無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ? 作:絆蛙
moreアニメ化決定おめでとうございます!
ありがとう……!
ヒロアカロスでつい1週間の間書いては毎日投稿してしまいましたが、度々ランキングにも入ってたみたいでありがとうございます!
高評価やら感想を頂くとやる気に繋がるので作者が喜んで投稿頑張ります。
どうか面白いと思ったら高評価入れてやってください。
目標は高く、高すぎるけど目指せ1位を今日から掲げときます。頑張ります。
一撃一撃が急所を確実に突いてくる。何より一撃が全て重い。
お陰で響くダメージはかなりのものだ。
強いのは分かっていたが、まさか界王拳を使ってもこれとはな……。
「無駄な抵抗はやめろ。お前では俺には勝てん」
「そうかな……」
ここまでとは想像していなかったが、俺だってやられていただけではない。
ねじれ先輩に脳無を任せて、他のプロヒーローたちに街のことを任せて、あいつらにヒーロー殺しを任せて、俺がこんなところで負ける訳にはいかないだろ。託した分、託された分、俺は勝たなきゃならない。
体を起こし、足に力を入れ、立ち上がる。
「勝負ってのはやってみなくちゃ分かんねえもんだろ。俺が諦めない限り俺が負けたわけじゃない。俺が負ける時は、俺が死んだ時だけだ!」
「ならば楽にしてやる」
駆け出し、地面を蹴ると一気に加速する。
攻撃の直前で横に逸れ、反応するより早く殴りかかる。
しかし鳩尾に衝撃が走り、後ろに飛びながら今度は壁を蹴って背後に周り、振り向いた瞬間にさらに背面を取ると掴みかかる。
肺、肩、膝、顔面。
正確に突かれる急所に一斉にダメージが走り、吹き飛ばされた俺は壁に埋まり、そのまま落ちる。
両手と膝を着いて倒れることを防ぐが鼻から血が流れ、口の中が切れたのか気持ち悪かったので唾を吐くと血に染まっていた。
「同じことを繰り返しても無駄だ」
ダメージは負ったが、お陰でようやく
こいつの力を。
どう攻略すればいいのかを。
もう少しで掴めそうだった部分はさっきの攻撃で完全に掴めた。
「言っただろ……そうかなってな。言っとくぜ、次の一撃、お前は俺の急所にダメージを与えることはできない」
「ハッタリか」
「ハッタリかどうかは自分の目で確かめて見ろ!」
顔を挙げ、途切れた界王拳を再び全開で発動。
ネロに向かって俺はただ最短距離の直線で加速し、一気に拳を突き出す。
「何をするかと思えば……また同じことを--ッ!」
そしてネロの拳は、俺が交差した両腕に突き刺さった。
衝撃が両腕から突き抜けてくるが、急所ではなく”気“によって最小限のダメージに軽減される。
俺の口角が上がるのを自分で感じていた。
やっぱり予想通りだった。
「何っ!?」
「でぇりやぁあああああ!」
「ちっ……!」
放った蹴りが空振り、後退したネロが突如爆発する。
設置していた気弾。
その爆風によって背中から押し出されるネロに俺の飛び蹴りが炸裂し、今度は俺がネロを壁に埋め返した。
「やり返しってな。散々痛めつけやがって……俺だって無敵じゃないんだ」
「何故だ……? 何故俺が攻撃する場所が……」
理解出来てないようだ。
見た感じコイツは今までダメージを受けた様子はなかった。
だが、どんなやつでも必ず弱点ってのは存在する。人外はちょっと分からないが、人間ならな。
俺だって気が尽きりゃただ身体を鍛えただけの人間。
ただこれほどの力があるなら個性を知られる前に殺すことが出来ていたのだろう。
「いや……偶然だ。同じことは起きない」
「試してみろよ。行くぜ?」
壁から出てきたネロに俺は合図すると、再び真正面から殴りかかる。
すると俺は背を曲げ、隠れていたネロの拳が通り過ぎた。
風圧が発し、髪がなびく。
驚愕したように目を見開く姿を見ながら反撃に拳を握りしめて。
「そこだァ!!」
瞬時に切り替えて真横に蹴りを突き出す。
咄嗟にガードしたらしいネロが両腕を交差していて、俺の蹴りはそれを弾いている。
さらに突き出した足を軸に回転しながらもう片方の足で回し蹴りし、横腹に蹴りを加える。
するとネロはかは、と唾を吐き出して後進した。
「なんだと……? 俺の動きが見えてるのか……?」
「いや見えてねえよ。俺の推測だが、時間に関係する個性。時間を止めてるように感じるが、ずっと止めてるわけじゃない。すげえ個性だよ、いやそうしたってところか」
通形先輩と同じタイプだ。
強くて最強とも言える力。しかしその力を扱うのはとても難しいものだったのだろう。
もしくは弱かった力を強くしたのか。
「……俺の個性は自分自身の時間を操る個性だ。それを扱えるように飛ばす能力を身につけた」
「なんだ、教えてよかったのかよ」
「……お前だけ答えるのはフェアではない」
「そうか」
扱いづらい個性だなとは思った。
聞いてる限りでは途方もなく強いが、その制限は何処までだ? 何秒までだ? 何分までだ? 何時間までだ? 何日だ? 何ヶ月だ? 何年だ?
もし自分の時間に関して体だけを早めてしまえば? あっさりと肉体が朽ちる。
体内時間だけ早めてしまえば? 時間というものに囚われてしまう。
遅くしてしまえば? 感じられる感覚だけが遅くなり、狂うほどの地獄を味わう。
どれもこれも命に関わる危険性のあるものだ。
実戦に使えるようになるまで、どれほど苦労を重ねたか。飛ばすという考えを得るまで、身に着けるまでどれだけ大変な思いをしたのか。
そして扱えるのはそんなに長くないだろう。
「時間を操る個性……ってよりも能力は時飛ばし……ってところか」
「そうだ……それで間違いではない」
時間そのものを飛ばしているのではなく、使用者であるこいつだけが移動してる……厳密には違うが、分かりやすく言えば瞬間移動。
「なら次は俺が答えなきゃだな。お前の動きが見えてねえのは本当だ」
「……」
「だったらなんだって言いたそうだな。簡単な話だよ、俺は忘れてしまってたことを再びやったんだ。見えないならただ予測すりゃいい。
どう動くのかどう攻撃するのか。
情報を集めるのに時間がかかったが、見えないなら予めそこに置いておけばいい。
0.1秒という短な間による反撃。失敗したら瞬間大ダメージを受ける諸刃の剣でもあるけどな。
だが、だからこそこいつにとっては対応しているように見えている。
「そんなことが出来るとは……子供とは思えないな。しかし手の内を教えるとはあまりに若い」
「そりゃ子供だからな。お前も教えておいてよく言うぜ。どうであれ、俺たちの目的はそれぞれ別だろ。さあ、第二ラウンドを……うん?」
ふと近づいてくる複数の気を感じ取り、視線を向ける。
不意を突くつもりはないのかネロも同じように視線を向けると。
「拳王技!」
「拳王技くん!」
そこには出久を背負うプロヒーローと腕に血を流してる飯田。ステインを引き摺っている轟が居た。
恐らく出久は変速の負荷で動けないのか。轟はもう少し優しく引っ張ってやれ。犯罪者だがそいつも怪我人だぞ。
「……どうやら時間切れらしいな」
「よかった、無事だったか……! 援護するぞ、拳王技くん!」
「待て、飯田。やめろ!」
「拳王技……? そいつをやるなら全員でやった方が……」
「これは俺の戦いだ。邪魔すんだったら俺はお前らでも容赦しねえぞ。第一消耗してんだろ、大人しくしてろ」
「だが……」
参戦しようとする轟たちを止める。
そもそもこいつの個性は俺と同じことをしなきゃ対処出来ない。
俺も他を庇うことなんて出来ないし、余裕がない。
ネロが殺す気なら少なくとも出久が辿り着く前に飯田は殺されていた。
余裕が無くなったらどう動くか予想が出来ない。
ネロの相手は複数よりも俺一人でやった方が戦いやすいんだ。いつ狙われるか、そう考える必要もないからな。
「轟くん……飯田くん……。界くんの言う通りにした方がいいと思う……今の僕たちじゃ却って邪魔になる……」
「そういうことか……」
「くっ……! 僕に力があれば……! 危険だと思ったらすぐに助けに入る……それが条件だ! ただでさえ君も巻き込んでしまったというのに……!」
「それでいい。もう長くはかからねえからな」
果たしてネロの動きを見てそう言えるかは分からないが、本人たちがそれで納得するならそれでいい。
結局は俺が勝てばいいだけの話だ。
「話は終わったようだな……全員で掛かってきたら俺は対処出来ない。それをお前はよくわかっているはずだ……」
「そう言うなよ。お前には一応感謝してるんだぜ。飯田も出久もお前は戦闘不能にすることだけを考えて殺そうとはしなかった。狙いである俺以外殺すつもりがないんだろ?」
「……拳王技界の殺害。それが任務だ。他は関係ない」
殺そうと思えば殺せた。この状況になることを避けられたのにしなかったってことは目的以外殺す気がないからだ。
狙いは俺だけ。
依頼したやつが誰なのかは分からないが、ヴィジランテ時代に伸したやつかもしれない。
あのおっさんと暴れまくったからな。別の先輩が平謝りしてたのはよく覚えてる。
もう一人は呆れてたけど。
よくこういう路地裏でやってたっけな。懐かしい。
思い出に浸かってる暇じゃないな。
「その礼だ。それとよ--ワクワクするんだ。お前みたいな強いヤツと戦えて、こんな状況ってのに昂りが抑えられない。なんでかな……久しぶりに格上と戦えて、そう思ったのかもな」
こいつが関係ない人を巻き込まない点は本当に感謝してる。
それに、もしこれが俺の命でなければワクワクはしなかっただろう。
でもこいつは俺の命だけを狙っている。
だから命がかかった戦いにもワクワク出来るのかもしれない。俺の命だけなら他に喪うものはない。
もしくは言った通り、格上と出会えたのが嬉しかったのか。
どちらにせよワクワクしている。
「第二ラウンド--」
だからこそ--今の俺なら出来るはずだ。
自分自身の高まりを感じている今なら。
更なる高みへ。
俺がいつもの構えを取ると、ネロはポケットから手を出しての小さな構えを取っている。
「行くぞッ!」
一瞬にして目の前に移動した俺は両拳と両脚によるラッシュをしかけ、ネロはそれら全てに対応してきて時折飛んでくる攻撃を弾き、ひたすらに連打を続ける。
互いに攻撃を受けることなく攻防が続き、ネロの突き出してきた拳を俺は消えるように避ける。
背後に回った俺は素早く、それでいて全力の拳を突き出すとネロはギリギリのところで腕を横にしながら掌で受け止めていた。
力が拮抗するように拳と掌が動き。
「でぇりゃあ! だあああっ!」
回転をかけて足を引っ掛け、浮いた瞬間に顎にアッパー。
さらに追撃で頬を殴り飛ばすと地面を削りながら距離が離れる。
「僕と違って……ちゃんと攻撃が当たってる……!」
「これなら心配なさそうだな……!」
「いや……判断すんのはまだ早え」
妙だ。
ネロが個性を使わない。
さっきの感じからして特にこれといった制限はなさそうだが……。
「使わないのか?」
「……ッ!」
今度はネロの方から構えながら向かってくる。
それに対し、俺は予測して腹部が来るであろう場所に拳を振るう。
「がっ……!?」
「ぉおらぁっ!!」
ネロの拳はギリギリのところで顔の横を通り過ぎ、くの字になるネロを右足で真っ直ぐに蹴り飛ばす。
「あんなふうに攻撃してたのか……それに反撃するなんて、流石界くんだ……」
「轟くん……見えたか?」
「いや……どう攻撃するのか分からなかった。緑谷と同じだ」
仰向けに倒れるネロがゆっくりと立ち上がる。
まだやる気らしいが、界王拳の持続時間はまだある。
15倍とはいえ、完璧に慣れている状態じゃないから消耗も激しいし負荷もあるが。
でも完璧に慣れている5倍までの出力じゃ勝てないのも事実だ。
次はどう来る……そう警戒して構えていると。
「う……」
「……?」
「ウォオオオオオオオオオオオオ!!」
「!?」
「ハァアアアアアアアアアア!!」
突如”気“が発せられ、紫色のオーラが溢れる。
叫び声を挙げたこともだが、まだ手を残していたとは思わなかった。
「やっぱり”気“をちゃんと使えるのか……!」
ネロのオーラが消え、拳を開いては閉じてを繰り返している。
おおよそ見えない拳圧は”気“による攻撃だろう。
パワーアップしたならこっちも本腰を入れなきゃいけない。より油断は出来ない。
「来る……ッ!」
加速して放たれた蹴りを避け、追撃するように拳を弾き、蹴りを下がって避けると追ってきながらラッシュをしかけてくる。
それに合わせてラッシュで返し、拳が頬に刺さると頬に拳を返して殴り飛ばす。
さらにすぐに向かってきたネロの胸を殴り飛ばし、互いに胸に衝撃が走りながら押し出されるように距離が僅かに離れる。
そこまで強くなっていない? 少しは速くなっているみたいで個性を使われても攻撃はたまに当たっている程度。深くは刺さっていない。
てっきり一気にパワーアップしたかと思ったが……。
そんな疑問が浮かびつつ肘と肘がぶつかり合い、拳と拳がぶつかり合い、足と足がぶつかり合う。
あまりの威力についぞ周囲の壁にヒビが入り、建物も完全に崩壊して崩れたが、気にとめない。
次々と移動しながら衝突しあっていると、更地になってきた。
再びハイキックでの蹴り合いになり、ぶつかり合ってる足を強引に力づくで上から蹴り返す。
態勢を崩したネロに拳を突き出すとまた大きく距離を稼ぐ。
弾かれたようにガードが外れ、両腕が大きく開かれている。
「今だぁああ!」
その隙を逃さず地を蹴って浮いた俺はトドメの一撃を放つように拳に気を集約させて突き出す--
轟音が響き。
衝撃が駆け抜けた。
「ぐ……は……ッ!?」
予測が通じなかった。
さらに速くなったことに驚きながら俺は腹部を抑えながら数歩後退する。
しかしあまりのダメージに耐え切れず、両膝を着いてしまう。
「拳王技くん!!」
「だ……大丈夫だ……ッ!!」
腹を抑えつつ駆けつけようとしてくるみんなを手で制する。
せ、戦闘力は変わってないってことは……こいつ、土壇場で
な、なんて野郎だ……!
「感謝しよう……拳王技界」
「か、んしゃ……?」
「そうだ……今の今まで個性の制御が出来るようになってから強くなる必要がなかった。する必要もなかった。仕事には今まで支障がなかったからな。潜在能力とやらが解放されて、さらにそうなった。
だがお前を見て俺にもまだ上があると思うようになった。俺にはお前のようなパワーアップする方法はないが、こうして個性を大きく成長させることが出来た」
「じゅ……純粋な成長……ってか……。お前もアイツらと……似たもんか……」
何処まで気を使って個性を使ってなかったかが分からないからヴィラン……と扱っていいかは微妙だが敵にまで急激な成長が起こるなんてな。
ただでさえこいつは素で俺に匹敵していたというのに。
ああ、くそ。まずい。今の俺じゃ勝てねえ。
このままなら俺は殺される。
負ける--
「……何故笑っている」
だというのに。
「さぁ……な……。俺もわからない。だけど……嬉しいんだ」
「嬉しい?」
口から流れている血を手の甲で拭う。
この感覚。
覚えている。
師匠はレベルが違うから別として、自分より強いヤツと出会った時に感じられる高揚感。
格上との戦い。
俺が待ち望んだ、戦い。
だって。
何故なら。
「……ぁ……ウァァァアアアアアッ!!」
途切れた界王拳のオーラが膨れ上がる。
倍率も戦闘力も変わっていない。
0.1秒が読めないなら--さらに先を読めばいい!
さらに成長すればいい!
もっと、もっと先の世界へ--!!
「俺もまた、更に強くなれるっ!!」
「遅い……ッ!!」
0.1秒先の未来を予測--足りない。
全身に襲いかかった衝撃に意識が持っていきかれる。
唇を噛み締めて耐え、0.2秒。
顔面に一撃が加えられる。
0.3秒。
頬が掠り--
「アアッ!!」
「俺の方が--ぐうっ!?」
俺の拳がネロの頬を穿つ。
そのまま押し出し、ほんの数m離れる。
「さっきより数段速いだと!? ならば!!」
ネロが飛び込んできた。
同じように0.3秒の予測。
しかし胸に衝撃が走り、胃液を吐き出す。
強く拳を握りしめ、胸を殴り飛ばす。
速さに追いつける。やつの一撃よりもさらに重たい攻撃を出せる……!
「なんだ……何が変わった!?」
「ありがとな。お陰で身につけることが出来た。俺には辿り着けない領域かもしれない。なら問題ない範囲ですればよかったんだ--」
瞬間。
20倍界王拳!!
こいつが俺を超える力をあるからこそ、俺もまた成長することが出来た。
ただし20倍は俺が耐えられない世界だ。年齢が年齢で肉体がまだ成長途中なため、身体が出来上がっていない。
鍛えるにせよもっと負荷のかかる修行が必要。
でも一瞬ならば耐えられる。
それは体育祭で知ったことだ。誤って全身に纏った瞬間、体中の骨がバキバキになって戦闘不能になっちまうが……そこはコントロール技術に優れているらしい俺。
問題ない。
「ふ……
「ッシャ!!」
そうして俺とネロは互いに攻撃を食らいながらぶつかり合い、数十秒にも渡るラッシュとラッシュを繰り返し、数百発以上の攻防。
互いの拳が頬を殴り飛ばす。
同時に膝を着き、ダメージが蓄積しているのが分かる。
俺も殴る度に負荷が走っていたせいで持ってあと一発が限度だ。
それ以上は俺の手は以前の出久のようにぶっ壊れてしまう。
手が限界を伝えるように震える。
だけど痛みはない。
握りしめて震えを消す。
気持ちが高ぶり続け、興奮が収まらない。
笑みが生まれてしまう。
この感情。
ああ、
拮抗する相手。どちらが上を行くか分からない戦い。
何処まで成長出来るか分からないのが、可能性が知れてもっともっとやりたくなるんだ。
あんたも、同じなんだろ。
その笑みは。
俺と同じ気持ちなんだろうな。
「ハァ……ハァ……」
「ハァ……ハァ……不思議なやつだな……」
「ハァ……あ?」
互いに限界が近い。
息切れを起こっているし気もかなり消費している。
「お前と拳を合わせていると消したはずの感情が浮かび上がってくる。俺は俺の目的のために人の命を奪うことを選んだ……殺しの技術を、個性を身につけた。そうするしか金を稼ぐ方法がなかった。莫大な金額のために……」
「そんな俺がこんなことを思っていいわけが無いが……お前と戦っていると心が踊る。この時間が惜しくなっていく……」
「……そうだな。人を殺すのは正しいとは言えねえさ。理由はどうあれ、倫理に反したことだ。でもよ……殺人者が永遠にそのままってわけじゃねえ。どんな悪人だって先の行動次第だ。お前が変わりたいと願うなら変わればいい。その罪を償うように今度は奪った分以上に多くの人を救えばいい。それが命を奪ったことに対する、出来る贖罪ってもんだろ。
自殺したり勝手に死ぬよか罪を背負って苦しみながら誰かを助けた方が殺された人も報われると思うぜ」
俺も同様だ。
俺は師匠が居なければ生きてたとしてもヒーローではなく、ヴィランになっていただろう。
今度はこの社会を潰そうとしていたかもしれない。
少なくとも師匠の仲間は多くの人を殺して、その罪を背負いながらも世界や人を救うために命を燃やし続けた。
決して許されたわけではないが、その功績が閻魔大王様にも認められ、神にも悪人という枠から外されていたという。
それは神様には許されたってことなんじゃないか。奪った以上に守ったから。助けたから。救ったから。
善行を積んだから許されたんじゃないかって。
「償い……か。全てが終わればそれも悪くはないかも知れないな……。この熱さ、熱をもう感じることが出来ないのが……お前と戦えないことは残念だが」
「何言ってんだ……また戦えるさ。なんたって……俺が勝つからな」
「フッ……俺はこの一撃に全てを込めよう。全身全霊を持って、拳王技界。お前という好敵手を殺そう」
「この一撃でお前に勝つ。俺がこの先の未来へと進むために!」
勝負は一瞬。
互いに構えるだけで何も動かず。指先のひとつすら動かさない。
雲に包まれていたであろう月が姿を現したのか、路地裏の最奥ですら光が照らしてくれる。
その時、俺とネロは同時に地面を蹴った。
「ウォオオオオオオオオオオオオ!!」
「ハァアアアアアアアアアアアア!!」
互いに突き出された全ての籠った拳を突き出し、そしてこの戦いは--
「……ぱ、すげえ、よ……お前……」
ネロの拳が俺の頬に突き刺さり。
「……み、ごとだ……拳王技……界…………」
俺の拳はネロの頬に深く突き刺さっていた。
目を閉じて後ろに倒れるネロを見ながら俺は数歩下がり、勢いよく座り込んだ。
ネロの顔は何処か満足そうに口元が笑っていて、俺は膝に手をやりながら無理矢理立ち上がると殴られた際に閉じてしまってから開ける力すらないため片目を閉じたまま見下ろした。
もう片方の目すら閉じそうになるが、勝った俺が倒れる訳にはいかない。
本当に、ギリギリの戦いだった。
俺が瞬間的に使えるようにならなければ殺されていただろう。
同じ道じゃないのが悔やまれる。
こいつと切磋琢磨出来たなら……今よりも楽しかったんだろうな。
ああ、やべえ。
目が閉じて。
足に力が入ら。
「拳王技くんッ!!」
倒れかけた俺を誰かが支えてくれる。
まともに探知くらいは出来るため、片目を開けるとメガネのない飯田が俺を見ていた。
こいつ……メガネなくなると印象変わるな……すげえなメガネ。
「君は! 君はいつもいつも無理をして!! 今回もまたこんな酷い状態にまで……!」
俺、そんな酷い状態なのか。
確かに浮くならまだしも歩くことはできそうにないが。
せいぜいちょっとの界王拳とかめはめ波一発程度だろう。
ここから戦いになったら負ける自信しかない。
「本当にすまない…… 何も見えなくなっていた! 僕の視野が狭まってなければ! 君も緑谷くんも轟くんも……!! 今度は、今度こそ君は死んでしまうのではと……僕のせいで居なくなるのではと……!」
そう言って涙を流す飯田にいつものように揶揄って言葉を返せる余裕はなさそうだ。
瞬間的とはいえ20倍によって筋肉繊維がやられたのか中々上がらない右腕を無理矢理挙げると飯田は俺の手を追って。
「バカ、野郎」
俺はデコピンした。
いい音が鳴った。
ボキッ!と言った感じだ。我ながらいい攻撃だろう。
飯田の額が赤くなってるレベルだし。
なんか俺の腕が余計に力が入らなくなった気がするが多分気のせいだ。
今ので折れた気がするが気のせいだ。
誰だ20倍使っても瞬間的なら問題ないとか言ったやつ。全然ダメじゃねえか。負荷が大きすぎて数発しか使えねえぞ、これ。
命が掛かった戦い以外では絶対に使わないことにしよう。
「……友達だろ。頼れ、もっと」
「……! こんな僕を、君はまだ……そう、呼んでくれるのか……」
「俺、だけじゃねえ……よ。な」
「……ああ。委員長が居なきゃまとまんねえだろ俺らのクラス」
「そう、だね……。飯田くんは僕たちA組の大切な仲間で……友達だ」
「……ッ。く、ぅぅ……ああああっ!!」
出久がそう笑みを浮かべて言うと、飯田が決壊したように涙を流し始めた。
色々と思うところも後悔も、そういった面があるんだろう。
ただ頼むから俺を抱えながら大声で叫ぶのやめて欲しい。
涙めっちゃ落ちてくる。意識途切れそうなのに声でやられそう。
仕方がねえなあ……。
俺は折れてない左手を動かしてマントを取ると包むように飯田の頭に置いてやった。
その上についでに左手を置いて慰めになるかなーと思いつつ。
それはそうと。
俺は舞空術で浮きながら。
出久はプロヒーローに背負われたまま。
轟はステインとネロを引き擦りながら。
飯田は両腕が酷い有様なので普通に歩いて。
ようやっと路地裏から出れた。
久しぶりに光を見た気がする。ネロとの戦いで更地にしたのは申し訳ない。流石に考えてる余裕がなかった。
「プロの俺が完全に足手纏いだった……何も出来ず、すまない」
「いえ……あの二人、ちょっと強すぎる……ので。仕方がないかと……。界くんですら、こんなですし……」
「ああ、拳王技が時間を稼いでくれて、緑谷が復活してギリギリだった。とにかく今の俺らがヴィランと遭遇したら不味い。合流を急ごう」
「左手は残ってるから一発なら行けるぞ」
「拳王技はこれ以上何もしないでくれ、心臓に悪い」
「病気か?」
「違うと思う。とにかく何もしないでいい、お前が無事なだけで十分なんだ」
そんな俺が死にかけみたいに言わんでも。
せいぜい打撲ばっかなのと所々血が出てるのと内側までダメージが残って多分骨にヒビが入ってるのと片腕が折れてるだけだぞ。
まだ両足と左手と頭が残ってる。
最低あと四回は攻撃出来るな……。
「む……!?」
「あっ……グランと--へぶっ!?」
「連絡しろつったろうが!!」
素早い蹴り。
このじいさんなかなかやるな。出久が背負われてるから加減してるみたいだが。
つーことはこの人がグラントリノって人か。
それに。
「爆豪? お前なんで」
「界、てめえその傷!? 片腕折れてんのに何普通にしてやがんだ!」
「いや全身痛くて無理」
「だったらジッとしてろ!!」
「えっ、お前悪いもん食ったか?」
「後でてめえを爆破する」
「なんだ正常だったか……」
わざわざ全身爆破を使ってまで俺の前に来たから何かやられたのではと思ったが爆豪が俺に応急処置してくれた。
なんかちょっと強くされたが、感覚麻痺してるお陰で特に痛みはなかった。
多分テンション爆上がりしてたからアドレナリンの影響。
にしたってなんでこいついるんだっけ。ヒーロー殺しと対峙した時に来いよ、何してたんだ……位置が分からなかったから戦ってたのかすら分からない。
相変わらずまだ”気の探知“が上手く出来ないし……何が原因だ? 急に感じれなくなったってことは俺の不調ではないしなぁ。
「……ん?」
他のプロヒーローが駆け付けて来たが、俺はそれよりも
北の方角から強い気を感じられる。
違う……これは。
「悪い爆豪。どうやら
「は?」
「ちょっと行ってくるわ」
「おい、行くって何処に……!」
「すぐ帰るからそっちは任せた!!」
あからさますぎる。
これが罠だと分かってながらも俺は残った気を全開にして舞空術で移動を開始した。