無個性だって必死で努力すりゃヒーローになれるかもよ? 作:絆蛙
入学式---は見事個性把握テストによって消されてしまったが、その翌日。
意外にも普通の授業だった。ヒーローを養成する学校の最高峰とはいっても、高校は高校ということなのだろう。
「おらエヴィバディハンズアップ盛り上がれー!!」
説明会の司会の人---マイク先生も授業してくれたのだが、彼も思ったより普通にしていた。
英語使ってるだけあって英語の先生だったようだ。
爆豪は退屈そうにしていたし俺も出久も普通についていけてた。
何より。
昼!
俺が一番楽しみにしていた時間がやってきて、俺はわくわくしながら大食堂に向かった。
なんと一流の料理を安価で食べれてしまうのだ。いくらバイトしてるとはいえ食費が嵩む俺にとってなんて喜ばしいものか。
あまりに嬉しすぎて猛ダッシュしてしまった。突風を起こしてしまったが、許して欲しい。
俺の大本命が終わってしまい、満足のあまりニコニコしつつ漫画のように膨れる腹を擦りながら午後の授業。
普通ではなく、ヒーロー科だからこその授業もあるようで。
俺は接近してくる”気“を感じ取った。
「わーたーしーがーーー!!!」
「来っ」
「普通にドアから来た!!!」
誰か既に分かっていたため、特に驚きはしないがドアから入ってきたのはオールマイト。
周りがざわざわと興奮したように騒がしくなる。
「オールマイトだ……!」
「すげぇや。ほんとに先生やってるんだな……!!」
「
「画風違いすぎて鳥肌が……」
「私の担当はヒーロー基礎学!ヒーローの素地を作るために様々な訓練を行う課目だ!!!当然だが、単位数も最も多いぞ!」
「早速だが今日はこれ!!!」
言葉と共に出されたのは、BATTLEの文字。
「戦闘訓練!!!」
「戦闘……」
「訓練……!」
「いきなり実戦形式か!わくわくするな!」
上から出久、爆豪、俺だった。
聞いた瞬間、俺の腹はいつの間にか戻っていたが、そんな些細なことよりも楽しみで仕方がない。
「そしてそいつに伴い、こちら!!!」
オールマイトの声に応じて教室の壁がせり出してくる。
こう、隠し扉でも作れそうでハイテク感すごい。これ出来るなら重力室作れるか? いや麗日さんの”個性“を使えば訓練を…浮かせるしか知らないから重力操作ってわけではないか。
「入学前に送って貰った「個性届」と「要望」に沿って誂えた…
「おおお!」
「着替えたら順次グラウンドβに集まるんだ!!」
『はーい!!』
それぞれの番号が書かれたものを持っていき、更衣室で俺たちは着替えた。
確か被服控除というやつで『個性届』と『身体情報』を提出し、サポート会社に申請したら”個性“など自分にあった最新鋭のヒーロースーツを作ってもらえるというものだった。
まぁ俺は”無個性“だからバイト先に頼んで別の筋から用意してもらったけど。というかバイト先で言ったらこっちが用意するとか言われた。
なんでも”無個性“だからと手を抜く可能性もあるとか。別に着れたらいいのに。
「格好からはいるってのも大切なことだぜ少年少女……自覚するのだ!!!!今日から自分は」
ヒーローなんだと!!!
出久はまだ時間がかかっているようで来てないが、近づいてくる”気“に反応して振り向く。
と、そこには。
手袋とブーツがあった。
手袋とブーツ。
…手袋とブーツ?
「おぉー拳王技くんかっこいいね!」
「葉隠さん…」
「凄く似合ってるよ! こう、武闘家!って感じ!」
俺の服は武道着だ。今は重りは無い。
師匠と同じものは
未だにあれは家に何重にも覆ってホコリが被らないように大切に保管されている。
「あ、ありがとう。いやそうじゃなくて、葉隠さんそれだけ?」
かっこいいとか似合ってると言って貰えるのは正直嬉しい。師匠に似せてるしな。
しかし俺は嬉しさよりも彼女の服…というか服と言えないのが気になっていた。
「そうだよ?」
「それでいいのか…?だってそれ、すっぱだk」
「は、裸じゃないもん! 手袋とブーツはしてるし!」
「ま、まぁそうだけど…”個性“的には仕方がない、のか…」
「そ、そうそう!最大限活かすために、だよ! もう、えっち!」
「俺が悪いのか!? いやデリケートな部分だもんな…すまない」
俺の教えはほとんど師匠からだ。残念ながら女性のことに関しては修行できるものでもなく、教えもない。怒るとおっかないとは言ってたっけ。
何より”無個性“であることから俺もまた出久同様関わることがなかったのだ。
耐性がない出久と違い、俺は気持ちを察する能力が低いのだろう。
それはそうと”気“を高めることで透明を無効化出来る…見たいなのがなくてよかったと、心から思った。
「ヒーロー科最高」
なんだこいつ。
ああ、なんか頭のボールくっつけて反復横跳びで気持ち悪い動きしてたやつか。
それから出久が合流してきて、彼は薄緑色の生地に白いラインが入ったシンプルなデザイン。二本の角と歯のような形のマスクと明らかにオールマイトを模したであろうコスチュームだった。
なんというか、出久の落書きまんまって感じだな。
「良いじゃないかみんな。カッコイイぜ!!」
「ムム!?」
オールマイトの視線の先には緑谷出久のヒーロースーツがあり、どうやら本人も気づいたようだ。
てっぺんの二本角……!
「(わかりやすい……!!)」
気づいてないのは多分出久だけだろう。
笑いをこらえてないか、オールマイト。
「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?」
すると白いフルアーマーなコスチュームを着た人物が質問をしていた。
”気“からして飯田だとは思ってたが、かっこいいなそれ。
「いいや、もう2歩先に踏み込む!屋内での対人戦闘訓練さ!!」
真に賢しい
「君らにはこれから「敵ヴィラン組」と「ヒーロー組」に別れ、2対2の屋内戦を行ってもらう!!」
「基礎訓練もなしに?」
「その基礎を知るための実践さ」
「ただし今度はぶっ壊せばオーケーなロボじゃないのがミソ」
「勝敗のシステムはどうなりますか?」
「どこまでならぶっ飛ばしていいンスか?」
「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか……?」
「分かれるとはどのような分かれ方をすればいいですか?」
「このマントヤバくない?」
「間食入れていいすか?」
「んんん〜〜、聖徳太子ィィ!!!」
オールマイトの説明に矢継ぎ早に質問が入る、一部質問とは言えないのが混じってた気がするが。
それを受けてオールマイトがカンペを取り出しながら説明を付け加える。
要は屋内に隠してある『核兵器』に見立てた目標を制限時間内に回収するか『敵』を捕まえればヒーローの勝ち、制限時間まで『核兵器』を守るか『ヒーロー』を捕まえれば敵の勝ちになるらしい。
やけに設定がアメリカンだ。
「コンビ及び対戦相手はくじだ!!」
「適当なのですか!?」
「プロは他事務所との急造チームアップもよくあるからそういうことじゃないかな」
「そうか……!先を見据えた計らい……失礼致しました!」
「いいよ!!早くやろ!!!」
ということで、くじ引きを---
「あ、拳王技少年は待機ね」
「うそだろ……!?」
「い、いやいやまるで死を目の当たりにしたかのように絶望しなくとも! ほら、このクラスは21人だろ? そうなると必然的に一人余る! そこで君は首席というのもあり、シード枠ってことさ! 相澤くんのテストの件も含んだ結果ね!」
「あ、なるほど。ならいいか」
確かに入試一位、個性把握テスト一位となれば選ばれるのは当然か。
危うく俺だけ参加禁じられるのかと。そんなの完全に餌をおあずけされる動物の気分だぜ。
「ちなみに対戦相手と相方は全部終わったあとに募集するぞ! 誰も挙手がなければ体力がある者だけに絞ってくじ引きになる!」
「わかりました」
ということなので。
見事暇になった俺はその辺で体育座りしながらくじが終わるまで待機してると、結果が出てきた。
チーム分け、どうやら出久は麗日さんと。
爆豪は飯田くん。
葉隠さんは…尾白?という人とペアのようで。
「続いて最初の対戦相手は……コイツらだ!!」
「
これはまた、面白そうな組み合わせが出たもので思わず口角が上がってしまった。
まさか俺の知り合いが見事ぶつかり合うってどんな確率なんだ。
まるでこうなることが必然だったかのように。そう、”運命“のようだ。
僕のヒーロースーツは母がくれたものを改良したものだ。
利便性も最新鋭も関係ない。
僕は母がくれた、母の気持ちであるジャンプスーツを着て、ここに来た。
これからはより応援するから、と言われたことがどれだけ嬉しかったか。これを着ずして、何を着るというのか。
それから麗日さんと会話すると、ついにくじが決まった。
僕と麗日さんがチームで、対戦相手はかっちゃんと飯田くんだ。
「相手はデクか……おいメガネ。油断すんなよ、目指すなら2-0の完全勝利だ!半端な勝利なんぞいらねぇ!」
「爆豪くん…!」
「僕は入試でも昨日の個性把握テストでも君に負けた…。だから今回は負けないよ、かっちゃん! 僕達が”勝つ“!」
「デクくん……」
ただの運なのかもしれない。
この四人が選ばれたのも、相手がかっちゃんなのも。
それでも僕はよかった。この巡ってくれたチャンスは僕にとっても好ましいものだ。
「いいね、熱いじゃないか! ヴィランチームは先に入ってセッティングを。5分後にヒーローチームが潜入でスタートする。他の皆はモニターで観察するぞ。基本止めないけど、やりすぎたら止めるからね」
「訓練とはいえヴィランになるのは心苦しいな……これが核兵器。これを守ればいいのか。爆豪くん、作戦はどうする?」
「どーもしねぇ。一択だろ。俺がデクを止める。お前が守れ」
「だがひとりじゃ危険では無いか?」
「デクはあのヤローから直接鍛えられてんだよ。仮に二人で止めにいったところで”戦って勝つ“形式じゃねぇ。俺らが撒かれるか、もしくは丸顔に回収されて終わりだろ。あのバカと違ってデクは別に戦うことを優先はしねーよ」
「しかし……!」
納得しようとしない。
あまり言いたくねぇけど仕方がないか。
埒が明かないから直接言ってやる。文句は言わせねーぞ。
「お前じゃ
「っ……!」
「デクは昔から色んな”ヒーロー“を目にしてきた。お世辞にもちいせぇ頃はヒーローになれる”力“はなかったからな。その分洞察力やら作戦を立てる能力など長けてやがるし、俺と実力差も対して変わんねェ。侮ったら負けンのはこっちだ。言っただろーが。目指すなら
「わかった……核は僕に任せてくれ!」
「頼んだぞ」
「ああ!」
「(僕では彼らには届かない……だが、彼は”仲間“として頼ってくれている。なら、今はその期待に答えるだけだ!)」
油断はしねぇぞ、”出久“。
俺はもっと上に行く。あの時、俺は”心“で負けた。
あのバカにも、出久にも。
”個性“があっても、”無個性“のあいつらに負けた。自分の弱さに見て見ぬふりをして、逃げて、そうして負けた。
もう逃げねぇ。もう見下さねぇ。てっぺんを目指すなら、ここにいるやつらは全員ライバルだ。
『っ、はぁ……はぁ……む、むかし…かっら…。言って、だろ…! お前はそんなに強い”力“があるだろ…。 だったら逃げるなよ…!出久に向き合え…! こんなところで終わるようなやつじゃねぇだろうが! お前の強さを誰が目にしてきた? 誰が近くで見てきたと思う……!お前らの強さは
---出久にすら勝てねぇよ!!
クソが。
ふとした時に
俺は強くなんかねぇ。本当に強いのは”界“だ。
何度も何度も俺に立ち向かってきやがって、何度返り討ちにしようとも向かってきやがった。
そうして、気がつけば追い抜きやがった。
自分の傲慢さが原因だ。
才能がある。なんでもできる。自分はすごいんだと。
違う。出久も界の野郎も、俺には無い強さがあった。認めたくなかった。
『かっちゃんはオールマイトに憧れたんだろ…! 今のかっちゃんは、胸張ってオールマイトに憧れてるって言えるのかよ! 終わりにしようよ…かっちゃん! 僕がすごいと思ってる君は、そんなんじゃない!
勝利の権化の君だから!
どんなときも諦めず勝とうとした君の姿が! 僕に、僕たちにないものをたくさん持っていた君は!
負けた。
言っていたように、負けちまった。
勝てなかった。実力は上でも勝てなかった。
あの瞳を、真っ直ぐな光を目にした時に確信して、負けた。
界だけでなく、出久に負けて---気づいた。
自分の弱さに、本当の弱さに。
ずっと上にいるんじゃない。ずっと下だったんだ。
だから俺は。
「勝つぞ」
「ああ!」
同じように追いかけるって決めたんだ。
今度は、対等な存在として。隣に立つんじゃなく、追い抜くように。
ずっと上に居続けるあいつらに負けねぇように。
「相澤先生みたいに除籍とかそういうのはないみたいだから安心……してないね?」
「うん…相手がかっちゃんだから」
「幼馴染…なんだよね? 仲は良さそうだけど…」
「かっちゃんは凄いやつなんだ。”個性“も勉強も運動も昔から何でも出来て、ある日から強さにも磨きがかかった。それこそ、界くんにだって勝つくらいに。
入試でも昨日でも負けて、でも、だからこそ」
”負けたく“ない。
「男のいんねん!ってやつだね!」
「ごめんね。巻き込んじゃって」
「いいよいいよ!チームじゃん!」
巻き込む形になってしまったのに麗日さんはチームだと言ってくれる。
そのことが凄く嬉しくて自然と笑顔を浮かべると。
『じゃあ、AコンビVSDコンビ。屋内戦闘訓練スタート!』
訓練開始だ!!!
「侵入成功……!」
「死角が多いから気をつけよう」
窓から侵入した僕たちは頭の中にある見取り図を思い浮かべながら核がある場所を目指す。
周りに気をつけながら進んでいくと。
「死ねェエエエエ!!」
「やっぱ来るか!」
死角から飛んできたかっちゃんに対し、僕はフルカウルを10%纏うと即行で麗日さんを抱えてバックに跳ぶ。
「デクくん!」
「大丈夫!」
「チッ、避けてンじゃねぇよ---ヒーローが怖気付いていいのか、アア!?」
相当なりきってる!!
目まで吊り上げて、表情が怖いよ、かっちゃん!!
界くんに対してブチギレてる時のかっちゃんみたいだ!!
でもきっと、かっちゃんも同じ考えだ。彼を抑えられるのは僕しかいない!
「麗日さんは作戦通りに!」
「死ねェ!!」
一言だけ告げると、速攻。
かっちゃんの癖!右の大振り---
「じゃない!!」
フェイント。
下に爆破し、僕の視界を塞ぎながらかっちゃんは宙に浮く。
狙いは当然。
「させるかよ---っ!」
麗日さん!
瞬間出力20%のデコピンによる空気圧。
攻撃を避けたかっちゃんを、僕は跳びながら蹴り飛ばす。
ガードされた上に勢いは殺され、互いに着地した。
「やるじゃねぇかクソデクゥ!」
「かっちゃん…違うよ」
「あ?」
「今の僕は」
『頑張れって感じの』デクだ!!
---あの時はただそう思って、なんとなしに言ったセリフが、力になっていることを知って嬉しかった。
最初の一撃。全く反応出来なくて、もし一人で対峙してたならあっという間にやられていた。
凄いとは分かってたのに、実際に近くで目にするともっと違って。
「私も、もっと……!」
その背中は、彼の姿は、本物のヒーローみたいだった。
---モニタールーム。
「え……!?」
「攻撃の直前でやめて麗日狙いに行くって!」
「よく反応したな緑谷!!」
「それに何回攻防挟んでるんだ!?」
「まだ序の口だ。本番はこっからみたいだな……二人とも楽しそうだ」
「楽しい……?」
「(拳王技少年にばかり目が行き過ぎていたが、あの二人! 間違いなく頭一つ二つ抜けてる…! すごいな、少年たち!)」
------
MANCHESTER SMASH!!!
「っ、ぅ…でぇ……!なァァァ!!」
「うっ!?」
かかと落としを右腕で防御され、左掌から爆破される。
すぐに腕を蹴って距離を稼いだお陰で直撃は避けられた!
でも。
「デラウェア・スマッシュ!!」
「
しっかりと対応される。
視界が遮られた。今!
「甘ぇ!!」
「待ち伏せ!?」
爆風を抜けた瞬間、目の前には爆ぜる寸前の掌。
回避は不可。
なら! 多少のダメージ覚悟で掌を抑え。
「……!」
「これで!!」
右拳を頬に振り抜く。
強引に抑えたとはいえ、直接爆破を受けたようなもので、左手が熱いしヒリヒリする。
顔を顰めてしまうが、直撃した。
多少のダメージに。
「まだまだァ!!」
「相変わらずのタフネス!!」
速攻で飛んでくる。
普通ならダメージですぐに復帰は出来ないのに!!
くそ、左手が痛くて使えない! 切り替えろ!!
目眩しするような軽い爆破。思わず目を瞑ると、目の前に居ない。
爆破の音で判断し、後ろに回し蹴り。
通り過ぎた。
よく見れば、出力を減らして落下速度を遅くしてる!
「ッラァアア!」
「くううっ!?」
咄嗟に右腕で顔を覆い、防御する。
せっかくのジャンプスーツが破けたけど、何とかダメージは減らせた。
「瞬間出力---30%!」
今出せる全力で駆け出す。
迎撃するようにかっちゃんはタイミングを合わせて薙ぎ払うような爆破をしてくる。
「ギアを……!」
僕はそれを、5%に戻すことで避けた。
突然速度が下がってしまえば、狙いは外れる。
ギリギリを狙った僕は目を見開くかっちゃんに対し、30%の拳を腹部に叩きつけ、そして。
「がぁっ……!」
「うぁ!?」
互いに吹き飛んだ。
壁に背中をぶつけ、起き上がりつつ左肩を抑える。
ああもう、毎回思うけど反射速度どうなってるんだよ! 攻撃を外した後に一瞬で判断して反撃なんて出来るか!?
やっぱり直接戦って勝つのは厳しい! ただでさえ時間付きなんだ!
「麗日さん……!」
『ごめん!飯田くんに見つかっちゃった』
「今どこ?」
『五階の……真ん中フロア!』
「了解!!」
「随分と余裕だなァ!?」
「あるわけないよ!」
向かってくるかっちゃんを見ながら僕は地面に向かって20%で殴る。
コンクリートの壁を形成し、構わず爆破してくるけれどその一瞬を突いて側面に回り、デラウェア・スマッシュを放つ。
「チッ!」
回避を選択したようで、爆破の勢いを使って天井まで跳んでいた。
その時間があればいい!
僕はひたすら前に走る。
かっちゃんなら、ここから---
「逃がすかァァ!」
背中に爆破を受ける。
背中が焼けたんじゃないかというくらい痛くて体が勢いよく投げ出されるが、かっちゃんは大振りで攻撃していたため、硬直がある。隙を晒したらこうなることは分かっていた。
正直一か八かの賭けだけど!
僕はその勢いを利用した。
「っ、しまっ……」
さっきのデラウェア・スマッシュはかっちゃんを狙ったものじゃなく、窓を狙ったもの。
壊れた窓は当然障害にならず、縁を全力で跳んだ。
目指すは五階!!
----
熱くなりすぎた……!
何か企んでるってのは分かってたのに、核さえ抑えりゃデクたちは勝ちだ! さっき自分で言っておいてやっちまった!
なら間違いなく向かった先は五階!
こっからじゃ間に合わねえ……負けるってのか…!
ざけんな、まだ決まったわけじゃねぇ!!
------
機動力では負けてない僕は麗日さんと合流すると、五階のフロアは綺麗に片付けられている。
麗日さんの”個性“で周りを利用出来なくしたのか!
でも飯田くん一人なら、2対1で押せる!
「麗日さん!」
「うん!」
駆け出す、まさにその瞬間。
僕らの背後で大規模な爆破が天井まで貫いていた。
そこから出てきたのは、かっちゃん。
「逃がすかよォ!!」
「っ、本当に僕の予想を超えてくるよね、かっちゃん!!」
ダメだ、かっちゃんの相手をしなくちゃならない。
麗日さんにはひとまず退いてもらって、二人を引き付けてそして---
「デクくん!伏せて!」
「へ?わぁああ!?」
「は?」
思考が中断されて、わけも分からず咄嗟に反応してしゃがんでしまう。
すると僕の頭上を
「必殺!彗星ホームラン!!!」
「ホームランではなくないかぁああああ!?」
石の礫が飯田くんを襲い、僕は30%の出力で柱を避けるために後ろに避けたかっちゃんに組み付く。
「離せクソデク! ---邪魔だァ!」
暴れるだけじゃなく、空いている手で爆破される。
痛みに食いしばって耐えながら離さないでいると。
「確保!!」
「あぁーーー!!!核ゥーーー!!」
『ヒーローチーム、WIIIIIIN!!』
それと同時に、僕は力尽きたようにフルカウルが解除され、地面に落下---する前に手を掴まれた。
ぶら下がりながら見ると、そこにはかっちゃんが居て。
「……大規模な爆破しちまった。今回は負けだ、デク」
「かっちゃん………」
「次は”俺が勝つ“」
「…次も僕が勝つよ」
「調子乗んなや!」
「いたっ!? そ、そんな乱暴に落とさなくたってよくない!?」
「あのまま落ちるよかマシだろうが!」
「そっ、それはそうだけど!!」
オールマイトたちがいるモニター室に僕たちが着くとみんなが歓迎してくれて、程々にオールマイトが口を開く。
「では、講評に移ろう……今回のベストは、飯田少年だな!」
「勝ったお茶子ちゃんや緑谷ちゃんじゃないの?」
「なぜだろうなぁ~?分かる人!?」
「はい!」
八百万さんが手を挙げると、口を開く。
「それは、1番状況設定に適していたのが飯田さんだからですわ。爆豪さんは緑谷さんを抑えるにしても単独先行しすぎなのと最後の爆破に関しては倒壊の危険性もありました。緑谷さんは序盤から中盤にかけては目を見張るものがありましたが、少々無茶が過ぎます。
麗日さんは中盤の気の緩み。最後の攻撃なんて緑谷さんに当たってたら本末転倒です。ハリボテとはいえ核を刺激するような危険な行為は褒められたものじゃないですわ」
静寂が場を支配する。
かっちゃんはわーってらと自覚してることを言われたからか若干機嫌悪そうに。僕もまた勝つためとはいえ、本当にヴィランとの戦闘なら怪我じゃ済んでなかった行為を自覚している。
「ま、まぁ、飯田少年も硬すぎる節はあるが、そんなところだね」
「常に下学上達---と言いたいですが、あれほどのレベルの戦いを見たあとでは…」
「そうだって! 手に汗握る戦いだったもんな!」
「正直二戦目のハードルが高すぎるって!」
次々と僕やかっちゃんを褒めるような言葉が投げられ、慣れてない僕が戸惑っていると、視界の端に界くんが見えて。
彼は口パクでこう言っていた気がする。
---言っただろ? おめでとう、と。
”個性“をオールマイトから受け継いだのもある。
ただ彼からそれを言われて、改めて僕はかっちゃんに勝てたんだという実感を得られた。
「次は勝つわボケ! なんならもう一戦してやろうか、なあデク!?」
「さ、流石に僕は無理!!」
ただでさえ今回だってギリギリなのに。
連戦したら絶対手も足も出ずに負ける……!!