匠たちも強敵相手に使ってたわけだ。
「ええい…!!」
そして、ついにオールマイトが口に含んだ。
豆が砕かれる音が鳴り、オールマイトが飲み込むような動作をした。
その瞬間、変化が---目に見えて分かる怪我じゃないので俺達には分からない。
「お…おっ、おおっ!?呼吸が軽い!息苦しさもない!それに久しく感じていなかった満腹感…!もしや…っ!!」
オールマイトが既にマッスルフォームってやつになってるのは本人も気づいてないみたいだが、オールマイトが服を捲るとそこにはあんな酷かった傷が初めから存在してなかったかのように元に戻っている。
流石俺があの世に逝きかけても治った豆だ。
…え?いやちょっと待て。今気づいたんだけど。
「な、治っている!完全に!もう無理だと諦めていたのに…!それに以前よりも力が引き出せるような感覚があるぞ。まるで若返ったかのようだ!これは一体……!?」
「す、すごい!たった一粒食べただけでオールマイトの傷が完治するなんて…!」
な ん で 気 が 上 昇 し て ん の ?
そ、そうか!”個性因子“!
恐らくそれもある程度復元されてるんだ…!俺にはなかった現象だったから気づかなかった!
といっても”個性“そのものはオールマイトにはもうないからいずれ消失はするだろうが…。それでも細胞のひとつみたいなもんだ。仙豆なら適応内なのか!
それとオールマイトの生命力自体が弱ってただけでこっちが本来の力なのだろう。
この人、常時デバフ受けてたみたいなものだもんな…。
ま、まぁ治ったからいいか。仙豆の影響で今日一日は食べる必要はないだろうし。
「…界、お前こんなもん持ってたんか」
「言っとくと俺が作ったわけでもないし量産出来ないからな。一応、知り合いに量産出来る可能性を秘めた、俺が知る限り無限に成長出来る人が居るけど…」
間違いなく驚愕していたであろう爆豪が俺に目を向けて言ってきたので、大事なことは伝えておく。
これに関しては俺も理解できないもんだしな。
「拳王技少年……ありがとう。本当にありがとう…!しかし私は君にそれ以上何を言えばいいのか…!私に返せるものがない……!」
「それならあるんで」
「え?」
「俺といつか
「……ふふ、そうか。君は欲というものがないな。約束しよう、私の活動時間が残り数時間だったというのにそれすら感じない。今の私ならマッスルフォームにいくらだってなれるだろう…!」
「今なってますけど」
「む、いつの間に…!」
「よかった……オールマイトが治って、本当に…。ほんどうによがっだ……っ!」
「なんでお前が泣いてんの?」
「……」
「なんでお前は上向いてんの?」
「改めて本当に…本当に感謝する…拳王技少年!!ありがとうッ!!それしか私には言えない…!!」
「ギャッ!師匠以外にされても嬉しくねえ!!離して!HA☆NA☆SE!!
ただただ暑苦しいんですけど!?誰か!誰かツッコミができる人!空気を変えれる人---ッ!!」
オールマイトにハグされ、幼馴染二人が謎ムーヴをかまし、下校時刻になるまで俺は一人で対処する羽目になった。
なんで俺がこんな目に……俺が何をしたって言うんだっ!!
次の日。
『ヒーロー科1-Aの拳王技界くん。至急校長室まで』
何故か俺は校長室に呼び出しを放送で受けた。
なんでだよ。
何かやったのかみたいな目で見られたし、俺そんなに何かやらかすように見えるのかなぁ。
ナガンさんも言ってたし……。
俺がやった事なんてヴィジランテとして活動したりUSJの時に死柄木弔を逃がしたり久しぶりに死にかけたり、エンデヴァー殴ったりボロボロな状態で体育祭出たり、エンデヴァーと戦って焼かれたり工房をボロボロにしたりオールマイトの怪我を治したり……いや、思ったより前科あったな…?