無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ? 作:絆蛙
音速を超えたのは良いものの、正確な場所は把握出来ない。
どうなっている? 俺の探知が上手くいかない……いや何かに邪魔されてる?
さっきまでは普通に出来たはずだ。誰かが裏で暗躍しているのか。
ピンポイントで俺だけを妨害出来るとは思えない。
ならこんなこと出来るのは保須全体?
となると個性つーよりも……”魔術“とかか? 師匠がかつて戦った中でそれを扱えるやつが居たはずだ。なんか魔法っぽいこと出来るらしいし。
どちらにせよ出来ないなら出来ないなりに探すっきゃない。
ひとまず飛びかかっていた近くに居た栽培マンを轢いて通り過ぎる。
風圧で何体か吹き飛んだけど、後は任せて大丈夫だろう。にしたって俺が戦った個体より弱っちいな。チビ栽培マンって感じ。
銀と黒のやつは強かったが、アレだけ例外だったのだろう。
なんて考えていたら、僅かに強い気を感じる。
どうやら遠すぎる相手が無理なだけで近い気なら感じられるようだ。
……いや待て、この気はもしかして。
加速を弛め、曲がり角を曲がる。
「っ……! 拳王技?」
「やっぱ轟か」
急に出てきたからか轟は全速力で走ってたようでブレーキをかけていたところだった。
慣性によって完全に止まりきることは出来なくて摩擦力で減速していた。
浮いている俺には当たらないので問題ないのだが。
「エンデヴァーは?」
「脳無の相手だ。俺も変なやつとは戦ったが、緑谷から位置情報が送られてきたからな。どう思う?」
「俺も似たもんだ。ま、十中八九応援を呼べってことだろ。だけどプロはどこもかしこも人手不足だ」
「だろうな。とにかく急ぐしかねえ」
「そうだな。ってことで俺は先に行くが……轟は応援を頼む」
「いや……待ってくれ、俺も一緒に連れて行ってくれないか?」
ここは俺が行って、轟が応援を呼んでくる。
それが一番良いと思ったし轟も乗るかと思ったのだが、予想外の言葉に目をぱちくりと瞬きする。
昔のこいつならまだしも、今のこいつなら冷静にそう判断すると思っていたからだ。
「迷惑はかけねえ。応援ももう呼んでるんだ。勝つにせよ逃げるにせよ時間を稼ぐにせよ二人居た方がいいだろ?」
「そりゃ……だけどな」
「それにさっき拳王技も言ってたろ。人手不足だってな。応援がすぐに来るとは思えねえよ。頼む、緑谷には恩があるんだ」
「…………」
さあ、どうするか。
はっきり言って速度だけなら俺だけで行った方がいいし速い。
虱潰しで行くつもりだったし。
ただ……轟の目は真剣だ。
真っ直ぐで何かに囚われてるわけでもない。
俺もなんか探知が上手くいかないし、スマホを見ながら進むことは出来ないからな。
早く見つけるには道案内は必要、か。何よりネロってのが居るんだったら戦力は多い方がいい。そっちに集中しなくちゃならないとなるとヒーロー殺しの相手が疎かになる危険性もあり、ヒーロー殺しを任せる戦力として誰かは必要になる。
通形先輩やナイトアイとの合流も無理らしいし仕方ない……か。
「分かった」
「! いいのか?」
「ああ。ただ気をつけろよ、出久が何も送信出来なかったってことは恐らくヒーロー殺しだ。あいつがそれほど警戒する相手ってことになるし打つ暇がなかったとも言える」
「分かってる。大丈夫だ、自分の身は自分で守れる。それに……今の俺ならお前らにも近づいているはずだ」
「……へえ」
確かに知らん間に”気“は大きくなっているようだ。
戦う意思を見せたから上がったんだと思われるが、こいつもしかして覚醒”“したのかよ。
だったら心配は必要ねえか。
「……道案内は任せたぞ」
「分かった。……拳王技?」
「動くな。こっちの方が速い」
ここでいつまで話しても仕方ないため、俺は着地すると轟に近づく。
急に近づいたから不思議そうに見つめてきたため、動かないように言いつつしゃがむと、脚に手を入れて力づくで轟を抱えた。
いわゆるお姫様抱っこという形。
「舌は噛むなよ」
「そういうことか。ああ」
理解が早くて助かる。
轟も持ちやすいように手を回してくれたため、準備は万端。
俺は轟に位置情報の方角を教えて貰いながら目的地へ一直線に向かっていった。
それから俺と轟の動きは迅速だった。
路地裏近くに辿り着いていた俺たちは流石に飛行は危ないため、轟と一緒に走る。
出久がいる場所の路地裏に向かって走っていると視界の先には倒れている出久と飯田、あと知らない一人のヒーロー。
対してボロボロの格好に赤いマフラーと目元を隠す布のマスク、全身の刃物を携帯している。さらに全身が青く、紫と白のオーラのようなものを身に纏っている男性。”気“の性質もなんだか可笑しい気がする。
それと宇宙人みたいな外見をしたローブを来た男。
知っている情報から考えるにフードを被ってないということは取れたのだろう。あれが伝説の殺し屋、ネロか。
状況は芳しくなく、今まさにヒーロー殺しが飯田に刀を突き刺さんとしていたところだった。
「轟!」
「先に行け、拳王技!」
左側から炎が溢れ、ヒーロー殺しを任せるという旨をアイコンタクトすると俺は”気“を全開にして全速力で加速すると、俺の少し後ろ隣で炎が走った。
俺の拳はローブの着た男に直撃するが、手応えはいまいち。
俺の本気、しかも不意を突いた一撃をノックバック程度しか効いてないことに驚きつつ、次なる動作に出る。
拳を振り下ろした体勢から体を回転させ、後ろ蹴りを放つ。
それに対してヒーロー殺しが紫色のエネルギーが纏われた長刀で迎撃しようとしてきたため、そのまま蹴り飛ばそうとするが”妙な気“を避けるため伸ばし切る前にオーラを集中させて蹴り飛ばす。
その判断は正しかったようで余波で周囲の壁にヒビが入った。
随分と硬いが、容赦なく蹴り壊すと弾かれるようにヒーロー殺しは自ら後ろに跳んでいた。
こいつ、体術はかなりのもんだ。
というか、この動き……何処かで見たような……見なかったような……。
「次から次へと……ハァ……今日はよく邪魔が入る」
「今の一撃……速いな」
「緑谷。こういうのはもっと詳しく書くべきだ。遅くなっちまっただろ」
「轟くん……!」
頭の中に引っかかる何かがありつつ、俺は手を着いて三点着地する。
ひとまず何か声を掛けた方が安心するだろう、と俺はいつもの調子で声を掛けた。
「おっす、随分と楽しそうだな。俺も混ぜてもらおうか。安心しろ、二人……ついでにそこの人。ここから先は俺たちが引き受ける」
出久と飯田、あとプロのヒーローらしき人にそう告げ、また敵にそう宣言して見せた。
場所は変わって。
「DETROIT SMASH!!!!」
ハリケーンを巻き起こすほどの一撃が脳無を打ち上げ、超再生を上回ったのか地面に落ちてくる頃には脳無は事切れたように動かなくなった。
「火を操る個性に怪力……それから超再生。やはり裏に居るのはAFOなのか。ひとまず先生や緑谷少年と合流……したいんだけどな!!」
脳無を倒したのはいいものの、オールマイトの耳には悲鳴が聞こえた。
かなり離れているはずで普通なら聞こえないはずが、そこは規格外な上にパワーアップしたNo.1は伊達ではない。
ぶっちゃけここに拳王技が居れば”気“で把握した訳でもなく素で聞き取った姿にドン引きしたに違いない。
「た、助けてくれぇー!」
「イヤッ! 死にたくない……!」
「うわあぁあああああ!」
逃げ遅れた人々なのだろう。
今まさに翼を生やした脳無が襲いかからんとしていたとき。
二つの影が動いた。
「もう大丈夫ッ!私が--」
「心配ない! 俺が--」
来た!!/居る!!
赫灼鉄拳、ジェットバーン!!
TEXAS SMASH!!
風圧と炎。
偶然同じタイミングで放たれた二つの膨大な力が合わさり、脳無を吹き飛ばしながら焼き尽くした。
「あ、あれは……」
「オールマイトだ!!」
「エンデヴァーもいる!」
「た、助かった……!」
No.1とNo.2。
その頼もしさは言うまでもないが、当人たちは互いの技を見てから気づいたようで市民に避難するように大声を挙げてからタイミングよく互いの顔を合わせていた。
「オールマイト……」
「エンデヴァー……君もここに居たのか」
「そういう貴様こそ何故いる?」
「っえ!? そ、それはその、た、たまたまさ!」
OFAのことはエンデヴァーは知らない上に弟子に着いてきたなど言えるはずもなく、滝汗を流すオールマイトにエンデヴァーは察したのかため息を吐く。
「まあいい。居るなら好都合だ。力を貸せ」
「それはもちろんいいのだが……」
(……アレ?)
そう言いつつもオールマイトは違和感を覚えた。
なんというかこう、柔らかいのだ。
ヒーローであるため必要な時に協力を求めてチームアップを組むことはあれど、今までエンデヴァーに言われたことはない。
体育祭と会った時はもっと雰囲気がトゲトゲしいものだったというのに、今は戦いの場というのもあってピリピリこそしているが穏やかになっている。
一体何があったのか。
なんてオールマイトが不思議そうに見つめていると、睨まれた。
「なんだ、その視線は。言いたいことがあるなら言え」
「いや……変わったね、エンデヴァー。なんだか体育祭の時とは違う気がするよ」
「ふん。変わったのではない」
「?」
「
「……そっか。君は前に進んでいるんだな。人を変える……言葉だけなら簡単そうに見えるがとても難しいものだ。凄い人も居たものだな」
「ああ、やつは俺が知る中でお前以上のお人好しだろう」
「へえ、誰かな?」
「言わん」
意地でも話すつもりがないのかそっぽ向くエンデヴァーだが、オールマイトは温かい目で見ていた。
……多分そっぽ向いたのかこれが原因かもしれない。
誰なのか真剣に気になったが、無理強いをしてはよくないだろう。
それに。
「話はほどほどにするとして……」
「うじゃうじゃと湧いてきたか。なんだこいつらは?」
気配に気づいた二人は意識を切り替える。
目の前には大量のモンスターが歩んで、待ち受けていた。
固体が違うのか色とりどりで、水色、オレンジ、緑、黒、ピンクといった種類が何体も居る。
まるで特撮に出てくる戦隊みたいな色合いだ。
赤さえ居れば完璧だろう。
おおよそ二十体以上が存在し、全員が手を翳してきた。
即座に警戒するが、オールマイトとエンデヴァーは驚愕する。
なぜならそれは、自身の生徒でもある一人。もしくは知り合いの一人。
拳王技界が扱う”気功波“だったからだ。
しかし二人はトップヒーローの位置する存在。
オールマイトは拳で。
エンデヴァーは炎で。
真正面から打ち消して見せた。
思ったよりもあっさり消えたことに彼の実力を知るエンデヴァーは拍子抜けする。
(何故拳王技と同じ”個性“をこいつらが使える……?)
(拳王技少年と同じ”気“を使うとは……。彼ならこのモンスターのことも知ってるのかな?)
互いに近い考えを持ったが、考えるのは後回し。
囲むように移動してきたため、オールマイトとエンデヴァーは背中合わせになった。
「足を引っ張るなよ」
「HAHAHA! それは--」
『ギィー!』
一斉に飛びかかるモンスター、もとい栽培マン。
普通であれば一体に対処するだけで精一杯になるのが普通だろう。
オールマイトが栽培マンより早く跳び、エンデヴァーが地面に手をつき、炎柱が発生する。
あまりものの熱さに空中に止まる栽培マンだが、炎柱の中心部に掛けてオールマイトは空気を蹴って加速。
オールマイトの拳が地面にぶつかり、熱を宿した風圧が栽培マンを吹き飛ばす。
--杞憂ってやつさ。
これがトップの力。
若い世代に負けないように、と全盛期すら超え始めた規格外の二人だった。
「流石、と言っておこうか。なぜさらに強くなっているかはよく分からんが」
「それはこっちのセリフだよ。君も随分と火力が上がっているじゃないか。以前の私ならヤバかったかもしれない」
「大事なことを思い出しただけだ。覚えていろ、胡座を掻いてるようならば足元を掬うぞ。貴様をNo.1から俺が引き摺り落としてやる」
「……!」
それは闘志。
”個性“と同じく炎のような闘志が瞳の中に存在し、オールマイトは久しく感じなかった危機感を覚える。
同時に対抗心のようなものが芽吹き。
「それは気を付けなくちゃな」
負けるわけにはいかない、とオールマイトは冷や汗を掻きながら強く思った。
油断していたら足元を掬われかねないと思うほどの脅威となった。
しかしそれは犬猿な仲ではなく、また関係が悪くなったわけではない。
むしろその逆で、少し歪ながらでも
「とにかく俺は先に行くぞ。焦凍が緑谷出久から連絡があったらしくてな、ヒーロー殺しと対峙してるかもしれん」
「え、それ本当?」
「嘘をつく必要がないだろう」
(み、緑谷少年ンンンン!? 私が離れてる間に一体何が!? 確かに君はじっとしていられるタイプではないだろうけれど! まさか件のヒーロー殺しと対峙してる可能性があるとは……! い、急がねば!!)
レベルアップしたとはいえまだ学生。
思わず頭を抱えてしまったが、先を行くエンデヴァーにオールマイトは着いていく。
そんなふたりの目の前で何かが飛んできた。
戦闘態勢に入れば、脳無が壁に埋まっている。
再生がないことから普通の固体のようだが、それでも脳無は脅威な存在である。
土煙から出てきたのは、サラリーマンのような服装をしたメガネを掛けた男性で--
「なっ!? ど、どうして君が……? ナイトアイ……」
「貴方の方こそ、何故ここに……? オールマイト……」
二人からは何か複雑そうな事情がありそうな様子が感じ取られ、空気が一気に重たくなった。
見事挟まれる形になってしまったエンデヴァーはオールマイトと新たに来た男に視線を往復させ、ため息をひとつ零すと天を仰いだ。
(これも俺の罰か……)
--どうやら面倒なことに巻き込まれたらしい、と。
こちらは五人。
相手は二人。
だが動けるのは俺と轟だけのようで、数は五分五分だ。
「お前たちが殺し屋ネロ……とヒーロー殺しステインだな?」
「……」
「そうだ」
念の為に確認したが、やはり正解だったようだ。
しかしネロ……はまだしもステインのアレはなんだったんだ?
脳無の時と似た力は感じられたが……あの文字は読めなかった。Xみたいな感じではあるがどちらかと言うと小文字の
俺の知っている記憶とは違う。
今は元に戻ってるようだが……おおよそ戦意を宿せば変身するやつなのだろう。
似たようなものだと、師匠がかつて戦った相手は額に『M』が浮かんでいた。
ということは魔術師バビ……ビビ……? ビバディ……だっけ。ソイツとは違ったヤツらの仕業ってことか? どちらにせよ魔術による強化で合ってるかもしれないな。
「なら何のためにこんなことをする? 何故ヒーローを狙う?」
「何故、か……。ハァ……愚問だな。その答えは単純だ。ヒーローとは偉業を成した者にのみ許される称号……だが現実はどうだ? この世界にはあまりにも ”贋物“が多すぎる」
「
「それがお前の主張か」
「それは結局自分の独断と偏見だろ……」
誰がそう決めたのか。
轟の言葉も間違っては無い。結局ステインは独断で本物か贋物か判断しているに違いない。
そもそもやり方はもっと他にもあったはずで、こいつが決める権利はない。
「次はこちらが問おう。ハァ……お前たちは何のために力を振るう? 貴様らは贋物か、本物か。どちらだ……」
「そんなの--ッ!」
「贋物、本物ね……くだらねえな」
「拳王技……?」
ステインの問いかけに答えようとする轟を手で制すると、俺はやつの言葉を切り捨てた。
事実くだらないにも程がある。俺の憧れのヒーローはいつだって変わらない。
あの日の師匠のことを忘れたことなど一度たりともない。
何のためか、だなんて答えは変わるわけが無い。
「……何?」
「贋物がなんだ、本物がなんだ? 関係ないな。ヒーローだから人を守る。困ってる人がいるから助ける。力があるから人のために使おうとする。自分が生きていく世界を守りたいから戦う。同じ思いをして欲しくないから戦う。人のため、この世界のため……力を振るう理由なんてそれだけだろうが。
例えそれで不利益を被ることになろうとも、”法律“という”ルール“を破ることになったとしても。贋物だという烙印を押されたとしても。誰かを守るために助けることを禁じられるなんて糞を食らえだ」
「何かが欲しいから戦うんじゃない。何かを得たいから動くんじゃない。人を救いたいから戦うんだ。助けたいから体が勝手に動くんだ。守りたいからそうするんだ。
他人がどうだとか関係ない。
少なくとも俺はそうだし、俺にとってはヒーローも同じだ。だから今、俺はここに居る」
「俺はヒーローも一般人も守るために戦う。--お前が言ってるような本物だとか贋物だとかそんなのはどうだっていいんだよ。俺がどう思われようとも俺がやるべきことはそのひとつしかない」
「--ハァ……」
俺の答えはステインにとって期待外れだったのかため息を吐いていた。
俺の回答が間違っていたのか。
そんなことはどうだっていい。これは俺の紛れもない本心だからだ。
損得なしで人を助ける。
俺がかつて師匠にそうやって命を救われたように、俺も同じようにと---
「く、くくくっ。ふ、ふははは……! 合格だ……!!
ヒーローとは見返りを求めるものでは無い。人を救うことが『手段』なのか『目的』なのか。お前は後者だ……
「お前のような素晴らしい信念を持つ者が現れた今日に俺は祝福しよう……!」
と思っていたのだが、急に笑い声を挙げたかと思えば歓喜に満ちた表情で語り始めた。
その姿に俺は頬を引き攣らせる。
なんだこいつ。ぶっちゃけ引く。
「だが……己より強大な敵を前にしてお前は同じことを思えるのか?」
「ハッ、それこそ愚問だな。相手が強えなら歓迎だ。こっちがそれを上回ればいい。それに--ヒーローが逃げたら誰が戦うんだ。世の中にはとんでもなく強くてとんでもなく悪い奴がいる。例え宇宙を支配するようなやつが相手だったしても。世界を滅ぼす力を持っていても。そいつらに立ち向かう--たった独りでもな」
ヒーローってのはそういうもんだろ。
師匠はかつて仲間や人類が殆ど敵に回り、味方が全く居なくなっても戦った。
新たな姿を手にし、その悪を太陽へと沈めた。
俺も同じだ。
独りになったとしても立ち向かう。どんな悪にだって。
「即答……やはりお前は……良い! ハァ……名をなんと言う?」
「拳王技界--
「いい名だ。その名をしかと俺の
「生きる目的が出来たみたいに言ってるがストーカー宣言されても嬉しくねえよ。気持ちわりいな」
誰が好き好んで命を狙われる可能性のあるやつに好かれたいと思うのか。
俺だけなら気にしないが、こいつ絶対周りを消すタイプだろ。
会話した感じだけどすぐに贋物か本物か確認して斬りかかりそうだ。
「--話は終わったか」
空気が一気に重たくなる。
ヒーロー殺しとネロ。
謎のオーラを纏うヒーロー殺しも厄介だ。
「拳王技……どうする」
「俺が前衛で行く。轟はフォローと三人を頼んでいいか」
「分かった。気をつけてくれ」
「ま、待って! 界くん、轟くん気をつけて! そいつ……! ローブを着た男には僕の攻撃が全く当たらなかった! それどころか一方的にやられて! 恐らく何らかの強力な”個性“を持ってる! ヒーロー殺しは血の摂取で動きを止めると思う! それでみんなやられた!」
もう待ってくれる時間もないだろう。
顔を近づけて小声で聞いてきた轟に最小限の指示をして、俺と轟は戦闘態勢に入る。
そんな俺たちに出久が体を動かそうとしながらそんなことを言ってきた。
出久がやられてる時点で警戒はもとよりしているが、恐らく見えない攻撃のヒントに繋がるだろう。
ヒーロー殺しの個性について情報を得ていたのは流石出久だ。つまり血さえ舐められなければいい話。
「心配すんな。お前は動けるようになるまで大人しくしてろ」
しかしヒーローならば不安にさせてはならない。
俺自身まだネロの能力の全貌を掴めてないが、こうなってしまった以上は戦いながら見極めるしかないのだ。
出久の攻撃を避け、一方的に攻撃を加えるなんて考えたら、いくら”変速“なしとはいえ今まで出会ってきた中では一番の強さを誇るかもしれない。
そして俺たちが戦う意思を見せたからか、ステインの全身が青く、紫とも黒とも言えるような闇と表現するのが正しい色と白のオーラを纏い、額にはχの文字が浮かび上がっていた。
ネロに関してはポケットに手を突っ込んだままで構えすらとっていない。
「メテオ、俺に証明して見せろ! 精神だけでなく--お前が実力も”本物“足りうるのか! 俺に打ち勝ち、俺という存在を糧にして
「そこはどうでもいいが、こいつらはやらせねえよ!」
初めから加減なんて出来ない。
現状素の俺が引き出せる最大戦闘力を解放し、走りながら紫のオーラを纏う刀を振るステインと”舞空術“で僅かに宙に浮きながら加速した俺の拳が真正面から衝突した。