無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

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雄英生VSヒーロー殺し&殺し屋

 

「メテオ、俺に証明して見せろ! 精神だけでなく--お前が実力も”本物“足りうるのか! 俺に打ち勝ち、俺という存在を糧にして英雄(ヒーロー)への歩みを進めて見せろ! ”本物“の一部となれるなら本望だ……!」

「そこはどうでもいいが、こいつらはやらせねえよ!」

 

初めから加減なんて出来ない。

現状素の俺が引き出せる最大戦闘力を解放し、走りながら紫のオーラを纏う刀を振るステインと”舞空術“で僅かに宙に浮きながら加速した俺の拳が真正面から衝突した。

すぐに大きく下がる。

痛みが走った拳を見れば僅かに血が流れる。

今流れたお陰で相手の長刀には付着してないが、あのオーラの影響か切れ味が底上げされてやがる。

 

視線を戻すと光が見えた。

ナイフ。

人差し指と中指にオーラを集中させ、挟んで掴み取ると回転することで遠心力を使って投げ返す。

刀を持ってして弾かれ、互いに地面を蹴って加速。

横薙ぎしてきた長刀に対し、急停止と共に跳ぶ。

ステインが上を向いた瞬間、轟の氷が一気に迫っていた。

 

「チッ!」

「今のを避けんのかよ……っ!」

 

俺に注意を向けさせたはずが舌打ちして避けるステインに轟がさらに氷を出していたが、俺は空中で体勢を変えると向きを変更する。

対象はネロ。

不気味な程に何もしてこないが、やるつもりがないなら好都合。

この状況下なら一人を削った方が勝つ。

俺は空気を蹴って加速し、急接近する。

そのまま拳を突き出そうとしたところで、”妙な感覚“に襲われた俺は無理矢理体を捻った。

何かが過ぎり、風によって僅かに体が動くと地上へ降り立つ。

 

あっぶねえ。勘に従ってなければ直撃していた。コレが見えない攻撃か。確かに何も見えないぞ。

 

「今日は何かと手強いやつと出会うな……。聞いていた通りの強さのようだ」

 

まるで俺を知っていたかのような物言い。

俺はこいつを知っているが、俺のことを特定するようなやつがいるか?

いやもしかしたら体育祭を観てたのかも知れないけど。

 

「俺を見ろォ!!」

「っぶね!」

 

振り向きざまに首を後ろに傾けることで避けたが、避けきれなかった髪の毛の一部がちょっぴり散る。

そのまま両手を地面につき、頭を地面すれすれまで下げながら片足を後ろ回し蹴りする。いわゆるメイアルーアジコンパッソ。

大きな弧を描いてステインの頭部へ向かっていき、ガードされたが距離を引き離すことに成功するとステインに向けて”気功波“を放つ。

技から技へと繋ぎ。

斬撃を持って防がれ、後ろには轟たちがいるので斬撃をかかと落としで踏み潰す。

 

「仕切り直しだな……」

「狙いは拳王技らしい。俺を無視していたくらいだ」

「……喋らない方がよかったかぁ……」

 

俺は目をつけられてしまったらしい。

あの感じからして、ステインを相手しながらネロと戦うのは難しいな。

向こうは底が見えないが、ステインはだいたい俺と同じくらいの戦闘力だ。

 

「勝てるかは分からねえが……引きつけることは出来ると思う」

「……大丈夫なのか?」

「ああ、任せてくれ。ただ少し時間が欲しい」

「それまでは時間稼ぎすればいいってことか、任せろ」

 

こいつがそう言えるってなら轟にはなにかの策があるのだろう。

どれくらいか分からないが、10分くらいなら問題ないか。

封印してた期間が長かったから時間が掛かってしまったが、界王拳は5倍くらいまでは何とか扱い切れるようにはなってオーラ出なくなるほどには成長してるし。

 

「ハァ……強さも”本物“か。やはりいい、メテオ。お前のようなヒーローが多ければどれほど良かったか……。だがお前という存在が生まれたならば俺の存在意義もあったということ……。お前は俺がオールマイト以外に認めた唯一の存在だ。その若さでよくそのような強さを手にした。俺はお前を尊敬に値する存在として、()()英雄(ヒーロー)と認めよう」

「そうか、だったら大人しくお縄につけ」

「ハァ……それは出来ない。いくらお前が”本物“であろうと”贋物“を消さねば……俺が正さねばならん……。心配するな、その後はお前という存在を日々離さず見守ることに徹しよう」

「なんでだよ」

 

俺を本物と呼ぶなら従ってくれる可能性も考えたがそう甘くは無いようだ。

ますますストーカー化が進みそうだな、勘弁してくれ。

俺は思ったことを言っただけだろ。

 

「行くぞ……!」

 

轟の合図に合わせて俺は動いた。

当然ヒーロー殺しは俺の方に来る。

オーラが纏われる長刀を避け、蹴りを放つ。

あっさりと回避され、気弾を予測して撃つと壁を蹴って回避していた。

機動力が厄介だな。

なら機動力を殺すまでだ。

その前に--。

 

「お前の相手もしないとな」

 

咄嗟に身を屈めると風が通り過ぎた。

見て反応した程度だが、何かしらの力だ。

遠ければ避けれるが、これが間近で飛んできたら避けられない。

 

両手に気弾を生成し、その場から動かずに連射する。

出久がやられたのも納得だが、近距離がダメなら遠距離。

土煙で覆われるほど大量の数を浴びせた俺は放出するのをやめると、煙が少しずつ晴れていく。

そこにネロの姿はない。

 

「界くん……!」

 

突如気を感じ取れた俺は咄嗟に右腕を立てる。

痛みが走り、自ら後ろに跳ぶことでダメージを減らす。

俺がいた位置を見ればネロの姿があり、相変わらずポケットに手を突っ込んでいる。

しかし腕に走る痛みから殴られたのだと理解する。

理解したからといってなんだという話だが。

まるでテレポートだな……。瞬間移動を連発されてるようにも感じる。

俺にはその力はないからそれだと厳しいかもしれない。

 

「ハァ……ッ!」

 

気配が頭上から。

振り下ろしてくる刀に対してバク転で避け、側転で斬撃を避ける。

地面に足が着く前に壁を蹴り、斜めに飛ぶようにしながら両手に巨大な気弾を生成すると。

水平斬りを頭上を越えるように上下反転しながら避ける。

次に放たれた片方の長刀による振り向きの一撃を体勢を戻すように飛び越えながら加速して避け、再び背面に着地。

俺が跳んだ瞬間には既に反応して振り向いてきたが、俺は攻撃より早く両手に気弾を生成して左手の気弾を頭上に投げ、左手に再び生成しながら右手の気弾と一緒に左右にその場に設置する。

 

「……! これは……!」

「俺は”近接戦闘“の才能は無いが”気“に関しては得意なんでな」

 

一度背面に回った際に両手の気弾は設置していた。

それにより上下左右背面と共に気弾で囲むことで動きを完全に封じる。

これによりステインの機動力を殺した俺は右手に気を生成して、一気に放出した。

気功波として放たれ、黄色のエネルギーがステインを覆い尽くす。

斜線上には誰もいないことは確認済みだ。

近接戦闘は他人の真似をして組み込むことしか強くなれなかったが、気に関しては師匠が才能があると認めるほどだ。

俺が唯一自信を持てるところでもある。自信というか師匠の言葉を信じてるだけだから他信だが。いや師匠のことだし師信?

何はともあれ、これで少しは--。

 

「……マジか」

 

瞬時にその場から跳び、轟たちの近くにバック加速で戻る。

視線の先にはネロがステインを掴んでおり、移動したのだと分かる。

分かるが、あの状況で助けた?

ステインが紫色のオーラで迎撃しようとしてたのは見えたが、本人も無傷で防ぎ切れないとは思ってただろう。

一体どんな速さしてんだ。瞬間移動だったとして触れなければ無理なはずで。

わざわざ巨大な気弾にしたのはそれを防ぐためでもあった。

これは--。

 

「やべえかもな」

 

今更ながら冷や汗を搔く。

予想はしてたが、ここまでとは思わなかった。

本当の本当に全開で行かなくちゃならないかもしれない。

 

「ハァ……何故助けた」

「まだ利用価値があるからだ。他の奴らを殺すつもりはない」

「……まぁいい。ハァ……今は俺も利用させてもらおう」

「話は終わったか?」

 

意趣返しに、先程言われたことをそのまんま返す。

二対一。

それもまだ三分程度しか経っていない。

 

「もう見極める必要はない……ハァ。あとは--」

 

 

 

 

 

「贋物を消すだけだ!」

「だからやらせねえよ!」

 

ステインの射線上に躍り出た俺は迎撃のために拳を構える。

こいつが目を向けているのは飯田だ。

脅威であったであろう出久を狙うつもりがないのはこいつ自身も認めているということ。

つまり狙いはプロヒーローと飯田。

ネロに関しては俺が狙いだから無視してもいいはず。向こうから攻撃することはなく、俺が攻撃しようとした度に飛んできたということは能力がカウンター重視。

だからステインさえ抑えれば何とか--

 

「甘いな」

「ッ!?」

 

いつの間にか目の前に居たネロから放たれたであろう見えない一撃が胸を貫き、内側にまで響く一撃に唾液を吐き出す。

吹き飛びかける体を咄嗟に地面を蹴って空中後方回転し、強引に着地すると胸を抑えながらステインの方に向かう。

5倍界王拳を使用して一気に加速する。

オーラが出現してないため、俺がただ急に速度が上がったように見えるだろう。

あっさりとステインに追いついた俺は頭上から後頭部目掛けて拳を振るう。

 

「--速いな」

「はっ……!?」

 

しかしその拳はネロが受け止めていて、俺は驚愕した。

バカな。間違いなく振り切ったはず……!

今の俺が5倍を使用して気配すら感じられず一瞬で追いつけるやつがいるとは流石に思わなかった。

固まる俺に対し、ネロが逆手で俺の腕を掴むと上空に投げ飛ばされる。

マズイ。

今の速度で無理なら引き上げるしかない。

いやそもそも追いつかねえ。

俺が引き上げるよりステインの方が速い。

 

空中で静止した俺だが、既にステインは轟の前まで接近していた。

その背後には出久たちもいる。

追おうとしたところで、嫌な予感に従って空中で後ろ回りすると空気が通り過ぎていく。

 

「こいつ……」

 

どうやら意地でも通してくれないらしい。

仕方がない、轟が危うくなるまでは相手するしかねえか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------

 

拳王技の戦いを俺は見ていた。

あのヒーロー殺しとネロ……だったか。

二人を相手にしても負けじと戦えている。

やっぱりすげえな、あいつ。

これを見て誰が”無個性“だと信じられるんだろうな。正直今の俺じゃまだ拳王技には届かねえ。

本人はどう思ってるか分からないが、あいつはもう既にこの世界で上から数えた方が早いくらい強いはずだ。

だとしてもやることは変わらねえ。

流石に厳しいのかステインがこっちに来た。

空中に居る拳王技が俺に目を向けてきて、『任せた』とアイコンタクトしてきたような気がした。

 

--こんな時だってのに、頼りにされるってこんなに嬉しいことなんだな、と思ってしまった。

特に拳王技の力になれるという事実に喜んでいる自分がいる。

なら今の俺が出来るのはあいつが心配せず自分の相手に集中出来るようにしてやることだ。

 

「こいつらはやらせねぇぞ。ヒーロー殺し」

「ハァ……そういえばお前には聞いてなかったな。お前は何のために今俺と対峙している?」

(ダチ)を守るのに理由なんて要んのかよ!」

「即答……ハァ……。お前もメテオほどではないが、いい……!」

 

一瞬にして間合いを詰められた。

まだ覚えたてで発動までにはもう少し掛かる。

けど拳王技に頼る訳にはいかねえよな。

並行しろ!

貯めつつ、出せる可能な範囲で迎撃しろ!

力を編み出してる間に何も出来ないままなら拳王技に追いつくことなんて出来やしねえ!

 

踏みしめた足から聳え立つ氷を生み出し、盾にする。

バターを切るかのように軽々と斬られたが、その僅かな時間さえあればいい。

左足に炎を纏って回転を活かした後ろ回し蹴りを放つ。

 

「……! 遠距離主体と思わせておきながら近接攻撃、か。やはりお前は生かす価値がありそうだ」

「っぱ効いてねえか……!」

 

氷で動作が隠れていたってのに防御されてしまった。

拳王技と戦えるようなやつだ。

これで勝てるとは思っていなかった。

いくら親父に叩き込まれたとはいえ、やつの言ってた通り俺は個性にかまけて遠距離が多かった。

近接はあくまで身を守る程度。

距離を引き離すべく地を蹴ってバックステップする。

ステインは引き離せば不利だと悟っているのかすぐに接近してくる。

こんな速いやつと拳王技は一人でやりやっていたのか……!

身を屈めて刀を避け、腹部に向けて手から炎で引き離そうとする。

食らいはしたようだが上空に逃げたステインに向けて今度は右から氷結を出すが、俺は咄嗟に体を逸らした。

すると紫色の光が氷を突き破って右肩に何かが刺さり、痛みに思わず目を向ければナイフが刺さっている。

氷を突き破ってきたのか……!?

 

「ぐっ……!」

 

集中力が切れそうになるが、無理矢理維持する。

あと少しだってのに--。

 

「どうして……何故なんだ……。三人とも……やめてくれ……。そいつは僕がやらなきゃ……兄さんの名を継いだ、僕が……!」

「……継いだのか。その割には俺が見たことあるインゲニウムはそんな顔じゃなかったけどな」

「……!」

 

ふと言葉を発した飯田に思わず言葉を返していた。

俺の知る限りではよく笑顔を浮かべてる人だった。

今の飯田とは似ても似つかねえ。

 

「ハァ……そろそろ休むといい」

 

血を摂取して動きを止める個性。

ヤツは上空から加速したのか目の前に着地すると刀を振るってくる。

身を仰け反らせて避けるが、繋ぎとして放ってきたナイフが頬を掠めた。

その途端にあからさまに顔を近づけてくる。

こっちは既にいっぱいいっぱいだってのに二手も三手も考えさせてきやがる! けれどここまで準備してきたことが無駄になるのは避けなくちゃならない。

炎でも効いてる様子はなかった。

生半可な一撃じゃ俺の動きを止めるために強引に血を摂取してくるかもしれない。

だが被害を考えたら強い一撃はここで出すのは--そう、僅かな時間で考えたらところで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「--五速(オーバードライブ)!!」

 

光が駆け抜けた。

目の前に居たはずのステインが光とともに引き離され、互いに弾かれるように距離を離していた。

その姿を見てすぐに誰なのかを理解する。

 

「緑谷! 動けるようになったのか!」

「うん! 制限時間があったみたい!」

「だ、だけど……君が確か、一番後にやられたんじゃ……」

「ってことは考えられるのは三パターンか。人数が多いほど効果が薄まるのか。血の摂取量か--」

 

 

 

 

 

血液型によって効果に差異が生じるか

 

 

 

 

「血液型……俺はBだ……」

「僕はA……」

「血液型……ハァ……正解だ。OからA、AB、Bの順で奪える時間は短い……。何故か奪える時間が伸びているようだがな……」

「……教えていいのかよ」

「お前たちは生かす価値がある……それにメテオに隠す必要はない」

 

教えても問題ないほど余裕があるってことか。

確かにわかったところで対策できるものじゃない。血を舐められたら即終わりだ。

 

「二人を担いで撤退したいところだがそうはさせてくれないだろうな……」

「うん……あの状態になってからヒーロー殺しの動きが格別に変わった。それにもう一人の方が--」

 

緑谷が言い切る前に大きな影が横を通り過ぎ、轟音を立てて建物が崩れていく。

まさか、と振り向くと白いオーラが溢れ、瓦礫を全て上空に吹き飛ばしながら粉々にしていた。

 

「おー……いてて……一方的にやられちまった……ん? お、出久が復活してるな。こっちは平気か」

 

怪我らしい怪我はないが拳王技がそこから出てきて、腕を回しながら横に来た。

無事なのは良かったが……。

 

「界くん、大丈夫なの?」

「心配いらねえよ。もうちっとであいつの力を掴める。けどそろそろ全開で行かねえとヤバそうだな」

「……ああ、俺も準備は出来た」

 

 

 

 

 

三人で守るぞ

 

 

--界王拳  

フルカウル、100%……!

 

返事するように。

膨大な力の圧が俺の両隣から感じられる。

特に拳王拳の方は親父と戦っていた時より強い力だ。

この短期間でさらにレベルアップしたのか。

これが今の、二人の全力。

だったら。

 

「赫灼熱拳--」

 

緑谷。拳王拳。

お前ら二人が俺を沈んでいた底から救いあげてくれた。

再び俺たち家族にスタートを切らしてくれた。

まだ戻ったわけじゃねえけれど、一歩ずつ歩めてきたんだ。

救ってくれたお前らに何が出来るのか。

それはきっとお前たちが困ってる時に今度は俺が力になること。

そのためには実力も高めて行かなくちゃならない。

これは何処かの俺という存在が辿り着いたらしい領域。

ふたつの個性があるから出来た芸当。

だから見ててくれ。

俺の力を、目の前で。

 

「--燐」

 

その瞬間。

俺の胸元には心臓を起点にX字を描くように赤い炎と青白い炎が現れる。

緑谷も拳王拳も俺に視線を向けて、そして。

 

「轟くん……それ……!」

「……なんだ。メドローアでも発動するのか?」

「いやこれは赫灼熱拳の『力の凝縮』を応用し、心臓を中心に熱い血と冷たい血を循環および発露させることで相互に安定を齎すことで--」

「真面目か」

「……」

「界くん……」

「俺が悪いのか!? わ、わりぃ。これ終わったら聞いてやるから。そんなしょぼくれんなって」

「……約束だからな」

「お? おう……。そんな誰かに聞かせたかったんだな……。まあでも、そんなこと出来るようになってるなんて思わなかったぞ。感じられる気も以前とは比べ物にならねえし、すごいな」

 

拳王技から見ても評価に値する力だったようだ。

時間が掛かるのがネックだが、いずれは瞬時に発動できるようになって見せる。

今はやるべきことをやるだけだ。

 

「そんじゃ……お前はこっちだ!」

 

拳王技が赤いオーラを噴き出しながら加速してネロに突っ込んでいくと、二人はぶつかり合いながら奥へと消えて行く。

追うつもりはないのかステインは脱力した体勢で動かない。

 

「メテオは行ったか……贋者を消した後は観戦に行くとしよう……。だがそう甘くは無いな……ハァ……。それでも贋物を殺すためにも引くわけにはいかん……!!」

 

猛烈な殺気と共に、ステインのオーラが吹き荒れる。

まるで拳王技を相手にするかのような錯覚を覚える。

纏っているものも似ているってことは気ってやつなんだろうが。

どちらにせよ、互いに本気になったってわけだ。

 

「さァ……お前たちが本物だと言うのなら! 俺を止めて見せろッ!!」

「絶対にやらせない!!」

 

紫と白の光と緑の光が衝突する。

あまりの威力に周囲の建物が崩れ、俺は氷結で周囲を固定させる。

この状態となった今の俺なら通常時ではあまり放てない大規模ですら問題なく使える。

問題はこの空間じゃそれが使えないということ。それは緑谷も同様で開けた場所よりも本来の強さは出せないだろう。

その間にも光と光が何度も衝突し、動きが止まった瞬間に溜めた炎を放つ。

火力が上がっているのに気づいたのか炎を避けるステインだが、その間に緑谷が復帰して頭上を取り、蹴り飛ばしていた。

さらに鞭のようなものを伸ばして拘束し、壁を削るようにステインを引き摺って投げ飛ばしている。

着地したステインが地面に落ちているナイフを踏みつけて浮かせ、それらを一気に蹴り飛ばす。

緑谷と俺の方に飛んでくるが、緑谷は高速で避けて俺は氷を生み出して防ぐ。

 

少しでも崩れたら状況がすぐに変わる。

緑谷のあの速度にも対抗出来るとは想像以上だ。

 

「なんで……どうして……そこまで、して……!」

 

ステインを相手しながらも俺の耳にはしっかりと飯田の声は聞こえていた。

 

……兄貴がやられてからのお前が気になってた。

恨みつらみで動く人間の顔ならよく知っていたから。

そういう顔した人間の視野がどれだけ狭まってしまうのかも知っていたから。

母は泣いて謝り、驚くほどあっさりと笑って赦してくれた。

俺が何にも囚われずに突き進むことが何より幸せで救いになると。

簡単なことだったんだ、全部!

 

--その”力“は父親でも母親でも、ましては誰のもんでもない。()()()()()()だろうがッ!

 

--君の力じゃないか!

 

「やめてくれ……もう、僕は……っ!!」

 

「っ、殴られた勢いを利用して!? 轟くんッ!!」

 

緑谷に殴り飛ばされていたステインがその速度を使って急接近してくる。

大規模な力は使えない以上、ギリギリの出力で氷を解き放つが少しずつヒビが入っていく。

 

「やめて欲しけりゃ立て!!」

 

その時間さえあれば--たった一言!

あいつら(拳王技と緑谷)のように、俺がこいつに言ってやれる言葉。心を救えるような言葉!

俺がお前に言える一言--!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なりてえもんちゃんと見ろ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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