無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

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波動ねじれ:オリジン

 

 

 

放たれた”気功波“を波動で相殺する。

軽い爆発が起き、連射してくるため被害を避けるために敢えて高く飛んで旋回しながら回避していく。

 

「流石、界くんが界王拳が必要って言うだけあるな……」

 

本人は不思議と全く気づいてないけれど、私はずっと彼を見てきた。

初めて会うことになったのは通形が気になることを言ってた時。

それは今でも思い返せる--。

 

 

 

 

 

 

『通形、最近楽しそう! 何かあった?』

『え、そう見えるかな?』

『ミリオはいつも明るい……。でも波動さんの言う通り、最近はより楽しく見えるよ……』

『界くんのお陰かなぁ?』

『界くん?』

 

なんてことのない日々。

()()()()仮免を取った私たちはインターンでその実力を伸ばしていた。

その年の体育祭じゃいい成績は残せなかったけれど。

そんなことよりも通形の口から出てきた名前が気になった。

知らない名前。

いつも明るい通形が最近さらに明るく機嫌がよかった。

 

『そう、拳王技界くん。俺の個性が全く通用しなくてね! 初めて会った時に追いかけっこして全く捕まえられなくて! 本人がわざと止まってくれなかったらそのまんま逃げられてた! 向こうは道も分かってなかったのにね!』

『今のミリオが……? 信じられない……』

『それに本人もユーモアがあってサーが気に入ってるほどなんだ。実力もとんでもなくて、これは凄いライバルが現れたなって思ったよね!』

『へえ〜気になるな〜。ねえねえ、どんな子?』

『どんなかぁ……』

 

私の質問に通形は悩むように顎に手をやって考えがまとまったようで話し始めた。

 

『一言で言えば……凄いお人好し? とっても明るくて他人に優しくて、とにかく強い。だけど界くんの良さというか強さ……凄みは誰かを惹きつける独特の力があるところかな? それに頭も良くてさ! 最近俺の個性のこと相談したんだよね。そしたらもっと個性を活かしたら強くなれるのに勿体ない……なんて言われちゃって』

『透過ならもっと”点“で強くしていけばいいのに……なんて言われた時はよく分かんなかったけど、サーの元で予測能力はついてきても俺には純粋な力がなかった。いくら鍛えても限界はある。でも今じゃ前よりパワーが出るようになってさ。なんというか応用の天才!って感じでさ!』

 

私たちはインターンに行くことになってから個性を少しずつ形にして、力をつけていた。

この頃の通形の成長は私や天喰くんから見ても目まぐるしいものがあると思ってたけれど。

 

『すごいね! 私も会ってみたい! 天喰くんもそう思うでしょ!? 通形がこんなに褒める子だよ、絶対すごい子だよ!』

『た、確かに気になるけど急に押しかけるのは良くない……』

『どうだろ? ちょっと聞いてみる!』

『そうしてそうして!』

 

そう、通形にここまで言わせるほどの子。しかも実力においても逃げ切るほどの力があるなんて。

そんなの気にならない方がどうかしてる。通形がこんなに褒めるほどだもの。

 

『いいって返ってきたよ!』

『い、いいんだ……』

『やった! どんな子かな〜気になるなぁ。楽しみ!』

 

心の底からそう思った。

一体どんな人物なんだろう。

どんな顔なんだろう。

どんな”個性“を持ってるんだろう。

どんな人なのだろう。

どんな話し方をするんだろう。

考えれば考えるほど想像出来なくて、私の中で不思議だと思うことがいっぱい。

早く会ってみたくて気になって、その日の授業は少し集中出来なかった。

 

 

 

 

 

それからナイトアイ事務所に来るからその時に話すということで、私と天喰くんは通形と一緒にナイトアイ事務所に向かった。

 

『拳王技界です。話は伺ってます。よろしくお願いします、波動先輩。天喰先輩』

 

礼儀正しく頭を下げて自己紹介してきたのは、私たちより年下で身長も低めの男の子だった。

名前からは男の子なんだろうなとは思ってたけど、逆立った黒髪に黒い瞳はまるで水晶のように穢れが何一つなく。

この歳でこんなにも綺麗な子は見たことがないくらい、無垢な眼差しで纏う雰囲気はとても穏やかな子だった。

 

『ねえねえ! 君が拳王技界くん? 通形に勝ったってホント? わあ、髪が全然変わらない! 癖っ毛って言うんだよね、私知ってる! その服中学校のだよね、中学生なの? 何年生? 受験生? どんな個性を持ってるの? どうやって通形に勝ったの? あれ? どうして顔が赤いの? 不思議! ねえねえ、どうして? 教えて欲しいな!』

『え、ええ……? あ、あの近いです……すみません。俺、そんな早く答える技能は持ってなくて……あ、あまり人と話したことも……ごめんなさい』

 

この時の界くんは異性と話す機会が全然なかったらしくて、私と話すのも最初は少したどたどしかった。

あとから彼が”無個性“でそれが原因で人と接することが全然ないことを私は知ったけれど。

 

『波動さん……困ってるよ……』

『はい、ちゅーもく! まずは自己紹介した方がいいと思うんだ!』

『それもそうだね! 私、波動ねじれ!』

『お、俺は天喰環……よ、よろしく』

『天喰先輩が見てるのは壁で俺じゃないですけど……改めてよろしくお願いします。それから波動先輩、順番でいいなら答えますよ』

『ホント!? じゃあじゃあ、髪型のこと聞かせて!』

『え、そっちなの? あ、いや……そっちなんですか? いいですけど、元々の癖っ毛です。髪型変えようと思ってもすぐに戻ってしまうので、どうにもならないんですよ。まあ癖っ毛なのは師匠も同じなので俺は嬉しいんですが』

 

気になったことがあったらつい聞いてしまうのが私の癖で。

雄英に入る前にそれが原因でちょっとしたことが起きて私は抑えるようになったけど、出会えたクラスメイトたちのお陰で受け入れてくれる人達はいると知って我慢するのをやめた。

だからたくさん聞きたいことがあって、彼は私の質問攻めに対しても真摯に向かい合って一つ一つ答えてくれた。

嫌な顔せず、常に向けられる瞳はとても優しさに満ちていて、この子は通形と天喰くんと、ここには居ない私の親友と一緒なんだ、とすぐに分かった。

あと短時間でよく分かったのは、彼が言う師匠という人は彼にとってはとても大切な人で大好きな人なんだということ。

この時はまだ、その師匠が男の人だということも界くんが両親を殺されて親代わりになっていた人だということも知らなかったけれど。

それでもこれが、私と彼が出会った日。

初めてコンタクトした日。

それから私と天喰くんは時間がある時に彼に会いに行くようになった。

新しく出来た友達に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一ヶ月ほど。

界くんとたくさん話して彼の性格もよくわかってきた。

その日は休みの日で訓練も兼ねて通形と天喰くんと個性を伸ばす特訓をしていた。

界くんは呼ばれはするけど中学生だから仕事が出来ずに暇みたいでいつも訓練の日は覗きに来る。

邪魔しないように端の方で体育座りして。

本人は修行してるとは言ってたけど、私にはよく分からなかった。

さっき訓練を一通り終え、ひとまず休憩時間。

端にいたはずの界くんが私の元に来た。

 

『……波動先輩。ずっと前から思ってて、会ったばかりの俺が言うのもなぁと思ってたんですけど、出会って結構経つので言っていいですか?』

『なになに? いいよ、気になるもん!』

『じゃあ一つだけ。波動先輩、なんか個性を変な使い方してますよね』

『……え?』

 

そう言われてどういうことなのか分からなかった。

自分の中では誤った使い方をしてる自覚はなかったし、これが正解だってずっと思ってた。

 

『波動先輩と俺の力って似てるんですよ。だから他と違って一番分かりやすいんですけど、何故か捻れる件についてはいいとしてもエネルギー効率が悪いなぁと。これじゃ無駄に使いすぎですし貯めるのにも時間がかかる。なによりすぐに枯渇しますよ。手を貸してくれますか?』

『うん』

『今流してるのは俺が持つ”気“です。波動先輩の場合は……こんな感じで流れを変えて……こうやって移動させればもっと威力も速度も上がりますし消費も抑えられます』

 

繋がった手からは暖かいモノが入ってくる感覚があって、なんだか擽ったいけどそれがとても綺麗で優しさに満ちたものだと私は無意識に感じ取っていた。

きっとこれが、彼の力の源。根源。

それに私の中を循環する彼の気はあまりに素早く、最短距離で無駄なく使えるように移動している。

どのくらいの速さなのか精密さなのかすら簡単に分かって、努力の成果が私には垣間見えていた。

 

『ホントだ! さっきよりも全然軽い気がする! それにチャージ速度も波動の速度も速いし威力もさっきより高い……どうして?』

『言葉じゃ難しいんですけど波動先輩の”気“と”活力“って別にあるみたいなんですよね。だから全体的に見たら容量が俺に比べて低い。でも総合的に見れば俺以上だ。多分個性の影響だと思うんです』

『別に?』

 

界くんが使う力。

”気“は人が持つ生命力や精神といったものをエネルギーとして変換して使う力のこと。

私の波動で消費する”活力“と似たもの。

 

『はい。前も言いましたが、”気“ってのは人である限り誰だって持ってる力です。当然波動先輩だって持ってます。そもそも衝撃波だけってのが勿体ないんですよ。波動先輩ならもっともっと上に行けるはずです。

例えば波動のエネルギーをただの破壊のエネルギーに変えたり、人を包み込むような優しいエネルギーに変換したりと。身を守る力に変換したり身体能力を高めたり感覚を鋭くしたりなどなど。思いつく限りでもまだまだありますが、解釈次第だと思いますよ? 俺の気もそうやって変えれます。バリヤーにしたり攻撃に転換したり、気配を感知したり消したり』

 

それはきっと”個性“という概念に囚われ、自分にはそれしか出来ないと思い込んでいたからこそ界くんの言葉は私にとって衝撃だった。

目の前で彼は実践する。

溜めることなく気功波を放ったり、気弾を放出しては維持したり、様々な形に変えたり、私の居場所を当てたり。

すごい。

すごいすごいすごい--!

まるで自分の可能性が広がっていく感覚に胸のざわつきが広がっていく。

世界が少しずつ拡張していき、自分でも出来るかもしれないと思い始めていた。

 

『まあ俺は”個性“がないので何とも言えないのでこれから一緒に話し合っていきましょう。一人より二人です。何なら戦いましょう。あっ、増やし方についてはすぐに出来ますしやりましょうか。俺が居れば多分波動先輩回復出来るので』

『うん……うん。一緒にやろ、界くん! 私たくさんやりたいことがあるの、力を貸して!』

『そ、それはいいんですけど、いつまでも俺の手を掴まなくても……。あ、あと少し離れていただければ……聞いてねえ!?』

 

可能性が広がる。

そのことがどれだけ簡単じゃないのか。

あまりにも嬉しくて両手で彼の両手を握って跳ねた私はすぐにでもやりたくて、彼を訓練場の中心に引き入れた。

それから私と彼は一緒に訓練する日々を過ごすことになった。

その度に自分の力が高まっていく感覚が感じられる。

活力は何倍にも膨れ上がっていって、細かい調整や効率のいいエネルギー変換方法。放出とは別の使い方。

本人は得意じゃないらしいけど浮く際の速度の上げ方や浮遊方法。

様々なものを教えてくれる。

それも教え方はとっても上手で、ちゃんと考えて発言してくれるお陰でどうすればいいのか非常に分かりやすい。

でっかく使うことも私は被害が大きくなるから苦手だったのに、彼はその問題を単純に範囲を減らして凝縮させればいいと私に教えてくれた。

その時に見た技である”かめはめ波“。

実際に目にしたら、私と似たようで違っていた。

見た目こそ大きくないと言うのに、放たれる一撃の威力は私を凌駕する威力。

しかも高威力の際にも大して溜めることなく放ったり、移動しながら溜めたりと。

それだけじゃない。”気“を拳や足に纒わすことで近接攻撃を高めたり、相手の”気“を読むことで動きを見極めることが出来ると教えてくれたり。

気が付けば一年が経っていた。

短いようで長い期間。

彼に会うのが楽しみとなったのは、いつからなんだろう。

出会う前からか、それとも私に可能性を見せてくれた時なのか。一緒にやるようになった時なのか。

手を取って走ってくれる。いつも私を引っ張ってくれる。

寄り添ってくれて、一緒に喜んでくれて、楽しそうで、笑顔が可愛くて。真剣な時や戦いの時はカッコよくて。言葉の数々に嘘も悪意もなくて。真っ直ぐに本音で向き合ってくれる。

 

『気になったことはすぐに聞きたくなる、ですか』

 

きっかけはいつだって些細なことで。

よく私が何かと聞くことが多いのを見て界くんが勉強熱心だと言ってくれた時に、私の本心を打ち解けた時のこと。

仲良くなったと思ってるし彼なら否定しないって信じてたけどやっぱり自分の内心を、全てを曝け出すのは少し不安だった。

 

『いいんじゃないですか? 俺はそんな波動先輩、素敵だと思いますよ。好奇心旺盛な部分。簡単に出来るもんじゃない。人は分からない事ばかりで分かる人に聞くのが一番です。というか、それって波動先輩の立派な個性でしょ。能力では無い方の、ですけど。ああ、長所って言えば良かったですね』

 

『そもそも波動先輩のそれって、ヒーローに必要な力だと思うんです。だって情報がなければ人質がいたとしたら数が分からない。ヴィランの数も不明。状況も不明。

分からないのに行動して人質が殺されたりヴィランに逃げられたり、爆弾とか爆発させたりしたら意味ないですし、むしろ俺はそういうところは参考にしたいと思いました。不安なら自信持ってください! それは波動先輩だけが持つ立派な個性のひとつですから!』

 

私が抱えた不安はむしろ彼に失礼だったんじゃないか。界くんを信じてないんじゃないかって思うくらいに界くんは私の心を照らしてくれた。

それに私の性格を否定することなく受け入れて、肯定してくれて。

褒めて、くれた。

初めての言葉を彼は私にくれた。

 

 

『え? どう思ってる……急にどうしました?』

 

私のことをどう思ってるのだろう。

慕ってくれてるのはわかるけど、それは私が彼より年上で先輩だからなのかなって。

目上の人にちゃんと礼儀正しく出来る彼だけど、私にもただそれだけで同じなのかと。

そう思って直接聞くことにした。

彼自身の口から聞いてみたかった。

そうしたら。

 

『ああ、なるほど。波動先輩と居ると俺も新しい発見出来るので凄い人だと思ってますよ。

それに波動先輩は純粋な人だなあとも思ってますね。無垢な笑顔を見てると安心するというか。ああ、この人はヒーローになるべき人だなと思うほどに。だって人は安心感を与えてくれる人に救われるものですから。俺の師匠が俺にしてくれたのもそうでしたし。安心というものは人に力を、希望をくれるんです。だったら波動先輩は希望を与えられる凄いヒーロー……ということになりません? つまるところ波動先輩の笑顔ってそれほど素敵なんです』

 

『……波動先輩? あれ、俺何か間違えたこと……波動先輩? 波動先輩--!?』

 

 

--知らない。

顔に熱が溜まって凄く熱い。

こんなの知らない感情。

顔を合わせるのがなんだか恥ずかしくてしばらく見れず、この日は彼に無駄な心配をさせちゃった。

 

 

 

『やっぱり波動先輩って凄いですよね。個性も凄いですけど、一番凄いのは波動先輩自身だ。努力をし続けてしんどいことだって続けられる。波動先輩に教えていると俺も頑張らないとって鼓舞されますよ』

 

『よし! 成功しましたね! これでより威力を高められる! もしかしたらこのまま行けば俺が出来ることが出来るかもしれません。”気“だって扱えるようになるか……? これから先がもっともっと楽しみになりますね。これからも一緒に強くなっていきましょう!』

 

 

『波動先輩! 合体技ってロマンがあると思うんです! あ、いやかつて師匠がやってたから俺もやってみたかったという本音こそありますが。その、波動先輩とは相性が良いですし他にできるような仲のいい人が居ませんし……”初めて“やるなら(安全に出来るであろう)波動先輩がいいなと』

 

 

『ねじれ先輩、お誕生日おめでとうございます! 去年は会ったときにはとっくに過ぎてたので今回は渡せてよかったです。

……この傷ですか? これを作る時にちょっと……。大したものじゃなくて申し訳ないですがプレゼントです! 最近寒くなってきたのと、お金が無くて手編みなのでもしかしたらちょっとぶっきらぼうかもしれないですけど……あっ、手袋のサイズが合わなければ修正するので……』

 

話す度に思う。

会う度に思う。

不思議な魅力のある子。

その優しさが、純粋さが、言葉の数々が深く胸に刺さる。温もりという形で与えてくれる。

新たな道を示してくれる。

気が付けば胸が痛いくらい鼓動が大きくなって。

一緒に居ると胸がぽかぽかとして幸せな気持ちになれる。

もっと触れたい。もっと話したい。近くに居たい。早く会いたい。

この感情はなんなんだろう。少なくとも分かるのは初めての感情だった。

何も無い時にふと彼の顔が浮かぶ。

何を話そう。何をしよう。

次も頑張ろう。もっと強くなろう。

私が守ってあげたい。

力になってあげたい。

もっともっと、彼の傍に並び立てるように。置いていかれないように強く強く。

何処までも--。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それがその時思った、私の新しい原点。

きっかけは些細な出会いから始まり、ヒーローになりたいとより強く思えた原点(オリジン)

気が付けば宿っていた炎が私をより成長させて、一番最初に出来るようになったのは、”探知“。

界くんの場所が分かるようになった。それも彼以上に。彼が私を探知するより早く彼を探知出来るようになった。

あくまで界くんに対してだけで、探知能力自体に大きな差はなく、ほとんど同じくらいだと思う。

だけどそうして未だに燻る温もりが、炎のようなものが私の中に宿り続けている。

それは夢の中で見た、炎とはまた違った。

あの夢の中は私であって私じゃない。

私は彼の傍に居られる強さを願ったから。

でもヒーローになりたいという想いは一緒だった。今度は誰かを悲しませないように……って。

 

「--負けられないんだ。もっと、強く。超えられるように」

 

限界なんてないというように強くなっていく界くん。

置いていかれたくない。

背中を守れるような、彼が頼れる先輩で居たい。

彼が笑顔で、もう二度と悲しまないようにしてあげたい。彼が寂しい時、傍に居られるように相応の強さを持ちたい。あの太陽に陰りが差さないように。影を消してあげられるように。

この感覚。

高まっていく活力が形となって現れ、逃げ場を消すように脳無から放たれた巨大な気功波が私の目の前で()()()()()

 

『マタ、ツヨクナッタ……!?』

「言ったよね、負けられないって。どれだけ吸収したってそれは貴方の力じゃない。私が彼と築き上げた力は、その程度で負けるほどヤワじゃないの!」

 

全身に活力が生まれ、まるで界くんのようにオーラとして波動を纏うと両腕を頭上に掲げ、一瞬にして両掌に集まる。

初めて界くんと開発した、私自身の必殺技をより昇華させた技。

思い出の技。

大切な技。

 

「これで終わりっ!」

 

 

 

 

 

 

ねじれる極大波動(グリングビッグウェイヴ)

 

 

 

 

 

界くんが放つかめはめ波とはまた異なる色の破壊のエネルギーとなった波動が脳無に直撃する。

吸収しようとする脳無に私は途切れさせることなく放出し続け、押し出すように両腕を突き出して、さらに出力を高めた。

その瞬間、吸収の限界値を超えたようで脳無は波動によって深いクレーターの中に沈んでいく。

脳無の”波動“が消えたことを確認した私はゆっくりと降下しながら波動を伸ばして巻き付けると引き上げるように投げる。

 

「界くんのところに行きたいけど……まだもう一体いるみたい。でも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「POWERRRRRRR!!」

 

別の個体と思われる脳無が飛んでいく。

吹き飛ばしたであろう張本人が地面から現れ、それが誰なのか私は分かっていた。

 

『アタ、ラナイ……リカイ、フノウ……』

 

「無敵化!ってね! 一方的にやれちゃうんだな、これ! しかも咄嗟に使っちゃったけど界くんにも通用した技だからね。 残念ながら数秒しか持たないけど……って、もう聴こえてないか。そもそも元から聴こえてるのかな? 全然会話してくれないんだもんなぁ。あ……波動さん! よかった、無事で。やっと誰かと合流出来た……!」

「通形も終わったんだ、そっちも大丈夫そう? お疲れ様〜」

「全然平気! そっちは派手にやったみたいだね、お疲れ様! 界くんは?」

「クラスメイトのとこ! 気配もだんだんとなくなってきたしこの辺りは大丈夫そう! ただ界くんが私たちが追ってた二人を相手してるかも……大丈夫だと思うけど界くんの” 波動“が感じられなくて」

 

戦ってる最中に急に感じられなくなり、流石に動揺しちゃった。

お陰で一発攻撃を受けたけど、そこは全身に波動を纏うことで守っていたから大丈夫。

ただ界くんほどの子の気配が急に消えたらずっと感じ取ってる私からしたら凄く焦っちゃう。

 

「波動さんでも? それは心配だな……とりあえずサーとリューキュウにも伝えよう!」

「そうだね、少なくとも消えるまでの道は分かるから行ってみる?」

「その方がいいかな。 っと、サーと繋がらない……ひとまずバブルガールとセンチピーダーに伝えて……うん、連絡は任せて大丈夫そうだ」

 

目的地が決まった私と通形は頷き合い、次の行動に移るために移動する。

早く行きたいけど放置する訳にはいかないため、脳無は引き渡すために運ぶことにした。

大丈夫だとは分かってる。彼がそう簡単に負けるはずがない。

でも無事で居て、界くん……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------

 

 

 

「い、でえ……」

 

倒れ伏す俺と見下ろすネロ。

俺は有利に立つことが出来ず、ただ一方的に打ちのめされていた。

やっぱりこいつは、強い--。

 

 

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