聖龍伝説 現政奉還記 創生の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 Mrフェイクによって爆破された時計塔から奇跡的に生き延びた新世代型二次元人達。しかし、目覚めた彼らの前には自分達の始祖小田原修司と瓜二つの男が現れてた。しかも、その男の姿は新世代型にしか見えないらしく、他の者の眼には映らないという異常さが判明。男は己を「闇人」と名乗り、あの小田原修司の負の感情だと語った。闇人の存在を「聖龍伝説」で知り得ていた新世代型は、自分達の体を乗っ取るという闇人の言動に反感を抱くが、聖龍隊総長のバーンズは自身の高感度のテレパスで調べたところ、闇人は確実に新世代型の意識に存在しており、闇人の意識が目覚めれば新世代型は支配されるという残酷な事実が。この事態を解決しようとHEADと赤塚組が会議を開いているところ、なんとあの黒武士の行為によって新世代型と闇人の関係性が世界に暴露されてしまった。これにより世界は益々新世代型に脅威を覚える様になってしまい、聖龍隊に彼ら新世代型の身柄を譲渡するよう言い渡す。最初は拒んだ聖龍隊だが、二次元人全ての人権や外交的理由から聖龍隊は国連に新世代型の身柄を引き渡した。これに激情に駆られた新世代型の真鍋義久がバーンズに飛び掛かろうとするが、そのバーンズの悲痛な表情を視認した瞬間、彼の意識は飛んでしまった。



現政奉還記 創生の章 戦いの始まり

[始まる苦難]

 

「ウっ、くぅ……」

 バーンズに跳びかかろうとした新世代型の真鍋義久は後頭部を押さえながら目を覚ました。

 目覚めてみると、そこは国連が聖龍隊基地区画の片隅に在る地下に建設された隔離病棟、その個室だった。

 真鍋は自分の置かれている状況を整理しようと、個室から出ようとする。しかし個室には電子ロック式で頑丈な強化プラスチックの壁で隔離されていた。

 透明な隔離プラスチックの壁から個室の外を覗いてみると、外には無数の個室がズラリと並んでおり、その個室内には自分と同じ新世代型二次元人たちが各個室ごとに一人幽閉されていた。

「み、みんな……ウっ」

 友や同じ新世代型の身を案じた真鍋。そんな彼に再び頭痛が襲う。

 すると真鍋の脳内に、彼がバーンズを殴りかかろうとした時の他の新世代型の記憶が流れ込んできた。真鍋がバーンズに跳びかかろうとした瞬間、背後にいた兵士が真鍋を所持していた警棒で思いっきり後頭部を殴りつけて彼を気絶させたのだ。

 同胞である新世代型二次元人の記憶から、自分は国連兵に頭を殴り付けられた事を知る真鍋義久。

 そんな彼が再び外の様子を窺うと、個室の外では頭の天辺から爪先まで白い防護服に身を包んだ武装した兵士達が並列して隊長らしき兵士に言い付けられていた。

「いいか! 相手はあの足正義輝や黒武士と同じ新世代型だ! 如何なる時でも監視の目を怠るな! それと奴らは異常者(ヒール)に成りえる可能性を持つ未知のウィルスを所有している可能性もある! コイツらとの性的接触も含めて、全ての接触を硬く禁ずる! これを破ったものも隔離病棟に軟禁する! 以上っ」

 国連兵は異常者(ヒール)化してしまうウィルスを新世代型が持っている可能性を疑い、全身を白い防護服で包み込んでの監視体制を敷く事にしていた。

 と、ここで真鍋義久は自分の服装が変わっている事に気付いた。布きれ一枚の、簡単で素気ない肌の露出を抑える為だけの布同然の衣服だった。

 すると再び真鍋の記憶に、他の新世代型の記憶が流れ込んできた。自分が気絶している間、兵士達は新世代型二次元人の衣服を強引に引きはがし、その場に持ち込んだ焼却炉で即座に衣服を燃やして焼却処分にした後、今の衣服に着替えさせられたのだと。そして真鍋も気絶している間にこの簡潔な衣服に着替えさせられたのだという。

 これらの記憶を見て来て、真鍋は国連の兵士が自分達をまるで病原菌の様に扱っている事実に怒りを覚える。

 するとその時、真鍋の脳裏に聞き覚えのある声が再生された。

(真鍋……真鍋……)「そ、その声……斉木か!?」

 突然脳内に再生される同じ新世代型の斉木楠雄の声に真鍋は衝撃を受けるが、そんな突然大声を上げる真鍋を警戒して個室外で警備している兵士が真鍋の個室に群がる。

「!!」

 外の兵士達に警戒され、思わず自分の口を押さえて声を上げる事をやめる真鍋。そんな真鍋を一通り個室の外から監視していた兵士達は、個室前から去って行き、巡回を再開した。

 迂闊に騒ぐだけでも射殺されかねない状況に、今自分達が置かれている現状に改めて愕然とする真鍋。

 そんな真鍋に再び斉木楠雄の声が届いてきた。

(大丈夫か真鍋。そんなに騒ぐと、兵士が何事かと思って集まって来ちゃうよ。とにかく落ち着いて、心の中だけで僕と会話するんだ)

(そ、そっか。確かお前は、琴浦と違って自分の意思を相手に伝える事も出来るんだったな。でも、ちょっと驚いたぞ)

 真鍋は冷や汗を掻きながら斉木楠雄からのテレパシーに答え、通話した。

(君の方は大丈夫らしいね。殴られてから丸一日気絶していたんだからね)

(なにが大丈夫だ! 斉木、お前も強引に個室に押し込められて、隔離されてんだろッ)

(ああ、まあね。僕の超能力で反抗しようと思えばいつでも出来た。だが、今抵抗すれば余計に新世代型への風当たりが悪くなると思って、素直に従ったんだけど……)

(でも服を剥がされて、無理やり個室に閉じ込めるなんてやり過ぎだ! まるで俺ら、バイキンみたいな扱いじゃねえか!)

(それは他の新世代型たちも思ってる。だが、そのお蔭か大人しくしている限り、乱暴は振るわれないみたいだ)

(ほ、他って! 他のみんなは……琴浦たちは無事なのか!?)

(ああ、琴浦さん達も他の新世代型たちも今のところ全員無事だ。僕らと同じ様に個室に軟禁されているけどね)

(無事なら一安心だが……それにしても聖龍隊、バーンズの奴、俺たちをあっさり見捨てやがって……!)

(聖龍隊には聖龍隊の事情があったんだろう。仕方のない事なのかもしれない)

「だ、だからって! 俺達を三次元側に引き渡す事ないだろうよッ!」

 と、真鍋が思わず斉木とのテレパシー通話で怒鳴ってしまうと、再び巡回している兵士達が真鍋の個室前に集結して、個室内の真鍋に向けて銃口を向ける。

 大勢の兵士に銃を向けられ、愕然と固まる真鍋に斉木がテレパシーで伝えた。

(そう興奮しないで。その場で銃殺されかねないから落ち着いて。今はまず大人しくしているのが得策だ、真鍋)

「ッ……!」

 真鍋は斉木に言われるがまま、黙って場の成り行きに身を任せる事にした。

 

 一方、隔離病棟の外では新世代型たちが隔離された経緯を聞いて、赤塚組の大将たちが馳せ参じてきた。

「だから! せめてあいつ等に……新世代型たちに会わせてくれって言ってんだろッ」

 大将は国連兵に隔離されている新世代型たちと一目でも会わせてくれる様に嘆願するが、兵士は強く言い返した。

「ダメだ! 現在、新世代型二次元人の精密検査を行う手筈が整う次第だ。国連による精密検査が終わるまで、誰との接触も許されない!」

「面談も許されねえのか……クソッ」

 大将は新世代型との面談も許されない現状に苛立ちを覚える。

 そして大将は、面談が許されないと理解した途端、兵士に背を向けてその場から立ち去ってしまう。

 

 大将たちが向かったのは、聖龍HEADの所だった。

 実は聖龍HEADは自分たち聖龍隊が所有する区画や地下には前もってカメラを設置しており、そのカメラから隔離区域の様子を覗いていたのだ。

 そんなHEADの元に、大将たち赤塚組が乗り込んできた。

「バーンズ!!」

 怒鳴り声を挙げながらモニタールームに入り込んできた大将たちに、席についていたバーンズは立ち上がり、他の聖龍HEADは突然の来訪に意表を突かれるばかり。

 そして大将はHEADの目前に歩んだバーンズの胸倉を掴むと、バーンズに怒鳴り散らした。

「バーンズ! テメェら、新世代型共を見限るとはどういう了見だ!!」

「大将……落ち着いて」「お前も少し黙ってろアッコ!」

 バーンズを問い詰める大将を宥め止めようとアッコが声をかけるが、大将は昔馴染で初恋のアッコに対しても怒鳴り返してしまう。

「バーンズ、それにHEAD……新世代型はな、お前らと言う英雄に……集団に庇われ、護られていたからこそ、自分達がクローンだの修司の代用品だのという現実の中でも懸命に生き続けられたんだよ。それなのに……そのお前達に見限られたんじゃ、アイツらの生きて行く希望は…………くッ」

 必死に漢涙を堪えながらバーンズに切実な想いを訴える大将。そんな大将の切実な想いをぶつけられ、HEADの皆は居た堪れない面差しを浮かべる。

 しかしバーンズだけは、大将に胸倉を掴まれながらも険しい表情を微塵も変えず、胸倉を掴まれたまま大将に言い返す。

「それじゃお前達は国連の……人間が抱える不安や恐怖心をどうにかできるのか?」

「!?」

「国連、いや世界は今や恐怖すら感じるほど、新世代型たちに脅威を感じている。大将、お前はそんな恐怖や不安を消せるのか?」

 バーンズからの鋭い指摘に、大将は口を噤んでしまう。

 そしてバーンズは自分の胸倉から呆然とする大将の手を引き離すと、彼ら赤塚組に冷然と言った。

「それにもう新世代型たちは三次元人の精密検査が終わるまで彼らの監視下に置くという外交的決議も既に決まっている。今はオレたち聖龍隊も此処の監視カメラで政府の役人達が新世代型に無意味な乱暴を働かないようにと、見守るしかできねえんだよ」

「ッ……見ている事しかできねえってのか」

「そういう事だ。今や新世代型の脅威は増大していくばかり。そんな恐怖や不安で世界がより混乱する前に、新世代型に少しでも安全性があると証明してくれる方が奴ら自身の為になるんだよ」

「全ては三次元人の成すがまま、って事か! クソッ」

 バーンズからの冷徹な指摘に、大将は苛立ち、そのまま部屋を幹部である仲間達と共に出て行ってしまう。

「聖龍隊も地に堕ちたもんだな」

 去り際に聖龍隊の格が落ちた事を愚痴りながら立ち去る大将の言葉は、聖龍HEADの胸に突き刺さった。

 

 大将や赤塚組の想いは辛いほど理解できていた。

 新世代型にとって、世間から爪弾きされていた人々にとって聖龍隊は微かな希望そのものだった。

 しかし、その聖龍隊から見限られ、三次元人に身柄を譲渡された新世代型たちの胸中が如何なるものか。想像に値しない。

 聖龍隊はこのまま三次元人による精密検査が終わるまで新世代型たちに接触する事も許されないのだろうか。

 

 

 

[闇人からの誘い]

 

 一方その頃。

 隔離施設を設けた場所が聖龍隊の敷地内と言う事で、聖龍隊の監視下の下、三次元政府が新世代型二次元人の精密検査を行っていた。

 様々な投薬実験、そして細かな血液採取など、新世代型の現状を詳細に調べるべく三次元政府は彼らの身体を弄り続けてた。

 そんな嫌気が差すほど様々な実験や血液採取を行われる新世代型たちの心中は、暗くどんよりとした心持だった。

 すると、そんな新世代型たちの眼にあの闇人が現れて、彼らに告げる。

「へっへっへ、だから迂闊に人を信じちゃいけないだろ? 聖龍隊だって所詮は人、英雄って皮を被っただけの人なんだ。そりゃ、裏切りもすりゃ見限りもするさ」

 英雄も所詮は人、その道理を新世代型に告げて彼らの絶望感を深めようとする闇人の言動に、新世代型たちは反感を抱く。

 そんな闇人は、三次元政府の殺菌防護服を着衣して敢然防御している武装兵に好き勝手に体を弄り回される新世代型たちに不敵な笑みを浮かべ精神を逆撫でしてきた。

「琴浦春香、お前さんのテレパシーはもっと感度を高めればHEADの思考だって覗けるぜ。そして久美子にヒヨリ、お前らの人を陥れる才はこの俺、闇人様が高く評価している。もっと大勢の連中に絶望の涙を流させるんだ! それがお前らの価値なんだ……!」

 琴浦春香たち【琴浦さん】のキャラクター達に冷やかしを入れて挑発する闇人は、他にも【リトルバスターズ!】のキャラ達にも同等の言葉を掛ける。

「リトルバスターズ……これで解っただろう? 正義なんて、所詮は立場が違えば価値観の違う曖昧な存在……そんな正義に見捨てられ、誰よりも理解できた筈だ。正義は絶対ではないと」

 直枝理樹たちに不敵に告げた闇人は、相手をおちょくる様な態度でお次は瀬名アラタたち【ダンボール戦機ウォーズ】の面々に哀れみの言葉を掛けた。

「瀬名アラタ達よ、疑似戦争をさせられ、仕掛けた哀れな者たちよ。世界はお前達に疑似戦争をさせたというのに、結局はお前らを捨てる選択をした。そう、聖龍隊だけじゃない……世界もまた、お前達を見限ったんだ」

 擬似戦争をさせられていた瀬名アラタ達に聖龍隊だけでなく世界も同様に自分たちを見限ったのだと説いた闇人は、三次元政府に血液採取されてる【キルラキル】のヒロイン纏流子にも哀れみの言葉を掛ける。

「生れた時から既に人ではなかった我が娘、纏流子よ。可愛そうに、母親には見限られ、父親は早くに亡くされ……でも、もう大丈夫だ。この俺、闇人様がお前に代わってお前達に悲運な宿命を与えた世界に恐怖と絶望をプレゼントしてやるからよ!」

 自分たち新世代型に悲運な宿命を与えた三次元という世界に恐怖と絶望を与えてやる代わりに肉体を差し出すよう促す闇人。そんな闇人は、機関銃で強制的に歩かされていく【食戟のソーマ】のキャラ達にも唐突に現れては話し掛ける。

「食欲ってのは人が持つ欲望の中では最もシンプルで単純な欲望だ。その欲望を満たすお前らは、まさに人間の願望……欲望から生まれた俺さま闇人の申し子に相応しい。どうだ? その食欲を満たす為にも新しい味に挑戦してみないか? 例えば……人肉とか」

 人の食欲を満たす為に生み出された幸平創真たちに闇人は新たなる食材として人肉を薦めてみる。

 闇人の怪しい誘いはその後も続き、穏やか日常的な二次元人にまでも狂気に誘おうとする。

「可愛い可愛いお嬢ちゃんたち。そう悲観するな。もうすぐで全てが終わるから……そう、この俺、闇人がお前達の肉体を乗っ取り、多くの命を無残に殺せる時まで辛抱したまえ!」

 不敵な面構えで【ゆゆ式】の女子達に脅しを掛ける。

「ガンダムキャラの大半が悲愴な宿命を背負って戦い続けていた……そしてお前らも、儚くも力強い宿命を背負って生き続けるんだ。そう、この俺! 闇人の生まれ変わりとしてな!!」

 悲愴な運命を背負ってきたキャラの様に、お前達も悲運な宿命として己の生まれ変わりだと説き伏せる闇人。闇人が【ガンダムビルドファイターズ】のキャラ達に己の生まれ変わりだと自負させようとしている最中、闇人は【ジュエルペットハッピネス】の子供達にも残酷な言葉を掛ける。

「殺し、壊し、奪い、怒り……お前達の始祖である小田原修司は如何に残酷な奴だったか既に知っている筈だ。そんな修司の生まれ変わりである貴様達に平穏な日常がやってくる訳ないだろ? 兵器は所詮、人間兵器なんだよ、ホント」

 始祖である小田原修司は最後まで人間兵器という汚名を着ている様に、新世代型もまたその汚名を引き継いでいると残酷な事実を幼い男女に告げていく闇人。

「お前達がショーで……そしてショーの合間にも無益な争いをしていたのは、やはり始祖である修司の遺伝かもな。いいや、不毛な争いを続ける人間の末裔だからこそ喧嘩や争いばっかしていたのかもな! まあ、俺様から言わせると、あのジンって奴みたいに無駄死にだけはしないでほしな。大事な体だしな」

 彩瀬なる達【プリティーリズム・レインボーライブ】の面々に、彼女らが起こしてきた不毛な争いは戦闘狂の小田原修司の血を色濃く受け継いでいるからだと唱える闇人。

「お前達は元々、普通じゃなかった、それが現実だ。何故なら、あの修司の……いいや、俺のクローン、いやコピーなんだからな。でも普通じゃないって良い事じゃないか、それだけで人様に自慢できる! 大いに胸を張りたまえ、この俺、闇人の子供として!」

 個室の片隅で蹲る様に暗い面持ちで座り込む栗山未来たち【境界の彼方】のキャラ達にも喜々とした笑顔で冷遇する言葉を掛ける闇人は舞い上がっていた。

「田舎とは違って都会は怖いだろ? 普通と違うだけで偏見や差別を向けられちまう……だが宿命は変えられない。君たちは永遠に俺さま闇人の生まれ変わりとしてこれからも後ろ指を差され続けるんだ」

 涙を必死で堪える【のんのんびより】のキャラ達に残酷な現実を何度も繰り返して言い続ける闇人には、もはや情など無かった。

「自転車での競争か、それも楽しそうだ! でも俺さまならレースが始まる前に競争相手の足の骨の一本や二本、へし折ってやるがな。俺さまが体を自由に出来るようになったら、お前達に代わって骨が折れる最高の音をエンジョイさせてやるよ!」

 自転車レースを生き甲斐にしている【弱虫ペダル】の面々に、実に恐ろしい言葉を掛けていく闇人の表情は実に楽しそうだった。

「その綺麗な金髪……紅く染めたら、どんな色合になるんだろうな? 大丈夫、染髪なんかしないさ。ただ、返り血を浴びた時にどんな色合になるか今から楽しみにしているだけさ」

 不敵な笑みで【きんいろモザイク】のアリス・カータレットを脅かす闇人。

「レド、お前さんの体を貰ったら真っ先にテメェの機体……ええっと、そうそうチェインバーだっけ。あれを操縦してみて良いか? あ、でも俺さま修司に似て機械とかあまり強くないから間違って大量殺戮しちゃうかもしれないねぇ……!」

 搭乗機チェインバーで大量殺戮を仕出かすと言い出す闇人の言動に、レドも彼の隣の個室に閉じ込められているエイミーもいい顔をしなかった。

「人と言うのはだね、本来相手を見下したり差別する事で自分の評価を高めようとする生き物なんだ。そんな人間より進化した君たちマギウス、いや新世代型が燻っているのがどうも気に食わん……もし俺さまがお前達の体を自由に支配できるのなら、此処で働いている三次元のクソ野郎共を皆殺しにしてやれるんだがな」

 マギウスたち【革命機ヴァルヴレイヴ】の面々に体を差し出せば、スグに職員を惨殺して皆揃ってこの場から解放してやると甘い言葉を掛けていく闇人。

「斉木楠雄……お前さんは俺様をどうにか潜在意識から排除しようと躍起になっているな。だが無駄だ。俺はお前達の潜在意識、その中枢に根深く居付いている。いや、お前達が生まれた時から俺は意識の中に存在しているもう一つの人格……俺を消すって事はつまり自分自身を殺めるしか手立てはないって事よ」

 闇人は【斉木楠雄のΨ難】の主人公で、超能力で闇人の存在を抹消しようとする斉木楠雄にその行為が実に無駄で無意味かを説いた。

「異世界でも様々なジャンルの物語が流行しているらしいな。それはつまり、俺様の様な残忍で冷酷な主役も世の中が求めている可能性があるって事だ! 俺もいつまでも敵役では終わりたくない」

 人々が様々な物語を寵愛しているのなら、自分の様な残忍極まるキャラも人気が出るのではないかと、闇人は【アウトブレイク・カンパニー】のキャラ達に零す。

「正義ってのも、結局はただの暴力なんだぜ。そんな暴力で世直しできてたら、核保有国のアメリカなんかはとっくの昔に世の争いを無くせているぜ」

 人々が振り翳す正義も、見方を変えればタダの暴力であると【ガッチャマンクラウズ】の面々に告げる闇人の言葉には、重みが感じられた。

 

 それからも闇人は悉く軟禁されている新世代型達の前に現れては、狂気染みた言葉を並べて彼らを逆上させる様な発言を続けた。

 この闇人からの挑発や狂気への誘いに、新世代型達は軟禁生活の間延々と悩まされた。

 

 

[政府からの刺客]

 

 新世代型二次元人の軟禁生活が続いて早三週間。

 その間、新世代型は一歩も隔離エリアから出る事を許されず常に監視の目の中で生活していた。

 反抗すればその場で殴り付けられたりと、暴力を振るわれる事も珍しくなくなった。

 

 その新世代型たちが政府管理下の元、聖龍隊の見守りも相まってどうにか無事に過ごしていたある日。

 とある収容所で、ある囚人と政府高官の密談が行われていた。

「……と、言う訳よ。私からの依頼を引き受けてくれるのであれば、スグに此処から釈放するわ」

「フン、私じゃなく私たち、だろ? それに、俺様は出して貰わなくても自力で抜け出せる」

「でも、これは貴方にとっても悪い話じゃないでしょ? 私達は貴方を必要としている……検査の結果、新世代型の中には不死性を兼ね備えた個体も確認されているのよ。プロの戦闘員で、かつ暗殺者である貴方の力を借りたいの」

「へっ、自分たちで生み出しておいて邪魔になったら消すのか。随分と身勝手な話だな」

「……自分と重ねているの?」「?」

「自分と重ね合わせているの? 共産党に拾われ、人間兵器のコピーとして教育された自分と、新世代型を重ね合わせているの?」

「………………」

「チャオ、これは正式な政府の……内密な決定事項なの。彼らが闇人に覚醒する前に、彼らを…………新世代型の個体全てを抹殺しなさい」

「……金はもちろん出すんだよな?」

「ふふ、話に乗ってきてくれたわね。それはもちろん、報酬は貴方が指定する額を払うつもりよ」

「よし、分かった。それで? 隔離病棟で働いている職員はどうする?」

「余計な情は問題を起こす……彼らも始末して」

「フッ、俺以上に残忍だな、政府は……職員全員を始末してから新世代型を、か。まあ良いさ。俺もアイツらとは一度とはいえ顔を合わせたんだ。今度は同じ、小田原修司のコピー品として顔を合わせるとするか」

 密談は更に長引いた。

 

 それから更に三日の時間が経過した。

 ジャッジ・ザ・シティ聖龍隊基地下区域、特別隔離エリア。

 三次元政府の職員が完全防護服の状態で新世代型二次元人に様々な検査を行っているのを、監視カメラで注意深く観察する聖龍隊総長バーンズ。

 そんなバーンズに映像を確認するモニター室に入室してきた参謀総長のジュニアが声を掛ける。

「どうだい、彼らの調子は?」「相変わらずだよ」

 ジュニアからの問い掛けにバーンズは無愛想な面差しで返答しつつ、ジュニアが持ってきてくれたコーヒー入りのマグカップを受け取る。

 バーンズは受け取ったコーヒーを口に運びながら、ジュニアと会話し出す。

「……大将たちはどうした?」

「さあ、あれから僕らとは顔を合わせて来ないよ」

 新世代型を見限る形で、二次元人の人権を保守した自分たち聖龍HEADに苛立ち、呆れ返った大将たち赤塚組の行く末を気に掛けるバーンズ。

「彼らが怒るのも無理ないよ。確かに僕らは二次元人の人権とか、未来を持ち出されたら何も反論できない」

「十を守る為に一を……大勢を護る為に一部の二次元人に見限りを付ける。そんな大義名分をオレ達は続けてきた。それで二次元人の今を、今の時代を切り拓いてきた。だが、本当にこのままで良いのかと、自分に問いかける事が多くなってきた」

「それは僕も同じだよ。全てを平等にする事が出来ず、一部の二次元人を犠牲にして積み重ねてきた国政を、義兄さんの時代から僕らは続けてきた……やるせない気持ちだよ」

「……オレ達はこのままで良いのか。どこかで道を、運命を変えるべき選択を取らざるを得ないのかもしれない……」

 ジュニアとバーンズは、一部の二次元人を犠牲にし続ける未来よりも、別の未来を選択する機会を作らなければならないのかとお互いに語り合う。

 すると其処に、通信が入って来た。

「どうした?」

 無愛想にバーンズが通信に応答すると、通信機から聖龍隊副長アッコの声が聞こえてきた。

「私よ、バーンズ。ちょっとジュニア君と一緒に来てくれないかしら?」

「どうしたんだ、突然……」

「大将たちが私達と話したいって半ば強引に乗り込んできたのよ。話だけでも聞いてあげましょう……今の私たちには、それぐらいしか出来ないんだから……」

「……そうだな、話だけでも聞いてやるか」

 アッコの悲痛な心境を察して、バーンズとジュニアはモニタールームから出て彼女の方へと向かった。モニタールームには誰もいなくなった。

 

 そしてバーンズとジュニアがアッコに呼ばれて到着すると、そこにはアッコ以外にも同士である聖龍HEADが勢揃いしており、更に彼らの目の前には旧知の間柄である赤塚組の大将と幹部達も揃っていた。

「大将……」「バーンズ、それにアッコに他のHEAD! 待ちくたびれたぜ」

 大将たちを一目見て、何とも切ない表情を浮かべるバーンズに対し、大将は目付きを鋭くさせてバーンズたちHEADと向かい合った。

 HEADたち全員が揃ったのを視認した大将は、さっそく話を進めた。

「バーンズ、それにHEAD……お前達が万能な、何でもこなせる集団じゃねえって事はよぉく解ったぜ」

 皮肉交じりの台詞を吐かれて、HEADは何も言い返せなかった。そんなHEADに大将は話し続けた。

「それでだ。お前らでも出来ない事を、俺たち赤塚組がこなしてやったぜ!」

「ほう、何を仕出かしたんだ?」

 大将の自信満々の台詞にバーンズが問い返すと、大将は懐から大量の書状を取り出してバーンズたちHEADに見せ付けた。

「コイツを見な! アジア各地の武将に直談判して、新世代型共を解放してもらうように書いてもらった嘆願書だ!」

 大将が見せたのは、アジア各地の名立たる武将、ディ・マァスンやシン・ユキジ、そしてその他の多くの武将達に一筆したためてもらった嘆願書だった。

「突然、姿を消したと思っていたら……お前ら、アジア各地に赴いて嘆願書を署名させてもらっていたのか」

 バーンズたちHEADが一驚すると、大将たち赤塚組は自慢げな表情を浮かべる。

 すると二組が会談している所に、あのシバ・カァチェンもやって来てバーンズに話し掛ける。

「バーンズ殿……」

「カァチェン、お前も署名したらしいな。この嘆願書に」

「はい、台湾軍国将軍として……そして聖龍隊の傘下の一人として……私を友と認めてくれた新世代型たちを救済した心情なのです……」

 出来損ないの自分を友と認可してくれた新世代型たちを救済したい考えをバーンズ達に伝えるカァチェン。

 アジア各地の名の在る武将達からの嘆願書を見据えたバーンズ。すると彼は大将に嘆願書を渡し返しながら愛想を尽かした。

「ふぅ、こんなもんで新世代型たちが自由に出来ればオレ達も苦労しねえよ」

「な……ッ!?」

 バーンズからの返事に愕然とする大将。すると赤塚組幹部のミズキが大将に指摘する。

「だから言ったじゃない大将、署名や嘆願書ぐらいじゃ新世代型たちは解放されないって」

「そ、それじゃどうすりゃ良いんだよッ!? なあ、ミズキ!」

 途方に暮れる大将はミズキに反論する。

 そんな一見すると姉弟の様に仲のいい大将とミズキのやり取りを目前に、バーンズがHEADを代表して代弁する。

「どんなに足掻こうと、拭えない宿命ってのがあるんだよ大将。新世代型が修司のコピーに近い種って事と同じぐらい変え様のない宿命がな」

「! そ、それじゃ、新世代型共を解放してやれねえのか!」

 バーンズの説き掛けに大将が反論すると、バーンズは説明してやった。

「二次元人が故に、創造主たる三次元人には反論できないのが現状だ。創られたモノと創りしモノ、その垣根は天よりも高い」

「………………………………」

「オレたちヒーローだって、そうだ。何でもかんでも出来る万能な存在じゃない。だからこそ、こうしてタダタダ状況を見守る事しかできないのが悲痛ながらも受け入れなきゃならない現実なのよ」

 悲愴な現実を語り尽くすバーンズの台詞に、大将たち赤塚組は何も反論できなかった。

 

 創造された二次元人。彼らを創造した三次元人。

 その垣根と溝は余りにも高く深く、双方の種族が完全に解り合えるのは困難な現実が聳え立っていた。

 新世代型は個体にも寄るが、その並外れた身体能力と開花した共有感知能力により、多くの三次元人を脅かす存在に変わってしまっていた。

 

 

 

[襲撃]

 

 もう誰も新世代型の自由を取り戻す事が不可能なのかと、赤塚組は途方に暮れていた。

 まさにその時。聖龍隊の基地に激しい震動が伝達した。

「な、何!?」

 アッコが突然の震動に声を上げると、周りの皆も挙って突然の揺れに動揺する。

 すると聖龍HEADと赤塚組が会談している部屋に、聖龍隊隊士が駆け込んできた。

「申し上げます! 隔離エリアの付近で爆発が! 何者かによる襲撃と思われます!」

「何! 隔離エリアの付近……まさか!」

 バーンズは一抹の不安を脳裏に過ぎらせた。

 

 一方の隔離エリアでは。

 バーンズの不安が的中したのか、白い滅菌防護服に身を包んだ武装兵が何者かと銃器で応戦していた。

「な、なんだなんだ!?」

 突然の戦闘勃発に戸惑う個室内の新世代型たち。

 そんな彼らが戦況を窺っている中、防護服で思う様に立ち回れない兵士達が続々と銃弾を受けて絶命し倒れていく。

 菌から身を護ってくれる防護服も、凶弾からは護ってくれなかった。それどころか動きを封じられ、思うように立ち回りできない状況に追い込まれていた兵士達は、続々と床に倒れていく。

 銃弾を受けて倒れる兵士達を個室の中から窺っていた新世代型達は、恐怖で愕然としていた。

 そして銃撃の激しい銃声がやみ、隔離エリアには不気味なほどの静寂が漂った。

 新世代型たちが室外の銃撃戦がやんで、恐る恐る室外を覗き続けていたその時。

 電子ロック式の個室の戸が開錠されたのか、全開した。突然、封鎖されていた戸が開いたことに驚く新世代型たち。

 静寂が包み込む隔離エリアが気になってなのか、それとも恐怖で助けを求めようと思ったのか、全員が個室から顔を覗かせて室外に一歩足を踏み進ませる。

「こ、琴浦……!」「真鍋くん……!」

 個室は作品ごとに区画されていたのか、室外に出るや良く見知った顔馴染と対面する事が叶った。

 新世代型達は個室から出ると、改めて自分達が閉じ込められていた個室の室外での惨状を見渡して愕然とする。

 自分たちを今まで実験体や病原菌の様に扱ってきた防護服姿の兵士達がモノの見事に急所に銃弾を着弾されて絶命していた。

 この惨状を視認して、新世代型達は直ちに助けを求める為に隔離エリアを封鎖している隔離壁の許まで走り出す。

 そして最初の一人が隔離壁に辿り着いて必死に壁を叩き出す。

「だ、誰か! 返事してくれ、おいっ」

 だが鉄の強固な壁を必死に叩いても、応答はなかった。

 すると此処で美都玲奈が封鎖壁の操作パネルに気付いて、其処から壁向こうに通信しようと試みた。

「誰か応えて! 隔離エリアで戦闘が発生、職員は全員やられたわ! お願い、壁を開けて!」

 しかし通信パネルからも誰も返答してこず、それどころか画面には砂嵐がノイズが生じており、通信は不能になっていた。

 新世代型たちがこの状況に混乱していると、こんな時にあの闇人が彼らの視界に現れては助言らしい皮肉を呟く。

「聖龍隊の基地は如何なる敵の襲撃にも耐えられるよう、防御壁は分厚く造られている。こんな壁、バズーカでも壊せやしねえよ。でもな、こんな襲撃が難しい基地に忍び込んで兵士共を皆殺しにできちまう奴は、修司にも負けず劣らない戦闘のプロでなきゃ出来っこない」

 不敵な面構えで新世代型たちに言う闇人の台詞よりも、今は殺伐とした現場から抜け出したい一心の新世代型たち。

 と、皆が外部との連絡が取れずに困惑している時「きゃっ」とか弱い悲鳴が。皆が悲鳴のした方に顔を向けると、そこには琴浦春香と彼女の足を掴む死に掛けの兵士が飛び込んできた。

 兵士は琴浦春香の足を掴んだまま、息も絶え絶えで訴えた。

「うう、死にたくない……お前ら、新世代型に構ったばっかりに、こうなっちまうとは……うっ、死にたくない……っ」

 新世代型に関わったばかりに銃撃に遭ったと愚痴りながらも、死にたくないと切望を唱える兵士。

 するとその時。皆の死角から一人の人影が飛び出てきた。

「フッ、俺とした事が……一人、殺し損ねたか」

 そう言って飛び出してきた人影は、琴浦春香と絶命寸前の兵士の真上から登場し、姿を現すと同時に左手に握っていた銃で琴浦春香の足を掴む兵士のこめかみに銃弾を直射。兵士の息の根を完全に止めた。

 そしてその男は床に着地すると、銃をホルダーに納めて背中に装備している長い棍棒を引き抜いて新世代型たちと対峙する。

「お、お前は……!!」

 その男の殺気立つ瞳と姿を見て、新世代型達に衝撃が走った。

 

 一方、防御壁の外側では。

 突然の爆破に誘導され、聖龍隊の隊士たちが地下内部で奔走していた中、HEADはバーンズの勘で新世代型達の様子を逸早く確認しようと監視カメラのモニター室に集まっていた。

 しかしモニター室の画面には砂嵐が流れており、何者かがカメラを破壊してしまってる事をバーンズ達は悟った。

「チッ、ご丁寧に外部との連絡通信機器も破壊されているのか、隔離エリアの人間と連絡がつかねえ……!」

 バーンズは連絡手段である機器も破壊されているのを悟り、皆と共に急いで新世代型たちが隔離されているエリアまで走った。

 新世代型たちとを隔離する為の防御壁の前には、既に大勢の三次元政府の職員や聖龍隊隊士、そして新世代型たちを心から心配する赤塚組とプロト世代の四人が群がっていた。

「おいっ、此処を開けろ! 混乱に乗じて新世代型が脱走するかもしれん!」

「人ん家の基地を借りておいて偉そうに……! この防御壁は完全密閉されて、外側からじゃ簡単には開かないんだよッ!」

 三次元政府の職員と聖龍隊隊士が言い合っている横では、大将が幹部のミズキに指示を出していた。

「ミズキ! お前のレーザー光線で扉を打ち抜けねえか!?」

「大将、下手をしたら内側の新世代型や生き残っている職員に被害が出るわ! 此処は慎重に……」

 大将とミズキが言い合っている横では、三次元政府に捕えられている新世代型たちを心配して駆け付けたチョコやギュービッドたちプロト世代の二次元人が騒ぎ出す。

「琴浦さーーん、真鍋さーーん、返事してください!」

「無茶言うなよ、チョコ。この鉄の壁は分厚いって隊士からの説明で知っているだろ? アタイ達の声なんか届きやしないよ」

 必死に親友の琴浦春香たちの名を呼ぶチョコに、師匠であるギュービッドが口を出す。

 そんな混乱し、殺伐とする状況をただただ見据えるしかできないシバ・カァチェンはおどおどするばかり。

 そんな中、聖龍HEADが現場に駆け付けた。

「お前ら退け!」

 メタルバードに変身したバーンズが壁の前で群がっている人々を退かせると、己の右腕を変形させる。

「敵は何らかの手段で此方からのアクセスを受け付けないようにしやがった。後は地道だが、この防御壁を焼き切るしか手立てはねェ!」

 そう怒号を吐くとメタルバードは変形させた右腕で、分厚い鉄の扉である防御壁を焼き切り始めた。

 

 

 

[刺客の正体]

 

 その頃、防御壁の内側では。

 新世代型達の前に現れた男は、容赦のない殺気を新世代型たちに向けて長い棍棒を構えていた。

 その男の容姿を見た瞬間、新世代型達は共有感知でその男が何者なのかを瞬時に理解した。

「お、お前は………………チャオ!?」

 すると名を説かれた男はすかさず反論した。

「コードネームのグービンシーと呼べ! ……俺と同じ小田原修司の副産物ども」

 新世代型たちを監視・調査していた三次元人の職員を皆殺しにし、新世代型にも殺気を向ける男の正体は中国出身の傭兵にして殺し屋、インヤン・チャオ、別名鬼の兵士と言う意味のグービンシーだった。

 グービンシー、本名を陰陽薇(インヤン・チャオ)はかつての中国共産党に拾われ、一流の格闘術と暗殺術を仕込まれる。更に恰幅や年恰好が酷似しているという理由から、整形で顔を小田原修司と瓜二つにされた暗殺者。現在は傭兵として暗躍する日々を送っている。

 そのグービンシーが目の前に立ちはだかる現状に新世代型たちが戸惑う中、グービンシーは背中から引き抜いた装備している棍棒で不意に攻撃してきた。

「うわっ」

 グービンシーからの攻撃に咄嗟に避ける新世代型。そんな新世代型たちにグービンシーは言う。

「なぜ逃げる!? お前達の中に滾る戦闘本能を見せ付けてみろッ!」

 グービンシーは新世代型との真っ向勝負を望んているらしいが、当の新世代型達にはいい迷惑だった。

「な、なぜ我々を狙う!?」

 新世代型の鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が棍棒を振付けて自分達に殴り掛かろうとするグービンシーに問い掛ける。するとグービンシーは新世代型と距離を置きながら臨戦態勢で答えた。

「決まっているだろ。お前らの命を奪え……と、仕事を貰ったからだ!」

 グービンシーの返答に新世代型たちは衝撃を受ける。

 そんな状況下でも、グービンシーは棍棒で新世代型たちを殴り殺そうと振り回して攻撃してくる。

 すると、このグービンシーの襲撃の最中にまたしても闇人が皆の視界に現れて不敵な面構えで声を掛けてくる。

「おいっ、逃げてばかりじゃ殺られるぞ。殺される前に殺すんだ!」

 と、闇人は新世代型たちにグービンシーを殺し返す様に指図する。

 そんな闇人の挑発を横目に、新世代型たちは出来るだけグービンシーから離れようと距離を置く。

 するとグービンシーは遠くに避難する者たちを視認すると、ホルダーに納めてる銃器を素早く手に取り、発砲。自分と距離を置く新世代型たちに凶弾をお見舞いする。

 グービンシーの銃から放たれた凶弾は時縞ハルトやエルエルフたちマギウスの面々に着弾。しかし頭部などの急所に着弾しても、マギウス特有の不死性と再生能力で銃痕はたちまち消滅してしまう。

「チッ、不死者の個体か」

 銃で命を仕留められなかったグービンシーは目を鋭くさせて新世代型たちに語り続ける。

「やはり新世代型は侮れんな。ただ小田原修司の代用品なだけでなく、不死者も存在しているんだからな」

「だ、だから! 私達は普通だって……不死者も、ごく一部だし……」

 と、グービンシーの話にマギウスを軽蔑している北川イオリが反論しようとするが、グービンシーが強く否定した。

「黙れ! お前たち新世代型は、不死者だろうが何だろうが……俺と同じ小田原修司の複製品なんだよ! もはや普通でもなんでもない……!」

 新世代型は自分と同じ小田原修司という人間兵器の複製品だと、新世代型に説くグービンシーは攻撃の手を緩めず、棍棒を振り下ろす。

 そんな傍若無人なグービンシーの猛攻を阻止しようと、皐月はグービンシーに射殺された兵士が所持していた武器を手にしようとする。が、そんな彼女に闇人が言葉をかける。

「そうだ、銃を取れ皐月。そして銃弾の雨を、あの出来損ないのコピー商品に撃ち込むんだ。自分たち一級の小田原修司の複製品は、たかが共産党が作った人間兵器のコピー商品に劣らない事を証明してやれ」

 しかし、この闇人の言葉を聞いて皐月は銃器ではなく警棒を拾い上げ、グービンシーに挑みかかる。

「いい加減にしろッ、このコピー人間!」

 だが皐月の打撃を両腕で受け止めて制止したグービンシーは、皐月と向き合った状態で硬直して彼女に

「コピー人間はお互い様だろ……! 俺達は共産党と世界という違いはあるものの、権力者に生み出されたコピー商品に違いないだろ……ッ!」

 次の瞬間、グービンシーは皐月を巴投げで投げ飛ばして、自らは即行で起き上がると投げ飛ばして床に叩き付けられた皐月に棍棒をお見舞いしようとする。

 だが、皐月はグービンシーからの打撃を横に身を反らして回避し、皐月が回避した次の瞬間に妹の流子がグービンシーに殴り掛かる。しかし戦闘経験豊富なグービンシーは真後ろからの流子の殺気に気付いて、悠々と身を横に反らして回避する。そして次の瞬間には殴り掛かってきた流子の腹に強烈な膝打ちを打ち込んで悶絶させる。

 流子を退かせたグービンシーは、新世代型には銃器が効かないと判断したのか、銃をホルダーに納めて、棍棒を床に捨てると背中に背負っている日本刀を抜刀して言い放った。

「いくら不死者といえど……首と胴体を切り離せば、只では済まない……!」

 殺気立つグービンシーに追い詰められ、もはや闇人の言う通り戦わなければ生き残れない現状の中で、新世代型は覚悟を決めた。

「こ、こうなったら、殺られる前に……!」

 新世代型の真鍋義久が至る所で銃殺され、倒れている兵士が使用していた銃器に目を向け、戦意を高めた、まさにその時。

(やめるんだ、真鍋! それに他のみんなも……闇人の思い通りに動いちゃいけない!)

(そ、その声は斉木!?)

(今ここで殺し合いを展開すれば、それこそ殺意や狂気の塊である闇人の思惑通りになってしまう……! 此処はみんなで協力して、グービンシーを殺さずに倒すんだ!)

(で、でもどうやって!? 相手はプロの戦闘マシーンなんだぞ!?)

 斉木のテレパシーでの意思疎通に対し、真鍋たち他の新世代型達は戸惑ってしまう。

「なにを愚図愚図している? 俺と同じ小田原修司の複製品と聞いているから、少しは骨のある戦いを期待していたんだが……」

 そんなテレパシーで秘密の会話をしている新世代型達にグービンシーは同じ複製品として素晴らしい戦いを期待していると告発する。

 だが新世代型たちも、最初は殺し合おうとまで決めていた決意を変えて、殺さずにグービンシーを退かせようと躍起になる。

 そんな新世代型たちの心境をくみ取ってか、またしても闇人が現れては新世代型達に声援をかける。

「フレーー、フレーー、新世代! ひゃはははっ、そうだ、戦う事こそお前たち新世代型の真価だ! 存分に戦えッ」

 闇人からの挑発を受けながらも、新世代型達は自分達の身を護ろうとグービンシーと本格的に対戦を始めた。

 

 だが殺意満々のグービンシーに対して新世代型達は殺さない様に応戦しようと身構える。

 一触即発の雰囲気の中、グービンシーは新世代型の首を斬り離そうと刀を翳して特攻してきた。

 新世代型二次元人は、皮肉にも自分達と同じ理由で顔を整形されたグービンシーを倒す事が出来るのか?

 

 

 

[素顔と言う真実]

 

 日本刀という鋭利な武器を手に殺しにかかるグービンシー。

 そんな殺気立つ相手に殺意を押し殺して挑もうとする新世代型たち。

 グービンシーは新世代型達を斬り殺そうと刀を自在に振り回す。それを鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が最初に拾い取った警棒で防ごうとするが、グービンシーはその警棒を叩き斬って使用不能にしてしまう。

 武器を失い唖然とする皐月に、グービンシーは言った。

「ほら、武器ならそこら辺に落ちているだろ。拾って俺さまと銃撃戦でも展開しないと生き残れないぞ!」

 しかし銃という確実に相手の命を奪ってしまうであろう武器を拾い上げるのを躊躇う皐月は、銃を拾うのをやめて代わりに職員達が使っていたであろう壊れかけたパイプ椅子を手に取り、少しばかしパイプ椅子を解体して独特の形状のパイプを両手に構えた。それはまるでトン・フーの様な武器だった。

「おお、それで俺さまと戦おうというのか? ハッ、すぐにその武器の形状を把握するとは……やはりお前達は俺と同じ、戦う宿命に身を預ける命らしい」

「それは違う! 我々は殺し合う為に戦うのではない……生きる為に戦うのだ!」

 グービンシーの台詞に対して強く反論する皐月。二人はそのまま戦闘に入った。

 皐月が扱う鉄パイプの武器は、グービンシーが振り翳す刀の刃を受け止め、斬撃を防ぎ切る。

 そんな皐月と対峙するグービンシーに少しでも痛手をと、他の新世代型達は側に落ちている椅子や資材を投げ付けて応戦する。

「くっ、しつこい……!」

 周囲から物を投げ付けられるグービンシーはその執拗さに嫌気が差していた。

 そんなグービンシーの意識が周囲に向けられた瞬間、皐月はその隙を突いてグービンシーに強烈な打撃を与える事に成功。打撃を受けたグービンシーは左手で銃を抜いて発砲し、皐月と応戦。しかし皐月は難なく銃弾を回避してグービンシーに反撃する。

 するとグービンシーと果敢に応戦する皐月に加勢しようと、妹の流子が緊急用に配置されている赤い斧を、ガラスケースを叩き割って取り出して戦いに加勢する。

「姉さん、アタイも加勢するよ!」「し、しかし流子。お前、その斧でまさか……」

 斧を手にして加勢しにくる流子が殺意を露わにしているのではと心配する皐月に、流子は毅然とした笑みで姉に言った。

「へっ、大丈夫だよ。殺しなんかしねえから……ただ、この重い斧の背で奴を殴りさえすればタダじゃ済まないだろう?」

 流子が斧でグービンシーを切り殺そうとしているのではなく、鈍器として使用する事を聞いて安心する皐月。

 だが、そんな姿勢の流子たちにグービンシーは言った。

「ハッ、本気で俺を殺そうとしないのか? 小田原修司の複製品共……殺す気でないと俺は倒せないと何度も言わせるな! そもそも俺たちは命を奪う為に生み出された副産物にしか過ぎないのだからな!!」

 自分達は命を奪う小田原修司の複製品、副産物だと説くグービンシーは皐月と流子に向かって一直線に斬りかかった。

 すると流子と皐月は、共にグービンシーの刃を鉄パイプと斧の両方で受け止めて、グービンシーの強力な剣を防ぎ止めた。

 そしてグービンシーを押し退けると、姉妹はグービンシーに連続で拳を殴り込めて押していく。

 姉妹からの連続打撃を受けて朦朧とするグービンシーに、最後に流子が鉄槌の拳を思いっきり殴り付ける。

 流子が殴り付けた瞬間、グービンシーの仮面が外れて彼の素顔が晒された。共産党によって人間兵器小田原修司の顔に整形されたグービンシーの素顔を。

 素顔を曝け出されたグービンシーは自分の素顔を隠す為の仮面が外された途端、何かが外れた様に熱く論じた。

「どうだ、この顔を! これが俺の真実だ! 共産党に拾われ、似ている年が近いという理由だけで俺は自分の顔を奪われて小田原修司にされた! ……だが、俺は不満に思ってはいない! 確かに共産党の言いなりになって、数多くの命を奪うだけの日々だったが、今では俺は自由だ! 自由な殺し屋グービンシーだ! 自由を得た俺は今度は自分自身の為に戦う、自分の為に殺し続ける日々を過ごす! 自由を得た俺と、自由でない貴様ら! 俺とお前達の違いなんて、それぐらいだ!!」

 小田原修司の顔に区別化する為に自ら傷付けた真一文字の深い傷を晒しながら熱弁するグービンシーは更に語り続ける。

「俺たちは所詮、小田原修司と言う人間兵器の複製品にしか過ぎないんだよ! その宿命から逃れたければ、己の中の闘争本能に従い、戦い続ける道を選択する事だ! 俺達は殺戮と破壊を繰り返す小田原修司……その複製兵器だって宿命を忘れるんじゃねえ!!」

 自分を含め、新世代型は所詮小田原修司の複製品であり戦い続ける宿命を負った存在だと説くグービンシーの言葉に新世代型達は蒼然とする。

 そんな小田原修司の顔で殺気を更に奮い立たせるグービンシーは刀を自在に振り回して新世代型達に斬りかかって行く。

 そんな余計に殺気立つグービンシーを見た新世代型の視界に、またしても闇人が現れて新世代型達に助言を吐き出す。

「中国の連中が作った安物のコピー商品なんかに負けるんじゃねえ! コピーとしてならお前達の方が出来が良いって事を証明してやれッ、殺すんだ!」

 しかし闇人の言うがままではなく、自力でグービンシーを黙らせようと奮闘する新世代型たち。

 と、ここでグービンシーが皐月に向かって剣を突いて突進してきた。このままでは皐月は日本刀で突かれてしまう。そう思われた、次の瞬間。

 肉に深く刃物が突き刺さった鈍い音が響いた瞬間、皆が目を向けてみると何とグービンシーに突き殺されそうになった皐月の前にマギウスのエルエルフが飛び込んで、グービンシーの刀での一突きを己が体で受け止めたの。

 グービンシーの一刀が貫通するまで身体に突き刺さったエルエルフは痛みで表情を歪ませ、そのエルエルフの行動に彼に護られた皐月も、皐月を殺めようとしたグービンシーも愕然としてしまう。

「! 己が身体で俺の刃を受け止めるとは……!」

 エルエルフの行動に驚愕し、戸惑うグービンシー。そんな彼が刀を引き抜こうと力を入れるが、自分の身体を貫通するその刀をエルエルフは掴んで離さない。

「このッ、放しやがれ……!」

 グービンシーが強引にエルエルフから得物である刀を引き抜こうとするが、エルエルフは放そうとはしない。

 そんなグービンシーに真横から纏流子と栗山未来が襲いかかって来た。

(あのメガネの女は……確か己の血を結晶化させて刃に変形する……)

 グービンシーは前もって手に入れていた情報で、未来の戦術を知っていたのだが、流子と共に跳びかかって来た未来が己の血で形成した武器を見てグービンシーは目を丸くした。

「は、ハンマー!?」

 なんと栗山未来が結晶化する血を形成させた武器が刃ではなくハンマーである事にグービンシーは驚いた。

 そして流子は拳で、未来はハンマー状の自分の血でグービンシーを殴り付けた。

「グっ!」

 顔面を拳とハンマーで殴り付けられ、そのまま弾き飛ばされるグービンシー。

 彼はエルエルフを突き刺したままの日本刀から手を離し、そのまま壁へと吹き飛ばされてしまう。

 壁に激突して朦朧とするグービンシーの前に、新世代型たちが集結する。そんな集まる新世代型達にグービンシーが苦痛の表情を浮かべて彼らに問う。

「な、何故お前達は自分の運命を否定する? 俺の様に運命を受け入れれば、楽だというのに……!」

 このグービンシーの問い掛けに、皆を代表して皐月が反論した。

「自分の運命は、自分で決める! そして受け入れる運命も……自分達で決めていく!」

 そういうと皐月はグービンシーが放した日本刀を掴んで、グービンシーに向けて日本刀を投げ付けた。

 投げ付けられた日本刀にグービンシーの意識が飛び、彼が自分の顔の横を一直線に飛ばされる日本刀に目を向けた、その瞬間。投げ付けられた日本刀が後ろの壁に突き刺さった次の瞬間、刀に目が向いていたグービンシーに皐月が飛び膝蹴りを打ち込んで完全に意識を飛ばした。

 意識が飛び、気絶したグービンシーの小田原修司とそっくりな顔を見て、新世代型達は再認識した。

 所詮はグービンシーも自分たち新世代型と同じ、有力者によって運命を捻じ曲げられた存在。彼は幼少の頃、親に捨てられ、浮浪児として生き延びていた所を共産党の諜報員に拾われ、戦いと殺しの技術を叩き込まれた上、当時から名を馳せていた小田原修司の代用品として顔を彼そっくりに整形されてしまう。それからもグービンシー、いやチャオは戦いと殺戮の日々に身を投じてきた。共産党が崩壊し、さらに小田原修司が失脚した今に至るまで、ずっと。

 そんな悲惨な過去を持ちながらも、己の闘争心に忠実なグービンシーの過去と現実を見据えて、新世代型二次元人達は考えさせられた。グービンシーと同じ人間兵器の模造品として。

 

 と、その時。

 隔離エリアを隔てる防御壁を焼き切って、メタルバードたち聖龍HEADと聖龍隊隊士、そして赤塚組の面々が強引に力尽くで防御壁をこじ開けた。

「お、お前ら! 大丈夫か?」「大将さん!」

 自分達を気にして真っ先に飛び込んできてくれた赤塚組の大将を見て、喜々とする琴浦春香たち新世代型。

 と、その時だった。

 そんな真っ先に進入した大将や聖龍隊を押し退けて、彼らの後方に控えていた三次元政府の武装兵達が隔離エリアになだれ込んできた。

「ふぅ、やれやれ……やっと救援が来てくれたか」

 と、新世代型の幸平創真が呟いた次の瞬間、三次元政府の武装兵がそんな創真を有無も言わせない勢いで殴り付けて気絶させた。

「うッ!」「そ、創真!」

 突然殴られる創真を見て、薙切えりな達が唖然としていると武装兵たちは素早く新世代型達を取り囲んで殴り掛かった。

「新世代型が脱走しているぞ!」

「直ちに捕えろ! 抵抗するなら射殺しても構わない!」

「取り押さえろッ!」

 武装兵たちは、自分達の仲間である職員を射殺し襲撃してきたグービンシーには全く見向きもせず、真っ先に新世代型達を取り囲んで彼らを力尽くで押さえ込む為に容赦のない暴力を振るい続けた。

 新世代型たちが理不尽な暴力で取り押さえられている間、グービンシーは何もされず気絶しているままだった。

 

 

 

[捕縛された傭兵]

 

「こ、此処までする必要あるのか……!」

 顔中をボコボコになるまで殴り続けられた真鍋義久を始めとする新世代型達は、再び隔離病棟の個室へと押し込められた。

 全員が三次元政府の兵士によって痣だらけになるまで殴られて力尽くで黙らせられた上に再び個室に閉じ込められた。この現状に新世代型たちの多くが不満を抱く。

 

 新世代型二次元人達が三次元政府の兵士に理不尽な暴力を振るわれ、再び軟禁されてた頃、彼ら新世代型に痛め付けられて気を失っていたグービンシーは聖龍隊に連行されて、三次元政府の職員その上官とバーンズによって尋問を受けていた。

「誰に頼まれたチャオ! 何処の誰に職員や新世代型を始末する様に依頼された!?」

「答えろ、陰陽薇(インヤン・チャオ)! 我々三次元人を殺してでも新世代型を処分してほしいと依頼してきたのは何処のどいつだ!」

 バーンズと違い、自分達と同じ三次元人までも殺してでも新世代型を抹殺してほしいと依頼してきた相手の名を求める三次元政府高官。

 するとグービンシーは不敵に嘲笑いながら返事した。

「……ふっ、本当に何も知らないようだな。やはり表方の連中は生温いと見える……」

「それはどういう事だ!?」

 高官がグービンシーに問い詰めると、グービンシーは嘲笑を浮かべて話し出した。

「あんたよりもっと上の人間は、下の人間など使い捨ての様にしか感じていない。だから新世代型と関わった連中も纏めて始末するよう依頼してきたのさ」

「な、何だと……!」

 怒りで身震いする高官に、グービンシーは更に告げた。

「どうせ俺が名前を言っても、貴様らには……英雄共には捕まえられない裏方のお偉いさん達は、手っ取り早く新世代型を始末するよう願い出ているのよ。そんな事も知らない様じゃ、あんたもまだまだアマちゃんだな」

「ッ……貴様! 新世代型ならまだしも、同じ三次元人を殺す事に抵抗は無いのか!」

「フッ、無いね。俺にとって獲物が三次元人だろうと二次元人だろうと、依頼内容に含まれていれば、それを忠実に実行して金を受け取るだけだ」

 三次元政府高官に自分は依頼内容に則り、殺しにかかったと伝えるグービンシーの言動に怒りを露わにする高官。

「それじゃ私たちは……何の為に努力し続けてきたんだ……!」

 自分たち新世代型の調査を行っていた職員が上層部からの依頼で殺人依頼の中に含まれていた現状に幻滅する高官。

 そんな高官にバーンズが皮肉を込めて言った。

「所詮あんたらも、消耗品って事だよ」

 このバーンズの発言に、高官は衝撃を受けるしかなかった。

 

 尋問を終えたグービンシーは三次元政府と聖龍隊の監視下の元、収容先が見つかるまで監禁される事となった。

 だが事も有ろうに三次元政府は、新世代型達と共にグービンシーを監視するため彼らと同じ隔離病棟の個室に監禁した。

 非情な傭兵グービンシーも自分達と同等に扱われる処遇に反感を覚える新世代型たち。

 そんな新世代型たちの反感を知ってか知らずか、グービンシーは監禁されている隔離個室の中で両腕を拘束器具で後ろ手に縛られたままスクワットでの上下運動で己の身体を鍛えていた。

 自分達と同じで閉じ込められているにも関わらず、己の鍛錬を怠らないグービンシーに新世代型は問うた。

「閉じ込められているっていうのに、よく筋トレする気が起きるな」

 これに対し、グービンシーはスクワットをしながら返答する。

「まあな、いつ如何なる任務が……依頼が課せられるか分からないからな。己の鍛錬は欠かせない」

「へっ、良く言うぜ……あんたみたいな殺人鬼が簡単に釈放される訳がないだろ」

 グービンシーの返答を聞いて、新世代型が反論するがグービンシーはスクワットをやめて個室の中から外部の彼らに唱えた。

「そうはならない。俺が生きている限り、世の中の誰かが俺の力を必要としているんだ。誰かを殺めてほしい、その一心で権力を使って俺を釈放させるだろう。そう、お前達と違って」

「そいつは有難い。俺達もアンタとは違うんだ、そもそも殺し屋と一緒なんて気分が悪い」

「……いいや、俺たちは同じだ。同じ小田原修司とから派生した戦う本能を心に宿した力だ。力は戦う為に使ってこそ真価を発揮する。お前達はそれを受け入れたくないだけだ……そう、小田原修司や俺と違い、平和で穏やかな日常を生きられない血筋から目を背けているだけだ。現実から目を背けているだけだ!」

 グービンシーから現実から目を背けているだけと説かれる新世代型達は毅然とした態度で聞き流した。

 だが、その時またしても闇人が新世代型の視界に現れては個室に閉じ込められているグービンシーを見詰めながら新世代型たちに説き掛けてきた。

「コイツ、安物の紛い物の癖に随分と偉そうな事を言いやがるな。気にする事はない、こんな政権に作り出された模造品なんかよりも、確実に修司の血を受け継いだお前らの方がよっぽど俺さまの申し子に相応しい! 修司の代用品として、そしてコピーとして申し子として自信を持て!」

 しかし闇人の戯言を新世代型たちは聞き流した。が、やはり気になってしまうらしい。

 

 そしてグービンシーを個室に閉じ込めて丸一日が経過。

 今回のグービンシー襲撃が三次元政府の指図だという明確な証拠は出なかったものの、グービンシーの襲撃で被害を被った三次元政府の職員、さらに世界を回った赤塚組の努めによってアジア各地の武将からの嘆願を世界が聞き入れた事で新世代型二次元人はやっと三次元政府から身柄を聖龍隊に引き戻される事と相成った。

「うわーーん、琴浦さん、良かったぁーー」

「ちょ、チョコちゃん……」

 無事に釈放された事で嬉しさのあまり泣きじゃくるプロト世代のチョコに泣き付かれ、新世代型の琴浦春香は困惑してしまう。

 その一方で赤塚組が小さなテレビモニターを持って新世代型たちに視聴させると、テレビからは通信を介して新世代型解放の嘆願書を記したアジアの名立たる武将が声援を送ってきてくれた。

「おい、新世代型! ジャッジ・ザ・シティでは豪い目に遭ったんだってな」

「で、デイ・マァスン!」

「大丈夫でござるか、新世代型の方々! このユキジ、遅れてしまい真に申し訳ありませんでしたが、どうにか国の役人達を我が熱血で烈火の如く訴えてみた次第であります……此度は皆様方、大変な時を過ごしておられたのですな」

「ゆ、ユキジさん!」

「大丈夫だったか、新世代型の乙女たち! 三次元政府の男共に何か卑猥な事はされてはいないか!? もし何かされた様なら、このイン・ナオコ直々に成敗してやるから安心しろッ」

「ナオコさん!」

 名立たるアジアの名武将達から激励の言葉を賜って、新世代型達は非常に感激するのだった。

 

 一方で、そんな新世代型達と共に丸一日だけとはいえ同じ隔離病棟の個室に監禁されていたグービンシーは、正式な収容所に移送されるため今度は全身を拘束する囚人専用の担架に乗せられていた。

「チャオ、今度はいつまで刑務所で過ごすんだろうな」

 移送を見届けるバーンズに問われ、グービンシーは不敵な面差しでその場の皆に聞こえる様に言った。

「ふん、そんなの気にしないさ……自力で抜け出してやる」

 グービンシーは脱獄の術まで習得していた。

 そんなグービンシーは囚人専用の担架に縛り付けられたまま収容所へと移送されるのだった。

 

 

 

[それぞれのケジメ]

 

 グービンシーが護送されると同時に、聖龍隊の基地を借りて新世代型二次元人を隔離調査の名目で監視していた三次元政府の職員達も去って行った。

 職員達が立ち去った後、プロト世代のチョコやギュービッドは新世代型たちとの再会を心から祝福した。

「うう……琴浦さん達、辛かったでしょう……」

「チョコちゃん、もう大丈夫だよ。だからもう泣かないで」

 未だに嬉し泣きを零すチョコを、新世代型の琴浦春香が宥める。

「それにしても三次元政府の連中、酷いったらありゃしない! か弱い女の子の髪まで刈り上げるなんて……」

「確かに辛いですけど、こうやって皆が揃って解放されたのに比べたら大丈夫ですよ。ギュービッドさん」

 新世代型たちの頭を見て文句を言うギュービッドに、自分達は大丈夫だと強がる新世代型の御舟百合子。

 実は新世代型たちの頭髪は、三次元政府に調査および衛生面の都合と言う理由で髪の毛をバッサリ刈り上げられてしまっていたのだ。

 男性は坊主頭、女子は短く刈り上げられて、見るも無残な姿にさせられた新世代型達を見て、胸が締め付けられる思いに駆られるチョコたちプロト世代の四人。

 

 と、プロト世代が髪を刈り上げられた新世代型達を痛ましく思っていたその時、その場に赤塚組の面々が馳せ参じた。

「お前ら、無事で何よりだぜ!」

「無事じゃないだろ、どう見ても! 琴浦たちの髪を見れば解るだろッ」

 新世代型たちが釈放されて喜々とする大将に、ギュービッドは女性陣の髪の毛を見ても同じ事が言えるのかと説き返す。

 そんな髪の毛を刈り上げられ、痛々しい姿に変貌してしまった新世代型達を改めて見て、彼らの隔離生活が如何に苦しいものだったか察する赤塚組。

 そんな赤塚組は、痛々しい姿の新世代型達を励まそうと一人の男を紹介した。

「そ、そんなお前達に朗報だ! ジャジャーーン、懐かしき90年代の漫画で登場した妖怪、髪切りだ!」

 大将の御紹介でその場に現れたのは、ウェーブのかかった黒い長髪の体が弱そうな風貌をしている20代前後の男だった。だが、男の両手その親指と人差し指は巨大な鋏になっていること以外は、普通の人間に見えた。

「し、シザーマン!?」

 人差し指と親指が鋏になっている男を見て、思わず真鍋義久が言い放つ。そんな彼に大将が慌てて正確な登場作品を紹介する。

「いやいや、それ違う作品だから! この髪切りは【地獄先生ぬ~べ~】に登場する妖怪で、これでもプロの理髪師なんだぜ」

 大将の紹介を受けて、妖怪髪切りが語り始めた。

「聖龍隊の、HEADの召集で駆け付けました。皆さんが髪を失っているのを知って、現れた次第です……」

「HEADから……」

 新世代型達はHEADから招かれたのだと知って、みな表情を険しくさせる。

 と、そんな険悪な空気に成り掛けたのを察して、大将が慌てて場を和ませようと髪切りに言う。

「そ、そんじゃ髪切り! 俺らも手伝うから新世代型の理髪、よろしく頼むぜ」

「はい……」

 大将に言われ、妖怪髪切りが新世代型に歩み寄ろうとするとその前に鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が出てきて髪切りに伝える。

「せっかく遥々アニメタウンからお越しに来て申し訳ないが……我々は髪を切られたばかりで、これ以上断髪するのを望んではいない。済まないが、またの機会にお願いしようか」

 と、皐月は自分たち新世代型は髪を失ったばかりでこれ以上は失いたくないと訴えると、妖怪髪切りは「その心配は要りません」ときっぱり皐月に言い返した。

 そして唖然としている皐月の髪を鋏である指で弄ると、彼女の髪の毛は瞬時に元通りの長さにまで伸び切ったのだ。

「うわっ、髪の毛が戻った!」

 皐月の髪の毛が元通りに長髪になって、驚く真鍋たち新世代型。そんな彼らに大将が言った。

「髪切りは髪の毛なら自由自在にできる能力を持っている。髪の毛を切るのもの伸ばすのもお手の物なんだよ」

 大将の説明で、髪切りが髪の毛を自在に操作できる能力を持った妖怪だと知る新世代型たちは更に驚いた。

 そして赤塚組の手伝いの元、新世代型達は一人一人髪切りに髪の毛を伸ばして貰ってから理髪してもらった。

「ふぅ、やれやれ。やっと元の長さに戻ったね」「まったくだ」

 坊主頭にされた自分達の頭髪が元通りになって、新世代型の星原ヒカルや出雲ハルキは安堵する。

 そんな元通りの長さにまで髪の毛を切ってもらった新世代型に、赤塚組の幹部達が声を掛ける。

「よし、髪の毛の調整が終わったら今度はシャワーだ」

「みんな、軟禁されてた間、まともに体洗ってないでしょ? 聖龍隊のシャワールームに案内するから、そこで体を洗いましょう」

 赤塚組幹部の山崎貴史と千春夫妻に言われ、髪の毛を伸ばして貰った新世代型たちはシャワールームに誘導される。

 と、多くの新世代型たちが髪切りに髪の毛を伸ばして貰うだけの中、鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が一人険しい面差しで髪切りに願い出た。

「……済まぬが、私の髪の毛は元よりも短く断髪してくれないか」

「えっ、は、はい、承知しました……」

 凛々しい顔立ちの皐月から言われ、髪切りは言われるがままに皐月の髪の毛を彼女の肩までの長さに断髪した。

「さ、皐月ちゃん!?」「姉さん、どうしたんだよ!?」

 親友の蛇崩乃音に妹の流子たちが驚く中、皐月は凛然とした面持ちで己の心境を新世代型の同胞達に伝えた。

「私は、私達に浴びせられた数々の暴挙や理不尽な現実を忘れる訳にはいかない! この屈辱を忘れぬため、私は決意した! のちの時代で同じ新世代型が……二次元人がこの様な目に遭わせられないよう、我々は忘れてはならないのだ!」

「皐月ちゃん……」「姉さん……」

 皐月の決心の硬さに、親友の乃音と妹の流子は茫然とした。

 自分たち新世代型に仕出かした三次元政府の暴挙を忘れず、後世に伝えるべく己の決意を断髪という形で取る皐月の力強い言動に新世代型達は愕然とし、大将たち赤塚組は改めて彼女たち新世代型たちが如何なる苦境に立たされていたかを察して胸を痛める。

 

 それから赤塚組は、髪切りに理髪してもらった後にシャワーで体の垢などの汚れを洗い落とした新世代型達に、衣服を提供した。それは三次元政府に脱がされた上、その直後に焼却処分された衣服と寸分違わず同じ衣服だった。

 赤塚組から衣服を提供され、男女別に着替えた新世代型達は心身ともにさっぱりした。

 しかし彼らの心中に潜む不満や悩みは消える事なく、そんな新世代型の心境を察してか闇人が時おり姿を見せる。

 そんなところに、シバ・カァチェンと共に聖龍HEADがやって来た。

 皆がHEADに鋭い目つきを向ける中、カァチェンは今まで苦境に立たされていた新世代型を気にかけて彼らに歩み寄る。

「み、皆様方……大丈夫でしたか? とても心配しておりました……」

 歩み寄って来るカァチェンの眼差しを睨む様に見詰め返す新世代型。彼らはカァチェンの眼を見て、彼が本気で新世代型達を心配していた経緯を知って、彼への意敵愾心を消した。

「カァチェン、お前はいい。ちょっと退いてくれ」「?」

 歩み寄って来たカァチェンを押し退ける様に前に出た新世代型の真鍋義久。そんな真鍋の尋常でない様子を察してか、カァチェンは戸惑う。

 すると真鍋が此方に歩み寄って来るのを視認して、バーンズがHEADの前に出て真鍋の方へ歩を進ませる。

 バーンズと真鍋、双方が歩み寄って対面したその時。真鍋が何かに吹っ切れた様にバーンズを思いっきり右拳で殴り付けた。

 突然の真鍋の暴力に驚愕する赤塚組とカァチェンに対して、HEADと新世代型達はこうなる事を解り切っていたかのように二人を見据える。

 そして真鍋に殴り付けられ、後ろへと倒れるバーンズに真鍋は跨り更に暴力を振るった。

 バーンズに跨った真鍋は、何度も何度もバーンズの顔を殴り付ける。そんな真鍋の拳を、バーンズは何もせず無言で拳を顔で受け止め続けた。

 自分達を見限り、三次元政府に引き渡した聖龍HEADその総長であるバーンズに怒りの拳を連打する真鍋の悲しい拳を、バーンズは毅然とした表情で受け止め続ける。

 そして真鍋が一しきり殴り続けて、疲れが出てきたところにバーンズが声を掛ける。

「…………スッキリしたか」

「!」

「スッキリしたか、オレをぶん殴ってスッキリしたか、真鍋」

 バーンズに問われ、殴り続けていた為に息を切らした真鍋義久は愕然とする。が、すぐに彼はバーンズに息を切らしながら答えた。

「ま……まだまだスッキリしねえよ。いや、アンタを殴り殺しても胸の中のモヤモヤは消えやしねえ……!」

「フ、それもそうだろうな」

 黙って殴られ続けるバーンズに、冷静を取り戻しつつある真鍋は問う。

「……なんで黙って殴られてるんだよ」

 この問いにバーンズは真鍋にこう答えた。

「オレは……オレたち聖龍隊はこういう時はホント無力だ。助けてぇ奴らを助け出したい時には、優先させなきゃならない事が沢山あって、思う様に動けねえ。そんな時、オレが出来得るのは拳を真正面から受け止める事ぐらいだ」

「………………………………」

 黙然とバーンズの話に聞き入る真鍋や新世代型たちに、バーンズは更に語り続けた。

「昔からだった。お前らの始祖、修司とオレらは良く言い争いに発展してな。そん時はオレも衛も修司と取っ組み合いの喧嘩をしたもんよ。お前らの苦しみを……悔しさを消せる力はオレ達にはない。だが、その苦渋の想いを全身で受け止めてやる事はできる。それぐらいしか出来ないのが本音だがな」

 新世代型たちが受けた苦痛や悔しさを消し去る力はなくとも、その想いを全身で受け止めてやる意思がある事を真鍋たち新世代型に伝えるバーンズ。

 そんなバーンズの意思を汲み取り、真鍋はバーンズに手を差し伸べ、立たせる。

「まだアンタ達の事を許す事はできねえけど、想いを受け止めるって意思は認めてやるよ」

「あんがとよ……そして、済まない」

 真鍋に立たせられたバーンズは、彼に礼と謝罪を述べて立ち上がる。

「そういや、アンタには再生能力があったな。殴ってもスグに傷が再生するから、殴り損か」

「いや、結構いいパンチだったぜ。まあ、始祖でる修司には及ばないが」

「それを言うなよ。始祖だの親だの、もういい加減にして欲しいぜ」

 緊迫した殴り劇から一転、穏やかな情景の中で話し合う真鍋とバーンズを見て、聖龍HEADも新世代型たちも表情を緩める。そして先ほどまでの殴打の情景を目撃した赤塚組とカァチェンは空気が一転して穏やかに戻った展開に安堵した。

 

 こうして三次元政府から理不尽な扱いを受けた新世代型二次元人は各自でケジメを着けた。

 鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)は長かった髪を断髪して短くする事で。

 真鍋義久は立場上、自分達を見限った聖龍HEADの総長バーンズを殴打する事で。

 そして他の新世代型たちも共有感知で全員が二人と同等のケジメをつける事を決めた。

 全ては己の心中に潜む狂気、闇人と対峙する戦いの始まりを予感させた上で。

 そんな新世代型達のケジメと決心を、闇人は不敵な表情で視認するのだった。

 

 

 

[裁きの鬼の正体]

 

 それから新世代型達は隔離病棟のエリアだった個室に寝泊り、一泊してから今後の方針について語り合おうという決議を自分達で決めた。

 本当なら聖龍隊が別に用意してくれたエリアで快適に過ごしてもらう予定だったが、鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)など一部の新世代型たちが、自分達が受けた暴挙を忘れない為に、そして聖龍隊にいつまでも甘えてばかりはいられないという理由で、自分達が軟禁されていた個室に寝泊まるのだった

 しかし軟禁中もそうだったが、個室の中は案外過ごしやすく、狭いがトイレと寝床のみの部屋であったのだが、寝床は柔らかく快眠できる設計になっていた。

「隔離されてなけりゃ、案外住みやすい部屋だな」

「そうだね。何よりもこうして、お互いに一緒の空間で過ごせるのが切実に嬉しいよ」

 自分の部屋に星原ヒカルを招いてお喋りする瀬名アラタは、個室を外部とは隔離するプラスチック版だけが聖龍隊の手によって外せた事で、解放的な空間になった事にはしゃいでいた。

 そんな夜の時間帯になっても寝ようとはしない瀬名アラタたち男子に、女子達が文句を言う。

「ちょっとアラタたち! もうみんな寝ようとしているんだから、あんた達もさっさと寝なさい。一人が起きているだけでも、共有感知で眠気が覚めちゃうじゃないの……ふはぁ」

 鹿島ユノからの文句を聞き入れて、瀬名アラタたちも仕方なく寝床に潜り込んで自身を強制的に眠らせようと瞳を閉じて就寝した。

 

 そんな夜中の時間帯。

 新世代型達は皆揃って悪夢にうなされていた。

 その悪夢とは、大都会の摩天楼の間をカギ付きフックで急上昇しつつ、光のない夜空を滑空する人物の視界からの記憶だった。

 ビルの合間を舞い上がり、地上で何かの取り引きをしているギャングの様な風貌の荒くれ者に向かって一直線に上空から襲撃する人物は、華麗に着地すると地上で抵抗してくるギャングを手の甲に装着している長いカギ爪で突き刺し、切り裂いてギャング共を一掃し、辺りに血の海を作り出す。

 そんな禍々しい血の気の多い悪夢を見て、遂に新世代型達は堪えられず目を見開いて目覚めた。

「はぁ、はぁ……!」

 鋭利な長い爪でギャングなどの悪人を容赦なく突き殺したり切り殺したりする人物の夢を見て、呼吸を荒くする新世代型たち。

 バーンズの説明にもあったが、自分達が見る夢やフラッシュバックは、自分たちの始祖である小田原修司の記憶として、前世の記憶として新世代型の記憶を蓄積する脳から溢れ出しているいると推測されていた。

 すると、そんな息を荒くして目覚めてしまった新世代型達の前に、またしても闇人がその全貌を現して目覚めの悪い新世代型達に話し掛けて来た。

「おやぁ、皆さんお目覚めですかい? それにしてもヤケに顔色が悪うザンスね。一体なにを見たんだい? 悪い夢か、それとも過去の現実か」

 闇人は自分たちが見ている夢やフラッシュバックが完全に小田原修司の記憶である事を存知ながら不敵に問い掛けてくる事実に新世代型達はムスッとする。

「ふふふ、そう怒るなって。今お前達が見た修司の記憶はレア度が高いぞ。小田原修司のもう一つの人格……誰も止められなかったモンスターとしての記憶だ」

 そう語る闇人の言動が気になり、自分たち新世代型にしか見えていない闇人に瀬名アラタが問い質した。

「おい、オレ達の記憶に流れるのは全て修司さんの記憶なら……そのもう一つの人格って奴はなんなんだよ?」

「やめましょう、アラタ。こんな奴に聞いたって、ロクな事にならないわよ」

 問い掛けるアラタに鹿島ユノが聞いても野暮だと告げると、闇人は悲しそうな振る舞いで答える。

「おいおい、俺は腐ってもお前らの親なんだぞ。親であり始祖である俺様を崇拝する以前に、そんなロクな事にならないなんて……パパ悲しいぞ! うぅ……っ」

 わざとらしい泣き真似で注意を此方に向けようとする闇人の凶行に、新世代型達は最初は無視する手前だったが余りにも闇人の泣き真似が喧しかったので仕方なく話を聞くことに。

「! そうか、話を聞いてくれるのか! いや、実に嬉しい限りだね。今宵は嬉しいから、君たちを特別な場所までご案内してあげよう。聖龍隊でも一部の隊士しか入れない、超特別な場所にね!」

 闇人はそう語り終わると、徐に立ち上がって個室内で寛いでいる新世代型たちを手招きで誘導しながら彼らを歩かせ始めた。

 誘われた新世代型たちが歩みを止めたのは、外部と繋がっている今はメタルバードの手によって焼き切られた防御壁とは反対側の防御壁だった。

「この壁の向こうに何かあるってんだ?」

「さあ、分からない。聖龍隊の人の話じゃ、有事の際に地下でも軍備の整理と避難して来た市民の補助に回る為に、地下には余計にスペースが余っているって聞いたよ」

「でもよ、この防御壁の向こう。地図で見たら聖龍隊の基地でも一番中心部から離れている区域で、地図にも詳しく載ってねえぞ」

 壁にまで辿り付いた新世代型たちが各々で語り出したのを、闇人が笛を鳴らしながら並ばせようとする。

「ピーーッ、ピーーーーッ、皆さんお静かに! これからこの闇人が見せちゃう……いや、新世代型、お前らにマジックを教えてやるから、後は頑張ってみな」

「な、何だって……!?」

 闇人の言動に皆が一驚する中、超能力者の斉木楠雄の右手が突如光り出した。

 己の手が発光した事に驚く斉木に、闇人が斉木を挑発する様に声をかけてきた。

「さあ斉木、その手を此処に乗せるんだ。そうすれば真実への第一歩に近付けるぞ……」

 闇人に言われるがままに光り出した手を防御壁に設置されている小型モニターの様な機械に置いた斉木。すると次の瞬間、機械は斉木の手をスキャンして音声案内を流した。

「指紋照合確認 小田原修司 入室を許可します」

「!!」なんと機械は指紋照合システムで、斉木の指紋をなぜか修司の指紋と認識してしまった。

 そして防御壁の一人用の扉を開錠して、奥へと進める様に至ってしまった。

 困惑する斉木に、闇人は馴れ馴れしく話し掛けた。

「ハッ、便利だろ! お前の遺伝子の中に組み込まれた修司の遺伝子構造から、奴の指紋を正確にお前の手の平に再現してみたんだ! これで聖龍隊のありとあらゆる場所に行けちゃうな!」

 状況を楽しむ様子の闇人に反し、新世代型達はこの先になにがあるのか、自分たちの始祖である小田原修司に関係しているものがあるのかと一抹の不安を過ぎらせた。

 だが戻ってもどうせ共有感知で記憶や情報が勝手に頭の中に入り込んでしまう現状から、新世代型達は灯りのない暗闇へと歩を進ませた。

 

 防御壁のセキュリティーを突破して、非常用に壁に設置されていた緊急用の懐中電灯の灯りだけを頼りに前進する新世代型たち。

 そんな新世代型達に闇人は電灯の灯りの中で姿を現しては新世代型達の前で浮かれていた。

「ふっふふぅ~~、いや待ち遠しいな! お前達が真実を知れば知るほど、この闇人にまた一歩一歩と近付く訳だからな」

 この闇人の言葉に新世代型達は半ば引き返そうとした矢先、再び彼らの脳裏にフラッシュバックが流れた。今度は鋭利な爪で首を掴んだ男の顔面に爪を突き刺して、そのまま切り裂くと言うおぞましい光景だった。

 この恐ろしい映像を見た新世代型達に、闇人は喜々としながら語り掛けてくる。

「ふふふふ、お前達がアレを見た途端、発狂しちまうのが目に見えてくる。が、真実からは目を背けちゃいけないぜ。お前達には真実を知る責務があるって事を忘れるな」

 そして再び闇人の誘導の元、新世代型達はトンネルほどもある大きい通路から一転、その横にある小さな路地へと案内する。しかし路地の先は行き止まりで、これ以上進む事はできなかった。

「ふんっ、何だったんですの? タダのハッタリだったのかしら」

 と、新世代型の薙切えりなが引き帰ろうとした目前に闇人が不意を付いて現れては、彼女ら新世代型に告げた。

「いやいや、申し訳ありません。少し手違いがありましてね……室戸大智君、君は少しはコンピューターに精通しているだよね」

「は、はい……」

「恐縮だが、この行き止まりの壁際に隠しコンピューターがあってね、それを操作して欲しいのよ」

「は、はぁ……」

 闇人からの指示に従う室戸大智が壁際の隠しコンピューター操作盤を見つけると、彼は手馴れた手つきで操作していく。

「ぐふふ、やっぱり修司が憶えられたぐらいだ。コンピューターに精通している奴なら、操作盤を自在に扱える筈だ」

 不敵な面構えで室戸大智がコンピューターを操作していると、その操作盤の横からまたしても指紋認証システムが突出してコンピューターが指紋を求めてきた。

「ふふ、斉木……またもお前の手が必要となる」

 闇人に指図されながらも、斉木は自身の手の表面に浮かび上がった小田原修司の指紋に疑問を持ちながら認証システムに手を置いてみた。

 するとコンピューターは小田原修司本人の認証だと誤認して、小さい路地の行き止まりと思われていた隠し扉を開いたのだ。

「さあさあ、お待ちかねのビックショーの時間だよ。この先にあるのは怒りと暴力、そして狂気に駆られた鬼が隠れていた秘密の洞穴。覗いてみてごらん、色んな道具があるからね」

 そう新世代型達に説明しながら、闇人は後ろ歩きで奥の方へと姿を消していった。

 皆も闇人を追うように奥の方へと進んで、行き止まりと思われていた扉を潜って先へと進入した。

 皆が出てきたのは、これまた大きな基地の空間であったが、聖龍隊の基地とは一線をしく不気味な基地だった。

 基地の中を隈なく探索し出す新世代型達は、整理されている棚に置かれている鬼のデザインが彫られた手裏剣を手に取ってみて、本物だと実感する。

 更に基地には最先端の技術が使われている戦闘機や見たこともないデザインの自家用車に唖然とする。

 そしてその中でも、一際目を引くのが、何かが納められているカプセルだった。

 そのカプセルの前には、今までの様に指紋照合装置が組み込まれており、斉木以外の新世代型も闇人も斉木を見詰める。

「さあ、斉木の坊主。このカプセルを開けてみな、お前たち新世代型の世界観がガラリと変わる代物がこの中には納められている。そう、小田原修司しか開ける事のできないパンドラの箱を子供であるお前達が開けてみるんだ……!」

 闇人にカプセルを開錠するよう言われる斉木楠雄。だが、斉木はもちろん他の新世代型たちも闇人の目論みは理解できていた。

 理不尽な現実、苦しいだけの現実を自分達に突き付けて少しでも心に空いた空虚な隙間に入り込んで、自分達を支配しようと目論む闇人の考えを。

 だが此処まで来てしまったのであれば、却って小田原修司への好奇心で中身を見届けたいと思うのが人の心情。

 斉木は意を決してカプセルの諮問認証システムに、小田原修司の指紋が浮かび上がった己の手を置いて、識別させる。

「指紋認証開始…………認証終了、カプセル解放します」

 機械音声での案内が終わり、カプセルが全開していくと、中からは凄まじい白い煙が。

 その白い煙の中から現れたブツに、新世代型達はド肝を抜いた。

「こ、これって……!」

 新世代型たちが驚愕するのも無理はない。それは顔の大部分を覆うほどの紅くて大きな瞳、焼け爛れたような皮膚感を再現している不気味な肌、そして右腕には何かの操作機材が装備され、両手の甲には収納されてはいたが鋭利な三本の爪が重く不気味に輝いていた謎の怪人を模したアーマーだった。

 一見するとパワードスーツにも見て取れる、不気味な容姿の怪人を模した装甲アーマーを見て愕然とする新世代型たち。

 するとその時、琴浦春香が不気味な容姿の怪人を模したスーツを見て、見覚えがるのを思い出した。

「こ、これって…………確か、手配書で見た気が……」

 震える指で指す琴浦の発言で、新世代型達は共有感知で同じく記憶を思い出した。

 それは聖龍隊やジャッジ・ザ・シティではもちろんアニメタウンにも手配書に顔が乗っている、情け無用の非情な制裁の鬼ジャッジ・ザ・デーモンの手配されている容姿と酷似していた。

 ジャッジ・ザ・デーモンは世界各地に出没し、その見た目から異星人や新種の妖怪だという噂まで流れている犯罪者を容赦なく殺傷する裁きの鬼として有名であった。

 そのジャッジ・ザ・デーモンのパワードスーツが何ゆえ聖龍隊の基地の片隅である地下基地に収納されているのか、そしてそのジャッジ・ザ・デーモンの基地と思われる地下空間に通じている秘密の出入り口やスーツが保存されていたカプセルを開錠する為になぜ小田原修司の指紋が必要だったのか。

 苦悩に苛まれる新世代型達にまたしてもフラッシュバックが襲い掛かる。

「う、うわっ、頼む、やめてくれっ……ぐはッ」

「ち、近寄るな、アッチ行け……うわあ!」

「く、クソッ、貴様の様な得体の知れないバケモノに殺されるとは……!」

 襲撃の瞬間、そして今まさに殺されそうになった男の首を締め付ける手を見て、その手がジャッジ・ザ・デーモンの片手であるとスグに解る新世代型。

 更に彼らを襲うフラッシュバックは続き、今度は血塗れになったジャッジ・ザ・デーモンが画面が消灯しているモニターの前で座り込んだ。そしてジャッジ・ザ・デーモンは徐に返り血を浴びた手で、血塗れの頭部の部分を外して素顔を曝してみると…………その素顔は他の誰でもない、小田原修司だった。

 

 残虐非道な無情の制裁鬼ジャッジ・ザ・デーモンの衝撃の正体を知って愕然とする新世代型達は深い絶望感に苛まれる。

 自分達の始祖、小田原修司が連続殺人鬼であるジャッジ・ザ・デーモンである事を知って。

 

 

 

[正義とは違う制裁]

 

「其処で何をしている!!」

 と、新世代型たちが衝撃の真実を知って愕然と絶望感に苛まれている所に、怒声にも近い声が掛かった。

 新世代型達が振り向くと、ジャッジ・ザ・デーモンの秘密基地その上部の階層にバーンズが立っているのが見えた。

「ば、バーンズ……」

 未だに衝撃が収まらない新世代型の真鍋義久が呟くと、上の階層からバーンズは滑空して新世代型達の元へ舞い降りてきた。

「お前ら、どうして此処にいるんだ!」

 バーンズから問われ、新世代型達は返す言葉を見失う。

 するとバーンズに続いて、新世代型達が入ってきた入り口とは別の隠し通路からジュニア達HEADが現れてバーンズと同様に新世代型達の前に君臨する。

「君たち……突然、夜中に徘徊し出したと思ったら……まさか、此処に辿り着くとは……!」

 ジュニア達HEADは交代制で新世代型二次元人の様子を聖龍隊基地の監視カメラで見守っていたのだが、そんな彼らが夜中に突然活動したのを確認して、ジュニア達HEADが後を追ってきたのだ。彼ら聖龍HEADにも闇人の姿は見えてないので、HEADは新世代型達が自力で秘密基地を見付けたのかと思い込んでいた。

 するとHEADの騒ぎを聞き付けて、ジャッジ・ザ・シティの聖龍隊基地に集結していた総合精鋭部隊、コマンドー/ニュー/ルーキーズの三つの総合部隊と、ルーキーズと行動を共にしているシバ・カァチェンもデーモンの秘密基地に駆け付けた。

 しかし此処で、村田順一やフロートそしてミラール達は思わぬ失態を犯してしまう。

「なんだなんだ此処は!? 聖龍隊の基地にバットマンの秘密基地みたいなのがある!」

「琴浦さん、なんでみんな此処にいるの?」

「うわあ、色んなものがある!」

「な、なんなんだ此処は……?」

 なんとデーモンの秘密基地に駆け付けた流星総合部隊が慌てていたのを見かけて、基地内で休息していたプロト世代のギュービッド/チョコ/桃花/海道ジンの四人までもやって来てしまってた。

「ジュン! お前がいながら、なんで四人の尾行に気付かなかった!?」

「ご、ごめんなさい! 慌てていたので気づきませんでしたっ」

 バーンズは四人の尾行に気付かなかったスター・コマンドーの総部隊長で最も経歴の長いベテランの村田順一に渇を飛ばす。

 しかし此処で更に、突然動き出したスター・コマンドーに着いて来てしまった民間人が。

「こ、これは……!!」

「ユウ! ニナミ! なんで此処に真嶋がいるんだ!?」

「い、いや~~、ちょっと……」

「さっきウチらと聖龍隊がなぜ激突したのか話し合ってて、そのまま来ちゃってたの……」

 元警視庁の警視で、現在は民間法律事務所の所長を務めている【イフリート~断罪の炎人~】の真嶋護までも秘密基地に入ってきた事にバーンズは涙目。それに対してユウとニナミの二人は、先ほどまで自分達と真嶋がスター・コマンドーと聖龍隊が如何な理由で激突していたのか話していたからだと説き返す。

 正義感が熱く、命を尊重すべきと言う考えを持つ真嶋は、時には老若男女という凶悪犯なら殺しているジャッジ・ザ・デーモンの基地が聖龍隊の地価区域に存在するのか半ば混乱していた。

 そんな真嶋護はその場に集まってきた聖龍隊関係者全員に激情を吐きかけた。

「なんで…………なんで……なんで聖龍隊がジャッジ・ザ・デーモンとつるんでいたんだ! アイツはどんな狂人か解っているのか!? 過ちを犯したと言う名目で、老若男女問わず殺傷している残忍な怪人じゃないか! まさか、聖龍隊は……いや、HEADは当初から小田原修司がジャッジ・ザ・デーモンである事を知っていたのか!」

 怒号を吐き散らす真嶋護の言葉に、全ての聖龍隊関係者は口を閉ざしてしまう。

 怒りで興奮した真嶋は、新世代型たちを掻き分けて一人ジャッジ・ザ・デーモンのスーツが納められているカプセルの前へと早歩きで駆け寄る。

「この……この、裁きの鬼が今まで、どんな畜生をしてきたのか……!」

 すると真嶋護は怒りで興奮した余りに、ジャッジ・ザ・デーモンのヘルメットを掴み取って床に叩き付けようと、ヘルメットに手を掛けてしまった瞬間。ピピッとヘルメットから音が鳴ったのがバーンズの超聴力に届いた。

「危ない、離せ!」

 バーンズは真嶋から強引にジャッジ・ザ・デーモンのヘルメットを強奪すると、スーツが納められている収納カプセルに放り込んで強引に閉じようとする。

 が、その最中にカプセルに放り込まれたヘルメットが爆発、バーンズは収納カプセルの戸ごと吹き飛ばされてしまう。

「い、イテテ……」「バーンズ!」「大丈夫?」

 カプセルの戸ごと爆発で吹き飛ばされたバーンズに、新世代型の真鍋義久と琴浦春香が駆け寄る。

 一方で、ヘルメットの起爆装置が作動した事と、そのヘルメットを収納カプセルに放り込んだ為に、カプセルも中に納められてたデーモンスーツも大破して使い物にならなくなった。

「あーーあ、八千万もかかって作ったスーツなのに……」

「は、八千万!?」

 大破したデーモンスーツを見て呆然と呟くジュニアの発言に、新世代型達は驚愕する。

 すると此処で、主婦層からジュニア達HEADに質問が問い詰められた。

「まさか…………私たちの税金で作ってたんじゃないでしょうね?」

「………………………………」

 琴浦久美子にイオリ・リン子たち主婦からの問い掛けに、ジュニア達は顔を背けるばかり。

「い、イテテ……あちゃーー、ヘルメットを強引にボディアーマーから外すから、起爆装置が作動しちゃったじゃないか」

 実はスーツは、犯罪者や敵対している相手にヘルメットが外されてしまった事を考えて、ヘルメットそのものに起爆装置が備え付けられていた。

 バーンズは打ち付けた箇所を擦りながら、騒々しくなる現場を宥めて話を纏めようとする。

「ふぅ、少し落ち着いたところで話を戻そう…………新世代、なんでお前達が此処に居るんだ」

「そ、それは……」

 バーンズからの厳しい面差しで問い詰められた新世代型達は、全てを有態で答えた。

 闇人が真実を見せると言って、自分達を此処まで誘導してくれた事。そしてその道中で斉木楠雄が始祖である修司の指紋が使える様になって、それで指紋認証を突破した事を。そして遂には全員揃ってジャッジ・ザ・デーモンの秘密基地に辿り着いてしまった経緯を。

 この経緯を聞いて、先ほど吹き飛ばされたバーンズがムスッとした顔付きで新世代型達に言った。

「まさか闇人の案内の元、此処まで辿り着いちまうとは……まあ、アイツは今まで修司の精神その奥底で修司の行動を全て観ていた奴だったからな。ジャッジ・ザ・デーモンの基地への入り方も熟知してたんだろう」

 新世代型達の話を聞いて、なぜ彼らが出入りできたのかを納得するバーンズ。

 そんなバーンズに、新世代型達は蒼然とした面持ちで訊ねた。

「あ、あの、バーンズさん……小田原修司が……私達の始祖にあたる小田原修司が、ジャッジ・ザ・デーモンだなんて……何かの間違いですよね?」

 バーンズから間違いだと聞きたい琴浦春香たち新世代型達の問い掛けに、バーンズは無表情で口を閉ざす。

「ウソよ、ウソですわ……私たちの始祖、私たちの体の中に流れる小田原修司が……まさか連続殺人鬼のジャッジ・ザ・デーモンだったなんて信じられない!」

 薙切えりなたち一部の新世代型の女子達は、自分達の始祖である小田原修司が連続殺人鬼として名高いジャッジ・ザ・デーモンである事実を受け入れ難かった。

 新世代型達が見たフラッシュバックで小田原修司とジャッジ・ザ・デーモンが同一人物だと初めて知った彼らと四人のプロト世代、そして元警視の真嶋護にスター・ルーキーズの新人達は衝撃を受けた。

「ウソだろオイ……あのジャッジ・ザ・デーモンが前総長の小田原修司だって? まさか……」

「私達もバーチャルの世界で何度か出くわした事があったけど……まさか、修司さんだったなんて……!」

 話を聞いて、過去にバーチャルの世界でジャッジ・ザ・デーモンと接触した事を思い返すルーキーズのキリトとアスナ。

「私達も会った事があります……まだ、私たち魔法少女が戦い合っていた頃に、デーモンに妨害された事があるわ」

「それはね、ほむらちゃん……ジャッジ・ザ・デーモンは無益な争いそのものも罪だという考えがあって、それであなた達の戦いを邪魔したりしていたのよ」

 魔法少女同士の交戦を過去にデーモンに妨害された経緯を語る暁美ほむらに、アッコがデーモンは争いそのものを罪だと認識しているからだと説く。

 そんなルーキーズの新人達が、まだ自分達が聖龍隊に加盟されてない頃にジャッジ・ザ・デーモンと遭遇した思い出を語らっていると、デーモンの正体が小田原修司だと知って落胆する元警視の真嶋護は悲愴とした。

「まさか……まさか、小田原修司がジャッジ・ザ・デーモンだったなんて……そんな……」

 そんな落胆する真嶋の心境を察し、新世代型の琴浦春香が真嶋に声をかけようとする。が、真嶋は自分に触れようとする彼女に怒号を放った。

「さわるな!」「!」

 真嶋の一言に一驚する琴浦春香たち新世代。そんな彼らに真嶋は鋭い目付きで睨み付けながら言った。

「お前達……お前達、新世代型みたいな畜生が僕に触れるな……! 残虐非道を行ってきたデーモンのクローンめ……!」

 ジャッジ・ザ・デーモンの正体である小田原修司を始祖とする新世代型達にも怒りの矛先を向ける真嶋護。そんな真嶋の怒りと憎しみの感情を共有感知で知って、新世代型達は言葉を失う。

 真嶋護の怒りと憎悪を前にして、バーンズは困惑する現場の皆々を宥める為にも語り出した。

「……もうしょうがない、新世代型に四人のプロト世代、そしてルーキーズの新人共まで居るが話してやるよ。オレ達HEADがデーモンの正体を知ったのは、修司がデーモンの活動を行ってから数年経った頃だった」

「ど、どうして! あなた達は小田原修司の凶行を……デーモンとしての彼を止めなかったの!?」

 自分達HEADが修司がデーモンとしての行動を起こしていたのを知った後も、黙認していた理由を問い詰める新世代型のイオリ・リン子。

 するとバーンズに続いて、他の聖龍隊関係者も語り出した。

「僕達スター・コマンドーも、最初デーモンを追って激闘を繰り広げている時に正体に気付きました。そして同時にデーモンの……当時の総長の悲しい信念を知ったんです」

 スター・コマンドーの職務で、ジャッジ・ザ・デーモンと死闘を展開した村田順一は、当時から後々まで続く小田原修司の悲しい信念を知ったと語る。

「オレらも戦闘の過程でジャッジ・ザ・デーモンの真実を知った。デーモンが背負う業と、積み重ねなきゃならないエゴも始めて知った」

 ニュー・スターズ総部隊長のフロートも、デーモンが背負う独特の業やエゴを知って衝撃を受けたと語った。

「私たちスター・ルーキーズもジャッジ・ザ・デーモンと対峙してからその正体を知ったわ。最初は驚いたけど、彼の……修司の信念は決して曲がらないものだと知って、私たちもデーモンの正体には黙認する事を決めたのよ」

 そしてスター・ルーキーズ総部隊長のミラールも、決して曲がらないデーモンの信念を知った上で、その正体を黙認する事を決めたと語る。

 流星の総合部隊総部隊長たちが語り終わったのを目視して、バーンズが再び語り始めた。

「そう、誰も奴の行動を否定し……止める権利は持っていない。正義という立場が違うだけで変わってしまう人間の価値観、そのエゴと一人闘いながら己の信念の元、多くの命を裁き、そして救ってきた制裁の鬼。その鬼を退治する権限など、何処の国にも持ち合わさっちゃ居ない」

「それは……どういう事なのでしょう……?」

 聖龍隊関係者の今までの話を聞いて、シバ・カァチェンが問い掛けるとバーンズは皆に語った。

「正義というのは、所詮人間が生み出したエゴ。だからこそ真嶋、お前さんも警視から今の法律事務所の所長にまで失墜したんだろ?」

「!!」

 バーンズから指摘を受けて、真嶋護は衝撃を走らせた。

 

 そしてバーンズたち聖龍HEADはそのまま皆に語り明かした。

 一人の少年が、激動の時代の中で何ゆえ、非情の制裁を下す裁きの鬼へと変貌したのか。

 なぜ真嶋護が警視から今の様に法律事務所を立ち上げて、そこの所長に納まったのか。

 そこには愛も正義も何も信じられず、感じない少年ゆえの考えと信念があった。

 

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