無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

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必殺のかめはめ波!

 

時間は遡り。

 

「さて、とこんなもんか?」

 

思ったよりも脆く、”気“を纏うことなく倒せたのである程度ポイントを稼ぐと、ただひたすら高いところから気弾を打ったり時に”気“を纏うことで加速し、危うそうな人を助けたりなどしていた。

そういえば幼馴染みたいに目付きが悪い紫色の髪の男の子が居て、放っておけずに狙うところを変えたらやりやすいと唯一アドバイスをしてしまったが……彼は大丈夫だろうか。

あまりよくないこととは分かってるが、戦闘向きの”個性“には見えなかったからな。

まあ後はその人次第で気にしても仕方ないし、俺は問題ないか確認を続ける。

正直機械相手なので”気“を感じられないのが難点だが、別の方法で見つけられるので問題はなく、やろうと思えば稼ぎまくれてしまいそうなのだ。”気“を目に集中すれば遠いところでも見えるしな。

ただどれだけロボットがいるかは分からないからやりすぎて他の人たちがポイントを得られなくなったら雄英側も困るだろうし…。

そうこうしていると、時間が近いのかビル群を壊しながら巨大なロボットが現れた。

それを見て、説明された時のことを思い出す。

あれはお邪魔虫で、ポイントにはならないと。

 

「倒そう」

 

それを知っていてなお、俺は倒す気満々だった。

わざわざお邪魔として用意したなら他のロボより固くて強いはず!そんな相手みすみす無視するわけにはいかない! 師匠ならそうしているはずだ!

 

地面に着地する。

他の受験者たちが逃げ出す中、俺は軽く走りながら嬉々として向かっていると、受験者の数が減ったため分かりやすくなったお陰か巨大ロボの近くに”気“を感じた。

誰か取り残されてる? 怪我人ならまずいな…位置的にも踏み潰されそうだ。

ならまずは救助だ! 戦うのは好きだが、人優先!

 

 

 

 

すぐに加速した俺はそうして”気“の近くに辿り着いたわけなのだが、おかしい。

()()()()()()()

もしかしてサポートアイテムか? それにしては”気“を妨害するものなんて用意出来るとは思わないしそんな俺だけのために用意するはずもなければ、今まで”気“を扱える人は師匠以外に見たことはない…。ネットで調べたりバイト先のヒーローに聞いても聞いたことないと言っていたし。

何より、これは間違いなく人の”気“だ。

となると何らかの”個性“か。

”気“は感じるのでそこへ向かうと、声を掛けた。

 

「キミ、大丈夫か!?」

「え…な、なんで…ど、どうして…? 私が見えるの!?」

「いや、悪いけど見えてない。それより時間が無い。動けるか?」

「う、ううん……足をくじいちゃって……わ、私のことはいいから君は!」

「そうか。じゃあちょっと待っててくれ!」

「え……?」

「姿は見えないから、悪いけどこれ着ておいてくれるか? 多分”個性“の影響なんだろうけど、目印になるから」

 

流石の俺も姿が見えないとなると怪我の具合も分からないが、動けないのは分かった。

そのため一般の材質が使われている体操服を脱ぐと、見えない人に差し出す。

ゆっくりとだが掴まれた感触があったので放すと、服が浮いている。

完璧に怪奇現象だな。てっきり触れたものも消えるのかと思ってた。

ちなみにシャツはあるので上半身裸というわけではない。

しかし目の前の子が動けないならやることはただ一つ。

 

「待って!何をするつもりなの!?」

「決まってるだろ? あいつを倒す!」

「そんな、無茶だよ! どんな”個性“か分からないけど、あんな大きいロボット相手に…! 私のことはいいから早く…」

「そういうわけにもいかない。ここで見捨てるなんて、ヒーロー志望がやることじゃないだろ? ましてや怪我人が居るのに立ち向かわないなんて以ての外だ。大丈夫、すぐ終わらせる!」

 

あの巨大ロボを速攻で倒す。

流石にあれは、いつものように”気“を纏っても一撃じゃ倒し切れないな…。

なら……組手じゃ危なくて今まで使えなかったし久しぶりに()()使うか!

 

「っ、ふぅ……」

 

巻き込まないために()()()()()ロボの方へ近づくと、俺を捕捉したのかゆっくりとだが腕を振り上げていた。

それを見ながら俺は意識を集中させる。

 

「はあぁぁぁぁ……!!」

 

自分自身の体内の”気“を爆発的に引き上げ、空中で片足を前に出す様に、しっかりと大きく脚を開き、腰を落とす。

 

 

 

 

 

 

 

 

「か」

 

両掌を鳥の喙の様な形に取り、手前に構える。

 

 

 

 

 

 

「め」

 

両掌を腰の辺りまで持っていき。

 

 

 

 

 

 

 

「は」

 

先程の”気“を両掌に集めつつ、溜めると青白いエネルギーが形成されるのを()()()()

 

 

 

 

 

「め」

 

両掌に気を最大に集中させ、エネルギーが完成する。

そして、巨大ロボが叩き潰さんと一気に振り下ろしてきた。

 

「逃げて!」

 

怪我じゃ済まないであろう巨大な質量が迫ってくるのを目にしながらも、俺はその体勢を崩さず。

それから

 

 

 

 

 

 

 

「波ァァアアアア!!」

 

腰に構えていた両掌を前方に突き出すと同時に、解放した”気“は大砲ともビームとも呼ぶべき青い破壊エネルギーが巨大ロボの腕にぶつかる。

あっさりと鉄クズを熔かし尽くし、エネルギーは途切れることなく、中心へ一直線に向かうエネルギー波は強固そうな装甲を貫き、俺はすぐさまかめはめ波を上空に逸らした。

風穴の空いたロボは後ろに倒れながら動力部分を破壊したからか次々と連鎖して爆発が起き、俺は再び”気“を解放しながら両手に気の弾を生成。

 

「だああああ!! だだだだだ---!!」

 

連続で何度も何度も撃ち、二次被害が起きないよう残って落ちようとしている部品全てを空中で気弾で破壊し尽くすと、木っ端微塵どころか欠片も残さずに消し去った---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当なら近接戦でやるつもりで楽しめなかったのは残念だったが、あの子の危険に比べれば些細な問題だ。

そのまんま降下して着地する。

さて、さっきの子は大丈夫かなと思いながら、何故か全員止まっていて見られてることに疑問に思う。

まだ試験終わってないからやればいいのに。

そう思いつつ自分の体操服を---着てるのが見えたので近づく。

声からもしかしてと思ったが……女の子? 何処がとは言わないが、服を着てるおかげか膨らみが見える。俺が着てた服だし悪いことしたかもしれない。

あれ? ということはさっきまではだ…いや、”個性“の使用上仕方ないのだろう。

そんなことより。

 

「とりあえず試験……」

『試験終了ーーーー!』

「……終わったか。立てる?」

「え……あ、えっと……う、うん…いたっ……!」

 

手を差し伸べると、透明の女の子は俺の手を取る。

そっと力を入れて起き上がることを手伝うと、女の子は立ち上がったらしいが、痛みを感じたからか声が出ていた。

顔が見えていたら顔が歪んでいただろう。

 

「捻挫…みたいだな。悪化したら支障が出るし…嫌なら嫌と言ってくれよ」

「へ……っ?」

 

ひねったと言っていたため、症状から軽度の捻挫かなんかだろうと当てをつけた俺は、服から大体の肉体の位置を予想し、彼女をお姫様抱っこする。

おんぶは流石にできないし、抱っこや俵担ぎはなんか違うし、初対面の人間にやられるのは嫌だろうけど我慢して欲しい。

 

「ふえっ!? えええええぇっ!?」

「医務室に行かないとだろ。助けて終わりってのは違うし、助けたからには最後まで面倒を見るよ。さて、と。すみません通りまーす! 怪我してるので通してくださーい!」

 

俺が一方的に喋るだけになっていて、言葉を発せず反応しかしないのだが、諦めたのか素直にお願いすることにしたのか首に手を回される感覚があった。

見えないけど。

それはそうとして、俺が怪我人がいることを伝えたからかみんな開けてくれたので有難いことだ。

やっぱり名門である雄英を受験してるだけあって、こういうところはしっかりしてるのだろう。

いい人たちでよかった。

 

 

 

「なんだあいつ…どんな”個性“なんだ?」

「あれ今、人を抱えてたよね?」

「怪我人って言ってたよな。確かに服が浮いてたような」

「そういえば私もあの人に助けてもらったよ」

「ああ俺も。でも横取りはされなかったんだよな」

「何が目的なんだ…? 合格しにきたんだよな?」

「じゃなきゃ最初に飛び出さないだろ……」

「よく分からないけど、すげぇやつだというのは分かった」

 

 

 

 

俺も人にぶつかったらその人を吹き飛ばす危険性があるため、人を抱えていることと通ることを大声で伝え続けながら医務室へ一直線に走っていった。

流石に怪我人を抱えてるので、力はセーブしたけど。医務室に居た先生に預けてきたので、問題ないだろう。

名前も姿も知らないが、互いに合格してればいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待ってくれていた幼馴染たちと一緒に帰る際に聞いたのだが、どうやら0Pは二人も倒したらしい。

爆豪はやるだろうなと思ってたけど、出久は無視すると思ってた。

理由を聞いたら瓦礫に挟まれてる子がいたと言っていたので、納得。

俺も倒したこと話したら、特に意外そうにされることもなく納得されたが。

俺をどういう目で見てるんだこいつら。

 

ちなみにどんだけ倒したかについては話してなく、結果が分かるまでは言わないというのは受験前に決めていたことだ。

誰が一番上なのか、勝負だからな。

はっきりいって俺は合格ラインを狙ったので、首席は二人のどちらかだろう。俺半分以上援護してたし。

せいぜい50Pいってるかくらいだろうな〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後。

いつものように修行を続けて帰ってくると、雄英から封筒が来ていた。

何か音が聞こえたので封筒を傾けたら機械が出てきた。

なんだこれ。投影機器?

思わず壊しかねないからやめて欲しいのだが、それらしき部分を手加減しながらタップすると。

 

『私が投影された!』

 

筋肉隆々の、俺でも知っている大男が投影された。

オールマイトじゃん。あれ、なんでオールマイト?

 

『色々と疑問はあるだろうが、あいにく撮影時間が押していてね。手短に説明すると、今年から私も雄英で教鞭を取ることになることになったということさ! では、時間も押してるので早速本題に入らせてもらおう!』

 

オールマイトが教師にか……なんだか全然想像出来ないけど、出久や爆豪にとっては嬉しいことかもな。

俺はオールマイトは唯一知ってると言ってもいいので好きではあるが、俺の中では師匠が一番だからあの二人よりかは熱はないんだよな。

 

『さて、不安を取り除くためにもまず結果から! 拳王技 界少年! 君は大きく差をつけて首席合格だ!おめでとう!』

 

あ、そんな事考えてたら合格していたようだ。

しかし首席か……俺としては爆豪か出久が首席合格していると思っていたので、驚きだ。

 

『筆記試験は所々ミスは見られたが文句なしの合格!だが聞きたいことはこっちだろう? 実技試験! 敵ポイントは59! なんと3位だ!』

「あー負けたか。だよなぁ…途中から倒してなかったもんな。ん?」

 

結果を言い渡され、負けたことに悔しさを感じない訳では無い。これくらいで十分だろと慢心したのが原因だ。

しかしさっきの言葉を思い出して、俺は違和感を覚える。

なら、なぜ俺が首席なんだ?

 

『なぜ3位なのに首席なのか、疑問に感じることも尤もだろう』

 

いやさらっと人の考え読むのやめてくれないか。通話されてるだろこれ。

 

『HAHAHA!通話はされてないヨ!説明の前にこのVTRをどうぞ!』

「え?」

 

いや返事してないかと言いかけたところで、オールマイトの姿が消え、映像が一転。

どこかの部屋が映され、そこには見覚えのある服が浮いていた。体操服…。

あれは、俺が助けた女の子か。

 

『彼女、手当が終わって直ぐに直談判に来たらしくてね』

『あ、あのぉ〜…逆立った黒髪の男の人、えっと濃紺色のアンダーシャツを着ていたと思うんですけど……分かりますか? その人に私のポイント分けることできないかなって…』

『誰も私に気づかない中、その人だけは気づいてくれて! でもそのせいで私の分までロスしちゃったから……!』

 

別にポイントが欲しくて助けたわけじゃないのに、自分も雄英を目指して受験しに来たはずなのに、ポイントを分けられないかなんて提案しに行くなんて普通はできない事だ。

そのままラッキー程度に思ってればよかっただろうに、義理堅いとでも言うべきか…いい子なんだな。

 

『本当はまだ話してないことなんだけどね。心配しなくても彼は無事に合格ラインに達している。それは気持ちだけ頂いておくよ』

『そ、そうですか……よかったぁ…』

『ただし、このことは内密にね』

『は、はい!ありがとうございました!』

 

そんな会話の後、影響が戻ってオールマイトが再び映像に出される。

パソコンみたいにフルスクリーン見たいな感じにしてるのか…というか人の個人情報……。それと対応してた人、雄英の教師ってことはプロヒーローなんだろうけど…ところ天の助みたいな見た目してるな。

そうじゃなくて、あの子不安じゃなくなったみたいだしいいか。

 

『先の入試、見ていたのは敵ポイントのみにあらず!人救けした人間を排斥しちまうヒーロー科などあってたまるかって話だよ! 力よりもヒーローに一番必要なもの! 人を救わんとする意思も見ていた!』

 

まさか、と頭に過ぎる。

可能性は考えてなかったわけじゃなかった。ヒーローの名門校なら仮想敵を倒すだけがポイントの全てじゃない可能性はあった。

説明会では明かされてなかった部分。

本質を見るために隠していたと思われるそれは。

 

『レスキューポイント!しかも審査制!我々雄英が見ていたもう一つの基礎能力!! 拳王技 界少年100ポイント!おまけに自己犠牲の精神を持った透明な少女は20ポイント!

キミは合計159ポイントのぶっちぎり合格だ!!』

「嘘だろ!?」

 

流石に驚かざるを得なかった。

なんだそのインフレ!? 倒した数のほぼ倍なんだが!?

あ、もしかして0ポイント倒したのがデカかったか? それにあの子はついでに貰えてたのか。普通なら合格がかかってるのに渡そうなんてしないもんな…雄英はちゃんと見てるのか。

あの行動も、勇気があるものだ。自分の将来を捨てるほどの覚悟だっただろうからな。

 

『実は恥ずかしいことなのだが、あの時現場の先生も気づいてなかったみたいでね。彼女が言っていた通り誰も気づかない中、キミだけが気づいて真っ先に駆けつけた。なおかつアフターケアもばっちりときた! 改めてここでお礼を伝えたい。ありがとう!』

 

前言撤回。

それは安全性でどうかとは思ったのだが、他の受験者もパニックになってて見る場所も増えていただろうし俺も”気“を感じ取れなかったら気づかなかったので本人にとってはたまったのじゃないが仕方ない部分でもあったのだろう。

結果的にだが、わりかしピンチで俺が居て良かったと思う。

もし居なかったら…考えたくもない。

 

『最後にそういったことを含め、我々はキミに一つの待遇を用意した』

「ん?」

『本当は合格人数は限られているのだが、あまりに一人だけ突出しすぎてね…特別枠として特待生という形でキミを迎え入れたいと思う! と言っても、学費の免除などを除き、形だけのそういった体というものさ。まだ少年のキミに話すものでは無いのだが、大人の事情っていうやつなのでこればかりは納得してもらいたい。それに安心して欲しい。そういった枠を作っただけなので他の受験者たちとは何ら変わらないぞ!不正でもなんでもなくな!』

 

特別枠となるものを用意されてしまった。

学費の免除はバイトのお陰でなんとかお金があるとはいえ正直助かると言えば助かるのだが。

つまるところ、俺はやりすぎてしまったらしい。

首席合格ではあるが、普通に目立ちすぎたため雄英側が考えて対処したと見るべきか。”無個性“なのにあんなことしたらそうなるよなぁ…だから『かめはめ波』は使いたくなかったんだけど……。

結果的に彼女を救えたので後悔は何一つないけどな。

まぁ結局は合格は合格なので、なんでもいいのだが。首席も正直爆豪か出久に譲ってもらってもいいけど、怒られるから絶対言わないでおこう。

爆豪に関しては絶対爆殺されてしまう。

 

『来いよ拳王技少年!君のヒーローアカデミアに!!』

 

プツンと音を立てて、空間に投影された映像は消えた。

…確かに話からしてオールマイトがやって正解だったのかもしれない。

汚い話だが、ナンバーワンというのは知名度が凄いのだ。知らない人は居ないんじゃないかというくらい。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから出久と爆豪からも連絡が来て、出久は3位。爆豪は2位。

俺は1位だと伝えたら、二人とも、主に爆豪が悔しがっていた。

なんなら通話だったのでうるさかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

雄英高校のとある一室、そこにはたくさんのモニターが設置されており、そこには複数の人間がそれを見ていた。

雄英の教員であるプロヒーローたちだ。

 

「実技総合成績が出ました!」

「二位は敵ポイント77と一番高い上に救助ポイント45で122ポイントとはな!しかもあの0ポイントすら倒してる」

 

モニターに映し出される試験結果に、雄英教師陣たちは感想を口々にする。

まず、関心が集まったのは敵ポイントが一番高い爆豪だった。

 

「1Pや2Pは標的を捕捉し近寄ってくる。後半他が鈍っていく中、派手な”個性“を出し続けて目立ち、迎撃し続けた。タフネスの賜物だ。それに一見自分本位に見えて周りがちゃんと見えている」

 

最初から最後まで体力を切らせず、終わってもなお体力に余裕があった。しかも他の人達に目をやり、危険が迫ったら助けてなお、だ。

それから0ポイントすら倒したというのに、終了後も息を切らしていない。

 

「そして三位の子は同じく0ポイントを撃破。敵ポイント60に救助ポイント60で120…二位とは僅差ね」

「だが最後に見せた高い機動力とパワーには伸びしろを感じさせたものがあった。恐らく”個性“の限界があって最初からは使えなかったのだろう。なにより被害が出ない方に倒すということをしているのは大きいな」

 

次に注目を集めたのは出久だった。

高い機動力で駆け回り、危うい人を見つけては援護して自分のポイントを稼ぎ、0ポイントの撃破においても二次災害を起こさせない動きだった。

 

「それよりよ…そろそろ現実みねぇか?」

「1位の子ね……敵ポイントは2位に比べれば少ないけれど……」

「チュウバンカラタオスノヲヤメテイタナ」

「間違いなく、我々が用意していた()()()()()()に気づいた動きだったのさ」

「それに恐らく他の受験者のことを考えた行動でもあるみたいだけど」

 

映像に映し出されたのは界のものだった。

最初のスタートダッシュを切り、拳に白い”個性“らしきものを纏って殴ったかと思えば、次からは何もせずに拳や足だけで1Pも2Pも3Pの仮想敵を壊し、ちょっとした怪我で済むレベルになってるとはいえガトリングと同等の速度で放たれるゴム弾を全弾キャッチするという人間離れした行動。

さらに残り5分間全ては倒すことも無く、空中に浮いたり高いところに着地しては手から()()のモノを発射して他の受験者たちの援護しかしていない。

間違いなく()()()()()()動きだ。

一見身体能力を強化する増強系に見えて、身体能力では説明出来ない動きがふたつ。

球状の攻撃と空中に浮くというもの。

 

「ですが”個性“が不明瞭すぎませんか。サポートアイテムを身につけているならまだしも、付けていない。仮に()()()*1だとしてもあまりに”個性“が違いすぎて合理的じゃない」

「それが…”個性届“には”無個性“だと書かれているね」

 

衝撃が走る。

映像の向こうでは、ちょうど()()()()()()に誰も気づかずに逃げている中、一人だけ気づいて駆け寄っていたところだ。

そう、誰も気づいてないのに彼だけは気づいていた。

勘でも何でもない。迷うことなく、だ。本人も見えてないと言っているのに。

それから警戒を怠らず常にロボの位置を把握しながら会話を手短に済ませ、自身の体操服を脱いで渡した後は注意を引くように()()()()()()()()()()()()を出して0Pを撃破。

なおかつ爆発によって残った部品を円球の弾を次々と撃って落とさずに全て空中で片付けて試験は終わっている。

そのあとは服を着たお陰で分かりやすくなった透明の女の子を抱えて、医務室に連れていくというアフターケアもしていた。

情報把握能力と機動力、冷静な判断力、純粋な戦闘能力。

全てにおいて()()()()()()()はあるが、そんなこと到底”無個性“が出来るようなことでもなく---

 

「自覚してないだけでは?」

「ソレニシテハ、ツカイナレテイル」

「土壇場で出来るものではないですね」

「明らかに出来ることを分かっている動きだものねぇ…」

 

しかし論より証拠というもので証明されてしまっているため、気の所為でも幻覚でもなんでもなく、現実だ。

敵ポイント59。救助ポイントは審査制で自分たちがリアルタイムでやったとはいえ文句なしの完璧な対処と5分間の援護によって100ポイント。

計159ポイントで二位と三位に対して30ポイント以上も差をつけている。

 

「…彼は、本当に”無個性“らしいです」

「オールマイト、キミは知っているのかい?」

「ええ、一度彼とはヘドロヴィラン事件の際に会いまして。その時に”無個性“だと隠さずに言っていましたし、幼馴染らしい二人も否定してませんでした」

「なら本当に”無個性“ってこと……?」

「おいおい、これで本当に”無個性“なら”個性“が霞むじゃねーか!一人だけ世界観間違えてると言われても不思議じゃないな!」

 

そんな中で、唯一知っているオールマイトは声を挙げた。

オールマイトは彼の幼馴染から直接聞いているし、本人からも聞いている。それにその目で見てきた。

オールマイトほどの人物が言うなら、間違いないのだ。

 

「謎は多いね。けれど、だからといってそれを理由に彼を落とす訳には行かないのさ」

「ええ、確かに彼の持つ”力“は異端でしょう。もしかしたらいずれは私をも超えうるヒーローになるかもしれない。だが!私は彼が友のために動ける人間だと知っている! 校長先生。私は彼の入学についてむしろ進めるべきかと」

「そうさ。彼もまた立派なヒーローの卵。彼はちゃんと試験を突破して見せた。ただ”無個性“でありながら他の子達同様通常通りに入れてしまえば不正だの裏口だの謂れのない噂が立つかもしれない。それほどまでに”個性“の有無は強く影響する」

「そこで私の権限で特別枠の特待生なるものを作っておいたのさ!特に調べたところ彼は()()()()()()()()()()()()()

彼としても学費免除は助かるだろうし、我々としても逃したくはない。どうかな、異論はないかな?」

 

”結果“というものを出している以上、誰も異論なんて出来るはずもなくこうして界は校長の計らいによって無事に雄英に合格出来たことを知るのはこの場にいた雄英教員のみである。

それにあれほどの強大な力、もしヴィランにでもなれば。

ヒーロービルボードチャート上位陣やチームアップ要請して対処。もしくはオールマイトが出向くほどの強敵になる可能性すらある。

そういった意味でも監視する意味が込められていて。

何よりオールマイトと根津校長はもし彼がヴィランになった可能性を考えてしまうと記憶にある『最凶の敵』が思い浮かんでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

*1
発動型、変形型、異形型の三つの内二つ以上の特徴を併せ持つ系統。

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