聖龍伝説 現政奉還記 創生の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 黒武士の凶行が世界各地で頻発する様になり、遂に国際連盟が動き出した。世界代表者たちは問題の渦中にいる新世代型たちへの処遇を早々に決めたい一心であった。この招集に聖龍隊と新世代型たちはジャッジ・ザ・シティへと赴き、記者や荒れる市民の群衆を掻い潜る。新世代型たちは、自分達の始祖、小田原修司が書き記した自伝本を読んで少しでも自分達の始祖である三次元人の心境や真意を悟ろうと努力していた。そんな中で行われた国際会議では、新世代型や障害者である事を公表した小田原修司への批難の声が殺到してしまう。これに対して加賀美あつこが熱弁を振るうが、代表達の心には届かなかった。一方で聖龍隊基地に待機していたところを、偽の令状で強引に連行された新世代型たちはMrフェイクの会合という名目で設けられた会場に集められてしまう。其処にいた多くの有名無名な犯罪者達から多くの批難と罵声を受けた新世代型たちであったが、其処にメタルバードとシバ・カァチェンが駆け付けて犯罪者達を一掃。しかし最後にはMrフェイクが仕掛けた爆弾で、会場であった時計塔は崩落してしまう。自分達の出生や逃れられない宿命に絶望を感じ、生きる気力を失い掛けていた新世代型たちは、崩落する時計塔で茫然としていたところに謎の人物が。その人物を見た次の瞬間、彼らは崩落する瓦礫に呑み込まれてしまう。



現政奉還記 創生の章 闇の出現

[目覚める狂気]

 

「起きろ~~……起きろ~~……」

 暗闇の中から聞こえてくる声に新世代型たちは、そっと瞼を開いた。

「起きろ~~……我が子よ、もう起きる時間だぞ。寝てばっかじゃ世界は変えられない」

 声に導かれる様に目を覚ましてみると、最初に目に付いたのは真っ白な天井だった。

 気が付いて布団の中から起床してみると、そこはベッドの中だった。

 辺りを見回してみると、向かい側のベッドにも隣同士のベッドにも見覚えのある同じ新世代型二次元人が同時に起床していた。

 そんな茫然と起床する新世代型たちの視界に、横からひょいっと顔を覗かせる男が語り掛けてくる。

「ほらほら起きた起きた! お前達が眠ってばっかじゃ、俺様が自由に動けないじゃないか!」

 意識を失っていた自分達が彷徨っていた暗闇の中から聞こえて来た、導く様な声の主はこの男のだと新世代型たちは声を聞いて直感した。

 皮膚は褐色、目は紅く怪しい眼光を輝かせている以外は、その全てが自分たち新世代型の始祖、小田原修司と酷似しているその男の声に導かれて新世代型たちは目覚めた。

 そして徐に考え込む。自分達はなんでベッドの上で寝ていたのか。

 そして思い出した。Mrフェイクの謀略でジャッジ・ザ・シティの時計塔が爆破。自分達はその爆発に巻き込まれて、そこから意識を失っていた事に。

 だが、それ以前にも新世代型たちは今自分達の目の前にいる小田原修司と酷似している人物が誰なのか疑問に思った。

 すると其処に何者かの足音が近づいてくるのが耳に入った。

「おっ、お前ら! 目が覚めたか! それもみんな揃って」

 自分達が横にされていたベッドの病室に入ってきたのは聖龍隊総長バーンズだった。彼は病室で今まで気を失っていた新世代型たちが揃って目覚めた事に驚きつつも嬉しさを感じていた。

「どうだ、気分は? あれから三日も寝込んでたんだぞ」

 バーンズの話から、時計塔爆破から三日経っている事を察する新世代型たち。

 と、新世代型の目覚めを喜ぶバーンズの傍らでは、小田原修司に酷似している男が不敵な笑みを浮かべるばかり。新世代型たちは謎の男についてバーンズに問い質そうとした。

「あ、あの、バーンズ……」

「ん? どうした、真鍋? ブラックホワイトに撃たれた傷が痛むのか?」

 声をかけてきた真鍋義久をバーンズは心配するが、真鍋はそんなバーンズの傍らで不敵な笑みを浮かべ続ける男を指差して問うた。

「あ、あれ……?」

「あれ……? ……あの絵画がどうかしたのか?」

「え? 絵画……!」

 真鍋義久も周辺の新世代型たちもバーンズの応答に驚いた。

 するとバーンズは不敵な笑みを浮かべる男の横を通り過ぎて、その男の真後ろの壁に飾っていた小さな絵画の前に立つと語り出した。

「いやな。いくら清潔第一の病棟だと言っても、殺風景なのはどうかなと思って、安物の絵画を飾っていたんだが……この絵がどうかしたのか?」

「………………………………」

 バーンズが絵の前に立っている最中も、小田原修司に似た男は不敵な笑みで新世代型たちに顔を向け続けてた。

 

 バーンズが全く謎の男に気付かない現状に淡い混乱を抱く新世代型たちは、徐にベッドから起き上がって立ち上がった。

 立ち上がって移動しようとする新世代型たちにバーンズは慌てた様子で言った。

「おいおい、もう起きていいのか? もう少し寝てろよ」

 しかし新世代型は自分達の容態を気にするバーンズに「大丈夫」と返事する。

「……そうか、でも無理はするなよ。いくら奇跡的にあの崩落した時計塔の瓦礫の中から無傷で生還できたからって、下手したらみんな死んでいたんだからよ」

 バーンズの話によると、自分たちは崩落した時計塔の瓦礫の中から奇跡的に無傷で生還できたらしい。

 そして皆は自分達が寝かされていたベッドが配置されていた病室を出る前、バーンズに訊ねた。

「ここは何処?」と。するとバーンズは真顔で答えた。

「此処は聖龍隊のジャッジ・ザ・シティ基地の療養区だ。戦闘で怪我した隊士や市民を治療する為の区域で、海と陸両方に面している」

 そう説明するバーンズの話を聞いて、新世代型たちが窓の外に目を向けてみると心地よい潮風が吹き込む太平洋が窺えた。

 そしてバーンズから現在地が基地の療養区である事を伝えられた新世代型たちは、療養区を移動し始めた。

 すると自分達が寝込んでいた病室のスグ隣に、医務室があるのが確認できた。

 新世代型たちが医務室の存在に気付いたその瞬間、例の小田原修司に酷似した人物が手招きをしながら医務室に入っていくのが目に映った。

 新世代型たちは些細な好奇心から医務室を覗き込んでみた。

 すると其処には聖龍隊の看護総長を任せられているHEADのナースエンジェルが黒マントを着衣した謎の男と話しているのが目に入った。

 新世代型たちが室内を覗き込んでいると、ナースエンジェルが彼らの存在に気付く。

「あら、あなた達! もう目が覚めたのね」

 バーンズ同様に、自分達が目覚めた事を心より喜ぶナースエンジェルの言動に微笑ましく思う新世代型たち。すると、そんな新世代型たちにナースエンジェルと話していた黒マントの男が顔を向ける。

 顔を向けられた瞬間、新世代型たちは一驚した。顔の一部が黒味かがった灰色の皮膚に覆われ、継ぎ接ぎだらけの顔に一驚したのだ。

 だが、同時にその男の顔を見た途端、新世代型たちは共有感知でその男性が如何に著名な二次元人であるのか瞬時に察した。

「あ、貴方は………………ブラックジャック!?」

「ほほう、私の事を知ってくれているとは……」

 新世代型の星原ヒカルが震える指で指し示すと、ブラックジャックは自分の事を知ってくれている新世代型たちに無愛想な面を向ける。

 漫画の神と言われる手塚治虫が生み出した、自分の医者としての半面を表したと言われるキャラクター、ブラックジャックの存在は、新世代型でなくとも多くの二次元人が周知しているのだ。

 そんな高名な無免許医であるブラックジャックに新世代型たちが驚いていると、ナースエンジェルが語り明かした。

「ブラックジャックとは聖龍隊創設時からの古い付き合いなの。お茶の水博士と一緒にちせの体を手術(オペ)してくれて以降、ブラックジャックは聖龍隊の有事の際に手伝いに来てくれる事が多いのよ。今回も、たまたまジャッジ・ザ・シティで手術(オペ)の依頼を終えた頃にあなたたち新世代型が事件に巻き込まれたのを報道で知って駆けつけて来てくれた訳なの」

 ナースエンジェルがブラックジャックと聖龍隊の親交について語り終えると、続けてブラックジャックが駆け付けた真意についても語った。

「ブラックジャックもブラックジャックで色々とあなたたち新世代型に興味があるらしいの……まあ、あの修司さんのクローンというだけでも医者として興味が湧いちゃったみたいだけど、それ以外にも関心があるらしいの」

 ナースエンジェルからの紹介と経緯を語られ、ブラックジャックは自分の真意を新世代型たちに伝えた。

「医者と言う概念からも、クローンと言うのは賛否両論ある技術だ。その技術を応用して生み出された君たち新世代型は、正直に話すと医者としてとても関心が湧く。まぁ、とは言っても君たちは完全なクローンではないがね。世間の大半が誤解しているようだが、君たちは小田原修司の遺伝子から生み出されたのではなく、その遺伝子をモデルに生み出された種だ。遺伝子を用いられて生み出されてない以上、本当のクローンとは言えない。敢えて言うならクローンではなくコピーの方が近いかな」

 新世代型は小田原修司の遺伝子をモデルに生み出されており、遺伝子を用いたクローンとは一線を引く事から、どちらかと言えばコピーという代名詞の方が近いと説くブラックジャック。

 新世代型たちはブラックジャックから言われた。

「ちょうど私がこの基地に駆けつけて来た時には、既に君らは瓦礫の中から救われて移送されてきたところだった。スグに診察してみたが、全員がほぼ無傷だったから驚かされた。本当に運がいいよ、君たちは」

 ブラックジャックから運の強さを指摘されて何も言い返せない新世代型たち。

 と、そこに一人の幼女が医務室に入り込んできた。

「ちぇんちぇーー!」「ピノコ! ここはあくまでも療養施設なんだから静かに入りなさい」

 幼い女の子が唐突に入ってきて、ブラックジャックは呆れながらも幼女を両腕で受け止める。

 そして幼女を自分の膝の上に乗せると、幼女は新世代型たちを見て独特の喋り方で話し掛けて来た。

「あら、あんたたち、やっと起きたのねっ。もう三日も寝たまんまだったからアタシもしぇんしぇいも心配ちてたのよっ」

 幼女ピノコからの話に、ブラックジャックも話し出す。

「このピノコも随分、君たちを看病してたんだ。なにせ、無傷なのに死んだ様に眠っていたんだからな」

 ブラックジャックから、彼の家族であるピノコが看病をしてくれた事、そして無傷ながらも死んだ様に眠っていた事を聞かされる新世代型たち。

 すると皆の視界の横から、再びあの修司と酷似している褐色肌の男が現れて新世代型たちに語り出した。

「修司も聖龍隊も、このブラックジャックに何度も助けられた恩がある! まあ、そのつど修司はブラックジャックに多額の謝礼を差し出していたが……この男の技術の高さは修司が信じてきた数少ないものの一つだ!」

 しかし現場のブラックジャックもナースエンジェルも、そしてピノコですら謎の男の存在に気付かないのだった。

「修司はとにかく他人を信じなかった、いや信じる事ができなかった! そんな中で二次元界の神と言われる手塚治虫が生み出したブラックジャックの技術にはずば抜けた信頼を寄せていた。まあ、この男は哺乳類だろうが宇宙人だろうが手術(オペ)できちまう凄腕だしな」

 不敵な笑みでブラックジャックと小田原修司の信頼性を主張する謎の男の狂言に、新世代型たちは戸惑うばかり。

 しかし、その狂言誑しの男の存在に気付かないブラックジャックは、そんな新世代型たちを見て不思議そうな表情で言った。

「ん? どうした、君たち。そんな面食らった顔をして。まだ目覚めたばかりで頭がボーッとしているのかい? ここは聖龍隊の療養区、少し施設内を歩いて目をシャキッとさせたらどうだい?」

 謎の男に全く気付かないブラックジャックに言われるがまま、新世代型たちは医務室から出て人が行き交う廊下へと移った。

 

 

 

[病棟施設で]

 

 廊下に出た新世代型たちの目の前に、またあの男が現れた。

 男は不敵な笑みを浮かべたまま、まるで新世代型たちを誘導する様に徘徊し出した。

「ほらほら、皆さん皆さん。せっかく悪名高いブラックジャックが施設を散歩していいって言ってくれちゃった訳だし、少し歩いてみようぜ。ジッとしてたって何の面白味もない」

 不敵な笑みで言う男の戯言に従うかのように、足を進ませ始める新世代型たち。

 謎の男は皆の先頭に立って、施設内を徘徊する。

 施設は平屋になっているが、それ以外は極普通の病院と変わらない構造だった。

 その病棟の中で謎の男は、廊下を歩く医師や看護兵を避けながら進むが、誰も男の存在に気付かない様子だった。

 

 誰も謎の男に気が付かない現状の中、新世代型たちは病棟に配置されていたテレビルームにやって来た。

 テレビではちょうど、三日前のMrフェイクが起こした時計塔爆破について取り上げられていた。

 しかも新世代型たちが入室した所には、聖龍HEADの堂本海斗と蒼の騎士がテレビで報道されていたニュースを見終わって愚痴を零していた。

「時計塔爆破の事件に新世代型が関与している、か……まったく、関与しているんじゃなく、巻き込まれただけだっての」

「ホントにそうだね。これじゃ事件を引き起こしたのが新世代型だって印象が強いよ」

 ニュースを見て、新世代型たちが事件の中心にいるような報道に遺憾を示す海斗と蒼の騎士。

 自分達が事件を起こしたかのような報道が流れている現状に複雑な感情を滾らせる新世代型たちに、ここで海斗と蒼の騎士が気付いた。

「んッ、君たち! なんだ、目が覚めたんだな」

「良かった。三日も眠っていたから心配してたんだよ」

 海斗と蒼の騎士からの気遣いに御辞儀をする新世代型たち。そんな彼らに海斗は言った。

「い、今の話もしかして聞いちゃってた……? はは、いやなに、報道機関ってのは注目を集める為に大げさに事件を盛り上げる傾向もあるから気にするなって」

 堂本海斗に続いて蒼の騎士も新世代型たちに語った。

「海斗の言うとおりだよ。世間はまだ君たちの事を誤解しているみたいだけど、いつか解ってくれるって。ほら、よく言うでしょ。「人の噂も七十五日」って。悪い噂もスグ、風に流れて消えちゃうよ」

 海斗と蒼の騎士の気遣いに、新世代型たちは茫然と聞き入れた。

 すると、そんな海斗と蒼の騎士の間に、あの謎の男が横から入り込んで二人の間で語り出す。

「ふぅ、人の噂も七十五日、ね……でも案外、噂ってのは尾ひれが付いて長引くこともあるんだな、これが。悪い噂なら尚更だ」

 不敵に語る男の言葉にも、海斗と蒼の騎士は全く気付かず、そのまま二人はテレビ室で談義する。

 

 堂本海斗と蒼の騎士の話を聞いた新世代型たちがテレビ室から出ると、廊下の壁に修司と瓜二つの男が寄りかかって新世代型たちを不敵に見据えていた。

 男の視線に新世代型たちは何かしらの驚異を感じ取ったが、そんな彼らとは正反対に廊下を歩く他人には男の存在すら気付かない。

 と、その新世代型たちは平屋である病棟で最も広い間取りの方から何やら賑わう音声が聞こえてくるのに感付いた。

 すると新世代型たちと同様に賑やかな音声に気付いた謎の男は、新世代型たちに「何だか騒がしいな、オイ。ちょいと覗きに行ってみようぜ」と声をかけて騒音がする方へと歩いていく。

 男の指示に従うつもりはないものの、騒ぎが何なのかを確認したかった新世代型たちは男に付いて行く。

 新世代型たちが出たのは、病棟の玄関ロビーに当たる出入り口だった。出入り口前では大勢の人々の声が飛び交っているのが耳に入ってきた。

 するとその出入り口から、集団に揉みくちゃにされたのか髪の毛がグチャグチャになったマーメイドメロディーズの三人、七海るちあと宝生波音そして洞院リナ達が建物に草臥れた様子で入ってきた。

「わわわ、もう迂闊に外も出られないよ……」

 乱れた頭髪をどうにかしようとする七海るちあ達が屋内に入ってきたところに、新世代型たちは出くわした。

「あら、みんな! 良かった、どうにか目覚めたみたいね」

 新世代型たちの顔を見て、七海るちあはバーンズやブラックジャック同様、喜びに満ちた顔を浮かべる。

 そんなるちあ達に新世代型たちが何事かと訊ねると、るちあ達は難しい顔を見合わせて戸惑いながらも新世代型たちに訳を語った。

「そ、それがね………………実は、時計塔爆破の事件で犯罪者達が会合していた一件が広く報道されちゃったの。それで、その会合の中心にいたのが、あなたたち新世代型だっていう情報も流出して、今でも聖龍隊の基地はもちろん、あなたたちを運び込んだこの病棟前にも多くの報道陣が群がっているの。今、ジュニア参謀総長がマスコミへの対策として記者会見を開く調整をしているんだけど……もうマスコミに質問攻めされて、しっちゃかめっちゃかで……」

 自分達が巻き込まれた時計塔での犯罪者達の会合事件から、塔の爆破に関しての報道が激しすぎて聖龍隊の基地にまでマスコミが群がっている事実を聞かされて複雑に思う新世代型たち。

 そんな不安がる新世代型たちに、るちあは安心させる様に言った。

「で、でも大丈夫だから。ここは病棟区域で患者や関係者のプライバシーは護られる筈だし、記者も此処まで侵入してくる事はないと思うから。あなた達は安心して体を休めてて良いのよ」

 るちあからの言葉に、新世代型たちは少し安堵した。

 そんな七海るちあたち三人のマーメイドが病棟入り口前で今後のマスコミへの対応について談義し始めると、またあの修司そっくりな男が現れて三人のマーメイドを見詰めながら不敵に語り出す。

「マスコミほど情報に群がるハエ共はいないぜ。アイツらにとって特ダネってのは麻薬みたいに快楽を得られる情報だからな。そんなに俺たちを記事に取り上げるぐらいなら、るちあ姫たちのバストサイズを記事にした方が売れると俺は思うな」

 三人のマーメイドプリンセスの容姿を皮肉る台詞を語る男の口ぶりに、新世代型たちは男に対して不快感を感じる様になる。

 

 と、新世代型たちが男の口ぶりに注目していると、そんな彼らに声をかけてくる人物達が。

「あ! みんな」

 新世代型たちが振り向くと、そこには花束を抱えた黒鳥千代子を初めとしたプロト世代のギュービッドに桃花・ブロッサムそして海道ジンがいた。

 四人は新世代型たちを視認すると、彼らの元に駆け付けて話し掛けてくれた。

「良かった! 最初、みんなが崩落した時計塔の中から発見されたって聞いた時は、もうダメかと思っていたけど、みんな無事で! 琴浦さんも此処に運び込まれた時は顔がパンパンに痣だらけになっていたけど、今は落ち着いたみたいで良かった……」

「あ、あ……」

 涙目になって喜ぶチョコの言葉に琴浦春香本人は何を答えていいのかスグには思い付かず、言葉を呑み込んでしまう。

「まったく、それにしてもあのMrフェイクがまたしても……今度は本当にアンタたち新世代型だけを集めさせて犯罪者達へ生贄にさせようとしたとは……まっ、そのMrフェイクも時計塔の崩落に巻き込まれて生死不明だって言うし、万々歳じゃないか」

「せ、先輩……いくら悪人だからって、死んでよかったなんていうのは少し罰当たりですよ」

「はは、桃花くんの言うとおりだよギュービッド。それにしてもみんな、本当に無事で何よりだよ。あの瓦礫の山からほぼ無傷だったなんて未だに信じられないよ」

 ギュービッドと桃花とジンの朗らかな会話に、チョコもほっこり笑顔を浮かべるが、新世代型たちはそんな四人の会話を黙然と不敵な面構えで聞き耳を立てて聴く謎の男の存在に発言力が失われていた。

「……ん? どうかしたの、琴浦さん」

「えっ、あの……ちょ、チョコちゃん。あれ……」

 チョコに問い掛けられ、琴浦春香は謎の男の方を指差した。するとチョコは真顔で言った。

「? ……自動販売機がどうかしたの?」

 やはりチョコにも男は見えず、男の真後ろに在る自販機に目が行ってしまってた。

 琴浦春香は「う、ううん、なんでもない」とチョコに言い、再び男に視線を向ける。男は絶えず、彼女ら新世代型たちの視界に存在し、不敵な態度を取り続けてた。

 と、ここでチョコが新世代型たちに言った。

「あ、そうだ。この花、ジャッジ・ザ・シティの花屋さんで買ってきたんだけど、病室に活けておくね」

 そういうとチョコは病室の方に向かい、そんなチョコに続いてギュービッドと桃花・ブロッサムも歩き出す。

「……僕は少しバーンズさんと君たちを診てくれたブラックジャックに話がある。君たちも君たちで、あまり無茶をせずゆっくり養生しておくんだ。この先、何があるか解らないからね」

 チョコたち三人が病室に向かったのを目視した海道ジンは、自分は自分で話があるからと新世代型たちとは別行動を取って歩いていった。

 そんな四人を前に、またしてもあの男が口を開いた。

「出来損ないのプロト世代ってのは、あの四人か。俺たちみたいに新時代を切り拓く能力も才能もないくせに粋がりやがって……」

 自分たちにお見舞い用の花を購入してくれたチョコたちを悪く言う男の発言に不快感を示す新世代型たち。

 

 そんな謎の男、小田原修司と酷似した男の狂言振りに嫌気が差した新世代型たちは、男の戯言を聞いて少し疲れたのか、また自分達が寝ていた病室に戻ろうと歩を進めた。

 未だ自分達の中に目覚めた狂気が何なのか気付くことなく。

 

 

 

[狂気の正体]

 

「なあなあなあなあ! これからどうする? またジャッジ・ザ・シティに出向いて犯罪者達と戯れるか? それとも未だに聖龍隊の御守りの中に居続けるつもりか? せっかく俺さまもこうして喋れる様になったんだ! 面白い事しようぜ」

 病室に戻る道中、しつこいぐらいに自分達に問い掛けてくる男の台詞に苛立ちが募る新世代型たち。

 すると、この小田原修司に酷似した男に新世代型の堪忍袋が切れた。

「お前! 一体何者なんだ!」

 威勢のいい叱り声で問い掛ける鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)に、周囲の人々が注目した。

 周囲の人々には男の姿は影も形も視認されず、皐月が一人で急に怒鳴り出した様に解釈される。

 そんな皐月に男は笑顔で言った。

「ふふふ、ほらほら皐月ちゃん、ここは病棟だよ? 静かにしてなきゃダメでしょ? ママから教わらなかったかい? あっ、そうだった。君らのママはとっくの昔に宇宙で吸収されちゃったんだっけ。ぐひひ」

 自分達を小馬鹿にする様な態度に皐月たちは怒りの感情を滾らせるが、周囲が彼女達に注目している以上、何も応答できなかった。

 そんな周囲の目を気にする新世代型たちに男は語り出した。

「さて、君らの質問に話を戻そうか。俺が誰だって? 解らないかい? ……俺は俺だ」

 不敵に指を差して返答する男の言い分に苛立ち、真鍋義久が心の中で(誰なんだ!)と怒鳴ると、男にもそれが伝わったのか動揺する素振りで語り返した。

「いやいやいや、そんなに怒らないでくれよ。仲良くしようじゃないか、俺たちは一心同体なんだからよ」

 この男の発言に、新世代型たちは心中で(一心同体?)と不思議がった。

 そんな新世代型たちに男は語り続けた。

「一心同体、解らないかい? 俺たちは身も心も一つなんだよ……その証拠に、俺さまが見えているのは君たちだけじゃないか」

 確かに男の言うとおり、男の姿を捉えているのは自分たち新世代型だけの様子が見て取れる。

 しかし未だに正体が不明な男の素性を知る為に、新世代型たちは心中で(結局お前は何なんだ)と問い掛ける。この質問に男は不敵な笑みで答え返す。

「俺は俺だよ。でもそれだけじゃない。俺はお前達自身なんだよ」

 男の台詞に新世代型たちは廊下の端で首を傾げる。そんな彼らに男は続けて語り掛けた。

「俺はお前達自身だ。それ以外でも、それ以上でもない。俺は俺、でもお前達なんだ。ぐひひ」

 怪しい笑みを浮かべて話を拗らせようとする男の口振りに新世代型たちが立腹しそうになると、男はそんな腹を立てかける新世代型たちの胸中を察してか真顔で語り出す。

「ふふふ、もう本題に入っても良いかな。君たちは修司が書き記した聖龍伝説の自伝本は手元にあるよな?」

 男の質問返しに新世代型たちは心の中で小さく(うん)と返事をした。その返答を受け取った男は、唐突に自伝本に登場するあるキャラクターの名を出した。

「なるほど、全員が熟読しているのか。それはそれで結構な事だ。俺様も鼻が高い。…………それじゃお前ら、闇人って名前のキャラクターはご存知かな?」

 男が唐突に口に出した「闇人」の名前に、新世代型たちは動揺しながらも頷いた。

 新世代型たちが頷いたのを確認した男は、表情を満面の笑顔にして言い放った。

「じゃじゃーーん! そうです、俺さまが闇人でぇす!」

 突如自分の事を闇人だと名乗る男の発言に一驚する新世代型たち。

 小田原修司の自伝本を読んで、新世代型たちは闇人が如何なるキャラクターか、いいやどんな存在だったのかを周知していたので半ば頭の中が混乱してしまう。

 

 闇人とは。

 二次元人が三次元人の思想概念より生まれる生命体である様に、闇人もまた同じである。自らの不遇な出生に苦しみ、自分を生み育んだ全てを憎悪する様になった小田原修司の思想概念から生まれた存在。己を生み出した全てを憎悪している為に、何事においても暴力的で好戦的な性格である。狂気的な性分であるが、現実主義者の様に理に適った思想を抱くなど明白な考えも持っている。小田原修司の容姿は元より、彼が持つ強大な闇の能力の核でもある闇人の能力は小田原修司を遥かに凌駕している。1度だけ聖龍隊と戦い、小田原修司とも決着をつけていたが、その後も小田原修司の潜在意識の中に潜んでいたと言われる。現在では聖龍隊や二次元界の間で伝説の敵役と言われるほど名が伝わっている。

 

 そんな修司の過去を、事情を小説を読んで知っている新世代型たちは今自分達の前にいるのが闇人だと言われても納得できなかった。

 それもその筈。彼らは一度、機械が作り出した幻と言えど闇人を以前に目撃しているが、その闇人とは違い、今目の前にいる闇人は完全に成人した姿だったからだ。

 

 自伝小説を熟読して、闇人が既に消滅したのを知っている新世代型たちが考え込んでいると、そこに闇人を名乗る男が口を挟んできた。

「おいおい、何を勝手に殺してくれちゃっているの? 俺様はピンピンに生きているよっ。まあ、実体は今のどころ無いんだけどな」

 この闇人の発言に新世代型たちが戸惑っていると、闇人は微笑を浮かべて語り明かした。

「お前達は本当に俺が……修司の心の闇が消えたとでも思っていたのかい? いいや、人の心には必ず闇が存在している。それが大きいか小さいかの違いだけだ」

 闇人は更に語り続ける。

「俺は待っていた、俺自身を必要としない修司に成り変わる逸材が……そう、修司の血を、心を受け継ぐ云わば鬼の申し子が生まれる時を! そして生まれてきたのがお前たち新世代型だ。この意味、解るよな?」

 だが新世代型たちは闇人が言っている意味が通じず、ただただ困惑するばかり。

 すると闇人は新世代型たちに語りかけ続けた。

「ふふふ、可愛い可愛い我が子たちよ。もうすぐでお前達の苦しみは無くなる……苦しみから解放される! その時こそ……この俺、闇人様が復活するのだ!」

 両手を真上に向けて喜々と語る闇人の戯言に、新世代型二次元人は反発した。

「ふ、ふざけるな! 俺たちがアンタに……アンタが俺らに成るってのか!?」

 病棟の廊下の端で急に怒鳴り散らす磯谷ゲンドウの言葉に、闇人は丁重に答えた。

「少し違うな。お前達が俺に成るんじゃない……もう成っているんだよ、俺という狂気にな……!」

 なんともおぞましい顔付きで新世代型たちに告げる闇人の台詞に、怒りで我を忘れそうになる新世代型たち。だがそんな中で磯谷ゲンドウだけが怒りの感情を抑制できず、闇人に殴りかかった。

 だがゲンドウの拳は闇人をすり抜けて、ゲンドウは前方の床に倒れ込んでしまう。

「み、みんな! どうしたの?」

 廊下での騒ぎを聞き付け、病室に購入したばかりの花を活けたチョコたちプロト世代の二次元人たちが廊下に飛び出す。

「なんだなんだ? 何事だ?」

 医務室からも、騒ぎを聞いてブラックジャックを初めとするバーンズやナースエンジェルが廊下に出てきた。

 大勢の人の注目を浴びながら、戸惑い始める新世代型たちを尻目に彼らの心中に潜む闇人は挑発するかのように語り出した。

「おいおい、一人で勝手に暴れまわっちゃ、みんな不安がっちまうじゃねえか。まあ、人を不安がらせるのは修司も……そしてその血を引いたお前ら新世代型ならではの性質だな」

 闇人からの挑発に、彼を殴り付けようと飛び掛りながらもすり抜けて床に倒れこんだゲンドウも、新世代型たちも表情を険しくさせる。

 そして大勢の注目を受けながら、闇人は新世代型たちに言い切った。

「足掻いたって無駄だ。お前らはどう足掻こうが、俺の器として生き永らえる運命が待ち受けているんだ。今さらジタバタしたって手遅れだよ」

 この闇人の発言に、遂に鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の堪忍袋が炸裂した。

 彼女は闇人に向かって拳を振るう。新世代型の誰もが、また実体の無い闇人の体をすり抜けて皐月の拳が宙を舞うと思っていたその矢先。

 なんと闇人が皐月の拳を片手で受け止めて、意図も容易く制止してしまう。これには皐月もその他の新世代型たちも驚愕するが、周りからは皐月が空中で突然振るった拳を静止させている様にしか映らなかった。

 一方で皐月の拳を受け止めた闇人は、拳を振るってきた皐月に向かって不敵に語った。

「ふふ、触れられないとでも思ったのかい? 俺は確実に存在している、お前達の頭の中にちゃんと実体が在るんだ。だから俺さまを避けて通る事はできないぜ……グフフフ」

 己の実体は自分たち新世代型の頭の中に、心中に存在しているのだと説く闇人の話に、皐月たち新世代型たちは愕然とした。

 

 

 

[診断]

 

 廊下で騒動を起こしてしまった新世代型たちは、病室に戻されて主治医になってくれているブラックジャックの問診に答えていた。

 バーンズ、ナースエンジェル、そして四人のプロト世代に見守られながらブラックジャックの問診に答えていく新世代型たち。

 そしてブラックジャックは粗方の質問を新世代型たちに尋ねると自分の頭を掻いた。

「……するとなんだい。君たちにしか見えない、あの闇人が色々と口を挟んできたから廊下で騒いでいたってのかい?」

 ブラックジャックからの問い掛けに新世代型たちは力強く頷くが、ブラックジャックは難しい顔でバーンズに歩み寄ると彼に言った。

「……バーンズ、これは私の手には負えない。怪我とかなら外科医である私が治療できるが、頭の……いや、精神的疾患までは治せない」

 なんとブラックジャックは、闇人の言動を捉えていた新世代型たちを精神疾患だと判断した。これには新世代型たちも咄嗟に言い返した。

「ほ、ホントなんだ! 小田原修司そっくりの奴が目の前の現れて、色々と訳の分からない事を勝手に喋りだして……」

「私からは、君達の方が訳わからないよ。……あの闇人が君らの視界にだけ現れるって? 常識的な判断が下せる医者なら、普通に精神科を紹介するところだよ」

 真鍋義久からの訴えに、ブラックジャックは冷たくあしらう。

 そんな新世代型の告白を冷たくあしらうブラックジャックに、バーンズが宥めながら話し掛ける。

「まあまあ、ブラックジャック。そんな冷たいこと言わないでくれや。新世代型には新世代型の事情がある事だろうしな」

 バーンズの説得に、ブラックジャックは闇人の事例について語り出した。

「ふぅ、そもそも……闇人と言うのは修司くん、小田原修司のもう一つの人格みたいなものだ。怒りや憎しみ、そういった負の感情が、いや思想概念から生まれたのが闇人だ。修司君はその闇人との狂気に悩まされてた時期が昔はあったらしいが、近年ではそれが無くなったと聞く。しかし、その闇人が小田原修司ではない君たち新世代型にしか見えないだなんて……精神的異常があるとしか見られない」

「そ、それじゃ! その異常を何とかしてくれよ! アンタは名医で有名なんだろ?」

 ブラックジャックの説明を聴いて、真鍋義久が切実に訴える。

 しかしブラックジャックは難しい顔を浮かべて新世代型たちのカルテを見ながら言った。

「う~~ん……だがさっきも言ったように私は外科医。外科医から診て、君たちは特に目立った外傷も無いし、どこにも異変は無いがな」

「そんな事ない筈だ、もっとちゃんと看てくれッ! 俺たちは何処か異常だ……!」

 外科医からの観点から診て、新世代型には何処にも異常がないと説くブラックジャックに、真鍋義久は自分たち新世代型が何処かしらに異常がある筈だと念入りな検査を求める。

 と、そんなブラックジャックの話を聴いた彼と同じ闇医者の満艦飾薔薇蔵が問い掛けた。

「ん? 君たちに外傷は無し……? ブラックジャック先生、私たち全員に目立った外傷が見られなかったというのですか?」

「ええ、みんな意識低迷以外は外傷もなく、ほとんど無傷でした」

「し、しかし……犯罪者のブラックホワイトに顔面を思いっきり殴り付けられた琴浦春香ちゃん、そしてその身内である久美子さんや真鍋義久君たちは銃で撃たれたんですぞ。その傷はどうだったんですか……?」

「そ、そういえば……俺の腹の傷はどうなったんだ?」

 満艦飾薔薇蔵の話を聞いて、真鍋義久たち銃撃を受けた者たちは凶弾を受けた腹部の傷を気にしたが、傷跡もなく綺麗な状態だった。

 するとブラックジャックは薔薇蔵に指摘されて不思議そうな面差しを向けて語った。

「それなんだが……君たちが時計塔の瓦礫の中から発見されて此処に移送される前から、バーンズから数名が銃撃を受けたり暴力を振るわれたりしていると聞いていた。だが、君たちが此処に移送されてきた時には顔の痣も銃痕も見当たらなかったから不思議だった」

「ちょ、ちょっと待てよ。それじゃ俺たちが崩落した時計塔の下敷きになっていた間に、琴浦の痣も俺たちの銃での傷跡も綺麗に無くなっていたって事か?」

 ブラックジャックの説明に、真鍋義久たちは困惑した。

「話には聞いているが……君たち新世代型の中には致命的な外傷を受けてもスグに再生できる肉体を持った人間がいると聞く。それじゃないかい?」

「で、でもブラックジャック先生、そんな凄い能力持っているのは流子ちゃんぐらいなんだよ」

 新世代型の驚異的な再生能力から傷が瞬く間に消滅したのではないかと説くブラックジャックに、そんな身体能力を持つ纏流子の親友、満艦飾マコが説き返す。

 マコに続いてバーンズもブラックジャックに語る。

「そうだぜブラックジャック。新世代型二次元人には全員が全員、不死性の高い再生能力を持っている個体ばかりじゃない、極々普通の人間らしい個体もいる」

「だが、それでは傷の消滅の説明がつかない……」

 バーンズに説かれながらも、ブラックジャックは傷の消滅に説明がつかない現状に医者として納得できなかった。

 そんな対話をするぶらっくジャックとバーンズ達に、新世代型たちは問題の根本を告げた。

「それはそれとして……俺たちにしか見えていない闇人の事をどうにかしてくれよ」

 告げられたバーンズとブラックジャックが顔を新世代型たちに向けると、バーンズが問い掛けてきた。

「それじゃお前達、今はどうだ? 今は闇人が見えている状態か?」

 バーンズからの質問に新世代型たちは首を横にして見えていない現状を伝える。

 これに対してブラックジャックが医者としての意見を言う。

「それじゃ一種の幻、幻覚じゃないか? 修司くんの心中にしか存在しない筈の闇人が君らにも見えているなんて普通じゃありえない」

 ブラックジャックの診断に新世代型たちは複雑な心境に陥る。

 すると闇人の捕捉を幻覚だと診断するブラックジャックにバーンズが話した。

「いや、待てブラックジャック。もしかすると新世代型達には幻覚だろうと何だろうと、闇人が見えているのかもしれない」

「んっ、なにか心当たりでもあるのかい?」

「ああ、今まで新世代型たちと行動を共にしてきたが……結構普通じゃない事が立て続けに新世代型たちに起こった。それにお前さんも忘れた訳じゃあるまい、新世代型が修司のクローンに近い種だって事を……」

「まさか……小田原修司の遺伝子をコピーされたからって、それで闇人が見える様になったって言うのか? 馬鹿げてる」

「だが、それ以外に考えられない。お前さんもカルテを見て知っているだろ。新世代型達には共有感知という特殊な意思疎通能力が開花している事実を。同じ新世代型なら相手の思考が自動的に伝わってくる特殊な意思疎通能力……それが新世代型たちの頭の中に闇人が巣食ってる要因なのかもしれない」

「闇人が新世代型の精神に寄生しているってのか? バカバカしい、話にならん」

「落ち着けよ、ブラックジャック。この世には医学でも、科学でも説明がつかない事例が多いのはお前さんもよく周知しているだろ。コイツらが本当に闇人が見えるってんなら、何とかしてやらねえと……」

「君は、なにか解決策があるとでも言うのかい?」

「ああ、此処はオレ様に任せてくれ。オレもテレパシー使い……新世代型の潜在意識に潜入して、本当にこいつ等の目に闇人が映っているのか確かめられる」

 そうブラックジャックと語り終ると、バーンズは御得意のテレパシーの感度を最高値まで高めて新世代型たちの潜在意識に潜入した。

 新世代型の潜在意識に潜入したバーンズは、テレパシーで彼らに話した。

「オレの目を、視力をついでに貸してやる。これでお前達が見ている視界がオレにも伝わってくる……ほら、闇人なんかいない。何処にもいないじゃないか。お前達は疲れていただけなんじゃないか……」

 と、バーンズが自分の視力を貸し与えると同時に新世代型に闇人が見えない事実を言い聞かせて安心させようとさせた、次の瞬間。

「ハーーイ、バーンズ久しぶりだな」「!」

 なんと新世代型の視界の横から唐突に闇人が現れて、新世代型の視界を借りて見ているバーンズに呼びかけた。これにはバーンズも驚いて腰を抜かしてしまう。

「ば、バーンズ?」「バーンズ! 大丈夫?」

 腰を抜かすバーンズに、ブラックジャックとナースエンジェルが駆け寄り、声をかける。

 声を掛けられたバーンズは、驚いた顔で新世代型たちを見詰めて彼らに無言で問うた。すると新世代型たちも無言で連続で頷いた事から、バーンズは彼らがしっかりと闇人を視界に捉えている事実を把握する。

「どうしたバーンズ! 何か見えたのか?」「バーンズ……」

 そんな唖然とするバーンズにブラックジャックとナースエンジェルが声を掛けながら体を起こさせようと手伝う。

「……新世代型には、確かに闇人が見えている……!」

「え!?」「まさか……幻覚じゃないのか?」

 バーンズの一言にナースエンジェルもブラックジャックも驚愕するが、それに対してバーンズは語り続けた。

「本当に幻覚なのか、それとも最悪な事に闇人の人格が新世代型の意識にあるのか確かめるには……もっと確証が必要だ」

「どうやって、それを調べるんだ?」

 ブラックジャックがバーンズに訊ねると、バーンズは険しい面持ちで新世代型たちを見据えながら言った。

「オレに任せてくれ……ちょいと、コイツらと……新世代型たちと一緒にさせてくれ……」

 

 バーンズは新世代型たちに何をして、闇人の存在の有無を確かめるのか。

 ブラックジャックとナースエンジェルは険しい顔を見合わせ、新世代型たちはこれから自分達がバーンズに何をされるのか解らず激しく戸惑うばかり。

 

 果たしてバーンズの秘策とは、如何に。

 

 

 

[潜在意識の中で]

 

 それから新世代型たちはバーンズの指示で、全員が聖龍隊基地の地下区域に移動させられた。

 殺風景な空間の中央に集められた新世代型たちと共に現場にいるのは、彼らを移動させたバーンズだけだった。

「こ、こんな所に俺たちを集めさせて一体なにを始める気なんだ」

 新世代型の真鍋義久がバーンズに問い掛けると、バーンズは真面目な顔で新世代型たちに語った。

「此処なら余計な存在も、人の出入りも無いからお前達の潜在意識に潜り込めやすい。人の出入りが激しいと、上手く意識に潜り込めないからな」

 そういうとバーンズは、集団の中から自分と同じテレパスを持つ琴浦春香と斉木楠雄を引っ張り出して、前に出させると二人に言った。

「オレのテレパスだけじゃ心許ない。だからお前たち二人のテレパスを介入して新世代型二次元人全員の潜在意識を一つにする。その上でオレがお前達の意識の中を探索してみる」

「い、意識を一つにするって可能なんですか?」

 バーンズの説明に室戸大智が質問すると、バーンズは真顔で答えた。

「本来は高度なテクニックが必要だが……お前達の潜在意識は既に共有感知で繋がっているから、一つに纏め上げやすい。お前ら新世代型二次元人だからこそ可能だと言っても過言じゃない」

 そう語るとバーンズは意識を集中させて、まずは同じテレパスである琴浦春香と斉木楠雄の意識に潜入した。それから二人の意識を介入して他の新世代型二次元人の意識に潜り始めた。

 そうしてバーンズは、新世代型二次元人の思考はもちろん潜在意識にも自分の意識を統一させて一つに纏め上げた。

 皆の意識を一つに纏め上げたバーンズは、さっそく地下空間を見渡して潜在意識の何処かにいると思われる闇人に問い掛けてみる。

「おい、いるんだろ? 出てこいよ……闇人」

 まだ若かりし頃、相棒の小田原修司と共に激戦を繰り広げた闇人に姿を見せる様に問い掛けるバーンズ。

 すると皆が居る地下空間、その暗闇の中から彼は姿を現した。

「これはこれはバーンズ、さっきは失礼したねえ。改めて、お久しぶりだな」

 不敵な笑みを零しながら登場する闇人の存在を己が目で視認する新世代型たちはその脅威に身を引かせる。が、彼ら新世代型と同じ視野そして潜在意識をテレパスで共有させたバーンズにもしっかりと闇人の姿が眼に映ってた。

「……やはりお前、新世代型の中に潜んでいやがったか」

「おやおや、バーンズ君。君も人が悪いね、とっくの昔に俺さまの事を察していたのかい?」

 バーンズの問い掛けに殺伐とした顔つきで問い返してくる闇人の質問に、バーンズは険しい表情を浮かべて返答する。

「いつからだったか忘れちまったが……新世代型の意識の中にお前の気配が隠れているのが何となく感じられてな。新世代型の手前、確証の無い事は話したくなかったが……やはり新世代型の意識の中にテメェは隠れてやがったんだな」

「いやいやいや、隠れていただなんて人聞きの悪い事を……俺さまはただ目覚めただけなんだ、目がパッチリと覚めただけなんだよ」

「目覚めた、だと……?」

「そうさ、新世代型たちは生まれた時から俺と一心同体なのさっ。修司と俺が一心同体だったように、その修司の申し子と呼ばれる新世代型たちとも俺は一心同体なんだよ」

「フザケタ事を……!」

 身振り手振りで調子よく語り続ける闇人の言動に怒りを示すバーンズに、闇人は両手を振りながら語る。

「いやいや、ふざけてなんかいないさ! 俺はいつでも真面目、大真面目だよ。修司の遺伝子をコピーして生み出された新世代型二次元人、彼らは本来その修司の代用品として生み出されたのをお忘れかい? 修司の代用品って事は、要するに俺の代用品ってことでもある。もう俺さまもボロボロになった修司の肉体なんかじゃなく、真新しい新世代型の肉体が良いなぁって憧れているし」

「そいつはどういう事だ!?」

「おやっ、言ってなかったっけ? 新世代型は俺さまの新しい器、肉体になるんだよ。そう、この闇人様の復活って訳さ!」

 この闇人の発言に、新世代型たちは当然の如く反論した。

「何を勝手な事を……! 私たちの肉体で復活ですって……冗談じゃないわ!」

 新世代型の美都玲奈の反発に、闇人は不敵な笑みで話し返す。

「これは既に決められた運命なのだよ、美都玲奈。そう、お前達がウォーゲームだなんて疑似戦争をやらされる運命と同様に、変え様がない未来なんだよ。俺と言う狂気に支配され、この闇人様の新しい肉体として生き続ける……それがお前たち新世代型の運命なのさ」

 美都玲奈たち新世代型が闇人の一言一句に衝撃を受ける中、闇人は語り続ける。

「人ってのは何かを運命付けられ、または宿命を受けて生まれてくる生き物さ。それで普通の人ではない二次元人は? 普通の二次元人ではないお前ら新世代型の運命は? ……分からないだろ? だからこそ俺が必要となる。お前達を導く闇人という狂気がお前ら新世代型には必要な訳なのよ」

 闇人のこの話を聞いて、バーンズが闇人に言い返した。

「お前、修司の分身のくせに忘れちまったのか? 宿命は変えられない、けれど運命は……」

「はいはい、運命は変えられる、でしたよね。修司の口癖でしたね。でもな、血は水よりも濃い、て言うぜ。修司の血を、直接的には受け継いではいないが、その遺伝子構造を受け継いだ新世代型は紛れもなく修司の……俺の子供にあたる。我が子の将来を心配するのは親として当たり前だろ?」

「お前が親だなんて笑わせてくれる。それに親なら子供の体を好き勝手にする訳ないだろうに」

「何を言ってんだね、バーンズ君! そもそも新世代型は修司の代用品として生み出されたんだろ? だったら、その役目を忠実に負わせる事こそ彼らの為じゃないか」

「テメェ……!」

 新世代型は本来生み出された理由である修司の代用品として活用させる事こそ本髄ではないかと説く闇人に怒りを露わにするバーンズ。

 そんな皆の感情を逆なでする闇人は、更に続けて語り明かした。

「どっちにしろバーンズ、新世代型共は俺の代理品として……俺の肉体になる予定なんだ。それを邪魔しないでもらおうか。俺も俺で新世代型たちに色々と手ほどきを施してやりたい一心なんだ。新しい時代を切り開く手助けを、未来を創造する役目を果たさせてやりたいんだ」

「お前が居なくても、新世代型達には十分その力がある」

「それは俺も含んで、その力があるんだ。言っているだろ? 新世代型と俺は一心同体って。切り離す事の出来ない心の中の狂気、それが俺さまなんだ」

 新世代型には自力で未来を切り開く力があると説くバーンズに、闇人は自分と新世代型は切り離せない関係なのだと説き返す。

 そんなバーンズと闇人の対話を聴き続けて、新世代型たちも黙ってばかりはいられなかった。

「おや? 何か言いたそうだな。言っても良いぜ、俺は他人の意見に耳を貸すタイプだ」

 と、新世代型たちが何かを言い返そうとするのを察した闇人は、彼らに発言の許可を与えた。

 発言の権限を闇人に与えられて、新世代型は闇人に問い質した。

「ほ、本来、あなたは修司さんの肉体を借りてでも自由を得たかった筈でしょ? 修司さんはどうなったの?」

 琴浦春香からの質問に、闇人は不敵な笑みを浮かべたまま答えた。

「ああ、その話か。修司はもうダメだ。もう体のあちこちにガタが来ていやがるから、あまり好きじゃない。それよりも新品同然のお前ら新世代型の若々しい肉体が望ましい」

 不敵に答え返す闇人の言動に蒼然とする新世代型たちは、それでも臆する事無く質問していった。

「もうダメって……今、修司さんはどうしているんだ!」

 所在不明の小田原修司が今現在どうなっているのかを問い質す斉木楠雄。彼からの質問にも闇人は同じ表情で返答する。

「う~~ん、上手く話せないんだが……修司は色々とダメになっちまって、もう使いモンにならなくなっちまってる」

 話を逸らされたが、小田原修司の現況に何かがあったのだと理解した新世代型たちは質問を続ける。

「僕たちと同じ新世代型と思われる黒武士……彼にも僕らと同じ形で接触したんですか?」

 星原ヒカルの質問に闇人は小難しい顔で渋々ながら答えた。

「いやなあ、う~~ん……あいつは俺たちを受け入れてくれなくってな」

「受け入れてもらえないって?」

 闇人の発言に燃堂力が訊き返すと、闇人は新世代型たちに語り明かした。

「あいつは俺たちを……そう新世代型、お前らを望んじゃいない。物凄い逆恨みで俺たちを憎んでいやがるんだ」

「黒武士が僕たち新世代型に対して何かしらの憎悪を向けているのは、前々から気付いてはいるけど……望んでいないって?」

 斉木楠雄が、黒武士本人が自分たち新世代型に関して何かしらの憎悪を向けているのを知っていたと闇人に語ると、闇人は更に語り続ける。

「あの黒武士は実に危険な野郎だ。お前たち新世代型の存在を心底恨んでいるし、俺の復活を阻止しようと画策している。最終的には俺さまが新世代型の肉体を得てから本格的に活動しようとする世界と言う名の舞台も、俺が肉体を拝借する手筈の新世代型たちも抹殺しようとしているぜ」

 淡々と語り明かす闇人の一言一句を聴いて、バーンズが眼光を鋭くさせて闇人に言った。

「まだ言ってんのか……! 新世代型はお前には成らん、お前みたいな狂気に呑み込まれん……少なくとも、オレたち聖龍隊がさせねえ……!」

 するとこのバーンズの忠告を聞いて、闇人は笑い出した。

「ひゃっはっは……俺さまみたいにさせないだと? 笑わせないでくれ……」

 バーンズの忠告を笑い飛ばす闇人の言動に、バーンズは毅然とした面持ちで聴き受け、新世代型たちは唖然としていると、闇人は不敵な面構えでバーンズ達に言い切った。

「俺さまに成るんじゃない……もう成っちまっているんだよ、この俺に。闇人と言う狂気に新世代型は染まり始めているんだよ。子が親に似るのは普通だろ?」

 すでに新世代型は自分に、闇人と言う狂気に染まり始めていると説く闇人の言葉に衝撃を受ける新世代型たち。そして黙然と闇人の言葉を聴き入るバーンズ。

 すると闇人は自分が現れた地下空間の暗闇の中に向かって歩き出しながら語り始めた。

「まっ、好きな様に足掻いてくれ。新世代型二次元人が俺さまに……狂気に染まるのは時間の問題だ。黒武士を倒して、俺さまが完全に自由になるまでそいつ等を精々護ってくれよ、バーンズ総長。俺は楽しみにしている。この混沌とした、カオスな世界で自由に動き回れる、その時をな……!」

 そう語りなら闇人は漆黒の暗闇の中へ一旦姿を消した

 

 新世代型の意識の中に小田原修司の狂気、闇人の存在が確実にいると判明した事実に新世代型たちは懸念が募った。

 自分達の意識の中に、闇人と言う狂気が存在しているのかと。

 

 そして彼ら新世代型の潜在意識に潜入した事で闇人の存在の確認と対話を実現したバーンズ。

 彼は新世代型たちの中に、修司自身も恐れながらも脅威に感じた闇人が潜んでいる事実に表情を険しくさせて考えさせらるのだった。

 

 果たしてバーンズは、狂気の象徴である闇人が潜んでいる新世代型たちにどの様な処遇を下すのか?

 そして新世代型たちは、その狂気である闇人とどう向き合っていくのだろうか。

 

 

 

[狂気への懸念]

 

 人の出入りが無い地下空間で新世代型たちの潜在意識に潜入したバーンズの能力で、彼ら新世代型の潜在意識に根深くあの狂気闇人が存在している事実を知った聖龍HEADは緊急会議を行った。会議には同盟相手であり、聖龍隊の基地に駐屯している赤塚組の大将と幹部達も見受けられた。

 彼らは新世代型二次元人の潜在意識に、あの闇人の実体が潜んでいる事実。そして闇人が新世代型二次元人の肉体を狙っている事実に只ならぬ危機感を覚えていた。

 聖龍隊結成の最初の大戦で暗躍し、さらに修司でも制御が困難だった彼のもう一つの人格、闇人の出現に聖龍HEADは緊張を張り詰めていた。

 そんな聖龍HEADとは反対に、小説でしか闇人の存在を知らない赤塚組の面々は事の深刻さに気付いていなかった。

「そ、それで……結局、闇人は今どうしてるんだ?」

 難しい顔でHEADに問い掛ける大将に、先ほどテレパシー能力で闇人の存在を確かめたバーンズが険しい面持ちで返答した。

「今はまだ目覚めたばかりで大した脅威にはなっていない……だが、もし奴が本気になれば、新世代型二次元人は一斉に闇人に支配されるだろう」

「支配されたら……どうなるんです?」

 赤塚組幹部の山崎貴史が訊き返すと、バーンズは険しい面持ちのまま返事した。

「あの闇人の事だ。様々な物語の世界観が混ざり合ったこの世界を……混沌とした世界を更にカオスに染め上げるだろう」

「つ、つまり! 新世代型が私たちの脅威になるって事?」

 幹部の秋夏子が質問すると、バーンズは小さく頷いて応える。

「また、あの軌道エレベーター・ヤコブの事件の再来が訪れてしまう訳なの?」

「……そうかもしれないし、それ以上に最悪な展開が待っているのかもしれん」

 幹部のミズキからの問い掛けに、バーンズは苦悩を抱えて返事した。

「で、でもよ。まだ新世代型が俺たちの敵になった訳じゃないし、大丈夫なんじゃ……」

「大将、そんな呑気な事は言ってられないわ。あの闇人の脅威を私たちHEADは熟知しているの……!」

 思わず軽はずみな言動を取る大将の発言に、セーラープルートが言い付ける。

 しかし大将は親交の厚い聖龍HEADに訴える。

「だ、だけどな! まだ新世代型共が敵にも脅威にもなる前から、こうしてあいつ等の処遇を決めようとするのは、どうかと思うぜ。まだ闇人が完全復活した訳でもないだろう……」

 だが大将の訴えに、参謀総長のジュニアが告げた。

「問題なのは闇人が復活したかどうかじゃない。闇人が新世代型の意識に潜んでいた事実だ。これは新世代型の中にいつ爆発するか分からない爆弾が植え付けられているのと同じなんだ。ここは慎重に処遇を決めないと……」

 すると、このジュニアの言動とHEADの態度に大将が怒り出した。

「ちょっと待てよテメエら! 今までのは何だったんだ? 新世代型たちを護ってやろうっていう意気込みはどうした? いきなり闇人が意識ん中に潜んでたからって、お前らにまで見捨てられたんじゃ、あいつらは……」

「大将落ち着いて。私たちは何も新世代型を見捨てる訳じゃないわ。彼らを今後、どう見守っていくか……どうすれば新世代型が闇人にならないかを決める為にこの会議は行われているのよ」

 怒れる大将をアッコが懸命に宥める。

 しかし聖龍HEADも赤塚組も周知していた。このまま手を拱いていえば二次元人はもちろん三次元人すらも危うくなる状況に。

 だが、それでも大将は訴え続けた。

「今はまだ、奴らは……新世代型共は闇人に支配されちゃいねえ! とにかく、闇人への対抗策を……」

 しかし訴え続ける大将にジュニアが冷然とした心持で語った。

「その対抗策が無いから、新世代型への処遇を決めようとしているんだ。闇人への抑制は、正直義兄さんも常に闘い続けてた。だが、その義兄さんが行方知れずな上に闇人そのものは潜在意識の中枢にまで潜り込んでしまっている。新世代型が今後、理性を失えばたちまち闇人に体を支配される可能性も示唆される中で、安易な策は講じられないよ」

「そ、それじゃどうしろってんだ!? このまま新世代型を見限っちまえば、それで良いってお前らは思っているのか! いつ狂気的な闇人に支配されるか分からない、不安の種を摘み取ろうって魂胆か!」

「大将、そうは言ってないわ。ただ少しでも考えを巡らせないと……」

 ジュニアの冷然な回答に大将は異論をぶつけるが、そんな彼をアッコは再び宥める。

 

 と、聖龍HEADと赤塚組の面々が潜在意識の中に闇人が潜んでいる新世代型二次元人への処遇について語り合っていた、その時。

 総長バーンズの手元に設置されているテーブル上の着信音が鳴った。バーンズはボタンを押して通信に出る。

「どうした?」

「総長、国連議長から緊急の通信です」

「そうか、モニターに繋げてくれ。テレビ電話で応答する」

 バーンズの言葉に通信士が応答すると、バーンズたちが腰を据えている会議室の正面に一枚のスクリーンが天井から出てきた。

 そしてそのスクリーンに映像が映し出され、現政奉還を起こして不在の国連総長に代わって国連を代表する議長の顔が反映された。

「聖龍隊の諸君、私だ、国連議長だ。おや、赤塚組も一緒にいるのかね? まあいい、それよりも緊急の話がある」

「どうした議長。こっちはこっちで緊急の会議を開いているんだ」

 テレビ電話で互いにカメラの映像を通して会話するバーンズと議長。すると議長は深刻そうな表情でバーンズたち聖龍HEADに訊ねた。

「君たちが過去に戦った、あの最強クラスの敵役、闇人が復活しようとしているの情報が流出しているのだが、それは本当かね!?」

 この国連議長からの問い掛けにはHEADも赤塚組も驚愕した。そんな中、バーンズが議長に情報について訊き返した。

「議長、その情報は何処から?」

「分からん、だが既に世界中のマスメディアに情報が流れている。例の新世代型二次元人が、新たな闇人になると情報が流れているが、それは本当か」

 議長の返答にバーンズもその他のHEADも、赤塚組も動揺した。

(クッ、もう其処まで情報が流出しているのか……でも、誰が流出させた? いや、誰が新世代型の現状を知り得ているんだ?)

 バーンズは誰が新世代型二次元人の中に闇人が潜んでいる事実を、いやその情報を知り得た上で世間に流出させたのか思慮に耽る。

 だが議長からの問い掛けはやむ事は無かった。

「新世代型たちの潜在意識の中枢に闇人の反応があったと報道は公表して、世界中はパニック寸前なんだ! バーンズ、HEAD、本当に新世代型二次元人の潜在意識に闇人は存在しているのか? それが本当なら我々国連は黙って見過ごす訳には行かない……!」

「…………今はその事で会議を行い、返事できかねない。また折り入って回答します」

「ああ、ちょっと……」

 議長からの質問に、バーンズは話を上手く逸らしながらテレビ電話の電源を切った。

 そしてバーンズは険しい表情を浮かべると、徐に考え込んだ。

「ッ……まさか聖龍隊の誰かが? いや、この事実はまだ新世代型本人と、此処にいるオレ達しか知られてない筈だ……!」

 バーンズは情報を流出させた人物が誰なのかを考えた。そんな彼と同じ心境で、HEADも赤塚組も世間に流出した新世代型たちを心配する。

 するとその時、バーンズは目を見開いて一つの答えに辿り付いた。

「ッ、まさか……いや、あいつ以外考えられない」

「お、おいバーンズ。あいつって……新世代型と闇人の現状を世間に流した野郎が誰なのか検討付いたのか?」

 一際険しい表情で考え付くバーンズに大将が訊ねると、バーンズは深刻な面持ちで話し返した。

「オレはテレパスで新世代型の潜在意識に潜って、奴らと共に闇人と対話した。その時のアイツの言動から察するに……新世代型二次元人の心中に闇人が潜んでいる事実を知っているのはタダ一人……」

「だ、誰なんだ……」

 大将がぼそりと問い掛けると、バーンズは静かに答えた。

「闇人の現状を世間にリークしたのは………………黒武士だ!」「!!」

 バーンズが発した黒武士の名に周りの皆は愕然とした。

 皆が愕然とする中、バーンズは静かに語り始める。

「闇人が言ってたんだが、奴は共有感知を通して黒武士とも接触を試みたらしい。……まあ、黒武士に否定されたらしいが。だが、それで黒武士も闇人復活の前兆が自分たち新世代型に起きた事を知って、情報を世間に流出させたんだろう。黒武士は今現在、世界の機密情報もリ流出させているみたいだが、それらの情報と一緒に闇人の現状もリークしたんだろう」

「で、でもなんで黒武士は闇人の現状を流出させたの? 自分たち新世代型がより危険視されるっていうのに……!」

 バーンズの解釈を聞いて戸惑うコレクターユイに対して、バーンズは目付きを鋭くさせて答えた。

「闇人も言ってたが、奴は……黒武士は極端に新世代型たちを憎んでいるらしい。だから、その新世代型が世間的に危険視されようが、世界を混乱させようと彼らと闇人の関係をリークしたんだろう」

「自己嫌悪って奴か……まったく、そんなところまで修司さんに似せなくても良いのに」

 バーンズの返答に黒武士が始祖であり闇人の根本である小田原修司に似て自己嫌悪に至っているのかと、堂本海斗は愚痴を零す。

 

 どちらにしろ、状況は最悪だった。

 新世代型たちは、いつ闇人に体を支配されないかと不安に怯える日々を過ごし。

 闇人はそんな新世代型たちの若くて丈夫な体を心から望んでいる。

 そして世界は、そんな闇人に恐れを抱いて新世代型二次元人たちをますます危険視する状況にまで悪化が進展してしまう。

 

 世界は、そして聖龍隊はどんな決断を新世代型たちに下すのだろうか。

 闇人という狂気に染まり掛けている新世代型たちの明日は……!

 

 

 

[見限りの聖龍隊]

 

 新世代型二次元人の意識の中に狂気の象徴ともいえる敵役である闇人が存在している事実を知った聖龍隊と赤塚組。

 しかし彼らが新世代型への処遇を決定する会議を行っている最中、あの黒武士の暗躍により新世代型と闇人の関係が公の元に曝されてしまう。

 追い詰められる新世代型。彼らは自分たちの中に、いつ自分を支配するか分からない闇人が潜んでいる恐怖と闘いながら過ごしていた。

 その一方で黒武士の画策により、世界に流出した闇人復活の兆し対して、聖龍隊から回答を受けた国連は速やかに行動に移った。

 聖龍隊の基地の一画を借りきり、新世代型たちを監禁する為のラボが地下深くに建設されるのだった。

 この国連の横暴な行為に、赤塚組頭領大将は怒りの矛先を基地を貸し出したバーンズに向けて怒鳴り散らした。

「おい、バーンズ! なに国連の連中に地下とはいえ基地の一画を貸し出しちゃっている訳? アイツらが何を造っているか分かってんだろ? 新世代型共を閉じ込める為の檻なんだぞ、こりゃあ!!」

 物凄い啖呵を切ってバーンズに怒鳴る大将に、胸倉を掴まされて顔面ヨダレ塗れになったバーンズは冷静に大将に話し返した。

「それは誤解だ、大将。国連の役員が造るって言ってたのは、新世代型が寝泊りできる緊急用の隔離病棟だ」

「隔離病棟ってどういう事!? 隔離と言いながら三次元人の役人共が新世代型を閉じ込める様子が手に取る様に頭ん中に浮かび上がるわッ!」

 新世代型たちを隔離する為の隔離病棟を聖龍隊の基地の片隅である地下に建設しようとする国連のやり方と、それを見ても平然としていられるバーンズに怒りをぶつける大将。

 だがバーンズは、そんな大将の胸倉を掴む腕を引き離すと、冷然とした面持ちで聖龍隊基地内を行き交う国連の工事用トラックを見据えながら大将に言う。

「……此処からが踏ん張り時だ、大将。此処で、どういう外交を……話を進めれば新世代型たちが軟禁されないかの勝負なんだ」

「その勝負に勝ちゃ、新世代型共は堂々とこれからも行動できる訳か?」

「そうだ。此処からは難しい話で、しかも外部であるお前さんには話せないが、聖龍隊にはハワード財団もライフル協会も、オマケにバチカンも後ろ盾には不足していない。どうにか新世代型たちの生活や行動が制限されないよう努めるつもりだ」

「……信じていいんだろうな」

「……いや、オレは修司の様に上手く外交できる自信がない。アイツの様に世界各国の弱みを握り、多くの後ろ盾を利用しながら上手く世間様と付き合っていける自信はこれっぽちもない」

「………………………………」

「それでもオレは、オレ達はやれるだけの事はやってみるつもりだ。この、頼もしい仲間達と共にな」

 そう語り終わると、バーンズは後ろを振り返る。大将もバーンズに続いて後ろを振り向いた。

 すると其処には頼もしい聖龍HEADの仲間達が勢揃いしていた。

「さあ、これから口喧嘩っていう外交をやり遂げようじゃないか!」

 前総長の小田原修司のように毅然とした態度ではなく、荒々しい武者の様な素振りで国連と再び話し合いの場に出陣した。

 

 一方の新世代型達は、これから自分達に下される処遇について言い様の無い不安に苛まれていた。

 聖龍HEADが自分達の庇護をしてくれているのは重々承知であったが、それでも三次元人達から言い渡される決断に恐れていた。

 そして何よりも、自分たち新世代型の心の中に、あの狂気の象徴ともいえる闇人が潜んでおり、いつその闇人に己が体を支配されるか分からない不安も感じていた。

 闇人の完全復活が先か、はたまた国連及び三次元人から最悪の場合で処分を言い渡されるのか、新世代型達は皆揃って非常に疑心暗鬼に陥る。

 そして琴浦春香や瀬名アラタたち新世代型から事の経緯を聞いたプロト世代のチョコや海道ジンは、そんな新世代型達を見守るしかできない自分に悲観していた。

 

 そして黒武士の情報流出により、世界各国に新世代型二次元人と闇人の性質関係が暴露された事により、国連は議長を中心とした緊急会議を行った。その会議には新世代型を庇護する聖龍隊その代表であるHEADが出席した。

 会議は早速、闇人に肉体を乗っ取られるかもしれない可能性を秘めた新世代型二次元人に議題は集中した。

「新世代型は既に、共有感知で互いに意思疎通だけでなく情報までも交換できる性質に目覚めただけでなく、身体能力も危機的状況下では共有されて不死性の高い再生能力まで使えると報告されている。こんな高性能な新世代型二次元人が、あの闇人に支配されてもしたらどうなるんだ!」

 既に黒武士の魔手により、新世代型二次元人が意志だけでなく驚異的な再生能力をも共有している事実、そしてそんな高性能な新世代型が闇人の様な脅威に変化するのを世界は恐れていた。

 そんな世界各国の重鎮にバーンズたちHEADは訴え続けた。

「皆さん! 新世代型はオレたち聖龍隊が完全にその動向を監視しています! なので今のところ彼らにも大事はありません、ですから何も心配する事はありません……!」

 バーンズは世界の代表達に新世代型たちはまだ闇人の様な脅威に変化していない事を訴え続けた。しかし

「だがバーンズ、そして聖龍HEADの諸君。君たちの監視は緩いのではないのかね? 意図も簡単にMrフェイクを始めとする著名な異常者(ヒール)が起こした事件に彼らは巻き込まれる事が多かった。そんな危機的状況が、新世代型の共有感知を始めとする能力を高め、更には闇人の復活の兆しにまで繋がったのではないかね?」

 世界代表達は聖龍隊の監視の緩さを追求し、聖龍隊を非難した。

 現政奉還を起こした足正義輝、そして世界各地で猛威を振るう黒武士、それに続いて一般の新世代型二次元人も闇人と言う脅威に変化し、世界に牙を向ける存在に変わる事を世界は非常に恐れている故に。

 それでも聖龍隊は新世代型たちを庇護する為に弁論を揮った。だが世界の考えは変わらなかった。

「よく考えたまえ、聖龍隊。我々は小田原修司の代から君ら二次元人の横暴には数多く目を瞑って来た。しかしもう、それも限界だ。君たち聖龍隊の監視下では我々は完全に安心する事はできない。……新世代型の身柄を我ら国連に委ねたまえ」

 新世代型を監視する役回りを国連という世界に譲渡するよう提議する代表。無論、HEADはこれを拒んだ。

「オレたち聖龍隊が信用できないのか!? 新世代型は皆、平和を脅かすような存在ではない! 闇人の復活もオレ達でなんとか食い止める……!」

 総長バーンズは必死の嘆願を世界に訴えた。だが、無情にもその願いは通じなかった。

「忘れた訳ではあるまい。もはや小田原修司が不在となった聖龍隊の影響力は皆無に等しい。君らが今までアテにしてきたハワード財団もライフル協会も、そしてバチカン市国も我々国連と同等に闇人に支配されそうになっている新世代型には多大な脅威を感じている。ここは大人しく彼らの身柄を引き渡してもらおうか」

「………………………………………………………………」

「……脅威と言えばだ、聖龍隊には多くの異常者(ヒール)認定を受けた、いや受けていた二次元人が在籍していたね」

「!?」

「過去に異常者(ヒール)認定を受けながらも、その存在を特別に赦してやった二次元人……そう、確かマン・ヒールズだったね。新世代型たちが闇人と言う異常者(ヒール)に変化してしまえば、彼らマン・ヒールズの様な厄介者まで……いや、二次元人そのものが危険視されかねない」

「……………!」

「過去に大罪を犯した二次元人、いや多くの二次元人達の未来の為でもあるのだ……此処は言う事を聞いてもらおうか、聖龍隊」

 世界は過去に罪を背負ったマン・ヒールズだけでなく多くの二次元人の未来を盾に、聖龍隊に新世代型二次元人の監視権譲渡を要求してきた。

 聖龍隊の仲間、そして行く行くはアニメタウンに住んでいる多くの二次元人の未来を交換条件に要求された聖龍隊は歯を食いしばった。

 もし要求を断れば、新世代型だけでなく聖龍隊の仲間やアニメタウンの住民までも危険視されかねない。

 聖龍隊は決断を迫られた。多くの二次元人か、一部の新世代型二次元人か。

 多くの二次元人の未来か、新世代型二次元人の一時の束縛か。聖龍隊は決断せざる得なかった。

 

 そして会議から二日後。

 聖龍隊の基地区画、その地下に新世代型たちは呼び寄せられた。

「あ、あの、HEADの皆さん。二日前の会議はどうなったんですか?」

「そ、そうだよ! あれからアンタら、私たちを避ける様に出会う事なかったんで心配してたんだよッ」

 新世代型たちの動向を気にして、一緒についてきたプロト世代のチョコとギュービッドが聖龍HEADに問い掛けるが、HEADの誰もが黙然と暗い面持ちを浮かべるばかりで二人の質問に答える事はなかった。

 そして聖龍HEADが新世代型たちを連れてきたのは、基地区域の片隅その地下に建設された隔離病棟だった。

「あ、あの……」「これって、どういう事……?」

 不安な面持ちでバーンズたちHEADに顔を向ける新世代型の瀬名アラタと琴浦春香。しかしバーンズ達は何も答えない。

 すると其処に隔離病棟の個室の強度を確認していた全身白い防護服に身を包んだ人々が、手には機関銃を持って皆の目の前に集まって来た。

 新世代型とプロト世代が不安に襲われる中、機関銃を手にした防護服の男たちは新世代型二次元人に銃口を向けて言い放つ。

「聖龍HEADご苦労! 此処からは我々が監視しよう」

「え! ど、どういう事ですかバーンズさん!?」

 防護服を着衣している武装した男たちの言葉に、新世代型の室戸大智が非常に戸惑う。

 だがバーンズも聖龍HEADも何も答えないまま、武装した防護服の男たちは新世代型たちを強制的に移動させようと彼らに銃を突き付ける。

 そして現場を統括する役目の男なのか、大勢の内の一人が新世代型たちに呼集した。

「今日からお前達は此処で生活してもらう! 全ての行動は24時間、国連兵によって監視される! 逃走など問題を起こした二次元人は容赦なく発砲も許可されている事を忘れるな!」

 この予想外の展開に、新世代型たちはもちろんプロト世代の四人も愕然とした。

「へ、HEAD! これはどういう事です!?」「俺たちを見捨てるのか!?」

 新世代型たちからの切実な訴えに、アッコ達HEADの女性陣は悲痛な表情を浮かべて新世代型に告げた。

「しばらく……しばらく辛抱して。ホンの少し、国連の人達の気が済むまで監視下に置かれていれば、何もされないから……」

「お、大人しくって! そんな……!」

 しかしアッコの悲痛な訴えに、新世代型たちは納得できる筈もなかった。

 要するに自分達は国連に売られたのだ。そう新世代型たちの脳裏に自然と浮かび上がった。

「きゃあっ」

 強引に隔離病棟の個室にまで連行されそうになり、思わず悲鳴を上げて自分達が来た通路から逃げ出そうとする新世代型の女子たち。だが彼女達が逃げ出そうとした矢先、自分達が来た通路には既に国連から派遣された防護服姿の武装兵が待ち受けており、その全員が逃げ出そうとする女子達に銃を向けて逃走を阻止する。

 そして完全防護した武装兵は、新世代型たちの腕をまるで汚い物に触れるかのように乱暴に引っ張り、個室に押し込めようとする。

「や、やめてよ! そんな乱暴にしないで……」

「ウルサイっ」

「きゃっ」

「チョコちゃん……!」

 乱暴に扱う兵士にプロト世代のチョコが間に入るが、大人である兵士に簡単に押し退けられてしまう。押し退けられて転びそうになるチョコを、申し訳ない心持のアッコが受け止める。

 新世代型たちが完全防護した武装兵に捕まり、全員が個室に押し込められそうになっている時も、HEADは黙然と男は険しい面持ちで女は悲しげな面持ちで見据えていた。

 その時、半ば抵抗する新世代型達の眼に、またしてもあの闇人が現れて新世代型たちに告げた。

「へっへっへ、あ~~あ、結局こうなっちまったか。聖龍隊も結局は政治的判断しかできない御役人と変わらない。十を守る為には一を切り捨てる……そのちっぽけな一が俺たちって事だったんだよ。要するに俺たちは見捨てられた、売られた、見限られた、って事だよ。ハッハァ!」

 高笑いする闇人の下種な笑みを目にして、新世代型二次元人の心中に様々な感情が呼び起こされた。

 怒り・悲愴・絶望・失望……様々な感情が新世代型二次元人の心の中で踊り狂った。

 そして聖龍HEADがプロト世代の四人を半ば強引に新世代型達から引き離して、その場を立ち去ろうとした所に。

 闇人からの言葉に怒りで我を忘れた新世代型の真鍋義久が、自分達を押さえ付けようとする防護服姿の兵士達をかき分けてバーンズに飛び掛かった。

「バーンズ!!」

 真鍋義久の怒りがバーンズに向けられ、彼に飛び掛ろうとした瞬間、真鍋の視界に悲しげなバーンズの痛ましい表情が飛び込んできた。

 と、バーンズの悲痛な表情を捉えた瞬間、真鍋義久の後頭部に衝撃が走った。そしてその瞬間、真鍋の意識は一瞬で飛んだのか彼の視界は漆黒の暗闇に変わった。

 

 

 

[闇人]

 

 闇人

 

 二次元人が三次元人の思想概念より生まれる生命体である様に、闇人もまた同じである。自らの不遇な出生に苦しみ、自分を生み育んだ全てを憎悪する様になった小田原修司の思想概念から生まれた存在。己を生み出した全てを憎悪している為に、何事においても暴力的で好戦的な性格である。狂気的な性分であるが、現実主義者の様に理に適った思想を抱くなど明白な考えも持っている。小田原修司の容姿は元より、彼が持つ強大な闇の能力の核でもある闇人の能力は小田原修司を遥かに凌駕している。1度だけ聖龍隊と戦い、小田原修司とも決着をつけていたが、その後も小田原修司の潜在意識の中に潜んでいたと言われる。現在では聖龍隊や二次元界の間で伝説の敵役と言われるほど名が伝わっている。

 

 だが、小田原修司が生死不明の現段階で闇人は新世代型二次元人の潜在意識の中で覚醒してしまう。覚醒した闇人は、以前より戦闘で消耗してしまった修司の肉体を捨てて新世代型達の若々しい肉体を求めるようになり、隙あらば新世代型の肉体を乗っ取ろうと暗躍する。闇人の姿は新世代型二次元人にしか見えず、また言葉も新世代型にしか聞こえない。新世代型に手解きと称して狂気的な格言を伝えるようになる。だが、同時に現実的な解釈を述べる事も多々ある。容姿はかつての様に小学生時代の修司とではなく、成人した大人の姿に変わっている。褐色肌と怪しい紅く輝く瞳だけは以前のまま。このシリーズでの狂言誑しである。

 

 

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