聖龍伝説 現政奉還記 創生の章 作:セイントドラゴン・レジェンド
[向き合う新世代と蠍]
シーザー・クラウンの研究所から無事に生還し、聖龍隊士の導きで船内に誘導されたと思われた新世代型一行。
しかし本当は、聖龍隊士に変装し、自分達の所持する船舶に誘導した悪役同盟スコーピオン同盟の算段だった事に気付き、途方に暮れる一同。
更にスコーピオン同盟が首領ガイア・スコーピオン達は、世界に情報が拡散されているのか既に新世代型二次元人たちが小田原修司のクローンに近い種である事を周知している様子。
以前から、小田原修司と宿敵関係を続けていたガイア達はその申し子とも呼ぶべき新世代型とどう接するのだろうか。
「……いや、まあね。まさか本当にこいつらが……べっぴんのお嬢ちゃん達も含めて、あの厳ついぶっきらぼうな修司のクローンだっていうのかい?」
「半ば間違っていませんよ兄者。彼らの遺伝子構造は、完全にあの修司の遺伝子構造とパターンが近いです。クローンという呼び名はアレですが、鬼神の申し子と云われるだけの事はありますよ」
新世代型たちをセンサーで精密に調査していくと、彼らの遺伝子が小田原修司の遺伝子と酷似している繋がりを兄ガイアに伝えるクリスタル。
と、弟クリスタルの調査内容を聞いたガイアは徐に立ち上がり、自然とがに股の骨格で前方に歩くと同時に新世代型達に歩み寄る。
「ふむふむ……」
ガイアは不思議そうな面差しで新世代型たちを隈なく観察していると、新世代型二次元人の一人である北川イオリが不機嫌そうな顔で言った。
「ちょっと! そんなにジロジロ見ないでくれる? バケモノを見る様な眼で見られたくないわ……怪人って言うバケモノのアンタなんか特に」
以前よりマギウスという異端の存在をも軽視するイオリは、怪人という異端なガイアにも物珍しそうな目で見られたくなかったのだ。
そんなイオリの言葉を聞き入れて、ガイアは面食らった様な顔で話し返した。
「んっ、おいおい、バケモノなんてつまらない価値観は、この世の中には余り通じないぜお嬢ちゃん。今の混沌とした世の中じゃ、バケモノの方が偉く、そして強いキャラ立ちなんだからよ」
喜々とした表情でイオリに話しかけるガイアの言動に、今度はイオリ達の方が面食らってしまう。
更にガイアは新世代型たちを見回しながら、こう伝えた。
「不死性を持っていようと、ヴァンパイアもどきだろうと、能力者だろうと、そんな一括りにしてちゃ世の中つまらない一方じゃないか。みーーんな一纏めして、楽しく陽気に過ごしていかなきゃ、余生がもったいないぜ」
如何なる存在だろうと、一括りにせず全てを一纏めすることの方が余生を楽しく過ごせると説くガイア。
ガイアのマイペースで陽気な性格に、新世代型達が呆然としていると其処にスコーピオン同盟の幹部である兵部京介がやって来てガイアに声をかける。
「ガイアさん、此方の方は準備できました」
「あっ、ロリコン野郎……!」
「だから兵部京介! 名前で呼んでくれよ、ギュービッドちゃん」
兵部の顔を見るなり、ロリコンと呼びたくなるギュービッドに兵部は一々過剰反応してしまう。
「はっは、お前さん達のほうはすっかり仲良くなったようだな」
「って、仲良くなった訳じゃねえよ! ……第一、ロリコン以前に悪党なんかと仲良くなってたまるか」
そんな兵部とギュービッドのやり取りを目撃して、仲睦まじいなと笑い飛ばすガイアに反してギュービッドは悪党と仲良くなりたくないと主張する。
そしてガイアは自分達を呼集した兵部の言伝を聞いて、最下層のフロアから上へと階段を上がろうとすると背中越しで新世代型達に言った。
「お前ら、ちょいと調べるのは置いといて……オレ様たちについてこい」
「おっ、俺達をどうするつもりだ?」
ガイアの呼び付けに真鍋義久が愕然とすると、ガイアは無愛想な面構えで言い返す。
「そんなに驚く事はないだろ。別に、とって食おうなんて考えちゃいねえからよ。それよりもお前ら、とっとと付いて来い」
そう言うとガイアはそそくさと階段を上がっていってしまう。
最下層の薄暗いフロアに取り残された新世代型一行は、この事態に戸惑ってしまう。
「ど、どうする?」
「どうするって……このままじゃ、聖龍隊のところに帰れないし……」
「……と、言うよりも、ガイア・スコーピオンって有名な悪党なのよね。言うこと聞いて大丈夫なのかな……?」
新世代型の瀬名アラタに直枝理樹、そして彩瀬なるの気掛かりが晴れぬ中、他の新世代型も騒然とする。
「果たして、彼らの言う事を聞いて大丈夫なのでしょうか……」
「そもそも! ワタシたち新世代型の存在が危惧されている中で、悪党なんかと一緒に居たら余計に立場が悪くなるわよ!」
「でも、このままジッとしている訳にもいかないでしょうし……ここは何とか場を乗り切る為にも、却って言う事を聞いていた方が宜しいのでは?」
スコーピオン同盟の指示を聞いていいのかと悩む猿田学に対し、大門ジョセフィーヌは悪党と一緒に居る事が後々自分たち新世代型の立場が危うくなると主張。これにイオリ・リン子が場を乗り切る為に却って言う事を聞いていた方が良いのではないかと唱える。
すると、そんな談話している新世代型達に、先に上に上がったガイアが声をかける。
「おおーーい、いつまで待たせるんだ? 早く上がって来いよーーっ」
大声で自分達を呼びつけるガイアの呼集に、新世代型一行は取り敢えずガイア達の言い分に従う素振りを見せる事にした。
「うわっはっはっは! そうかそうか、お前ら自分たちが修司のクローンって知ってから随分と世の中を学ぼうと必死になっていたんだな!」
ガイア・スコーピオンの巧みな話術で、今まで自分たちが体験してきた実歴の粗方を語り明かした新世代型たち。
「ははっ、それにしても……あの狐のおっさん、モーリス・ナイロンの所まで行くとは、結構図太い性格してやんなぁ。そういう図太い所は、修司と似ているな」
ウキウキと子供の様に無邪気な笑みを発散するガイアの口振りに、新世代型一行は悪党集団の首領として悪名高いガイアの想像とは大分違う点にポカンとする。
そんな陽気なガイアに、星原ヒカルがガイアに接近して訊ねた。
「ぼ、僕たちをどうするつもりなんですか?」
するとガイアは真顔でヒカルに返答した。
「ん? そうだな……まずは親睦を深める為にオレ様たちの宴に参加してもらってから……あとは何も考えちゃいねえよ」
「親睦だと? 悪党であるアンタたちと深める親睦なんかない!」
ガイアの返答にレドが反発するが、ガイアはそれでも態度を変えずに言った。
「まあまあ、お宅らも色々と災難には遭って来ただろうけど……ここは水入らず、宴にでも参加してストレス発散しちゃってくだせェよ」
相手の言い分などそっちのけで物事を進めるガイアの一人走り的な言動に、またも新世代型一行は呆然としてしまう。
そんな呆れ果てる新世代型達に弟のクリスタルとメガロが言った。
「申し訳ありません。兄者は一度決めた事は、何が何でも実行したい性分なんです。ここは兄者の我侭に付き合ってください」
「ピ、ピポ、アニジャは楽しい事があるとスグに宴を開く趣味がアリマス。どうぞ皆さんも堪能していってください」
元殺し屋のクリスタルとロボットのメガロの声かけに、新世代型達は心中に暗雲が張り詰めた。
「以前、あなた達は僕らの事を「世界を変える逸材」と語っていましたが……」
星原ヒカルが以前スコーピオン同盟と接触した際、ガイアから言われた言葉を問い掛けると、実弟にあたるクリスタルがそれに答えた。
「私達は確かに、あなた方が世界を変えれる逸材だと思っておりました。ですが、小田原修司のクローンと知った今となっては、その考えは薄らいでいます」
「……やはり、僕たちが小田原修司のクローンというのが引っかかるのですか?」
「それも一理あります。小田原修司は過去に数多くの惨劇や激しい動向を起こしていますからね。そんな人物をモデルに生み出された新世代型に未来を任せていいのか、悪党である私達にも疑念が生じているんですよ」
星原ヒカルからの問い掛けに、クリスタルが厳しい考えを提言すると新世代型達は懸念を募らせた。
そんな手厳しい発言をするクリスタルに、兄のガイアが前を歩きながら話し掛ける。
「クリスタル、そんなキナ臭い話はやめようぜ。三次元政府が人材確保と自分達の権威維持のために生み出されたっていう新世代型の名目なんぞ、話しても胸糞悪いだけだ」
「はっ、申し訳ありません、兄者」
兄ガイアからの言葉に、弟クリスタルは素直に謝罪する。
[料理人ガイア]
そんなガイア・スコーピオンの先導の元、新世代型一行は大型移動船の中を歩き続けた。
「と、ところで……此処は結局どこなの?」
新世代型の森谷ヒヨリの質問に、ガイアが答える。
「今お前らが乗っているのは、オレ様たちスコーピオン同盟の母船、スコーピオン・シップだ。別名、サソリ型超巨大異次元移送船と言ってな、陸・海・空はもちろん異次元までの移行できる万能船で、オレ様たちの移動する拠点ってところだ」
「そんな大層な船に俺達を連れてきて、ホントにどうするつもりだ?」
ガイアの説明を聞いて、井ノ原真人が問い掛けるとガイアは更に語る。
「だから言ってんだろ、単なる親睦会だってよ。それ以上に、新世党との葛藤や三次元政府からの蔑視を受けたお前さんらの気苦労を労ってやる宴でもあるんだからよ」
「そこまで知っているとは……!」
プロト世代の海道ジンが目付きを鋭くさせると、ガイアは真顔でジンに言った。
「なに言ってんだ、とっくにニュースやテレビで話題になっているぞ。お前さん達が中心で起きた事件の報道がよ」
既に黒武士の手筈で世界中に新世党の真実や三次元政府からの圧政が世間に流されていたのだ。
そしてガイアに連れられて、新世代型一行が扉を潜ると…………
「ようこそ!!」
数多くのクラッカーの音が鳴り響き、歓声が轟く中、新世代型一行を出迎えたのは、以前にも出会った事のあるスコーピオン同盟の面々だった。
「お前ら! 出迎えの準備は料理以外、できているんだろうな!」
「できてます、キャプテン!」
ガイアが問い掛けると、スコーピオン同盟の柊兄弟やランダージョにグラスホップが威勢よく返事する。
「よっしゃ! そんじゃ後は料理だな。オレ様がスグにでも拵えてやるから、テメェらは新世代型御一行と待ってろ!」
「了解でーす!」
残った料理は自分が作ると言い出すガイアに、配下のホワイト・ヘアーズ達は笑顔で承諾する。
すると、このガイアの発言を聞いて新世代型の薙切えりなが言い出した。
「料理を最後に残してるなんて……それもあなたが料理する訳!?」
「おうよっ、料理はオレ様の得意分野だかんな。それ以外の準備は仲間達に任せて、オレ様は料理でお前らを持て成そうと思ってよ」
えりなの疑問にガイアは至って真面目に答える。だが、このガイアの言い分にえりなの秘書でもある新戸緋沙子が反論した。
「あなたが調理するですって!? 私達にどんなゲテモノを食べさせるつもりなんですの!」
「そんな、ゲテモノなんて酷いなぁ……オレ様、確かに怪人だけどゲテモノばっか料理する訳じゃないぞ。今日だって厳選した食材を使って御馳走作ろうかと思ってんだぜ」
ガイアが悲し気に緋沙子に話し返すと、スコーピオン同盟の傘下がガイアに味方する。
「そうだそうだ! ガイアの料理はすっげぇ美味いんだぞ!」
「サソリの怪人だからって、偏見持つな!」
「意外に思えるが、ガイアの手料理は確かに美味い」
ガイアに口添えする蛭川光彦に斉藤石雄にピエールたち。
しかし所詮は悪党の言い分、薙切えりなたち新世代型たちは信用できなかった。
「彼らは僕らの言い分を信じてくれてないです」
新世代型たちが自分達スコーピオン同盟の事を信じてない心境をテレパシーで察した兵部京介は、その事をガイアに耳打ちする。
新世代型たちが自分らの言動を信じてないのを耳にしたガイアは、渋々ながら新世代型一行をある所に連れていく。
「其処まで言うなら……お前達に厨房を見せてやるか」
そう言ってガイアが案内したのは、スコーピオン同盟の母船内に設けられてる巨大厨房だった。
厨房は確かに整備されている、清潔面でも文句なしのしっかりとした厨房だった。
「……厨房だけは、しっかりしているわね」
「厨房だけじゃねェ、食材だって活きの良いのを揃えてるぜ!」
えりなの提言に対して、食材も素晴らしいのを揃えていると言うガイアが指し示したのは紛れもなく厳選されたマグロや食肉、野菜といった食材だった。
「確かに……食材もまともだ」
「でも、どうせ……どっからか盗んできたモノじゃないか?」
選りすぐりの食材を自分達の目で確かめていく幸平創真、だがタクミ・アルディーニは食材は何処からか盗んだモノだとガイアを睨み付けると、ガイアは頭を掻きながら渋々答える。
「あ、ああ…………実を言うと、買ったばかりじゃ足りないから、盗んできたのも何点か……で、でも仕方ないんだよな。手配されている以上、店先で仕入れる事もできないから盗みで量を調節する必要もあるんだ。どうせオレ様たち、表を歩けない悪党だもん」
捻くれてしまうガイアの話を聞いて、唖然としてしまう新世代型達。
そんなガイアの言い分を聞いて、新世代型の【食戟のソーマ】組が(やれやれ)といった感じで行動を開始した。
「……そんな悪党の作ったモン、安心して食えっか。俺たちで作った方が何倍も安心だぜ」
この幸平創真の発言に、ガイアは目を細めて言った。
「ほほう、それじゃ……此処は一つ、新世代型の料理人が如何な腕前かご披露してもらおうじゃないか」
「良いぜ、俺たちの腕前、見て驚くなよ」
こうしてガイアは幸平創真たち【食戟のソーマ】組に調理を一任させた。
「ジャンルは何でもいい、皆で揃って食える料理なら何でもいい。此処にある食材を残さず使って調理してみろ」
ガイアからの注文を受けて、幸平創真たちは食材の調理を開始した。
「旨味の乗った部分を、たっぷりと……!」
幸平創真たち【食戟のソーマ】組は皆、手際よく食材を次から次へと調理していく。その様子をガイアは黙って見続けた。
そして創真たちはそれぞれ、自分の得意とする料理を完成させる。
「どうだ、見たか!」「こんな手料理、アンタなんかに作れる筈ねェだろうが!」
食戟組が拵えた料理の数々を黙視していたガイアだったが、徐に動き出すと厨房の収納スペースから自分専用の包丁の数々を取り出すと台所に広げた。
「へえ、包丁だけは良いの揃えているわね。だけど柄の部分がボロボロじゃない」
「オレ様の手じゃ、持つというより挟んで扱っているからな。柄だけはどうもスグに痛んじまう」
えりなからの嘲笑に、ガイアは包丁をハサミの手で挟み持ちながら答える。
するとガイアは包丁を手元に置いたまま、先ほど食戟組が調理した食材の残骸を自身の目の前に持ってきた。
「……全部、使えって言ったのに。もったいねェことしやがる」
もはや身という身は全て削ぎ取られて骨だけの状態になったマグロを前に呟くガイア。
「……何をするつもりだ?」
皆が唖然としている最中、次の瞬間ガイアは身という身を全て剥ぎ取られたマグロの骨を叩き切りミンチ状にしていった。
「アイツ、まさか……」「俺達が使わなかった部分を……!」
幸平創真たち【食戟のソーマ】のキャラ達はガイアの真意を察して愕然とした。何故ならガイアは食戟組が残した食材の残骸で料理しようという魂胆だったからだ。
「マグロの骨と頭は叩き潰し……腸はすり潰す」
そう説きながらガイアは器用に骨と頭を叩き潰すと、次にすり鉢でマグロの腸をすり潰す。
その手際の良さに、食戟を観戦していた他の新世代型一同が騒然とする。
「野菜スープと練り合わせて……油で揚げる」
食戟組が残した野菜を煮込んだスープと下拵えしたマグロを練り合わせて、カラッと油で揚げるガイア。油の火加減は、自らが尻尾から噴き出す炎で細かく調整できる芸当まで見せ付ける。
更にガイアは食戟組が使わなかった肉の脂身までも惜しむ事無く使う。
「肉の脂身はトロ~り溶けるまで煮込み……」
その溶けた肉の脂身に、ガイアは貝殻で出汁を取ったスープと絡み合わせる。
「貝殻で出汁を取ったスープと絡ませて、揚げ団子にかける……」
貝殻の出汁と脂身のスープをマグロの肉団子にかけるガイアは、かっこよく料理道具を回しながら説く。
「……腸の苦みが食欲をそそり、濃厚な味が疲れた体に生気を潤す」
そう唱えるガイアは次に、食戟組が使い捨てたジャガイモ・人参・牛蒡などの根菜の皮に下味をつける。
「……と、油っこいメインディッシュには、さっぱりとした和え物が必要だ。牛蒡、ジャガイモ、人参、そういった根菜の皮には中身以上の栄養が詰まっている。心身ともに疲れ切った連中には理想的な栄養源だ」
そう説きながらガイアは下味をつけた皮を細かく切り刻んで和え物にする。
「ブロッコリーの芯は香り高いドレッシングとして使えば……」
ガイアはブロッコリーの芯から作ったドレッシングをサラダなどの野菜料理にかけて料理を完成させた。
巧みなガイアの料理の腕前、そしてその厳つい風貌からは想像できない見栄えのいい料理の数々に脱帽する一同を前に、ガイアはお気に入りの葉巻を取り出すと語った。
「オレ様たちは所詮、悪党。食材だって、手に入る時と手に入れられない時がある。料理が美味いに越した事はないが、食材が尽きるのが一番面倒なんだ」
「!!」
ガイアの言い分に、痛烈な衝撃を受ける薙切えりなたち食戟組。
「どんなに安価だろうと高価だろうと、食材は一辺たりとも無駄にしちゃいけねえ。どんな食材も残さず愛を注ぐのがコックだろうよ。レディーの全てを愛する様にな…………オレ様を育ててくれた、おっかさんからの受け売りだがな」
そう語り終わると、ガイアは取り出した葉巻を自らの炎で着火させて銜えた。
ガイアの調理が済んだのを皮切りに、食に飢えていた新世代型たちの男子達が堪えられない心境でガイアの料理に飛び付いた。
「うおおーーっ!」
「今まで、食った事のない味だ!」
「こりゃ、性がつくぜ!」
群がる男子達の歓声を聞いて、創真は実に悔しがった。
「クソ、食材の残骸にあんな料理の仕方があったとは……!」
悔しがる創真に続いて、丸井善二も途方に暮れた。
「俺たち、いつも用意したりされたりしている食材を使って調理するしかしてこなかったから、余った食材を使うまで頭が回らなかった」
寄りにも寄って怪人、それも悪党たるガイアに感服するしかない結果に、悔しがる面々。
そんな彼らに、ガイアは葉巻を蒸かしながら笑顔で言った。
「はははっ、そんなにしょげ込むなっての。オレ様が勝手に余った食材の残骸で料理しただけなんだし、勝ったの負けたのなんて基準つけるんじゃねえ。しいて言うなら、引き分けって所で良いぜ」
ガイアのこの悪気のない発言に、食戟組は学ばせられた。
そんなガイアの料理の腕前を見せ付けられた薙切えりなは、怪人が作ったとは思えないガイアの手料理から放たれる輝きに一驚するばかり。
そんな彼女を目視して、ガイアはえりなの肩を引き寄せて共に肩を並べて彼女に言った。
「さあってと、えりなお嬢様! オレ様の腕前を披露した事だし、此処はオレ様たちスコーピオン同盟との饗宴をご堪能してもらいましょうかっ!」
「っ………………!」
馴れ馴れしく言い寄ってくるガイアの言動に、えりなは驚きつつも先ほど見せ付けられたガイアの腕前に唖然としている事もあったためか大人しくスコーピオン同盟との饗宴に加わる事に。他の面々もえりな同様、ガイアの料理の凄さに愕然として素直にスコーピオン同盟との饗宴に興じた。
[恨むけれど恨まない]
「それじゃあ……新たな時代に生まれた、あの忌まわしき小田原修司の申し子として生まれた新世代型にィーー……」
『乾杯っ!!』
ガイア・スコーピオンからの音頭に、その他のスコーピオン同盟の面々も陽気に杯を振り上げて乾杯の音頭を取る。
グイっと杯を飲み干していくスコーピオン同盟の面々に対し、唖然としている新世代型一行にガイアの弟クリスタルが言葉をかける。
「安心してください。皆様方の年齢を配慮して、あなた達の杯はジュースにしてあります」
子供用の杯にはジュースが注がれていると告げるクリスタルの横では、既に陽気に酔っぱらっているガイアが強引に美都玲奈やイオリ・リン子を引き寄せてお酌をさせようとする。
「まあまあお二人さん、今日は無礼講で行きましょうや。ほらっ、グイィっと飲んで辛かった事は忘れましょうな!」
ガイアからの半強制的な酒飲みに、玲奈もリン子も困惑するばかり。
「って、いい加減にせんか!」と、梓川水乃と梓川雪乃がハリセンでガイアの後頭部を叩き付け、彼の半ば強引なお酌を阻止する。
「ごっめんねぇ、ガイアの奴、調子に乗っちゃって」
「時々、あたし達がぶっ飛ばさないと図に乗るのよ」
「は、はぁ……」
自分達の首領でもあるガイアを難なくハリセンで叩き上げる雪乃と水乃の姉妹にリン子は茫然としてしまう。
そんな時には上下関係を越えて互いに意気投合するスコーピオン同盟は、新世代型一行に平然と接し話し掛けてきた。
「それにしても……まさか君達が、あの修司のクローンだなんて今でも信じられないな。こんなにも可愛いのに……」
「い、色目使っても意味ないですよ……っ」
半ば口説き文句にも近い台詞で話し掛けてくる【シュガシュガルーン】のピエールの言葉に、思わず見惚れそうになるものの自分の意識をハッキリさせようとする月影ちありは半ば困惑してしまう。
「そうだな。あの小田原修司とは似ても似つかないキャラクターだし、何かの間違いだと思ってしまうけどな」
「そうであったなら、どれだけ心が安らぐ事か……」
間違いだと説く【ゼロの使い魔】のワルドの言葉に、森谷ヒヨリは思わず暗い面差しを浮かべてしまう。
「おいおい、そんなに暗くなるなお嬢ちゃん! 小父さん達なんか、出生記録も何もかもを抹消されてこの世に居ない存在にされちゃっているんだから」
「そうそう、私達みたいに世間から抹消さえてないだけ、まだマシよ」
そんな暗い面持ちになる森谷ヒヨリに、ホワイト・ヘアーズの練馬琢也と大橋マヤが元気づけようとする。
「そうだ、元気だせ! オレ達みたいに国から……アニメタウンから追い出されちゃいないんだ。まだまだ先がある!」
「潤の言う通りだ。君達は僕たちの様に、未来を閉ざされた訳でもない。まだ先行きがあるんだし、そう落ち込まない」
「……出生記録を消されたり、アニメタウンを追われた身の上である、あなた達に励まされてもな……」
柊潤と柊恵一の兄弟に励まされても、そうそう元気が出ないと気落ちする細野サクヤ。
「ほんじゃ、何かとね? おまはんらは新世代型じゃなく、プロト世代っちゅう訳かいな」
「そうだよ。アタシ達は琴浦とは違って小田原修司の遺伝子をモデルに生み出された訳じゃ無いんだよ。ホント……三次元人も酷なことしてくれるよ」
訛り口調で話し掛けるグラスホップに、プロト世代のギュービッドがドリンクをコップに注ぎながら文句を垂れ流す。
そんな時には励ましや、馴れ合いを重ねてくるスコーピオン同盟を目の当たりにして、新世代型一行は疑問に思った。
「……あ、あの……」「? なんでェ、美少年」
直枝理樹の問い掛けに、騒音の中でも微かな彼の声を聞き分けたガイアが訊ねると、理樹はガイアたちスコーピオン同盟に話した。
「あ、あなた達は僕らを、その………………恨んでいないのですか?」
この直枝理樹の質問に、スコーピオン同盟は一同一瞬ばかりポカンとしてしまう。
「? ……なんでオレ様たちがお前さん達の事を恨まなきゃならないんだ?」
当然の如くガイアが訊き返すと、今度は共有感知で意思が疎通している新世代型の一人、棗鈴がガイアたちに言った。
「私達は、あなた達を何度も殺そうとした……いいえ、殺そうとする前から、出生を消したり国から追い出したりした、あの小田原修司のクローンなのよ。私達を恨まないの?」
この棗鈴の、いいや新世代型の意見を聞いたガイアたちスコーピオン同盟の面々は一瞬きょとんとするが、スグに笑い飛ばした。
『うはははははは……っ』「な、何が可笑しいんです?」
爆笑で笑い飛ばすスコーピオン同盟の面々に理樹が困惑しながら問い返すと、思わず笑い上がって涙を流すクリスタルが自分達に真意を語った。
「いやいや、ごめんなさい。余りにも唐突過ぎて……そ、それは皆さん、新世代型二次元人が全員思っている事と受け取って良いのですね」
「え、ええ、そうですが……」
クリスタルの質問に棗恭介が答えると、ガイアが笑いながら真面目に答えた。
「ははは……っ。それが新世代型二次元人にある共有感知って能力だな。確か、お互いの意思を共有する事で簡単に意思疎通できる能力だと聞く。そうだったな、兵部」
「ええ、それで間違いありません。彼らの意思は、潜在意識の奥から何らかの形で繋がっていて、それで互いの意思が疎通できるのだと思います。おそらく、元を辿れば小田原修司の特別な遺伝子が影響してると思われます」
「そうか、なるほどな。でも、いくら修司のクローンだからって、お前さん達を恨む様な筋違いで無粋な真似はオレ様たちしないぜ」
兵部京介からの仮説を聞いたところで、ガイアは新世代型たちに例えクローンであろうと、それで恨むのは筋違いだと新世代型たちを恨んでいる事を否定する。
更にガイアは修司のクローンという事で苦悩している新世代型たちを前に、力説を始めた。
「それにだな! お前さん達は勘違いしているかもしれないが、オレ様達は別に修司を恨んでいる訳じゃないぜ」
「え! でも、ガイア・スコーピオンにスコーピオン同盟は昔、小田原修司と戦ったって聞いているっすけど……」
ガイアの力説に訊き返す燃堂力に対して、ガイアはその答えも力説で語る。
「確かに! オレ様達は修司の作った
力説するガイアは更に語り続ける。
「……だけどな、オレ様達は今だからこそ思える。あの修司は本気で二次元人の未来を考えていたからこそ、
『!!』
ガイアの力説に静かな衝撃を受ける新世代型一行。ガイアは更に語った。
「修司は全ての二次元人を護れるほど強くはなれなかった。だから一部の、行動が異常になっちまった二次元人を処罰する法案を作ってしまったんだ。その仕組みは実に鮮やかで、課せられた罪に応じて服役とは別に多額の罰金も支払われるシステムだった。これにより国政は潤う事となり、後に他の国々……日本なんかも排除法を受け入れて今でも多くの人命が消えていく時代に変化しちまった……」
『………………………………』
「……だけど、今では修司のその考えは間違ってなかったのかもしれないと思う! 確かに、ここには過去の悪行で出生記録を消されたり、祖国であるアニメタウンを追放された者たちも数知れない。けれど、コイツ等やオレ様たちの様な悪役を庇護する様な真似をすれば、他の大勢の二次元人にまで火の粉が降りかかる可能性だってあるんだから」
新世代型一行に力説するガイアに続き、ガイアの実弟であるクリスタルも向かい側の一点を見詰めながら語り始めた。
「私も今では小田原修司の政策は、ただ彼の潔癖症だけの問題では無かったのかもしれないと思います。確かに何らかの罪を犯した人間は罰するのが世の道理ですし、何かしらの制裁が必要なのも今では納得しています」
一点を見詰めるクリスタルの重みのある話に誰もが聴き込んでいた中、次に義弟であるロボットのメガロ・スコーピオンが統計を表した。
「ピ、ピピ……現に小田原修司が作り出した法案で、世間の犯罪率が激減、そしてテロが起こる確率も大分下がったと言われております」
メガロの犯罪率の統計が出されたのを見て、法案で出生記録を消された上にアニメタウンからも追放されたホワイト・ヘアーズの北川と東山薫子も昔を思い返しながら語り出した。
「もう私達は国に帰ろうとは思わない。以前、聖龍HEADから国に帰ってもよいと言われたが、もうアニメタウンに私達の居場所はない」
「どんなに今の情勢や聖龍隊が変わっても、私達が過去に犯した罪が消える事は一生ない。今後も私達は、自分の犯した罪と一生向かい合いながら、その罪を背負っていかなきゃならないのよ」
「そんな……何もそこまで思い詰めなくても……」
北川と薫子の話を聞いてプロト世代のチョコが余りの思い詰めに悲観していると、【桜蘭高校ホスト部】の須王静江とエクレール・トネールが言った。
「無用だよ、アタシたち悪党に同情なんか」
「私達は所詮、過去の罪で小田原修司に徹底的に嫌われた者。もうアニメタウンに帰る気も起きないわ」
二人の発言にチョコは胸が締め付けられる。
するとホワイト・ヘアーズの団長を成り行きで任せられている蛭川光彦が断言した。
「確かに最初は小田原修司だけを非常に恨んだよ。アイツのせいで俺たちの人生は狂っちまったんだからな。……けど、ガイア達と世界を巡れば巡るほど、排除法は小田原修司の影響だけで成り立っている訳じゃないって気付いたんだ。凶悪犯から多額の罰金をせしめて設ける政府のお役人、そして二次元人全てを危険視する三次元人の存在……俺たち
「……そ、其処まで思い詰めて、生きているのが辛くないですか……?」
蛭川光彦の話を聞いて不安げに訊ねる琴浦春香の質問に、光彦本人は黙然と黙り込んでしまう。
そんな黙り込んでしまう光彦に代わって、ガイアが琴浦春香の顔に己の顔を急接近させて代弁した。
「確かにオレ様たち悪党が生き辛い世の中になってしまったのは確かだ。けれど、オレ様たちは今を生きている! 今を自由に謳歌している! これ以上の幸せがあるか!? 聖龍隊が正義、ジャッジ・ザ・デーモンが制裁を唱えるなら……オレ様たちは自由を説く!」
「フゥーーーーッ!」「イエーーィ!」
自分たち悪党は自由なのが特権だと説くガイアの力説に、周囲のスコーピオン同盟の面々は一斉に歓声を挙げた。
過去に全てを奪われ、危うく命をも奪われそうになったが、そこをガイア・スコーピオンによって救済された多くの悪役たち。
悪党を毛嫌いする小田原修司の政策で、出生記録を消され、国をも追われる身となったが、まだ己の心身は、命は健在。
そんな自分達は正義でも無ければ、法律をも打ち破る、自由を掲げてこれからも力強く生きていくと説くガイア・スコーピオンたちスコーピオン同盟の面々に新世代型一行は圧倒されてしまう。
[許し切れない鬼神への想い]
しかし、そんな小田原修司の行為を全て許せないと唱える者がスコーピオン同盟には健在してた。
「だけどガイア! あの修司が多くの二次元人を護る為に、一部の二次元人を狩り取る
そう主張するのは、最近になってスコーピオン同盟の傘下に加わったアルセーヌたち怪盗帝国の四人。
ガイアは自棄に苛立つ四人を不思議そうに眺めては、宥める様に言い回した。
「なぁにをそんなに怒っちゃってんだ? せっかくの美顔がもったいないぜ、アルセーヌ。怒るとシワが増えるだろうし」
「ふざけてる場合じゃないでしょ! 私たち四人は、過去にあの国連軍の赤犬に正体を暴露された上に危うく殺されかけたのよ! 悪役はその場で容赦なく断罪の形でマグマで溶かそうとした赤犬の所業を赦しているのも、結局は排除法が根本でしょ! それなのに……」
「だからって……修司ばっか責めても、今の情勢もとい排除法が消える訳じゃないだろ」
「!!」
「確かに修司が表舞台から消えて、今躍起になっているのが赤犬だ。奴の容赦の無い正義で、どれだけの人命が日々失われているか見当もつかない。けれどな、その赤犬を自由にさせ、自分達の懐が温まる算段を取っているのは今や修司ではない……国家、いや世界そのものだという事を忘れるな」
ガイアからの鋭い指摘に、アルセーヌたちは黙り込んでしまう。
そんなアルセーヌに、兵部京介が問い掛ける。
「前々から思っていたけど……アルセーヌ、君たち怪盗帝国が恨むべきなのは強いて言うなら国連軍の赤犬じゃないかい? 君らは僕らと違い、赤犬によって居場所を奪われたんだろ?」
すると兵部に問い掛けられたアルセーヌは、自分たち怪盗帝国の真意を皆に述べた。
「確かにそうですわ。私たち怪盗帝国が学園に居られなくなったのは、赤犬の卑劣な手段でですわ。……けれど、その赤犬を国連軍の元帥に抜擢させた流れを作ったのは、元はと言えば
「そ、そうなんですか……! あの赤犬が元帥に抜擢された陰にも、小田原修司の影響が……?」
アルセーヌの話を聞いて新世代型の瀬名アラタが一驚すると、アルセーヌはアラタを睨み付けながら更に述べた。
「その通り! あなた達の始祖、小田原修司はテロや犯罪者にも徹底的に強い組織を世界と結託して創り出す為に、国連は今までの軍の構成を一から見直して最強の軍隊を結成したのよ……それが今の国連軍よ!」
『………………』
唖然とする新世代型たちにアルセーヌは語り続けた。
「国連軍は小田原修司の提言で変わる前は、世界の軍事体制に意見できないよう限られた権限しか持っていなかった。でも、今の国連軍は自分達こそ絶対の正義と自らを美化させて世界中の至る所に出撃できるまでに権限が大幅に変わってしまった……! 時には凶悪なテロリストから、私たち少数の
「だ、だけど……結局は
アルセーヌの話を聞いて直枝理樹が疑問を問い掛けると、アルセーヌは険しい表情を歪ませて絶句してしまう。
そんな彼女たち怪盗帝国の言い分を聞いて、ガイアがアルセーヌに言った。
「アルセーヌ、お前達の鬱憤は前々から聞いているからオレ様たち十分解ってるよ。……けどな、オレ様たちゃあくまで悪党。悪党に落ちぶれたにはそれ相当の理由が自分にあるのを解っているんじゃねえのか? お前さん達が以前から、学園では主人公達を含めて周囲を誑かして偽りに満ちた生活を送ってたのは事実だろ」
「そ、それはそうだけど……!」
ガイアからの手厳しい指摘にアルセーヌは返す言葉が見付からなかった。
そんな悔しがるアルセーヌた怪盗帝国を尻目に、他のスコーピオン同盟の面々は口を零していく。
「今さら小田原修司への恨み言を言ってもなぁ……」
「もう小田原修司なんて関係ない。
恵一と潤の柊兄弟は、既に
「文句を言ったって、もう修司にも排除法をかき消す力は残ってないんだよ」
「そうね。もしかして修司も、今では後悔しているかも。排除法を制定した事を……」
新入りの怪盗帝国の愚痴の多さに、梓川水乃と梓川雪乃も口を零し始める。
そんな同盟仲間の言い分を全て聞いて、ガイアが全てを纏めた。
「要するにだ。怪盗帝国は、まだ
「は、はぁ……」
ガイアの纏めを聞いて、新世代型達は茫然とする。
スコーピオン同盟の大半が、今では自分達を追い詰め、居場所も奪われた
そんなスコーピオン同盟の話に耳を傾ける新世代型一行に、すっかり白髪になってしまっている蛭川光彦が呟いた。
「俺たちはもう、小田原修司を恨むのを忘れた。いや、恨むのに疲れたんだ。……あいつは、愛する二次元人の為ならいくらでも恨みや憎しみを浴び続けてきた人間だったからな。今さら、俺たちの恨み言なんか耳にタコができるほど聞き飽きているだろうよ……」
蛭川光彦の何処か寂し気な面差しから感じられる空虚な感覚に新世代型一行は唖然と固まってしまった。
自分達の始祖、小田原修司が
その一部始終を聞かされ、新世代型二次元人たちは考えさせられた。
こんな気さくな人々を窮地に追いやった小田原修司と、彼が施行した
すると、そんな自分達に同情しようかという新世代型達の思考をテレパシーで読み取った兵部京介が徐に告げた。
「君たち、また僕達に同情しているのかい? さっきガイアさんも言った様に、僕らは所詮どう足掻いても
笑顔で語り掛ける兵部京介の言葉を聞いても尚、新世代型たちの心は重く険しいものだった。
[過去の聖龍隊を知って]
と、淡々と小田原修司について語り合うスコーピオン同盟は、そのままの流れで話の矛先がその修司が執筆したという自伝小説に流れ着いた。
「……修司といえばさ、あなた達は例の小説を読んだかしら?」
「読んでいるみたいだよ、水乃。彼らは生まれ付いてから、やはり始祖である小田原修司に何かしらの関心があった為か、全員がその自伝本を携帯しているみたい」
「えっ、ホント!? あなた達、自分達が修司のクローンだって知る前から、自伝本読んでいたの?」
新世代型達に訊く梓川水乃に超能力者の兵部京介が話しかけると、水乃は目を丸くして驚いた。
小田原修司が書いたという自伝本、それは同時に聖龍隊の結成時の話も綴られた話で、一種の聖龍隊の伝説も纏められた本だった。
その中で小田原修司は、自らが発達障害者である事実も載せている事に、世界は驚愕したという。
そんな修司の自伝本を、普段は本を余り熟読しないガイアが仲間から聞いた十代前半の修司の言動に対して笑い飛ばしながら語り始めた。
「それにしても……アニメタウンに市長として来た時の修司は、馬鹿にテンション高いよな!」
『無駄にテンション高い!』
アニメタウンに市長として赴任し、引っ越してきたばかりの修司が今の様な陰キャラの様な立ち振る舞いとは正反対に、異様に気持ちが昂っていた頃があったのだとガイアも他のスコーピオン同盟も高々と声を挙げる。
「ウッズに二次元界のヒーローのこと調べてもらう前に、三次元人なんだから、とっくに情報掴んでいるはずだろうがッ」
『そうそう!』
「アッコとのくだり、完全に恋愛物ノベルになっちまってる!」
『思い出を美化しすぎ!』
「バーンズの最初の偽名が変身怪獣だなんて……」
『カッコ悪すぎ!』
「年代が90年代なのに、ゲゲゲの鬼太郎が平成版の第5期から引用されているのって、可笑しくね?」
『可笑しい可笑しい!』
「だけどアッコの姉ちゃんのくだりは……しんみりする!」
『うんうん……』
「今は現役バリバリで副長にも出世したミラーガールって……意外と創設メンバーでは最後に入隊しているんだよな!」
『そうそう!』
「そんでもってアッコの母ちゃん……何気に聖龍隊を酷使してる!」
『納得納得』
「アッコを敵キャラに襲われた時の修司って……めっちゃヤバい!」
『マジマジ……っ』
「そんでもってミラーガールに変身できたアッコって……何気に活躍しすぎ!」
『そうだよね~~』
「そんでもって、変身してからも何気にアッコと修司って……」
『仲がいい!』
「でもでも、やっぱ怒った修司は昔から色んな業を背負い過ぎちまっている……」
『………………………………』
聖龍伝説序章「始まる伝説」を読んでみた感想を赤裸々に語るガイアたちスコーピオン同盟の台詞と言動に唖然とする新世代型一行。
ガイアは更に中編である聖龍伝説二章の感想も熱弁し始めた。
「最初の修司とアッコが見た予知夢……あれってヴァルツが修司に植え付けた殺戮陽動プログラムで暴走した時の光景だよな?」
「ええ、聖龍隊の女性達は皆、予知夢を見て未来の危機回避能力を得ると言われてましたが……まさかミラーガールが最初に、それも寄りによって小田原修司が暴走した時の記憶を垣間見るなんて……」
兄ガイアの疑問に、弟のクリスタルが聖龍隊の女性に授かっている予知夢による危機回避能力でミラーガールが未来の記憶を垣間見た情景に驚きを隠せなかった。
「そんでさ、あの気さくな爺さん、ワイルドも何気に登場したのが面白かったな!」
「そういや、そうだ。あの爺さん、僕たちに対しても気さくに接してくれるから何かと面白味があるし、まさか自伝小説にも出てくるとは思ってなかったから意外性高かった」
「でも、ジュピターキッドに変身する為の鞭を孫に授けたんだから、確かに重要な場面には違いない」
笑顔のガイアに、気さくなワイルド・J・プラントの登場場面に評価を下す兵部京介に続いて、シルクァッド・ジュナザードも重要な場面だと説く。
「でもよ、いくら敵が自然破壊していたからって、無差別に痛め付けるのはどうかね……」
「これについてジュニア氏は小説が世に出た後に記者の前で、「あの頃は変身したばかりで気が立っていた」と弁じています」
「でも驚いたなか。まさかジュピターキッドにセーラー戦士全員を叩きのめせる実力があったとはぁ……」
「いくらセーラー戦士が弱い地の理を持っているとはいえ、戦士をみんな倒せちゃうとは……人は見掛けに寄らないニャア」
敵方が自然破壊をしていた理由で痛め付けていた当時のジュピターキッドの行為に難色を示すガイアに、クリスタルが後にジュニアが記者に語った当時の真意を代弁した。それでもセーラー戦士を全員倒せるほどの実力を持つジュピターキッドの地の理にグラスホップもランダージョも驚きを隠せない。
「でもよ、自伝小説の間に出てくる骨休みの小話では割といい話もあるよな。「雨と家族と花言葉」アレは意外と気に入ったぞ」
「家族愛すら感じることが出来なかった小田原修司ならではの表現ですよね。確かに良い話でした」
ちびうさと修司がメインの小話「雨と家族と花言葉」の情景を想いつつ、感傷に浸るガイアとクリスタル。
「でもまさか、ミラーガールのコンパクトの力には死ぬはずだったキャラの運命を捻じ曲げてしまう力もあったとは……!」
「今では、その綻びで世界が混沌としちまっているが、アレで良かったのか考えもんだよな」
ナースエンジェルが死んでしまう運命を捻じ曲げてしまうミラーガールのコンパクトの力に一驚してしまうメガロとガイア。
「そんでそんでさっ、まさかの展開! あの怪盗一味やシティーハンターの面子まで聖龍隊と接点があったなんて……!」
「昔から色々と凄かったんだね。ルパン一味にシティーハンターたちは……」
目を輝かせて聖龍隊と共闘したルパン一味とシティーハンターの面々の活躍にまるで乙女の様に瞳を煌めかせる梓川雪乃と梓川水乃。
「そんでもって、疾風の決意でようやくバーンズの本名も明らかになったな!」
「ああ、キングズだなんて、さも王族みたいな名前だ」
疾風の決意で明らかになったバーンズの生い立ちと本名に、スコーピオン同盟は笑い飛ばす。
「そんでもって真夏のバカンスじゃ、ようやく聖龍隊とその関係者が勢揃いって感じでな」
「最初、あの修司がアッコちゃんにボコボコに殴られた展開には爆笑したけど、それから後の二人は何気に仲良かったのよね」
聖龍隊メンバー総出で出かけた真夏のバカンスを語ろうとするガイアに続き、梓川雪乃がその話での修司とアッコの仲睦まじい表現を称賛する。
「でもその次の話の、襲い来る闇は衝撃的でした。まさかあの闇人が既に聖龍隊の目の前に現れるなんて……」
「修司も当時から安眠剤なんかの薬を処方してもらっていたみたいだし……あのキーオが言っているように、やはり二次元界の筋書きを変えてしまった故に何処か狂い始めてしまったのかもしれない」
既にその存在が明白になる前から聖龍隊の前に姿を見せた闇人の存在に一驚するクリスタルに続いて、蛭川光彦は当時から薬を処方してもらっていた小田原修司の存在が二次元界を大きく変えてしまった余韻なのかもと項垂れる。
「アッコちゃんのお母さんの過去にも衝撃が走ったわ。まさかアッコちゃんの前に、死産してしまった女の子がいただなんて……それであんなにアッコちゃんを可愛がっていたのね」
「その夥しいほどに注がれる家族愛に、修司は密かに嫉妬していたから複雑だよな……一方は姉の死で愛情を注ぎ込まれた女の子、もう一方は障害ゆえに家族愛を感じにくい性分の少年で……なんか居た堪れないぜ」
加賀美家の人間が何ゆえアッコに愛情を注いでいたのか、その真意を知って悲愴感に満たされる梓川水乃に対して、ガイアはそんな家族愛を注ぎ込まれるアッコに密かに妬みの感情を抱いていた修司を悲観する。
「ピッ、ピポ……バーンズの側近にあたるチップバードがネット世界で初接触した事で、コレクターユイたちも後々聖龍隊に勧誘される事になりました……ッ」
「ネットという仮想空間で戦う運命の二次元人を、現実の世界でも戦えるようにしちまったのは、どう考えても業深いけどな」
メガロが発する話に、ガイアはより二次元人を争いの渦中に巻き込んでしまう顛末に至る所業に複雑な心境を覚える。
「加賀美あつこの存在が危うくなった時に、その他の変身ヒロインやキャラが消滅しかけたのは驚きだった。……まあ、彼女は変身ヒロインの始祖、何かあったら彼女を祖とする変身系のキャラクターに危険が及ぶのは目に見えている」
「下手したら、魔法系の私たちも存在が消滅してしまう惨事だったわ。……でも、それとは関係なく小田原修司がアッコちゃんを大事に思っているのが感じられたわ」
第二章の「友に知られた素顔と英雄達の異変」を読書して、ワルドとフーケは二次元人の大半が消えてしまう非常事態と如何に小田原修司がアッコを大事に思っているかが読み取れた。
「十五夜の怪奇では、またしても闇人が登場したよな?」
「ええ、しかも彼の出現でちびうさちゃんが未来に帰れなくなって、それで最後まで聖龍隊に居続けたんでしたっけ」
満月の夜に未来に帰還しようとしたちびうさが、闇人の登場により帰還できなくなった「十五夜の怪奇」についても語り合うガイアとクリスタル。
「そして遂にウッズが異次元の世界と繋がる事ができる異世界亜空間ゲートを造り上げ、修司達はボスコアドベンチャーの世界に到着! だけど其処ではパンサークローも魔法騎士の三人もやって来てドタバタ!」
「命の泉に己が身を捧げたアプリコットもアッコのコンパクトの力で復活して大混乱! 挙句の果てにはフォンテーランドがパンサークローに乗っ取られる始末」
「王国は取り戻せ、パンサークローの怪人も倒せたけど……フロークは死んじまって、アプリコットも新しい己の運命を受け入れて修司達と共に新天地へ……まさしく波乱万丈だ」
敵や後に仲間になる魔法騎士が登場する大展開に半ば興奮状態になる柊潤に対し、冷静ながらも語り明かす兄の恵一。そして最後に兵部京介が物語の顛末を語って話を締め括る。
「まあ、アプリコットも修司たちの協力で新しい世界に順応していけたから良かったじゃないか。悲恋失恋は心に突き刺さるが、それを生きる糧にもしないとな」
兵部の話の締めくくりを聞いて、ガイアが平然とばかしに語り出す。
「さらにもう一つ……今は赤塚組の幹部の一人に納まっている秋夏子の運命も変わった事で、二次元界と三次元界を支える軸が乱れてしまった」
「キャラクターの死だけじゃないわ。本当は繋がる事のない敵組織同士が結束してしまったのも、修司の介入による変化の兆しよ」
かつて聖龍隊に敵対していたパンサークローと天狗党の結束が、二次元界の運命を大きく変えてしまった余韻であると練磨琢也と鈴木マリナが説く。
「そんでもって、パンサークローと天狗党との最終決戦! ウッズを痛め付けられた修司はカンカンで敵本部へと単身乗り込んだ! 後を追って他の聖龍隊も駆け付ける、まさに見せ場!」
「無事に二つの敵勢力を倒す事に成功した聖龍隊でしたが……最後に修司から言い渡された世界の命運を賭けた大決戦に皆巻き込まれる……!」
兄ガイアと弟クリスタルは怒涛の展開を語り継ぐ口調で新世代型たちとの話に花を咲かせようとする。
が、ここでガイアが抑えていた欲求を爆発させるかの如く、興奮しては床に転がり始めた。
「そしてそして! なんとなんと、此処でようやくちせちゃんが登場! 待たせやがって、まったく……っ」
「あ、兄者……」
「ガイアさん、ホントに最終兵器のちせが好きなんだから……」
熱烈なちせのファンであるガイアの興奮状態に、クリスタルも兵部も呆れてしまう。
「でも、まさか修司が幼い頃から世界との繋がりを重点に聖龍隊を動かしたり、仲間を集めていたのには驚きだぜ……」
「意外と計画性が……いや、策士だったのかもしれないな。小田原修司は」
潤と恵一が語り合い始めると、其処にメガロが自伝本の書き方について評価を下した。
「ピッ、ピポ……しかし、登場キャラ達ごとに視点を変えて執筆しているのは良くできています。小田原修司だけでなく、当時の聖龍隊隊士の心情も表現されています」
作者である小田原修司の視点だけでなく、他の聖龍隊メンバーの視点からも物語が綴られている表現に評価を示すメガロ。
「セーラー戦士、キューティーハニー、カードキャプター、ナースエンジェルにしんせん組、コレクターズに魔法騎士、そしてちせちゃん達の視点からそれぞれの始まりの物語が綴られているのは、オレ様も面白いと思う」
あまり本を読まないガイアの知ったかぶりな意見に、他のスコーピオン同盟の面々は薄ら笑いを浮かべる。
「……それにしても、闇人も酷だよなぁ。敵キャラに自分達の運命を……自分達が元から倒されるだけの存在だって教えた上で復讐劇をさせるなんて」
「それは聖龍隊だって同じでしょ。自分達が創り出された創作のキャラ、存在だって知ってどれだけ衝撃を受けた事か……」
ガイアが闇人によって復活させられた敵キャラの真情を語っていると、クリスタルがそれは聖龍隊も同じだったと説き返した。
「アッコも悲惨な運命を背負わされちまったよな。まさか自分の存在が、戦う宿命を背負ったキャラを生み出す始祖だったなんてよ」
「そうですね。彼女の存在から変身ヒロインが生み出され、多くのキャラクターを戦いの渦中へと引き摺り込んでしまう流れを生み出してしまったんですからね……」
「それを結果的に知らせちまった修司も、その修司から生まれた闇人も……どっちも罪深い事をしてくれだぜ」
「ですが、それは小田原修司が発達障害という人とは違う心を持っているが故に、闇人も自分達には人心を手に入れられないと断言してしまっているんですよ」
「それもそうだが……だけどよ、自分達の今までが物語という予め与えられた筋書きだと知って、あのシュウジもちせちゃんもどれだけ苦しんだ事か……」
「そうですね。今の二次元界の様に、自分達が創作上の存在だと初めて知ってしまったキャラ達には、これ以上ない理不尽ですよね」
気高き二次元人の物語で、最後の場面で二次元人達が自分達が創作上の存在だと知って蒼然とする展開に、悲痛な想いに駆られガイアとクリスタルたち。
「闇人も、修司同様、自分を嫌っている傾向が見られるから複雑な心境だわ。あのアッコちゃんの鏡の様な瞳を直視する事ができないなんて……」
「よっぽど自分を嫌っていたんだね……今でも修司は自分を嫌っているみたいだし」
障害者である自分を嫌っている傾向のある修司とその分身である闇人の境遇に、雪乃と水乃は語った。
「弱い自分自身と向き合う事ができなかった修司の、弱い心が闇人を生み出した。聞くところによると、修司は今でも鏡を直視するのができないらしい。鏡の中の自分と向き合う事ができないらしい。そんな心の弱さが闇人を生み出す亀裂に繋がっちまったんだろう」
ガイアは自分と向き合う事ができない修司の弱い心が、闇人を生み出す亀裂を生じさせたのだと説いた。
そして最後にガイアは、それまで聖龍隊を、二次元人を騙してきた修司に対して意見を述べた。
「そして最後には、自分達を欺き続けていた修司に対して慈しみの心で受け入れてあげたちせちゃんやアッコの寛大さにオレ様は心底惚れたぜ」
ガイアの言い分に、スコーピオン同盟の面々は誰もが納得した。
聖龍伝説三部作を熟読して、初めて知り得た小田原修司と当時の聖龍隊メンバーの心境を豪く評価するスコーピオン同盟。
彼らの話を聞いて、新世代型たちも改めて人の心を惹き付ける小田原修司と聖龍隊の物語に痛感を覚える。
例え聖龍隊、いや二次元人に創作上の存在だという事実を突き付け、更なる戦いの境地へと導いてしまった小田原修司と闇人の存在が自分たち新世代型の始祖だったとしても。
[闇人と蠍]
小田原修司が執筆した聖龍伝説の三部作の内容を語り合って、スコーピオン同盟の宴は更に盛り上がった。
そしてその中で、ガイアは昔の修司とアッコの関係性を知って、こう述べたのだった。
「そうだな、修司が
新世代型たちがこの発言に愕然としていると、ガイアは更に続けて述べた。
「修司は多くの二次元人の始祖であるアッコの幸せを願って排除法を制定したのかもしれねェ。多くの戦う宿命にある変身ヒロインの始祖であるアッコが、少しでも平和な想いに至れる様にと、修司は排除法を施行して半ば強引にも平和な世を創りたかったのかもしれねェ。……まあ、結果は散々だけどよ」
平和を望むあまり、強制的な施行の上で排除法が制定された事から今でも多くの人命が奪われる法律になってしまっていると説くガイアの説明に、その法案を施行した修司のクローンである新世代型たちは複雑な想いに駆られた。
かつて少年だった男は、たった一人の少女だった乙女の為に、多くの命を狩り取る法案を作ったのだろうか。
美しい景観を護る為に、多くの命を摘み取る法案を施行して、少女の安寧を願ったのだろうかと。
そんな想いに駆られる新世代型達だったが、其処に彼らの視界にあの男が現れた。
「ひゃっはっは、やけに懐かしい話題で盛り上がってくれているな。サソリの連中……」
それは他でもない、小田原修司のもう一つの人格である闇人その人だった。
「懐かしいねえ、昔の俺と聖龍隊の死闘。俺が聖龍隊の連中に、テメェらは物語だと事実を突き付け、戦意をもみ消そうとしたんだが……結局アイツらは偽りの
かつて自分と修司そして聖龍隊との死闘を語る闇人の言動を聞いて、新世代型達は何故か全身が硬直してしまう。
「修司を知ってどうする? ただ悪戯に俺様に近付くだけだぜ。この俺、闇人様にな。それ以前に、コイツ等サソリの連中を信じて良いのか? 所詮は
不敵な嘲笑を浮かべる闇人の言動に、新世代型達の誰もが恐怖にも似た感情で硬直していた。
と、その時。そんな硬直する新世代型二次元人たちの様子に、プロト世代のチョコが気付いた。
「……こ、琴浦さん? それにみんなも……大丈夫?」
チョコに声をかけられ、琴浦春香たちは皆同時にハッと気づく。
そんな新世代型たちの様子にガイアも気に留める。
「どうした、お前ら? 何だか一瞬ばかり固まっていたぜ」
「い、いえ……」「?」
ガイアが気になり訊ねるが、闇人との密談を悟られない様にと言葉を濁す星原ヒカル達を前に、スコーピオン兄弟は疑問に思う。
そんな疑問に思うスコーピオン兄弟に、側近である兵部京介が耳打ちをした。
「ガイアさん、どうも彼ら、信じられないんですが……」
「……ふむ、ふむ……な、なんだと?」
テレパシー持ちである兵部京介からの耳打ちに、ガイアは血相を変えて信じられない心境に至った。
「お、お前たち……あの闇人が見えるのか? 伝説の
ガイアが真剣な真顔で問い詰めると、新世代型たちは下を俯いたままガイアの疑問に答えた。
「っ………………はい……」「! おいおい、ウソだろ……!」
新世代型たちの返答に、ガイアは血相を変えて驚いた。
すると其処に、前々から琴浦春香たちから闇人の事を伝え聞いていたプロト世代のギュービッド達がガイアに申し返した。
「おいおい、なんでアンタらがそのこと知ってんだよ! 琴浦たち新世代型にしか闇人の言動が見え聴こえるって……」
「ぎ、ギュービッド様、自分から明かすのはどうかと……」
ギュービッドの問答に弟子のチョコが唖然としていると、そこにガイアたちに耳打ちして闇人の事を教えた兵部京介がギュービッド達に答えた。
「悪いが、此処にいる新世代型の真意は前々から僕のテレパシーで監視させてもらっている。それで彼らの目と耳にだけ闇人の姿と言動が捉えられるという事が判明したんだ。……僕でも未だに信じられないよ。まさか、あの闇人が君らの潜在意識に潜んでいるとはね」
この当然の如く語り明かした兵部京介の言い分を聞いて、ガイアが兵部に訊ねた。
「おい、兵部ちゃん。するってぇと、何かい? この新世代型の頭の中にだけ、闇人が暮らしちゃっている訳?」
「そうですね……いえ、多分元々彼らが生まれ付いた時から潜在意識の中に潜んでいたと思います。それが例のブラックホワイトの時計塔爆破の時に、溜まっていた鬱憤やら何やらが破裂して闇人の意識とリンク、つまり繋がっちゃったんでしょうね」
兵部の説明を聞いて、ガイアは唖然とした。
「………………そ、そういう事か。よく解らねえけど、そういう事か」
「あんまし、解って無いでしょ、兄者」
兄ガイアの知ったかぶりな発言に、弟クリスタルは呆れてしまう。
すると新世代型の中に闇人が潜んでいると知ったガイアは、徐に新世代型たちに歩み寄って顔を近付けさせる。
「………………………………」「な、なんでしょうか……」
無言の威圧で厳つい顔を近付けてくるガイアに、琴浦春香が不安そうな面持ちで問い返した次の瞬間、ガイアは何と琴浦春香の両肩を掴んで強引に揺さぶり始めた。
「おい、聞こえてるのか闇人! 新世代型たちの中に隠れてるなんて卑怯だぞ! 出て来て堂々とオレ様と面と向かって話しやがれっ!」
ガイアは新世代型たちの中に潜む闇人に直接訴える様に、琴浦春香を激しく揺さぶりながら問い詰めていく。その一方で激しく揺さぶられる琴浦春香は目を回してしまう。
「って、やめんか!」
琴浦春香を激しく揺さぶって強引に闇人と接触しようとするガイアの後頭部を、真鍋義久が突っ込んでガイアを制止する。
するとガイアは真鍋に突っ込まれた後頭部を摩りながら話し返した。
「で、でもよ少年。このままじゃお前さん達は闇人に体を乗っ取られる危険性だって十分にあるんだぜ。なにせ、あの修司ですら抑制するのが困難だったもう一つの人格なんだからよ。お前だって、好きな女や自分自身の中にずっと闇人なんかが潜んでいるのは堪ったもんじゃないだろ?」
「分かってるさ、それぐらい! でもな、闇人は実質、俺たちの意識の中にしか居ない訳だし、どうする事もできないんだよ! あんたらなんかに分かるか! 闇人の狂言にいつも頭が狂わされそうになっている俺たちの気持ちが……!」
今にも泣きそうな程にガイアに訴える真鍋に対し、ガイアは「うん、分からねえ」ときっぱり返事。これには新世代型たちもプロト世代も、そしてスコーピオン同盟の面々も一同にズッコケた。
だがガイアはそんなズッコケる面々を前に言い切ってみせる。
「分からねえよ、頭ん中に闇人が住み着いている苦労は。だけどよ、それが大変な事ぐらいは分かってるつもりだ。だけどな、それでも何とかしたいっていうのが人情ってもんだ」
「人情って……あんたら悪党に人情なんかあるのか」
暗鬱な表情でガイアを睨み付けながら問う真鍋に、ガイアは答えた。
「オレ様達は確かに悪党だ、それは認める。だけどな、オレ様は仁義ある悪党道を貫く
「仁義の道……!」
ガイアの発した仁義の言葉に、真鍋義久たち新世代型は圧倒される。
「おうよっ、怪人だろと魔女だろうと能力者だろうと……仁義の道を踏み外しちゃお終いだとオレ様は思ってる! 困ってる奴らがいれば、出来る限りで良い、手を差し伸べて手助けしてやるのが任侠ってもんだろうがっ! お前さんたち新世代型は、修司のクローンと影口叩かれて、生き辛い世の中に今はなっちまっている……けどよ、辛い今を乗り越えて、耐えに耐えればいつかは自分達を受け入れてくれる時代が来ることをオレ様は信じている! オレ様はかつて、仁義の道を忘れてヤケクソになっていた時期があったが、そん時に今をときめく聖龍HEADのちせちゃんと出逢って、人の心を取り戻せた。あん時の感動は今でも忘れていねえ。それからオレ様は色んな形で仁義を忘れかけた連中を仲間に引き入れてきた。お前さんたち新世代型もいつか受け入れてくれる時代が来る筈だ……!」
「……俺たちは、本当に受け入れられると思っているのか? 鬼の子と忌み嫌われても……」
己の仁義の道を語るガイアに真鍋が問うと、ガイアは力強く頷いた。
そしてガイアは新世代型二次元人たちに右の鋏を突き向けて言い放った。
「やい、闇人! テメェが修司の陰だろうが何だろうが、新世代型の肉体を乗っ取ってオレ様たちの前に現れてみやがれッ! このガイアスコーピオン様が怒りの鉄拳で叩きのめしてやる!!」
「って、ガイアさん、それじゃ肉体を乗っ取られた新世代型も殴る事になっちゃいますよ」
「あっ、そうか。ガハハハ……ッ」
頼もしい言葉を吐き出すガイアに、兵部京介が真意を伝えるとガイアは大笑いで笑い飛ばしてしまう。
そんなガイアの間抜けながらも頼もしい言葉と笑い声を聞いて、新世代型達も自然と笑みが零れてしまう。
「おっ、やっと笑ったか! 今までほとんど笑ってこなかったお前らが、やっと笑えるようになるとは……オレ様、嬉しいぜ!」
そういうとガイアはグラスホップにジュースが詰まった瓶を投げさせ、それを受け取ると新世代型たちにジュースを振舞った。
「さあさあ、今はとにかく飲もうぜ! 辛い事は一旦忘れて、今を楽しもう! 宴だ宴!」
どんなに辛い苦境でも今を楽しむ心を忘れない様に。そうガイアに説き伏せられたかの如く、新世代型一行はガイアに言われるがままに宴へと興じた。
そんな楽し気な様子を、闇人は陰でジッと見据えていた。
「ヒヒヒッ……」
そう、不敵な笑みを浮かべて。
[ガイアの奇策]
『ワハハハ……ッ』『はははは……っ』
スコーピオン同盟との宴は更に盛り上がり、誰もが笑顔に包まれた。
「はははっ、そうだそうだ。落ち込んでばかりじゃ人生ってのは詰まらねえぞ。もっと笑わねえと人生、損だぜ」
大酒を飲み干しながら、ガイアは新世代型たちに説く。
するとガイアは思わず笑い出してしまう新世代型たちの中で唯一、笑えずにいる鬼龍院皐月に声をかけた。
「ほらほら、お嬢ちゃん。そんな無愛想な面じゃ、幸せが逃げちまうぜ! もっと大らかに笑って人生を楽しまないと……それじゃ、あの修司みたいに詰まらない人生を送っちまうぜ」
「え?」
「修司はホントに無愛想でよ、滅多に笑うところなんか見せない野郎だったんだ。……まあ、今思えば愛情を感じられない障害ゆえに笑う事ができなかったのかもしれねえけどな」
鬼龍院皐月たちに小田原修司の不愛想な理由を語るガイア。するとガイアの次にホワイト・ヘアーズの蛭川光彦が修司について説き始めた。
「アイツは俺たちには素顔を見せない奴だった。それ以前に、俺たちの様な外道を心底毛嫌いしていたから、素顔なんか見せなかったのも頷けるが……」
「げ、外道? あんた達が……?」
蛭川の話に真鍋義久が反応すると、蛭川は自分達の昔を語った。
「……俺たちホワイト・ヘアーズはマジで昔は外道で鬼畜な輩だった。それ故に、今でも多くの連中から毛嫌いされて修司からも敬遠されちまっている。……まっ、昔と変わらず悪党の俺たちがなに言っても仕方ないけどな。ははっ」
蛭川の自虐混じりの台詞に他のホワイト・ヘアーズの面々も笑い飛ばす。
そんな蛭川の台詞を聞いて、ガイアが今の世の悪党事情を語り明かす。
「まっ、オレ様たちがどんなに気まぐれに善行を積んでも、政府のお偉いさん達にもみ消されて血も涙もない大悪党にされちまう訳だが……それも悪党たるオレ様たちの宿命って事よ」
「気まぐれとはいえ、善行を積んでもそれをもみ消されてしまうなんて……」
「別に良いさ。どんなに足掻こうとオレ様たちの過去の罪が消える訳じゃ無いんだし、それなら思いっきり羽を伸ばして自由気ままに生きていくのがオレ様たちの流儀なのよ」
ガイアの話に同情する星原ヒカルたち新世代型に、ガイアは自分達の生き様と流儀を語り継ぐ。スコーピオン同盟の生き様と流儀に、新世代型達は静かな衝撃を受けた。
と、話がガイアたちスコーピオン同盟に逸れたのを悟ったガイア本人は、新世代型達に激励の言葉をかけた。
「どんなに今が辛かろうと、どんなに自分達の出生が悲劇だろうと……今を生きる事を忘れるな。悲しむのも良い、泣くのも良い、けどな……泣いてばっかじゃ疲れるだけ、泣いた後は本気で笑ってみろ」
新世代型達に激励の言葉をかけるガイアは、そのまま続けて新世代型達に話し続ける。
「悲しむばっかじゃ、人は成長できねェ。成長する為に、前に進む為にはまず笑ってみろ。それが大事だ」
先に進み、成長する為には笑う事も大事だと説くガイアの話を聞いて、新世代型達は唖然としつつも話を聴き込んだ。
自分たちの始祖、小田原修司によって何度も死闘や苦境を体験させられたスコーピオン同盟の粋な計らいの数々に、新世代型達は今まで自分達が経験してきた苦境をしばし忘れて心から笑顔になる事ができた。
過去に陰湿な悪行も重ねてきたスコーピオン同盟の面々も、今ではすっかりガイアの影響で義理人情溢れる悪党へと成長したみたいだ。
そんな悪党共と肩を並べて杯を酌み交わす新世代型一行は、しばしの休息を心行くまで堪能した。
そしてスコーピオン同盟が用意した料理も、酒も、ジュースも全て平らげた一同はまだ宴の余韻を楽しんでいた。
「さァーー、やれやれーーーーッ!」
仲間達に乗せられて、ガイアはドジョウ掬いの踊りを披露していた。
「あ~ら、えっさっさ~~」
「わはははっ!」「ゲラゲラゲラ……」
ガイアの踊りを見て、誰もが爆笑する。
「うわははは……がお~~、どうだ、すげぇ怪力だろ」
「うわぁ、ホントだーーっ」
更にガイアは宮内れんげなどの幼い新世代型の幼児相手に、自分の豪腕に掴まらせて悠々とぶら下げて遊んでやるといった場面も見せた。
と、その時、ロボットであるメガロ・スコーピオンが何かを傍受して、それをクリスタルが見た。
「兄者……兄者、兄者!」
「なんだよクリス、せっかくみんなと戯れているっていうのに……」
弟クリスタルに呼ばれて、兄ガイアは愚痴りながらクリスタルの方へと歩み寄る。
「なんだ?」「大変です、国連軍です」「なんだと!?」
メガロ・スコーピオンが傍受したレーダーを見て、クリスタルは自分達が搭乗している大型船の周辺に国連軍の軍艦が点在している現状をガイアに通達。ガイアの表情は一変した。
そしてクリスタルのこの通達に、ガイアだけでなく他の新世代型一行も戸惑った。絶対的正義を掲げ、憤怒の猛追を仕掛ける赤犬元帥の下で動く国連軍に、新世代型達は怯えていた。
「船は何隻ある?」
「確認できるだけでも……ざっと五百、全て私たちの船を標準に進軍してきています」
ガイアから訊ねられ、クリスタルは国連軍の戦艦が五百を超える数だと知らせる。
この緊迫した空気の中、ガイアは新世代型達に言った。
「どうやら、宴も此処までの様だな。お上に見付かったんじゃ、逃げるよりしょうがない」
緊張する新世代型たちを前に、ガイアは更に語る。
「ハッキリ言って、お前さんたちを連れて逃げ回れるほどオレ様たちには余裕が無い。ここはどうにかお前さん達だけ船から降ろさせねえと……」
すると、このガイアの発言に新世代型たちが騒ぎ出した。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 優しくしてくれて嬉しいけど、今ここから出たら私たち悪党同盟の仲間だって思われかねない!」
「以前にも国連軍に掴まって、厳しく取り締まられているから、目を付けられているんだ……!」
「今は新世代型というだけで、嫌というほど目を付けられている現状でこの船を普通に降りたら……君たちと結託していると思われてしまう」
森谷ヒヨリや速水ヒロ、四宮小次郎の言い分を聞いて納得するガイア。
「う~~ん、そうだな……確かにこのまま置いていったら、お前さん達にも色々と迷惑がかかるだろうしなあ……」
考えるガイア、それを見守る新世代型たち、ガイアからの指令を待つスコーピオン同盟。ガイアが熟考している間、船内は静寂に包まれた。
と、ガイアが熟考していたその時、国連軍の戦艦が砲撃を開始。スコーピオン船の真横の海原に砲弾が着弾した。
「うわあ!」
砲弾の衝撃が船内にも伝わり、皆は驚いた。
「こりゃあ、グズグズしている暇は無いみたいだ。こうなったら……」
考えている暇もないと判断したガイアは、唐突に歩き出して新世代型達の前に歩み寄った。
「おい、小僧……」「な、なんだ?」
ガイアは真鍋義久の許に歩み寄ると、彼にこう告げた。
「……楽しかったぜ、お前達との宴は」
そう真鍋に言った次の瞬間、ガイアは真鍋の顔を思いっきり殴り付けた。
「ぶへっ」「ま、真鍋くん!?」
殴り付けられ、床に叩き伏せられる真鍋を見て琴浦春香が一驚する。
ガイアは何を考えて突然の暴力に出たのだろうか。
[どんなに善行を積んでも……]
スコーピオン同盟の船艇が大海原を渡航しているその間、そのスコーピオン船から通信が発信された。
通信を傍受した国連軍が聞いてみると、ガイア・スコーピオンたちの会話が傍受された。
「良いかお前ら! 逃げ切る為にも船内の余計な荷物は全部、海に捨てるんだ! 人質にしている連中も、コンテナに詰め込んで海に放り捨てろッ!」
この会話を傍受した国連軍は、急きょ聖龍隊に応援を依頼した。何故なら彼らは悪党であるスコーピオン同盟を捕縛する為に全戦艦の戦力を投じなければならず、人質救出に人手を削ぐ訳にはいかなかった。それ故に本来は意見の食い違いで度々衝突している聖龍隊に人質の救出を応援せざるを得なかった。
国連軍からの下請けに最初は戸惑っていた聖龍HEADだったが、人質にされているのが行方不明の新世代型たちなのではと直感が働き、即座に行動に移った。
スコーピオン同盟が破棄したコンテナは浜辺へと打ち上げられており、聖龍隊の部隊は銃器を装備してコンテナへと直行する。
そしてコンテナのロックを外してそぉっと開けてみると、隊士達の目に思わぬ衝撃的光景が飛び込んできた。
それはなんと、全身を縄で縛り上げられ、拘束された挙句、頭にはすっぽり麻の袋を被せられていた多くの二次元人たちの姿だった。
隊士は急ぎつつも警戒をしながら静かに麻の袋を外して、素顔を確認してみる。すると麻の袋で覆い隠されていた彼らの素顔は、紛れもなく行方不明だった新世代型達だった。
そして聖龍隊士は一人一人を拘束する縄を解いて麻の袋を顔から外して、一人ずつコンテナの外へと誘導して確実に保護していく。
その情景を遠くの海から望遠鏡で覗いていたガイア・スコーピオンは人知れず安堵していた。
「ふぅ、これで新世代型たちも、国連にまた束縛される事無く、聖龍隊が保護してくれたな。そんじゃ、オレ様たちは急いでトンヅラするとしますか」
国連軍の相手は全て自分たちスコーピオン同盟が引き受け、その間に聖龍隊にコンテナ内に押し詰めた新世代型達の保護を任せるというガイアの作戦が無事に終了した。
そのままガイア達はその海上から急ぎ退散し、国連軍の軍勢を引き受ける。
実は、聖龍隊の部隊がコンテナに突入する数時間前……
「が、ガイア、何するんだ!」
ガイア・スコーピオンは真鍋義久を始めとする一部の新世代型の顔に目立つ外傷をつけてから、たまたま所有していたコンテナに新世代型たちを押し込んでいった。
「これが一番、手っ取り早いんだよ。お前さん達は、ここでオレ様たちと宴に参加していたんじゃなく、拉致誘拐されたって事にしとけば後々面倒な事にはならないんだ」
「め、面倒な事って……」
ガイアの語りに瀬名アラタが問い詰めようとするが、スコーピオン同盟は誰もが手馴れた手つきで新世代型たちを縄で縛り上げ、拘束していくのだった。
「お前さん達はあくまで、オレ様たちに誘拐されただけって見せなきゃ、いづれ国連からまた手厳しい尋問を受けちまうのは見え見えだ。だから少しでも被害者面できる様に縄で縛っておかねぇと……」
「こ、此処までする必要あるんですか?」
説明を聞いて斉木楠雄が戸惑うが、彼を始めとする新世代型達に兵部京介が話しかけて来た。
「これも君たちの為だ、しばし我慢してくれよ。……今の時代、エスパーとノーマルの差別抵抗よりも、
差別し合う現状の中で、悪党と別れれば如何なる災厄が待ち受けているか分からない先の事を見通してのガイアの奇策だと説く兵部京介。
無事に国連軍の目を欺き、新世代型たちを船から降ろす方法には、彼らを見放した人質として解放し、その隙にガイアたちスコーピオン同盟が国連軍の戦艦を一挙に引き付ける奇策なのだ。
こうしてガイアの奇策に従い、スコーピオン同盟は一人一人を縛り上げていき、視界を奪う為に麻の袋を顔に被せた。
「だ、だけど……あなた達の温情な所を訴えれば、あなた達だって何かしらの功績が得られるんじゃ……!」
縛り上げられた美都玲奈の発言に、ホワイトヘアーズの須王静江が言った。
「前にも言っただろ? 私たち悪党に無闇やたらに同情するなって。私たちは、どう足掻こうと結局は陰湿で世の中から疎まれる犯罪者なんだよ。こんな私たちと仲良くなっったって、何の徳も無いよ」
須王静江の言い分に、彼らホワイトヘアーズが本当に昔は外道な畜生であり、そんな過去を持つ自分達とは縁を結ばない方が得策だと説かれて、新世代型達は釈然としなかった。
そして最後にガイアは、琴浦春香の顔に麻袋を被せようとしていた。
「あ、あの……」「? なんでい」
麻袋を被せようとするガイアに琴浦春香が話し掛けようとする。ガイアが反応すると、琴浦春香は薄らと微笑を浮かべてガイアたちに言った。
「あ、ありがとうございます……なんか、もう久々に笑えました」
この琴浦春香のお礼に、ガイアはにっこりと不気味な満面の笑みで笑い返すと、彼女たち共有感知で意識が繋がっている新世代型達に言った。
「別に。オレ様はただ、修司のクローンが奴みたいに無愛想で融通の利かない頑固野郎じゃないかと心配して、宴を披露しただけさ。まっ、修司に似てなかったのが勿怪の幸いだけどよ」
ガイアは更に琴浦春香に耳打ちして、新世代型達にだけ聞こえるよう伝えた。
「……さっき、兵部から聞いたんだが、お前さん達はとっくにジャッジ・ザ・デーモンの正体を知っちまったみたいだな」
「! まさかガイアさん、あなた達も……!」
ガイアの問い掛けに衝撃がひた走る琴浦春香たち新世代型。するとガイアは続けて彼女に耳打ちする。
「なぁに、昔ちょっと知っちゃったんだよな。でも、お前さん達はそれでしょ気るなんてするなよ。修司は修司、お前さん達はお前さん達なんだからよ。あのデーモンの正体知ったからって余り考え込むなよ。頭が疲れるだけだ」
そして最後にガイアは、琴浦春香たち新世代型二次元人にこう伝えた。
「現実から目を逸らすんじゃねぇ。現実から逃げず、真っ直ぐ前を向いていけ。それで疲れた時は、一旦進むのを休んでのんびりするのが最適だ。それがオレ様が最も言いたかった事だ」
そう言い終わると、ガイアは最後の一人である琴浦春香に麻袋を被せて視界を遮った。
全ての新世代型たちをコンテナで縛り上げ、麻袋で視界を遮ったスコーピオン同盟は、近くの島に急接近してからコンテナを放棄して身軽になった戦闘船体の速度を上げて国連軍から逃げ去った。
スコーピオン同盟が囮になって、コンテナから国連軍を遠ざけている間、全ての新世代型達が聖龍隊によって無事保護された。
後に聖龍隊は、人質が行方不明になっていた新世代型であったと国連に通達。しかし国連はスコーピオン同盟の追跡と、世界に猛攻を仕掛ける黒武士の猛威に立ち向かうべく人手を削ぐ事はできず、致し方ないが新世代型二次元人の保護と隔離を聖龍隊に一任せざるを得なかった。
無事に新世代型達を保護できて安堵する総長バーンズの許に、その新世代型達が抗議しに来た。
それは自分達の安否の為に自らを犠牲にして、自分たち新世代型たちを船から降ろさせる為に敢えて悪者になったスコーピオン同盟の事だった。
「ガイアさんは……私たちがまた国連軍に身柄を拘束されないようにと、敢えて酷い降ろし方で私たちを解放してくれたんです」
「バーンズ! ガイア・スコーピオンは……そして他の悪役達も今ではすっかり改心している! なあ、どうにか彼らの
琴浦春香と真鍋義久のカップルからの切願に、バーンズは真顔で新世代型達に訊ねた。
「認定を消してくれって……ガイアたちの方から言ったのか?」
「い、いえ! その……」
バーンズの指摘に誰もが返す言葉を失くしてしまう。現にスコーピオン同盟の誰もが
するとバーンズは新世代型一行に真顔を向けて語った。
「良いか、ガイア達はガイア達なりの考えがあってこそ、お前達を敢えて人質として船から棄てる様に海にコンテナごと放り出したんだよ。その心意気を無駄にしない為にも、何もしない事の方が却っていいんだ」
「だ、だけど……」
バーンズの話に琴浦春香が何か語り気な雰囲気を醸し出すが、バーンズはそんな彼女ら新世代型に申した。
「それにだ……いくら今のアイツらが昔の様に、原作の頃の様な邪心のない改心した連中だとしても、過去の罪状は消えやしない。そんな連中の認定を取り消す事は実質、不可能なんだよ」
「罪を犯してしまえば……一生、死ぬまでその罪を背負わなければならないんですか?」
森谷ヒヨリがバーンズに問い返すと、バーンズは真顔で答えた。
「そうだな……少なくともあの修司は、そして今の世界はそう考えているだろう。過去の陰湿な罪科は一生かかっても消えやしないというのが一般論だ」
「そ、それはあんまりにも酷いんじゃないのかな……?」
罪は一生消えないというバーンズの返答に燃堂力が悲愴な面持ちで呟くと、バーンズは皆に語った。
「修司は過去に多くの罪を重ねてきた。だが、それらは全て国連の命令で遂行してきた任務ゆえ、修司の罪は決して罰してもらえるものではなかった。それ故に修司は「裁かれる事もまた一つの幸せ」だと認識して、多くの罪人達を罰してやる事こそ人の幸せなのだと考える様になった。罪を犯しながら罰を与えられないというのは、不条理だと修司自身が感じ取った経緯なんだ」
「その考えも、
真剣な顔つきで星原ヒカルが呟くと、バーンズは語り続ける。
「そういう事だ。ガイア達スコーピオン同盟は、云わば一種の必要悪の様な連中かもしれねえ。奴らの様な法の網を強引に掻い潜って自由を謳歌する連中もまた、一つの歴史を紡ぐキャラクター、二次元人なのかもしれねえ……」
そう唱えると、バーンズは新世代型一行に険しい表情を差し向けて告げた。
「……ところで、お前さんたち新世代型の今後だが……」
皆、バーンズの発言に生唾を呑んで受け入れる態勢を敷く。
「……国連からの通達だ。お前さんたち新世代型二次元人を含む一般人は、しばらくの間オレら聖龍隊が身柄を預かる事となった。まぁ、ハッキリ言っちゃうと要するに国連は正直もうお前たち新世代型とは関わり合いたくないっていうのが本音らしい。それでウチら聖龍隊に渦中の存在であるお前らを押し付けたっていうのが事の真相だ」
バーンズから、国連は度々問題を起こす新世代型と関りを持ちたくないという思考から、新世代型を聖龍隊に押し付けた真意を聞かされ、当の新世代型達は言葉を失くした。
そして最後にバーンズから新世代型一行に告げられた。
「……という訳で、お前達はまだしばらくの間、オレらと共に行動してもらう事になったからな。今後は余り好き勝手な行動は慎むように」
このバーンズからの言伝に、新世代型たちは弱々しい反応で「はい、分かりました」と返事した。
温情な悪役同盟のガイアたちは必要悪として現状維持、そして新世代型たちは聖龍隊の完全管理下に置かれる顛末となった。
この経緯に、プロト世代のチョコや海道ジンたちは状況を見守る事しかできず歯がゆい思いを味わった。
そんな新世代型たちの視界には、再びあの闇人が現れては不敵な笑みで話し掛けてきた。
「人ってのは、そんな簡単に変わる事は出来ない、変わる事を許されない……あのスコーピオン同盟の連中がいい例だ。アイツらの過去の罪状を知れば、きっとお前達も軽蔑しちまうだろうよ。特にホワイト・ヘアーズの連中は辛辣で陰湿な連中ばかりだからな。俺様闇人から見れば、今のあいつ等は混沌を生み出すほど驚異的な存在じゃないのが惜しいところだ。お前達の様に混沌や災いを呼び起こす新世代型でないのが非常に残念な箇所だよ。新世代型なら、俺様がホワイト・ヘアーズを乗っ取って奴らのバイクで人を轢き殺せるっていうのによ」
闇人からの言伝に、新世代型たちは懸念が募った。
どんなに今を懸命に生き抜こうと、どんなに善行を積もうと、過去の罪状で決して変わる事を許されないスコーピオン同盟。
そんなガイアたち温情や義理人情に厚い悪役同盟のこれからを思うと色々と悩まされる新世代型達。
だが、スコーピオン同盟の事を考える前に、未だ境地に立たされている自分達の身の振り方を考えるべきなのも言うまでもない。
今は聖龍隊の監視下でどうにか平穏を迎えられているが、それがいつまで持つか把握できていない。
新世代型二次元人の明日は如何に。