聖龍伝説 現政奉還記 創生の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 人混みに紛れて簡単に新世代型一行を誘拐して見せたガイア率いるスコーピオン同盟。彼らの目的は、小田原修司のクローンと分かった上での新世代型達との宴であった。最初は拒んだり信用できない理由からガイア達からの御持て成しを素直に受け入れる事ができなかった新世代型。するとガイアは互いに意気投合するためにも、料理対決でお互いの腕前を披露しようと提案し、これに【食戟のソーマ】組がその凄腕を披露、用意された全ての食材を使って完璧な品々を作り出したが、これにガイアは料理で出た残骸部分から類まれなる創作料理の数々を作り出して新世代型二次元人たちを唖然とさせた。食材を残さず使うという最初の名目から既に負けてしまった食戟組だったが、ガイアは自分が勝手に料理しただけどして勝負は引き分けという事で決着した。そして薙切えりなたち食戟組にも半ば強引に宴に参加させて楽しい余興が展開された。その中で新世代型は、今までスコーピオン同盟の命を執拗に狙い続けたり、彼らの出生記録を抹消した小田原修司に恨みは無いのかと訊ねる。この唐突な質問にガイア達は思わず爆笑してしまい、今では小田原修司の事は欠片も恨んじゃいないと優しく答えてくれた。だが、スコーピオン同盟で新参者の怪盗帝国の面々だけは、国連軍の実用性を広め、強大な軍事力を国連軍に与える切っ掛けを作った小田原修司を未だ許せない模様。これにガイアは宥めるが、怪盗帝国の不満は解消し切れなかった。そんな中で話は、小田原修司は執筆した自らの自伝本、聖龍伝説三部作についてガイアは己の感想を仲間と共に語り明かした。自伝本には、小田原修司だけでなく、当時の聖龍隊隊士の真情までも赤裸々に綴られている闇人との死闘も記された自伝本だった。ガイアは兵部京介からテレパシーで新世代型の潜在意識の中に闇人が潜んでいる事を知ると、新世代型を激励しつつも闇人との真っ向対決を宣言する。そんなガイアの陽気で義理人情溢れる宴で久々に笑った新世代型達だったが、そこに国連軍の戦艦が襲撃。ガイアは新世代型達が自分らと密通しているのではないかという疑いをかけられない様に為、敢えて新世代型一行を全員縛り上げた上で、顔に麻袋を被せて海辺へと置き去りにしたのだった。無事に聖龍隊の保護下に戻った新世代型だったが、ガイアの現状は維持する方がお互いの為だとして、そして新世代型には今後もしばらく聖龍隊の監視下で生活してもらう事を条件に大人しく身柄を置いておくようにとバーンズから釘を刺されてしまう新世代型達なのであった。



現政奉還記 創生の章 畜生からの協定

[蠍の同盟とは]

 

 とある荒野。

 この荒野を駆ける、ある集団が在った。

「クク……クククククク……! もうすぐ、間もなくです……! 皆は一体どのような顔で私を迎えてくれるでしょう……?」

「……そういえば、いずれ折を見て……彼らにも打ち明けないと……」

「己の中に、狂気という闇が潜んでいる事実を……!」

「思えば二年前、世界と歴史に謀反を起こそうと思い立ったのが全ての始まりでしたが……」

「きっと、あの頃から我らは……殺したくない、と思っていたのでしょう……」

 荒野を駆ける黒尽くめの六人衆は、颯爽と大地を駆け抜けていった。

 

 一方その頃。

 聖龍隊の補給基地に移送された新世代型二次元人達は、そこでシーザー・クラウンの島から離れ離れになってしまってた赤塚組と再会する事が叶った。

 赤塚組の頭領にして、大将の愛称で知られる赤塚大作は補給基地で次なる渡航に向けての準備を着々と進めていた。

 更に赤塚組の子分達と協力して物資を運搬するのは、弱い己を鍛え上げる為として活動していた台湾国将軍のシバ・カァチェンとも再会を果たした。

 大将は、物資の運搬を随時確認しながらその様子を眺めている新世代型一行と話し合った。

「お前達も大変だったな、まさかスコーピオン同盟の連中に、かどわかされるとは」

 極寒の猛吹雪の中、誘導役に徹していた隊士がまさかスコーピオン同盟の変装とは気付かなかった大将は、若干誘拐の原因が自分にあるものだと自身を苛んでいた。

「大将さん、そんなに気を落とさないで下さい……私たち、スコーピオン同盟の所に数時間一緒にいただけで何にもされてないんですから」

 テレパシーで大将の気落ちしている本心を察する琴浦春香の声かけに、大将は泣き出しそうな顔を上げて新世代型達に言った。

「お、俺を責めないのか? 俺が気抜けしてたから、お前らがかどわかされたんだぞ」

「もう良いです、その事は……実を言うと、ガイア・スコーピオン達から色々と為になる話を聴かされたんで、辛くはなかったです」

 落ち込む大将に、斉木楠雄がスコーピオン同盟から色々と学ばされたと説き返す。

 これに対して大将は、暗雲な気分を一瞬で明々して新世代型達に語り掛けた。

「そっかぁ! いやぁ、そうだよなぁ……アイツらも悪党とはいえ、外道じゃないからな。いや、良かった良かった」

 気分を取り戻してくれた大将に、新世代型一行が喜んでいると大将は彼らに話し始めた。

「あいつ等は、何を考えてんだか分からない連中だ。まっ、根っからの下衆野郎じゃない事は確かだが……」

 唖然と大将の話に耳を傾ける一行に、大将は続けて語った。

「そもそもガイア・スコーピオンってのは、今は仕方なく現状維持の為に組織を拡大しているらしいが、本来は自分が仕切る組織を大きくさせるのを拒んでたらしいぜ」

「え! なんでまた?」

 真鍋義久が問い返すと、大将は答えた。

「組織がでっかくなり過ぎると、却って自由に動き回れなくなる欠点があるからな。多くの部下を目に付く所に置いておかなきゃならない現状は、余りガイアは好まなかったらしい」

 大将は、更にその理由も語り出す。

「ガイアはまさに自由奔放な、何にも縛られない生き方を面白おかしく貫いているんだ。しかし自由に生きるには、巨大な組織ってのは邪魔なだけだ。今後ガイアが組織をどう整理するか、注目だな」

「ガイア・スコーピオンの御呼ばれで船内での宴に強制参加されましたけど……悔しいですが、あの蠍の料理の腕前はプロ級。私たちの経験不足による負けでしたわ」

 薙切えりなの発言に、大将は笑顔で答えた。

「アイツって意外と料理が得意なんだよな。まあ、部下も宴の参加者も、胃袋から心を掴めって感じの野郎なのかもしれねえ。まっ、男の料理だったら俺たち赤塚組も負けちゃいないけどな」

「海の荒くれ者による男の料理…………何だかあまり考えたくないな」

 大将が発する男の手料理について、堂島銀は微弱な悪寒を感じ取った。

 そんな中、大将が語り続けるガイア・スコーピオンの性分とは。

「まあ、奴の世の中を面白おかしく渡り歩くって考えは一理ある。悪党と名乗っていても、豪快で身勝手な所だけで極悪人って奴じゃねえ」

「そ、それに……小田原修司のクローンである新世代型を恨むのは筋違いだって言ってくれてました! 修司さんの考えにも理解を示してくれている様子でしたし……」

 大将がガイアの事を語っていると、プロト世代のチョコがガイアたちスコーピオン同盟が新世代型をクローンとして恨む事は無いと申してくれた事を嬉しそうに話す。

 これに大将はガイア・スコーピオンの実情を語り明かした。

「自由奔放で豪快で、多少身勝手な所はあるが、義理人情を忘れねえ、まさしく「仁義ある悪党道」を貫く悪党同盟それがスコーピオンだ! 何を考えているか、その真意は側近である兵部京介にも読み取れない特殊な思考能力……または本気で頭ん中が空っぽだっていうらしいが、同じ義賊として今では俺たち赤塚組もスコーピオン同盟は人情味溢れる連中だと気に入っている!」

『おおっ!』

 大将の粋な熱弁に、新世代型一行はざわめいた。

 

「で、でも……あの赤犬率いる国連軍に、それなりの実権と権限それに軍事力を持たせたのは小田原修司が原因だって聞かされたにゃ……」

 新世代型の森園わかなの不安げな発言に、大将は不在の修司に代わって代弁した。

「国連軍が掲げる「正義」の定義や排除法の是非同様、判断が難しいのが現状だ。おめえさん達も正義は立場によって多種多様に変化しちまう曖昧なものだって知っているだろ? 一様に悪だの善だのと決め付けるのは、それこそ人間のエゴってもんだ」

 皆が大将の話を聞いて、どんよりと気持ちを暗黙させてしまったのを目の当たりにし、大将は咄嗟に話題を変えようと新世代型達に訊ねる。

「そ、そういえばよ……スコーピオン同盟の連中も読んでいなかったか? 修司が書いた自伝小説……」

「あ、それならガイアさん面白おかしく話してくれましたよ。当時の小田原修司の思考だけでなく、聖龍隊隊士の思い出話もたくさん書かれていましたから……」

 大将の問い掛けに、琴浦春香が当の小田原修司だけでなく、当時の聖龍隊士の詳細や入隊秘話なども書かれていた事を伝える。

「そうそうッ! 俺もよ、あんた達に最初に会った日から、改めて小説を読み返してみたんだが……中々どうして、面白い内容だったじゃねェか」

 大将は此処で、自分の懐に忍ばせていた小田原修司の自伝本三部作を三冊とも取り出して、それを新世代型達に見せ付けながら語り始めた。

「まさかアッコが昔見ていた夢が、既に未来を予知する予知夢だなんて驚きだよな」

「ええ、聖龍隊の女性隊士は予知夢を見やすいって噂は前々から聞いてはいましたが……まさか殺戮陽動プログラムを開発したDr.ヴァルツに洗脳された小田原修司と聖龍HEADが戦い合う情景をアッコさんは昔既に予知夢で見通していたんですね」

「ああ、その話をアッコから聞いた修司が、自分の自伝小説にも書き記したんだろうな」

 加賀美あつこが見た予知夢、小田原修司が対二次元人用の兵器として洗脳された事件を以前に夢で見通していた事実に、大将も出雲ハルキ達も愕然とする。

「予知夢では最悪の展開をアッコさんは見てしまったんですね……自分以外のHEADが倒されて、最後に残った小田原修司に異常者(ヒール)と見做され殺されかかる所で夢は覚めたけど」

「おっかねえ話だぜ。あの戦いで、もしアッコがコンパクトの力を最大限にまで発揮してなきゃ、セーラームーンもミュウイチゴのお嬢ちゃん達も皆殺しにされてたんだからよ」

 皆の話を聞いて、彩瀬なるが加賀美あつこが夢では最悪の展開を見ていた経緯に対して、大将は現実の戦いではアッコがコンパクトの力を最大限まで発揮して戦わなければHEADは修司一人に壊滅させられていた事実を語り明かす。

「で、でも悪い事ばかり小説には書かれていませんでしたよ! 聖龍隊とあのルパン一味の対決は面白かったです!」

 細野サクヤが自伝小説に記されている聖龍隊とルパン一味、そしてシティーハンターを交えた対決は評価が高いと公言する。

「そうそう、まさか修司がクラスメイトの碧井瑠璃の為に高価な宝石を購入して美術館の景気を復興させたなんて話、俺さま初耳だったぜ。まあ、結局宝石は美術館に戻って、挙句の果てには修司がまた売りに出した事でルパン一味やシティーハンターとの決着は先送りになったけどよ」

「今となっては、全部聖龍隊に取っちゃ良い思い出なんだろうなぁ……」

 細野サクヤや大将の話を聞いて、プロト世代のギュービッドはラブロマンスも垣間見えるルパン一味との対決に乙女になっていた。

「でも小説を読んでいくと……小田原修司も聖龍隊も、世の中皆の為に努力していたみたいだが、どうして簡単にいかなかったのか」

「ハァ~~っ、それは俺さまも考えもんだよ。あちらを立てれば此方が立たず、って感じで……どうしても万民が納得する世の中を創り上げるのは難しいもんなんだ」

 幸平城一郎の台詞に、大将は万民が納得する世の中は簡単には創り上げれないと説き伏せる。

「そして迎える異次元からの驚異との大戦……その前に小田原修司って先を見据えていたよなぁ」

「そうね。異次元からの貴重な鉱物に資源、そして開拓して人が住める様にする計画など……とても先を見据えていたわ」

「まあ、修司は先を見据えすぎた為に暴走したって言われてるけどな。先見の明も度を過ぎれば考えもんだぜ」

 瀬名アラタと鹿島ユノの、小田原修司が見据えていた異次元への開拓計画。だが大将は度を越えた先見の明は問題も呼び起こしちまうと懸念を告げる。

「そういえば、スコーピオン同盟の所でも話したけど……ガイアって、あのちせって元兵器に絶大な信頼というか、愛情を秘めていたね!」

「オウ、コラッ……俺の前でちせを……ダチ公を元兵器なんて呼び方すんじゃねえぞ! ……まあ、あのガイアはちせにゾッコンなのは言うまでもないけどな。聞いた話によると、ガイアが昔、夢である仁義ある悪党道を忘れかけてた時に、ちせに出逢って夢を思い出したのが切っ掛けで熱烈なファンになっちまったらしいけどな」

 森谷ヒヨリがうっかり口を滑らせてしまう中、大将はガイアの異常なまでのちせファン振りに呆れ果てていた。

 そして話は、闇人が異次元からの驚異として密かに集めていた魂から復活させた悪役達を引き連れた際に、英雄達に告げられた衝撃的な展開に話は進んだ。

「そして当時、まだ二次元人が三次元人の創作物だという事実が伝わってない状況で……まさか二次元人がツクリモノの命だったなんて事実を突き付けるなんて……!」

「闇人にとっては、二次元人の戦意を削ぎ落とす作戦だったかも知れねえけど、それにしちゃかなりエグイ作戦で来たもんだ。今では俺たち二次元人は、自分の運命を受け入れて生活できているが、それでも未だに創作物ってのが心に引っかかる……」

 プロト世代の桃花・ブロッサムの話に、大将は闇人の卑劣な作戦に苛立ちを覚えつつも今の自分たち二次元人は運命を受け入れ、強く生きている事を伝えた。

 すると話は少し戻り、当時の聖龍隊隊士であった、ちせやアッコの真情が語られ始めた。

「でも、当時のちせさんの安堵やアッコさんの慈愛は凄く救いでした! まさか、ちせさんはアッコさんやさくらさんの優しい想いを受け取って、暴走せず一人の戦士として戦い抜けたんですね!」

 目をキラキラと輝かせるチョコ達の眼差しを浴びて、大将は少し困惑しながらも答え返した。

「あ、ああ! そん通りだ! 暴走しっ放しだったちせが暴走しなくなったのは、アッコやさくらの思いやりの心意気が通じたからだと俺は信じているぜ! どんなに強い奴でも、一人だけで戦うのは無理だろうからな」

「だけど……小田原修司に一刀両断された闇人が言い残した言葉……」

 大将が熱く当時のちせを取り巻く現状を語っていると、琴浦春香が小田原修司と闇人の決着がついた時の、闇人の捨て台詞に皆は蒼然とした。

 

「これが、お前の選んだ結末か、修司よ……それも良い……。しかし、決して忘れるな。お前は、そう俺達は……その命尽き果てる、その時まで決して逃れ得ぬ宿命を……業を背負い続け、生きていくのだ……! 例え、奇跡の力を持っていようと抗う事も侭成らない因果がお前を……そして、お前の周りに居る者等を苦境に追い込み続けるだろう……」

「そんな因果とは真逆で……何れ、そいつ等は……二次元の者共は消え果て、やがて滅びるだろうがナ……! ……それでも貴様は、そんな種族を……二次元人共を死守する為、そいつ等の決められていた運命ですら捻じ曲げ、大幅に変えていくのであれば……! その歪みは、やがてお前だけではない……お前の同種族である三次元人にすら、新たな驚異を生み出し続ける結果と成ろう……!」

「さらばだ、哀れな三次元人よ……そして虚無の夢想から生み出された二次元人達。この何れ消え逝く二次元の……御伽と云う世界の中で……ゆっくりと朽ちて逝くが、イイ……」

 

 これらの台詞を言い残し、闇人は自らを叩き斬った小田原修司、そして当時の聖龍隊の前から姿を消したと伝えられている。

「決して逃れられない宿命、業を背負い続ける……そしてその因果が周りの者たちを苦境に追い込み続ける……」

「多分、業ってのは……修司が闇の魂を持つが故に、多くの人命を奪い続ける事を差しているのかもな。そして、その因果は周囲の者たちにも容赦なく影響を与えていくって事かもしれねえ」

 星原ヒカルが闇人の遺した言葉に懸念を募らせると、大将は自分なりの仮説を皆に唱えた。

「でも、その因果はいづれ、二次元人を消し去り、滅ぼさせるといった伝言も闇人は言い残してるわ」

「決められていた運命ってのは……やはり、元々の物語の筋書きなのかしら……」

「二次元人を死守する為に運命を捻じ曲げれば、その歪みは三次元人にとっても新たな脅威を生み出す……この驚異って、まさか……!」

「ああ、その驚異こそ他でもない……! 心身に変化が起こり、暴走してしまう異常者(ヒール)のことだ!」

 美都玲奈やイオリ・リン子、そして烏丸さくらの不吉な予感に、プロト世代の海道ジンが鋭い指摘を下す。

「そ、それじゃなんだ!? 異常者(ヒール)が登場しちまうのは、全部小田原修司が俺ら二次元人を守る為に筋書きを捻じ曲げたのが原因ってことか?」

「そういう事かもしれない……そしてそんな混沌の中で、僕たち二次元人の物語、御伽話はゆっくりと消滅するという闇人の予言染みた遺言だったのかもしれない……」

 異常者(ヒール)の出現は全て小田原修司が二次元人たちを救済する為の行動が原因なのかと説く燃堂力に、親友の斉木楠雄は表情を険しくさせる。

「まあまあ待ちな。言っちゃなんだが、あの狂言誑しの闇人の言う事を一々気にしてたんじゃ埒が明かねえよ。修司のお陰で、ちせやウチのテツにミズキ達も永らえた事だし、それが原因で異常者(ヒール)が出没するだなんて堪ったもんじゃねぇ」

「た、確かに……当時のちせさんの安堵やアッコさんの慈愛は凄く救いになりましたよ、小説を読んで。でも、闇人が言い残した言葉がどうしても気掛かりで……」

 闇人の言葉を一々気にするなと言い回す大将に対し、真鍋義久は当時者たちの気持ちに凄く救われつつも闇人の遺言が気掛かりだと真情を説き明かす。

 そんな闇人が言い残した台詞に気掛かりする新世代型たちを前に、大将はハッキリと言った。

「そんなに気にすんなっての! それじゃ、あのガイアたちが命を張ってオメェらを送り出したのが意味なくなるだろうがッ! 闇人の言い分に負けんな……闇人に負けちゃ、いけねぇのよ!」

 闇人に負けるな。この一言が新世代型達の胸に衝撃を与えた。いつ何処からか姿を現し、自分達の視界にしか現れない闇人の驚異に曝されている新世代型にとっては、心強い一言だった。

 

 と、大将が仕事そっちのけで新世代型一行と熱く語り合っていたその時。

「コラッ、大将! 仕事サボってないで、とっとと進める!」

 と、物資運搬の随時確認を怠っている大将に幹部のミズキが注意する。これには大将も頭が上がらず、作業に戻る。

「お、おうっ、分かったよミズキ……」

 大将は頭の上がらないミズキに対してペコペコしながら返事する。

「ふぅ、あのミズキも今を生きているのは修司の存在があった故だ。異常者(ヒール)が誕生しちまうのが、ミズキが生きているからだなんて考えたくも無いが……ま、俺たちは俺たちで今を懸命に生きていれば、それで良いじゃないか。なっ」

 大将は新世代型一行に語りかけると、即座に作業に戻っていった。

 

 新世代型達は、自分達を無事に聖龍隊に送り出す為に敢えて悪の側に徹したスコーピオン同盟に感謝しつつも、今を共に生きている赤塚組にも多大な恩を感じ取った。

 だが、そんな新世代型達の前に、再び闇人が現れる。

「ぐひひひ……いや、まあ何とも懐かしい話が聞けて俺さま感激だぜ。修司が下らない親切心で二次元人共を救ったお陰で異常者(ヒール)なんて気のふれた輩が出てくる様になっちまった。余計な親切心は災いを呼ぶって良い例だ。お前達も頭ん中に叩き込んでおけ」

 不敵な闇人の言伝に、新世代型達は闇人を睨み返した。

 

 

 

[突然の訪問者]

 

 と、新世代型たちが大将との語らいを終えたその時だった。

 突如、基地の警報が鳴り響いて基地全体に緊張が走った。

「な、何事だ!?」

 プロト世代の海道ジン達が動揺していると、警報の次にアナウンスが響いた。

「隊士に告ぐ、隊士に告ぐ! 南ゲートに敵影あり、敵影あり! 速やかに行動せよ! 繰り返す……」

 なんと基地の南側の出入り口に敵が現れたとの事。これに新世代型達は驚愕した。

「て、敵って……!」「まさか、黒武士関係の敵じゃないよな……!」

 新世代型達は挙って、突然の敵襲に戸惑った。

 すると新世代型の纏流子が皆に言った。

「行ってみようぜ! 誰が来たか、アタイ達の目で確かめてやらぁ!」

 そう言うと流子は一人で駆け出してしまう。

「あ! 流子! ……ふぅ、仕方ないな」

 一人で駆け出していってしまう妹の流子を見て、姉の皐月も後から追走した。

「ああ、二人とも待ちな! 行っちまったよ、どうする?」

「あの二人にだけ危険な真似はさせられない。こうなったら誰が襲撃してきたか、全員で確かめにいってみよう」

 姉妹揃って行ってしまった現状に、プロト世代のギュービッドが皆に問い掛けると海道ジンが皆で視認してみようと言い出した。

 新世代型達は、こうして敵襲が遭ったと言われる南門に向かった。

 

 そして現場の南ゲート。

 既に多くの隊士によってゲート付近は取り囲まれてた。

 其処に流子と皐月姉妹。そして他の新世代型達が駆けつけてみると、既にゲートを潜り抜けて基地敷地内に踏み込んでいる者たちの姿が視界に飛び込んできた。

「ふぅ、やれやれだ。我々は別に戦いに来たわけでは無いのだが……」

「しかし、戦意があるのなら此方もそれに応えるのが道理なのではないか。兄貴……」

 そう語り合うのは、錫杖鎌(しゃくじょうかま)錫砲丸(しゃくほうがん)を得物に持つ傍観兄弟の白蓮坊と黒蓮坊の二人。

「ははははは……そんなに俺の得物で穴だらけにされたいというのか? 是非もない……」

 虚ろな眼差しで得物である回転式六刃多砲身機関銃を構えるガトリンガー。

「まあ、待ちなされ。こやつらは、わらわ達が襲撃したのかと、勘違いしておるだけじゃ」

「ふふふふふ……それならそれで、全身の血を抜いてやるわ。ヒヒッ」

 同胞達に制止する声をかける大闇刑蘭の傍らで、不敵に笑む欲尼。

「………………」

 しかし一人だけ、刑蘭の傍らで何も喋らず、不穏な空気を流し続ける損尼は不気味に立ち続けるのみ。

 そんな六人の禍々しい二次元人たち、黒衣衆の出現に現場は騒然とする。

 

 突然の黒衣衆の訪問に驚き戸惑う皆々。

 そんな殺伐とした空気の中、黒衣衆が一人にして沈黙を破る損尼が、遠方から此方を傍観する聖龍HEADその内の一人であるミラーガールに得物を突き向けて言い放つ。

「久しいわね、ミラーガール……いいえ、加賀美あつこ!」

 この損尼の問い掛けに、ミラーガール本人は力強い面魂で返答する。

「いつか、あなた達の方から来ると思っていたわ、黒衣衆……」

 ミラーガールの返事に損尼は真顔で答える。

「聞きたい事があるの……分かるでしょ?」

「ええ、私は逃げも隠れもしないわ」

 このミラーガールの応答に、黒衣衆は脈動した。

 颯爽と大地を駆け抜け、走り出す黒衣衆。そんな黒衣衆の突然の行動に戸惑う聖龍隊隊士たちは、惑いながらも黒衣衆の足止めに入る。

「此処から先へは通さんぞ、黒衣衆!」

「退きなさい……! 今の私達は誰にも止められない……」

 進攻を阻止しようとする上官兵に欲尼が攻撃する。

「怯むな! どちらにしろ、こやつ等は敵なのだ!」

 黒衣衆の進撃に、聖龍隊上官兵が指揮を執る。

「折角です、私たち自ら稽古を付けてあげましょう!」

 そんな鬼気迫る隊士たちに、黒衣衆は太刀打ちする。

「慈眼大使リベンジャーズ、只今二次元の武士(もののふ)に帰参したり……! 同じ異端なる二次元の元へ……クククク、ハハハ!」

 二次元という、同じ異端の側として帰参した事を高々と宣言して陣地に踏み込む黒衣衆。

「大丈夫、どんな傷でも手当てして差し上げましょう……! こう見えて上手いのですよ? 僧の真似事の賜物です」

 隊士達に傷を負ってもスグに治療すると豪語する黒衣衆。僧侶として長い間、己を偽ってきた賜物だと自負する。

 しかし、そんな黒衣衆に怪我の手当てなど求めていない隊士達は、果敢に黒衣衆に襲い掛かる。

 

 すると其処に。黒衣衆の進撃を阻もうと、聖龍隊スター・ルーキーズが彼らの行く手を塞ぐ。

「ルーキーズ出動! 黒衣衆を圧倒せよ!」

 ミラールの指揮の下、ルーキーズは黒衣衆に挑みかかる。

「なんとまあ……わらわ達の進撃を止められると思うなよ」

 挑んでくるルーキーズの面々に、大闇刑蘭が数珠を巧みに操り、応戦する。

「俺たちの進撃には意味がある……そう、歴史の中に埋もれる、裏切りの歴史と同じ!」

 ガトリンガーは虚ろな眼差しで強烈な銃撃を連射する。遠距離からの銃撃に、暁美ほむらも遠距離から射撃して必死に応戦。

「何故あなた達は基地に攻め込んだの……!? 何の目的で……」

「あなた達には関係ないわ……! 直接ミラーガールに問い質すのみ……!」

 アスナの問い掛けに損尼は真剣な眼差しで訴える。

「ミラーガールに……? 何を問い質すの?」

「聖龍隊の新参者である、あなた達には関わり合いのない事よ……そこを通しなさい!」

 ミラーガールに用事がある損尼たちにリーファが訊ねるが、損尼たちは答えようとはしない。

「何の用事か解らねえが……テメェらの様な危険な輩をHEADに近付けさせる訳にはいかねえ!!」

「おかしな事を……どちらが真に危険な輩か、未だ解らぬと見える」

 危険人物である黒衣衆を近付けさせまいとするキリトの攻撃を避けながら、大闇が不敵な発言を述べる。

 そんなルーキーズとの攻防の中で、応戦する損尼は難しい顔を浮かべてた。

「だめ……どんな顔して良いのか、分からない……」

 そんな苦悩する損尼に、大闇が言葉を掛ける。

「安心せい、ソンヒよ……主の道はわらわ達も切り開く。故に思う存分、奴らに問い詰めるがいい……過去にあやつらが犯した、大罪について……!」

「……そうね……今はひたすら突き進むのみ!」

 大闇からの言葉に、損尼は我武者羅に突き進んでいった。

 そんな大闇の言葉に背を押された損尼を、他の黒衣衆が援護していく様子が垣間見られた。

「損尼! 己の中にくすぶる問答を、あの女にぶつけてやれ!」

 白蓮坊もまた、得物である鎌を振り回して損尼を援護する。

「過去に罪を背負ったのは、我々だけだと思うなあ!」

 負けじとガトリンガーもガトリングを砲撃して周囲の隊士をけん制する。

 

 聖龍隊隊士の必死の攻防を掻い潜り、黒衣衆は万進していく。

 まるで己の中にくすぶる迷いを振り払うかのように……。

 

 

 

[参じる孤影]

 

 ミラールやキリトたちスター・ルーキーズの追撃を掻い潜りながら、黒衣衆は絶えず移動して聖龍HEADの元へと馳せ参じる意志を見せ付けた。

 そんな進撃を続ける黒衣衆の猛進を止めるべく、彼らの前に立ちはだかる者たちが進攻を阻害する。

「まさか、こんな時にこんな場所で彼らと再会するとは……」

「彼らは元々、心無い人間だったんだよね? どうする気だい、君は?」

「此処はひとまず、拳と拳を交えて語り合おう! そうすれば、彼らの真意が自ずと見えてくる筈だ!」

「さて……私の様な欠かれ者に、果たして何処まで戦い抜けるのでしょうか……」

 黄金色の武具を身に付ける青年に、黄色と黒の横縞模様の服を身に纏う少年が話しかける一方、そんな二人に同行する玉虫色の甲冑を身に付けた青年が自問自答する。

 三人は進撃する黒衣衆の前に立ちはだかり、面と向かった。

「さあて……あなた達の真意を知りたい。村田順一、お相手お願い仕る!」

 黒衣衆の前に立ちはだかったのは、聖龍隊スター・コマンドーが総部隊長の村田順一と、最近聖龍隊の戦力に参名した鬼太郎、そして最後に台湾軍が国将軍であるシバ・カァチェンの三名だった。

 三人の者は、それぞれ進撃してくる黒衣衆に攻撃を仕掛けた。

「髪の毛針!」

 鬼太郎の髪の毛針が黒衣衆を捉えるが、黒衣衆はこれを各自散って回避する。

 各自散り散りになった黒衣衆に村田順一とカァチェンが攻撃を仕掛ける。

「おりゃッ!」「はぁッ!」

 順一の拳、カァチェンの斬撃が黒衣衆を狙うが、順一の拳による打撃を白蓮坊が鎌で弾き、カァチェンの斬撃は弟である黒蓮坊が砲丸で防ぎ切る。

 自分達に攻撃を仕掛けてきた村田順一、鬼太郎、カァチェンを前に黒衣衆は冷めた目付きで物申した。

「やれやれ、我らが歴史に仇名す咎人とはいえ、こうも攻められるとは……」

「向こうから仕掛けてきたんじゃ……この際、聖女と語り合う前に体を慣らしておくのも悪くない」

「それもそうね……ヒヒヒッ」

 ガトリンガーの言葉に刑蘭が物言うと、それに欲尼が同意する。

 すると村田順一からも、黒衣衆に問い掛けてきた。

「黒衣衆! 一体、副長に……ミラーガールに会ってどうする気だ!? もう二年前同様、アジアに戦火を撒き散らすのに意味などないと悟っている筈だ!」

 この順一からの問い掛けに白蓮坊が虚ろな眼差しで説く

「そうです……もはや鬼神無き今、戦渦など無用なのです……!」

 兄の白蓮坊に続いて弟の黒蓮坊も説き明かす。

「だとすれば……戦士であるお前達もまた、無用なのを悟っているか……?」

 黒蓮坊の言い分に、順一は黙然と口を閉ざしてしまう。

 戦士として、戦渦の無くなった時代や世界に自分達は必要とされているのか。それを説かれた気分で、順一は考えさせられた。

 しかし、順一に考える余裕を与えない勢いでガトリンガーが順一達三人に銃撃を仕掛ける。

 順一たち三人も散り散りに散って銃撃を回避して黒衣衆に応戦を続ける。

 が、ガトリンガーは狙いを順一に絞って連射攻撃を仕掛けていく。順一は激しいガトリングの銃撃を回り込む様に駆けて回避しながらガトリンガーに接近する。そしてガトリンガーに近付いた所で、順一はガトリンガーの得物であるガトリングに拳を一発入れて体勢を崩させる。

「ッ!」

 得物であるガトリングに拳を打ち込まれ、その衝撃と反動で体勢を崩したガトリンガーに順一は追撃の拳を打ち込もうとする。

 だがガトリンガーはガトリング砲からマイクロミサイルを発射して、順一を自身から遠ざける。マイクロミサイルを回避しようと、順一はガトリンガーと距離を置く。

「おや、皆さん揃って武装しているのですね……さては近々、大きな戦に臨む予定が?」

 応戦する中で、白蓮坊が武装状態の聖龍隊隊士を見て言うと、上官兵が反発する様に申し出た。

「し、知れた事! 我らはもうスグ、あの黒武士討伐に乗り出すのだ! 貴様らの様な狂人には関係ないがな!」

 この隊士の発言を聞いた黒衣衆は、揃って感激した。

「そうか……! ああ、間に合って良かった!」

 感度に湧き上がる黒衣衆は、攻撃の勢いを増す。

 

 一方で鬼太郎はシバ・カァチェンと背中を預け合ってその他の黒衣衆と戦闘を展開してた。

「まさか……妖怪童子と名高きゲゲゲの鬼太郎氏と背中を預け合うとは……この様な末路に至っただけでも、嬉しい所存であります」

「僕と背中を預け合っているだけで満足しない! 彼らは手ごわい、気を引き締めて!」

 名高き幽霊族の鬼太郎と背中を預け合っている現状に、妖怪好きのカァチェンは満足しがちだが、そんなカァチェンに気を引き締めるよう言い渡す鬼太郎。

 そんな二人を取り囲んで、黒衣衆が一人、欲尼が攻撃を仕掛けながら

「ふふふふ……名高き幽霊族とは裏腹に、失意のどん底に居続けた台湾が国将軍が一緒になって戦うとは……愉快ユカイ」

 不敵な笑みを浮かべる欲尼の攻撃を防いで耐え忍ぶ鬼太郎とカァチェン。

 すると其処に大闇が操る八つの大粒の数珠が飛んできて、鬼太郎を弾き飛ばす。

「うわっ」「き、鬼太郎殿!」

 数珠に弾き飛ばされる鬼太郎にカァチェンが声をかける。

「二年前から思っていたのですが……あの大闇刑蘭、彼女が操る数珠もまた……妖気なる妖術で操っているのでしょうか?」

 常に己の背後で浮かばせている宙を舞う八つの大粒の数珠を見て、カァチェンはその数珠を操る術は妖術なのかと疑問を呟く。

「いいや、彼らの場合、妖気とはまた違う……! 憎悪や悲しみに近い想いで戦う術を身に付けているんだ……!」

 疑問に思うカァチェンに、先ほど弾き飛ばされた鬼太郎が悶絶しながらカァチェンに説く。

 一方で黒衣衆は、対峙する者の肉体を切り裂き傷付ける感触に喜々とする。

「ああ……ああ! これが正当なる交流……! 命と命を賭け合う凌ぎ合い!」

 命と命を消耗させる凌ぎ合いを、心から満足する黒衣衆は常軌を逸していた。

 その様な黒衣衆と凌ぎを削り合うカァチェンは消耗していき、弱気になっていた。

「独法師カァチェンか……怪談とすら呼べないな」

 そんな疑問視を抱くカァチェンに、ガトリンガーと大闇が遠距離から銃弾と数珠の二重攻撃で攻める。が、カァチェンはその二重の攻撃を逆刃薙(さかばなぎ)を回転させて防いでみせる。

 全ての銃撃と数珠による連弾を防いだカァチェンに、欲尼と損尼の二人が独特の得物で攻撃しようと急接近。カァチェンはこれを逆刃薙(さかばなぎ)を回転させて周囲に斬撃の波紋を広げて二人をけん制する。

 欲尼と損尼の攻撃を退かせたカァチェンに、今度は白蓮坊と黒蓮坊の兄弟が一斉に襲い掛かる。

 白蓮坊の鎌による刃と黒蓮坊の鉄球による打撃がカァチェンを襲うが、カァチェンはこの二つの攻撃を逆刃薙(さかばなぎ)を使って同時に防いで見せた。

 するとカァチェンが攻撃を防いだ次の瞬間、彼が握り締める逆刃薙(さかばなぎ)から風のエネルギーが生じて、白蓮坊と黒蓮坊の二人に襲ってきた。二人の傍観兄弟は逆刃薙(さかばなぎ)からの風エネルギーに堪らず身を退かせる。

 意外なカァチェンの得物からの自然エネルギーに退き、距離を置いた傍観兄弟の元に、他の黒衣衆も集まって身を固める。

 そんな五人の黒衣衆に、彼らと同様、結束するカァチェンと順一と鬼太郎の三名が問い質した。

「何ゆえ……あなた方は加賀美殿を狙うのですか……!? 彼女が、鬼神小田原修司の許婚だからですか?」

「ふはははは……どうやら、勘違いしているみたいだな」

「勘違い?」「違うというのか?」

 カァチェンからの問い掛けにガトリンガーが不敵な笑みで答えると、鬼太郎と順一が問い返す。するとそれに黒衣衆の大闇が返答した。

「わらわ達は別に……加賀美あつこを取って食おうなどと思うてはおらん。今さら鬼神に仇名しても、なんの得にもならん」

『………………………………』

「……だがな、今回は少し訳ありでな。主らに一つの協定を持ちかけた次第じゃ」

「協定、だと……?」

 村田順一が疑問に思っていると、大闇はそれに答えた。

「そうじゃ、お互いに得をする協定じゃ。じゃが……その前に、この損尼が聖女に言伝したい事があると言うてな。まずは聖女に直談判してから協定を語り合おうと思ってなぁ」

「言伝……しかし、かつて聖龍隊と敵対してた、あなた方を無闇に受け入れる訳には行かないのが道理なのでは……」

 黒衣衆が持ちかける協定。しかしその前に聖龍隊の敵であった黒衣衆を受け入れられないのではとカァチェンが唱えると、そこに通信が入った。

「聖龍隊、戦いをやめろ! 黒衣衆を大人しくオレらの元に引き連れて来い!」

「そ、総長……!」「バーンズ……!」「バーンズ殿……!」

 通信機から聞こえてきたのは聖龍隊総長バーンズの声だった。彼の声に順一、鬼太郎、カァチェンは戸惑った。

 しかし聖龍隊総長バーンズが言うからには、何かの考えがあっての事。三人はバーンズに言われるがままに戦闘を一旦やめ、黒衣衆に道を開けた。

「はははは、やっと分かってくれた様だな。歴史とは常に正しいものとは限らない……」

 ガトリンガーが不敵な笑みを浮かべながら、虚ろな目で天を見上げる。

 

 こうして黒衣衆は、バーンズたち聖龍HEADの容認の上で進行した。

 かつて小田原修司を殺めんと、数々の暴挙を行い、日本天皇家にも多大な損害を齎し、被災に遭った日本を混乱させ、二年前のアジア大戦では多くの戦火を撒き散らした一団。それが今の黒衣衆。

 かの謎多き高僧、天海により認められ、同じ高僧としてアジア各地を転々として戦火を広げた彼らは何を思って現在を生き抜いているのであろうか。

 

 

 

[対決する女と女]

 

 村田順一、鬼太郎、カァチェンとの戦いを何とか凌ぎ、遂に黒衣衆は聖龍HEADの元へと辿り付いた。

「ようやく辿り着けたか……やれやれ、新参者らの為に、豪く時間がかかってしまったわい」

 聖龍HEADが身を置く本陣に到着し、大闇刑蘭は聖龍隊の新人達に対して愚痴を零す。

 そして黒衣衆が辿り付いた本陣には、一人だけで黒衣衆を待ち続けていたミラーガールが居座っていた。

 ミラーガールは黒衣衆の到着を感じ取ると、徐に立ち上がり、彼らの方に数歩歩いていく。

 黒衣衆に近寄るミラーガールは、彼らの真正面に立つと黒衣衆の目を直視して相手の考えを読み解く。

 するとミラーガールは鏡の盾から煌く短剣ミラーソードを出現させ取り出すと、黒衣衆に刃を向けて彼らと対峙する。ただの話し合いでは完全に通じない、刃と刃を交えなければ通じ合えないお互いの境地を悟ったからだ。

 このミラーガールの覚悟に応えようと、黒衣衆は一同に前進して彼女と応戦しようとした、その矢先。

「みんな、待って。……ここは私に委ねて」

 黒衣衆が一人、損尼が他の黒衣衆の前進を制止して言う。

 損尼の言葉に、大闇刑蘭が何かを悟るかのように返事する。

「有無、相解った。そちの望むままにやり合うがイイ……」

 大闇の了解を得て、損尼は得物である双小刀を手にしてミラーガールに向かっていった。

 

 ミラーガールと損尼、女と女の一騎打ちが今始まる。

 互いに刃をぶつけ合う両者。そんな激しい攻防の中で、損尼はミラーガール、いいや聖龍HEADに問い詰めた。

「あなた達は誰かを不幸にしていない? 自分達の夢の為に、誰かを泣かせていないの?」

 この損尼の問い掛けに、ミラーガールは激しく刃を激突させながらも静かに答えた。

「そうね……私達が選んだ道は、そういう道なのかもね」

 自分たち聖龍HEADが選んで突き進んできた道そして夢は、代わりに多くの人々を不幸にさせ涙を流させた夢だとミラーガールは認めた。

 やり切れない想いを刃に乗せてぶつけてくる損尼を前に、ミラーガールは彼女の想いを受け止めながら言い放つ。

「憎む相手が必要なら私たちも修司と一緒に憎んで、黒衣衆!」

 婚約者である小田原修司を憎む黒衣衆に、ミラーガールは自分たちHEADも一緒に憎む様に解き放つ。

 更に小田原修司によって、運命を翻弄され、捻じ曲げられた黒衣衆にミラーガールは叫んだ。

「向かってきなさい、黒衣衆! あなた達の運命を捻じ曲げた私たちを貫く為に!」

 もはや小田原修司だけではない、自分たちHEADも運命を大きく変えた一因である事を認めるミラーガール。

 女と女の一騎打ちを前に、ただ傍観するしかない新世代型たちを尻目に、黒衣衆が一人ガトリンガーが損尼と闘うミラーガールに向かって呟く。

「俺たちは、全ての時間を使って小田原修司と同じ畜生道に行く……あと少しだけ、待っていてもらおうか……」

 自分たちもまた、歴史が認めた小田原修司と同じ道を辿っていくと宣言するガトリンガーの呟きに、ミラーガールは損尼と熱戦を繰り広げながら聞き入れる。

 

 と、激しい一騎打ちに投じる損尼が此処でミラーガールに問い掛ける。

「ミラーガール……なぜ修司は友であるジュンスを、と聞いてもいいの?」

 なぜ小田原修司は元夫であるキム・ジュンスこと破邪王を殺めたのか訊ねる。これに対してミラーガールは真剣な眼差しで損尼に答え返した。

「修司は恐れていたの……ジュンスが罪を重ねる事を。そして……罪人であるジュンスが、他の人に裁かれる事を何よりも拒んだ」

 親友であるキム・ジュンスこと破邪王が罪を重ね、そして罪人ゆえに他人に裁かれてしまう事を嫌った故に、自らの手で親友を殺めたのだと説くミラーガール。

 このミラーガールの返答に、損尼は思い詰める。

「あなたの言っている事は分かるわ……私も今ではそう思う。だから……」

 だが、損尼はそれでも己の真意を変える事ができなかった。

「………………だけどね……」

 次の瞬間、損尼はミラーガールに対して怒号を言い放った。

「…………加賀美あつこッ! どうして修司は……小田原修司はッ!」

「そ、ソンヒ……!」

 損尼はミラーガールに、刃をぶつけながら泣き叫び始めた。

「まだジュンスに、自分の罪を後悔させる余裕を与えても良かったじゃないのよ! 彼は私達とは違って……生きなきゃいけなかったのよ!」

 破邪王ことキム・ジュンスは大罪人である自分達と違い、まだ生かせる道が、懺悔させる猶予があったと訴える。

 しかし破邪王は、キム・ジュンスはもう居ない。親友である小田原修司に、ミラーガールの婚約者に、そして新世代型達の始祖たる男に殺められてもう居ない。

 そんな悲痛な想いを、損尼はミラーガールにぶつけ続ける。

「もう二度と会えない! 叩く事も、謝らせる事もさせられない!」

 親殺し、人喰い。その大罪を詫び、懺悔させられる機会はもうないと泣きながら訴える欲尼。

 そんな損尼の心からの訴えに、ミラーガールは謝るしかできなかった。

「ソンヒ、ごめんなさい……本当に、ごめんなさい……!」

 

 かつて一人の男の運命を翻弄させた男の妻。その男の後悔を拭う為に暗躍した鬼神。

 その運命の翻弄が、男を人喰いの、親殺しの罪人に辿り着かせた。

 男は己の運命を呪い、理不尽な世界を払拭する豪傑として生まれ変わった。

 己を変え、ゆくゆくは世界を変える為に弱さを捨て、愛を捨て、強さのみを求めた男、破邪王。

 そんな男が辿り付いたのは、かつての旧友に罪人としてではなく武人として斬首される末路だった。

 しかし、そんな破邪王の運命を狂わせた元妻と親友は、考え方は違ってた。破邪王に罪を後悔させるか否かの違い。

 元妻は男の運命を翻弄させ、親友である鬼神は男の運命を大きく狂わせた。

 そんな歪な運命によって奔走させられた男の想いを、元妻と親友そして親友の婚約者は忘れてはいない。

 

 

 

[男の遺言]

 

 輝く太陽の下、燦々と照らす日差しの中で繰り広げられた二人の女の闘いは幕を下ろした。

 聖龍HEADが、黒衣衆が、そして聖龍隊の隊士や新世代型達が見守る中、ミラーガールと損尼の闘いは終わった。

 お互いに一人の男を愛した女。だが、同時にその男の運命を翻弄させ、狂わせてしまった点も共通してた。

 ミラーガールは小田原修司を、損尼ことソンヒは破邪王ことキム・ジュンスの運命を狂わせて、この世界を激変させてしまった女たち。

 

 そして激闘を終えた損尼はミラーガールに訊ねた。

「教えてちょうだい……ジュンスは、最後になんと言ったの……?」

 元夫であり、己の罪で運命を狂わせてしまった破邪王ことジュンスが最後に何を言い遺したのか訊ねると、ミラーガールは損尼の疑問に答えた。

「……ミャンチィよ、次は何処を目指そうか……そう言い遺したと、聞いているわ」

「! ミャンチィの事、を……?」

 破邪王を討ち取った修司からの言伝から、彼が最後に何を言い残したのか伝えると、損尼は驚いた。

 ミラーガールが「ええ」と頷き返すと、損尼は再度ミラーガールに訊ねた。

「……どんな、様子だったの?」

「修司が見た感じでは……昔を懐かしむ様に、言ったようよ」

「弱音、吐かなかったの?」

「ええ」

「悔やんでいた?」

「いいえ、最後まで修司に屈する事無く……己の意志を貫いたわ」

 元妻である自分や恋仲だったユナの名前ではなく、軍師であったミャンチィの名を最後に言い遺した破邪王の様子を何度も訊ねる損尼。

 そんな彼女にミラーガールは真剣な表情で破邪王が最後まで己の意志を固く貫いた事を損尼に伝えた。

 

「これだけは言えるわ……キム・ジュンスは、立派な武人として死んだ! 誰かに弄ばれた訳でもない、己が選んだ信念と意志を貫いて……!」

 

 一人の女に弄ばれた人生ではない、自らが決意して突き進んだ人生を破邪王は選んで往生したのだと強く熱弁するミラーガール。

 ミラーガールの熱弁を聞いて、損尼は自らの素顔を隠す顔当てを静かに外しながら呟いた。

「…………そう、なのね。彼は、自分の命を……人生を生き抜いたのね」

 顔当てを外した損尼は、ジュンスが、破邪王が自分の命を賭けて己の人生を生き抜いたのだと悟り、晴天の空を見上げた。

 そして彼女は、素のソンヒは頬から一滴の雫を流すと言った。

「……良い、夢だったのね。そうなのね………………ジュンス」

 キム・ジュンス、あの破邪王は自らが選んだ修羅の道を突き進み、己の野心を叶える為に万進した。

 誰に恋するでもなく、誰かに人生を弄ばれた訳でもない、己が選んだ人生を往生するかのように大地を踏み締めた破邪王。

 その最後の瞬間にも、彼は自分と共に人生を駆け抜けてくれた心強い軍師の事を忘れず、次なる世でまた共に戦乱を乗り越えようと亡き軍師に想いを馳せた破邪王。

 その生涯には、おそらく一片の曇りも無ければ、迷いも、そして躊躇いも無かったのだろう。

 

 ミラーガールからキム・ジュンスの最後を伝え聞いて、目から一滴の雫を流した損尼。

 そんな損尼を見て、黒衣衆の同士は彼女と同様、やるせない気持ちで一杯になった。

 その様子を見届けた新世代型二次元人達は、ふとミラーガールと損尼の決闘を観戦していた他の黒衣衆に話しかけた。

 すると黒衣衆は、自分達に話しかけて来た新世代型達に虚ろな生気のない目を向けて答え返していった。

「歴史とは、時には目が煌くほどの壮大で素晴らしい行為もあれば、同時に醜い人間の素顔を曝してしまうもの。そんな歴史の中で、損尼は歴史にも残るであろう破邪王の最後に立ち会えた感傷に浸れて良かったのかも知れない」

 虚ろな眼差しで語り明かすガトリンガーに続いて、傍観兄弟の白蓮坊と黒蓮坊の兄弟にも話し掛けてみた。

「歴史とはいつの世も残酷なもの! 弱き者は食い尽くされ、強者のみが生き残る術を見出せる世の真情が歴史には染み付いています……!」

「そんな歴史を陰から操り、陰で手を引いているのが我ら黒衣衆……大勢の人間を、多くの世を裏方から支配するのが醍醐味だった……二年前まではな」

 傍観兄弟からの話を聞いた新世代型達は、次に黒衣衆で副長の立場に当たる大闇刑蘭に話しかける。

「うはははは……っ。そう、わらわ達は二年前、アジア各地の政情を裏で巧みに操って各地に戦火を起こさせたのじゃ……要するに二年前のアジア大戦は、わらわ達が引き起こしたも同然。じゃが、一つだけ勘違いしないで貰いたい。わらわ達は鬼神への復讐の為だけでない、この何の不動もしないアジアに新たな旋風を巻き起こす為にも戦火を勃発させたのじゃ。まあ、鬼神に一矢報いたかったという本心も偽りは無いがな、ヒヒッ」

 不敵な笑みを所々で零す大闇の戯言に警戒心を張り詰める新世代型たち。

 そして彼らは勝負事に貪欲なまでに勝ちを欲する欲尼にも話を訊いた。

「彼女も、私たちも罪を犯した……けれど、罪を犯したのは聖龍隊も同じよ。自分達の夢や理想の為に多くを犠牲にしてきた彼女たちは、決して清廉潔白な人柄ではない。夢や理想というエゴを叶える為に、多くを犠牲にしてきた大罪人……それをあなた達も理解する事よ。自分の運命と同じだと……!」

 欲尼の提唱に新世代型達は若干引いてしまう。

 そして最後に、新世代型達は天を仰いで見上げる損尼に声をかけた。

 すると声をかけられた損尼は、未だ目に雫を浮かび上がらせながら、過去の己の大罪を語り明かしていく。

「私は……小田原修司によって破滅させられた私の一族は、ジュンスと彼が最愛してた女を引き裂く暴挙に出た。その女の父を自殺に追い込み、私は悠々とジュンスを手に入れ、結婚まで仕掛けた。だけど、ジュンスと仲の良かった小田原修司の数々の謀略によって、我が一族は崩壊の一途を辿り、遂に父も母も謎の狙撃手に撃ち抜かれて絶命したわ。それが小田原修司の手筈だったかは、あやふやだけど……結局、私たちは逆恨みに近い感情で小田原修司に牙を向けた。……まぁ、結果はあなた達も知っての通り、散々なものだったけどね。アジアに戦火を拡散させたというのに、小田原修司は多くの武人を突破し、その武人と同盟まで結べたのですからね」

 己の大罪に始まり、己の一族を壊滅させた小田原修司の謀略によって苦境に苛まれる事となった損尼たち黒衣衆は、アジアの各地で戦火を引き起こして小田原修司を追い詰めようとするが、結果的には交友的な武人との繋がりを果たさせる結果に至った。

 

 過去に多くの大罪を犯したばかりに、今尚多くの人々から罵倒され、恐れられている黒衣衆。

 彼らが二年前に引き起こしたアジア大戦は、多くの国々の運命を変えたが故に正しいものであったかどうかは不明だった。

 しかし共産党は崩壊し、中国の民主化は進んだ。他の国々でも多くが変わったのだけは確実なものだった。

 果たして、歴史の裏で暗躍する黒衣衆と歴史の表舞台で大いに活躍した小田原修司の顛末、歴史が仇名すその顛末は如何なものか。

 

 

 

[黒衣の言伝]

 

 新世代型達に己の真意を伝えた黒衣衆。

 と、己の真意を伝えた損尼は一度は外した顔当てを、再び自分の顔に装着すると新世代型達に向かって言い放った。

「さあ! 過去の感傷に浸るのは、これでお終い! 今度は私たちの方からあなた達に問いたいわ!」

 と、再び禍々しい性分と口調で新世代型達に問い掛けてきた損尼の一変した様子に、新世代型達は驚愕する。

 先ほどまで悲劇性の性分を垣間見せていた損尼が、顔当てを再び着けた事で性格が黒衣衆の普段の性格に豹変してしまったのだ。

 そんな二面性を見せ付けた損尼を始めとする黒衣衆は、新世代型たちの前に堂々と立ち尽くすと彼らに問い掛けてきた。

「さあ……あなた達の中に眠る狂気を見せてください」

「きょ、狂気だと?」

 白蓮坊の問い掛けに鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が反応した。

 自分達の中に眠る狂気とは何のことか、全く検討がつかない新世代型たち。

 新世代型達が戸惑っていると、彼らの視界に闇人が現れて告げてきた。

「ほらほら、こいつ等は俺さまを見たいと訊ねているんだよ。俺という闇人、闇人と言う狂気を確認したいのさ」

 闇人の不敵な発言に絶句する新世代型たちを前に、黒衣衆は彼らに問い掛ける。

「あなた達の中から確実に……おぞましい程の闇を感じられます。そう、あの鬼神にも勝るとも衰えない深き漆黒の闇を! どうか、それを我々に開示してみせてくれないでしょうか……」

 ガトリンガーからの切願を前にしても、新世代型達は戸惑うばかり。

 するとガトリンガーに続いて、他の黒衣衆も新世代型達に訴え始めた。

「御慈悲を……我ら、裏切りの一族が欲する歴史を左右するほどの闇を、どうか見せてください」

「俺たちを陥れ、今の混沌とした世界とその世界を紡ぎ出した歴史を創世した闇を、見せてくれぇ……!」

「わらわ達を苦境に追い詰め、それと引き換えに世界を聖龍隊に導かせた歴史最大の闇を……わらわ達に見せてはくれぬか?」

「私以上に貪欲に、勝利や地位を求め続けた鬼神にも勝るとも衰えない闇を……どうか見せて頂戴」

「私達だけじゃない……破邪王やヤン・ミィチェンの運命を狂わせた歴史の闇を司るあなた達の心の中を、曝け出して……」

 白蓮坊、黒蓮坊、大闇刑蘭、欲尼、損尼達からの訴えを聞いても尚、新世代型達は己の中の闇である闇人の存在を口に出すのは気が引けた。

 この一方的に自分達が欲求する闇を開示しろと訴える黒衣衆に、意を決して新世代型の星原ヒカルが訊き返した。

「そ、そういうあなた達こそ……自分達が陰で歴史を操っていると本気で思っているんですか!」

 星原ヒカルの問い掛けに、黒衣衆は至って真面目に返答した。

「何をおかしな事を……歴史とは、常に創る者と裏で巧みに操る者によって創世されるものなのじゃ」

 大闇が歴史とは二種類の人間によって創られると言い切ると、彼女に続いてガトリンガーが物申した。

「歴史を紡ぎ、歴史を陰から創世する……それが俺たち黒衣衆!」

 するとガトリンガーに続き、黒蓮坊が物申す。

「俺たちは黒衣の如く、歴史の闇に我が身を隠しつつ、陰で歴史を創世する大役を担わされている……!」

「だ、誰がそんな事あんた達に委ねたんだ!」

 黒蓮坊の言い分に、新世代型の真鍋義久が問い詰めると、黒衣衆は一丸となって答えた。

『それは…………我らが師、天海様!』

 歴史上、謎の多い高僧である天海こそ自分達の師であり、自分達も天海の様に歴史を陰ながら操る存在に成り変わりたいと強く主張する黒衣衆の思想に、新世代型達は愕然とした。

 そして白蓮坊が言った。

「歴史が認めたんですよ。我々をね……」

 自分達もまた、小田原修司や名立たる武将の様に歴史から認められた存在だと自負する発言に、またしても新世代型達は驚かされた。

「そ、そんな……あなた達の様な大罪人が歴史に認められたなんて……!」

 新世代型の森谷ヒヨリが黒衣衆に反論すると、白蓮坊は冷たい眼差しで申し返した。

「罪人、それはつまり……あなた達の様な存在という事ですか」

「!」

 過去の悪行から、ブラックリストに名前が記載された森谷ヒヨリたち一部の新世代型は返す言葉がなかった。

 そんな新世代型達の思想を悟ってか、黒蓮坊が新世代型達に説き掛ける。

「ぐふふ、まあ安心しろ……今の歴史の中、鬼神が生み出した歴史の中で生き続ける者は皆平等に罪人なのだ」

「え?」

 新世代型達が唖然とすると、黒蓮坊は語り続けた。

「我らの天敵、小田原修司が聖龍隊と共に創世した今生の世で生きている者は……我らの様に世間から爪弾きされた者の幸を奪って繁栄を味わっている薄情者の幸せ者。他人の幸せを奪って生の限りを尽くす無情の者なのじゃ」

「お、小田原修司が築き上げた今の時代の中で生きている人間は、みんな小田原修司と同罪だって言いたいのか?」

 真鍋義久が黒蓮坊に問い返すと、彼は目をギラギラに血走らせて申し開いた。

「その通り……! 今を、歴史を生きている者は全て平等に罪人なのだ……!」

 小田原修司が築き上げた今の世で生き永らえている者は、全てが平等に罪人だと主張する黒衣衆の言い分に新世代型達は言葉を失くしてしまう。

 そんな言葉を失くす新世代型達に、黒衣衆は語り明かした。

「歴史を、世界を変える力……それを持つと言われる二次元人。ならば、我々の様な罪人と化した二次元人にも、その力はあるのではないか? 我らは我らで、天海僧正の言い付けどおり、混沌と化した歴史を一つに束ねる裏方の責務に徹するのみ」

 あくまで自分達は裏切りの一族として天海僧正の申し付けを守り、歴史を陰ながら見守りつつも創る存在だと説き明かす黒衣衆。

 そんな発言を言い渡すと、今度は大闇一人が歴史の切なる事実を突き付けた。

「歴史とは業の深い記録そして記憶なのじゃ。人の幸せも、人の不幸も……平等に記録として残り、未来へと送り付ける……それが歴史なのじゃ」

 大闇の言うとおり、歴史とは常に明るいものばかりではない。人の業も不幸も、平等に記録として遺し、それを歴史として未来に送るもの。

 そんな業深い歴史の中を生き続けると、白蓮坊が熱く説き明かす。

「我々は生き続けます! 鬼神が……小田原修司が創り出した、この混沌で残酷な世で逞しく生き抜いて見せましょう! それが……我々の贖罪」

 残酷な混沌の歴史の中で生き続けると唱える白蓮坊たち黒衣衆の訴えに、新世代型達は釈然としながらも聞き及んでいた。

 すると此処まで黒衣衆の語りを淡々と聞いていた新世代型が思わず問い掛けてしまう。

「な、なあ、歴史の裏方って……結局は何をしてるんだ、あんたら?」

「ね、燃堂! こんなキチガイ共の言っている事、真に受けない方がいいぞ!」

 思わず問い掛けてしまう燃堂力に対して、黒衣衆の言葉に余り耳を貸さないほうが良いと訴えかける親友の斉木楠雄。そんな二人のやり取りを見て、黒衣衆は不敵な微笑を浮かべながら一様に反論した。

「ふふふふふ、俺たちをキチガイとは……鬼の申し子とはいえ、酷い事を言いますねぇ……クッハッハッハ」

「残酷な事をさらっと述べるとは……流石は鬼神の子、無道無情の心情は親譲りという訳か」

 小田原修司の申し子と忌み名を言われてる新世代型達に非情さを訴える白蓮坊と黒蓮坊の二人。

 すると、ここで大闇が燃堂力の問い掛けに答え始めた。

「ぐひひ、若造よ。わらわ達、黒衣の者どもは、歴史を陰で操り、巧みに創り出す造形者の様な者なのじゃ。わらわは歴史の頂点に立つ者を見限り、そして裏切る事で歴史を一区切りに終わらせ、そして始まらせる陰の功労者なのじゃ」

「裏切る事で歴史を……!?」

 大闇の話に反感を覚える星原ヒカルたち新世代型に、ガトリンガーが続けて新世代型に語り明かす。

「歴史とは美しい実情、美景なものばかりではない。時には裏切りや謀略、人の醜い真情を赤裸々に映し出す記録なのだ。俺たちは小田原修司に見限られ、それでいて歴史を創り出す為に多くを裏切って二年前のアジアに大戦を引き起こしたのだ。歴史とは人の争いや野心、謀略や裏切りの塊である事を忘れるでない」

 虚ろで血走った眼で新世代型に説くガトリンガーの話に、新世代型達は背筋に悪寒を感じた。

 しかし、そんな黒衣衆に新世代型が反発する。

「で、でも……! 小田原修司に見限られたって言っているけど、それはあんた達が悪事を働いていたから異常者(ヒール)として処罰されたんでしょ!」

 新世代型の花園まりえが、小田原修司に見限られたのは黒衣衆が悪事を働いていたからなのではと説き返すと、黒衣衆は虚ろな眼差しで新世代型たちを一様に睨みつけ威圧する。

 黒衣衆の無言の威圧に新世代型達は一瞬で硬直した。

 すると再び大闇が新世代型二次元人たちを前に、語り始めた。

「ふひひ、確かに……わらわ達は陰湿で非道な行いをしていた。故に鬼神の目に付き、その毒牙にかかられ、人生の全てを奪われたものよ。じゃがな……人の運命を人が狂わせても良いものか……主らにそれが分かるか? いいや、分からぬであろう……わらわ達のように、運命を狂わされ、人生そのものを奪われた弱者たるわらわ達の不幸なぞ……」

「わ、分かるものですか! 貴方達の様に大罪を犯して人生を台無しにした悪党の気持ちなんて!」

 大闇の話に新世代型の薙切えりなが反論すると、次の瞬間黒衣衆の欲尼がえりなに言い放った。

「ええ! 分かりっこないでしょうね! 私たち鬼神に人生を翻弄され、運命を狂わされた挙句、人生を奪われた少数の人間の気持ちなんて……分かりっこないでしょう」

 悲嘆そうに語る欲尼の言動に、新世代型達は何処かやるせない気持ちで心が暗雲とした。

 

 過去に様々な悪事を働いた黒衣衆。

 彼らの悪事を敏感に察し、それを処罰した小田原修司。それによって彼らの運命は大きく狂わされた。

 それ故に、彼らは自分達を受け入れてくれた天海僧正に慢心し、その後、アジアに戦火を拡散させた。

 悪事を働いた黒衣衆が戦火の発端か、それとも彼らの運命を狂わせた小田原修司に非があるのか。

 誰にも、その真実は分からない。

 

 

 

[協定の行方]

 

 新世代型達に、自分達の非業な運命を語り出し、裏切りの一族として歴史を陰ながら支え、守り、そして築き上げる役目を説く黒衣衆。

 彼らが淡々と虚ろな眼差しで語る様を目の当たりにした新世代型達は、黒衣衆が役回りしている歴史の陰の指導者たる存在に目を丸くして驚いていた。

 そんなところに、バーンズたち聖龍HEADがやって来た。

「どうした? そんなに目を丸くさせて……」

 バーンズは何か黒衣衆から話を聞いた為に目を丸くさせていた新世代型達に問い掛けた。

 新世代型達は、先ほど黒衣衆から聞いた話を思い返しながらも、バーンズに返す言葉が見付からなかった。

 と、そんな新世代型達の様子を視認しながらも、バーンズは先ほど損尼と一騎打ちし合ったミラーガールと合流した状態で黒衣衆に問い質した。

「それで、アッコとの一対一の話し合いは済んだ様だし……他に用件とかはあんのか?」

 バーンズが問い質すと、黒衣衆はバーンズに面と向かって返答し出した。

「わらわ……わらわ達が欲するのは……」

「くふふふ……意外や意外ですよ? きっとあなた方が驚倒してしまうほどの驚きでしょう」

「いいから! 何なのか言ってみろ、話が進まない」

 大闇と白蓮坊の不敵な言動にバーンズが兎に角話すように促すと、他の黒衣衆が語り出した。

「私たち……歴史を陰から生み出し、操る黒衣衆にとって……歴史そのものを壊して消滅させようとする黒武士は、至って許せない存在なの」

「へぇ……君たちにも許せないっていう相手がいるんだねぇ」

 損尼の発言にジュピターキッドが愚痴を零す。

「そう、あの黒武士……人命だけではないわ。人の歴史、人の記録そのものを抹消しようとするその暴威! 決して許されざるものではないわ」

「………………」

 かつて人命を面白半分で奪ってきた黒衣衆の言動に、セーラー戦士達は無言で聞き及んでいた。

「あの黒武士は、我ら歴史を陰ながら守ってきた黒衣衆の働きすら皆無にしようとしている。この暴挙、止めねばなるまい……!」

「だから私たちは今、各地から戦力になる仲間を募っているわ。あなた達が心配する必要はないわ」

 黒蓮坊の言葉に、キューティーハニーが冷めた口調で問い返すと、ガトリンガーがそれに猛反発した。

「それは違う! 歴史とは、結果だけを残して記録される貴重なもの! それを破壊しようとするのは、俺達が行ってきた罪より遥かに重い大罪! 黒武士は何としても、我らの手で阻止しなければ……」

「それは余計なお節介って奴だぜ、黒衣衆。そもそもお前達の手助けなんて、誰が必要とするか」

 HEADの堂本海人の台詞に、黒衣衆は言い返した。

「ふふふ、でも……未だに黒武士への抵抗力は集結してないんでしょ?」

「それを言われると……何も言い返せないな」

 欲尼の言い分に、バーンズは返す言葉が見付からない。

 すると最初の方で話し始めた大闇が、聖龍HEADに意外な事柄を打ち明けた。

「そこで一つ提案なんじゃが………………わらわ達と協定を結ばないか?」

「協定、だと?」

 バーンズが目を丸くすると、大闇は続けて話した。

「そうじゃそうじゃ……わらわたち黒衣衆と聖龍隊は、黒武士打倒の為に同盟の協定を結ぼうというのじゃ」

「な、なんだと……!?」

 なんと黒衣衆は聖龍隊と打倒黒武士を掲げて同盟の協定を結ぼうと言い出しだのだ。これにはバーンズたちHEADも驚愕し、戸惑った。

「お、お前達と同盟だと……ふざけるな!」

 バーンズが言い返すと、大闇は至って真面目な面構えで申し渡した。

「ふざけてなどおらぬ。本気も本気じゃ。あの強力な力を携えている黒武士を打倒するには、お互いに戦力は乏しいのは目に見えておるじゃろ。ならば此処は一つ、黒武士を倒すまで手を組もうではないか」

「ふざけるな! 二年前のテメェらの謀略で、アジアが戦火に包まれたのを忘れられっか! そんな極悪人を側に置いておく訳にはいかねえ……! 本当なら、この場でテメエらを断罪しても誰も文句は言わねえぞ!」

 しかし大闇の申し出に、バーンズは腹を立てる始末。そんな彼に白蓮坊は嘆願する。

「どうぞ……我らに生きる意味を! 同じ歴史を創世してきた者として、慈悲をお与えください……!」

「どうか」「どうか……」

 白蓮坊たち黒衣衆の切願に、途方に暮れる聖龍HEAD。

 すると、そんな黒衣衆の嘆願に、ミラーガールがHEADの仲間達に訴えた。

「……ねえ、みんな。此処は一つ、黒衣衆からの協定に応じない?」

「なッ! なに言ってやがんだアッコ! コイツらが今までどんな悪事を働いてきたか知ってんだろ!? コイツらは聖龍隊の隊士達だけじゃない、アジア中の武将達からも反感を買っている連中なんだぞ」

 黒衣衆からの協定に応じる構えを見せるミラーガールに、バーンズたちHEADは反発した。

 しかしミラーガールは、黒衣衆との同盟の協定についてこう述べ返した。

「今は互い互いに争っている場合じゃないわ。こういう時こそ、一致団結して共通の敵を……黒武士の猛威を阻止しないと」

「け、けどよ……」

 ミラーガールの提案に難色を示すHEAD。

 すると、このHEADと黒衣衆の談話を聞いていた隊士たちが騒ぎ出した。

「本気ですか、副長!」

「コイツらに大事な仲間を殺傷されたのが、一度や二度ではない事をお忘れですか!?」

 二年前のアジア大戦に続き、つい最近の戦への乱入での殺傷事件で多くの仲間を傷付けられた隊士達は反発した。

 そんな隊士たちからの冷遇された視線を一身に浴びて、黒衣衆は虚ろな眼差しで見詰め返す。

「お前らなんて、所詮は雑魚の集まりよ! 我ら聖龍隊の力で片付けてくれよう……!」

「おやおや」「俺等を片付けようとは……なんとも無謀無謀」

 協定を持ち掛けてきた黒衣衆に、聖龍隊士は反発して一触即発の雰囲気を醸し出す始末。この状況に白蓮坊と黒蓮坊の二人が愛想を尽かしながら、黒衣衆一同は得物を構えて臨戦態勢に入った。

 この事態に聖龍隊総長バーンズが待ったを掛ける。

「お前ら待て!」

 しかしバーンズの制止にも隊士たちは止まらない。

 と、この状況下の中で一人の隊士姿の人物が仲裁に入ってきた。

「やめろ、お前ら!」

 その隊士の呼びかけに、黒衣衆と一触即発寸前であった隊士達は止まった。

「か、看護総長……!」

 隊士たちを呼び止めたのは、聖龍隊看護総長すなわち怪我人や負傷者の手当てをする隊士を一括する役目を担わされている軍医。そしてその軍医こそ、普段は町医者を営んでいるHEADのナースエンジェルの婚約者、宇崎星夜だった。

「おや、貴方は……確か小説の方でもかなり目立っていた、ナースエンジェルと婚約まで果たしている宇崎星夜じゃないですか」

「久々だな、黒衣衆……その口振りじゃ、あんたらも総長が……いや、小田原修司が書いた自伝本を読んでいる様だな」

「まあな。我らの運命を狂わせた鬼神、それがどの様な生い立ちを経て、あのような末恐ろしい人間に成り果てたのか知りたかったからな」

 白蓮坊の問い掛けに返答しつつも聞き返す星夜に、黒蓮坊が自分たち黒衣衆も小田原修司が書き残した自伝本を読んでいる事を述べる。

「なら、少しは分かる筈だ。修司がどんな出生だったか……何ゆえ人間不信で、他人からの愛情を感じ得なかったのか」

「ええ、今ならハッキリと分かる。まさか発達障害者だったとは……人は見かけによりませんね」

 星夜の問い掛けに、白蓮坊が虚ろな態度で返答する。

 そして、そんな黒衣衆との衝突を制止した星夜は、皆の前に出向くと隊士達に呼びかけた。

「みんなが思う事は俺も一緒だ。黒衣衆は、リベンジャーズの頃から限りない悪事を働き、多くの命を奪ってきた。そして黒衣衆に成り変わった後も、その風貌と巧みな話術でアジア各地に戦火を広げた大罪人だという事は俺も熟知している」

『………………………………』

「そんな極悪人である黒衣衆と同盟協定を結ぶなんて、俺さまもどうかしてると思うよ? ……けどな、今まで数多くの戦闘を経験して未だに負傷者が絶えない原状から見れば、戦力の拡大いや導入は仕方ない事なのかもしれない」

「し、しかし看護総長! 黒衣衆を信じて、同盟なんか結んでも大丈夫なのですか?」

「確かに信じられない気持ちも、俺は同じだ。だが、少しでも世界各地で猛威を振るっている黒武士に対抗する為には何かを妥協しなければならない事も多々ある。皮肉だが、今回の様に聖龍隊と思想が不一致していながらも、共通の目的達成の為には手を組まなければならない状況だってあるのよ。ミラーガールはそこまで見通して、黒衣衆との協定を受け入れたんだろう。なっ?」

 隊士たちと対話する星夜は、最後にミラーガールに目を向けると彼女は力強く頷いた。

「みんな……確かに黒衣衆と協力し合うのは気に入らないのは私も重々承知してるわ。けれど今は共通の目的、そう、黒武士打倒の為に堪えてほしいの。黒衣衆にも過去の自分達の過ちを清算させる機会にもなる。皆の彼らを許せない気持ちは最もよ、だけどそれを今は押し殺して、目的達成の為に手を組みましょう!」

 ミラーガールからの真剣な訴えに、隊士達は黙然と彼女の提案を妥協した。

 

 そしてミラーガールは改めて、黒衣衆と向き合い話した。

「いいわ、あなた達の協定、受け入れるわ。聖龍隊の戦力として、惜しみなく実力を発揮して」

 ミラーガールは黒衣衆に手を差し伸べると、握手を求めた。これを目前にした黒衣衆は一驚しつつも彼女に問い返した。

「ホンに……主はおめでたいほど人を信じよる……わらわ達がまた、主らを裏切るかもしれんのだぞ」

 この大闇の問い掛けに、ミラーガールは口元を笑ませた真顔で返答した。

「そうかもしれない。けれど、私たちが向かおうとしている未来は同じもののはず! その未来を何色に……どんな世界や歴史に色付けるかは別の問題の筈。だから、あなた達を受け入れられるの」

「なんと寛大な……鬼神にも見習ってほしいものぞ」

 向かうべき未来は同じ、無色透明の未来に向かう者同士。だからこそ黒衣衆を受け入れられると説くミラーガールの答えに、大闇は彼の鬼神にも見習って欲しいと愚痴を零す。

「それでも……またいつ、我々が狂気に染まるか解ったものではないですよ」

 ガトリンガーが、また自分達が狂喜に呑み込まれて殺生を行うか疑心させる言葉を吐くが、ミラーガールは動揺せず真っ直ぐ向き合った。

「それでも良いわ。私は信じてる……人は変われるという事を」

「人は変われる、ですか……ふふふ、実に夢見がちな御人だ」

 人は変われると説くミラーガールに、夢見がちと説き返す白蓮坊は思わず愛想笑いを浮かべてしまう。

 

 こうして最初にミラーガールと激闘した損尼を含んだ黒衣衆は、聖龍隊と協定を結んだ。

 

 

[黒衣の説法]

 

 聖龍隊と歴史すら滅ぼしかねない黒武士の打倒を目指して同盟の協定を結んだ黒衣衆。

 不気味で異様な雰囲気を醸し出す彼ら六人に新世代型やカァチェン、そして多くの隊士が軽蔑の眼差しを向ける。

 しかし戦いを終えた彼らは一転して実に穏やかな性分へと変貌し、本当に傷付いた、いや自分達が傷付けた隊士の怪我を看て回った。

 そして大方の隊士の怪我を看終わった彼ら六人の僧侶は、一箇所に留まる様に集結して一つの輪を作る様に向き合った。

 そんな不気味で意味深な言動ばかり口にする黒衣衆に、新世代型達はカァチェンを護衛にさせて接近した。

「……何か、我らに用か?」「!!」

 接近した自分達に声をかけてきた白蓮坊に、驚愕する新世代型一同。

 異常なまでに怯える新世代型達に、大闇刑蘭が穏やかな口調で問い掛ける。

「なんぞ、わらわ達に訊ねたい事でもあるのか? いいぞ、命が減らない限りは答えて進ぜよう」

 不気味な威圧感で覇気迫る黒衣衆は、新世代型たちを護衛しているカァチェンに目を付けては、彼に問い掛ける。

「ほれ、そこの人。玉虫色の眩い鎧を身に付けた青年……」

「わ、私の事でしょうか……?」

 白蓮坊は手招きしながらカァチェンを呼びつける。これにカァチェンは動揺しながら受け答えた。

「ふむふむ、なるほど…………ずばり貴方は、今まさに恋をしていますね」

「こ、恋!? 何を、急に……! どうして、私が恋をしていると言うのですか……!?」

 カァチェンを一時観察した白蓮坊は、彼が現在恋をしている真っ只中だと説く。これにカァチェンは激しく動揺し戸惑いつつも問い返すと、大闇は続けて問い掛ける。

「ぬしは案外、あの女に魅入っておるのではないか? 輝かしき慈愛の精神を持つ、あの女に心を奪われてはおらんか?」

「………………………………」

 まるで真を突かれているかの様に黙り込むカァチェンが見せる今までに無い反応に、新世代型達は唖然と見詰めた。

 

 すると此処で黒衣衆は、何かを新世代型達に問い掛けられた訳でもないのに自分達の真情を語り始めた。

「我々は……本当の自分を取り戻したかった。鬼神に、あなた方の始祖に当たる小田原修司に奪われた生を取り戻すべく、こうして偽りながら僧侶の身分へと己を変えたのです」

「本当の、自分を……」

 白蓮坊が語り明かす本当の自分を取り戻すという説法に、新世代型たちとカァチェンは聞き入った。

 すると白蓮坊に続き、ガトリンガーと黒蓮坊も真情を語り明かす。

「我々は誰よりも人間(ひと)の生を理解しようと、こうして身を偽って生きてきた。時には穏やかで平和な日々を、時には目まぐるしい程に血気盛んな戦乱の中をひた走り……!」

「様々な武人の生涯を……信念や生き様を見通して、人間(ひと)とは何かを考え、悟ろうとした。それ故にアジアに戦火を発起させたが……結局のところ人間(ひと)とは何なのか理解し切れなかった」

 すると今度は歴史の実情について大闇刑蘭が語り出した。

「歴史とは常に、憎悪や悲哀の連鎖……それを断ち切る事なぞ不可能。お主らも、それを理解しておくとよいぞ。その様な連鎖を生み、今日まで巡らせてきた鬼神の申し子としてな……!」

 憎悪や悲哀の連鎖を生み出し続けた鬼神の申し子として、胸に刻み込むよう言い付ける大闇の言葉に新世代型達は不意を衝かれる。

 黒衣衆が、他の人々と同様、自分達を鬼神の申し子、小田原修司のクローンと認識している事を痛感させられた新世代型の中で、呆然としている燃堂力が黒衣衆に質問した。

「あ、あんたらは二年前のアジア大戦の頃から色んな所を転々としているみたいだけどよ……何が目的なんだ?」

 アジア大戦の日々から、各地を転々としている黒衣衆に燃堂力が訊くと黒蓮坊と白蓮坊が答えた。

「別に……特に大した意味はない」

「意味を定めず彷徨うのも、思いの外、愉しいものです」

 不敵な面を浮かべて答える傍観兄弟の返答に新世代型達は呆気に取られる。

 するとこの時、黒衣衆は新世代型たちの頭の天辺から爪先まで見渡しているのを、新世代型たちも気付いた。

「な、なに?」

 自分達を異常なまでに観察する黒衣衆の視線に、美都玲奈が生徒達を庇いながら問い掛けると白蓮坊が彼女らに手の平を差し向けて昔を懐かしむ様に語った。

「ククククククク……未だに手に残っています……あの御方とのささやかなる戯れ……交じり合う刃の感触……!」

 未だ己の手に残る刃と刃が交じり合う感触を思い起こす黒衣衆。かつて鬼神と戦った殺意の刃を思い返す黒衣衆の不敵な態度により一層怯える新世代型。

 と、昔を思い返した黒衣衆は狂喜の笑いを込み上げていると、突然怒り出した。

「ククク……クハハハハハッ! 何故、何故なのだ小田原修司!? 何故我らにこの快楽を思い出せたのだ!?」

 天に向かって怒声を言い放つ黒衣衆の一団に、動揺する新世代型たち。そんな彼らに黒衣衆は問い質した。

「何故! 何故あなた達、鬼神の申し子たる新世代型は平穏な日々を壊したの!? どうして私達から平穏を奪うの!? どうして…………殺戮の快楽を思い出させるの?」

 欲尼が動揺する新世代型達に問い詰めるが、新世代型は当然の様に言い返す。

「ち、違う! 俺達が平穏を壊した訳じゃない、平和を望んでいたのは俺たちも同じだ!」

 だが、この真鍋義久の反論に大闇刑蘭が血走った眼で言い返す。

「何が違うのじゃ!! 現政奉還という起こりを始まらせ、平穏を壊したのは主ら新世代型であろうが! 故に、わらわ達の中に眠ってた狂喜を……快楽を思い出させたのは主らに相違ないであろう!」

 大闇から事実を突き付けられ、新世代型達は口を噤んでしまう。

 しかしながら黒衣衆はそれでも、全てを見通した思考で己自身と見詰め合う。

「結局、全てが真なのでしょうね……死を好む我らも、それを忌む自分自身も……この微睡から目覚めたくないと願う私も…………あの方との生を希う、己自身も……」

 あの方、自分達の運命を奪い、捻じ曲げた鬼神との殺戮の日々を懐かしむ損尼たち黒衣衆。

「我々は一体、どうしたらよいのだ……? 教えてください、天海僧正……」

 天に向かって救いを求める様に嘆願する白蓮坊たち黒衣衆の面々を見て、戸惑う新世代型達は選別ながら黒衣衆に言葉を掛けた。

「お、俺たちにはアンタたちの細かい事情なんて、知ったこっちゃないけどさ……で、でも、あんた達も自分が後悔しない事が、一番大事だと思う、ぞ……!」

『――ッ!」

 真鍋義久たち新世代型達の助言に、黒衣衆は愕然とした。

「まさか……! 鬼神の申し子たる、あなた方から救いの御言葉を賜るとは……!」

「ホンに、この眼が飛び出るほどに驚じたぞ。わらわ達の様な者には、微塵の情けも掛けてくれなかった鬼神そのクローンたる主らに気付かされるとは……!」

 白蓮坊と大闇は驚愕した自分達の心意を率直に新世代型達に述べた。

 すると勝手に語り始めた黒衣衆が、また勝手に話を締め括ろうとしていた。

「さて……戻りましょうか、我々が在るべき場所と姿に……とは言え、少々長く空け過ぎましたがね」

「平和に惚けるのも……まあ、時にはいいでしょう」

 僧侶としてではなく、本来の悪人としての姿に戻ろうと言い出す白蓮坊の言葉に欲尼も同意する。

 しかし、昔の姿に戻ろうとする黒衣衆の戯言を聞いて、新世代型の薙切えりなが物申した。

「お待ちになって! あなた達はリベンジャーズから黒衣衆へと身を偽ってきた……今でも、周囲を欺ける為に自分を偽っているんじゃないですの?」

 このえりなの問い掛けに、傍観兄弟の黒蓮坊と白蓮坊が答えた。

「如何にも……俺たちはかつて、己の欲求を……人間(ひと)に戻る為に、周りを欺いてきた」

「全くです……しかし、今の我らに嘘偽りなどありませんよ。心から、あの御方の……天海僧正の忠臣として帰りたいのです……!」

「天海僧正の、忠臣……?」

 この言葉に幸平創真たち新世代型達は首を傾げた。

 すると損尼が新世代型達に代弁した。

「私たちは歴史の裏で……陰で、その歴史を動かす大人物を仕留めて歴史に激動という流れを与えた人々を祖として崇めているわ。天海僧正、いえ、明智光秀……ユダにブルータス。多くの名立たる裏切りの一族を祖として、歴史を陰ながら定めているの……」

 損尼の言論に動かされたのか、再び白蓮坊が新世代型達に語り尽くす。

「言われるまでもありません……! 一人の人間(ひと)として、あの御方に……歴史に尽くしてみせましょう!」

 

 

 

[心の闇を悟る黒衣]

 

 黒衣衆が、自分達が歴史を陰で流動させる立場の人間を祖として、そしてその人物たち同様に自分達もまた歴史を動かす存在なのだと説き明かしていく一方で、新世代型とカァチェンはそんな黒衣衆の話に耳を傾けてた。

「歴史とは壮大なるドラマ! 多くを魅了し、多くを惹き込ませる……壮大な人間(ひと)の物語! 我々は、その壮大な物語を取り巻く重要な役回りなのですよ!」

 白蓮坊が自分たち黒衣衆は歴史という物語を綴る上で欠かせない役回りなのだと熱弁するが、そんな狂喜染みた言動を述べていく黒衣衆の話に疑心が湧いてきた新世代型。

 そんな新世代型達の心理を悟ってか、黒衣衆は彼らに語り掛ける。

「おやおや、わらわ達の言う事が信じられぬという顔じゃな。しかし……どんなに主らが否定しようが、歴史とはわらわ達の様な輩の手で創られ、そして束ねられる一本の長い永い物語なのじゃ。それを否定する事は、すなわちその歴史の中で生きている自分自身を否定する事になる」

(歴史を創り出し、歴史を束ねる存在……それが黒衣衆)

 黒衣衆の大闇刑蘭の語りを聞いて、新世代型たちは一同に黒衣衆がどの様な存在なのか受け入れ始めていた。

 歴史という人々の生涯や記録の積み重ねを紐解けば、多くの謎や真実が垣間見えてくる。そんな歴史を創世するのは他でもない人間そのもの。黒衣衆は、かつて人間である証を小田原修司に剥奪された事から、自分達の手で歴史を創世する事で人間としての証明を取り戻したかったのかもしれない。そう解釈する新世代型。

 

 すると新世代型に自分達の真情を黒衣衆が語っている所に、ミラーガールを先導とした聖龍HEADが歩み寄ってきた。彼女たちは黒衣衆が何か、新世代型を不安に駆り立てる様な言動を口に出していないか気になってやって来たのだ。

「あなた達、さっきから随分と面白い話するじゃない」

「おやおや、聖女。あなた達も我々の談話に参加しますか?」

 余裕を感じさせる不敵な笑みで歩み寄るミラーガールに、白蓮坊が話に加わるのか訊ねる。

「歴史を創る、か……その為にテメェらは、どれだけの真人間の人生を台無しにしてきたか」

 黒衣衆の話を聞いて、バーンズは黒衣衆に愚痴を零す。

 すると黒衣衆はバーンズの愚痴を聞いた上で問い返した。

「おや、何をおかしな事を仰るのか? 歴史とは人の生の積み重ね……そして人の生とはすなわち、殺し合う事! 殺戮の歴史、争いの歴史こそ人間(ひと)の歴史なのじゃよ」

「殺し合うだなんて……人の歴史は、決して争いばかりの歴史ではないわ!」

「そうだ! 争いだけが歴史なんて、間違っている……!」

 大闇の発言に、HEADのセーラームーンや新世代型の瀬名アラタが反論する。が、黒衣衆は自分達の意見を捻じ曲げない。

「ふふふ、とんだ綺麗事ね……人間の歴史は常に、奪い合い、騙し合い、殺し合う争いの歴史! それを否定する事は、己の中の人間性を否定する事よ!」

 欲尼が人間の歴史について説き明かすと、HEADも新世代型たちも何も反論できなくなってしまう。

 すると、この話を聞いたミラーガールは黒衣衆に問い質した。

「……それじゃ、あなた達はまた殺し合う為に……自分の命を投げ出してまでも、戦地に赴く訳?」

 このミラーガールの質問に、黒衣衆は答えた。

「ええ、その通り……! 命を張って、命を賭けてこそ……戦の醍醐味……! 我々は歴史に新たなる変化を与える為にこそ、この命を投げ打って……死地へと赴かねば成らないのだ」

 この黒衣衆の返答に、ミラーガールは表情を険しくさせて再度問い詰めた。

「あなた達、本当は……死ぬために急いでいるんじゃない? 死地へと赴く為に、私たちと同盟を果たしたんじゃないの?」

 この質問に黒衣衆は歓喜に湧いたかのように声を挙げた。

「長かった……これでようやく帰参出来る……! 待っていて下さいね? 今すぐ御傍へ馳せ参じます……!」

 黒衣衆は、自分達が心酔する天海僧正の許へと赴けると酔狂し切っていた。

 だが、そんな黒衣衆にミラーガールは真顔で言った。

「悪いけど……死にに行くなら、出撃はさせないつもりよ。私たちも、他のみんなも……死にに行く為に戦う訳じゃない、生きる為に戦うの! 命を粗末にするつもりなら、戦場での活躍はさえられないわ!」

「クククク……相変わらず、甘い御方だ。結局の所、戦いが起きれば必ず死人は出ます。貴女がどんなに人の命を想おうと、死者が出るのを止められると思っているのですか?」

 ミラーガールの熱弁を聞いた上で黒衣衆が問い返すと、ミラーガールは迷う事無く返答した。

「それでも……自分の命を大事にできない人に、私は戦って欲しくない。そう想うわ」

 ミラーガールの真情を聞いて、黒衣衆が微動だにしない中、新世代型はミラーガールの言葉に衝撃を受けた。

 と、ここでHEADのジュピターキッドが黒衣衆に問うた。

「君たちの底知れない殺意……それを抑えて戦う事はできないのかい?」

 するとこれに損尼が答えた。

「戦いで殺意を抑えろなんて……無理難題もいい所ね」

 と、損尼に続いて白蓮坊が薄気味悪い様子で明確に言った。

「まあ、大丈夫だと思います。我らは気付けたのです……この己の中で蠢く殺意は抑える必要がないと……!」

「! それはどういう事だ!?」

 白蓮坊の発言にジュピターキッドが一驚して問い掛けると、白蓮坊は静かに答え始めた。

「クク、単純な話ですよ……私たちは気付けたのです! この殺意を眠らせずとも、人間(ひと)には成れるという事に!」

 白蓮坊に続き、弟の黒蓮坊も言い放つ。

人間(ひと)となる為の条件……それは誰かに認められる事! それさえあれば、例えどんなに醜く異端であろうとも……」

 どんなに異端な存在であろうとも、誰かに認められれば人間(ひと)でいられる。そう説く黒衣衆の思考に、新世代型たちは薄々共感した。

「なるほど……あんた達の世界にも、他人(ひと)ってのは居たんだな」

 狂喜や狂気という自分達だけの世界の中にも、他人が存在しているのだなとバーンズが皮肉を込めて言う。

 

 新世代型やカァチェン、そして聖龍HEADにも真情を語り明かしていく黒衣衆たちは更に語り明かしていく。

「小田原修司は、死に直面した我々と初めて向き合ってくれた……その時だけ、私たちは常に人間(ひと)だった!」

 人権を奪い、人としての扱いをしてくれなかった小田原修司が、唯一自分達を人間として扱ってくれたのは死に直面していた殺し合い、戦いの中だけだったと語る黒衣衆。

 そんな半ば興奮状態で語る黒衣衆に、新世代型たちは問うた。

「確かに歴史は争いの日々ばかりなのは俺たちにも解る……けど、殺し合ったりするだけが人間の歴史という訳じゃないだろ?」

 真鍋義久が問い質すと、白蓮坊が真鍋に答え返す。

「それが我々の習性……言わば宿命だからです! 聖龍隊が手を差し伸べるなら、我らはその手を斬り落とす……」

「あんた達は自分に負けているだけだ……小田原修司のクローンと知ったばかりの俺らとおんなじだ! そんな哀しい宿命なんて、消す事は出来なくても止める事はできるだろうッ!」

「不遜な物言いですが、今はそれすらも赦しましょう! 私たちは、暗心討伐黒衣衆……! 赦し、慈しみ、殺す者!」

 哀愁な宿命も止められると訴える真鍋に、黒衣衆は殺気立ったのか、次の瞬間目前の真鍋に襲い掛かった。

「ッ!」

 突如として自分に襲い掛かってきた黒衣衆の白蓮坊の鎌が目前に迫り、血の気が引く真鍋。

 しかしその瞬間の事。真鍋を切り裂こうとしていた白蓮坊の鎌を、ミラーガールが盾で防いで見せた。

 真鍋は一瞬の出来事に全身の力が抜け、その場に尻を着いてしまう中、思わず切りかかろうとしていた白蓮坊が自我を取り戻してミラーガールに謝る。

「すいません、また悪癖が……! この手が……この幾度となく血に塗れた手が、どうしても命を刈り取りたいと疼いている!」

 今まで長い間、殺戮の日々に身を投じてきたが故に手が勝手に動いてしまうと申す白蓮坊。そんな彼にミラーガールが言った。

「私じゃなく、彼らに謝って」

 ミラーガールの申し付け通り、白蓮坊を始めとする黒衣衆は前に出て、真鍋たち新世代型に謝罪の意を示す。

 黒衣衆の謝罪を受け取った新世代型。彼らの反応を見て、黒衣衆は下げていた頭を上げて新世代型達を見詰めると唐突に笑い出した。

「ククク……フハハハハ……ッ」「な、何が可笑しい?」

 突然の黒衣衆の不敵な笑みに、新世代型の猿田学が問い返すと黒衣衆は真顔で冷然と申し告げた。

「ククク、いえね……所詮はあなた達も、我々や始祖であらせる小田原修司と同様……己の心中に深い深い闇を抱えていると思うと、つい笑みが零れてしまいまして……」

「闇だと……!?」白蓮坊の言葉に新世代型の出雲ハルキが反応。

 すると黒衣衆は新世代型を前にして、説破する様に問い詰めた。

「あなた達は、己の中に眠る狂気を……漆黒の如き、深い闇にお気づきでしょうか!? あなた達の始祖、小田原修司の心の闇にも衰えない漆黒の闇を……あなた達は持っている筈だ」

『………………!』

「我々は暗心討伐、黒衣衆! 歴史の中の壮大な闇を討ち取り、歴史を創世する者……さて、あなた達の心の闇は如何ほどに? どの様な末路を迎えるのでしょうか……裏切り? 暗殺? 闇の心を持つ者の末路は全て悲惨なものです……!」

 黒衣衆の一言一句に新世代型達は何も反論する事ができなかった。

 

 彼らは、黒衣衆は既に気付いていた。新世代型の中に潜む狂気の象徴、闇人の存在に。

 そして闇人は、新世代型の心中でひっそりと息を潜めながらも現状を愉しんでいた。

 

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