無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ?   作:絆蛙

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”無個性“

 

 

飯田くんや助けた女の子との再会。

いつの間にか離れていた界くんが透明な女の子と喋っている姿を見て、不審者にしか見えなかった寝袋の中に居た人が先生だと分かったり。入学式やガイダンスはなく”個性“把握テストをすることとなり、最下位は除籍処分という冗談でも聞きたくなかったことで頭がいっぱいになりつつあったけど、僕は目の前のことに集中する。

唯一笑ってる幼馴染がひとり居たけど、それはそうと僕の番だ。

それと、かっちゃん。

 

「負けねぇぞ」

「僕も負けないよ。キミに勝つ!」

 

位置に着きながら50mのことを考える。

フルカウルは必要ない。僕の”個性“で走らずに瞬間出力の方がいいはず。

 

One For All 瞬間出力30%!

 

爆速ターボ!

 

 

『爆豪3秒02 緑谷3秒02』

 

「クソがッ!」

「同時か…!!」

 

僕とかっちゃんは見事互角だった。

いやこれが50mじゃなかったら僕の負けだった!

瞬発力だったから互角だっただけ。

それでも結果は悪くなく、21人いるため首席だからか最後に回されていた界くんが、トリとして出てきた。

そういえば界くん。まだ重りつけてたような。

 

『拳王技3秒20』

「…ん? 思ったより出なかったな…被害が出ない程度とはいえ”気“を使ったのに。やっぱり足から気功波撃てばよかったか……」

 

最初の部分以外小さくて聞こえなかったけど、100kg付けてそれはもう十分すぎるよ界くん。

むしろ”気“を使ってるとはいえ、重りを外さずどうして”個性“を使ってる僕やかっちゃんに近いタイムをつけられるのか幼馴染ながらよく分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

第2種目 握力測定

 

「先生壊れました」

 

界くんは測定不能。

僕は2位だった。

3位は八百万という女の人で4位は障子くんっていう異形型の子だったみたいだ。

 

 

 

 

 

立ち幅跳び

 

反復横跳び

 

どれもこれも界くんは測定不能。

立ち幅跳びでは宙に浮いていた。前言っていた舞空術*1というやつで、それを聞いた時はもう『浮遊』とかそんな感じの”個性“でいいんじゃないかと思ってた。

反復横跳びに関しては残像が出来てたみたいで、峰田くんって子は”個性“の特性からか測定不能だったけど、僕もかっちゃんも全部上位には食いこんでいる。

けれど問題は、ボール投げで拳王技くんの出番で起きた。

 

「拳王技」

「?」

 

投げようとしていた界くんに先生が声を掛ける。

首を傾げる彼や僕らも先生が声を掛けるという初めての行動に不思議に思っていると。

 

「ボール投げは()()でやれ。()()()()()()()()でな」

「ああ…そうか、見てるのか。見てるよなぁ……いやいや先生。でも俺は本気でやってましたよ。じゃなきゃ測定不能なんて出せません」

 

確かに僕から見ても界くんは”気“を何度か使用している。

けれど先生が言いたいのはそうじゃないみたいで。

 

「俺はお前を見定めなきゃならん。いいからやってみせろ」

「…じゃあ、みんな離れててくれ。これ、普通に周囲に被害が出るから」

 

諦めたように項垂れた界くんがみんなに離れるように言うと、僕やかっちゃんも分からないまま言われた通りに離れる。

先生も少し、離れていた。

何をするつもりなのだろうか。

 

「ふ…っうう……ハァッ!」

 

位置に着いた界くんはボールを高く真上に投げた。

…真上?中学の頃は()()()()()()()()()から記録はなかったけど、何か違うような。

 

「かぁ……め……」

 

両手で嘴のような形を作った界くんは腰辺りにそのまま持っていき。

 

「はぁぁ……めぇぇ……!」

 

青白い光が両手の中からあふれ出し、球状の形を作る。凝縮されたエネルギーの量を示すように砂が巻き上がっていて、離れるように言ったのはこれが理由だと思う。

そしてボールが落下し、徐々に地面に近づいてくると---

 

 

「波ぁぁぁぁぁっ!!」

 

そんな独特の掛け声と共に、突き出された両掌から青白い極光が放たれ、それはさながらレーザーのように雲を突き抜け、見えなくなるところまでボールを吹っ飛ばしていた。

しかし僕は見ていた。

みんなが界くんの記録に注目する中、()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことに。

---違和感のピースが、次々と埋まっていく気がした。

まさか。先生は、”無個性“なのかを試した……?

先生の個性は、先生のヒーロー名は---!

 

 

 

 

「---測定不能。どうやら本当らしいな。それがお前の”力“か」

「うぉおおおおお!!」

「すげぇええ!測定不能が二人!しかもなんだあのエネルギー!」

「ビーム!ビーム出たぁ!」

「ヒーローらしい”個性“だなー!」

「というかまた測定不能だろ!?どうなってんだアイツ!」

「やっぱり凄いね、拳王技くん!!」

 

皆が褒める中、息を吐いて脱力した界くんは何も反応せず警戒するように先生を訝しむように見ていて、僕は声を出していた。

 

「抹消ヒーロー…イレイザーヘッド……!! それが先生のヒーロー名…! そうですよね、相澤先生!」

 

そのヒーロー名は周りは知らない者が大半で、実際にそれほど知名度があるわけではない。

メディアを嫌うヒーローも世の中にはおり、彼は知る人ぞ知るヒーローだ。アングラ系ヒーローと言えばわかりやすい。

僕も”個性“を使用するところを見て、ようやく思い出したほど。

 

「俺を知っていたか、緑谷。そうだ、俺の”個性“は()()。凝視している間だけ視た者の"個性"を抹消する」

「”個性“を消す!?」

「そんな”個性“反則すぎない!?」

「でも、なんで先生は急に”個性“のことを……?」

 

今更になって、自分の失態に僕は気づいた。

この流れは、まずい。

いずれバレるのは分かっているけどこのままじゃ界くんが”無個性“だとバレる!

とにかく責任を取って話を変えて……!

 

「出久。いい」

 

そう思ってたら、いつの間にか界くんが僕の肩を叩いていた。

最悪の事態が訪れようとしてることに汗をかく僕と違って、任せろ、と言わんばかりに彼は前に出ると。

 

「おい。いいのか?」

「どうせいつかはバレる。誰かと親しくなる前に話した方が傷つくこともないだろ、互いにな」

 

かっちゃんが止めるように声を掛けても、界くんは目を一度向けただけで通り過ぎると真剣な顔で先生の前に立つと振り向き、皆の視線を集めながら口を開いた。

 

「みんな、聞いてくれ。どうせいつかは知ることだ。

先生は俺が”個性“を使うか試そうとした。そして”個性“が発動しなければ何も起きないし俺は慌てる。でも先生は”個性“を消したのに俺は”個性“を発動した。別に隠すつもりはなかったけど、ここまで証拠を出されたら白状するしかない」

「拳王技くん……?」

「みんなは俺が強い”個性“を持ってると思ってるかもしれないけど、おかしいと思わないか? 宙に浮き、残像を出し、エネルギー波を生み出す。”個性“で括るにはあまりに出来ることが多すぎる。何より、”個性“を消したのに使えた。簡単な話だ」

 

知り合いらしい透明の女の子が心配するように名前を呼ぶ中で、界くんが今日の個性把握テストのことを振り返るように言うとそういう”個性“だと思ってたみんなも既に違和感を覚えた人もおかしいと思い出したようで。

 

「俺が”無個性“だからだ。だから先生の”個性“が効かない。騙すようになったのは悪いと思っている。みんな思うところがあるかもしれないけど、”無個性“の俺と雄英に居るのが嫌ならば俺は雄英を---」

 

彼の暴露に周りが愕然とする中。

その先の言葉は、僕は止めないと行けない気がした。

違う。彼からその続きの言葉を僕は聞きたくなくて。

この場でワン・フォー・オールを発動することすら躊躇せず、僕は彼の元へ---

 

 

 

 

 

 

 

 

「……凄いじゃん!」

「…ん?」

 

それよりも早く、透明化の”個性“と思われる女の子が彼に近づいてそう言っていた。

思わず足を止めてしまい、その間にもその女の子は界くんの手を握って興奮したようにぶんぶんと揺すっている。

 

「すごい!凄いよ拳王技くん! だってそれって今まで()()()()()()で入試試験合格して、私を助けてくれたってことだよね? 今までの個性把握テストだって全部自分の力で!」

「え、ま…まぁそうなるけど…い、いや結果的にそうかもしれないけど。”無個性“って聞いてた?」

「拳王技くんが今更”無個性“だったとしても関係ないよ! 私はそんな君に助けられたし、すっっごい記録を出してきたのを見てきたもん! みんなもそう思うでしょっ!?」

 

珍しく界くんが勢いに押されてるのを久しぶりに見た気がするけど、彼女が呼びかけると何人かが声を挙げる。

その中にはさっき知り合った飯田くんや女の子もいて。

 

「拳王技くん。君はさっき俺にヒーローとしての在り方を学ぶことを教えてくれた。なら今ここで実践しよう! 君は凄い人だ! 正直”無個性“だということは未だに信じられん!それほど規格外すぎる!」

「さっきのも凄かったもんね!」

「そうだぜ! そういうことなら俺たち以上に努力してここまで来たんだろ?くうぅ……漢じゃねえかお前!」

「うんうん、記録今のところ一位だし、正直関係なくない!?」

「ケロ、私もそう思うわ」

「”無個性“だからどうした!お前より記録が低い上に最下位のオイラはどうなるんだよー!」

「俺よりも順位上だろー!」

「てかそんな色々出来るなら”個性“とほとんど変わらなくね!?」

「”無個性“……」

「俺。増強系の”個性“あるのに負けたのか……」

「”無個性“か……お前も苦しんできたのだな……」

「深き闇に身を置き、深淵を覗いてもなお這い上がって光を求め、栄光を手にすべく極地へと至る…か」

「え、ごめん。自分が暴露したことよりも気になる。なんだって…?」

「界くん!?今気にするところ違うよね!?」

「だあ゛あ゛あ゛!お前は俺が超えるべき相手だ! てめえさっきから黙ってりゃ辞めると言おうとしたな!? つか今まで使ってなかったってことは加減してやがったな! 俺に何度も負け越して地に伏せて死んでからやめろや!むしろ今すぐ殺す!」

「お前ら落ち着け。それから爆豪、俺に”個性“を使わせるな。俺はドライアイなんだ」

 

だんだんと話の終着点が見えなくなってきたからか、それとも先生なりに気を遣ったのか、かっちゃんを捕縛布で抑えつつ”個性“を使用して抑えながら弱点にも繋がることを言っていた。

ただ先生が力を強める必要があるくらいにかっちゃんが暴れて拘束を解こうとしてるため、僕はかっちゃんを説得した。

 

「先生って”個性“強いのに勿体ないっすね」

「”個性“ないお前に言われると嫌味にしか聞こえないよ。それでも悪かったな、試すようなことをしたことは謝る。ここで謝罪しよう」

「いえ、頭をあげてください。先生もわざとこのタイミングで打ち明けさせたんでしょう。さっきも言いましたけどいつかはバレてましたし、結果的に受け入れられたみたいなので結果オーライです。それに親しくなってからの方がお互い辛い思いするかもしれませんから」

「とーいうことで。俺のことは一旦終わり! シリアスな空気は必要ない!もう一発やってきまーす!いつまでも進まないし! ああ、それと…ありがとうな、葉隠さん」

 

最後にそれだけ言って、透明の女の子に笑いかけると雰囲気を変えるべく界くんは最後の一球を投げに向かった---ちなみに今度は普通に投げて測定不能だったため、”無個性“だと知ったからか既に弄られていた。

よかった、昔のようにはならなくて。高校生だということ、雄英というのもあったんだろうけど…それでも”無個性“というレッテルがどんな結果を生み出すのか僕は知っていたから。

その時は僕もかっちゃんも彼の味方で居たけど。

それにしても本当に……強いなぁ、界くんは。僕だったら絶対、無理だ。界くんだけじゃなく、葉隠さんも凄いと思う。

なんだって僕よりも先に動いて、空気を変えたんだから。

彼女の言葉が、間違いなく変化を齎した。

きっとそれは、誰もが思ったはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

まさかの”無個性“暴露する羽目になってしまったが、葉隠さんのお陰でなんだかんだ収まったようで助かった。

排斥される覚悟はしてたぞ。

いくら死ぬ思いを何度もしたというか三途の川を見まくるほどの修行の賜物とはいえ、”個性“ありと戦えてるわけだしな。

危うく『かめはめ波』使ってなかった件について爆豪には爆殺されかけたが…組手で使う技じゃないし。

まぁ先生のせいでもあるので助けてくれてよかった。なにより葉隠さん居たし、恩を仇で返すのは最低だろう。

それよりもあのカラスっぽい人が変なこと言ってたけど気になるんだよな…なんて言ったんだ?

あと測定不能出したら理不尽にも疑われたのは手のひら返し早くない?

いやまぁ、みんななりに気にしてないアピールというのは分かってたので甘んじて受け入れた訳だが。

とまあ、そんな一悶着はあったものの上体起こしは出久が”個性“で頑張ってくれたので記録は出たけど一位。長座体前屈ばかりはどうしようもないので平均。

やろうとしたら”気“を伸ばせば出来たが、いいかダメなのか微妙なラインなのでやらなかった。

あ、持久走も一位だったりする。

その結果---

 

 

「んじゃ、パパっと結果発表」

 

総合一位は俺だった。

二位は爆豪、出久は三位。四位は轟という人と五位は八百万という人だったがなんかこう、上から三人はいつものメンバーって感じ。

 

「あ、ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す、 ()()()()()

「はー!?!?」

 

驚きのあまりか、いだくんのメガネが割れた件について気になったが、大丈夫かなあれ。

刺さってないといいけど。

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない。少し考えれば分かりますわ」

「そうか?あの目は本気だったろ。というか俺を”無個性“だと暴いた先生がくだらない嘘を言うわけなくないか? こればかりは俺の予想だが、”無個性“に対する反応もあっただろうな。一般人にも”無個性“はいる。もし俺を迫害したり”無個性“だからと差別するようならば、見込みなしと判断されてただろう。ヒーローの卵がそんなことをするようならな」

「それは……そう、かもしませんわね……」

「君の言う通り、嘘の可能性もある。結局は俺らが勝手に思ってるだけ。答えはあの先生にしか分からない。どっちも間違えてないってのは忘れない方がいいと思うぞ」

 

嘘だと見破ったからかドヤ顔する女の子が居たので、俺は主観で話した。最後に確定では無いので、フォローも入れつつ。

でも俺はあの人のあれが嘘とは思えない。

ああ、そうか。逆にあれか。この女の人で気づいたが、あの人風に言うならここで”無個性“だとバラしたのも()()()ってやつなのか。いくら隠すつもりもなかったとはいえ、これは…一本取られたなぁ。

というか…ずっとテスト中気になってたんだけどあそこで何をしてるんだ、オールマイト。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

「相澤君のウソつき!」

 

校舎に隠れて見ていた私は戻る途中の彼に声を掛けた。

緑谷少年は入試試験の結果もあって心配ないと思っていたが、記録が気になっていたのと拳王技少年のことが気がかりで来たのだ。

特に彼は、相澤くんは。

去年の1年生、1()()()()()()()()()()()()

 

「オールマイトさん……見てたんですね……。暇なんですか?」

「何かあったら入るつもりだったからね。それでどうだったんだい?」

「貴方の言っていた通りですよ。彼は”無個性“だった。俺の”個性“でも無理でしたから、確定でしょう。力の源は分かりませんが…あの反応ならばクラスでもやっていけるかと」

「そうか……君なりの優しさもあったのだな。それでも君は去年と違って誰も除籍処分にしなかった。それって今年のクラスには可能性を感じたんだろう?」

「『ゼロ』ではなかった、それだけです。見込みがないものはいつでも切り捨てます。半端に夢を追わせる事ほど、残酷なものはない。例え”無個性“だろうと”個性“があろうとも」

 

話は終わりというように相澤くんが去っていくのを私は見送る。

うーんやっぱり彼とはウマが合わないんだよなぁ。それにしても疑ってたわけじゃないけど”無個性“だと完全に証明されてしまったか。彼の力は私にも分からない。

だが、いくら実力があっても”無個性“というのは大きな壁になるだろう。君が現実に押し潰されて、志が折れてしまわないように私も力を貸すが…これからが大変だぞ、拳王技少年……!!

…うん? 待って、彼。普通に私に気づいてない? ま、まずい! 

 

ここで名前を呼ばれるわけにはいかない私は人差し指を口に当てながらしーっと言いつつ、ゆっくりと後退りすると、不思議そうにしながら頷くのが見えたので、安心しながらそそくさと退散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

オールマイトが内緒にして欲しそうだったので頷き、突然頷いたせいで指摘されてしまったので誤魔化しつつ、教室に戻るとちょっとの説明の後解散になって下校時間。

本来なら入学式なので授業はないのだ。

ただ爆豪は何も言わずに先に帰ってしまった。

なんて薄情なやつなんだ。次アイツの好物の辛いもの食べようとしたら甘いものにすり替えようと決意し、それを出久が来てから伝えると苦笑いしながらやめた方がいいと言われた。

確かに食べ物で遊ぶのは良くない。やめておこう。

別の手段で遊ぶか。

 

「二人とも、待ってくれ」

 

そのまま帰ろうとすると、俺と出久の肩に手が置かれた。

首だけ動かして見ると、そこはいつの間にか直ってるメガネを掛けた人。

いだくんだ。

 

「どうした?」

「一緒に帰らないかと誘おうとしたらいつの間にか出ていたから追ってきたんだ。いいだろうか?」

「ああー。それは普通に気づかなかった。俺はいいぞ」

「僕もいいよ。一緒に帰ろう!」

「ありがとう」

 

ということで、仲間が一人増えた。

RPGならあと一人は欲しいところだな。RPGのパーティーで例えるとバランスが悪いというか脳筋パーティーなのだが。

せめて斥候くらい居た方がよくない?

 

「しかし相澤先生にはしてやられたよ。俺は『これが最高峰!』とか思ってしまった! 教師がウソで鼓舞するとは…!」

「あれは本当だと思うぞ」

「というと?」

「わざわざ俺が”無個性“だと明かしたしああ言うことで生徒たちの全力が見られる。せっかく雄英に受かったのに除籍されたいやつなんて居ないだろうし、あの先生は()()()と言っていた。何の意味もなく無駄なことはしないタイプだろ?」

「確かに…!」

「なるほど……そう言われてみればそうかもしれない。俺はまだ見積もりが甘かったようだ!」

 

なんかこの会話、似たようなことをほんの少し前にしたような気がするが、今日起きた出来事のひとつだからそうなるのも必然か。

 

「だが、まさか拳王技くんが”無個性“だとは…俺はてっきり緑谷くんのような増強系かと……あ、すまない……」

「あー気にしなくて大丈夫だぞ。慣れてるし”無個性“なのは事実だからな」

 

他の人は知らないけど、何年”無個性“をやってきたのか。今更気にしない。

それよりも気を遣われる方がこっちとしてもやりづらい。そもそも力に関しては”気“を持ってるからな。”個性“がないだけで。

これもいつか話すことになるだろう。今回は説明出来ずに流れちゃったけど。

”気“は誰もが持っているもの。それは太陽や花、海、大地、自然すら持ってるんだ。

ただ師匠は()()()()()()()は”個性“というものが阻害して”気“を感じられなくしていると言っていたから、出来るかは分からない。

そもそも俺だって師匠が居たからここまで強くなれたわけで、”気“があっても俺のようにはなれないのだ。それなら”個性“を伸ばした方が強くなれると言ってたしな。

それでも”気“というのはあくまで技術のひとつだし、併用して出来る可能性もあるだろう。

バイト先の先輩とそのご友人ならもしかしたら出来るようになってるかもしれないが…ちょっとあの人は真面目な話、普通に強すぎて俺ですら本気出して三割近くしか勝ってないから、そうなると大きく離されてしまう。

三割、つまり十回戦ったと計算して三回しか勝てないのどうなってんだ。

 

「そうか……君は強いのだな。何より諦めずにここまで来て、俺たちにも負けない強さを身につけるなんて生半可な覚悟でできるものじゃない。知り合って少ししか経ってないが、俺は君に尊敬の念を抱いている!」

「そうだよね。界くんは幼馴染の僕からしても凄いんだ! 昔から自分より強い相手にも立ち向かっててね。僕たちが小学生の頃なんだけど---」

「待て待て。それ以上はやめてくれ、はずい。それよりいだくんの”個性“も凄いじゃないか。まだまだ伸びしろがあるだろうし、速度が速いのはいいことだ、事件が起きても真っ先に駆けつけられるし偵察も出来る」

「ああ、俺自身この”個性“を持っていることに誇りに思っているんだ。君の言う通り、この”個性“ならすぐに駆けつけることが出来る。でも俺自身はまだまだ未熟だ。いくら短い距離ではギアが上がり切らないとはいえ、緑谷くんや爆豪くんにも負けてしまった」

「飯田くん…」

「そっか……」

 

やはり予想通り、初速を抜けないとダメなのか。

出久は瞬間的に引き出せるし、爆豪も同じく。

 

「君たちを見ていて思ったよ。俺ももっと強くなりたいと」

「なれるだろ。そのための雄英だ。そのためのヒーロー科だ。

それになんたって”無個性“の俺がここまで来れたんだぜ? まあ抜かせるつもりはないけどな」

「ふ…拳王技くんが言うと説得力が凄いな。そうだな…今はまだ追いついてないが、必ず追いつく…いや二人を追い抜いてみせる」

「僕も、僕らも負けられないね……」

「追い抜いて見せろよ、自慢の脚でさ」

 

主に戦いたいという意味でだが。

それでも、不思議なことにいだ……いいや。

 

「俺らは待つことはしないからな、飯田」

「拳王技くん…。だから俺はいだ…うん? まさか分かっていてやっていたのか!?」

「まっさかー」

「そんな下手な嘘では誤魔化されないぞ!?」

 

飯田の目の奥には、火が点った気がした。

きっと大きく成長するだろう。俺はそんなこいつと、戦いたい。

それはそうと、からかうのが楽しくてつい。

なんて口に出したら相変わらず変な動きをしながら注意する姿におもしれーやつと思いながら聞き流してると、範囲内に二人の”気“を感じる。

 

「おーい!」

「御三方、駅まで?待ってー!」

「拳王技くーん!」

「君は∞女子!と……透明女子!」

「(爆豪かな?)」

「(特徴って…かっちゃんみたいだなぁ)」

 

幼馴染だから分かるが、間違いなく俺と出久の思考は一致していた気がする。

 

「透明女子!?間違ってないけど、葉隠透だよ!」

「麗日お茶子です!葉隠さんとはさっき会ってね! えっとそっちは飯田天哉君に拳王技界くん、緑谷……デクくんだよね!」

「デク!?」

「だって朝爆豪くんがデクって」

「あー……」

 

なんで知ってるのだろうと思ったけど、察した。

多分俺が葉隠さんと話してる間に会話の中で爆豪が呼んだのだろう。

 

「え、えっとね麗日さん。本名は出久で、デクは昔かっちゃんと仲直りする前に、バカにしてつけたヤツなんだ」

「蔑称か」

「えーーーそうなんだ!ごめん!!!でも『デク』って……」

 

『頑張れ!!』って感じして、なんか好きだ。私!

 

「デクです!!!」

「それでいいの!?」

「実は爆豪が出久呼びしたら変な感じがあって、俺が爆豪をからかったらデク呼びに固定されてしまったんだよな」

「拳王技くんが原因だった!?」

「緑谷くん、それは蔑称なんだろう!?」

「コペルニクス的転回……!」

「こぺ?」

 

好きという単語に反応したのかは分からないが、ナード部分全開で顔を真っ赤にする出久を見つつ、そういや仲直りしたあとは出久と呼んでたなぁと思い出した俺は口に出してしまった。

 

「爆豪ってからかうと面白いんだぞ」

「爆豪くんをからかうのって難易度高そうだよ?」

「そこは慣れだな。幼馴染だし」

「あっ、だから三人とも仲良いんだ」

「ああ、そういえば会場でも言っていたな」

 

葉隠さんの言う通り爆豪をからかうのは難しいが、反応は面白いのでなれたら実際に可能になる。

というか幼馴染だってことは飯田以外には言ってなかったな。

 

「でも、デクくんさっき仲直りしたって言ってたよね」

「うん! ちょっと色々あったというか……全部界くんのお陰なんだけどね」

「お前と爆豪の仲に関してはきっかけを作っただけだぞ。俺と爆豪については俺が殴り飛ばした結果だ」

「殴り飛ばしたのか!?」

「一応いじめられっ子といじめっ子の関係性だったからな。俺と出久は前者」

「意外! でも解決方法がなんだか男の子って感じ! ただ拳王技くんがいじめられてるところは想像出来ないかも…実際どうだったの?緑谷」

「界くんはいじめられてたというより…普通に反撃してたというか……僕を守ってくれてたから」

「はえ〜昔から拳王技くんって強かったんやねぇ」

「いや仲直り後の二回目のリベンジマッチは普通にボコボコにされたぞ。なんか急に強くなってて驚いたのはまだ覚えてる。

完封したのは10歳だな。流石に”個性“持ちに一年以内に勝つのは厳しくて二年かかった」

「そ、それは十分では無いのか…?」

 

とまあこんな風に何故か自然と俺と出久と爆豪の話題となってしまったが、俺たちは五人で分かれるまで一緒に帰っていき、入学早々新しく友達が出来た。

 

 

 

 

 

*1
体内の気をコントロールし放出して浮遊、飛行する技。

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