無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ? 作:絆蛙
「やめて欲しけりゃ立て!!」
なりてえもんちゃんと見ろ!!
規律を重んじて人を救い導く愛すべき偉大なヒーロー。
憧れを抱いて兄のように成りたいと、兄のようなヒーローで在りたいと想っていた。
だから傷つけられて怒らずにはいられなかった。
もうヒーロー活動は適わないと言われたから。
けどヒーロー殺しから言われた否定しようのない真実。
『あいつをまず助けろよ』
何がヒーローだ。
友に守られ、傷つけさせて!
僕が憧れたヒーローならヤツの言う通り人を助けることを優先していたはずだ。
だと言うのに僕は罪を思い知らせるために兄の名を使った。
入試から何も変わっちゃいない。試験だからと言い訳をして、ヒーローなら助けるべき人を助けようとしなかった。
ライバルとはいえ、人は人なのだ。
自分のことしか見れていない。
目の前のことしか見れていない……!!
--迷子を見かけたら迷子センターへ手を引いてやれる。そういう人間が一番かっこいいと思うんだよな
--天哉が憧れるっつーことは俺 すげえヒーローなのかもな。ハハ
そうだ。
僕は未熟者だ、ヒーロー殺し。
彼らと違って、足元にも及ばない。ヒーローとしても人としても、実力ですら!
それでも……それでも……!
氷が割れる。
歯茎から血が出る程に噛み締め、先とは違う意思を瞳に宿して身体を起き上がらせる。
体が動く。
だからこそ。
今ここで立たねば……俺は、僕は……!
二度と! ヒーローになることができない! 誇れるヒーローに、なれない!
もう二度と彼らに! 兄さんに!
顔向けするどころか……!
「レシプロ……」
「チッ、お前も時間切れか……!」
追いつけなくなってしまう--!!
「--バァアアアアアアストオオオオオオォ!!!」
「! 解けたか……!」
意思が籠った蹴りが殺意無き一撃を弾くことに成功する。
俺の火力じゃ折ることも叶わないのか!!
だけどこの一撃があれば……!
その隙を轟くんは逃さず、ステインに向けて右拳を構えると。
「吹き飛べ……!!」
固まった氷の塊を拳に覆い、ステインの体を殴り飛ばしていた。
すぐに緑谷くんがこちらに来て、僕は自分の意思で立ち上がる。
「……すまない二人とも。迷惑をかけた」
「飯田くん……」
ステインが立ち上がる。
やつの体は僕を見ていて、その目が否定してるように感じられた。
だとしても。
「感化されて取り繕うとも無駄だ。人の本質は早々変わりはしない。私欲を優先させた貴様は贋者以外の何者でも無く、
「飯田。時代錯誤の原理主義だ。こんな人殺しの理屈にお前がわざわざ耳を貸す必要はねえ。気にする必要は無いぞ」
「いや……。ヒーロー殺し、確かにその通りだ。お前の言う通りなんだろうな。でもこれ以上彼らに血を流させる訳にはいかない。何より僕にヒーローを名乗る資格がなくとも、ここで折れる訳にはいかない--インゲニウムを背負う者として折れる訳にはいかないんだ!」
俺が折れれば--インゲニウムは死んでしまう!
--論外
飯田くんの中で何かが吹っ切れんだと思う。
だったらあとはもう、ヒーロー殺しを止めて界くんの援護に向かう!
変速の残り時間はもう僅か。
あと数分で決着をつける!!
「レシプロが……!」
「僕が引きつける!」
「緑谷! 無理するなよ!」
飯田くんの個性を考えるなら轟くんが必要になる。
僕は一気に駆け出し、ステインの背面を取ると黒鞭を両手から伸ばす。
振り向きざまに斬撃のようなものに斬られ、飛んできたものは体を逸らして避けるとその間にステインはナイフを投擲していた。
「飯田!?」
「いいから……っ!!」
飯田くんの腕にナイフが突き刺さったのが見えた。
赤く染まりそうな感情を唇を噛み締めて抑えると、下から拳を振り上げる。
すぐに避けられた。
くそ、いくら100%を使ってても常にその状態で攻撃出来るわけじゃない!
周辺を吹き飛ばすわけにはいかないからコントロールが大変だ。改めてオールマイトの凄さを思い知らされる……!
「邪魔をするな!」
「だからって見て見ぬふり出来るかよ!」
僕の足と刀がぶつかり、周辺に凄まじい風が巻き起こる。
轟くんが氷で居た場所をドーム状に貼ることで三人は無事みたいだけど、こう何回もぶつかりあってたら更地になりかねない。
だったら……オールマイトのように!
界くんのように!
真正面から!!
緑谷出久!!
瞬間、120%--!
「SMAAAAAAAAASH!」
「!?」
拳を振るい、刀とぶつかる。
さっきと違い、腕を伸ばしたまま両脚を浮かせて貯めた片足から発勁を解き放つと、超加速しながらステインの刀を砕く。
吹き飛ぶステインに残った発勁で追いついて再び瞬間的に120%で振るい、地面に叩きつける。
すると纏われていたオーラが消え失せたステインが浮いた瞬間を狙い、身をステインの下に躍らせると両手を地面に着きながら両足を伸ばして打ち上げる。
その時、体が軋み始めた。
限界が、近い……!
だけど、まだ、あと少し……!
「行け、二人ともッ!!」
轟くんが道を作ってくれた。
武器のないステインを倒す絶好のチャンス。
痛みなんて忘れろ。
あと一発あればいい!
そのために。
今は……!
今は--
今は--
拳
があればいい!!
脚
制限時間か。
もしくはダメージか。
突如動きが悪くなったステインに僕の拳と飯田くんの脚が突き刺さり、意識が消えたように感じられる。
安心して--
『まだだ、九代目』
『やつはまだ死んじゃいない!』
初代と二代目の声が響き、ステインのオーラが復活していた。
あれでもまだ、足りないのか!?
すぐに追撃--そう、思ったところで。
呼吸が出来なくなり、OFAのコントロールが乱れた僕は浮くことすら出来ず地面に落ちていく。
まずい……飯田くん!!
「やれ! 飯田!!」
「今度こそお前を倒そう! 彼らに誇れる--ヒーローとして!!」
轟くんの炎がステインの顔を焼き、氷が両肩を凍らせる。
それでもなお無理矢理動かしたのか血を流しながら飯田くんを掴もうとしていた全てのオーラが集約した右手が触れる前に飯田くんの追撃が今度こそ意識を完全に奪っていた。
僕たちを助けるために轟くんは氷を張ってくれて、滑るようにして僕と飯田くんは落ちる。
「やった……のか……?」
「た、多分……」
『うん……今度こそ倒したみたいね』
『やるな、小僧!』
『それにしても……あの力はなんだったんだ?』
『分からない事ばかりですね……』
『今は休むことも大切だ』
先代たちの声が聞こえて、ようやく僕は安心した。
OFAが解け、変速の負荷が体を襲う。
暫くは戦えそうにないな……。
「武器はもうねえみたいだが……一応周りのやつは集めておこう。回収されてまた利用されたらたまったもんじゃねえ。それから拘束する必要があるな」
「うっ……ん。ご、ごみ……おき、ばには……あり、そ……」
「お前は休んでろ、緑谷。大した怪我してないのは俺だけだ。俺がやっとく」
「ご、ごめっ……ん……」
「こいつを縛ったら拳王技のとこ行くぞ。……心配だ」
ごめん、界くん。
本当は援護に行きたかったのに、負荷が消えるまで助けにいけない……。
どうか無事で居てくれ……!
「邪魔すんなやあアアアアァァァアアアア!!!」
保須に着いた俺は気味が悪りい変なモンスターみたいなやつらを相手に爆破させまくっていた。
誰か知ってるやつが居たのか植物みたいなもので殺さなきゃ自爆してくるらしい。
色々と苛立ちがあった。
戦闘を許可したかと思えばあのウサギ女は飛び出してどっか行きやがったし、このモンスター共は俺の前に立ち塞がりまくりやがるし、ここに来る前も小物ばっかだ!
界の野郎は大物自慢してきやがって! あいつの顔がすぐ浮かんだわ!
絶対爆破してやらぁ!!
それにこっちとら出久の元に行かなきゃなんねえんだよ!!
何より今俺が許せないのは一つ!
「てめえらが!」
爆破を飛ばして空中にいる雑魚どもを撃ち落とし、鞭のようなものを爆破して燃やし、襲いかかってくるやつらを地面ごと爆破して消し飛ばす。
「その力で!」
”気功波“を次々と高速で避けながら接近する俺は回転を一気に加える。
怒りを込めて、全力の一撃を叩き込むべく俺は音速で駆け抜けた。
「界が命懸けで手に入れた力を破壊の道具にしてんじゃねぇエエエエエエエエエエッ!!」
高速で二回ハウザーインパクトクラスターを与える技。
その一撃が気功波ごと全てのモンスターを消し飛ばし、俺は手を着いて地面に着地すると立ち上がる。
「数をいくら揃えたところで界の方がよっぽど強えよ、てめえらよりもな。努力の数が違ェんだよあいつは……!!」
無駄に色とりどりな姿をしやがって。せめてそこまで色があるなら赤色揃えてから来いっての。
とにかくこれでようやく出久の元に行けそうだ。
あいつが位置情報だけ送るなんて有り得るわけがねえ。つまりそうする何かがあったってことで--
「……あ?」
何かが飛んできた。
絶命したのか動かない脳無。
その上には背が低く、かなりの年配だと見て分かるが俺から見ても強えと思わせるヒーローらしき老人の人。
「……ん? 誰だ君は!」
「……バクゴーっす……」
「……ん? 誰だ君は!?」
「……バクゴーっす……。つーかもうええわ! あんたこそ誰だ!」
「俺ぁグラントリノ。お前さんと同じくれえのやつを探しててな」
「……! もしかして出……デクのことか!? 一緒じゃないんか……!!」
「なんだ、知り合いかお前ら」
出久のやつがメッセージで特徴を教えてくれてたからすぐにわかった。
この街で年配のヒーローが探す俺と同年代ってなればアイツくらいだ。
グループにってことは……恐らく全体に送れば必ず界が気づくからだろう。
あいつも保須に居るらしいしな。
「だが……今はあいつの相手をしなくちゃならんようだな」
「……こいつの仕業だったか」
同時に俺とじいさんが目を向けると、そこには口から次々と種を吐き出しては手から水を出し、モンスターを生み出している脳無が居た。
見た感じ、摂取した種を作り出す個性……ってところか。すぐに育ってるつーことは水を作り出す個性。
植物の成長を早める個性。
支援に居なくちゃならねえやつが出てきてどうすんだ。いや、俺が一気に消したからか。
どちらにせよ原因が分かったならこいつをぶっ飛ばすだけだ。
「無理せず引っ込んでていい……っす」
「子供に心配されるほどまだ弱っちゃ居ねえっての。威勢のいいガキだ、気に入った! とっととぶちのめしてデクんとこ行くぞ」
「ッス」
出久の受け入れ先なら邪険に扱うわけには行かねえ。
界ならまだしもアイツに迷惑をかけるわけにはいかないしな。
話が決まったら簡単だ。
全身爆破によって加速し、一気に生み出されたモンスターを吹き飛ばす。
倒しきれなかった分は連続で爆破して加速しながら次々と顔面を狙って消していく。
すると視覚の外から来たモンスターに反応しようとしたが、その前にじいさんが叩きのめしていた。
クレーターを生み出し、次々と空中にいるモンスターを加速して叩き落としている。
強えのは分かってたが、何者だよあの人。
いやOFAの関係者か。わざわざ出久と界を指名したらしいしな。
それにしては俺もグラントリノって名のヒーローは知らねえが……。これほど強えならもっと知られててもおかしくはないんじゃないんか?
そう思いつつも意識を切り替え、俺たちは生み出すよりも早くモンスターを倒していると、おおよそ200体倒したところで種がついに出なくなった。
「ハッ、品切れってことか? 残念だったなァ、てめえもこれで終わりだ!」
「なんつー悪人ヅラしてんだ爆破小僧」
「うっせえわ! 今日こんなやつらとしかヤレてねえんだよ俺ぁ!!」
「落ち着けっての。あんま怒ってっと冷静な判断が出来なくなるぞ。たい焼き食うか?」
「俺はすこぶる冷静じゃ! それといら……何処に持ってたんだあんた!?」
「俺はたい焼きが好物なんだ」
「聞いてねえが!? 食うのは勝手だが食いすぎには気ぃつけろよ! 体壊すぞ!」
「おうよ。口こそ粗暴だが面白いなお前!」
「面白……ッ! いいからとっととぶっ飛ばすぞ!」
このじいさんを相手にしてると調子が狂う。
脳無は身体能力も高い。
個性の限界で動けてないみたいだが、生半可な実力を持つヒーローならあのモンスターは危険だ。
「んじゃ……合わせろ!」
「誰に言っとんじゃ!!」
いつの間にか先導してきたじいさんに追いつき、両手に爆破を凝縮させた俺の一撃とじいさんの蹴りが脳無に直撃し、背中から簡単に倒れた。
「ハッ、再生持ちじゃねえのか。大したことねえな。とにかく早くデクんとこ行くぞ、じいさん」
「誰だ君は!」
「ボケてんのか、病院行けや!! つーかあのウサギ女何処行きやがったぁあああああ!!」