聖龍伝説 現政奉還記 創生の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 バーンズや真嶋護、そして聖龍HEADから聞かされた小田原修司の裏の面、ジャッジ・ザ・デーモンの闘いの日々。そして様々な悪や犯罪を私刑の形で裁いていくジャッジ・ザ・デーモンが直面する現実、そしてあのFとの戦いの始まり。小田原修司としての責務、ジャッジ・ザ・デーモンとしての制裁、それらを熟しながら激務を務めていく一人の青年の確固たる意志と信念。だが、それでも怒ってしまう悲劇の数々、クラウディの悲劇にHEADへの暴露、そして起こってしまったブラックホワイトの犯罪。遂に勃発してしまう戦争を喜劇として堪能しようとするFことMrフェイクの大犯罪にジャッジ・ザ・デーモンは対峙する。しかしMrフェイクを捕えても戻る事のない悲劇と後戻りできない現実の渦中で、小田原修司はジャッジ・ザ・デーモンとしての責務を全うする考えを示したという。
 そんな話を聞いて、プロト世代や新世代型たちは何を想うのだろうか。



現政奉還記 創生の章 鬼の子の決意

[昔を語り継がれて]

 

 バーンズたち聖龍隊の創設者であるHEAD達から聞かされたジャッジ・ザ・デーモンの壮絶な伝説。

 数多の狂気的犯罪の解決と容赦ない制裁、その一方で数多の種族が交流できる場として建造に乗り出したジャッジ・ザ・シティ。

 しかしそんな日々の中で起きてしまったFことMrフェイクの数々の事件、そしてMrフェイクによって狂気に駆り立てられ犯罪者ブラックホワイトとして名乗りを挙げた流水霧也。

 そして遂に「竹島の日」を切っ掛けに起こってしまった二次元界と三次元界の戦争、その最中に戦場にアメリカから盗み出した核ミサイルを発射しようと目論むMrフェイクを止めようと駆けつけるも捕らわれる聖龍HEAD。彼らに代わって正体を明かしたMrフェイクと激闘を繰り広げるジャッジ・ザ・デーモンの葛藤。

 やがてMrフェイクも投獄され戦争も終結したが、その代償は大きく、二次元人と三次元人の溝は一層深まった。

 この溝を少しでも埋めようと、聖龍隊は少しでも悪意のある行動をした二次元人を異常者(ヒール)として捕えて罰則する流れに至る。

 それと同様に増える犯罪傾向を、少しでも緩和させようと小田原修司ことジャッジ・ザ・デーモンは世間からの悪評にも挫けず、戦い続けたのだった。

 

 自分達の始祖、小田原修司のもう一つの顔、ジャッジ・ザ・デーモンの壮絶な伝説を聴いて、硬直する新世代型たち。

 伝説を聴いて愕然とする皆々から、プロト世代のギュービッドが口を開いた。

「ま、まさかあの竹島問題から戦争にまで発展しちまうとはね……今では国連管轄の州刑務所が在るだけの島なのに」

 日韓の争いの種となってしまう竹島などの尖閣諸島は、今では全て国連管轄の州刑務所が増設されているだけの島々である事を述べるギュービッド。

 そんなギュービッドが発した当時の問題を、参謀総長のジュニアが振り返る。

「あの頃は日韓どちらも自分の領土だとして譲らなかったからね。平和に亀裂が入るところを、義兄さんが国連に口ぞえして当時から増える傾向だった犯罪者を収容する為の刑務所を増設する敷地として竹島なんかが国連管轄下に入ってしまったんだ」

「その犯罪者が増えていった傾向の裏では、やはりジャッジ・ザ・デーモンの暗躍があったんですよね……」

「……ああ、それも一理ある。ジャッジ・ザ・デーモンによって自分の犯罪や悪事が暴かれた人間が増加の一途だったからね。そんな囚人を収容する施設がどうしても必要不可欠だったからこそ竹島そのものが収容施設の一部になってしまったんだ」

 ジュニアの説明を聞いて、新世代型の磯谷ゲンドウが問い掛けると、ジュニアはその真意を赤裸々に語った。

 

 するとバーンズや当時を知る創設者である聖龍HEADの話を聞いた二次元人たちが各々に語り出した。

「だけど聖龍隊の活躍に乗じて、コスプレイヤーが自警団までしちまうとは驚きだぜ……」

「コスプレイヤーの自警団登場には、オレも修司も常に悩み処だった」

 英雄に扮して自警団を行う人々の登場に修司や自分達は悩まされていたと当時の苦悩を真鍋義久に返すバーンズ。

「ジャッジ・ザ・デーモンの制裁に、あのナイトメアの恐怖ガスまでも使うなんて……!」

「恐怖ガスを使ってまでも恐怖の体現者になろうとしたんだろう」

 以前に偽物とはいえ、ナイトメアの恐怖ガスの餌食となったアスナたちSAO組がそのガスをジャッジ・ザ・デーモンまでも多用していた事実に驚く中、伝説を聴いてデーモンが恐怖の体現者に成りたいが為にガスを乱用したのだとキリトが呆れながら言う。

 だがそんな、恐怖の体現者たるジャッジ・ザ・デーモンに己を変えてまで闘い抜いた修司の奮闘を理解しようとする新世代型も少なくなかった。

「理不尽な世界を変える為に、修司さんは辛い戦いを密かに続けていたんですね……」

「修司の善悪付け難い闘いには賛否両論だったけど、それでも平和のために独り戦っていたのは確かだったよ」

 孤高の戦いに独り身を投じていた修司の辛さを説く細野サクヤに、HEADのセーラーウラヌスが答え返す。

「あの男が自警団活動していたコスプレイヤーまでも襲うとは……」

「コスプレイヤーの自警団には手を焼いていたが、皮肉にもそれで問題視されてた自警団の数が激減したのも事実だけどね」

 Mrフェイクが自身が愛してやまない英雄を気取ったコスプレイヤーの自警団をも殺害していた過去の事例を室戸大智が驚いていると、スター・コマンドー総部隊長の村田順一が当時を振り返りつつ語った。

「流水霧也も完全に悪人とはいえないのに、異常者(ヒール)になってしまうなんて……人間の闇や悪意が恐ろしく感じられます」

「霧也はただ、あの男の標的にされちまっただけだ……それが切っ掛けでブラックホワイトなんて悪党に成り下がっちまったんだよ」

 クラウディこと整形男子の流水霧也が異常犯罪者ブラックホワイトに変貌した経緯を知って悲愴する新世代型の彩瀬なるに、当時を知るスター・コマンドーのユウが切実な心境を語った。

「聖龍隊の秘密を暴露しようとした三次元人の口を塞ぐために、病院を爆破するなんて……」

「キャラの正体を暴露される事案が発生した事から、戦争終結後の治安が安定した後にオレら聖龍HEADは自分の個人情報を公開して、事件の再発を防いだんだ」

 キャラクターの真実や秘密を暴露しようとした三次元人の行動を阻害しようと病院に爆弾を仕掛けたMrフェイクの凶行に斉木楠雄たち新世代型が唖然としてると、バーンズはそれ以降事件の再発を防ぐ為に当時の聖龍HEADや一部の聖龍隊士の個人情報を開示する様に至った経緯を話した。

「ブラックホワイトに豹変した流水霧也の凶行には、今の彼の人格が反映されていますね」

「あれからだった……ブラックホワイトが裏社会で暗躍する様になったのは……」

 Mrフェイクの口車に乗せられ、人格が変貌してしまったブラックホワイトの過去と現在を重ねる星原ヒカルの言動に、コレクターユイが悲しげな表情で呟き返した。

「Mrフェイクが戦争まで起こしていただなんて……以前、手に入れたこの本の通りでした」

「自分が楽しむための娯楽として戦争を起こしたアイツの犯罪は実に恐ろしいものだった。お前達は単なるキチガイな犯罪者と思っているが、奴はそれ以上の犯罪者だ」

 以前、自分たち新世代型を誘拐して監禁していたタイの製薬企業で拾い上げ入手した二次元界と三次元界が融合した後の歴史が綴られた本を示す出雲ハルキに、Mrフェイクは戦争を含む犯罪は全て自分にとっての娯楽でしかないのだと告げるバーンズ。

 話がMrフェイクが引き起こした二次元界と三次元界の戦争に触れられた時、核ミサイル発射寸前のジャッジ・ザ・デーモンの行動に皆は感心が過ぎった。

「核ミサイルの発射システムを止める為に聖龍HEADを見捨てて装置の停止に取り組むとは……何だか少し、非情ですね」

「より多くの命を救う為に、時に修司は……ジャッジ・ザ・デーモンは冷徹な判断を下す事があった。だが、オレはそんな判断を間違いだとは思ってない」

 仲間である筈の当時の聖龍HEADの危機を尻目に、ミサイルの発射阻止に行動を起こしたジャッジ・ザ・デーモンに非情さを感じる瀬名アラタに、バーンズはそんな冷徹な判断は間違っていなかったと説いた。

 そんな修司ことジャッジ・ザ・デーモンの冷徹な判断を間違いではないと思慮するバーンズに、室戸大智が問い掛けた。

「戦争終結後、皆さんはそれぞれの正義の為の戦いに乗り出していった訳ですね」

「修司は己の信念の元、オレ達は理想と希望の象徴として……それぞれの戦いに乗り出した」

 戦争が終結した後の混乱と乱れた秩序、そして猛威を見せ始めた二次元人の異常者(ヒール)を対処するべく、各々が自分達の役回りを理解して務めていったと返答するバーンズ。

 

 そんな皆々が小田原修司のジャッジ・ザ・デーモンとしての葛藤と苦悩を知って考えさせられていた時のこと。

 元警視である真嶋護が静まる場を切り込む様に声を発した。

「ちょっと待つんだ! どんな理由があろうと、ジャッジ・ザ・デーモンは多くの人命を奪った殺人鬼には違いないんだぞ! 確かに僕ら二次元人の立場は弱い様に、世の中には立場も権限も弱い存在が数多くいる……けれども、そんな人々の代わりに拳を振るい、暴力で何もかもを解決しようとするデーモンのやり方は認められない……!」

 この真嶋の意見にも、新世代型達は同意せざるを得なかったが、そんな真嶋にバーンズが話す。

「確かに、奴の……修司の思考には同意せざる得ない所も多々あった。だけど、正攻法では解決できない事例が世の中には山ほどあるのをお前だって理解している筈だぜ真嶋。バカじゃないんだから、それぐらい察していろ」

「ッ…………!」

 バーンズからの突っ掛けに、真嶋は言葉を呑み込んでしまう。

 そんなバーンズに新世代型の真鍋義久がある疑問をぶつけた。

「ほ、他のヒーローと違って凶悪な犯罪者は迷わず殺しちまうジャッジ・ザ・デーモンは、なんでMrフェイクとかの異常で凶悪な犯罪者は殺さないんだ?」

 真鍋の疑問にバーンズは真顔で答えた。

「それは修司の……いや、ジャッジ・ザ・デーモンの独断で犯罪者への罰則が決定していたからだよ。さっきも話に出てきたブラックホワイトのように、自分たち三次元人の介入が影響で凶悪化しちまった犯罪者を修司は心の何処かで元に戻って欲しいという願望があったからこそ、トドメを刺せずに生かしたんだ」

 更にバーンズはMrフェイクについても語り明かした。

「Mrフェイクも同様に、奴が幼少の頃から好きだった二次元人への欲求が親によって閉ざされた事でもう一つの人格に洗脳された事で偽りの犯罪者は生まれてしまった。それ故にいつかは治療で元通りのジャクソンに戻ってくれるよう祈ったりして、殺意を抑えていた面が目立っていた」

「先ほどの話でもあったように、ジャッジ・ザ・デーモンとMrフェイクは何処か似たような近い存在感があったというのは?」

 バーンズの話を聞いて新世代型の黒川令の問い掛けに、バーンズは答えた。

「ジャッジ・ザ・デーモンもMrフェイクも、どちらもオレら二次元人の為に生まれたと言う傾向が見られる。ジャッジ・ザ・デーモンは平和の為に戦うヒーローの労力を少しでも軽減しようと……Mrフェイクはそんな大好きで憧れの対称だったヒーロー達に試練という形で犯罪を犯すのが醍醐味、といった感じでな。ま、要するにジャッジ・ザ・デーモンもMrフェイクも似た者同士って事だよ」

 バーンズから衝撃的な話を聞かされて愕然とする新世代型達に、バーンズは更に衝撃的な事実を告げる。

「毒をもって毒を制せよ、という言葉があるだろ。その通りに、ジャッジ・ザ・デーモンは自分と同類に近いMrフェイクといつも接戦を繰り広げている……心の中じゃ、またジャクソンに戻ってほしいという願望を秘めてな。ジャッジ・ザ・デーモン、いや修司は自分に近いMrフェイクの様な犯罪者には本気で殺意が向けられないのかもしれない」

 類は友を呼ぶ、同類嫌悪という言葉があるように、ジャッジ・ザ・デーモンとその宿敵Mrフェイクはお互いに対照的な存在だと述べるバーンズ。

 するとバーンズは更にジャッジ・ザ・デーモンとMrフェイクの信条についても述べた。

「ジャッジ・ザ・デーモンは隠された真実を暴露する事こそ正しい世の常だと固く信じていた。それに反してMrフェイクは世の中は嘘偽りで構成され、欺瞞で成り立っているとしてジャッジ・ザ・デーモンの信条とは真っ向から反対だった。正しく真実を明らかにするジャッジ・ザ・デーモンと偽りで人々を欺くMrフェイクは対照的な敵対関係であったんだ」

 真実を導くジャッジ・ザ・デーモンと嘘偽りで事を進めるMrフェイク。明らかに対照的な二人の関係を説くバーンズの話には、善悪の様に表裏一体のジャッジ・ザ・デーモンとMrフェイクの関係性が感じられた。

 

 

 

[夜明けが過ぎても……]

 

 すっかり日が明けて、太陽が昇ってきた頃、ジャッジ・ザ・デーモンのジャッジ・ザ・シティに在る秘密基地デーモンハビタットすなわち鬼の棲家で屯した二次元人たち。

 彼らは眠気などすっかり取れてしまうほどのジャッジ・ザ・デーモンの伝説と言う昔話を聴いて半ば興奮していた。

 そんな夜明けを察して、バーンズたち聖龍隊は新世代型たちを引き連れてジャッジ・ザ・シティのデーモンハビタットから退室しようとした。

「もう夜明け……って、いうか朝だな。長話で随分と長居しちまったが、そろそろ此処を出よう」

 バーンズが言うと聖龍隊隊士全員が動き出す。

「そもそも、修司は自分のテリトリーに他人が入られるのを極端に嫌う性質(たち)だからな。いくら不在と言えど、奴の……鬼の棲家に無断で踏み込んじゃアイツも怒るだろう」

「……その小田原修司は、今もって生死不明なのにか?」

 バーンズの台詞にジャッジ・ザ・デーモンの真実を知って不快極まる真嶋護が呟く。皆、真嶋の発言に一瞬動揺するが、バーンズはそれに対して素気に返事した。

「修司が死んだってのは、あくまで推測。そもそも、あの野郎が簡単にくたばって堪るか。ひょっとすると、また近い内にひょっこり顔を現すかもしれねえし」

 バーンズを始めとする聖龍隊の誰もが、小田原修司はまだ健在している可能性を信じていたかった。そんな彼らの想いを察する二次元人たち。

 そしてバーンズを筆頭とする聖龍HEADにスター・コマンドー、ニュー・スターズ、スター・ルーキーズの面々が新世代型たち一般の二次元人を先導してデーモンハビタットから退出させたのを確認して、バーンズとジュニアはデーモンハビタットの電灯を消して鬼の棲家を暗闇に戻した。

 バーンズは、皆をこのまま隔離病棟だった個室に戻して休ませるよりも一旦外の空気を吸ってから休ませた方が良いと判断し、皆揃って地上へと向かわせた。

「……それにしても、まさか小田原修司が世界中に制裁を下していたジャッジ・ザ・デーモンだったとは……驚きです」

「修司は……彼は優しすぎたの。他人が傷付いてばかりの世の中を黙って見過ごす事ができなかったのよ。それで修司はデーモンに……裁きの鬼へと変貌してしまった。私達はそれを止める事が……いいえ、止める権限なんて無かったの。上辺だけの正義や理想を貫く事しかできない私たち聖龍隊に、ジャッジ・ザ・デーモンのやり方に口出しする権限は無いに等しかったのよ」

 小田原修司がジャッジ・ザ・デーモンの正体だと知って驚くカァチェンに、ミラーガールは自分たち聖龍隊にジャッジ・ザ・デーモンを制止する権限は無かったと悲しげに語る。するとそんな彼女の語り手を聞いて真嶋護が懸念を吐き散らした。

「そ、それでも……奴の、小田原修司の凶行を黙認していたのか、聖龍隊は!? ユウ、ニナミ! 君たち二人も……いいや、スター・コマンドーですら小田原修司の凶行を知っても尚、止めなかったのか?」

 真嶋護の問い掛けに、険しい顔色になるユウと悲愴な面持ちを浮かべるニナミ。そんな二人に代わって、村田順一が真嶋に代弁した。

「この世は全て綺麗事で……理想だけで成り立っている訳ではない。誰かが汚れ役を担わなければ、人命も人心も救えない……その現実をジャッジ・ザ・デーモン、いや、修司さんから突き付けられた時、僕らは何もしてやれなかった。いや、何も出来なかった。ジャッジ・ザ・デーモンの制裁を必要としている人は世界中に大勢います。そんな人々の救済の事を考えると、上辺だけの理想や正義を翳している自分達では何とも情けなくて……」

「そ、そうかもしれないが……!」

 順一の重みのある話を聞いて反論しようとする真嶋護に、今度はニュー・スターズ総部隊長で鉄人(サイボーグ)のフロートが語り出した。

「確かに。前総長、小田原修司の徹底した悪人狩り……つまり異常者(ヒール)ハントには容赦のない男だった。だが、その裏では二次元人全てが危険視されるのを防ぐ為に少しでも悪意ある二次元人を異常者(ヒール)認定していた面が目立っているのを、おれ達は知っている。そして更に言うと、二次元人が異常者(ヒール)されている裏側で修司は、おれたち二次元人の人権が侵害されないように踏ん張っていた訳だ。その活動の一環としても、ジャッジ・ザ・デーモンという闇からの怪物が生まれた訳だ」

「………………………………」

 二次元人が異常者(ヒール)認定される裏側で、二次元人そのものの人権が侵害されない様にする活動の一環としてもジャッジ・ザ・デーモンは暗躍してたと語るフロートの説明に、真嶋は返す言葉を失ってしまう。

 そんな真嶋に追い討ちをかけるかのように、最後はスター・ルーキーズ総部隊長で鏡の国の王女だったミラールが語り明かした。

「世の中には頭のいい異常者(ヒール)もゴマンといるからね。そんな連中は大抵、法の網目を抜けて悪事を働いて多くの罪もない人々を悲しませる。修司は、そんな立場の弱い人々も救済するべく、制裁の鬼ジャッジ・ザ・デーモンに変貌したのよ。アンタだって、警視時代に悪党が法の網目を抜けて悪事を働いている事実を知らない筈はないでしょ?」

「ッ……!」

 ミラールからの指摘に、真嶋護は表情を歪ませた。

 

 そんな聖龍隊の案内の元、全員が揃って地上に出てきた。

 すっかり日も昇り、眩しい朝日が新世代型達の目に飛び込んでくる。

「なんだい、案外地上と距離が近かったんじゃないか」

「ホント。てっきり、もっと深い地下にデーモンの秘密基地が在るんだとばっかり思っていました」

 意外にも地上とデーモンハビタットの距離が離れていなかった事実に唖然とするギュービッドとチョコ。

 新世代型にプロト世代そして聖龍隊の新人に真嶋護が小田原修司の意外な一面、いや、別の素顔を知って茫然とする中、そんな茫然とする新世代型達の視界に建物の物陰からひょこり姿を現す闇人が新世代型達に嘲笑しながら語り掛けてきた。

「ひゃははっ、どうだい俺様が案内した修司の秘密の棲家デーモンハビタットは! そしてバーンズたち弱小な聖龍HEADが語ったジャッジ・ザ・デーモン誕生秘話……どれもこれも素晴らしいだろ! 全ては正義だ愛だのと、くだらない幻想を並べ立てるHEADに代わって修司が現実的な戦闘を実行したまでの事。すなわちジャッジ・ザ・デーモンを生み出したのは非力で理想論しか語れない下らない正義の概念なんだよ!」

 小田原修司がジャッジ・ザ・デーモンという非情な存在に成ってしまったのは、非力で正義や愛を語る二次元界の英雄達が原因だと説く闇人。

 更に闇人は、自分の子供に話し掛けるかのように新世代型達に語り続ける。

「言っておくが、修司は何もただ弱者を救済する為だけに裁きの鬼へと変貌した訳じゃない。己の中に在る破壊衝動を悪党という対称にぶつける口実として鬼へと姿を変えたんだ……要するに、単に暴力を振るいたかっただけだ! 決してヒーローなんかじゃないから、そこだけは誤解するなよ! マイ・チルドレン!」

 ジャッジ・ザ・デーモンになった背景には、己の中に燻っている破壊衝動を発散したいが為に鬼へと変貌したと語る闇人の言動に新世代型たちは黙然と聞き入れるしか出来なかった。

 

 そんな折、一般の二次元人たちと聖龍隊の新人たちと共にジャッジ・ザ・デーモンの真実を聞かされた真嶋護がバーンズと話し合い始めた。

「……それじゃ、僕はこれで」

「もうユウやニナミ達とは話は済んだのか?」

「ああ、もう一通りの話は済んだ。聖龍隊とスター・コマンドー……これからは双方共に余り衝突せず気長にやっていければいいね」

「あんがとよ。お前さんもアニメタウンに戻って、また今までどおり法律事務所で力なき市民の声に耳を傾けながら、市民を救済していく運命(みち)を進んでいくのか」

「もちろんだ。警視庁を追われた僕に出来るのは、それぐらいの事しかない」

「それはそれで大したもんだ。あ、ところで話は変わるんだが……」

「解ってる。僕も今、二次元界や三次元界が混乱している情勢で、より混乱を招く様な行動はしない。……癪だけど、ジャッジ・ザ・デーモンの真実は今のところ伏せておくよ」

「今のところは、か。お前さんもやはり、デーモンの存在を許せない輩か」

「ああ、その通りだ。確かに正義は曖昧で、不確かなものかもれない……けれど、正義を信じられない人間が人を裁くのは間違っていると僕は思う。いつの日か、小田原修司の原罪を白日の下に晒してみる」

「おいおい、それじゃ新世代型はどうなる? 修司の申し子たるクローンの新世代型には何の罪も無い。それなのに、その新世代型を追い詰めるのは、どうかと思うぜ」

「………………………………」

「それに……修司が二次元人の人権を護る要だっていうのは、お前だって周知しているだろ。二次元人の権限を護る為にも、修司の立場が危うくなる言動は控えた方が二次元人の為に良いのが、現実だぜ」

 バーンズの指摘に、真嶋護は険しい眼差しを新世代型達に向けた。

 真嶋護に直視される新世代型。彼らは真嶋の瞳を見て、彼が小田原修司のクローンである新世代型も心の中ではジャッジ・ザ・デーモン同様に赦せない存在だと認識している事を察して目を丸くする。

 そしてそのまま真嶋は、真実を知っていたにも関わらず黙認していた聖龍隊も、ジャッジ・ザ・デーモンのクローンであった新世代型たちにも挨拶を交わす事無く去っていってしまった。

「……真嶋。アイツは最初、三次元政府に圧制されている新世代型二次元人の行く末を心配して、法律家としてアニメタウンから遠路遥々駆けつけてくれたんだが……始祖である小田原修司の真実を知って考えを改めちまったみたいだな」

「何だか悲しいわ。最初は新世代型の味方になってくれると、私たちと同じくみんなを護ってくれる立場に加わってくれるとばかし思っていたのに、修司さんの真実を知って考えが変わっちゃうなんて……」

 最初は圧政に敷かれる新世代型の身を案じてアニメタウンから駆けつけて来た法律家の真嶋護。しかし彼らの始祖、小田原修司が己が忌み嫌う犯罪者殺しのスペシャリスト、ジャッジ・ザ・デーモンだと知って己の考えを変えてしまった。真嶋はジャッジ・ザ・デーモンと小田原修司そして新世代型を全て同調する思考に変わってしまった。

 

 一方で新世代型達は、そんな真嶋護の冷遇し切った視線を受けて衝撃を感じながらも深く考え込んでいた。

 自分たちの始祖、小田原修司が弱者の救済の為に陰で行っていたジャッジ・ザ・デーモンとしての責務。それに伴う多くの血に塗れた大罪。

 新世代型二次元人たちは、自分達の体に流れる血には脈々と裁きの鬼であり非情の鬼神と言われた小田原修司の血が流れている事を痛感するのだった。

 

 

 

[決意を胸に]

 

 自分達の始祖である小田原修司が世間から恐れられるジャッジ・ザ・デーモンだと知って愕然とする新世代型二次元人たち。

 そんな彼らの元に、現政奉還の混乱で荒れる世界を跋扈していた赤塚大作率いる赤塚組が訪れ、陽気に挨拶を交わしてくれる。

 だが、小田原修司の悲愴な真実を知って途方に暮れる新世代型達の様子に大将たち赤塚組は不思議がる。

 一方で聖龍隊総長バーンズは、大将に新世代型二次元人の保護を頼む。大将はこれを快く承諾。

 こうして聖龍隊と新世代型二次元人達は、再び赤塚組と共に出港した。

 そんな中、新世代型二次元人達が大将たち赤塚組の幹部達に話し掛ける。

「大将さん……!」

「ん? どうしたんだ、お前ら? そんな真面目な顔しやがって」

 いつにも増して険しい面差しを向けてくる新世代型を前に、大将が問い返すと彼らは真顔で訴えた。

「自分達は世界の実情を、現実を知る必要がある。なので、世界をまた巡らせてほしい」と嘆願してきた。

 新世代型たちの嘆願を聞き入れ、彼らの切実で必死の形相を目の当たりにした大将は二つ返事で新世代型たちの嘆願を承諾した。

 

 新世代型達が再び世界を巡ろうと決意したのには理由があった。

 もっと小田原修司を、そう自分達の始祖の事を。その始祖が護ろうとした世界が如何なものかと見定めようと決意したのだ。

「……小田原修司が、非情の鬼神として……そして制裁の鬼にまで成り下がってまで守ろうとしたこの世界がどうゆうものか、僕たちは見定める必要がある……!」

 星原ヒカルの頑な決意に出雲ハルキも同意する。

「そうだな。本当に小田原修司が、非情の鬼へと自らを変えてでも護る価値がある世界なのかどうか、俺たち自身の眼で見定める必要がある……!」

 するといつもは不真面目な真鍋義久も、いつになく真剣な顔つきで宣言した。

「それもそうだ……! アッコさんやバーンズたち聖龍HEADが信頼していた小田原修司が非情な奴に成り下がってまでも、本当に護る価値が世界に在るのか確かめてやる……!」

 そんな男性陣の真剣な顔付とは裏腹に、小田原修司のもう一つの顔を知って悲嘆する女性達は悲しげな面持ちで語り出す。

「でもまさか……あの小田原修司がジャッジ・ザ・デーモンっていう存在にまで成り下がっているにゃんて……」

「私達の始祖たる小田原修司が、非情の制裁鬼にまで変貌してしまった世界の現実を……私たち自身の眼で確かめてみないと、気が済まない」

 新世代型の森園わかなと蓮城寺べるが自分達の始祖である小田原修司と同様に、世界の現実を確かめなければという決意に目覚めていた。

「あのドレフも言っていた……俺たちは小田原修司から生み出された、小田原修司が創造してしまった世界の争いと言う基盤の上で動かされる駒だと。でも、自分達の運命は自分で選ぶって決めた時から、この事実を否定する為にも世間の情勢ってのを知っておかなきゃならねえ!」

 かつての大敵ドレフからの遺言を認めつつも、それに抗う為にも世情を知っておく必要があると説く井ノ原真人(いのはらまさと)

「そうだぜ! オマケに、その小田原修司がジャッジ・ザ・デーモンに成り下がっても、この世界に護る価値があるのかどうかも見定めてやらねえと……!」

 井ノ原真人(いのはらまさと)の説明を聞いて、棗京介も世界の真価について学び得ようと決意していた。

 

 そんな新世代型たちが、自分達の始祖、小田原修司の真実の一つである制裁の鬼について語り合っていると、其処に赤塚組幹部のミズキが話に割り込んできた。

「あなた達」「み、ミズキさん!」

 突如部屋に入って来たミズキに、プロト世代のチョコを始めとする一同は驚く。

 すると部屋に入って来たミズキの口から予想だにしていない言葉が飛び出してきた。

「……今の話ホント? 小田原修司がジャッジ・ザ・デーモンって……」

「ッ! え、え? な、何のことです……!?」

 ミズキに問われて、真鍋義久たち新世代型は一様に動揺する。

 動揺する一同を前に、ミズキは彼らに一つ謝罪を述べた。

「ごめんなさい、あなた達がジャッジ・ザ・シティから解放されてから様子が可笑しかったのが気になって……私の独断で部屋に盗聴器を仕掛けさせてもらったわ」

「!!」

 ミズキが新世代型達の大部屋に盗聴器を仕掛けていた事実を聞かされて、愕然とする一同。

 そしてミズキに小田原修司がジャッジ・ザ・デーモンであった事実を知られて、愕然とする一方で、ミズキは新世代型たちの許に大将や他の幹部達を連れてきて皆で対談する事に。

 大将たち赤塚組幹部はミズキから、小田原修司がジャッジ・ザ・デーモンである事実を聞かされて言葉を失ってしまう。そんな大将たちを前に、新世代型達は身を縮ませて恐縮してしまう。

 そして大将たちは新世代型達を問い詰めて、事の真相を念入りに聴取した。

 ジャッジ・ザ・デーモンの伝説の粗筋を聴いて、大将は険しい面差しで語った。

「アイツは人の何倍も、他人の辛さや痛みを理解していたからな……弱い人間を護る為に、ヒーローとは違う道を辿っちまうんじゃないかって薄々思ってはいたが……まさか、ジャッジ・ザ・デーモンにまで成っちまうとは」

 大将は、旧友である小田原修司がジャッジ・ザ・デーモンにまで変化してしまう現状を驚きつつも受け入れてた。

 自分の親友でもある小田原修司が残虐非道なジャッジ・ザ・デーモンになっていた事に想像よりも驚かなかった大将を見て、新世代型達はきょとんとした。

「た、大将さん達は驚かないんですか? ……小田原修司がジャッジ・ザ・デーモンだった事に……」

 琴浦春香からの質問に、大将以外の赤塚組幹部が口々に話した。

「あの小田原修司は自分の目的達成には……そう、二次元人の未来を保守する為には色んな行いを繰り返してきた。今更、あの男の真実を改めて知ったところで、そう驚きはせんよ」

「テツの言う通りだ。修司さんは自分の目論見を……僕ら二次元人の未来や人権を護る為なら、どんな汚い行為も徹底して行っていた。まあ、まさか世界的にも指名手配されているジャッジ・ザ・デーモンにまで自分自身を変えていたのは流石に予想できなかったけどね」

 幹部のテツと山崎貴史の話を聞いて、如何に小田原修司が二次元人の為に汚い行為も辞さない性分だったのか理解する新世代型たち。

 そんな二人の話を聞いて唖然としている新世代型たちに、大将は真剣な顔で問うた。

「……ところで、お前ら。修司がジャッジ・ザ・デーモンだって知っちまった所で、何ゆえ今更になって世界の実情を知りたくなったんだ?」

 大将からの問い掛けに、主人公達が真剣な顔で答え返した。

「オレ達、小田原修司の末裔として……どんな気持ちで小田原修司が世界を守ってきたのか知りたいんです!」

「本当に小田原修司が自らを汚してまでも世界を……俺達を守らなければならなかったのか、自分の目と耳で確かめたいんだ!」

「そ、そいつは豪気なこったな……でもよ、修司のクローンだからって、その修司の末裔だなんて自分を見下す事はないと思うぜ」

 瀬名アラタや時縞ハルトの決意感じられる言葉を聞いて、大将は愕然としながらも自らの評価を格下げするのは止せと言い返す。

 

 新世代型たちの話を聞いて、大将は彼らにこう伝えた。

「そうだな……聖龍隊の連中は今、対黒武士と足正義輝の軍勢に備えるべく、各地や各異世界の国や組織、そうキャラクター達に参戦を訴えている。その間にお前達は世界の実情を、真実を知りたいって訳だな」

 大将の問い掛けに新世代型たちは一同に頷いた。

「そうだな、う~~ん………………よしっ、こうなったら!」

 しばし考え込んだ大将は、次の瞬間新世代型たちに言い放った。

「それなら、普段は外交官をやっているイギリスのモーリス・ナイロンから話を聞くのが良いかもしれねえ」

 大将のこの発言に新世代型の星原ヒカルが返事した。

「モーリス・ナイロンって……二年前の乱世で。イギリス軍の司令塔を務めた、あの武将の……」

 ヒカルの返事に大将は答えた。

「ああ、モーリスってのは何とも喰えねえ髭面のおっさんだが、外交官としては腕っ節がイイ奴でな。オマケに自慢話が好きだから、奴の武勇伝を聞くのを堪えながら世界の実情を教えてもらえれば儲けモンよ!」

「モーリス・ナイロン……英国一の狐と呼ばれる武将、か。何よりも外交官から話を聞くには中々、段取りが必要となるな」

 モーリス・ナイロンの事柄を聞いて考え込むプロト世代の海道ジンに、大将は心配ないと言わんばかりに語った。

「大丈夫さ、小僧! ちょうど俺たち赤塚組は、そのナイロンのおっさんが欲しがっている異世界からの茶葉を積荷としてこの百鬼命義に載せている! これを手土産にして持っていけば、お前さん達に色々と情報を教えてくれるだろうよ!」

「そういや、モーリス・ナイロンって大のお茶好きとして有名だもんな」

 大将の話を聞いて、プロト世代のギュービッドは納得する。

 と、ここで新世代型たちに話して来た大将が微笑する顔から一変、険しい面差しで新世代型たちに問い詰めた。

「でもよ、お前ら覚悟はできているんだろうな? モーリスのおっさんの事だ、容赦なくお前らに世の中の現実を突き付けてくるぞ。当然、お前等の心を深く抉る様な事実も語る事だろう。それでも、お前等は世界の実情を知りたいのか?」

 この大将の質問に、新世代型たちは真剣な眼差しで答えた。

「俺たち、もう自分の宿命から逃げ出したくないんだ」

「私達が、どんな理由であれ小田原修司のクローンだというのは変えられない事実。その事実から逃げ出さない為にも、世界と向き合いたいんです」

 己の真情を熱く語り明かす真鍋義久と琴浦春香の二人と、その他大勢の新世代型たちの熱意を前に、大将たち赤塚組幹部は彼らの信念を感じ取った。

「……そうか、自分の宿命からは逃げないって決めたんだな。よし! それなら俺達も最後まで付き合おうじゃないか! お前達が俺らの悪友である修司のクローンとしてじゃない、お前達自身と直向きに付き合う為にも、お前等を導いてやるぜ!」

 威勢よく腹を割って自分達を頼る様に言い渡す大将の格言に新世代型たち一同は豪気っぷりに感服する。

 そんな感服する一同を前に、大将は鼻を擦りながら語り返した。

「へへ、人を導くなんて聖龍隊じゃないが……それでも奴らに負けない様にお前らを導いてやる。だからお前らも辛抱しながら頑張れよ!」

 聖龍隊に負けず劣らず新世代型たち若い世代の二次元人を導くと語る大将は、その新世代型たちを激励した。

 

 

 

[闇からの言伝と招集する聖龍隊]

 

 こうして赤塚組は、一路イギリスへと海路を進ませた。

 新世代型二次元人達は、世界の実情を教えてくれるであろうモーリス・ナイロンと対面する機会を設けてくれた赤塚組に感謝しつつ、揺れる船体の上で待機した。

 すると、聖龍隊からの指示で新世代型たちを護衛する役目を仰せ付かった台湾軍国将軍のシバ・カァチェンが新世代型たちに語り掛けてきた。

「皆様方……」「あ、カァチェン」

 暗い面持ちで話し掛けてきたカァチェンに真鍋義久が応えると、カァチェンはそのまま新世代型たちに問い掛けた。

「皆様方は、どうして、そう己自身と向き合えるのですか? 鬼神と畏れられ、人を寄せ付けない畏怖を司る小田原修司のクローンだけでも悲劇だというのに……その小田原修司が、まさか我が国台湾でも猛威を振るっていた制裁の鬼ジャッジ・ザ・デーモンだったという事実を突き付けられた上で、なぜ世界の実情を知り得たいと思えるのですか?」

 カァチェンの疑問が最もだという事を、プロト世代の四人は納得するものの、そんなカァチェンの疑問に新世代型たちが力強く答えた。

「……確かに、僕らが小田原修司のクローンだったという事実だけでも辛いものだよ」

「その上、その小田原修司が実は裏で殺戮を行っていたジャッジ・ザ・デーモンだったっていう事実にも衝撃が走ったのは確かな事だ」

「で、では何故……」

 小野田坂道と幸平創真の返答にカァチェンが再度問い掛けると、他の新世代型たちが答えた。

「辛い時だからこそ、私達は真実を知っておかなきゃならないのよ!」

「私達は単に小田原修司のクローンとしてだけの価値じゃない、自分自身の価値を見出す為にも……現実と向き合いたいの!」

「自分自身の、価値……!」

 薙切えりなと彩瀬なるの言葉を聞いて、衝撃を受けるカァチェン。

 自分達が如何に理不尽な現実に叩きのめされても、その現実から逃れず目を逸らさず、自分の価値を見出そうとする新世代型たちの決心にカァチェンは心を揺れ動かされた。

 しかし、そんなカァチェンの心中を揺れ動かす言動を示す新世代型たちの視界に、またしてもあの闇人が現れて彼らに告げる。

「あの狐野郎のモーリス・ナイロンから世の理を学ぼうってのは良い傾向だな、お前等の父親として鼻が高いよ。如何にお前らが修司の、俺のクローンとして生み出されたのか……如何なる真価を見出されているのか確かめるのも悪くない。だが後悔するなよ、自分達の真価が破壊と殺戮だって知らされても、俺は知らねえからな……なんせ、始祖である修司そのものが破壊と殺戮を象徴する輩だったからな!!」

 自分達の世評を知ろうとする新世代型たちに淡々と狂言を述べていく闇人の言葉に、新世代型たちは険しい面持ちで目の前の闇人を見据えた。

 そんな険しい面持ちで一点を見詰める新世代型たちを見て、闇人が見えない一人であるカァチェンは不思議な面容を浮かべてた。

 

 

 その頃、新世代型たちを赤塚組とシバ・カァチェンに委ねた聖龍隊は、各地・各異世界に赴いて対黒武士の軍勢に対抗する戦力を招集していた。

「……と、いう訳だ。オレたち聖龍隊だけじゃ、どうも心許ない。大戦という争いにお前達を巻き込むのは心苦しいが、どうかオレ達に助力してくれ」

「………………」

 聖龍隊総長であるバーンズは、ある人物と対談していた。

「確かにオレたち聖龍隊は、つい先日までスター・コマンドーと内乱を起こしちまった経歴がある! でも、だからこそ今は共通の脅威である黒武士とその軍勢に対抗する為にも力を合わせ、この難局を乗り越えて多くの友と助け合いたいんだ! 人だろうが魔族だろうが……そして何より、お前たち妖怪とも協力し合って、共に未来を創造しようと思っている訳だ!」

「………………………………」

「この通りだ! オレたち聖龍隊はお前と、お前さんの仲間の力が必要なんだ! 力を貸してくれ、鬼太郎!」

 頭を下げてまで戦力に加わってほしいと嘆願するバーンズに対して、ゲゲゲの鬼太郎は考え込んだ。

 すると此処で、二人の対談を見守っていた目玉のおやじが鬼太郎に助言する。

「うぅむ、確かに黒武士はワシら妖怪の世界にも容赦なく攻撃を仕掛けている厄介な相手じゃ。天狗ポリスも黒武士には真っ向から戦いを仕掛けたが全滅、皆痛め付けられてしまったという。おい鬼太郎、ここはどうじゃろ? バーンズのお願いを聞いてやっても良いんじゃないか?」

「目玉のおやじ……!」

 聖龍隊に加勢する様に息子の鬼太郎に言い渡してくれる目玉のおやじの言動に感激するバーンズ。

 そして当の鬼太郎は、バーンズの嘆願と父親からの助言を聞き入れて返答した。

「……分かったよ、バーンズ。君の要望通り、僕たち妖怪も聖龍隊に全面的に加勢するよ」

「き、鬼太郎……!」

「あの黒武士と真っ向から戦えば、それこそ多大な被害が出るのは目に見えている。平穏を望む妖怪達をそんな大戦に、戦争に巻き込ませるのは考えものだけどね……でも、このままあの黒武士を放っておけばそれこそ世界そのものが滅ぼされかねない。正直、大きな争いには乗り気じゃないけど、あの修司くんが遺した聖龍隊に僕ら妖怪と人間の未来を委ねたいと常々思っていたんだ。協力させてもらうよ」

「お、恩に着るぜ、鬼太郎……!」

 ゲゲゲの鬼太郎たち妖怪の全面協力を受諾できたバーンズは、心の底から鬼太郎に感謝した。

 

 一方、場所は変わって此処は世界の何処かにある秘密基地。

 ここでは聖龍隊参謀総長のジュニアがある三人と対面していた。

「……と、いう訳なんだ。黒武士打倒のためにお祖父ちゃん達の力も借りたいんだ!」

「「「………………」」」

「知っての通り、聖龍隊は先のスター・コマンドーとの内戦で痛手を負ってしまって、以前の様な戦力は出せずにいるんだ。何より、あの強大な力を誇る黒武士の勢力に対抗するには今の聖龍隊以上の戦力が必要不可欠! どうかオールド・ジャスティスにも協力してほしいんだ」

「う~~む、大事な孫のお前さんからのご要望とはいえ、大きな大戦にワシら古き世代の英雄が出しゃばって良いものか」

 ジュニアからの嘆願を聞いて、彼の祖父であるワイルド・J・プラントは大いに悩む。そのワイルドの傍らで同じ様に聖龍隊への協力について考え込む古の英雄ロビンフッドと怪傑ゾロ。

 ジュニアの祖父にして現アニメタウン市長ウッズと聖龍隊特攻決死隊隊長のウェルズ兄弟の父親であるワイルドは、古からの英雄であるロビンフッドと怪傑ゾロと三竦みになって今ではオールド・ジャスティスというヒーローチームを結成して、そのリーダー格にまでなっていた。

 古から伝承される英雄の二人を仲間にするワイルドは、孫であるジュニアからの聖龍隊加勢について深く考えた。

 確かに黒武士の凶行を止める為に、今は集められるだけの戦力をかき集めて、戦力を増加させるのが得策であろうと。だが、今どきの英雄たちに混じって自分達の様な古き世代の英雄がしゃしゃり出ても良いのかと。そして何よりも戦争に参入しても良いのかどうか考え込んだ。

 何よりも黒武士を倒すと言う大義名分がある以前に戦争には違いない。そんな戦争に英雄が加担していいのかとワイルドは思慮した。

 それは孫であるジュニアも同等の考えだった。英雄はあくまでも正義と平和の象徴であり、平和とは正反対の戦争に加担するのは余り快く思われない事だと自覚していたからだ。

 ジュニアからの要望に対して深く考え込むワイルドが下した決断は。

「…………解ったわい、ジュニア。ワシらも古ぼけた時代の輩じゃが、少しばかりの助力には成れるじゃろう」

「そ、それじゃ……!」

 祖父ワイルドの発言を聞いて表情を一変明るくさせるジュニアに、オールド・ジャスティスのロビンフッドと怪傑ゾロが笑顔で言った。

「そうこなくっちゃな! 現政奉還だなんて野暮な流れを作った足正義輝を止めるのも大事だが、その足正義輝の配下である黒武士の凶行を止めるのが何よりも優先だ」

「ワイルドよ、そしてワイルドより大地の鞭を受け継いだジュピターキッドよ。私達も参入には心より受け入れよう。古き世代の英雄たる我々が何処まで力添えできるか解らないが、今の時代を守り抜く聖龍隊に加勢しようではないか!」

「ロビンフッド、怪傑ゾロ……ありがとうございます!」

「がっはっはっ! やはり、こうなってしまうのがオチか。まあ、古株のワシらをどう料理して戦場で使おうか勝手じゃが、一応は多くの英雄たちの始祖に当たるロビンやゾロなんじゃし、大切に扱ってくれよな」

 二人の古参の英雄達の承諾に心より感謝するジュニアに祖父のワイルドが豪傑な笑い声を発しながら古株として大切に扱うよう説くと、ジュニアは「ああ、もちろんだよ」と笑顔で返した。

「……それじゃジュニアよ。ワシらはこれより、更にメンバーを招集してから聖龍隊と合流しようと思う。まずは三銃士の連中にも来てもらおう」

「ああ、ありがとうお祖父ちゃん! コッチもこっちで、色々と準備しておくよ!」

 ワイルドとジュニア、それぞれの祖父孫はこうして一時の談話を済ませて別々の行動へと分かれた。

 

 と、オールド・ジャスティスの基地から遠ざかるジュニアは、颯爽とジュピターキッドに変身して森の中を突き進んでいた。

 するとジュピターキッドの元に、聖龍隊配下の忍が駆け寄ってジュニアに報告する。

「参謀総長、話があります!」

「?」ジュピターキッドが目を横に向けると、忍は更に付け加えた。

「緊急の要件です! 詳しくは密書の中に認めてあるようです。ご確認を……!」

 聖龍隊の機密事項に関する情報は、まず最初に参謀総長のジュニアが確認するのが鉄則。ジュピターキッドは森の中で密書を見通し、非常事態が迫ってきている事を察する。

「た、大変だ……! 新世代型達が危ない!」

 この非常事態に、ジュピターキッドは即座に総長であるメタルバードに通信で報告。

 後に合流した彼らは新世代型達に迫る危険に対して向き合いながら語り合った。

「新世代型の奴らめ……どうして世界が混乱下の状況で、よりにもよってあのモーリス・ナイロンの元を訪れるんだ!? 新世代型を忌み嫌い、狙っている輩がゴマンと居るって言うのに……!」

「今はバーンズ……! 彼らに向けられる刺客を……いや、襲撃の際の扇動者をどうにかしないと被害は英国外交官のナイロン卿にまで及んでしまう」

 頭を抱え込むメタルバードとジュピターキッドは悩み抜いた。そして悩み抜いた結果、メタルバードはある一つの策を思い付く。

「こうなったら……あの男に任せるしか手が無いな」

「あ、あの男って……まさか、バーンズ!」

 一人の人物に着目するメタルバードにジュピターキッドが愕然とする。

 

「あの男……Gに依頼するしかない!」

 

 

 

[優雅なお茶会と二次元人の必要性]

 

 一方その頃。

 新世代型二次元人たちは、赤塚組が異世界から特別な茶葉を英国外交官であるモーリス・ナイロンに献上した事から、彼からお茶会に招かれる事となった。

 赤塚組は、このお茶会でのパーティーでナイロンに色々と質問してみるいい機会だとして、新世代型たちをお茶会に参加させられる服装に変えてもらい、一緒にお茶会に参加する手筈を整えていた。

 着慣れないドレスにタキシードまでも赤塚組が苦労して調達してくれた事もあって、新世代型達はモーリス・ナイロンが開く優雅なお茶会に参加した。

 このお茶会には、新世代型たちを護衛するという意味で、最小限の護衛としてシバ・カァチェンも同席した。

 

「久しぶりだね諸君! まさか吾輩が主催するお茶会に皆揃って出席してくれるとは……大いに嬉しいよ!」

 

 お茶会の主催者であるモーリス・ナイロンは自慢の立派なガイゼル髭をピンッと立て、小指を立てて自家製のブレンド・ティーを一人で先に飲んでいた。

「いやはや、失敬。吾輩特製のブレンド・ティーは実に気紛れでな。ちょっと時間や温度が変わってしまえば、その都度味も香りも変わってしまうんだ。まさしく、二次元人の様に変わり続ける味だね!」

 自慢げにウィンクを飛ばしてくるナイロンの言動に呆れ果てる一同。そんな彼らにナイロンは御声をかける。

「さあさあ、いつまでも突っ立っていないで! 吾輩の特製ブレンド・ティーを堪能してみてくれたまえ! さっきも言った様に、風味が常に変わってしまうから味の保障はできないがね」

 そうナイロンに言われ、新世代型達は恐る恐るまずは目の前に出されたティーカップを手に取り、茶の香りを嗅いでみた。

「……あ、いい匂い」

 予想に反して、匂いは特別悪くも無く却ってよい匂いを醸し出していた。そして更に茶を口に運んで一口啜ってみると、お茶自体の味もそれほど悪くなく、飲める代物だった。

 優雅なお茶会を開けただけでも満足なモーリス・ナイロンと共に出されたお茶やスコーンなどの菓子を堪能する一同。

 しかし此処で大将が、ナイロンに問い掛ける。

「な、なあ、狐のおっさん」

「狐のおっさんとは酷い呼び名だな、赤塚大作! 確かに吾輩の戦法も、外交官としての腕前も、狐の如く騙し討ちで成功を収めているからって、何も狐……それもおっさんは無いでしょ!」

「あ、ああ、悪かったな。な、ナイロン……」

「惜しい。ナイロンさんと目上の者には敬意を払いたまえ。……それで、何の話かね。傍若無人の赤塚組の諸君」

「あ、ああ、実はな……この新世代型達がお前さんに色々と世間の情勢ってのを、アンタから学び聞きたいって言うんだよ。お前さんが良ければの話だが……」

 大将からの要望に、ナイロンはそれまで微笑んでいた表情を一変、目付きを鋭くさせて視界に映る全ての新世代型たちを見回した。

「……フン、まあ、良いだろう。私も前々から常々、修司殿のクローンと話してみたかったのだ」

 ナイロンのこの発言に言い返そうとする新世代型たちだったが、それを赤塚組が宥めては彼らの気持ちを代弁した。

「そう言わないでくれよ。こいつ等だって自分が修司のクローンに近い種族だって知ってショックを受けているんだからよ。もう少しオブラートに包んでもらえねえか?」

「ふむふむ、そうか。それなら吾輩の口が少しばかりお喋りが過ぎてしまったようだな。ホッホッホッホ」

 愛想笑いで誤魔化すナイロンの言動に、皆は少しばかり落ち着いて着席する。

 

 そしてモーリス・ナイロンは自製のお茶を堪能しながら、二次元人たちと対談し始めた。

「ゴッホン。それで、吾輩に何を聞きたいのかね? 新世代型の諸君……」

 ティー・スプーンでお茶をかき回しながら風味を堪能するナイロンに、新世代型が質問をぶつけた。

「何故、僕たち新世代型は生み出されたんですか?」

 この質問に対して、ナイロンは率直な意見を述べた。

「うむ、それはだね……確かに君たちは小田原修司の代用品として生み出されたのが最も大きい余韻の一つだ。だが、それ以前にウィルスやら環境で突然変異して怪物に変貌してしまう異常者(ヒール)の発生を防ぐ為には仕方の無かった事なのだ。知っての通り、小田原修司の遺伝子は如何なるウィルスにも抗体を持つ画期的な細胞を備えていた。その特製を後世の二次元人たちに引き継がせて、凶暴化したり怪物に変化したりする二次元人の横暴を未然に防ぐ効果を期待して、小田原修司の遺伝子配列をモデルに君たち新世代型二次元人が生み出された訳なのだよ」

「要は単に……怪物に変身して自分たち三次元人だけじゃ手が負えなくなる二次元人を減らす為、敢えて怪物にだけは変貌しない二次元人を欲した訳じゃないのか?」

 ナイロンの話を聞いて、凶暴化して手が負えなくなる二次元人を減らす為に、異常者(ヒール)になっても人体を維持できる二次元人の生誕を優先させたのではないかとナイロンに鋭く指摘する真鍋義久。

 この真鍋からの返事を聞いて、ナイロンは咳払いしつつ返答した。

「ゴッホン。まあ、確かに……怪力のイエティや雪男の様な、いわゆるUMAに変貌してしまう二次元人、すなわち異常者(ヒール)の発生にも我々三次元人は頭を悩ませていた。それを打開する為にも、二次元人の遺伝子にはウィルスなどの体外からの影響で変異を起こさない小田原修司の遺伝子が君ら新世代型のモデルに採用された訳だ。まっ、要するに小田原修司は君ら新世代型の始祖、親の様な存在って事だよ。ハハッ」

 苦笑しながら上手く話を纏めようとするナイロンの言動にまたも呆れ果てる新世代型たち。

 そんなナイロンに今度は女性陣が険しい顔色で問い掛けた。

「自分達は本当に、小田原修司の代用品としてしか価値がないのか?」と。

 この不穏な疑問にナイロンは笑いながら答えた。

「わははっ、君たちは自分の価値を其処まで見下しているのかい? 確かに君らは小田原修司のクローンに近い種だと言うことは明確な事実だ。だけど、己の価値は己自身で決めねば何の意味も無い。周りからの評価や基準など、自分が自分自身の価値を計る為の計測器でしかないのだよ。だから君らは君たち自身の道を歩みたまえ」

 このナイロンの話を聞いて、新世代型達は一同に胸を撫で下ろした。のだが

「そもそも、例のルミネ一派の反乱以降、吾輩たち一部の官僚たちは新世代型二次元人への配偶をどうすべきか検討していたんだよ。それで、結局は国連総長に抜擢した足正義輝が、現政奉還だなんて訳の分からない事を始めちゃった訳で、正直新世代型には程々迷惑しているのが現状なのよ」

『………………………………』

 しかしやはり新世代型二次元人を完全に信用できないと説き返すナイロンの話に、新世代型達は黙り込んでしまう。

「いやはや、聖龍隊が掲げる理想を評価しながらも時には現実的に物事を解決する小田原修司の複製品と聞いて、吾輩は大層期待したのだがね。二次元人は理想と平和を象徴すると説いていた小田原修司だったが、時にはそんな綺麗事にも満たない外道な二次元人を容赦なく断罪する彼は……まさしく理想と現実の狭間で力強く葛藤していた人物として、吾輩は高く評価していた。そのクローンたる新世代型にも、同様の期待をかけていたのだが……」

 そう語りながらナイロンは、再びお茶を口に運ぶ。

 そんな高く評価されていた小田原修司と同様の期待を新世代型にかけていたと語るナイロンに、今度はプロト世代の海道ジンが御馳走になるお茶を口元に運びながらナイロンに問うた。

「そもそも三次元人は、本当に二次元人を必要としているのですか?」

 この質問にナイロンは真顔で答えた。

「それはもちろんだよ君! 確か、海道ジン君だったね! 吾輩を始め、世界の多くが二次元人を高く評価している! 君たち二次元人が持つ技術、そして身体能力に高度な思想能力……! これらは全て未来を創り出す上で欠かせない技量と能力なのだよ」

 ナイロンは更に語り尽くした。

「そもそも二次元人というのは、我々三次元人の思想概念から生まれる高度な能力とまだ見ぬ未来を創世する可能性を持った種だと、吾輩は小田原修司から聞いた事がある。人々の喜び、悲しみ……そして怒りや憎しみをも高い感受性で影響される二次元人には無限の可能性があると説かれた!」

『………………………………』

「……しかし、その高い感受性による影響で、二次元人が突如として暴走し、破壊行動を起こしてしまう現象……すなわち、異常者(ヒール)に変化してしまう点が、今のところ問題視されている。感受性の高い二次元人が、三次元人の憎悪や怒りに感化されて普通では起こり得ない異常者(ヒール)という行動に走ってしまうのは非常に残念なところだ」

「……では、既に二次元界の技術を受け継いだ貴方方三次元人は、もう二次元人を必要と見なくなってしまっているのですか?」

 再び海道ジンがナイロンに問い掛けると、ナイロンは優雅に語り返した。

「いいや、それはない。本来フィクションであった二次元人と交流を持つ事によって、我々三次元人には多大な恩恵を受ける事が多々あるからね」

「その恩恵とは?」

 海道ジンが問い詰めると、ナイロンは目を狐の様に鋭くさせて言った。

「……此処だけの話、実はある一人のプロフェッショナルを世界各国の要人達が依頼したいからこそ、二次元人との共生を許しているのだよ」

「ある一人のプロフェッショナル? その人物は、やはり二次元人なのですか?」

 ジンが問い詰めると、ナイロンは答えられる範囲内で答えてくれた。

「うむ、あくまで一般人である君らには話せないが……いいや、君たち一般人は決して知ってはいけない存在であるプロフェッショナルを吾輩たち各国の要人は必要としているのだよ。彼が健在である以上、二次元人である彼の協力を求められる様に、我々は二次元人と共生を保っている訳なのだよ」

「ひ、一人の二次元人が必要不可欠だからこそ、全ての二次元人との共生を許している訳なのか……!」

 ナイロンの話を聞いて細野サクヤを始めとする新世代型一同が愕然とする。

 と、そんなたった一人の二次元人を求める為だけに、二次元人との共生を承諾しているナイロンの様な三次元人の話を聞いてプロト世代のギュービッドが文句を述べる。

「つまり、そのプロフェッショナルの二次元人が居なくなれば、二次元人との共生なんて認められないって事かい! 何なんだい、その二次元人ってのは、いったいどんなプロフェッショナルなんだい」

「ほほほ、それこそ迂闊には喋る事ができない世の事実なんだよ、キューピットくん」

 共生の要となっている二次元人について問い詰めるギュービッドにナイロンは微笑しながら受け返す。

 

 ナイロンが二次元人との世界の共有を果たしている裏側では、一人の二次元人が世界にとって必要不可欠だからと語った後。

 そのナイロンがまたしても狐の様に鋭い目付きで、本気の眼差しで新世代型たちを視界に捉えて言った。

「まあ、あのドレフ将校の様に、自らを神だと自称するような頭が可笑しくなった二次元人の様にならなければ文句は無いのだがね」

 このナイロンの発言に、その場の誰もが衝撃を走らせた。

 するとナイロンは新世代型たちに対して胸に突き刺さる言動を発した。

「吾輩、あのドレフ将校が……そして新世党の面々が宇宙で何をやらかしたのか、知っているのだよ」

 表では人望者に扮して裏では悪名高い新世党の総帥をしていたドレフの事を突き付けられて愕然とする一同。

 そんな一同にナイロンは容赦なく語り続ける。

「そもそも、あの黒武士が世界を荒らし回っていると同時に、政府のトップシークレットも公に暴露してしまった事で、ドレフ将校の悪事も彼の悪行で新世党の面々が宇宙のチリになってしまった事は吾輩の耳にも入っているのだよ」

 ドレフの事も、そのドレフに利用されただけの新世党の面々の詳細も、世界を荒らし回っている黒武士の手筈によって世間に暴露されてしまったが故に、イギリス外交官である自分は元より既に世界中に知られてしまっている事実を語るナイロン。

 そんなナイロンは次に、ドレフと彼に利用された新世党の面々の事を語り始めた。

「君たちも精々、あの愚かな新世党の連中みたくならないよう気をつけたまえ。出る杭は打たれるという日本の諺にもある通り、自分は神だの優れているだのと得意気になっていると痛い目に遭うからね。まっ、連中の様に下らない思想を抱かなければ大丈夫だろうとは思うが……君らも用心したまえ」

 優雅にお茶を啜るナイロンのこの発言に新世代型たちは遺憾を感じたが、何とか反論を耐え忍んだ。

 しかし、このナイロンの言動に遺憾を憶えた一人が立ち上がり、ナイロンに反論した。

「ですが、ナイロンさん! 新世党が抱いていた思想全てが間違った思想を抱いていた訳ではないです!」

「君は確か……ツナアラトくんだったっけ?」

「瀬名アラタです! ナイロンさん、新世党のメンバーが抱いていた思想全てが間違ってたとは言い難いです」

「それはどういう事かね?」

「確かに全人類を支配するとか、悪事を働いていた自分達を正当化しようとしていた新世党の言い分は間違いでした。けれど、そんな思想を抱く面子の中にも、心の中では本当に平和な世を願って、新世党に……あのキャップ・ド・レッドに従っていた二次元人も存在していた事を理解してほしいです!」

 アラタはこの時、新世党メンバーの一人セレディ・クライスラーの事を述べていた。

 しかし、そのアラタの言い分を聞いてもナイロンの考えは変わらなかった。

「う~~む、それなら尚の事、激動する世界に歯向かう事無く穏便に、かつ大人しく過ごしていた方が平和だったのではないのかね? 世直しだと革命だのとほざいて、人命を奪うテロを繰り返す畜生の様に生涯を終える愚か者が正しいとは吾輩は決して思えないのだがね」

「で、ですが……!」

 と、その時。ナイロンに絶えず反論しようとするアラタに海道ジンが睨みを利かせて黙らせた。三次元人の高官であるナイロンを無暗に刺激するのは利口な事では無かったからだ。

 そんな瀬名アラタの言い分を敢えて聞き流したナイロンは、再びお茶を口に運んで優雅に啜った。

 

 痛烈に言葉という刃物で新世代型たちの心中を抉ったモーリス・ナイロン。

 彼の言う通り、新世党は危険な存在だった。それは間違いない。

 だが、そんな新世党の面々でも中には心より平和を、平穏を願っていた二次元人もいた事を新世代型たちは理解して欲しかった。

 

 

 

[狙撃者G]

 

 モーリス・ナイロンとのお茶会という名の対談を終えた新世代型たちは、赤塚組子分達とシバ・カァチェンの付き添いの元、ナイロン邸より出立しようとしていた。

「わはははっ、実に優雅なお茶会だったよ! また吾輩の武勇伝を聞きたければ、何度だって訪れてくれたまえ」

「は、はい……ありがとうございました……」

 得意気に自身の武勇伝の数々を語り尽くしたナイロンは自己満足に浸っている一方で、美都玲奈たち新世代型たちは長々とナイロンの自慢話を聞かされて精神的に疲れてしまっていた。

「まったく、あのナイロンって髭のおっさん。確かに特製のお茶は意外と美味かったけど、自慢話が長いのなんのって……みんなが聞きたがっていた情報よりも、自慢話の方が長かったから疲れたのなんのって」

「ぎ、ギュービッド様、そう不満がらないで下さい」

「せっかく、新世代型のみんながナイロンさんを不満がらせない様に接してくれたんだし、その苦労を無駄にしないで……」

 ナイロンの自慢話の長さを不満がるギュービッドの文句に、チョコと桃花が宥め止める。

 と、皆々がナイロンの自慢話に気苦労していた時、プロト世代の海道ジンが真顔でナイロンに問い掛けた。

「ナイロン郷、先ほど貴方が仰っていたプロフェッショナルの二次元人と言いますと、どんな二次元人なのですか?」

 すると今まで穏やかな微笑みを浮かべていたナイロンは一転、険しい真顔に変貌してジンの質問に返答した。

「……海道ジンくん。世の中には知らなくてもいい事が山の様にある。本来、新世代型二次元人があの小田原修司の遺伝子構造から生み出されたのを知らずに生活していれば良かった様に、君たち庶民には知らなくてもいい事が世の中には存在しているのだよ」

「敢えて事実を公表しないという事ですか」

 ジンが問い返すと、ナイロンは正直に答えた。

「それが国の……いいや、世界の安寧の為に必要な事なら、かえって秘密にするのが得策だという事だよ。例のプロフェッショナルな二次元人は世界的な仕事人、その名を公にするのは暗黙の了解として禁じられているのだよ」

「何だか、ヤバそうな奴なんだな。その二次元人って……」

 ナイロンの返答に新世代型の仁科カヅキが危険そうな二次元人なのだなと呟くと、それにナイロンは返した。

「確かに彼は危険な二次元人と言う意味では、異常者(ヒール)と何ら変わりない。しかし彼に依頼する仕事内容によっては、彼の仕事振りで世界の危機が回避される事も多々あるのだよ。まあ、そういった点では君らの始祖、小田原修司と同じダークヒーロー的なポジションなのかもしれない」

「ダーク、ヒーロー的な、存在……」

 ナイロンが発したダークヒーローの言葉に、一同はジャッジ・ザ・シティで知り得たジャッジ・ザ・デーモンの事が自然と思い返った。

 すると其処に、皆の前で語っているナイロンの背後から、ひょっこりとあの闇人が出現して新世代型たちに語り掛けてきた。

「まったく、このナイロンの自慢話には修司も毎度毎度参っていたぜ。まあ、二次元人共を護る為にもイギリスの要人たるナイロンと親睦を深めていたのが聖龍隊の狙いだったけどな。それにしても、このおっさん、あの二次元人の事までもペラペラと話しちまうなんて……調子が良すぎて、本人に狙われちまうぞ」

 闇人がナイロンが語る世界中から必要とされている危険な二次元人を知り得ている様子に、新世代型たちは視線を送ると闇人は得意気に語り始めた。

「へへへっ、あの二次元人なら修司も何回も接触しているぜ。時には依頼を頼む為に、時には敵として命を狙われたり、護るべき要人を狙うプロフェッショナルとして……修司は奴とは何度も死線を乗り越えてきた。だが、あの男は修司以上に三次元人から……いいや、政府や権力者たちに必要とされてきた。正直、修司の奴が妬むほど、あの男は世界中から必要とされてきた。修司以上に危険で、かつ多くの伝説を成し遂げてきた脅威の狙撃手(スナイパー)としてな……!」

 ナイロンが語り、闇人ことあの小田原修司も熟知している危険な二次元人が狙撃手である事を知って、秘かに衝撃を受ける新世代型達。時には人命も奪い去る狙撃手が世界中から必要とされている事実に衝撃が走ったのだ。

 そんな衝撃を受ける新世代型達に、プロト世代のチョコたちが話し掛ける。

「こ、琴浦さん、みんな……!? 大丈夫……?」

 突然闇人の言動を視認して黙り込む新世代型達を気にして声をかけるチョコの問い掛けに、新世代型達は反応する。

 そんなチョコに続いてナイロンも突如黙り込む新世代型達を気にして、声を掛けてきた。

「どうしたのかね、君たち。突然、石の様に黙り込んで」

 ナイロンの気遣いに、新世代型たちは「い、いいえ、大丈夫です」と、上手く闇人が見える事実を隠しながら受け答える。

 

 と、新世代型二次元人達と対談していると其処にナイロン家に仕える執事がやって来て、主であるナイロンに告げる。

「ご主人様、大臣の皆様方がご到着しました」

「む! そうか、それは忙しくなるな! 済まないが、君らとは此処でお別れだ。今ちょうど次の会談相手である英国首相や大臣達が我が屋敷に到着した様なのだ。では、失礼するよ」

 そう言い残すとナイロンは早々に己が屋敷に到着した英国首相を始めとする大臣一行の元に駆け寄り、丁重に挨拶を述べていく。

「ちぇっ、アタイらとは態度が随分違うじゃないか」

 目上の人物に対してはペコペコと頭を下げるナイロンの態度に、ギュービッドが悪態をつく。

 そんなモーリス・ナイロンを横目に、新世代型一行がナイロン邸から立ち去ろうとした時、ナイロンが出迎えている大臣の一人が不自然に片手を挙げようとした。

 片手を挙手しようとする大臣が、完全に手を挙げようとした次の瞬間。

 一発の銃声らしき音が辺りに響いた。誰もが突然の銃声に一驚し、動揺した。

 すると皆の視線が一か所に集中した。挙手しようとした大臣の額に一発の銃弾が減り込んで、大臣を絶命させているのが目に入ったからだ。

「きゃあああっ!」

 突然の銃撃に悲鳴をあげる新世代型の女子。そして一帯は騒然とした。

「な、何なのだ!?」

 目の前の大臣が突然銃撃を受けて死に絶えたのを目の当たりにしたモーリス・ナイロンは驚愕して蒼褪めてしまう。

 と、その騒動の近場で停車している車の車内でも一騒動起きていた。

「ど、どういう事だ!? 大臣の奴が撃たれたぞ!」

「ど、どうする? まだ新世代型を襲ってないぞ!」

「な、何かヤバい事が起きたに違いない! 此処は一旦、退くぞ!」

 車内で武装している男たちが騒いでいると、そのワゴン車の周辺に無数の武装した警官隊が一斉に取り囲んでワゴン車に拡声器で訴えた。

「逃げ場はないぞテロリスト共め! 貴様らがナイロン邸を襲撃する様に指示されたテロリストである事は通報で周知している! 大人しく投稿しなさい!」

「わッ!」

 突然自分達が乗車しているワゴン車を一斉に取り囲む武装警官隊を前にして、車内のテロリスト達は慌てふためいた。

 その様子を遠くから遠視していた新世代型一行も、この騒動に気付いて衝撃を受ける。

「て、テロリストだって!?」

「そ、それじゃ……ひょっとして、いま大臣が撃たれたのもテロリストの仕業?」

 ギュービッドと桃花・ブロッサムがテロリストの襲撃未遂を目撃して、大臣を撃ったのがテロリストなのかと動揺する。

 するとそんな慌てふためき動揺する新世代型一行の許に、ナイロンが歩み寄っては険しい面持ちで語り始めた。

「ま、まさか……今のは大臣が合図を出そうとして……」

「え?」

 プロト世代の海道ジンがナイロンの発言に反応すると、ナイロンは動揺しながらもそのまま語り明かした。

「じ、実は、君たち新世代型二次元人を狙うテロリストが我が国の要人と結託してると情報を掴んでいたのだ。その要人は今までも国内の機密情報を流していると掴んでいたのだが、まさかこんな形で割り出せるとは……!」

「そ、それじゃ! 今さっき撃たれた大臣が……」

「その通りだ。あの大臣が我が国の機密情報を横流ししていた上に、君ら新世代型二次元人を排除する為にテロリストに吾輩の屋敷を襲撃するよう指示した張本人だ。手を挙げようとしたのは、おそらくそれが襲撃の合図だったのだろう」

「で、でもしかし……それでは誰が大臣を狙撃したんですか!」

 海道ジンがナイロンと話し合っているその時、新世代型二次元人たちの脳内に強烈な刺激が走った。それは驚異的な集中力からなる念動力であり、常人には痺れるほどの衝撃が走った。

「うっ……い、今のは……!」

 脳内に駆け巡る念動力に頭を押さえる真鍋義久たち新世代型。

 そんな彼ら新世代型たちをライフル銃のスコープから視認する人物が、ナイロン邸よりも遥かに遠い地点にいた。

 カミソリの様に鋭い眼光を走らせる、角刈りの大柄な日系人にも捉えられるその男性は、数日前に起きた依頼引き受けの記憶を思い返していた。

 

「……と、いう訳だ。オレたち聖龍隊の諜報機関で入手した情報では、新世代型を排除しようとする英国の大臣がテロリストに襲撃を依頼したらしいんだ」

「………………」

「その大臣は、自分と入れ替わりでナイロン邸から出てくる新世代型たちを襲撃する様に、テロリストに依頼したみたいだ。襲撃の際、合図として挙手するらしいが……アンタにはこの大臣が挙手しようとする寸前、そうテロリスト達に襲撃の合図が来る前に大臣を始末してほしい。この大臣は前々からイギリス内の機密情報も流していて、テロリストとの癒着も確認されている。放っておけば新世代型たちを更に危険に晒すだろう」

「………………」

「この狙撃には、迂闊に新世代型に手を出せば己の命が危険に晒されるというメッセージを世界の暗君達に知らしめる意味合いも込められている。オレたち聖龍隊は今、戦力をかき集めている最中で迂闊に動く事もできないし、何よりこんな危険な任務は若手には負わせられない。アンタにしか頼めない事なんだよ、G13」

「……お前も、修司と同様に依頼するというのか、バーンズ総長。小田原修司の様に、俺と関りを持つと覚悟を決めたのか?」

「……ああ、そうだ。アンタは以前から修司の依頼で多くの人命を奪ってきた。だが、そんな依頼をする汚れ役をもう修司にだけに務めさせる事はさせられないんだ。修司が今、生死不明であるとはいえ、アンタの様なダークサイドの二次元人と付き合わなければ、これからの局面を乗り切る事はできないだろうからな」

「………………」

「どっちにしろ、修司の番は終わりだ! これからはオレたち聖龍HEADが修司に成り代わってアンタに依頼して、二次元人の人権を保守しなければならない! 二次元人は皆、アンタの様に必要と見做されてないからな。頼んだぞ、G」

 

 裏社会で暗躍する名高き狙撃手G13。彼は数日前に聖龍隊総長であるバーンズと密談した時のことを思い返していた。

 二次元界と三次元界が融合した時に、最も世界から必要視されたのがG13という狙撃手だった。

 光あるところに闇がある。

 G13の狙撃の腕前で、激動する世界はどうにか安定を保つ事が出来た。だが、それは同時に多くの命をG13に依頼して抹殺させなければならない事態にも陥っていた。

 今回も聖龍隊総長であるバーンズの依頼を受けていたからこそ、新世代型たちは襲撃を受ける前に事が片付いたのだった。

 

 

[攫われた二次元人たち]

 

 イギリスで開いてくれたナイロンのお茶会で彼から色々と情報を聞いた新世代型一行。

 その終盤で起きた大臣暗殺と、その大臣から依頼を受けてナイロン邸を襲撃して新世代型を始末しようとしていたテロリスト達の逮捕劇を目撃して唖然とする一同。

 そんな混乱の中、モーリス・ナイロンは大臣を抹殺したのが自分も過去に仕事を依頼したG13の仕業であると見抜いていた。

 そして同時に、大臣をテロ発起にまで駆り出したのが新世代型だと悟ったナイロンは、新世代型たちに告げた。

「このままイギリスに留まれば、また同じ事が起きる可能性が非常に高い。早々にイギリスから出国した方が安全だ」として、新世代型たちに国外退去に近い指令を下した。

 目の前で大臣の暗殺と自分達を始末しようとしていたテロリストの逮捕劇を目の当たりにした新世代型一行は、ナイロンの言う通りに赤塚組やカァチェンと共に国外に退去した。

 まるで悪事をした為に国外へ追い出されるかの様に退去した新世代型の中には不満を覚える者もいたが、イギリス国内にまで争いの火種が飛ぶことを懸念して大人しく去っていった。

 

 しかし、全員がイギリスから出国して間もなくの事。

 皆を乗せた赤塚組の船団が謎の軍勢に強襲されてしまう。

 必死に抗戦を開始する大将やカァチェン達。だが、賊の狙いは赤塚組でもカァチェンでも無かった。

 彼らが狙っていたのは、船に搭乗する新世代型二次元人であった。

 突然の襲撃に対して必死に抗戦する赤塚組は、その混戦の最中に新世代型たちを相手の軍勢に連れ去られてしまうという失態を犯してしまった。

 襲撃した敵方の撤退と同時に新世代型たちが攫われた事を知った赤塚組は、急いで敵の船を追う。

 すると敵方の軍勢が逃げ込んだのは、極寒の北極に近い凍て付いた島だった。

 赤塚組頭領の赤塚大作こと大将は、敵方の勢力の危険性に気付いて、聖龍隊に応援を要請。

 そして赤塚組の要請にミラーガールを筆頭とした聖龍隊が応援に駆け付けてくれた。

 だが、この時彼らは知らなかった。敵方の軍勢を裏で指揮している人物が、如何に危険な人物であるのかを。

 

 聖龍隊の増援が駆け付ける前、既に赤塚組は島へと上陸して新世代型たちを救出しようと試みていた。

 島に在ったのは、謎の巨大な研究施設。その中を突き進もうとした赤塚組の目前に、敵方の軍勢が立ちはだかった。

「なんだテメェら! 俺らを赤塚組と知っての狼藉か!」

「へっ、赤塚組なんて怖くはねえ! みんな、やっちまえ!」

 赤塚組と敵軍は島内で激突した。

「このヤロッ」

 眼前に迫ってくる敵兵に対し、大将は一発拳を打ちかます。そしてスグに得物である破槍で前方周辺の敵を蹴散らす。

「この、このッ」

 大将は破槍で周辺の敵を次々に蹴散らしていく一方で、その戦闘状況を監視カメラで監視する者が、島内の拡声器から指示を出す。

「お前ら! 赤塚組なんて野暮な相手は、とっとと追い返せ!」

「チッ、誰なんだ。あの施設の中にいる野郎か……!」

 破槍を振り回す大将は、敵兵に指示を出す声の主が島にある研究施設の中に居るのではないかと顔を険しくする。

 島には猛吹雪が吹き荒び、その吹雪の中、赤塚組は新世代型と敵兵に指示を出す島の主が潜伏してると思われる研究施設に駆け付けようと善戦する。

 

 一方、その研究施設内では敵兵に指示を出している男に抗おうと、戦闘タイプの新世代型が歯向かっていた。

「きゃっ!」

 しかし栗山未来たち【境界の彼方】そして【ガッチャマンクラウズ】の面々が戦いを仕掛けるが、島主である男には全く歯が立たなかった。

「シュロロロロロ! これは面白い。自分の血を結晶化させて武器に変形できる眼鏡の女に、あのガッチャマンの意志を継ぐ二世ヒーローか……コイツはいい実験台になりそうだぜ」

 未来たちを蹴散らした不気味な面構えの男は、不敵な笑みを発しながら自分に歯向かってきた面々を見据える。

 男には鋭利で硬度のある武器や技は全く効果が無かった。何故なら男の体は全身、ガス状に変化して殆どの攻撃が透かされてしまうのだった。

「シュロロロロロ! このおれ、シーザー・クラウンの【ガス】の能力の前では、鬼神のクローンたる貴様ら新世代型すら赤子も同然!」

 不敵に高笑いする男の名はシーザー・クラウン。全身をガス状に変化できる流動体質系の能力者であり、一部を除いて殆どの物理攻撃を無力化してしまう能力者。

 シーザー・クラウンは国連軍に属していた科学者だったが、危険で異常な実験や非人道的な兵器の開発ばかりしていた為に、今や国連軍に追われる立場の男だった。

 そんなシーザーに俄然と立ち向かう栗山未来やガッチャマンたち。だがシーザーのガスを使った技の数々に苦戦を強いられる。

「シュロロロロロ! いくら攻撃しても無駄な事だ! おれ様の体はガス、如何なる刃も武器も、おれ様には効かないんだよ!」

 そう得意気になっているシーザーは、ガスである体を膨張させて自身を巨大化させると自らに歯向かってくる新世代型達を手で軽く払い除けてしまう。

 そんなガス人間のシーザーに、効果があると思われる炎で攻撃しようと、プロト世代のチョコとギュービッドは黒魔法で火炎魔法を使ってシーザーに攻撃する。

「なッ! ひ、火だと!?」

 それは巨大とは言えないものの確かな火の玉が自分に向かってくるのを見て、激しく動揺する素振りを見せるシーザー。

 するとガス人間であるシーザーに火の玉が直撃した瞬間、シーザーのガス状の体に引火したのか、シーザー自身が大爆発。その爆発に火の玉攻撃を仕掛けたチョコやギュービッド、そして戦前で戦っていた未来たちも吹き飛ばされてしまう。

「うわあっ!」

 爆風に呑み込まれてしまうギュービッドやチョコを目の当たりにし、少し離れた所で戦いを見守っていた琴浦春香たちが急いで駆け付ける。

「ちょ、チョコちゃん!」

 爆風に呑み込まれてしまった為に、多少の火傷を負ってしまったチョコたち。そんな彼女達に琴浦春香が声をかけ、意識を定着させる。

 一方、火の玉にガスが引火した事で体そのものが爆発して吹き飛んで、跡形も無く吹き飛んだシーザーだったが、彼はスグに爆発で吹き飛んだ体を再構築させて元の姿へと戻ってみせた。

「シュロロロロロ! 残念だったな、おれ様は確かに全身がガスだからスグに引火して爆発しちまう。だけど吹き飛んだおれの体はスグに再生可能だから何の意味もねえんだよッ!」

 火炎系の攻撃すらも、自分には無力だと得意気に唱えるシーザーは、引火したガスを利用して両手に青白い炎の短剣を自製した。

青炎剣(ブルーソード)!」

 引火したガスを切っ掛けに、大量の酸素を手中にまとめて点火する事で、酸素を完全燃焼させて発生した青い炎の剣としてシーザーは振り回した。

 このシーザーの青炎剣(ブルーソード)に立ち向かおうと、栗山未来は己の血を結晶化させた刃で抗戦しようとするが、瞬時に触れた途端に血の刃は焼き切られてしまう。

 さらにシーザーは青炎剣(ブルーソード)で栗山未来とその傍らにいた一ノ瀬はじめを切り付けようと身構えた。

 非常に高温な青炎剣(ブルーソード)で切られれば、たちまち二人は炎上して只では済まないと愕然とする新世代型たち。

 と、シーザーが青炎剣(ブルーソード)を振り回した瞬間、そのシーザーの前にいた未来とはじめは一瞬で消えてしまった。

「な、何!?」

 青炎剣(ブルーソード)を直撃させる寸前に姿を消した二人を前に愕然とするシーザー。

 と、シーザーが戦闘に参加していない新世代型たちの方に目を向けると、其処には先ほどまで目前に居た未来とはじめの姿があった。二人も何故、自分達が瞬時に移動できているのか理解できなかった。

 そんな二人が混乱している処に、皆の前に新世代型の一人斉木楠雄が歩み出てきた。

「さ、斉木くん……!?」「っ! まさか、今のはあんたが……!」

 未来とはじめは瞬時に察した。今し方、自分達を瞬時に移動させたのは、エスパーである斉木楠雄の瞬間移動による芸当なのだと。

 そんな二人が納得しているのを尻目に、斉木楠雄は眼鏡をかけ直しながらシーザーに物申した。

「貴方が相手という事は、僕自身も黙っている訳にはいきません……何故なら、あなたは僕が最も嫌うタイプの外道ですから!」

 いつになく目付きを鋭くさせて物申す斉木に、親友である燃堂力も唖然としてしまう。

 斉木は、如何に大量の人間を殺せるかでしか研究成果を評価しない非道なマッドサイエンティストのシーザーに多大な嫌悪感を示して静かな怒りを爆発させていた。

「シュロロロロロ! これは面白い、まさかエスパーも新世代型に紛れ込んでいたとは……こいつは大した収穫だ!」

 だがシーザーは実験台として目を付けた新世代型の中に、斉木楠雄の様な超能力者も存在していた事に興奮を隠し切れなかった。

 

 シーザーと一戦始めようとする斉木楠雄に、研究所内にあった武器を手にした纏流子や鬼龍院皐月そして朱鷺戸沙耶が加勢しようと斉木に声をかけようとするが、斉木は真剣な顔で皆に言った。

「皆さんは下がっていてください! 残念ですが、この外道は自慢しているだけあって、刃物や銃器と言った武器は全く効力が出せません。此処は僕一人で乗り切ってみます」

「さ、斉木……!」

「斉木……分かった、だが無茶はするなよ」

 エスパーである自分だけで戦うと唱える斉木に、流子は愕然としつつも皐月は斉木に無茶しない様にと信頼を寄せた。

 しかし一方のシーザーは、性懲りもなく自分に歯向かってくる新世代型達を前に高笑いしていた。

「シュロロロロロ! バカな小僧だぜ、自ずと死にに来るとは……だが、そう簡単には殺さない。お前達は貴重な実験材料……精々、骨の髄までいたぶってやる!!」

 シーザーは大事な実験材料である新世代型達を死なせない程度に斉木と対戦を始めた。

 

 

 

[狂気のサイエンス]

 

 赤塚組を襲撃し、新世代型達を己の研究材料として拉致した狂気の科学者シーザー・クラウン。

 シーザーは新世代型二次元人を用いて、新たな大量殺戮兵器を開発しようと目論んでいた。

 そんなシーザーの研究施設がある島に上陸した赤塚組は、増援である聖龍隊の到着を待つことなくシーザーの軍勢と交戦する。

 一方、新世代型二次元人たちはガス人間であるシーザーに自分達の攻撃が全く効かない状況に苦戦を強いられていた。そんな戦況の中、新世代型で唯一の超能力者である斉木楠雄がマッドサイエンティストのシーザーと一戦を開始した。

 

 その頃、赤塚組はシバ・カァチェンと協力し合ってシーザーの軍勢を追い込み、どうにか研究施設内に突入する事に成功していた。

「テメェら! 急いでシーザーの野郎がいる研究所最深部に攻め込め! 新世代型共を助け出すぞ!」

 いきり立つ大将が先陣を切り、配下の子分達やカァチェンと共に最深部へと攻め込んでいった。

 大将が先導に立ち、一気に軍勢を切り込んで突撃していた最中、此処でようやくミラーガール率いる聖龍隊が増援として駆け付けた。

「大将、大丈夫!?」

「アッコか! 俺達は大丈夫、それよりも施設の中に新世代型共が……! この敵軍を裏で指揮しているのは、今やお尋ね者のシーザー・クラウンだ!」

「シーザー・クラウン……! 国連軍の元にいながら、大量殺戮兵器を作り続けていたっていう、あの……!?」

 ミラーガールは大将から敵軍とその司令塔であるシーザーの事を伝え聞いて驚きを隠せなかった。

 だがミラーガールの増援もあって、一気に戦況は赤塚組に有利な方へと動いた。

「副長! 屋外の敵は全て排除、陣地も制圧しました! あとは研究所内の敵だけです!」

「解ったわ。キリトくん達は私と一緒に研究所内に突入! 大将たちの援護に回るわよ! その他の隊士は研究所屋外の陣地制圧を維持してちょうだい!」

 ミラーガールはキリトやアスナ【SAO】の面々に共に施設内へ突入するよう指示を飛ばすと、彼女たちは吹きすさぶ白煙の如き吹雪を掻き切って施設へと突入した。

「大将、待たせたわね!」

「おう、アッコ! こっちも粗方は片付いた、あとは研究所最深部で部下に指示を下しているシーザーをとっちめれば問題解決だ」

「そう簡単に事が進めば良いんだけど……」

 駆け付けたミラーガールたちに得意気に語る大将の言動に、幹部であるミズキが呆れながらも結果の良好を祈る。

 ミラーガールたちと合流を果たした大将たち赤塚組は、そのままの勢いで研究所最深部へとなだれ込んでいく。

 だがシーザーは大将たち赤塚組が施設内に侵入すればするほど、区画内に自身が精製した毒ガスを散布して赤塚組を追い込む。

「! ガスが充満する! 急いで安全区域まで撤退するんだ!」

 赤塚組幹部のテツが仲間達に指示を出して、毒ガスが充満する前に急きょ安全区域まで逃げ込んだ。

 しかし此処で不思議な事が。ガスが充満していくというのに、シーザー側の敵兵たちは逃げ惑う事なく敵対している赤塚組や聖龍隊士に攻撃を仕掛けていく。

「ど、どうなってやがんだ。敵さん、ガスが充満していく部屋の中から逃げ出すどころか、戦いに集中している……!」

 この大将の疑問に、施設最深部の管制室で新世代型二次元人斉木楠雄と一戦しているシーザーが、監視カメラ越しに熱弁した。

「シュロロロロロ! いくら足掻こうが無駄な事だ! その兵は、おれ様が精製した特別な麻薬で既に精神が崩壊した、おれの忠実な下僕! 言われるがままに敵を殺そうとする超便利な兵隊なのさ!」

「ひ、酷い! 薬漬けにして命令を聞かせるなんて……!」

 このシーザーの熱弁を聞いて、新世代型の瀬名アラタが反論するが、そんなアラタ達を見てシーザーは嘲笑った。

「シュロロロロロ……つい最近まで疑似戦争してた奴らが言うセリフとは思えないな。いいか、どの国も、世界も……命令通りに従う兵士を欲しがっているのよ! このおれ様が作り出す兵器と同じでな! シュロロロロロ!」

 アラタの言動を嘲笑うシーザーの言論に、新世代型一行は怒りに身を震わせる。

「おい、あんたの相手は僕だろう……!」

 そんな下衆なシーザーの背後に回り、超能力で吹き飛ばそうとする斉木楠雄。だがシーザーはガス状の身の軽い身体をひょいと反らして回避すると、斉木に向かって強力な火炎放射を吐いた。

「ガスティーユ!」「ぐわっ!」

 強力な火炎放射を浴びせられ、のたうち回る斉木楠雄。

「さ、斉木!」「!」

 火達磨になる斉木を前にして、愕然とする燃堂力や他の新世代型達。

 一方の斉木は、超能力で前もって体に目に見えないバリアーを張っていた為に大事には至らなかったが、ガスの特性を知り尽くしているシーザーの前では歯が立たなかった。

 すると、斉木と戦っていたシーザーの視界に、逃げ出そうとする新世代型の姿が入ってしまう。

「ぬう……貴重な実験体は逃がさねえ!」

 シーザーは逃げ出そうとする新世代型の目前に移動し、逃げ出さない様に威圧していた。

 と、その時。シーザーが逃げ出そうとした新世代型に意識を向けていると、その隙に斉木楠雄が管制室の制御盤を操作して施設内の拡声器で聖龍隊に呼び掛けた。

「聖龍隊の皆さん! 聞こえてますか!? 僕たちは今、最深部の管制室でシーザーと一緒に居ます! シーザーは危険な奴、彼の部下は全員、薬漬けにされて自我を失っている奴らです! 無意味な戦いは極力避けて、急いで管制室に……!」

「! あのガキ……!」

 勝手に管制室からの拡声器を使用されて言伝に利用される様を見て、シーザーは愕然と怒りに狂う。

 するとシーザーは猛スピードで斉木の元に駆け寄り、彼を殴り飛ばして呼び掛けを中断させる。

「この小僧!」「ッ!」

 殴り飛ばしたシーザーと殴られた斉木の声が拡声器から聞こえて来たのを確認し、ミラーガール達は急いだ。

「全員、敵兵との戦闘は極力避けて! 最深部の管制室を目指すのよ!」

 ミラーガールからの勅令に、隊士一同は合意し、駆け足で最深部へと突き進むのであった。

 

 そんなミラーガール達と大将たち赤塚組とシバ・カァチェンが最深部へと駆け付けている最中、新世代型たちの方は。

「ッ!」「斉木!」

 唯一シーザーに太刀打ちできる超能力者の斉木楠雄が、そのシーザー相手に苦戦を強いられ、追い詰められていた。壁際まで吹き飛ばされる斉木を見て、親友の燃堂も同じ新世代型達も愕然とする。

「シュロロロロロ! 残念だったな、斉木とかいう新世代型! 如何にお前の超能力が強力だろうと、おれ様の天才的頭脳とガス能力の前では無力よ! シュロロロロロ……」

 斉木を痛め付けて得意げに高笑いするシーザー。

 そんな斉木を追い詰めるシーザーに、先ほど火の玉攻撃を仕掛けたチョコとギュービッドが再び黒魔法で火の玉を作り出してシーザーに発射しようとした。

「ま、待ちやがれ! 斉木をこれ以上、いたぶるんじゃないよ!」

 ギュービッドはチョコと共にシーザーに向けて火の玉を放つが、シーザーは火の玉を消失させる為に技を繰り出した。

「シュロロ! 同じ手が通じると思っているのか。無空世界(カラクニ)!」

 シーザーは一瞬で自分を中心とした一定範囲の大気中から酸素を抜き取り、自分に向かってくる火の玉を酸欠で消化してしまう。

「うっ……ぐ……ッ」

 更に悪い事に、発動した無空世界(カラクニ)の影響で、壁際に吹き飛ばされた斉木が窒息し始めてしまう。

「さ、斉木!? どうしたんだよ?」

 共有感知で斉木が苦しんでいる様子を察した親友の燃堂力が呼びかけるが、斉木は自身の周辺の空気が無くなっている事から言葉を発する事ができなくなっていた。

「シュロロロロロ! おれ様の無空世界(カラクニ)は、一定の範囲内なら大気中の酸素を奪う事が出来る! おれの近くにいる奴は、酸欠で苦しむのが道理だし、火の玉なんか酸素が無いから即効で消えちまう!」

 またも得意げに自分の能力を語るシーザーからは夥しい悪意が感じられた。

 そしてシーザーは、酸欠状態で苦しむ斉木の頭を鷲掴みすると、苦痛に歪む表情の斉木に言った。

「シュロロ、惜しかったな超能力少年。だがお前も、お前の同胞達もタダでは殺さねえぞ。おれ様の大事で有益な実験の材料として使い捨ててやるからよ……! シュロロロロロ……」

 不敵な嘲笑を浮かべるシーザーの言葉に、斉木も彼と同じ新世代型は悔む思いだった。

 すると不敵な嘲笑を浮かべたシーザーは制御盤のスイッチを弄って、施設内に更に毒ガスを充満させる。

「もっとだ……もっとガスを充満させて、景色を一変させろ!」

 自製した毒ガスという大量殺戮兵器を得意気に使用するシーザーには、もはや良心の欠片など無かった。

「さァ、もっと見せろ! 地獄絵図を!」

 そしてシーザーは施設内に更なるガスの充満を行うと、施設内の拡声器で内部の聖龍隊や赤塚組に告げた。

「この施設に侵入したのが運の尽きだな。貴様達も、おれの実験体として使ってやる!」

 ここでシーザーは、毒ガスの実験材料になりそうな人材を監視カメラで品定めし始めた。

 そしてシーザーが狙いを付けたのは、聖龍隊に属するアスナとブラック・ロータスだった。

「マズいぞ、こりゃ! シーザーに狙われている奴らを脱出させろ!」

 大将は急ぎ、周辺の敵兵を片付けてシーザーに狙われている二人を現場から脱出させる手筈を行った。

 そして大将とその仲間達は周辺区域の敵を全て一掃して、アスナとブラック・ロータスを脱出させた。

「あ、ありがとうございます。おかげで助かりました」

 アスナ達が礼を述べていると、その様子を監視カメラで観ていたシーザーが顔を歪ませて口走った。

「逃がしゃしねェよ……誰一人なァ!」

 シーザーは此処で、自製した麻薬で自我を失っている兵士に通達すると同時に、自分の方でも制御盤のスイッチで動作を行った。

「もっと広範囲に毒ガスを流し込め! 誰一人、生きてここから出すんじゃねェぞ!」

 シーザーは更に広範囲に毒ガスを流し込もうと画策。

 毒ガス注入完了まで10分のところ、大将が皆に指示を下した。

「ここも危ねェ! テメェら! 死にたく無けりゃ、シャッターの奥まで逃げるんだ!」

 大将は共闘する仲間達と共にガスが注入されない区域まで退避するよう指示する。

 だが、シャッター奥に向かおうとも、そのシャッターが閉じられていて奥には進めなかった。

「シャッターが閉まってて、先に進めない!」

 キリト達が焦っている中、管制室のシーザーは状況を嘲笑ってた。

「シュロロ! 制御は全て、おれの方で操作してるから開きっこないよ!」

 まるで子供の様に小馬鹿にするシーザーの言動に、同室の新世代型たちは苛立つばかり。

 だが、ここでシーザーが見えない位置から部屋のパネルを外して、ケーブルからハッキングしてシャッターの操作を行おうとする瀬名アラタたち【ダンボール戦機ウォーズ】の面々にシーザーは気付いていなかった。

「頼む……ガスが充満する前に、開いてくれ……!」

 彼らは聖龍隊や赤塚組がガスに追い込まれる前に、シャッターを開こうと頑張っていた。

 そして彼らは遂に、シャッターを開ける事に成功する。

「ど、どうなってやがんだ!? シャッターが開いちまったぞ!」

 突然の事にシーザーが理解不能で混乱している隙に、聖龍隊と赤塚組は急いでシャッターの向こう側へと駆けこむ。

「カァチェン、急げ! こっちは時間がねェ!!」

「承知しました……」

 大将はカァチェンを呼び付けると、共にシャッター向こうへと駆けこんでいく。

 戦意中の者は皆、毒ガス範囲外から脱出する事のみを考えていた。

「毒ガスが入ってくるわ! シャッターの奥に逃げ込んで!!」

 ミラーガールの呼びかけに、皆が応える。

「間に合ったわ……! 急いでシャッターを閉めてちょうだい!」

 皆が無事にシャッター奥へと退避したのを確認して、ミラーガールは仲間にシャッターの閉鎖を指示。これに暁美ほむらが手作業で直接シャッターを閉める。

 しかしシャッター奥ではシーザーの兵士達が待ち受けていた。

「くそっ、また薬漬けの奴らと戦うのか……心苦しいが、やるしかねェ」

 待ち受けていた敵兵を前に、大将は破槍を握り締めて応戦する決意を固める。

 

 

 

[マッドサイエンスの顛末]

 

 シーザーが仕掛ける毒ガスから無事に退避できた聖龍隊と赤塚組一行。

 彼らはそのままの勢いでシーザーと新世代型たちが待つ研究所最深部管制室へと駆けこんでいく。

 しかしその行く手を阻むシーザーの軍勢に、ミラーガールが遂に本気を出した。

「邪魔しないで……!」

 ミラーガールが向かってくる敵兵に睨みを利かせた瞬間、大勢の敵兵が瞬く間にバタバタと倒れて気絶してしまう。

 このミラーガールの気迫、いや覇気を監視カメラで視認したシーザーは愕然とした。

「こ、コイツは……! ミラーガールの奴め、あいつも覇気を既に会得していやがったか……!」

「は、覇気?」

 シーザーの言動に、新世代型の真鍋義久が唖然としていると、そんな彼らにシーザーは得意気に語った。

「シュロロ、そんな事も知らないとは……これだから無知な新世代型はダメなんだ。覇気ってのはな、今では主役級の二次元人なら習得していても可笑しくない特別な力だ! 並の人間を一瞬で気絶させる事も可能だし、武器に纏わせればおれの様な流動体質系の能力者にもダメージを与えられる能力。それが覇気だ!」

「つまり……その覇気が使えれば、貴様の様な下衆な輩も斬り捨てられるという事か……!」

 シーザーの説明を聞いて鬼龍院皐月が強面で問い詰めると、シーザーは嘲笑いながら言い放った。

「シュロロロロロ! まあ、生まれて間もない、貴様ら新世代型が使える筈は無ェんだけどな! いくら覇王色の覇気を使いこなせていた小田原修司のクローンでも、そう簡単に覇気が使える訳ねえだろうし……」

 と、シーザーが得意気に語っていた次の瞬間。そんなシーザーの胸元を一筋の閃光が切り裂いた。

「???」

 突如、自分の胸元のガス状の衣服を切り裂かれたシーザーは訳が分からず茫然としてしまう。

「わ、わッ! なんだなんだ? おれの服が……ガスが切られちまった!」

 動揺するシーザー。すると彼の目前に、ガスの衣服を切った人物が仁王立ちで問い掛ける。

「ハァ……今のが、覇気なのだな」

 そう問いかけるのは、施設内に転がっていた日本刀を身構える鬼龍院皐月だった。

「お、お前! まさか既に覇気を……!? いいや、そんな馬鹿な、あり得ん! ついこの間、生まれたばかりの新世代型が覇気を使いこなせているなんて……」

 激しく動揺するシーザーだったが、彼は咄嗟に自分の考えを改めた。

「い、いや待てよ……逆に、小田原修司のクローンだから覇気を既に使いこなせると考えれば……説明がつく!」

 シーザーは再び、新世代型たちと真っ向から向き合って対峙した。

 一方でシーザーは、聖龍隊と赤塚組の連合軍が自分の方へ進軍している事実も見逃さなかった。

「部下共が巻き添えくっても構わねェ…………施設内全域に、毒ガスを流し込んでやる!!」

 シーザーは施設内全域に毒ガスが発生するよう画策。

 しかしその前に、聖龍隊と赤塚組は全力で群がる敵兵を薙ぎ倒してシーザーの元に前進する。

「何をグズグズしてやがる…………こうなりゃ、おれが直接手を下すしかねェな」

 

 一方で新世代型一行は、監視カメラから流れる毒ガス注入完了の区域に倒れるシーザー兵を見て心が痛む。

「お、お前……自分の為だけに兵士を薬漬けにした挙句、それを使い捨てるなんて…………どういう了見だッ!」

 人命を何とも思わないシーザーの悪行に、新世代型の幸平創真が怒鳴るが、それに対して突然怒鳴り込む創真を目前にシーザーは動揺しながらも返答した。

「だ、黙れ! 大量殺戮兵器こそ、おれの実力! 兵士の代わりなんざ、いくらでも調達できるんだ!!」

「そんな……人を使い捨てにするなんて!」

 このシーザーの発言に、チョコたちプロト世代も怒りに震える。

 そんな一同に向かって、シーザーは己の真意を説く。

「黙れ! 人間は皆、本気でテメェの身を守ろうと考えた時、敵を殺す手段を欲する! みんな、おれが必要なんだよ!」

 人が我が身を護ろうと、敵である相手を殺す手段を欲するが故に、己の様な科学者を必要とすると力説するシーザー。

 更に彼は新世代型たちに向かってこう吐き捨てた。

「人間兵器、小田原修司のコピーの癖に、満足に人も殺せねえテメェらの価値なんて……ゴミ以下だ!」

 満足に戦えない、すなわち人を殺せないと新世代型の価値を独断するシーザーの言葉に、新世代型達は愕然とする。

 そんな新世代型達に、シーザーは更に衝撃的な言葉を放つ。

「てめぇら新世代型共から兵器をジャンジャン生み出して、おれは死の国の王となるのさ! シュロロロロロ!」

 新世代型から殺戮兵器を生み出し、己は死の王へと君臨すると自慢するシーザーの言動に、新世代型達は痛ましい思いが込み上げた。

「コイツは…………人が何人死のうと構わないというのか……!」

 人命を奪う事に躊躇しないシーザーの悪態に、真鍋義久は怒りで表情を歪ませる。

 

 すると其処に、今のシーザーの言動を聞いて怒りで血相を変えたミラーガールが到着した。

「み、ミラーガール!」「アッコさん!」

 誰もがミラーガールの到着に心を躍らせるが、当のミラーガール本人は怒りで表情が変わっていた。

「許さない……!!」

 このミラーガールの到着に、シーザーも堪忍袋の緒が切れた。

「邪魔ばっかしやがって! ミラーガール、こうなったらてめぇも実験に利用してやる……!」

 ミラーガールとガス人間のシーザーは闘い始めた。

「おれのガスの前では無力!」

 己はガス人間ゆえに無敵と高を括っていたシーザーだったが、ミラーガールの覇気の前に苦戦を強いられる。

「い、いいぞミラーガール! その調子でシーザーなんか吹っ飛ばせ!」

 新世代型たちからの応援を背に、闘うミラーガール。そんな彼女にシーザーが告げた。

「な、なんで新世代型の連中の為にここまで……!? こいつらはヤバいぞ、信用しない方が身の為だ」

 しかしミラーガールは険しい面差しでシーザーに言い返した。

「そんなの……私が決めるわ!」

 信念に従い戦い続けるミラーガールの気迫に、シーザーはすっかり怖気づいてしまう。

 

 そしてミラーガールの猛攻によって弾き飛ばされるシーザー。

「フガバー」

 ミラーガールによって吹き飛ばされた満身創痍のシーザーは最後の手段に出た。

「ディキショ―、こうなったら…………おれが丹精込めて作った毒ガスよ! おれの力となれッ!」

 シーザーは自らが精製した毒ガスを吸収して、己の一部にした。

「シュロロロロロ! これがおれの……科学の力だ!!」

 人命を奪い尽くすしかない毒ガスを身に纏いながら、シーザーは己の才能に酔い痴れる。

「シュロロロロロ! 貴様らに理解できるか? 一瞬で命を奪い尽くす兵器が持つ科学力……もはや芸術!!」

 このシーザーの行動にミラーガールは更に怒りが頂点に昇るが、そんな彼女にシーザーは言い放ってしまう。

「ミラーガール、おれは遂にお前の婚約者(フィアンセ)、小田原修司をも超える殺戮兵器を作り出した! この感動が分かるか? 人々は偽りの平和を維持する為の力を……絶対的な兵力を、殺戮の力を欲するが為に小田原修司を望み……遂には新世代型というクローンまでも生み出した! だが、このおれならその因果をも断ち切れる……新世代型以上の…………あの小田原修司以上の兵器を、おれ様が生み出したんだからな!!」

 修司も、そのクローンである新世代型も毒ガス同様の兵器と見做すシーザーの言動にミラーガールの堪忍袋の緒が切れた。

 そしてミラーガールは、何を思ったか管制室から飛び出していってしまう。

「おい、どこへ行くミラーガール! 急に腰が引けたか! 結局テメェは名ばかりのヒロインだな!!」

 更にシーザーは言う。

「だがもう、この島に逃げ場など残されちゃいねェんだよォ!!」

 すると管制室から飛び出たミラーガールは方向転換して今し方飛び出た管制室に前を向く。

 そして管制室の出入り口から覗き込んでいたシーザーの目に飛び込んできたのは……。

「テクマクマヤコン……!」

 呪文を呟いたミラーガールが蒼い光に包み込まれると同時に、巨大化していった光景であった。

 愕然とするシーザーの前に現れたのは、なんと機動戦士ガンダムに変身したミラーガールの姿だった。無機物・有機物と何でも変身できるミラーガールならではの荒業だった。

 そしてガンダムに変身したミラーガールは、巨大な鉄の拳をシーザーに向けて殴り付けようと迫る。

「ガンダムだーーッ!!」「ミラーガールがガンダムに変身したーー!」

 まさかの変身に驚愕する新世代型達。

 そしてガンダムに変身して攻撃してくるミラーガールを目前に、シーザーは激しく動揺しながらミラーガールを宥めかける。

「そうだ…………ミラーガール、お前、おれの部下にしてやっても…………!」

 だが次の瞬間、シーザーの顔面に巨大ロボットのガンダムの拳が直撃した。

「イゴベガッ!!」

 殴られた瞬間、奇声を放つシーザーは、そのまま壁を貫通して屋外まで殴り飛ばされてしまった。

 そしてガンダムに変身してシーザーを殴り付けたミラーガールは、ジッと吹き飛んでいくシーザーを見据えるのだった。

 

 

 

[終わらぬ境地]

 

 ミラーガールがシーザーを殴り飛ばした事で、北極寄りの島で起こった戦闘に終止符がついた。

 そして戦い疲れた大将やカァチェンが研究所から出てきた所に、バーンズ率いる聖龍隊本隊が到着し、島に上陸した。

「お前ら! 無事の様だな」

「無事だったとはいえ、危うくガスであの世に逝きそうになっちまったよ……」

 上陸したバーンズは、施設内から命辛々脱出した大将たちに声をかける。

 すると其処にミラーガールがシーザーに連れ去られていた新世代型たちを引き連れて帰還した。

「アッコ、お前と新世代型も無事で何よりだ……」

「ええ、バーンズ。だけど新世代型の心は既にボロボロよ……修司のクローンというだけで、ここまでされるなんて……」

 ミラーガールは小田原修司のクローンというだけで兵器開発の実験材料にされそうになった新世代型たちを健気に思いやった。

 このミラーガールの言葉を聞いて、バーンズも頷いた。

「そうだな……みんな、程々疲れてんだろう。取り敢えず、奴らは聖龍隊の船に乗せるんだ。オレ達は研究施設の調査だ」

 そうバーンズが言い終わった丁度その時、一人の聖龍隊士が数人の隊士を引き連れてバーンズに声をかける。

「総長殿! 新世代型二次元人を船まで誘導しましょうか?」

「そうだな、このブリザードの中だ。そうそう簡単に歩けねえだろうし、補導してやってくれ」

「了解しました」

 隊士に新世代型たちの事を任せたバーンズは、そのままミラーガールと共に研究所の出入り口前まで移動する。

 

「……ところでアッコ。お前さんが殴り飛ばしたというシーザー・クラウンは、どこ行っちまったんだ?」

「は、ははは……それが、私が殴り飛ばした拍子に、どっかに逃げちゃったみたいで……」

「……やれやれ、困ったもんだ……」

 シーザーが既に何処かへ逃げ去ってしまった事を苦笑するミラーガールから聞いて、呆気に取られるバーンズ。

「あのシーザー・クラウンは国際的にも手配されている危険人物。それを取り逃がすとは、どういう了見だ……!」

「は、ははは…………ごめんなさい」

 バーンズからの鋭い指摘に、ミラーガールは苦笑しつつも最後は素直に謝罪した。

 と、バーンズがミラーガールに注意を呼びかけている所に、赤塚組の大将がカァチェンと共にやって来た。

「おい、アッコ、バーンズ。新世代型達は何処にやったんだ?」

「大将か、アイツらならさっきウチの隊士が船まで先導していったよ。あいつらもシーザーに狙われるほど有名になっちまったから、これからが大変だよ」

 バーンズが説明するが、大将は不思議そうな面でバーンズ達に話し返した。

「え? だけどよ、さっきお前さんと一緒に駆け付けた隊士から話聞いたんだけどよ……新世代型の連中は、まだ船に乗っちゃいないみたいだぜ」

「なに? だが……さっき、確かに聖龍隊の隊士が数人ほど引き連れてやってきて、新世代型を誘導してくれたんだが……」

「ど、どういうこと……?」

 大将からの話を聞いて、バーンズもミラーガールも首を傾げるばかりだった。

 

 一方で、先ほどバーンズの許を訪れた隊士の誘導によって大型船に乗せられた新世代型達は、此度のシーザー・クラウンとの一件で更に暗鬱になっていた。

「どんなに足掻こうと……」

「僕は」「俺は」「私は」

小田原修司(おに)の子供……!」

 自分達はどんなに足掻こうと、鬼神と呼ばれる小田原修司の子供、クローンである事実に憂鬱になる新世代型たち。

「琴浦さん……」

 そんな新世代型たちを、悲愴な面持ちで見詰めるしかできないチョコたちプロト世代。

 と、船内の船窓から外を徐に眺めたプロト世代の海道ジンが異常な事に気付く。

「!? どうなってるんだ? 海を渡っているのは、この船だけではないか!」

 本来は赤塚組の船団も一緒に渡航する筈の海路に、自分達が搭乗している大型船のみが渡航している状況に愕然とするジン。

 この異常事態に気付いたギュービッドたちは武器を携帯して護衛に当たっている聖龍隊士に声をかける。

「ちょっと、どうなってるんだい? 大将やカァチェン達とは一緒じゃないのかい?」

 するとこれにヘルメットを被り、素顔を隠している聖龍隊士の一人が返答した。

「ああ、赤塚組やあの台湾将軍……それに聖龍隊とは別航路をゆくさ」

「え!?」

 隊士の返答にチョコが愕然とすると、その隊士達はヘルメットを外して物言った。

「何故なら…………この船は聖龍隊の船じゃないからね」

 そうヘルメットを外して物言った人物達の素顔を見て、チョコたちは衝撃を受けた。

「あ、あなた達は……!!」

 その人物達とは………………。

 

「ひっ、柊恵一!」「柊潤!?」

「ろ、ロリコン野郎!」「兵部京介だ!」

 チョコや桃花、ギュービッドの前に顔を曝したのは、スコーピオン同盟の柊兄弟にギュービッドがロリコンと呼んだ兵部京介だった。

 一同が島から船まで同行していた聖龍隊士がスコーピオン同盟に所属する悪役だと判明して愕然としていると、そこに階段を下りてやってくる大柄な体躯の怪人が三名。

「おうおうおうおう、やけに騒がしいじゃないか。随分と楽しそうにしているな」

 全員がその声の方に顔を向けてみると、其処には階段を下りてきたガイア・スコーピオンの姿が。その後ろからはガイアの側近であるクリスタルとメガロ・スコーピオンの姿も確認された。

「す、スコーピオン同盟!!」

 悪名高いスコーピオン同盟が目の前にいる現状に、一同は騒然とした。

 そんな騒ぎ出す新世代型たちを見下ろしながら、ガイアは平然と銜え葉巻を吹かしながら言った。

「よっ、お久しぶりだな、新世代型の諸君。こうやって顔を合せられるのを楽しみにしていたぜ」

 ガイアが葉巻を吹かしながら話しかけて来るのを前に、新世代型の瀬名アラタがガイアに問い掛ける。

「スコーピオン同盟、俺たちをどうするつもりだ? こんな……」

「こんな、小田原修司のクローンである自分たちを、か? まあ、なんとも下らない価値観で自分を量っちゃってるみたいだね」

「く、下らないだと!?」

 アラタの問い掛けに返答するガイアの言動を聞いて、レドが怒りに震える。

 するとガイアは、そんな怒りが動揺、戸惑いに情事する新世代型たちを前にしながら、吹かしていた葉巻を実弟クリスタルに持たせているガラス製の灰皿に捨てると同時に言った。

「いや、驚いたぜ。まさかアンタらが、あの修司のクローンだったとは……面影もなんも感じないクローンだけど、まさか修司のコピーだったなんてな」

「………………」

 同情しているかのような口調で語るガイアの言動に、新世代型一行は警戒心を張り詰める。

 そんな警戒心を張り詰める新世代型達にガイアは言った。

「まあまあ、そんなに警戒すんなっての。ただちょいとオレ様たちと付き合ってもらおうかと思ってな」

 するとガイアは新世代型達に不敵な笑みを浮かべて告げた。

「まあ、しばらくはオレ様たちと一緒に海上の旅する訳なんだし、仲良くしていこうじゃないか……ひひっ」

 不敵な笑みを浮かべて、今後しばらくは同行しようと宣言するガイアの口振りに愕然とする一同。

 

 果たして、ガイア率いるスコーピオン同盟は何を企んでいるのだろうか。

 

 

 

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