聖龍伝説 現政奉還記 創生の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 黒武士の凶行が各地・各異世界で横行し、秩序が更に乱れていたとき、聖龍隊を招集した三つの組織。ライフル協会とハワード財団とバチカン。その三つの組織は聖龍HEADだけでなく新世代型たちも招集させ、彼らに自分たちと新世代型の始祖である小田原修司の親密な関係性を明かした。聖龍隊の組織を維持する為、そして己と二次元人の実権を保守する為に世界情勢を陰で操作できる程の影響力を持つ三つの組織と親密な関係を深めていた修司の実態を知って愕然とする新世代型。更にHEADから明かされた小田原修司の真実をも知って、新世代型たちの心境を察した赤塚組頭領の大将は彼らの代わりに漢泣きするのだった。果たして呪われた三次元人、小田原修司を始祖に持つ新世代型二次元人に穏やかな日々は戻ってくるのだろうか。



現政奉還記 創生の章 憎悪の矛先

[鬼神が背負った業]

 

 聖龍HEADと共に新世代型達が出会ったのは、世界情勢を陰で動かせるほどの著名な組織の代表ばかりだった。

 ライフル協会、ハワード財団、バチカン。武力に財力、そして所有財産と情報収集力など、それぞれに長けた組織との会合は新世代型達に衝撃を与えた。

 アメリカという大国を支えるライフル協会との関係を親密にさせるために、日本の様々なアニメキャラクターをモチーフにした銃器の売買を認可させた小田原修司の奇策。

 世界の三分の一を実質支配しているハワード財団と同等な立場を得るために二次元人の戦力を提供した策。

 そして宗教国バチカンとの関係を深めるため、彼らに協力していた修司。

 完全な善行とは言えない修司の政策に対して、彼を始祖に持つ新世代型二次元人達は多大な懸念を募らせた。

 そして世界が求めるのは、人間兵器であり、世界の均衡を保ってきた重要人物の一人、小田原修司に成り変わる逸材。そして世界の覇者達はそれを新世代型に求めていた。

 自分達は確かに小田原修司のクローン。だが、その小田原修司に成り変わる代用品としてしか求められてないのか。と、新世代型達は悲愴な思いで考えさせられるのだった。

 そして聖龍HEADから聞かされた小田原修司の真実は非常に重く、切ないものだった。世界の権力の傘に自身と二次元人の立場を保守してもらう為、世界に人間兵器として自らを身売りした修司が背負ってきた数多くの業と責務。その重責に新世代型達も、彼らと共に話を聴いた赤塚組も悲愴に暮れるのだった。

 

「タクッ、キナ臭え話だぜ」

 HEADから話を聴いて一しきり漢泣きした赤塚組頭領の大将は、旧友である小田原修司が二次元人を保守するために裏で行ってきた数々の政治的政策に苛立ちを募らせていた。

 大将が一人、悶々としている中、そんな大将を赤塚組の幹部達は険しい表情で見つめ、新世代型達は悲愴な面持ちで見据えていた。

 そんな大将に修司の陰の政策と、それに対しての彼の重責の真実を語った現聖龍隊総長のバーンズが言葉をかける。

「大将、お前たちの気持ちも尤もだが、イライラするのもそれくらいにしろ。お前一人が悶々と苛立っていても何も解決しないだろ」

「わ、分かってらあ! なんだい、テメェらは修司が裏で色々とキナ臭えことしていたってのに、よく涼しい顔していられるな」

 大将がバーンズ達HEADに言い返すと、バーンズは落ち着いた面差しで大将に言い返した。

「世の中が理不尽で不条理な事実で成り立っているのを、お前らも熟知しているだろ。だから義賊なんて真っ当ではない事をやっているんだろ」

「ッ、そ、そいつは……」

 バーンズから手厳しい指摘を受けて、返す言葉がない大将。

 すると、そんな感じで聖龍HEADと言い合いになりかける大将に、新世代型達が言葉をかけてきた。

「大将さん、もういいんです。それにバーンズさんが言っている通り、今さら何を弁論したって遅いことです」

「そ、そうかもしれないけどよ……でも、お前さん達はこのままで良いのか?」

 大将に宥めの言葉をかける琴浦春香の言葉に対し、大将は問い掛けながら彼女ら新世代型達に訴え掛けた。

「お前さん達は、いくら二次元人の現状を守る為とはいえ汚い組織とも関係を持っていた修司のやり方に納得がいくか? 物騒なライフル協会、実質世界経済の支配者ハワード財団、そして世界中に信者を置くキリスト教会……そんなキナ臭い連中と関係を持ってまで二次元人の未来を護ってきた修司の政策に納得いくか?」

「そ、それは……」

 大将からの問い掛けに琴浦春香が返す言葉を探していると、春香に代わって新世代型の大門ジョセフィーヌが大将に伝えた。

「組織を維持する為……保持する為に強大な別組織と裏で手を組み、共同しなければならない事情はそう少なくないわ」

「だ、だからってよ、大門のおっさん。それじゃあんたらが……新世代型が哀れでしょうがないぜ」

 すると、この大将の発言を聞いて美都玲奈が突っ返した。

「貴方は……私たち新世代型を旧友である小田原修司と見比べて同情しているの?」

「!」

「私たちを小田原修司のクローンとして見て、それで同情しているのなら、そんな同情は却って私たちを苦しめるだけよ」

 美都玲奈からの厳しい指摘に、大将は口を噤んでしまった。

 しかしそんな大将は、話の矛先を再びHEADに向けることで噤んでいた口をどうにか開けて物言った。

「で、でもよ……お前ら聖龍隊の組織力だけじゃダメだったのか? そんな、ライフル協会やハワード財団なんかと手を組まなくても、二次元人の立場や人権を守れたんじゃないのか?」

 するとこれに参謀総長のジュニアが言った。

「僕たちは確かに秩序を守り、世界の均衡を保つことができる聖龍隊だ。だからと言って聖龍隊だけで世界情勢を乗り切ることは、到底不可能だよ」

 ジュニアの発言に大将は再び言葉を失ってしまう。更にジュニアに続いてバーンズが大将に告げた。

「正義の味方だからって、何でもかんでも自由が利く訳が無いだろう」

「っ!」

 バーンズの格言に、大将はますます口が言えなくなってしまった。

 

 しかし大将が口を噤む中、他の赤塚組幹部が旧友であるHEADに問い掛けてきた。

「確かにアメリカと日本じゃ、銃への考え方は極端に違う点があると思うけど……それでも子供用やマニア向けに、ガンダムやエヴァとかのキャラをモチーフにした銃器を認可した修司君のやり方には疑問が浮かぶわ」

「当時から子供用ライフルの安全性について懸念の声が上がっていたの。修司君はその子供用ライフルの安全性を向上させると同時に、自分や聖龍隊が使用する武器の調達としてもライフル協会を利用したの。そして協力関係を結ぶべく、ライフル協会の傘下にある銃器メーカーに日本キャラクターのデザインをした銃器の売買を認めてしまったの。修司君自身も、銃火器を力の象徴みたいに捉えて、よくコレクションしていたし……」

 赤塚組幹部の海野なるの疑問に、旧友であるネオ・クイーン・セレニティが当時から収集癖があった修司の現状を語りつつ答えた。

「いくらアメリカ全土の銃器メーカーに子供用ライフルの安全性を向上させるべく、政府をも動かせるライフル協会と関係を持って法案を可決させたとは言え、安全な銃はそうそう作れないんじゃないかしら? それにチョコちゃん達から聞いたけど、ハワード財団のロックウッドの台詞は残酷すぎるわ。私たち二次元人が何かの象徴と言われても……」

「銃社会のアメリカからは銃器の売買を止めることは不可能に近いって修司君は言っていたわ。だから、せめて暴発や誤射といった事件が多発する子供用ライフルの安全性をメーカーに向上させるべくライフル協会と結託して政府を動かして法案を可決させた訳なの。そして二次元人が愛や正義、そして平和など、何かを象徴する存在なんだと解釈していたのも修司君本人だったのよ。何より二次元人の未来を守る為に、修司君も仕方なくライフル協会やハワード財団と関係を持ったのよ」

 幹部の秋夏子からの問い掛けに、旧友であるキューティーハニーは修司の心境も含めて赤裸々に告白した。

「大将の言う事にも一理あるわ! 新世代型は修司さんの代用品なんかじゃない! 一人一人、個性を持つ立派な個々の人物よ! それに、二次元人の尊厳を守る為に色んな組織とやむを得ず手を組むことになった修司さんの努力を無駄にしないためにも、新世代型との共生が必要なんじゃないの?」

「私たちも同じだよ、千春ちゃん……修司さんが色んな組織と結託してまでも、自分の良心を握り潰してまでも必死に手に入れてくれた共生の道……私たち聖龍隊もその道を守りたいのは同じだよ。けど……修司さんが善悪関係なく、自分を世界に人間兵器として差し出したことも、世界の均衡の要になってまでも……とにかく色んなものを一人で背負い込みすぎて、一人で苦しんでいたにも関わらず、私たちは何もできなかった。何もしてあげられなかった……」

 親友であり赤塚組幹部の山崎千春からの訴えに、HEADの木之元桜は修司の苦心を自分達は何も助力できなかった後悔を含めて語り明かした。

「二次元人と三次元人の共生……それを実現する為に、修司は色んなものを犠牲にして、色んな重荷を一人で抱え込んでいたのね」

「はい、修司は善行だろうと悪行だろうと、二次元人の未来を保守する為に何もかも一人で抱え過ぎていた……そんな修司は私たちHEADには何も話してくれず、一人だけで全てを解決してきた。全てを単独で背負わせてしまっていたの、私たち聖龍隊は……」

 赤塚組幹部のミズキの話を聞いて、ちせは悲痛な想いを包み隠さず明かしてくれた。

 そんな暗い聖龍HEADと赤塚組幹部集の話を聞いて、大将は呆れながらHEADに言った。

「それにしたって、お前ら……修司にだけ嫌に重荷を背負わせ過ぎじゃねえか? だから修司は色んな組織と釣るんでまで聖龍隊っていう二次元人を守る防壁を一人で護っていたんじゃねえのか?」

 これに対してバーンズが大将に答え返した。

「修司はオレ達にまで罪科を……重荷を背負わせたくなかったんだ。だから一人で、二次元人を危険視する輩からの敵視を引き受けたんだ。オレたちHEAD、いや聖龍隊……そして二次元人の未来を守る為に……たった一人でな」

「………………………………」

 バーンズの台詞から染み出てくる切実な想いを感じ取り、大将は何も言い返せなかった。

 

 そんな折、聖龍隊の元に国際連合から重大な議会があると通達が入って来た。

 その議会の内容は、依然として黒武士の意思を感じ入られる共有感知を持つ新世代型二次元人への処遇だった。

 小田原修司のクローンというだけでも驚異的に感じられる新世代型が世界中で猛威を振るう黒武士と意志疎通できるとう事実に、国際情勢が彼らの存在意義に異論を唱え始めたのだ。

 新世代型二次元人の保守を世間に訴えるべく、聖龍HEADは急遽彼らと共に国際会議が開かれるジャッジ・ザ・シティへと飛び立った。

 

 

 

[新世代型の脅威]

 

 ジャッジ・ザ・シティに飛び立った聖龍隊と新世代型たち。

 その間、テレビで報道を視聴した新世代型は、今自分達が置かれている状況に驚倒した。

 ジャッジ・ザ・シティでも世界各地でも黒武士の行為により、新世代型二次元人が実は小田原修司のクローンである事実が露見してしまってた。

 故に、世界中で人間兵器小田原修司のクローンである新世代型への非難が殺到していたのだ。

 そんな状況下でジャッジ・ザ・シティに降り立った聖龍隊と新世代型たちを待ち受けていたのは、多くの報道陣と新世代型を非難する一般市民の波だった。

「総長バーンズ氏、コメントを!」

「聖龍隊は新世代型の正体を知っていたのですか!?」

「新世代型が今後、異常者(ヒール)になる可能性が大だと言うのは事実なのですか!?」

「聖龍隊が新世代型を庇護しているのは、やはり小田原修司氏のクローンだからなのでしょうか?」

 記者たちから繰り出される質問の数々に、聖龍HEADは「ノーコメント」で押し通した。

 そんな中、聖龍HEADに生卵をぶつけては、警備員に取り押さえられる市民の姿も確認された。

「なんでアンタらは危険極まりない新世代型を保護してるんだ! 奴らの……黒武士の凶行でオレ達がどんなに被害を被っているのか知らない訳ないだろ!!」

 市民達の罵声や怒声が飛び交う中、バーンズたち聖龍HEADは急ぎ自分達専用の軍用車に乗り込み、難を逃れる。

「ふぅ、卵を投げ付けられたのは初めてだよ」

 スーツに付着した生卵を拭いながらジュニアが愚痴る。自分達に生卵が投げ付けられる事態に、バーンズは険しい面持ちでこれから向かうべき国際会議へと赴く。

 

 聖龍HEADが報道陣や怒りを露わにする市民の大半を引き付けている間、新世代型たちは聖龍隊の隊士に護衛してもらいながら、空港から聖龍隊の基地へと移動しようとする。

 しかし、それでも一部の報道陣や市民の目を欺く事は出来ず、彼らは新世代型たちにも容赦なく群がって来た。

「新世代型! あなた達があの人間兵器、小田原修司のクローンであると言う情報は真実なのですか!?」

「あなた達と同じ新世代型と思われる黒武士が世界各地で猛威を振るっている状況を、どう思いますか?」

「世界中は今や、あなた達新世代型に注目しています! あなた方は私達の敵か味方か……ハッキリしてください!」

 記者たちから容赦なく質問攻めされる新世代型たちを必死に護衛するミラールやフロートたちニュー・スターズとスター・ルーキーズの面々。

 そんな記者たちに混ざり、新世代型たちを敵視する市民の姿が。

「新世代! ルミネの一件から全て、あんた達のせいでおれ達の生活が狂っちまった!」

「道楽好きの帝に、暴れ回る黒武士……あんた達と同じ新世代型たちが世界を混乱に陥れやがって!」

「この落とし前、どうしてくれるんだよ!」

 市民達からの怒声を浴びながら、身を低くして急いで聖龍隊が用意した護送車に乗り込む新世代型たち。

 そしてどうにか皆々は護送車に搭乗する事ができ、全員が乗り込んだのを確認した運転手は急ぎ車を発進させた。

 動き出した護送車の中で、何とか新世代型たちを護送車に乗せる事が叶って安堵するミラールとフロート。

「ふぅ、どうにか全員乗り込めたわね」

「まったく、メディアめ。新世代型が修司のクローンだって解った途端、手のひらを返すようにパッシングしてきやがって」

 なんとか全員を搭乗させる事ができてミラールが安堵する中、フロートは報道で新世代型たちを叩く記者達に立腹していた。

 周囲から何かと叩かれる様になって、新世代型たちは今後の自分達を取り巻く状況が刻々と変わりつつある現状に嘆いていた。

「私達、このままどうなっちゃうのかな……」

「小田原修司のクローンだって世間に知れ渡っただけで、ここまで大事になるなんて……一体全体、俺たちどうなっちまうんだ?」

 新世代型の琴浦春香と真鍋義久の悲しげな発言に、フロートが喝を入れる。

「テメェら、しっかりしやがれ! ここが踏ん張り時だ!」

 フロートに続き、ミラールも新世代型たちを励ます。

「そうよ、此処からが正念場よ。バーンズ達が国際会議であなたたち新世代型の安全性を訴えてくれる筈だから。それから報道も鎮まって行く事でしょうし、辛抱辛抱」

「………………………………」

 ミラールから聖龍HEADが会議で新世代型たちの真情を報告すると同時に、安全性も訴えてくれると伝えられながらも新世代型たちの不安はそう簡単には消えなかった。

 

 バーンズ達HEADがジャッジ・ザ・シティの国際会議に出席している間、新世代型たちは世界からの言い付け通り、ジャッジ・ザ・シティの聖龍隊基地に待機していた。

 HEAD達が国際会議の場で、新世代型たちの真情と安全性を報告していると思われる頃、彼ら新世代型たちは皆揃ってある本を熟読しながら時間の経過を待っていた。

 その本とは、他でもない自分達の始祖である小田原修司の自伝本とも云える【聖龍伝説】の小説だった。

 聖龍HEADと小田原修司の若かりし頃が綴られている自伝本を熟読している新世代型たちに、彼らや聖龍HEADとは別経由でジャッジ・ザ・シティの基地にやって来た赤塚組の大将と幹部達が歩み寄り、声を掛けてきた。

「お前ら、暇があればそんな文字だけの本読んでいるな。面白いのか?」

「え、ええ、面白いといえば面白いですが……何分、関心が湧いて」

 大将からの問い掛けに、新世代型の室戸大智が本を手にしたまま返答する。

 自分達の始祖たる修司の自伝本、修司と聖龍HEADの起源を赤裸々に綴っている本に関心を持つ新世代型たちを見て、大将は一つ訊ねてみた。

「お前ら……修司の自伝本を読んで、どう思ってる? 自分達の始祖って言われている修司が公表した聖龍隊の起源と、修司自身が発達障害者だっていう本を読んでみて何を思う……」

 この大将の質問に、新世代型たちは不思議な心境で返事した。

「小田原修司が……本当はどんな人なのか、正直解らなくなって……」

「色んなキナ臭い組織と釣るんでまでも、二次元人の事を護って来た修司って人がどんな人物だったのか。それを知りたいんだ」

 真面目な顔で返答する森谷ヒヨリと時縞ハルトに続いて、他の新世代型たちも語り返す。

「アッコさんも言っていた。自分の良心を捨ててまでも、二次元人の世界を護って来た小田原修司……多くの二次元人からも慕われた彼が、どんな幼少期を過ごしていたのか……」

「世間が如何に、小田原修司に対して様々な畏怖の目で見ていても、その本質までは見ている事は少ないわ。私達は私達で、自分達の始祖がどんな人だったのか確かめたいの……」

 彩瀬なる、薙切えりなの言葉を聞いて、大将は彼女たち新世代型が心の底から小田原修司の真実の姿を知りたいと強く思っているのだなと感じた。

 しかしこんな意見も。

「だけどよ、みんな。いくら本人が書いた自伝本だって、本人が本当に自分を曝け出して書いたのかまでは分からないじゃないか」

「燃堂の言う通りだ。小田原修司が自分の真実を全て公にしているとは到底思えない。この自伝本にも、そして聖龍隊の人達から聞いた情報でも、小田原修司は自分を隠し、偽りながら過ごしてきたみたいだし」

 親友の燃堂力の意見に同意する斉木楠雄。

 そんな意見が出てしまった中、小説を読んで星原ヒカルが本を見詰めながら発した。

「そういえば小説を読んでても…如何に小田原修司が業を、重荷を独りで背負っているのかが分かります」

「……お前達が修司の自伝本を読み続けているのは……もしかすっと心の何処かで、気付かない内に始祖である修司の昔話に関心があるのかもしれねえな」

 星原ヒカルを始めとする新世代型たちの行動を前にして、大将は新世代型が心の片隅で始祖である小田原修司への関心があるのだなと思う。

 

 世間への新世代型への風当たり、そして懸念が募る中、新世代型たちは権力に媚を売り続けながらも二次元人の世界を保守してきた自分達の始祖、小田原修司への関心を深めて行ってた。

 

 

 

[世界の動向]

 

 その頃、聖龍HEADはジャッジ・ザ・シティで開かれた国際連合の会議に出席していた。

 会議では世間で既に懸念の対象に挙がっている新世代型二次元人に対する処遇が持ち出されていた。

 バーンズ達HEADは、世界の代表に対して「新世代型二次元人の可能性を摘まないように」と強く訴え出た。

 しかし世界は同じ新世代型である足正義輝が起こした現政奉還、そしてその足正義輝の軍門に降っていると思われる黒武士の凶行を経験して、新世代型二次元人を非常に危惧していた。

 もはや世界そのものが新世代型二次元人に対して危険視しか向けていない現状に対して、バーンズは強く訴えた。

「そもそも、彼らは望んで小田原修司の……鬼神と世間から畏れられた男のクローンとして生まれた訳ではない! 何より鬼の血筋として、好んで出生した訳でも無いんだ!!」

 毅然とした態度で会議に出席する代表たちに訴えるバーンズ。しかし代表たちは……

「しかし、現に新世代型二次元人は問題ばかり起こしているではないか」

「軌道エレベーターヤコブでのルミネ一派の一件から始まり、それから約半年の月日が過ぎた頃に国連総長を任せた足正義輝が訳の分からん現政奉還なんかを発起してしまった……そして今、足正義輝の軍門に降っていると思われる黒武士が世界各地で破壊行動を繰り返している。この事態をどう見ているのかね?」

 代表達から浴びせられる非難の声を聞いて、聖龍HEADは返す言葉を失くしてしまう。

 だが、そんな中でも参謀総長のジュニアが代表達に反論した。

「ですが……そもそも、その新世代型二次元人の生誕プロットを再開したのを決定したのは、あなた方三次元界の人達ではないですか」

「だからこそ、我々は彼ら新世代型二次元人の処遇を決めなければならない責務がある。危険極まりない可能性を持つ、新世代型を野放しにしておく訳にはいかぬ」

 しかし代表も負けじとジュニアたち聖龍HEADに正論を突き付ける。

 と、ここで一人の代表が愚痴る様に言った発言から会議は波紋を起こした。

「だから発達障害者の男なんかのクローンなんか生誕させるべきではなかったのだ。障害者は何を仕出かすか解ったもんじゃない」

「そうだな、やはり健常者の遺伝子から新世代型を生み出せば良かったのかもしれん……」

「だが、変わり続ける世界観や情勢に対応できる特別な遺伝子を用いた二次元人が必要だったのも事実だった」

「しかし、世間でも発達障害者である小田原修司のクローンを生み出した事実に非難が相次いでいるではないか。当の小田原修司も、我々国連から離脱したと思いきや、今までひた隠しにして来た障害の事も自伝本で公表してしまうし……まったく、あの男のせいで苦労が絶えないよ」

「どちらにしろ、発達障害者のクローンである新世代型への警戒は強めねば……」

 一人の口から始まった自分勝手な発言の数々に、聖龍HEADは皆揃って表情を著しく険しくさせていった。

 と、そんな多くの発言を黙々と聴いて、聖龍隊副長のアッコが暗然とした重い空気を裂く様に発言した。

「皆さん! 皆さんは小田原修司を……自ら人間兵器に身を堕とした一人の男性を、一人の障害者として見てきた訳では無い筈です! 彼は世界の均衡を守る為に……そして未来を守る為に自らを兵器として皆さんが望むままに活躍した人物であった事を思い出してください! 確かに修司は己の地位や権威を失墜させないために傲慢な態度も目立っていました。けれど、その態度の裏では真に世界の安寧と平和を望んでいた事を思い出してください!」

(アッコ……)

 加賀美あつこの熱弁に、バーンズ達HEADの皆は頑なに聴き手に回った。

「その修司は未来の可能性を……私達、今を生きる人々の可能性を信じたからこそ、自らを鬼神や人間兵器と言う恐れられる立場に豹変してしまったんです。その修司のクローンである新世代型にも、未来を紡ぐ多大な可能性が秘められています。私たち聖龍隊はもちろん、誰にも彼らの可能性を摘む権限は持ち合わせていないんです! 世界の皆様方、確かに新世代型にも多くの危険な要因があった二次元人が居ました。でも、そんな彼らも未来を想う心は確かにありました! お願いです、今を生きている新世代型は私たち聖龍隊が責任を持って監視します。なので彼らの未来を潰す様な決定だけはしないでください」

 己の切実な想いを赤裸々に熱弁するアッコの一言一句に、バーンズたち聖龍HEADの皆々は心を揺さぶられた。

 しかしそんなアッコの熱弁を聴いても尚、国連の世界代表者たちは表情を険しくするばかり。

 果たして、聖龍HEADは新世代型二次元人の未来を護る事ができるのだろうか。

 

 その頃、聖龍隊の基地では物々しい展開が発生していた。

 なんと国連議員会からの通達で、新世代型二次元人の収容所へ移送せよとの命令が伝わったのだ。

「おいッ、なんで新世代型の連中が収容所なんかにぶち込まれるんだ!」

「まだ国際会議で聖龍隊と世界の代表達が話し合っている最中なのに、早すぎるわ!」

 聖龍隊の基地に腰を据える赤塚組頭領大将に、聖龍隊総部隊長のミラールが新世代型たちを迎えに来た武装兵に文句を並べる。

 その間にも、兵士達は銃を構えて新世代型二次元人達を強引に軍用車に搭乗させようとしていた。

 その行為を制止しようと聖龍隊のニュー・スターズやスター・ルーキーズが間に入って兵士達の行動を妨害しようとするが「これは国連代表が決めた決定事項だ! 逆らう様なら異常者(ヒール)と見做して発砲する!」と逆上されてしまう。

 そんな一触即発の危険な雰囲気の中、新世代型たちが聖龍隊の隊士達に声を掛ける。

「聖龍隊の皆さん! オレ達の事は大丈夫です、これ以上国連の兵士と衝突すれば、本当に異常者(ヒール)認定されてしまいます」

「ハルキの坊主……」

 新世代型の出雲ハルキの発言に戸惑う聖龍隊総部隊長のフロート。

「俺たち、もう逃げたくないんです。自分の出生から……宿命からは逃げないって決めたんです!」

「私たちは私たちなりに、訴えようと思うんです。私たち新世代型の心境と現状を……そうして少しずつ自分達の現状が変えられれば良いと……」

「あなた達……」

 瀬名アラタや琴浦春香たち新世代型の決意を受けて、ニュー・スターズ隊士のマカ=アルバーンは呆気に取られた。

 そして新世代型たちは自分達の意見や思考を訴えて、少しで自由を勝ち取る為にも国連が用意したと思われる軍用車に搭乗していった。

 数十台もの軍用車に乗り込んでいく新世代型たち。そして彼ら全員が搭乗したのを確認すると運転手はアクセルを踏んで、まるで急ぐかのように聖龍隊の基地を出て行った。

「……チッ、国連め。まだバーンズやアッコが会議で話し合っているにも関わらず、新世代型共を連行しちまうとは……」

「仕方ないわよ大将。国連の決定事項に逆らう事は事実上、不可能。逆らえば異常者(ヒール)と認定されちゃうわ」

 無性に苛立つ大将に、赤塚組幹部のミズキが口を出す。

 しかし赤塚組の大将だけでなく、聖龍隊の隊士も同じ考えだった。今でも聖龍隊と世界の代表が会談している最中にも拘らず、新世代型たちを連行する彼らの行為に苛立たない隊士は居なかった。

「それにしても、まさか令状まで持ち出されるとは思わなかったわ」

 聖龍隊のミラールは、兵士が差し出した令状を見て不機嫌になる。その令状には新世代型二次元人の連行決定に基づく記載がされていたのだ。

 そんな令状を見詰めて立腹するミラールを見て、新世代型では無い故に連行を免れたプロト世代のチョコやギュービッド、そして桃花・ブロッサムに海道ジンが令状を覗き込んだ。

「はぁ、まさか令状まで発行されちゃっていたとは……琴浦さん達大丈夫かな?」

「まあ、心配するのも解るけどさ……取って食われる訳じゃないし、また戻って来ると思うぜ」

「そ、そうですよね! また皆さん、笑顔で戻ってきますよね! ……でもやっぱ心配」

「アラタ、それに他の皆も……無事に帰って来てくれ」

 連行されていった新世代型たちの安否を気にしながらも、プロト世代たちは彼らの帰還を信じた。

 

 

 

[暗躍する偽り]

 

 新世代型二次元人達が国連の令状を持ってきた兵士に連行されてから数時間後。

 国際会議に出席していた聖龍HEADが基地に戻って来た。

「総長!」「バーンズ! アッコ!」

「どうしたんだ、お前ら? 新世代型の姿が見えねえが……」

 戻って来るなり駆け付けてくる聖龍隊士と大将たちに、バーンズが問い返す。

 戻って来た聖龍HEADに基地に居続けた聖龍隊士と赤塚組が訳を話した。HEADが不在の中、国連から兵士が派遣されて令状を差し出しては新世代型二次元人たちを連行していってしまった事を。

 すると、この話を聞いたバーンズ達は一瞬きょとんとしてしまう。

「そんな馬鹿な……! 確かに国連会議に出席した代表達は、オレやアッコの意見にはあまり関心を持ってくれなかったが……いきなり、それも会議の最中に新世代型を連行する真似はしないと思うが……」

「で、でも! 令状には、しっかりと国際連合からの印が……」

 きょとんとするバーンズ達に、ニュー・スターズのアンリエッタが訴える。

 そして皆から令状を手渡されたバーンズは、令状を黙読してみると意外な真実が判明した。

「………………お前ら、この令状を見て新世代型たちを引き渡したのか?」

「え、ええ、そうですけど……」

 令状を黙読してみたバーンズからの問い掛けに、スター・ルーキーズのエンゲキブが返事するとバーンズは大声で返した。

「この令状………………真っ赤なニセモンだよッ!!」

『え、ええ~~ッ!?』

 バーンズからの指摘に、皆は一様に衝撃を受けた。

「お前ら! これは精巧に作られているけど、真っ赤なニセモンだよ! 何だお前ら、令状がニセモンかどうか確かめる前に新世代型たちを引き渡しちまったのか!?」

「だ、だってよォ……兵士の奴ら、スグに引き渡さねえとおれらまで異常者(ヒール)認定しちまう勢いだったもんでよ……」

「だからって! 私たちが帰るのを待つのもできたんじゃないの!?」

「ご、ごめんなさい、アッコおねえちゃん……」

 バーンズやアッコの注意に、フロートやミラールは平謝りするばかり。

「急いで新世代型たちを捜索するぞ! 国連の連中に新世代型への管理に責任を持つって言った手前、なんとしても探し出して置かねえと……!」

 バーンズが慌てて新世代型二次元人の捜索に乗り出そうとした矢先、プロト世代の海道ジンがバーンズに声を掛けた。

「バーンズさん」「何だよジン!」

 バーンズが切羽詰った状況で言い返すと、海道ジンは語り明かした。

「実はこんな事態がいつ起きても大丈夫なように、アラタ達に持たせた子機に発信プログラムを植え付けていたんです。子機から発信されるシグナルを探知できればスグに見つかる筈です……」

「そ、そうか成程! よくやった、ジン! さっそくシグナルが発信されている場所を探そう……メタル・イン!」

 海道ジンから瀬名アラタ達【ダンボール戦機ウォーズ】の生徒たちが持つ子機から発信シグナルが放出されている事実を聞かされ、バーンズはシグナルを探知するべくメタルバードに変身して飛び立った。

 そしてメタルバードが飛び立ったのを目視したアッコも、急ぎミラーガールに変身すると聖龍隊の同士たちに伝えた。

「さあ、私たちもジャッジ・ザ・シティを巡回して新世代型たちを探索よ! 急いで彼らの行方を追わないと……」

 ミラーガールの指示に、聖龍隊はさっそく行動に移った。

 

 その頃、新世代型たちは少し前から偽の国連軍兵士に移送されていた。

 ジャッジ・ザ・シティを移動中、彼らは偶然にも、あのキャップ・ド・レッドことドレフの墓がある墓地の前を通った。

 街の英雄として偽りの葬儀まで行われたドレフであったが、黒武士の情報暴露によって、彼の真実が浮き彫りになった為に、ドレフの墓は派手に荒らされ、破壊されていた。

 最初は一瞬、ドレフによって利用されてきた新世代型たちは彼の真実が公になり、墓が市民によって落書きや破壊などをされた事に満足しかけた。しかし、その裏ではそんな悪行を積み重ねてきたドレフが自分達と同じ新世代型だと判明した事でも、死んだドレフに怒りをぶつける市民もいる事実を新世代型たちは噛み締めた。

 市民の手によって破壊されたドレフの墓の前を素通りした新世代型たちは、それから何故かジャッジ・ザ・シティで最も大きい時計塔の前で降ろされた。

 何ゆえ時計塔の前で降ろされたのか疑問に思う新世代型たちだったが、彼らに考えさせる暇を与えない勢いで兵士は銃を突き付けて新世代型たちを時計塔内部に移動させた。

 そして一同は、黒い鉄格子の檻の中に押し込められてしまう。

 すると皆が檻の中に押し込められた次の瞬間、皆の目線の上の方に照明が当てられ、その照明の中から見覚えのあるFを象った格好をしている男が現れた。

「レディース&ジェントルメン! お久しぶりだね、新世代型の諸君」

「お、お前は……Mr.フェイク!」

 照明の中から現れた司会者ぶっているMr.フェイクを見上げて、声を上げる新世代型の真鍋義久。

 Mr.フェイクは檻の中に閉じ込めた新世代型たちを見下ろして不敵に語り掛ける。

「ふっふっふ、ま~~たボクちゃんが用意した演出に引っかかったようだね。僕は嬉しいよ」

「またって……! なるほど、我々を連行しに来た国連軍の兵士も、私達を差し出すようにと聖龍隊に提出された令状も、全てが偽物か!」

 Mr.フェイクの言動を聴いて、新世代型の猿田学が感づく。

 すると偽りの犯罪者Mr.フェイクは嬉々とした満面の笑顔で演説し出す。

「はっはァ! そうさ、君たちゲストの新世代型を呼ぶために聖龍隊に出した令状も、君らを此処まで運んだ軍用車やそれを運転する偽の兵士も僕が用意したものさ! 全ては彼ら新世代型を……いいや、君たちの始祖、小田原修司に色々と意見がある人達を満足させる為にねっ!」

「? 意見がある人達、だと……!」

 Mr.フェイクの戯言を聴いて、新世代型のヨドが目付きを険しくさせる。

 そして次の瞬間、Mr.フェイクの意のままに新世代型たちの周囲に照明が照らされ、強烈な光に檻の中の新世代型たちは思わず目を瞑ってしまう。

 そしてゆっくり目を見開いてみると、照明に照らされて登場した人物達に新世代型たちは驚愕した。

 ブラックホワイト/ゴールデン・ボマー/ナイトメア/アルモタヘル。名立たる犯罪者たちが厳つい顔を浮かべて立っていたのだ。

「な、なんで……こんなに有名な悪役が……異常者(ヒール)が此処にいる訳!?」

 新世代型のキャサリン・ルースが悲鳴にも近い声を上げると、それに対してブラックホワイトが語った。

「それは俺たちも驚いている……まさかMr.フェイクがこんな舞台を用意してくれていたとはな」

 ブラックホワイトに続いて、特性の武装に身を包んだゴールデン・ボマーも語る。

「ひひひ、俺たちに焼却処分してもらいたいのか、テメェらは? この小田原修司のクローンが」

 クローンである事実を皮肉ると、ナイトメアが新世代型たちに言った。

「ふぅ、世界も実に愚かな行為に走った……発達障害者と言う、社会にほとんど貢献していない欠陥品のコピーを生み出してしまうとは」

 ナイトメアが障害者を非難していると、二次元人に対して反発的な思想を持つアルモタヘルが怒号を放つ。

「汚らわしい二次元人どもと一緒に行動するのは、どうも罰当たりな気がしてならないが……だが、薄汚い小田原修司のクローンどもに天罰を与える事ができるのなら此処は堪えるとするか」

「おい、爺さん。あんたも世間的には俺らと同族なんだから、そんな口開かない方がいいぜ」

 二次元人に反感を抱くアルモタヘルに、ブラックホワイトは同じ異常者(ヒール)として世間から見られている事実を警告する。

 

 実はMr.フェイクは、彼らが国連によってジャッジ・ザ・シティに召集される情報を事前に入手した時からこの計画を立てていたのだ。

 世間から小田原修司のクローンとして爪弾きされる新世代型二次元人。そんな彼らと、小田原修司に様々な恨みを抱く異常者(ヒール)や犯罪者、無法者を対峙させて血生臭いショーを展開しようと模索していたのだ。

 事実、ブラックホワイト達の様な有名な異常者(ヒール)の他にも、そのブラックホワイトの部下達も含み、アルモタヘルの信者たち、そして多くの無名な犯罪者や無法者といった荒くれ者までも時計塔内部に設けられた会場に集められてきたのだ。

 Mr.フェイクは果たして、新世代型二次元人と異常者(ヒール)を対峙させて何を起こそうと言うのか。

 

 

 

[怒れる犯罪者たち]

 

 Mr.フェイクがかき集めた多くの有名無名な犯罪者たちに囲まれ、激しく戸惑う新世代型たち。

 そんなMr.フェイクに呼集された無法者には多種多様な犯罪者も多く、その中でもパンキーでモヒカンな荒くれ者たちの姿が一際目を引いた。

「いや、明らかに世界観の違うキャラが混ざっているよな!? 明らかに北斗の拳のモヒカンだよな!!」

 明らかに世界観の違う悪役を目にして、新世代型の真鍋義久が叫ぶ。

 そんな真鍋の叫びをかき消すように、ブラックホワイトが銃を上に向けて発砲。銃声でその場を黙らせた。

「黙れ、黙るんだお前ら!」

 ブラックホワイトの怒号に野次を飛ばしていた多くの無法者たちは一斉に黙った。

「ではこれより、俺たち犯罪者を見下し、聖龍隊と言う組織で俺らの居場所を奪い尽くした小田原修司……その申し子たる新世代型たちに罰を与えたいと思う!」

「うおおおおっ!!」

 ブラックホワイトの提言に、多くの無法者たちは雄叫びを挙げ、喜びを表現する。

 無論、このブラックホワイトの発言に異議を唱える新世代型が現れた。

「ちょ、ちょっと待って……! 私たちは別にあなた達には何もしてないわ……」

 と、琴浦久美子が反論しようとすると、ブラックホワイトは鉄格子の鉄棒に銃弾を発砲して強引に黙らせた。

「っ!」

 自分たち目掛けて銃を発砲したブラックホワイトの威嚇行為に久美子達は口を噤む。

「黙れ、毒親が……テメェみたいに、俺らとは違うって面してる偽善者は最も世の中に忌み嫌われる……!」

 琴浦久美子を偽善者や毒親と罵るブラックホワイトは、未だ硝煙が立ち昇る銃を構えて鉄格子の中の新世代型たちを睨む。

 そして、そんな久美子の反発に刺激されたのか、ブラックホワイトはMr.フェイクに言った。

「Mr.フェイク! 檻の中から、この親子を……いや、【琴浦さん】のキャラを出したいんだが……問題あるまい?」

「オッケイ、OK! 好きなように扱ってくれても構わないとも、ブラックホワイト!」

 Mr.フェイクからの承諾を得て、ブラックホワイトは拳銃を突き付けて【琴浦さん】のキャラ達を解放した。

 そしてその中から琴浦春香と久美子の親子を自分の前に立たせると、二人に語り掛けた。

「フンッ、お前達の事は粗方周知している……お嬢ちゃん、君はスター・コマンドーのチルドレンズ達よりも高感度のテレパシー使いなんだろ? そして久美子の毒親、あんたはそんな娘を蔑ろにしてきた悪名高い毒婦……間違っていないだろ?」

 半面が醜く焼け爛れた面構えで問い掛けてくるブラックホワイトの質問に、琴浦親子は反感するかのように二人ともブラックホワイトを睨み返す。

 だが、そんな睨み返してくる親子を前に、ブラックホワイトは拳銃を春香の顎に突き立てて睨み返した。

「なんだ、その態度は? 貴様ら親子は……いいや、お前達は自分の置かれている状況が理解できてないらしい」

 ブラックホワイトが琴浦春香たちに脅しを掛けると、更に彼は脅し文句を言った。

「お前らの素性は既に単行本を読んで知っている……琴浦久美子、そして森谷ヒヨリ。お前ら二人は本来、俺たちと同じ異常者(ヒール)の側だろ? なんで正常者のフリをしている」

「わ、私たちは貴方達みたいに狂ってなんかいないわ!」

「そ、そうよ! あんた達みたいに、世間を混乱させるような異常者とは違うんだから……!」

「黙れッ!」

 琴浦久美子と森谷ヒヨリの反発に、ブラックホワイトは怒鳴ると同時に銃を発砲し無理やりに黙らせる。

 そしてブラックホワイトは火薬の臭いが充満する空間で【琴浦さん】のキャラ達に言い放った。

「そもそもお前らはもちろん、貴様ら新世代型は小田原修司のクローンとして既に世界を混乱させた異常者(ヒール)……今さら平穏な日常に戻れると思うな。貴様達の存在だけで俺たちは腹の中が煮え滾っている……!」

 小田原修司のクローンというだけで腹中の怒りが収まらないと説くブラックホワイトの言動に、新世代型たちは非常に恐れた。

 するとブラックホワイトは此処で、怒りの矛先である新世代型の琴浦春香が未だに自分を睨み付けている所業に怒りを感じたのか、春香の頬を一発殴り付けた。

 春香は床に転倒し、それを見た久美子が母親面で「やめてっ」とブラックホワイトに飛び掛ろうとした瞬間、ブラックホワイトは久美子に向けて銃を発砲。久美子も床に倒れ、意識が弱まってしまう。

「久美子!」「お、おばさん!」

 春香が顔を殴られ転倒した事にも驚かされたが、その母親である久美子が撃たれたのを目の当たりにして、実父の琴浦善三と娘の恋人である真鍋義久が悲鳴を上げる。

 そして床で激痛の余りのた打ち回る久美子の頭を踏み付けて、ブラックホワイトは近場の新世代型達にも聞こえる様に久美子に語った。

「お前達が過去にどんな行為を……悪行をしてきたか、手に取るように解る。何故だか解るか? ……それは三次元界の情勢にも通じているからだ。コミックを読んで、琴浦久美子や森谷ヒヨリがどんな善人面をした外道か、よく知っているんでね」

 ブラックホワイトは三次元界の単行本事情にも精通している故に【琴浦さん】の情報も周知しているのだと説いた。

 そしてブラックホワイトはのた打ち回る久美子の頭を踏み躙り終わると、再び娘であり主人公である琴浦春香に銃を突き付けて語った。

「お前らテレパシー使いでも俺の思考は……俺が何を考えているかは解るまい。何故だと思う……それは俺の脳内が既に狂わされているからだ! お前達の始祖、小田原修司を初めとする三次元人の手によってな!」

 三次元人の影響で狂わされたと説くブラックホワイトは、更に語り続けた。

「小田原修司たち三次元人が俺らの世界にまで干渉した事により、この二次元界は俺の半面の様に醜く変わり果ててしまった……まさに混沌、カオスだ! こんな世界に変えた小田原修司の……そして俺たち二次元人を縛り付ける異常者(ヒール)排除法を制定した三次元人を、俺たちは決して赦せねえんだよ……!!」

 三次元人の影響で変わり果ててしまった二次元界に、ブラックホワイトは三次元人に対して赦せない感情が芽生えてしまったのだと感じ入る新世代型たち。

 すると怒りで感情の制御ができなくなってしまったブラックホワイトは、眼前にいる琴浦春香の胸元を掴むと彼女を床に押し倒して跨ると唐突に顔を殴り始めた。

「琴浦! やめろ……ッ」

 と、琴浦春香が殴られ始めたのを前にして、真鍋義久がそれを制止しようとブラックホワイトに飛び掛るが、先ほどの琴浦久美子と同様にブラックホワイトが発砲した凶弾で床に倒れてしまう。

「真鍋君!」

 真鍋義久が撃たれたのを目の当たりにした春香や仲間達が悲愴な表情を浮かべると同時に、ブラックホワイトは何の躊躇いも無く、春香に跨ったまま今度は森谷ヒヨリにも凶弾を浴びせる。

 琴浦久美子、真鍋義久に続いて森谷ヒヨリにも凶弾が浴びせられた現状を前に動揺する新世代型たちの目前では、弾を撃ったブラックホワイトが一しきり琴浦春香を殴り叩き終わって立ち上がる。

「ふぅ、喜べよ、琴浦春香。貴様を苦しめていた毒親も偽善者面した森谷ヒヨリも俺が殺してやったんだからな」

 鼻と口元から血を垂れ流す顔面痣だらけの琴浦春香にブラックホワイトは言葉を吐きかける。

 そんな非情とも取れるブラックホワイトに続いて、元精神科医のナイトメアが新世代型の元に歩み寄ると彼らに話しかける。

「ぐひひ、しかし考えてみれば哀れなもんじゃのう新世代型は……生まれてスグに欠陥だらけの人生を歩んでしまうとは。障害という欠陥を持って産まれた小田原修司のコピー……代用品としてしか使い道が無いというのは、つまり使い捨ての品という事かの?」

 障害を単なる欠陥としてしか見ないナイトメアは、新世代型は障害者という使い捨ての道具の代用品なのだと説く。

 このナイトメアの言動に、新世代型たちが怒りを露にしようとした時、今度はナイトメアと同じ三次元人のアルモタヘルが新世代型に歩み寄り罵声を掛ける。

「この惨たらしいアクマ共め……! オマケにあの人間兵器という名のおぞましい怪物、小田原修司のクローンとは……生かしておく訳にはいかん!」

 罵声を掛けるアルモタヘルは、悲しげな表情を浮かべて新世代型たちに告白した。

「ワシは小田原修司に……人間兵器じゃったあの修司が憎い! 我が祖国、イスラムを消滅させただけじゃない……ワシの可愛い息子や孫も惨殺したんじゃ!」

「え! そ、それってどういう事……!?」

 アルモタヘルの告白に、新世代型の燃堂力が目を丸くして問い返すと、アルモタヘルは胸につっかえ続ける想いを吐き出した。

「ワシの家族は……祖国はお前達が始祖、小田原修司によって滅ぼされたんじゃ! 息子や孫は修司に斬り殺され、イスラムは消滅させられたんじゃ……!」

 このアルモタヘルの訴えに、新世代型の瀬名アラタが問い返した。

「で、でも……ひょっとして、アメリカ兵が貴方のお孫さんや息子さんを殺したのかもしれませんよ……」

 するとこのアラタの問い掛けに、アルモタヘルは怒声で言い返した。

「アメリカ兵が日本刀を使うか!? ワシの孫も息子も、日本刀でバッサリ斬られて殺されたんじゃ! イスラムの戦場で実際に日本刀を使っていたのは、人間兵器として投入された小田原修司だけじゃ!!」

 なんと殺害に使用されたのは日本刀であり、その日本刀を実際に戦場で使っていたのは当時人間兵器だった小田原修司のみだと説き返すアルモタヘル。これには流石の新世代型たちも言葉を失った。

 しかし、すぐに新世代型の斉木楠雄がアルモタヘルに問い返した。

「しかし、アルモタヘル……戦場では珍しくないですが、ひょっとしてお孫さんも息子さんも兵士として駆り出されていたんじゃないですか? いくら畜生で有名な小田原修司でも、民間人と兵士の区別も付かないほど戦闘狂では無かったと思うのですが……」

「黙れ、アクマめ! 確かにワシの息子も、五歳の孫もイスラムの為に戦う聖戦士じゃった! その聖なる戦士を己の私利私欲で戦っていた小田原修司に命を奪われたんじゃぞ! そしてその罪は、小田原修司の申し子である貴様らにも存分にあるんじゃ!」

 アルモタヘルが新世代型にも始祖である小田原修司の罪が覆い被さっていると説くと、それにブラックホワイトたち他の犯罪者や無法者たちも同意した。

「その通りだ! あの野郎の血を引いた新世代型は、もはや存在そのものが罪だ! 全員、嬲り殺してやる!」

「ぐふふ、あの恐怖をも超越した人間兵器、小田原修司のクローンが……どの様な恐怖を感じるのか、見ものじゃわい」

「そうだ! 小田原修司の申し子なんて、皆殺しだ!」

「アイツの立てた政策のお陰で、俺たちは居場所を失った! この落とし前、せめて修司のガキである新世代型につけてやるぜ!」

 ブラックホワイトやナイトメア、そして無名な犯罪者や無法者たちが新世代型に憎悪や怒りの矛先を向ける。

 するとこの場で進行役であるブラックホワイトが、会場上で観客に徹していたMr.フェイクに言った。

「Mr.フェイク! 檻を上げてくれ……こいつらに銃弾の雨をプレゼントしたい」

「OK、了解した」

 Mr.フェイクはポップコーンを頬張りながら鉄格子を操作するクレーンのボタンを押して、新世代型たちを押し込めている鉄格子を引き上げた。

 そして新世代型たちを覆う鉄格子が無くなったのを見計らったブラックホワイトは、決め台詞である一言を口から出した。

「よし、白黒つけようじゃないか」

 そう言うとブラックホワイトはズボンのポケットからオセロの駒を取り出して、片手で軽く駒を弾いた。そして空中で駒を掴むと、それを反対側の腕の上に置いて駒が白か黒どちらの面が向いているか視認した。

 結果はブラックホワイトが想い描いていたのとは反対の白。これにブラックホワイトは眉を動かすが、駒が示したのとは反対の決断を下した。

「野郎共! 新世代型を一人残らず嬲り殺せ! 一人残らずだ!!」

 駒が表した結果とは真逆の決断を配下の無法者どもに下すブラックホワイト。すると無法者たちは機関銃を構えて、中には乱射しながら新世代型へと向かっていった。

「も、もうダメだ……!」

 周囲から群がってくる無法者や犯罪者達を前に、新世代型たちは覚悟を決めた。

 

 

 

[疾風の救世主たち]

 

 と、その時だった。

 群がってくる犯罪者達を銀色の人影が颯爽と目の前に通過すると同時に、犯罪者達を転倒させてしまう。

 そして一瞬の隙に彼らが所持していた機関銃を奪い取ると、目から発射する熱光線で銃を半壊させて使用不能にしてしまう。

 皆がその人影に注目すると、その人物は腑抜けた面構えで挨拶した。

「ちわ~~っす」

 軽い態度で挨拶する人物を直視して、皆は彼の名を叫んだ。

「メタルバード!」

 そう、犯罪者達を一斉に転倒させ、同時に銃を奪って壊したのは他でもないメタルバードだった。

「みんな大丈夫か! ……いや、大丈夫じゃないのも何人かいるな」

 メタルバードは目付きを険しくさせて、顔面痣だらけになっている琴浦春香や銃撃された琴浦久美子と真鍋義久と森谷ヒヨリ達を見て呟いた。

 するとメタルバードに向けてブラックホワイトが拳銃を連射。だが鋼鉄の体を持つメタルバードに銃弾は効かず、メタルバードは逆にブラックホワイトを殴り付けて倒してしまう。

 ブラックホワイトが倒れたのと同時に、メタルバード出現の際に飛び上がったゴールデン・ボマーが爆弾を発射。メタルバードを吹き飛ばそうとする。

「ッ!」

 ナパーム弾級の威力を持つ砲撃を受けて吹き飛ばされるメタルバード。だがスグに立ち上がっては翼を広げ飛び上がり、ゴールデン・ボマーを追撃する。新世代型の頭上を飛んで逃げつつ、メタルバードに反撃するゴールデン・ボマー。そんな敵を相手に急接近していくメタルバード。

 皆がそんなメタルバードの活躍を観戦し、または負傷した【琴浦さん】のキャラ達に駆け寄っているところに、先ほどメタルバードに攻撃されて気絶し転倒した無法者達が意識を取り戻して再び新世代型たちに襲い掛かってきた。

「このガキ共ーーッ!」

 モヒカン頭のパンキーな無法者達が新世代型たちに襲い掛かる。

 するとその時、Mr.フェイクが用意したジャッジ・ザ・シティの時計塔内の会場に、疾風の如く現れる玉虫色の人影が強烈な斬撃を無法者達に向けて放った。

「うわッ」

 斬撃を受けて吹き飛ばされる無法者達。皆は挙って玉虫色の人影に注目すると、メタルバード同様に見覚えのある顔に驚いた。

「カァチェン……!」「皆様方、大丈夫ですか……?」

 メタルバードに続いて現場に駆けつけて来てくれたカァチェンを前に一驚する新世代型たち。

「カァチェン、よく来てくれた! 上空のゴールデン・ボマーはオレが片付ける! お前は地上の敵を一掃しろ!」

「承知しました……」

 メタルバードからの指示に従うカァチェン。実はこの前、メタルバードが瀬名アラタたち【ダンボール戦機ウォーズ】の生徒達が持つ子機から発せられるシグナルを受け取った事で時計塔内の会場の存在に気付き、それと同時にメタルバードは近隣の捜索に乗り出していたシバ・カァチェンに応援を頼んでいたのだ。

「バーンズ……! すぐに他の聖龍隊士も駆け付けると連絡がありました。それまで私は地上の敵を片付ける事に専念した方が宜しいでしょうか?」

「おおっ、それは気が利くな! ああ、存分に暴れてやんな!」

 会場に乗り込む前に他の聖龍隊士にも連絡を入れていたカァチェンの気配りを称賛するメタルバードは、存分に暴れろとカァチェンに言い返しながら上空でゴールデン・ボマーと激突する。

 メタルバードの言い付けどおり無法者たち相手に応戦するカァチェン。彼を前に無法者達はカァチェンに問い掛ける。

「な、なんでお前さんは二次元人の味方なんかするんだよ……アイツらのせいで世界が狂っちまっているのが解らないのか!?」

「今の私には、その様な事情に関心を持つ余裕はありませぬ……ただ、命じられたままに刃を振るうだけ」

 無法者たちの問い掛けにカァチェンは涼しい顔で返答するだけで、そのまま無法者たちを斬り捨てていった。

 上空はメタルバード、地上はカァチェンが応戦してくれている状況に安堵しかける新世代型たち。だったが、そんな彼らに突如、謎のガスが浴びせられた。

「ゴホッ、ゴホッ……こ、この煙はいったいなんだ……!?」

 突然謎のガスに覆われて、井ノ原真人(いのはらまさと)ら新世代型たちはむせ返る。

 すると彼ら新世代型にガスを浴びせた張本人、ナイトメアが新世代型たちに向かって

「ふふふふ、哀れで愚かな新世代型め。ただ破壊と殺戮しか能のない……欠陥だらけの障害者、小田原修司の代用品ども。貴様達には特別なプレゼントを……恐怖をたんまりと贈ってやろう。底なしの恐怖に縮み込むがよい」

 ガスに覆われながら、ナイトメアの戯言を聞く新世代型たち。そんな彼らの目に浮かび上がったナイトメアは、恐怖ガスの影響か一際恐ろしい風貌に見えてしまった。

 この恐怖ガスに襲われる現状が視界に入ったカァチェンは、急ぎ逆刃薙(さかばなぎ)を回転させて新世代型たちの方へ送風すると恐怖ガスを吹き飛ばした。

 カァチェンが起こした強風にガスを撒いた張本人のナイトメアは怯み、その隙を突いてカァチェンはナイトメアに峰打ちして気絶させた。

 一方のメタルバードも、上空でのゴールデン・ボマーとの闘いに終止符を打っていた。

「うぅ……っ」

 徹底的に痛め付けられたゴールデン・ボマーは自慢の装甲を引き剥がされて、床に叩き付けられた。

 地上と上空の敵全てを一掃したメタルバードとカァチェン、二人の活躍を新世代型たちの頭上から観戦していたMr.フェイクは喜々とした様子で飛び降りてきた。

「イヤッホウ! 流石だね、メタルバード! そして修司と同じ発達障害者のカァチェン君もやるねえ! やっぱヒーローの活躍はこうでなくっちゃ!」

 と、そうして降りてきたMr.フェイクにメタルバードが歩み寄ると、彼の胸倉を掴んで言い放った。

「おい、ジャクソン……! 一度ならず二度までも新世代型を犯罪劇の余興に使いやがったな。タダじゃ済まねえぞ……!」

 するとメタルバードの脅迫に、Mr.フェイクは笑みを浮かべて話し出した。

「いやいや、僕は彼ら新世代型が輝ける場を設けただけだよ。あの修司が望んでいた様に、自分が活躍できる場を……自分が注目される世界を創ってあげただけだよ」

「フザケンじゃねえぞ……! 修司が望んでいた? なに訳の分からねえ事ぬかしてやがるんだ」

 Mr.フェイクの話にメタルバードが啖呵を切ると、Mr.フェイクは真面目に語り出した。

「バーンズ、君は忘れちゃっているのかい? あの修司が世界をこんな風に……カオスにしちゃったのは、自分の評価を世間に高めてもらいたかったからだよ。障害者として低い価値しか得られなかった修司は、世界を混沌の場にして君たち聖龍隊を……そして自分が世界で活躍できる場を設けたかったからじゃないか。そして修司と同じ価値しかない新世代型にも、同様の活躍の場を与える為に僕は奮闘してきた訳なんだ」

「………………!」

 Mr.フェイクの話に釈然としないメタルバードに、Mr.フェイクは更に語り続けた。

「新世代型も所詮は修司と同じっ。活躍の場を……被害者加害者関係なく活躍の場を与えてあげなきゃ日の目を見ない、かわいそうな種族だってのは君だって薄々気付いているんじゃないのかな? 今の新時代、新世代型が混乱や問題の渦中にいなきゃ何も面白くないってのが歴史の流れじゃないのかな?」

 話を聞いていく内に怒りが込み上げてくるメタルバードの心中には、自然と殺意が生まれてきていた。

 だがメタルバードは、その殺意を押し殺してMr.フェイクの顔に一発強烈な拳を打ち込んで気絶させた。

 

 場が静まり返ったのを見渡して、新世代型たちは一同に同じ考えを共有した。

 どんなに足掻こうと自分たちは小田原修司のクローンで、修司への憎悪も怨みも怒りも全て自分たちに向けられているのだと。

 そして世界の多くの犯罪者達、いや人々から憎悪を向けられている真実。

 さらにMr.フェイクの様な異常犯罪者に利用されるのも自分たちの運命ではないのかと、自問自答を繰り返した。

 

 

[崩落する塔の中で]

 

 ジャッジ・ザ・シティの時計塔内部に設けられた会場にて、Mr.フェイクの策略によって集められた新世代型たちを取り巻く事件はメタルバードとシバ・カァチェンの活躍で幕を下ろした。

 そしてその後、メタルバードの召集で現場に駆けつけた聖龍隊士によって、犯罪者達は一斉摘発された。

「……ああ、新世代型は全員命に別状は無い。ただ何人か銃で撃たれたり暴力を振るわれた奴もいるんだ。これから全員でそっちに戻る」

 メタルバードは無線でジャッジ・ザ・シティの聖龍隊基地に連絡していた。

 そして連絡を終えると、現場で怪我の応急処置を隊士にしてもらっている琴浦春香や凶弾を撃たれた真鍋義久たちに話しかける。

「お前達、災難だったな。一度ならず二度までもMr.フェイクの余興に利用されちまうとは……」

 だが新世代型たちはそんなメタルバードの問い掛けに答えようとはせず、無言のまま。

 新世代型たちの様子が可笑しい事を察したメタルバードだが、そこにカァチェンが意見を申し出た。

「バーンズ氏……彼らはナイトメアが精製した恐怖ガスを浴びているのです。もしかすると、そのガスで気分が悪くなっているのでは……」

「そうなのか。それは大変だ。急いで基地に帰って治療させねえと……」

 と、メタルバードがカァチェンからの意見を聞いて、急いで聖龍隊基地に帰還させようとすると、口を頑なに閉ざしていた新世代型たちが口を開いた。

「そうじゃないですよ」

「私たち、結局どこに行っても恨まれるだけなんでしょ」

 暗然な面持ちで呟く瀬名アラタに続いて、同じ面持ちで北川イオリが愚痴を零す。

「……お前らなぁ……」

 自分達の現状に行き場の無い憤りを感じ入る新世代型たちを見て、メタルバードがしゃがみ込んで床に座り込む新世代型たちと同じ目線になるが、新世代型は不満を吐き出すばかり。

「世界は勝手に小田原修司の代用品として私たちを生み出し……危険だと見做せば即刻処分しようとする。オマケに始祖である小田原修司も、破壊や殺戮しか能がないと言われるほどの戦闘狂。こんな私たち新世代型を、世界は今後も危険視するでしょうし、受け入れてくれる訳はないわ……」

 悲愴な面持ちで世界が自分たちを危険視し続け、受け入れてくれる訳がないと訴える新世代型の棗鈴。

 そんな新世代型たちにメタルバードは必死に元気付けようと説得しようとするが、そんな場の悪いところに隊士に連行されながら歩かされるアルモタヘルが嘆きの言葉を新世代型たちに投げかける。

「返せ……ワシの祖国を……家族を返せ!」

 人間兵器に堕ちた小田原修司によって祖国と家族を奪われたアルモタヘルは、その小田原修司のクローンである新世代型たちに訴えた。

 するとアルモタヘルに続いて連行されるブラックホワイトが嘆きながら歩いてきた。

「俺の顔を……! ボクの顔を……平穏な日常を返してくれっ」

 三次元人からの反感的思想が影響し、美顔だった自分の半面が醜く変化してしまった現実に嘆くブラックホワイトの悲嘆に新世代型たちは心を打たれた。

 世界を変化させようと、世界に混沌を招いてしまった小田原修司の影響で日常に大きな変化が現れ、日常を奪われてしまった多くの人々の怒りや悲しみの感情は全て小田原修司のクローンである自分たち新世代型二次元人に向けられている現実に打ちひしがれる本人達。

 そんな自分達の現状に悲観する新世代型たちを前に、戸惑うメタルバードやカァチェン。

 すると此処でカァチェンが雰囲気を一変させようと、メタルバードに問い質した。

「と、ところでバーンズ氏。国際会議での議題に挙げられた新世代型二次元人への処遇の件は、一体どうなりましたか?」

「そ、それが……いや、なんとか処分は免れた。だが、当面の間は新世代型二次元人への監視は続行するようにと釘を刺されてな。またしばらく新世代型の動向を見張る様に言いつけられちまって……」

 場の空気を改善しようと問い掛けた質問だったが、メタルバードの口から出た意外な答えに唖然とするカァチェン。そんなカァチェンと同様にメタルバードの話を聞いた新世代型は暗鬱な表情で呟き出す。

「ほら、世界も未だに私たちを危険視し続けている……」

「やっぱり最初だけなんだよ。自分たち新世代型が世界に望まれていたのは……」

「暗い……暗すぎるぞ、お前ら! 大丈夫だって。いつか世界もお前達の価値を理解してくれる時が来るって」

 暗鬱な表情で愚痴る新世代型たちに励ましの言葉を掛けるメタルバード。

 

 と、多くの犯罪者や異常者(ヒール)たちが連行されて、最後にメタルバードに殴られて目を回したMr.フェイクが担架に乗せられて運ばれようとした、その時。

 大きな大きな轟音が鳴り響いた。運悪く、時計塔の時計が時刻を伝える鐘を鳴らしたのだ。

「うわあっ!」「し、しまった……もう、そんな時間か!」

 鳴り響く鐘の轟音に現場の皆々が驚愕してしまう。

 するとその時、担架を運ぶ隊士が轟音に驚いて立ち止まっている最中にMr.フェイクが目覚めて飛び起きた。

「ハッハァ! Mr.フェイクのお目覚めだよッ!」

 そう飛び起きるとMr.フェイクは自分を乗せていた担架を運んでいた二人の隊士を蹴り飛ばして飄々と床に着地する。

 すると彼は懐から一つの真っ赤な色のボタンを取り出して、喜々とした様子でボタンを押した。

「サプライズっ!」

 Mr.フェイクがボタンを押した瞬間、時計塔が激しく揺れ動いた。

 全ては余興だと講じてMr.フェイクが仕掛けた爆弾が爆発したからだ。

「うはははっ、そうだ! 破壊もまた立派なエンターテイメント! 素晴らしい爆発がショーを彩る!」

 爆発ボタンを押して喜び舞うMr.フェイクを前に、メタルバードは怒りの鉄槌を打ち込もうとした。が、爆発で崩落する時計塔の歯車が邪魔をして、Mr.フェイクに殴り掛かれなかった。

 一人喜び浮かれるMr.フェイクを前に、崩落する時計塔の内部で立ち往生してしまう新世代型たち。そんな彼らにもMr.フェイクは言葉をかける。

「ほらほら、色鮮やかな爆発が立派な時計塔を破壊していく……君たち破壊と殺戮を象徴する小田原修司のクローンでも、こんな芸当そうそう出来ないでしょ」

 嬉々として時計塔爆破に浮かれ上がるMr.フェイクを目撃して、新世代型たちの怒りは遂に爆発。Mr.フェイクに殴りかかってしまう。

「うがっ、ぐほっ……ほ、ほらほら、やっぱ君たちは暴力の象徴である修司と何ら変わりない」

 新世代型たちに殴られても、Mr.フェイクは彼らと小田原修司は同じだと説き返す。

 そんなMr.フェイクに対して完全に怒り切れた新世代型は、崩落する時計塔内部でMr.フェイクを殴り倒す。

 と、そこに天井から崩落してきた歯車を回避してメタルバードが駆けつけてきた。

「ま、待つんだ……!」

 新世代型たちが怒りに任せてMr.フェイクに手出ししている現状を見て、メタルバードは彼らを制止しようとした。

 だが、その直前。新世代型たちから一方的に殴り付けられていたMr.フェイクが崩落する床から足を滑らせて真っ逆様に落下してしまう。

「うわーーーー、ははははっ……」

 崩れ行く時計塔から落下しながらも、狂喜さながらに笑いながら落ちていくMr.フェイクを前にして、新世代型たちは遂に人殺しをしてしまったという罪悪感に苛まれる。

「や、殺っちまった……遂に殺っちまった……!」

 怒りで我を忘れるほどにMr.フェイクを殴り続けていた新世代型たちが罪悪感に苛まれているところに、メタルバードが駆け付けて言う。

「あ、安心しろ! いくら三次元人でもアイツは異常者(ヒール)だ! 殺めちまっても見逃される事もある! それ以上にMr.フェイクは悪運の強い奴だ、もしかすると生き延びてまたひょっこり出てくる事も満更じゃない!」

「………………!」

「いいか、今は取り合えず全員この場から逃げるんだ! 時計塔から脱出するんだ!

 そう新世代型たちを説き伏せるとメタルバードは駆け出した。

「ほら、オレについてこいッ」

 メタルバードは唖然とする新世代型たちに呼び掛け続ける。が、彼らは一向に動こうとしない。

 奏功している内に、再び天井から巨大歯車が落下して夥しい程の塵と埃が舞い上がる。

 粉塵で視界が遮られる中、メタルバードは崩落する時計塔の内部で見失った新世代型たちを探し出す。

(クッ、アイツら……色々と心の中に積み上がったモヤモヤで呆然としちまっているのか……!)

 メタルバードは気抜けしている新世代型たちを見て、彼らの心中に様々な激情が積み重なっている事実を噛み締めた。

 

 と、メタルバードが崩落する時計塔の内部で新世代型たちを捜索している中。

 新世代型たちは失意のどん底にいた。

 望んでいない出生や半生、そして小田原修司への憎悪や怒りも全て自分たちに向けられる現状に新世代型たちは生きる気力を失い掛けていた。

「もう、このまま死んだ方がいいのかも……誰からも必要とされない、誰からも疎まれるだけなら……いっその事、此処で果ててしまった方が……」

 と、新世代型の薙切えりなが暗然とした面持ちで呟いた。そんなえりなの心情に、他の新世代型たちも同意だった。

 だが、その時。そんな自分達の絶望的な現実に悲観する新世代型二次元人に呼び掛ける声が。

「いいや……いま此処で死なれたら俺さまが困っちまう」

 その声に誰もが驚き、そして声のした方へ目を向けると、新世代型たちは驚愕し目を見開いた。

「やあ、ご機嫌いかが!? マイ・チルドレン!」

 新世代型の視界に映ったのは、皮膚が褐色なだけで他は寸分違わない小田原修司そのものだった。

 そんな小田原修司と瓜二つの存在に気付いた次の瞬間、新世代型たちの頭上から崩落する時計塔の部品が降り注いだ。

 

 

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