無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ? 作:絆蛙
何故か連れて行かれることになったので何時までも引き摺られてたら通行人に誤解されてもアレなので諦めて手を繋ぐ形でパトロール兼目標を探る仕事をする。
俺とねじれ先輩は離れた方がいいんじゃないか、とは思われるかもしれないが、俺とこうしている方が”個性“のコントロールがより良くなる……らしい。
本人談なので俺には分からない。
本人がそう言ってるならそうなのだろう。手を離したら何故かすぐに手を取られたし、嫌じゃないならいいかと諦めた。
それはそうとして、唯一俺も知っていることはある。
俺が”気“を同調させ続けてるため、実質ねじれ先輩は俺の”気“が尽きるまではデメリットを消した上で無限に”個性“を使用出来るチートに変わるということ。
しかも威力も低燃費で一気に跳ね上がるし、俺自身も消費自体はそんなしないのでメリットしかない。
戦闘においても相性が良いから威力やら速度やらなんやらと互いに補助が効くため、実は俺が知る中では一番コンビとしては良い相手だ。
次点で互いによく分かっている幼馴染コンビ。ただあの二人だと共闘って感じだからサポートって感じではない。
共闘するならあの二人もいいんだけど、ねじれ先輩ってなんか知らんけど俺の動きやけに分かってるんだよなぁ。本人に聞いても不思議としか返ってこない。
俺が不思議だよ。
「ねえ、界くん。聞きたいことがあるの。聞いてもいい? エンデヴァーと戦ってたよね、その怪我もそれが原因? 酷い火傷。体育祭のあの二人も凄かったけど、怪我の具合からそっちじゃないよね? そっちは治ってるみたいだもん」
「まだ何も言ってないですけど、そうですね。ただ友人の家庭事情でもあるのでねじれ先輩には話せませんよ」
やっぱりこの人も気づいていたか。
三人くらいにはバレてるだろうなぁとは思ったが。
にしたっておかしいな、エンデヴァーの家でやったことだし、ホークスさんや何かと目にかけてくれるナガンさんと違って、少なくともねじれ先輩は県と県を跨ぐくらいは離れていたはずだが……いやまあ、あんな大きい”気“でぶつかってたら気づける……のか?
怪我の具合までバレてるのは驚いたけど。
ねじれ先輩の”個性“は”波動“で自身の活力をエネルギーに変換するというもの。
”気“と似てるなということで色々と話し合ったり実験した結果、彼女は俺にもよく分からない”波動を感じる“とかいう技術を身につけた。
そのため彼女は俺が知る中の『この世界』の住人で唯一俺を探知出来る人。随分前の話だが俺が”気を消す“ということをしても見つけてきた時の衝撃は今でも忘れられない。
それどころか俺が発した”気“を逆探知出来るらしい。普通に意味が分からない。お陰で対策出来ないから諦めた。
戦ったら逆探知されてぶっ飛ばされた記憶ある。上から反撃しようとしたら動きが何故か読まれたし。
彼女が隠そうとしたら俺も見つけるのに時間が掛かるし、かくれんぼでは相性最悪だ。改めて入学してすぐにこの人がクラスに来なくてよかったとすら思う。こんな美人な人が入学してすぐに俺と話してるところを目撃されたら噂が流れかねないしな。
俺に迷惑がかかるのはどうでもいいけど、この人には幸せになって欲しいとは思ってるし。
ちなみに波動を感じるってのは俺で言う”気の探知能力“。
ただ違うとしたら俺は何処かに触れなくちゃいけないが、ねじれ先輩はその人が抱く感情や考えを見抜く力に長けているようで一定の距離だと解るようだ。基本はOFFにしてるとか。
スゴいとしか言いようがないな。ついに超能力にも手を出し始めたようだ。それとも好奇心旺盛の部分が”個性進化“の鍵となったか。
俺の考えも割と読まれるしな。というか。
『界くんの場合だと距離関係なく分かるよ?』と言われた時はマジで理解不能だった。なんなら今も分からない。なんで?
考え自体は幼馴染も読んでくるから俺がわかりやすいのか?
確かに嘘は下手かもしれないが、考えまで分かりやすく出てるとは思いづらい……。
「うん、分かってるよ。ただ心配だったんだ」
「心配、ですか。俺の実力は先輩たちがよく知ってると思いますけど……」
「そうだね。体育祭を見て、こうして会って見たら前会った時に比べてとっても強くなってる。界くんが元から強いことも私は知ってる」
体育祭が結果として残してくれたが、俺の実力はこの世界ではかなりのもののようだ。
師匠と比べればまだまだ弱すぎるのが問題なんだけどな。
「でも心配しないわけじゃないんだよ? 通形もいつも通り振舞ってたけどUSJの時やエンデヴァーと戦ったって話を聞いて心配してる。天喰くんも心配してたし、私も気持ちは同じ」
「それは……すみません」
「ううん謝らないで。ヒーローを目指す以上何があっても可笑しくないでしょ? だけど心配してる人が居る。それだけはちゃんと頭の中に入れてて欲しいな。絶対なんてないんだから、ね?」
「……はい」
姉が居たらこんな感じなのだろうか、と思うくらいに優しげな声で頭を撫でながら諭してくれた。
正直、約束出来ないのが本音だ。俺は俺の目指す目標のためなら自分のことならばいくらでも無視して突き進もうとするだろう。
師匠を超えたいという想いは人生の目標ではあるが、強くなりたいのは紛れもない俺自身が抱いているモノ。
そもそも”界王拳“そのものが危険すぎる技でしかなく、だから封印していた。
雄英に入ってからは制御も上手くなってきたからある程度なら問題なくなったが、今まで使用したのはせいぜい2倍〜3倍まで。
過去に全開にしたことはあったが、あれはそうしなければあの世に逝っていたからだ。
今の俺はきっと、20倍の壁をどうにかして超えようとするだろう。
まだ方法こそ思いついてないが、地球人でありながら”無個性“の俺にはこの技こそ一番の近道だからな。
ノーマル状態の強化も大事だが、劇的に強くなるわけじゃない。それならついでに一緒に上げるようにした方が効率も時間も良い。
ただ最近は怪我ばかりだ。USJでは命を落としかけたし少し反省しなくちゃならないかもな。
……出来るかはさておき。
「……それが言いたかっただけっ。それで、それで? やっぱりエンデヴァーは強かった? 界くんから見てどれくらいだった? 私だったら厳しいかな?」
果たして俺の考えが読まれていたのか、それとも顔に出ていたのか。
ねじれ先輩が僅かに悲しげにしたような気がしたが、気のせいだったのかもしれない。
今となっては分からないけれど、話題を変えるように仕向けてくれたので俺は素直に乗ることにした。
「……。どうでしょう。前のエンデヴァーならば勝てたかもしれませんけど今のエンデヴァーはバグってるみたいですし、少なくとも全力の、殺す気で放った技が押し返されるほどの火力はありましたね」
「えーっ! 界くんが? 確かに”強い力の波動“は感じたけど、直接見てみたかったなぁ。流石No.2のヒーローだね。でも急激に高まったのはなんでだろ、不思議! 界くんが戦った緑谷出久くんと爆豪勝己くん……だっけ。その二人も急激に強くなってたよね、1年でここまでやるんだって思っちゃった!」
「そういうねじれ先輩もやけに強くなってません?」
「えへへっ、そうかな?」
改めてじっと見つめる。
可愛い---ではなく。いや可愛いとは思うが、”気“がとんでもない事になりかけている気がする。
俺や師匠とは別の感じ方というか、なんて言えばいいか分からない。
少なくとも分かることは。
「半覚醒してますね、何かありました?」
この人は昔の俺と同様に
ここまで来りゃ無意識に感じ取るくらいはしてる可能性が高いな。
俺は”気を感じる“ということを知らなかったから”圧力を感じる“と別方向だったが、ねじれ先輩なら”波動を感じる“と頭が無意識下に潜在意識として入ってる可能性がある。
こればかりは本人に自覚してもらうしかないし、俺に教えられるのはせいぜい瞑想か死にかけ状態を繰り返す死と生の狭間を行き来する程度だけどそんなことは彼女にはさせられないし……ただ体が大して鍛えてなかった俺と違ってねじれ先輩は肉体的には問題ないだろう。
彼女はドンパチする戦闘スタイルじゃないからそれほど鍛える必要性は皆無だし、”個性“持ちの場合”気“がそっち方面に行く可能性もある。
こればかりは覚醒してからじゃなきゃ何とも言えない。
なにぶん、前例がないからな。
「ん〜何かね、夢を見たんだ。とっても不思議な夢!知らないはずなのに知ってる声が聴こえて、自分の始まりを、
「
「ちなみにね、通形も天喰くんも見たみたいなんだよ! しかも同じ日! 偶然だよね、凄いよね! それから不思議と自分の中でビビッ!と来てね、”個性“の制御や扱いが信じられないくらい出来るようになってたの!」
「なるほど……やっぱりそういった現象が起きるようになっているのか……」
「知ってるの?」
「あくまでこれは俺の予想ですけど……」
ねじれ先輩にも俺の立てた推察を伝えると、ねじれ先輩は口に手を当てて考えていたが、数秒後には分からないという結論を出したようだ。
恐らくビッグ3の三人も出久たち同様、平行世界から継承したと見るべきだろう。
でもいつだ? 何故急にこんな現象が起きるようになり始めた? 始まりは一体なんだ……?
条件は『
師匠がスーパーサイヤ人2になるに必要だったもの……例えば”戦闘力“とか……。
あとは出久や爆豪も別のことを考えたと言っていたな。じゃあ……。
「もしかして強くなりたい以外にも何か考えたりとか強く想ったりしてませんか? それが重なってそのようなことになったのかも」
この現象に関しては俺が知っている中ではまだ少ない。
もしかしたら知らないうちに他のプロヒーローとかヴィランにも起きてる可能性はあるが。
ただ強くなりたいという想いだけで強くなれるならこの世界の人達はとんでもないことになっているはずだ。何か他にも条件があるはず。
というか”戦闘力“も”
なんならこの世界で一番想ってるのは俺ではないだろうか。みんな師匠を知らないだろうし。
妙に納得行かない気持ちを宿しつつもさっきから珍しく静かだなと思って思考を切ると、何故かねじれ先輩はピシッと固まっていた。
「あ、あの、ねじれ先輩? 大丈夫ですか……?」
手を振っても反応が無ければ流石に心配になる。
近づいて見ると、ハッと気がついたようで。
「なっ、なんでもないよ。大丈夫! 気にしないで! ね!」
「そうですか……」
顔を赤くし、何度か目を彷徨わせた後、何処か焦るように言葉を紡いでいた。
それからねじれ先輩は両手で顔を扇いでいる。
まぁ知られたくない想いも人にはあるからな。
無理には聞かないでおこう。
結局は分からないままで、条件が整えば覚醒すると分かってりゃ十分だろう。
「ね、次行こ、界くん!こっちこっち!」
考えても仕方ないので、特に妖しげな気配一つ感じなかった俺は大人しくねじれ先輩に引っ張られていく。
全くと言っていいほど探知に引っ掛からない。本当に”気“を使うのだろうか。
使ったなら俺が気づかないはずないと思うが、サポートアイテムや”個性“とかで防げる可能性もあるから何とも言えないな。
なんたって世界総人口の約八割が何らかの特異体質となっている世界だ。ほぼ無数の能力が世の中に跋扈している。どんなものがあったって不思議じゃない。
本当は”予知“で視ることが出来たら手っ取り早いんだけど、対峙してる未来がなけりゃ不明瞭だしなぁ。誰が戦うかも分からないし、勿体ないだろう。
これは長い戦いになりそうだ、と俺はやけにガンガン進んで全然顔を見せることすらしてくれない先輩の後ろ姿を見ていた。
手は変わらず握ってるけど。
ただ耳が真っ赤な気がするのは日差しのせいだろうか。
うーん、そうなると日光を遮断出来るように”気“を上手く弄ってあげた方がいいかな……慣れてる俺は真夏でも問題ないけど、ねじれ先輩が熱中症になったら大変だしな。
ただ闇属性みたいな感じのって”善の気“の俺だと厳しいんだよな。”悪の気“
を使えたら簡単に暗雲作れるが、どちらかというと俺のやつって属性に変換したら『光』だし。
暗く出来たりとかしたらダークシャドウを強化出来たのにな、残念。
俺にはバリヤー程度しか無理だ。
昼過ぎ。
結局あれから探しても見つけることは出来ず、ヒーロー殺しすら見つけることが出来なかった。
チンピラみたいなヴィランは居たのでねじれ先輩と一緒に軽く伸しておいたが、やれたのはボランティアと軽い掃除程度だ。
今この場に居る周辺をねじれ先輩と分担して深く探ってみるが、特に異常は見られない。
どっちかというとやっぱり夜だよな。一応でやってるけど、夜の方が隠れやすいからな。
「この辺も外れですね、暴れてるヴィランも特に居ないみたいですし」
「だね〜。う〜ん、上空から探してみる?」
「ねじれ先輩は大丈夫ですけど、俺は多分ダメかと。俺なら走って追いつけると思うので、もしアレでしたらねじれ先輩だけでも……。別行動してもねじれ先輩なら俺の位置分かるでしょうし」
「あ〜他の人から見たら”個性“にしか見えないか〜。うーん確かに私なら何処でも分かるけど……リューキュウに頼まれてるし一緒に行動した方がいいかな」
「そうですね……ん?」
今なにかおかしかったような気がするぞ。
あれ、俺がねじれ先輩を頼まれたんじゃなかったっけ。逆だったっけ?
「それに知ってる? 界くんって有名人なんだよ、一人にしたらナンパされちゃうよ。そんなの絶対ダメ!」
「そこに関しては無いと思いますけど!? 確かに体育祭の効果か度々視線は向けられてますけど……。それを言えばねじれ先輩もでしょ。ビッグ3の三人で1位〜3位全獲りしてましたよね?」
「それはそうだけど、やっぱり一年生であれだけ暴れてたら話題性としては界くんたちの方が高いんだよ? 界くんここまで歩いてきてかなりの人に視線向けられてたもん。私知ってるんだよ! しかも男女共にいっぱい向けられてたもん!」
「いやいやあれはねじれ先輩に向けられたものかと……」
「え〜そんなことないよ〜界くんだってば!」
ミスコンに出て最後まで残るほど評価されてるのが彼女だ。
方向性の違いで負けてしまったらしいが彼女の魅力を全部引き出せば優勝は間違いないだろう。
そんな美少女とも言う人が歩いてるんだから注目されるのは必然だ。むしろナンパされるとしたらねじれ先輩じゃないか。
俺が居る時にナンパするような奴が居たら物理で反省させるが。
ただこの人の中で俺は一体どういう扱いになっているんだ……。
「うん。やっぱり絶対一人で行動はダメ! 絶対ぜ〜ったいナンパされちゃう! 先輩として界くんを守る責任が私にはあるの!」
「それ言われちゃ何にも言えませんね……」
「うんうん、ということで〜はいっ!」
何がということなのかは分からないけど、手を差し出される。
迷子の子供じゃないしねじれ先輩なら俺の存在を探知出来るから必要ないと思うのだが……まぁ何処かに触れてた方が同調させやすいのも確かだろう。
改めて手を取ると、離さないとでも言いたげに強く握られた。
この程度の縛りプレイなら問題はない。
いや敢えて片手を封じることで修行になるか。もしかしてそのために……?
俺としたことが強さに対して貪欲だと思っていたのにまだまだのようだ。
ねじれ先輩に教えてもらってしまった。
敢えて口に出さず何度も手を繋いでいたのは俺が答えを導けるようにヒントを出してくれてたってところか。
今日の俺は冴えているかもしれない。結果は出せてないが。
「……ねじれ先輩?」
なんだか力が強まった気がする。
じっと見つめたら顔を背けられた。
もしかして気づくのが遅すぎたのか。まさかここで試されてるなんて普通は考えないだろう。
いや……俺なら気づくとねじれ先輩は思ってくれてたのか。
それは本当に申し訳ない。
このことは胸に仕舞うとして、今は話を変えるとしよう。
「ねじれ先輩、とりあえず調査の続きを--」
ぐぅうううううううう
「…………」
「…………」
腹が鳴る音が響き、俺は無言で自分の腹を見た。
うーん、見事なまでに空腹。
想像以上に音が鳴ったな、どうしようこの空気。
「……んんっ。お腹空いた? 空いちゃったかな? この時間だもんね、そろそろお昼にしよっか! ちょっと過ぎちゃったけど休むこともヒーローには必要なことだしちゃんとお腹に何か入れなきゃね。また今みたいにお腹鳴っちゃう! それに私もお腹空いてきたんだよね〜!」
「……なんかすいません」
「どうして謝るの? 全然気にしなくていいのに。それに私、界くんと一緒に食べられるって考えたら嬉しいな! 普段は学年が違って食べれないからね。それに可愛いなあって思ったよ?」
気を遣わせてしまった……いやこれ本当にそう思って言ってきてるなこの人。
そう言ってくれるのは嬉しいが、本当に純粋な人だ。
まぁ何か言われても空腹は生理現象としか言いようがないので恥じらいなんて何一つ出てこないけど。
ただ可愛いってのは違う気がするが。