聖龍伝説 現政奉還記 創生の章 作:セイントドラゴン・レジェンド
[中国本土軍総大将 徳竹康]
新世代型二次元人たちが、突如強襲してきた黒武士の軍勢によって帝の許へと誘われていた頃。
聖龍隊は自分達が統治するアニメタウンの隣国、日本からの伝達をただただ待っていた。
HEADは日本国皇軍に協力の要請を願ったのだ。
本来、日本皇軍はスター・コマンドーが加わる精鋭部隊として名を馳せているが、そのスター・コマンドーが現政権に反旗を翻した事から、スター・コマンドー制圧に協力してくれないか聖龍隊が総長バーンズは思い立ったのだ。
そして今、HEADは日本皇軍の総大将である皇族が血筋、
「日本が誇る皇軍、それを指揮する時乃宮彦麻呂……まさか、この期に及んでスター・コマンドーと一戦やるのを躊躇っているのか……!」
中々、時乃宮彦麻呂からの返事が来ない事に焦りを覚え始めたバーンズ。かつてアジア大戦を協力して太平に導いたスター・コマンドーと皇軍が、衝突し合う現状を日本および時乃宮彦麻呂が政治的思想から断念する事を密かに恐れていた。
しかし順一達の勢力を止めるには、戦力的にも政治的にも日本皇軍との共闘による制圧が理想的であった。
と、その時。一人の隊士がバーンズたちHEADに駆け寄った。
「伝書です! 日本が皇軍、総指揮官であらせられる時乃宮彦麻呂様からです!」
「おおっ、やっと来たか……! どれどれ……」
バーンズは届けられた伝書を他のHEADと共に目を通した。
時乃宮彦麻呂からの伝書には、以下の文章が切実に書き記されていた。
「すまぬ、聖龍隊よ……日本としては、皇軍であるスター・コマンドーと戦うのは色々と義に反する。よって、わしら日本皇軍は全面的に順一達に協力する事になった。本当にすまぬと思うが、これも時の運。戦場でわしらが余り衝突しない事を、ただただ祈っておる。日本皇軍総指揮官 時乃宮家当主 時乃宮彦麻呂」
この文章を読んだ聖龍HEADはしばし茫然となった。
『………………………………』
そして一時ばかし茫然とした直後、HEADは一同に困惑した。
『うわーーーーっ!!』
「どうすんだ! 天皇家直属の皇軍がジュン達についちまった!!」
「これじゃ天皇家に反する逆賊として、聖龍隊が完全に汚名を着ちゃう……!」
日本天皇家直属の皇軍がスター・コマンドー側についた事からバーンズやジュニア達は、このままでは自分たち聖龍隊が日本に反する逆賊に成り果ててしまう傾向を悔やむ。
するとその時、そんな悲観する聖龍HEADに一人の少年が声をかけた。
「HEADよ! そんなに状況を悲観するな! 皇軍が居らずとも、ワシら中国大軍隊がおる!」
「た、竹康……」
聖龍HEADに声をかけてきたのは、金色の甲冑を全身に纏う少年、中国国将軍の徳竹康であった。
「わっはっは! 遂に聖龍隊も皇軍に見放されてしまったか……まあ、じゃがワシの百万もの軍勢が加われば、順一達との決戦にもゆとりが生まれるじゃろうて」
「竹康くん、でも貴方はいいの? 完全に日本の皇軍が味方についてしまったジュン君たちスター・コマンドーと戦う事になるのよ?」
「わはは! 心配いらぬぞ、ミラーガール! ワシが率いる軍勢と、ワシの側近、武蔵丸が居れば戦などスグに終結してしまうわ! なあ、武蔵丸」
「!!!!!!!」
「うむ! 頼りにしてるぜ、竹康! 武蔵丸!」
「おうよッ! 任せてくれ、バーンズ、それにHEADよ!」
徳竹康は側近である巨大な戦闘マシンの様なロボに近い容姿のサイボーグ武蔵丸と共に、聖龍隊に加勢してくれると豪語してくれた。
彼らと聖龍隊の出会いは二年前の乱世に始まった。
時は2011年、日本に未曾有の大震災が起こり、アジア各地で戦火が勃発した戦界すなわち戦う世界の時代。
聖龍隊は震災によって只ならぬ被害を被った日本の地にまで戦渦が及ばないよう、乱れるアジア各地に兵を進めていた。
そんな中、聖龍HEAD率いる聖龍隊は当時、武に秀でるだけでなく馬術にも秀でたモンゴル軍との戦に苦戦を強いられていた。
そんなモンゴル軍を指揮する当時の総大将モウ・コダイを相手に勝利への糸口を掴もうと思考を練っていた当時の聖龍隊総長小田原修司たちHEADの許に、同じくモウ・コダイに只ならぬ対抗意識を燃やす少年がひょいと姿を現した。
その少年こそ当時の徳竹康であり、お互いにどちらが先にモウ・コダイを打ち倒せるかで口論に成った末、HEADと徳竹康の軍勢は戦に発展した。
だが、戦は貧弱な竹康の側近である、屈強なサイボーグにして竹康に絶大な忠義を傾けている武蔵丸との戦いにHEADは追い詰められてしまう。当時より、その簡単に傷がつかない装甲を纏う武蔵丸は、その猛威から戦界最強という称号までほしいままにしていた。
そんな戦界最強の武蔵丸を、どうにか修司の助力で何度も突破した聖龍HEADは、遂に竹康の軍勢を突破して本人を撃破した。
そして此処で修司から提案が。修司は竹康に同盟を持ちかけた。互いに強力な軍事力を備えた組織同士、手を組めば簡単にモンゴル軍を突破できると思ったからだ。
これに対して竹康は意図も簡単に同盟を承諾。HEADの男共が簡単に信用してもいいのかと問い掛けると、竹康は真顔でこう返事した。
「信用できるか、できないかは、お前らの眼を見れば解る! お前らは……決して人を裏切らない奴らじゃ!」
この竹康からの言葉を聞いて、HEADと彼の間には固い絆が結ばれた。
それから聖龍隊と竹康率いる軍勢は共闘して、当時のモンゴル軍を突破。その後も度重なる戦渦で功績を納めていった。
特にかの梟雄、
それは皇輪が小田原修司やHEADと死闘を繰り広げていた時のこと。皇輪が放った軍勢が、新世軍から押収した弾道ミサイルを略奪しようと、保管地点に攻め込んできた時のこと。
皇輪軍は人質をとって、その間に基地へと侵攻しようと強引に門扉を突破しようとしていたのだ。この卑劣な皇輪軍の謀略に多くの国将軍が感情を昂らせる中、皆は共闘して人質を奪還して安全な地点へと誘導させると再び皇輪軍を撃破していった。
「た、助けて~!」
悲鳴に怒号が響く中、徳竹康や武蔵丸は捕らえられていた人質を解放していく。
「こ、これほどまでに一堂に多くの武将が駆け付けてくれるとは……この乱世にも、正義は存在していたんだ!」
弾道ミサイルを管理していた聖龍隊は、未曾有の危機に駆けつけてきてくれた多くの武将達を見て歓喜に沸いた。
デイ・マァスン、シン・ユキジ等など多くの武将達に混じり、竹康は攻めてくる皇輪軍を武蔵丸と共に迎え撃って出た。
そして敵方が総大将、
そして此処にアジア各地の武将達との間に聖龍隊は固い結束を約定した。
しかし、時の運命は残酷であった。
当時の国際連合より、聖龍隊は乱世の最中に発起した各軍を討伐の形で罰せよという命が下されたのだ。
中には味方として共闘してくれた軍勢もいる中、この命令には聖龍HEADも躊躇った。だが、これに対して修司はこれも天命と事態を受け入れ、アジアの各武将たちを討ち取る決意を示す。
そして聖龍隊は、処罰対象から外れている韓国軍にシャ・キンカ軍、そして鶴姫率いる巫軍を携えてその他の武将達を討伐しようと動き出した。
多くの隊士、特に中国出身の隊士が不満を抱く中、聖龍隊は徳竹康が率いるアジア血盟の軍勢と衝突した。
最初は二万程度の軍勢で押し通してきた血盟軍に対して聖龍隊は怒涛の活躍をするが、その最中で李・小狼や李・苺鈴、そして「らんま1/2」のシャンプーやムース達の寝返り行為によって軍勢は内部から混乱を引き起こされ、危うく大打撃を被るところだった。
そして内部での寝返り行為を制圧し、二万の軍勢を圧倒した聖龍隊の前に信じられない軍勢が砂煙と共に姿を現した。
それは、たかが二万の先行部隊だった軍勢を微塵に感じさせるほどの、50万もの本隊だった。最初の襲撃は二万の先行で、此方が消耗したところに50万の大軍勢による波状攻撃による混戦が狙いだったのだ。
そして、その50万の大軍勢の中には、デイ・マァスンやシン・ユキジたち国連によって処罰対象となっている武将たちが混じって突っ込んできた。
「恩を仇で返す……それが日ノ本の武士のやり方かあッ!!」
この時、突撃してくるシン・ユキジが言い放った台詞には聖龍隊側の誰もが心を痛めた。
「忘れてねえぜ、アンタらと組んだ日はよォ!」
「かつての友は今日の敵……これぞ戦の業なり……!」
隊士および徳軍兵士も、戦の業の深さに痛感を過ぎらせていた。
それでも名立たる武将達を突破して、HEADの土煙による撹乱作戦で無事に徳竹康の前に辿り着いた修司は、竹康と決着をつける為に彼の前に立ちはだかった。
「中国の太郎は良い太郎! 数え切れねえお供を連れて……日ノ本の、鬼を退治にやって来た」
「……修司どん、ワシは……」「だが!」「!」
「……亜細亜を治めるには……まだ早い!」
告げようとする竹康の言葉を掻い潜り、修司は竹康にまだアジアを納めるには機が熟してないと啖呵を切る。これに対して竹康も覚悟を決めて言い放った。
「日ノ本を修め、司るは……小田原修司殿とお見受けした! 某、徳竹康……お相手仕る!」
そして修司と竹康は戦いに挑んだ。その戦闘の最中で武蔵丸も乱入したが、修司は苦戦の末に武蔵丸を撃破し、竹康も突破。アジア血盟軍は国連の命を受けた聖龍隊に制圧された。
「完敗だ、修司どん……ワシの夢も、ここまでか……」
敗北した徳竹康に、修司が歩み寄ろうとした、その時。竹康の前に戦闘で大打撃を受け、既に戦闘不能に陥った武蔵丸が飛来した。
「む、武蔵……!」
全身からけたたましい煙を上げて、機能停止に陥っても尚、竹康を守ろうとする武蔵丸の忠義に、竹康本人も誰もがこころを射抜かれた。
そして武蔵丸に続いて、その他の側近たちも竹康に駆け寄って、必死で竹康を死守しようと修司の前に立ちはだかった。
「これ以上進むのであれば……拙者の骸を、踏み砕いてから行け!」
「竹康様は幼き頃の不遇にもくじけず、我らに平和を……自由という夢をくださった!」
「国連の手先……たかが人間兵器である鬼神に、竹康様の夢を奪われてなるものか!」
側近たちの言動を前に、修司は立ち尽くした。
そして修司は仲間達が、そして制圧し捕縛した多くの敵対武将や反逆行為をした仲間達が見守る中、竹康に歩み寄った。
そんな歩み寄る修司に、側近たちは最後の力を振り絞って立ち向かった。だが、修司は素手で彼らの槍を掴んでは懐に拳を入れて悶絶させ、最終的には槍を叩き折って彼らの戦意を削ぎ落とした。
多くの兵共が死傷し、多大なる戦禍を生じさせた国連側とアジア血盟の戦。その戦の終止符として、修司は竹康に向かって檄を飛ばした。
「テメェの夢は此処で終わるのか? いや、まだまだ終わらねえ……この先も中国を背負って、コイツ等の未来を導いてやらなきゃならないんだろ?」
「!! 修司どん……おめえ……!」
「亜細亜の多くを……心を掴んだのはテメエだ竹康。そんなお前に、国連の命だけで動く人間兵器の俺がとやかく筋合いはねえ」
修司は竹康に、敢えて国連の命令を無視しても中国を統治するのは、多くの人民や兵士の心を掴んだ人望ある竹康だと認めたのだ。更に修司は笑顔で竹康に言った。
「それに、俺にはまだ震災で荒れ果てた日本を均すっていう大仕事があるんだ! 他の国の面倒まで、見ていられねえよ」
修司は日本の震災復興を理由に、中国などの亜細亜の復興活動を竹康たち地元の武将達に任せる事で、彼らの地位を揺らがないモノへと維持する魂胆を示した。
そして修司たち聖龍隊は、アジア復興を地元武将達に任せて、その彼らのお目付け役として聖龍隊に反逆した李・小狼たち中国出身の隊士達に一任して撤退した。
その後、国連からの命を無視した小田原修司には罰則が科せられたが、日本復興という使命からスグに現場での指導に戻ったという。
反面、中国の武将達はその後、徳竹康を中心に新たな国造りをしつつ、戦禍の復興に着目し、混乱の中国大陸を治めた。
二年前の亜細亜大戦での出来事を思い返しつつ、振り返る聖龍隊と徳竹康。
己の貧弱さを受け入れつつも、それをバネに今まで奮闘してきた徳竹康。その竹康に仕えるサイボーグ武者の武蔵丸。二人が揃った上に、竹康が率いる中国本隊百万の軍勢が加わり、聖龍隊は少なからず勝機に希望を見出していた。
[謁見]
その頃。黒武士と剣帝・足正義輝の配下の兵士達に導かれ、二次元人たちは歩を進めていた。
彼らが進むは、紛争によって朽ち果てた旧い家屋や社屋が並ぶ街道だった。
古都を連想させる、その家屋や社は戦火によって無残にも焼失してしまっているのが目に受けた。
そんな古都の街道を、槍を持つ帝の兵士達に見送られながら先へと進む一行は、この物々しい雰囲気に圧迫されそうだった。
「………………」
「こいつ等、槍を持って武装しているけど……戦意ってのはあるのかね?」
物々しい雰囲気に圧迫されて有無も言えない琴浦春香に反して、真鍋義久は武装している兵士達を見てその物静かな態度に警戒を怠らない。
しかし皆が武装している義輝の兵士を視認しながら、その前を通過している最中、斉木楠雄に出雲ハルキが訊ね掛けた。
「……斉木さん、気付いていますか? 彼らは……」
「ああ、気付いているとも……」
ハルキから指摘された斉木楠雄は、険しい面持ちで言い切った。
「……彼らも、僕らと同じ新世代型だ……!」
エスパーである斉木は、誰よりも逸早く兵士達が自分らと同じ新世代型二次元人である事を察していた。
そんな自分らと同じ新世代型の兵士達の直視する視線を掻い潜りながら、先行する一団の先頭にはあの黒武士の姿があった。
黒武士は何も語ろうとはせず、囚人達を襲撃した際と変わらず無言を貫き通していた。
多くの新世代型と四人のプロト世代の集団を黒武士が引き連れていた頃、彼らが向かう荒廃した宮殿内にはあの人物が二次元人たちを待ち侘びていた。
「足正様、黒武士の者が例の新世代型二次元人達を連れて参りました」
「拝謁の機会を与えてもよい者らと見受けられます」
「フ……! ならば許そう、通せ」
「御意!」
配下の兵士達の言伝を聞いて、その人物は不敵に笑むと即座に命じ、それに対して兵士も即座に命に従う。
そんな中、二次元人たちが辿り着いたのは、仄暗い曇天が張り巡らされた空の真下に聳え立つ、巨大な木造建築の宮殿跡地だった。
宮殿は、長きに渡り紛争の傷跡が見受けられるのか、各所が凄まじく破壊されていた。
その宮殿の中央、微かに天より零れる光の中に、煌びやかな甲冑を着飾る一人の人物が皆に背を向けた状態で待ち侘びていた。
「……はじめまして。民草の挨拶は、こうであったかな? 同胞よ」
振り返りながら庶民の挨拶はこれで正しいのかと二次元人たちに説くのは、文武両道にして乱世である現政奉還を発起した張本人、足正義輝国連総長であった。
足正義輝の威風堂々とした、凛然とした立ち振る舞いに最初彼に文句を言おうかとこの場までやって来た二次元人たちは唖然と見惚れてしまう。
そんな呆然と立ち尽くしてしまっている二次元人たちに、義輝は申した。
「……ん? どうしたのだ、同胞達よ。話に聞けば、予に会いたかったのではなかったのか?」
「っ!」
義輝の一言に、ようやく我を思い返した新世代型たち。
そして現政奉還により、自分たちの出生の秘密を知ってしまった境地などの文句を一つでも帝に吐き零そうとするが、帝である義輝の燦々と輝ける顔立ちを前に何を話せばいいか困惑してしまう始末。
「ううむ、成程な……予と対面して、何を語ればいいか解らないといった顔付きだな」
義輝は新世代型達の困惑した素振りと顔付きを見て、逸早く彼の心境を察する。
するとその時、義輝の目にある光景が飛び込んできた。
「……! 其之方!」「!! は、はひ……っ」
義輝が自前の
「ちょ、ちょっと燃堂! こんな時におにぎり食べている場合かッ」
「ご、ごめんよ斉木……ちょっと小腹が減っちゃったもんで……」
帝に謁見している緊張感張り詰める場面で、まさかのおにぎりを頬張るという行動をとっていた燃堂に親友の斉木が慌てて声をかける。
そんな口におにぎりを頬張ったままの燃堂に、義輝は険しい目付きで訊ねた。
「其之方……主が食べているのは、なんだ?」
「へっ、こ、これっすか? これは、その……そこの田所恵ちゃんが作ってくれたおにぎりっす!」
「え!? ちょ、ちょっと……!」
突然自分の名前まで出されてしまい困惑してしまう田所恵。するとそんな燃堂の返答を聞いた帝は、ゆったりと燃堂に歩み寄り始めた。
誰もが帝の突然の行動に激しく戸惑い、中には逆鱗に触れてしまったのではないかと不安に駆られる二次元人たち。
そして誰もが緊張感昂っていた中、燃堂の前まで歩み寄った帝は申し付けた。
「……済まないが、其之方が食しているその、おにぎりという食べ物、一つ予に譲ってくれないか?」
「へっ? い、いいっすよ……」
帝からおにぎりを御所望された燃堂は、素直に帝におにぎりを手渡した。
燃堂からおにぎりを手渡された帝は、貰い受けたおにぎりを一口頬張って感激した。
「ほほう、これが民草がよく食しているという「おにぎり」という食べ物か! いや、確かに美味である! ハハッ」
貰い受けたおにぎりを美味しそうに食す帝の反応を見て、唖然とする二次元人たち。
そしておにぎりを食べ終えた帝が再び、皆と向き合おうとすると再び強烈な反応を示した。
「其之方!」
「な、なんだよ……!?」
「其之方の腰に下げているモノ……それは、かの生命戦維をも断ち切れるという片太刀バサミではないか? 宜しければ一度でいい、予に貸してくれぬか」
「は、はい……別に、構いませんけど……」
鋭い目つきで纏流子に片太刀バサミを貸してくれるよう所望する帝に対し、流子はあっけらかんとしたまま帝に片太刀バサミを貸し出した。
すると帝は常時はホルダーに収納できるほど小型化できる片太刀バサミを、自分のモノの様に拡大させると自在に使いこなして見せた。
「ふむふむ! 成程成程……いや、まっこと面白き武器であるな! この片太刀バサミは」
(あ、アタイの武器をあそこまで使いこなすなんて……!)
自身の片太刀バサミを自在に使いこなせる帝の殺陣に、流子は唖然と言葉を失ってしまう。
すると次の瞬間、その片太刀バサミを帝が思いっきり振り回すと片太刀バサミから凄まじい斬撃が衝撃波として繰り出され、皆がいる朽ち果てた宮殿の屋根部分に直撃した。
片太刀バサミから衝撃波を繰り出した帝の行為に愕然とする流子たち。流子すら片太刀バサミから衝撃波など繰り出せないからだ。
「フハハハ! いやいや、真に凄まじき威力を兼ね備えた武器であるな、この巨大な真紅の鋏は」
衝撃波を繰り出した帝は、片太刀バサミをしばしじっくりと眺めると、それを流子に渡し返した。帝から片太刀バサミを返却された流子は、愕然と帝の実力に蒼然となった。
「つ…………強すぎる……」
余りにも圧倒的な強さと実力、そして何より何者をも近寄らせにくいカリスマを放つ剣帝の凄さに誰もが圧倒されてしまう。
しかし同時に、帝が自分たち庶民の生活などに多大な興味を抱いている事を察した新世代型の瀬名アラタ達は、ここで一つ密談で話し合った。
「なあなあ。あの将軍様、迂闊には近寄りにくいけど……庶民の生活には少しばかり興味持ってくれてねえか?」
「そうだな。此処は一つ、お互いの距離を縮める為にも……この場の雰囲気を和ませる為にも一つ持ち掛けてみるか」
「上手くいけば、僕たちに対して少しばかり心を開いてくれるかも……」
アラタの持ち掛けた提案に、出雲ハルキと星原ヒカルも同意する。
そして勇気を出して、瀬名アラタが帝に声をかけた。
「あ、あの将軍様……俺達と一緒にLBXやってみません?」
「おおっ、LBXとな! 民草の童たちが遊びし玩具か……うむ! 是非、予にも遊び方を伝授してくれ!」
意外にも子供らしい一面を持つ帝の御所望に、アラタ達は帝に遊び方を伝授していくのであった。
その後も新世代型は、帝に要求されるがままに様々な庶民の情報や娯楽を御教授していった。
[帝との対話]
その後もしばらく、新世代型は帝の遊戯に付き合っていた。
「わーーはっは! いや、実に面白く……大儀な時間であったぞ、同胞よ!」
「はぁ、はぁ……ま、まさかLBXをあそこまで短時間で使いこなすだなんて……」
「流石は文武両道の使い手……遊びも、それ以外のことも学び身に着くのが早い」
新世代型たちから、LBXを含む庶民の娯楽を教えてもらった帝は嬉々とする一方、その帝のあらゆる面で優秀な場面を目の当たりにして驚かされてしまう一同。
「わはは……いや、実に愉しき時間であったな同胞よ! そして何より、同じ血筋を分けた者同士がこうして一堂に集えた機会を、予は嬉しく思う!」
「お、同じ血筋……!」
「それに……さっきから同胞と、あまり貴方の口から聞きたくもない言葉を何度も聞かされていますね」
「へっ? 斉木、どうほうっていい意味じゃないの?」
皆が帝の発言に衝撃を覚える最中、斉木楠雄は一人帝が発した「同胞」という単語に表情を険しくさせていた。燃堂が何ゆえ気に入らないのか訊ねると、斉木はその訳を語った。
「燃堂、同胞ってのは……同じ父母から生まれた兄弟姉妹、または同じ国土に生まれた人々や同じ国民、同じ民族を指す言葉だ。この場合、僕らと帝は同じ父母から生まれた兄弟姉妹として見定めている」
「え!! 俺らと将軍様が兄弟!? それってどういう事!?」
斉木の語った訳にも理解ができず困惑する燃堂に対して、帝は改まった顔付で新世代型たちに語り明かした。
「何を申すか、吾らが同胞たちよ! 予を始めとする全ての新世代型二次元人は、かの鬼神小田原修司の血筋を色濃く反映させた種族である事を、既に知っているのではないのかね?」
「! あ、貴方は……既に自分を含む新世代型が小田原修司のクローンだという事を御存知だったので!?」
帝の話を聞いて驚愕する猿田学が問い詰めると、帝は表情を微動だにせずに答え返した。
「うむ、予は其之方達とは違い、この世に生を受けた瞬間から知っておった。……吾らの血には、水よりも濃い小田原修司の血が脈々と受け継がれている事実をな」
『………………………………』
他の新世代型とは違い、この世に生を受けた瞬間から自らを含む新世代型二次元人には色濃く小田原修司の血が反映されている事実を知っていたと豪語する帝の発言に、新世代型二次元人たちは愕然とした。
そして全ての新世代型二次元人とは違い、自らが小田原修司の複製品として生み出された事を周知していた帝は、眼前の二次元人たちに申し告げた。
「同胞たちよ! 遂に機は熟した! ……とは、まだ言えぬが……この曇天とした空に似合わず、遂に全世界から熱き息吹が吹き込んできた! 吾らは満を応じて、この座に辿り着く者を見届けねばならない……!」
「そ、それってつまり……どういう事なんですか?」
帝の発言に琴浦春香が訊ねると、帝は平然と申した。
「今、まさに世界中から熱き闘志を燃やす若き芽吹きがもうすぐこの場に燦然と揃うのだ! この余興を予はどれほど心待ちにしていた事か……!」
まるで子供の様に無邪気に喜々とする帝の申し出に、未だ話の糸口が見えない新世代型達。
そんな新世代型たちの心情を察してか、帝は咄嗟に手に握り締めていた笏を前の方へと回転させると、その笏から赤き煙が立ちこもり、その煙の中にある情景が映し出された。
「こ、これは……順一さん!?」
「お、おい! 聖龍HEADも映っているぞ!」
「これは、一体……!」
笏から放映された映像に新世代型二次元人たちが愕然としていると、帝は神妙な顔立ちで語った。
「今……聖龍隊とスター・コマンドー、二つの勢力が予を目指して奮起しようと此方に向かっている。もうすぐ、此処の場は戦場の目前へと成り変わるのだ」
「な、何ですって! 戦争……!」
帝から、もうすぐ聖龍隊とスター・コマンドーという二つの勢力がぶつかり合う戦場が目の前に広がると聞いて、新世代型の指南ショーコが絶句してしまうが、これに対して帝は笑顔で申し開いた。
「はっは! 直に凄まじい意地と意地、信念と信念のぶつかり合いが目の前に燦然と広がるのだ! どうだ? 心が躍らないかね」
この帝の質問に、遂に蓮城寺べるが堪忍袋の緒を切って帝に物申した。
「何が面白いの! 戦争なのよ……それを面白半分に起こして、何様なのよ!」
「っ? 何様と申されても……予はまだ将軍という片苦しい身分なのは違いないが……」
「そうじゃないでしょ! 貴方が起こした現政奉還で、どれだけ私達が苦しんだか分かる……? タイでは気味の悪い実験を行われ、それからも怖い目に遭ってきたし……挙句の果てには宇宙でみんなが……どれだけの人命が奪われたか知ってるの!!」
「む? しかし、宇宙で散っていった命は、その殆どが其之方らを苦しめた異常なる者たちだったのではないのかね?」
「そ、それは……そうだけど……」
「待ってください! 将軍様、今あなたが申した台詞を聞いてみれば、まるで貴方は今までの僕らの不遇……宇宙ステーションでの反乱も御存知だったように感じ取れますが!」
帝とべるの話に割り込んで、星原ヒカルが帝に疑問をぶつけた。すると帝は平然とした物言いで答えた。
「うむ! 予は全てを知っているぞ……其之方達がタイの製薬企業が起こしたバイオハザードに巻き込まれた事も……その後、聖龍隊に連れられてアジアの各武将達に会ったのも……そして宇宙ステーションでドレフなる者に利用されて多くの人命が失われた事も、予は周知している」
「なっ、何ですって……!!」
帝の台詞を聞いて、ヒカルは呼吸が詰まるほど絶句してしまった。
そんな自分の話を聞いて言葉を失ってしまう新世代型たちを察してか、帝は更に衝撃的な話を皆々に聞かせた。
「……例の共有感知なる吾ら新世代型にしか目覚めてはいない意思疎通能力は知っているかな? あれは小田原修司の遺伝子を反映させた吾らの脳細胞が互いに共鳴し合う事で発生するのだ。無論、予にもその共有感知は目覚めておる! ただ、予の思考は万民には通じにくいものがある故、予の考えを理解してくれる者が少ないのが現実なのだ。しかし其之方達が感じてきた今までの冒険の感覚は予にも、ひしひしと感じておる! いや、まっこと素晴らしき冒険をしてきたのだな、其之方らは……」
「そ、それじゃなんだ……今まで俺たちが苦しんでいたのを、あんたは黙って高みの見物していやがったって事か! 俺たちが事実を知って苦しむ様子を楽しんでいやがったのかよ……!」
自分達の苦境を傍観しては、楽しんでいたのかと問い詰める真鍋義久の言葉に帝は真顔で答えた。
「高みの見物という訳ではないぞ、同胞よ……其之方らの苦しみ、そして歓喜! 全ての感情が予にも確かに伝わった……真に素晴らしい体験であったぞ、同朋よ!」
と、帝は真鍋に歩み寄って彼と握手をかわそうと手に触れた途端、真鍋は帝の手を振り払った。
この通常は大変無礼な行為にあたる真鍋の行為に皆が唖然としていると、真鍋は唖然とした表情を浮かべる帝に言い放った。
「何が素晴らしい体験だった、だ……! あんたに俺たちの苦しみが理解できるというのか? 共有感知で知りたくもねえお互いの素性を知り尽くして、色んなところで危ない目に遭ってきて……挙句の果てには宇宙まで掻っ攫われてドレフの野郎なんかに利用されて! ……俺たちが、俺たちがどれだけの苦境に立たされたか、解るのか!!」
この真鍋の台詞に、他の新世代型たちも一同に同意せざるを得なかった。
しかし、この真鍋の熱弁を聞いても尚、帝は非常なまでのマイペースな口ぶりで語り明かした。
「成程、其之方らには、この共有感知は過ぎたるモノであったか。いや、それは失敬した。だが真鍋義久よ、其之方は女子の裸を想像するのが好きだと聞いておったのだが、その趣向と共有感知は噛み合わなかったのか? はは」
「っ……!」
場の空気が張り詰めた緊迫した状況で、思わず苦笑をあげたくなる様な言動をとる帝の自由奔放な口振りに、半ば呆れてしまう真鍋義久。
そんな非常にマイペースかつ無邪気な帝、足正義輝に、新世代型二次元人たちが先ほどから不気味な視線を向けてくる一人の甲冑武者の存在を指した。
「あ、あの……さっきからあの人、無言で座ったまま何も喋ろうとはしないんですが……」
「ほほう、黒武士か……其之方ら、黒武士に興味がお有りかな?」
「い、いえ……一番最初に会った時に、ちょっと怖い目に遭いまして……」
最初の出会いでは、自分達を捉えた時点で無作為に攻撃を仕掛けてきた黒武士の死んだ魚の様な目から繰り出される視線を受けて、新世代型の真田幸介や毛利十四郎が帝に問い掛ける。
すると帝は、そんな真田幸介や毛利十四郎の不安げな疑問に答えてあげた。
「その黒武士……今の予からは上手く代弁する事はできぬが、吾らと同じ破滅の血を受け継いでいる身の上なのだよ」
「同じ血って……それじゃ、黒武士も新世代型!?」
「うむ、そう思ってくれても構わぬ。日暮真尋よ。ただ、この黒武士はちぃっと厄介でな……」
「厄介と言いますと?」
「ふむ、それはだな大門ジョセフィーヌよ。この黒武士は過去に、世間の悪態と思っている事例に心を痛め、今ではすっかり心を閉ざし切ってしまったのだ」
「心を閉ざし切った……」
「そうなのだよ、野々原ゆずこ。それ故に黒武士は、言之葉を失ってしまい何も語れなくなってしまったのだ。故に、予は世界の様々な人々の熱気を……そう、タイのバイオハザードで堕とした命の瞬きを拝見させたり……はたまた宇宙にて新世党が自分達の野望を果たそうとして野心を燃やしていた様を拝見させたりさせたのだが……全て、黒武士の心を開く術にはならなかったのだよ」
「て、テメェ! 黒武士を目覚めさせるためにも、新世党を野放しにさせておいたのか!」
「私達が苦しんでいる様を、黒武士に傍観させていたんですね、貴方は!」
「まあ、そういう事になるかな。しかしよ、真鍋義久、そして森谷ヒヨリよ。其之方らは自分達が思っている以上に自分達が苦境に立たされたとは、予には到底思えないのだが」
「な、何ですって!」
「其之方らは、タイからアジア各地を巡り、多くの武将と出会った事で少なからず学を、学びを得た筈……そして宇宙ステーションにて、ドレフなる者の悪態を前にしながらも新しい決意に目覚めたではないか! 己は己であると……自分達は決して、小田原修司とは違う生命であると」
「そ、それは……」
帝からの指摘に、新世代型二次元人たちは何も言い返せなかった。
すると帝は振り返ると、その視線の先にいるプロト世代の二次元人たちにも申し告げた。
「其之方らは如何だった? 現政奉還の煽りを受けて、各々の野望に燃え滾り、野心で多くの者を導かせる名立たる武将達……そして彼らと同じく、自分の主張を世間に理解してもらおうと躍起になっていた新世党の者たち……そして、そんな新世党を利用してまで小田原修司の代用品という枠を、柵を突き破って神へとなったドレフの顛末。それらを見てきて、どう思う?」
「ど、どうって……」
「それはもちろん、ドレフのやった事は許せないけど……同時に、新世代型たちが背負いたくない宿命を背負っていた悲しみも知りました……」
「アジア各地の武将たちは、殆どが野心家だったけど弱い人々の為に全力を尽くす人だったのは印象的でした」
「それに新世党……彼らもまた、ドレフと同じく過ちを犯しましたけど……自分たちの主張を説こうとする姿勢だけは見習うところはありました」
帝からの質問に、ギュービッドは躊躇うものの、チョコや桃花そして海道ジンは此処までの道のりで体験してきた事を率直に帝に申し渡した。
すると此処で、帝から新世代型たちに質問がぶつけられた。
「其之方らは……かの鬼神、すなわち吾らの始祖、小田原修司をどう思うかね?」
「! そ、それは……」
何も答えらない新世代型たちを前に、帝は高笑いしながら言い切った。
「わははは! まだ其之方らには理解し切れておらぬか。吾らが始祖、小田原修司が如何なる人物だったか……まあ、それはおいそれと理解できるものではない。寧ろ、これから知っていくというのが道理かな?」
[平行宇宙]
と、帝が一人で勝手に愉しげに談笑していると、何を思ったのか帝は新世代型である琴浦春香の前に歩み寄っては、彼女の頭に手を軽く置いた。
「! あ、貴方、何を……!」「大丈夫だ、琴浦久美子よ。悪い様にはせぬ」
突然の帝の行動に戸惑いを隠せない琴浦久美子に、帝は大丈夫だと言い聞かせる。
そして琴浦春香の手に翳した手が光り輝き出したと思った次の瞬間、彼女の脳内だけでなく、他の新世代型二次元人たちの脳内にも一瞬だけだが強烈な痛みが流れ込んで来た。
「うっ……!」
一瞬とはいえ、その痛みに朦朧となり、皆がその場に跪いてしまう情景を目撃してプロト世代のチョコたちは困惑してしまう。
そして事の発端である帝に、頭に手を翳せられた琴浦春香が見上げると、帝は凛々しい顔付きで述べた。
「これでもう大丈夫。今、予の力によって其之方らに新たな能力を授けた! 共有感知とは全く別の、新しい視力ぞ」
「あ、新しい視力……?」
帝の話を聞いて、愕然とする新世代型達に帝は更に詳しく述べた。
「其之方ら! ただ共有感知という便利な能力を消してしまっては面白みがない故……予は其之方らに新たな力を授けたぞ!」
「こ、この期に及んでまた変な能力を植え付けたっていうの!」
「いい加減にして! 共有感知だけでも迷惑なのに、また別の変な能力を私達に与えたって言うの!!」
帝からの言葉に、二木佳奈多や薙切えりなが猛反発するが、それでも帝は毅然とした態度で受け答えした。
「ふむ、いや相手の気持ちが分かるというのは、実に便利な能力だと思うのだが……初期の新世代型二次元人たち、そうルミネの一派もそうであったぞ。まあ、新しい世を見開く為の新たな視点といった能力ゆえ、其之方らも気に入ると思うが」
「そ、その能力って……一体全体どんな能力なんですか?」
瀬名アラタが問い質すと、帝は真顔で毅然とした立ち振る舞いで答えた。
「それはだ、予にも既に開眼している……平行宇宙を見渡せる能力だ!」
『へ、平行宇宙??』
帝が発した平行宇宙という言葉に聞き慣れない二次元人たちは唖然としてしまう。
そんな二次元人たちに、帝は分かり易く説き始めた。
「この世には平行宇宙という概念が存在している。まっ、最も分かり易い言葉で言えばパラレルワールドと呼ばれている世界の事だ。元々一つだった世界が分岐し、異なる歴史を歩んだ同じ時間軸に存在する別の世界の事なのだ」
「あ、それなら俺も少し知っている。確かSF作品の中でよく多用される……」
「うむ、勤勉だな! 瀬名アラタよ。確かにSF等の作品でよく多用されてはいるが……一見、非現実的な現象ではない。実際、物理学の分野では理論的な可能性が常に語られているのだ……!」
「そ、その平行宇宙……パラレルワールドを見渡せる能力と申されますと……」
星原ヒカルが訊ねると、帝は能力についてまだ全容していない新世代型を前に、己が心眼を開放した。
「それなら其処にいるプロト世代の者者たちにも分かり易いよう、この場にて世の心眼を開放しよう!」
すると次の瞬間、帝を中心に頭上に幾つもの星空が広がった。しかも、その星空には数多の劇場が燦然と公開されていた。
「こ、これは……!」
頭上に広がる星空と、それを背景に映し出される幾つもの情景に感化される二次元人たち。
彼らが情景を覗き込んでみると、そこには同じ時間軸に存在する別次元の情景が反映されていた。未だ滅びてない北の国、状勢が悪化し国内が乱れる国々、ありとあらゆる別次元の情景が確認できた。
そして一通り、別次元の、パラレルワールドの情景を拝見させた帝は、頭上に映えさせた星空と共に別次元の情景を消し去って皆に再度問い掛ける。
「どうかね? 予が開眼している能力は……これなら他人に迷惑がかかる訳でも無ければ、同じ新世代型同士、話題に困らないではないか!」
「わ、話題って……」
帝の発した話題という単語に難色を示す真鍋義久。しかし帝は笑顔を絶やさず新世代型たちに申した。
「異なる世界の真情を知るのも、また教養があって良いではないか。予は其之方らが……此処に至るまで多くを学び、体験してくるのを密かに待ち侘びていたのだ」
「! それって、どういう事?」
帝の発した台詞に新世代型の美都玲奈が訊き返すと、帝は平然とした素振りで答え申した。
「予にはまだ、異なる世界を見通せる力だけではなく、一種の予知能力も兼ね備えられている。その能力で、其之方らが如何にしてこの現政奉還に巻き込まれ、そして多くを学び得たのか理解したという事だ。人というのは、窮地に立たされなければ己も含めて周りの事案も吸収しない愚かなところがあるからな」
窮地に立たされなければ人は学びもしないという実情を語る帝の言葉に、二次元人たちは口を閉ざしてしまう。
そして帝は更に語り明かした。
「予は心より待っていた! 其之方らが幾たびの試練を超えて、予の前に鎮座するこの時を……! 共に新たなる世が開眼するのを見届けようではないか!」
「新しい、世……」
「うむ、そうだとも、同胞たちよ。吾らはそもそも、新しい世を築く為に生み出されし新世代の二次元人。故に、いやそれ以前に……予は今生の世に熱き息吹を求め、乱世を引き起こしたのだ」
「その為に……今、どれだけの人々が苦しんでいるのかも理解してるのですか?」
「うむ、確かに多くの民草を混迷へと導かせてしまったのも事実だ、美都玲奈よ。だが皆は今生の世に熱気が感じられないのも解っておるか」
「熱気……」
「うむ、そうだ! 今、人々は平和な世をただ悪戯に過ごし、真剣に己の夢や野心に燃え上がらない堕落した生活を……日常を送っている。予は嘆いた、この様な世界の基盤を支えるべく吾らは生み出されたのか。人々の活気を、そして燃え上がるほどの熱気を取り戻せないのか……考えた末に予は、誰もが己が運命を賭けて天下獲りを目指せる世を創るべく現政奉還を宣言したのだ!」
帝の熱弁を聞いて、二次元人たちは愕然と表情を固めて立ち尽くす。
「予は待ち望む……己が欲望に、熱気に、野心に燃え滾った武人が予の前に立ちはだかるその時を! そして予を心から愉しませてくれる武人が現れてくれるその日を……予は心待ちにしている」
己が欲望に忠実な実力ある武人と出逢える日を待ち望む帝の熱意に、圧巻されてしまう二次元人たち。
すると此処である疑問が。
「あ、あの……」
「む? 何かね、満艦飾マコよ」
「あの黒武士は、将軍様が気に入るほど強くないの? 最初、私達の前に現れた時、聖龍隊の人達とかなり激しく戦っていたけど」
マコが指差した先には、帝との談義を黙然とただ見据えている黒武士がいた。マコに訊ねられ、帝は眉間に皴を寄せながら答え返した。
「ううむ、それなのだ。その黒武士の実力は、予が望み入る高みに昇り詰めているのだが……その黒武士は先ほども申した通り、心を失くしてしまったが故にかつての実力が成りを潜めてしまったのだ。予はどうにかして黒武士の心を取り戻そうとしたが、予でも思い通りに黒武士の心を取り戻せることは叶わなかった。まさしく今の黒武士は無心無情……心も感情も無くしてしまっているのだ」
「な、何だか可哀そうだね、この黒武士って人」
帝の話を聞いて、多少ながら黒武士に同情の余地を示す満艦飾マコ。
と、そんなマコの話を聞いて帝は熱く語った。
「うむ、そう思うだろう同胞よ! 故に予は、もうじきこの場にて行われる数多の武将たちの戦を黒武士に観戦させ、黒武士の心を……熱気を取り戻そうとしているのだ! もうじきこの地に数多の武将達が集い、予の座を求めて戦い合う! しかしその前に、聖龍隊とスター・コマンドーが各々方で戦を仕掛け合うかもしれんが。まあ、最終的に予を求めて向かってくるだろうに……だが、その前に予の守護役を任せている黒武士が立ちはだかる算段だ」
「で、でも……此処に向かってくる武将達に抗うほどの戦力を、将軍様は持っているんですか?」
各武将達との戦いを間近で拝見したい想いを赤裸々に語り明かす帝の話を聞いて、その武将達と対抗する武力が帝にはあるのかと質問する星原ヒカル。
すると其処に一人の妖艶な女性が歩み寄って来ては、帝に話し掛けてきた。
[帝派の武将]
「義輝、もうその子たちとお話するのは止して……これから此処に来る
「おうっ、それではもう皆が集まったという訳だな、マリア!」
皆が帝に馴れ馴れしく話し掛ける女性の声に振り向くと、そこには愛染艶花マリアの姿があった。
「ま、マリアさん!」
「ふふっ、久しぶりね、あなた達……♪ まさか此処まで足を運んでくるだなんて思いも寄らなかったわ♪」
怪しく微笑みながら琴浦春香の言葉に返事するマリアの台詞に、皆が聞き及んでいると、帝はそのマリアに訊ねた。
「マリアよ、我らの側についてくれる武将達は、既に集まってきているのかね?」
「ええ、義輝。チョウセイも、その他の武人達も黒武士からの招集を受けて集まっているわ。みんな、貴方の為に尽力しようとする者たちばかりよ♪」
マリアに呼び寄せられるがままに、彼女の許に歩み寄る帝。すると帝の動きに着いて行くように二次元人たちもマリアの許へと歩み寄った。
そして帝と二次元人たちが歩み寄ると、そこは所々破損した階段だった。その階段の上から下の方を見下ろしてみると、そこには帝である足正義輝公の命の下、黒武士によって招集された武将達が勢揃いしていた。
「し、鹿之助くん!?」
「サイ・チョウセイ……!」
「あ、有沙さんまで!?」
「大友宗助に、立花宗茂……!」
「剣豪、シマ・ギンテル……!」
「ロシア軍総大将ケンノフスキーに、くノ一のかすがさん!」
「つ、鶴姫ちゃんまで!? なんでまた……!」
二次元人たちの前に姿を拝見させたのは、足正義輝に対して跪き頭を垂れる武将達。山中鹿之助。サイ・チョウセイとその妻、小田原有沙。大友宗助とその側近、立花宗茂。中国の大剣豪シマ・ギンテル。ロシア軍総大将ケンノフスキーとその配下のくノ一かすが。そして何故か鶴姫までもその姿を見せていた。
「おっす! お久しぶりですね、皆さん! 皆さんも新世代型二次元人として、僕たちの活躍を見に来てくれたんですか!」
「し、鹿之助くん……」
久々の対面にはしゃぐ鹿之助を見て、唖然としてしまう烏丸さくら。
「チョウセイ、解っていると思うけど、しっかり頑張ってちょうだいね……そう、夫婦水入らずでね」
「っ…………」
「ちょ、チョウセイさん……」
姉マリアからの言伝に口元を歪めるサイ・チョウセイを視認して気遣う松本頼子からの声掛けに、チョウセイは顔を渋らせて返事する。
「す、済まない、新世代型の諸君……韓国軍将軍として、姉上には……い、いいや、帝には逆らえないのだ!」
「って、結論から言えば、単なる姉贔屓で帝側に降ったって事じゃないか! このシスコンっ」
「な、なにを申される! 弟として姉を、身内を庇い立てするのは当然の義ではないか!」
実質上、実姉には逆らえないチョウセイにギュービッドがシスコンとツッコムと、チョウセイは身内を庇うのは当然の義であると反論する。
「オーー、帝よ帝。我が修司教を見初めてくださり、誠にありがとうございます! つきましては、今後の活動資金を少しばかり融通してもらえたら幸いなのですが……」
「うむ、朋よ! 金子が足りなければ、いくらでも出して進ぜよう!」
「おぉ! 寛大な御心、太っ腹な精神に感謝感激デース! ほれ宗茂、あなたも礼を……」
「は、はい……資金援助、誠に感謝いたします……(遂に帝まで引き入れちゃったよ、ウチの修司教……)」
帝から限りない資金援助を融通してもらい感激する大友宗助に反し、立花宗茂は今後の修司教の成り行きに一抹の不安を覚えずには居られなかった。
「し、シマ・ギンテル殿……貴殿もまた、帝の配下に降ると言うのですか……!?」
「ただ降る訳じゃないね……ワシは本物の鬼に……かつての畏怖たる鬼のギンテルに戻るんじゃ……!」
「ふふ、お久しぶりですね。新世代の者たち……あなた方もまた、帝と共に新しい時代が来るその瞬間を目撃するのですか」
「け、ケンノフスキー殿……遂にこの時がやって来てしまいましたね。前にも耳に入れてはいましたが、まさか本気で帝の下に降るとは……」
「フンッ、貴様らにとってはいい傾向なのではないか? 自分たち新世代型二次元人を護ってくれる軍勢が増強されたのだからな」
「そ、そんな! かすがちゃん、あなたそんなこと思っているの!?」
微笑すると同時に話し掛けて来たケンノフスキーに猿田学が問い返すと、そんな彼ら新世代型に悪態をつくかすが。彼女の言葉を聞いて大門ジョセフィーヌは愕然とする。
と、そんなかすがにケンノフスキーは優しく言葉を掛けた。
「これ、わたくしの美しき剣よ。その様な悪態はやめなさい」
「け、ケンノフスキー様……!」
「彼らもまた、新しい世に導かれ……いえ、導く為にこの場に集うて来た新時代の者たち。帝と同じく、新しい世へと人々を導く為に……乱世を引き起こしたる渦の中心。乱世という荒波を超えて、新しい今生の世を創世する血族……我々はただ、彼らを護りて、彼らの道行きを阻む輩を排除する役目を務めるのです」
「は、はい……解りました、ケンノフスキー様……」
主であるケンノフスキーから言い付けられて、少し寂しい雰囲気を醸し出すかすが。
「わーーい、皆さん、お久しぶりですっ☆ まさか将軍様に集められた人たちの中に、皆さんも居たとは驚き桃の木ですっ!」
「つ、鶴姫ちゃんは相変わらず元気そうね……」
「はいっ、
相変わらず天真爛漫な元気振りを発揮する鶴姫の言動にイオリ・リン子が言葉を返すと、鶴姫は擬音を使って言葉を返した。
こうして帝である足正義輝の下に、10人の武将と関係者が勢揃いし、それまでの帝の軍勢と合わせて大所帯へと軍は増強された。
自らを天下人への褒美と称する妖艶でわがままだが、その美貌で如何なる兵をも虜にし、巧みに言い包める美女。
マリア
半人前だが、その正義感は人一倍。
山中鹿之助
この世の絶対的正義を信じて疑わない、誇り高き正義の使者
サイ・チョウセイ
鬼神と恐れられし、小田原修司の血を引く強気な女性
小田原有沙
修司教を作り上げ、小田原修司やその側近であった聖龍HEADを崇め奉るクォーター。
大友宗助
主君の為なら、素足で釘をも踏み付ける絶対的忠義の持ち主。
立花宗茂
大剣を振るう一撃必殺の“示現流”の使い手にして、相手を容赦なく斬り捨てるその姿は鬼の異名をとる老兵。
シマ・ギンテル
冷静かつ穏やかな雰囲気とは一転、軍神として周囲より恐れられている長刀の達人。
ケンノフスキー
ケンノフスキーを自らを納める鞘として絶対的な忠誠を誓うくノ一という美しき剣。
かすが
海神の巫女として、高確率な予言を的中させてきた天真爛漫な少女。
鶴姫
総勢10名の軍勢が、帝の軍と複合して兵力を増強したのだった。
[武将達との対談]
帝である足正義輝の命を受け、武将達に集合の召集令状を密かに届けていた黒武士。
その黒武士からの書状を受けた各武将達は、挙って帝の軍門へと降った。
そして帝は、傍らに自分と同じ新世代型二次元人の者たちを控えたまま、今回の戦いの成り行きを説明した。
が、同時に帝は自分たち新世代型二次元人が小田原修司の遺伝子配列を模して生み出された、クローンに近い種である事を集まってきた武人達に説き明かした。
「……へぇ、なるほど。ただの二次元人じゃないってのは聞いていたけど、まさか小田原修司のクローンだったなんて驚きだわ」
帝から自分たち新世代型が小田原修司のクローンに近い種である事を聞いたマリアは、義弟でもある修司のクローンだと改めて知って驚いた。
「な、なんと! 貴殿らは、我が義兄、小田原修司のクローンだったというのか! いや、それは実に忌々しき事……クローンという、生命の創造に対して善悪議論が絶えない出生だけでも居た堪れないというのに、まさか鬼神と恐れられる我が義兄の遺伝子を政府が使用していたとは……何たる所業!」
クローンという生命誕生の法則に対して善悪議論が絶えない出生だけでも己の正義が許せないチョウセイは、更に人々から恐れられる義兄の遺伝子を政府が意図的に使用した所業にまでも正義感から許せなかった。
「ほう、まさか政府が小田原修司の遺伝子を用いて異常な生物に変化しない二次元人を生み出していたとは……皮肉な天命ですね。かつて死闘を繰り広げた鬼神の申し子たるあなた方とこうして二度に渡り顔を合わせるのも、また天が授けた宿命、なのかもしれません」
過去に死闘を繰り広げた鬼神小田原修司のクローンとして、自分達が出会ったのを天命や宿命と捉えるケンノフスキー。
「修司どんのくろーん、ちゅう訳じゃな、おまはんらは……なるほど、それで強い輩も見受けられる訳じゃ。がはははっ」
小田原修司のクローンだと知って、かつて刃と刃を交えて交友した間柄の小田原修司を思い返して大笑いするシマ・ギンテル。
「オーーッ!! まさかまさか! あの修司様のクローンだったんですか!? いや、僕は最初から気付いていましたよ。あなた方から染み出る、鬼神様の偉大なるオーラ……そして行く行くは我が修司教の最高幹部として、修司様の意志を受け継いで新たなる世を創造する役目に付く新世代型の御姿を! ……そうでしょ、宗茂」
「は、はい! 全く持ってその通りで……! (小田原修司のクローンだったなんて可愛そうだな。それなのにこれ以上、修司教の幹部とかにしちゃ、もっと可愛そうじゃないの)」
新世代型二次元人たちが小田原修司のクローンと知って、最初に会った時から感づいていたと意気込む大友宗助に問われ、立花宗茂は適当に返した。
「わあっ! 皆さんが鬼神様の血を受け継いだ二次元人だなんて驚きです! そしてそれ以上に感激です! あの鬼神様の血を受け継いでおられるのですからっ」
鬼神の血を受け継いでいるとして、鶴姫は新世代型二次元人たちに嬉々として話し掛ける。
「わ、わわわ……あの人食いとしても恐れられる小田原修司のクローンだったなんて……! 今まで僕は、なんて命知らずな事をしてしまったんだろう……」
最初に新世代型を目撃した時、主君ハルノフを誘拐した人々かと思い込み、更にはその直後、国連軍に通報して全員を連行させた経緯のある鹿之助は、非常に新世代型を恐れていた。
「し、鹿之助くん……」
そんな怯え切る鹿之助を察し、新世代型の琴浦春香が優しく声をかけつつ手を差し伸べようとすると、鹿之助は表情を一変させて振り払った。
「わっ、わ! ぼ、僕は食べても美味しくないぞ! いや、美味しくありませんから食べないで~~……!」
本気で怖がり、涙目で春香たち新世代型たちを遠退けようとする鹿之助の言動に、激しく心を痛める新世代型たち。
そんな人喰いの噂がある小田原修司のクローンという事で、無闇に怖がる鹿之助に帝が説き明かした。
「鹿之朋よ、安心したまえ。吾ら新世代型が始祖、小田原修司が人を喰ったという話は全くの法螺なのだからな」
「へっ? ほ、ホントっすか?」
「うむ、如何にも! そもそも鬼神が人を喰ったという話は、鬼神自らが作り上げた法螺話よ。ある日、戦場から帰参した鬼神は自分の口元にまで返り血が浴びているのに気付いて、その折に自ら敵方であった人を喰らったという話を世間に流させたのだ! そう、まるで口から喰らった相手の血肉が零れているかの様に鬼神自らが流した噂よ、噂!」
「へ、へっ? それじゃ、鬼神が人を喰らったって言うのは、鬼神が敢えて自分を恐れさせるように言い触らしたデマって事?」
鹿之助が帝から一連の噂が流れた経緯を聞いた処に、その鬼神の義弟であるサイ・チョウセイが鹿之助に言い放った。
「こらッ、鹿之助よ! いくら人々から恐れられる兄者といえど、同じ人を喰らう訳が無かろうに!」
「わっ! ご、ごめんなさいっ!」
サイ・チョウセイに叱られて縮み込む鹿之助。
すると其処にサイ・チョウセイが妻にして、鬼神の実妹である小田原有沙が話に入ってきた。
「修司、修司……ほんと、修司の話を聞かなくなる日は全然来ないわ」
「あ、有沙……」
何処となく暗い面持ちの有沙の言葉にチョウセイが反応すると、有沙は話し続けた。
「修司は昔からそう……自分を怖がらせる為に色々と自分を偽ってきて。でも、そんな風に修司を育んだのは私の家庭……修司の夢を嘲笑い、真剣に取り扱ってあげなかった私たち家族が招いた悲劇。修司を鬼へと駆り立てたのは私たち小田原家……そんな業が、今では新世代型という二次元人まで生み出してしまった訳ね……」
「だ、だが有沙。兄者の政策で、多くの人々が救われたのも、また事実……兄者たち聖龍隊が掲げ、守り抜いた正義の道は評価しようではないか」
「ううん、チョウセイ。貴方は勘違いしているみたいだけど、修司は正義というものを信じては……いいえ、信じられなかったのよ。所詮、正義は人の固定概念、簡単に引っくり返されてしまう評価の値にしか過ぎないって……修司は口々にそう言ってたわ」
「あ、有沙……」
「今の世の中を混乱させている政策も、新世代という種族も……全ては修司から生まれ、修司から始まってしまったのよ。こんな悲劇を生み出したのは、私たち小田原家……」
「あ、有沙!」
悲愴感に暮れながら何処ぞへと赴く家内有沙の暗い心境を何とかしようと、チョウセイはその場から立ち去ろうとする有沙へと駆け寄っていく。
帝から粗方の事情を聞かされた武将たちは、その時が来るまでしばし自営にて待機していた。
そんな武将達に、二次元人たちは訊ね回った。何ゆえ帝へと降ったのか。
「……マリアさん、どうして戦には余り関心のなかった貴女が帝の軍勢に入ったの?」
「ふふ、イオリ・リン子……妾と同じく、多くの男共を魅了させる貴女までも、そんな無粋な質問を問い掛けるの?」
「ぶ、無粋って! 戦争が始まろうとしているんですよ……!」
「ふふ、コウサカ・チナ。あなた達には分からないの? 義輝にとって、自らの義務が果たせる瞬間が訪れるのだから……」
「義務、だと……!」
「そうよ、鬼龍院皐月。義輝は民草……すなわち庶民たちに、この上ない生甲斐を与えるという義務が……いいえ、責務があるの。相変わらず堅苦しい生き方だけど……妾はそんな生き方を進んで選ぶ義輝にぞっこんなの♪」
「ぞ、ぞっこんって……つまり、惚れ抜いちゃっているって事?」
「ふふ、そうよ、真鍋義久……そして義輝は、この世の中に生きる人々から熱気が失ったと嘆いて、現政奉還なんて荒事を引き起こしちゃったの。まあ、これも……新しい時代を、次代を創造する新世代型二次元人の宿命なんじゃない? あなた達なら、きっと義輝の考えも理解できると思うけど……なんせ、同じ血縁なんだから♪」
艶っぽい声で受け答えするマリアからの返答を聞いて、新世代型たちは考え伏せられた。
「……鹿之助くん、本当に帝側に降る事が正義だと、自分に問い掛けているのかい?」
「これは、僕の推理なんすけどね、ガッチャマンクラウズの皆さん! 時の将軍・足正義輝様が天下創世の詔を号令し、世界に衝撃と興奮が渦巻いた、まさにその日――我が主、ハルノフ様が宮殿から忽然と姿を消したのであった……」
「ふむふむ、それで?」
「それでですね、はじめさん! この事件の裏側には、将軍様が……帝が関わっていると僕は睨んだっす! でも、証拠も無しに将軍様を疑ったんじゃ話にもなりません。そこで! まずは将軍様の御側で働きを示してから、ハルノフ様探しに乗り出そうって考えた次第っす!」
「ふ~~ん……」
「そ、それにですよ……ハルノフ様が不在にアラブ諸国では、既に紛争が過激化しているって話っす! そんな過激になった紛争を宥めてくれるって言ってくれたのが、将軍様なんです! この際、乱世を引き起こした将軍様の権威で、荒ぶるアラブを鎮めてもらわないと……あら? あらぶるアラブ、って……ギャグになっちゃってるっすね!」
「(# ゚Д゚)」
「うわっ、おやっさん蹴らないで蹴らないで……ど、どっちにしろ、僕が見習い武将を務めているアラブ諸国の平和を守るには、将軍様の権威がどうしても必要なんす! だから此処は一つ、不在のハルノフ様に代わってこの僕が将軍様の期待に応えないと!」
お目付け役のおやっさんに蹴り付けられながらも、鹿之助は帝の期待に応えないとと張り切るのだった。
「チョウセイ殿……韓国軍総大将として姉の、いや帝の命に従おうとするその心意気は天晴れじゃ。じゃが、このまま戦争が始まれば、それこそ多くの人命が……」
「お気遣い、ありがとうございます。薙切仙左衛門殿……しかし、私には私なりの義があります。故に、このまま足正公に反する訳にもいかないのです。せめて公が満足できる戦を展開しない限り、この乱世が治まる事はないでしょう」
「で、でもよ……乱世を引き起こした足正義輝に属するなんてよ……」
「う、うむ。幸平創真よ、貴殿の言いたい事はよく解る。世界を護るべき帝ともあろうものが、天下創世などと何たる酔狂……まさしく悪だ! しかし姉上が申すには……その、なんだ……と、とにかく! 訳が分からぬ内に韓国軍は足正公の下に付いてしまったのだ! それに姉上は、自らを天下人への褒美にするなどと訳の分からぬ事を抜かし出す始末だし……私は弟として、姉上に不埒な輩が飛び付かないよう見張っていなければならないのだ! 其方たちには申し訳ないが、私はしばしの間、将軍の軍門に降る……いや、済まない!」
「そ、そんなぁ……」
「如何なる試練であろうとも……! 韓国が国将軍サイ・チョウセイは止まる訳には行かないのだ!」
新世代型達からの訴えに、サイ・チョウセイは自らの義を貫く決心を示す。
「おーー、トレビアーン……もうすぐ修司教が乱世を治める鍵となるのですね! 僕はウキウキドキドキです」
「修司教が乱世を治める鍵、とな……? それは一体どういう事だ?」
「おおっ、それはですねラル殿。僕の立てた計画では……修司教が最終的に全ての武将達を返り討ちにして、帝から称賛の御言葉と絶対的地位を謙譲されます! それを切っ掛けに修司教はバチカン市国よりも強大な宗教国家へと変貌を遂げるのです! 帝を喜ばせる為に頑張らないとっ」
「で、でも! 結論から言わせて貰えば、戦争には違いないんだぞ! 戦争で帝を、あの足正義輝を満足させるだなんて……」
「あら? あなた達がそれを言うなんて驚きですね、磯谷ゲンドウ。そもそもウォーゲームという擬似戦争をやらせられる為だけに生み出されたあなた達が、本物とはいえ戦争を否定するのは場違いなのでは?」
「ッ……!」
「僕は無償の愛を乱世に振り撒く愛のキューピット! この混乱に紛れて修司教を世界中に、いえ異世界中に布教するのです! もちろん、修司様の血を分けた、あなた方新世代型の二次元人にも協力してもらいますよ。嫌と言ってっも、所詮この乱世を引き起こしたのは、結論から言わせてもらえばあなた達が元凶なんですから!」
『っ……!』
「それに、そうして修司教を布教していけば、いずれ本物の修司様が駆け付けて、この乱世を鎮めてくれるかもしれません!」
大友宗助から指摘を受けて、何も言い返せなくなってしまう新世代型たち。
「立花殿、貴方には貴方の忠義がお有りなのは御存知です……ですが、今回の宗助くんの、いや帝の横暴には目が余ります。どうか、貴方の進言でせめて宗助くんだけでも止めてくれませんか……!」
「お優しいお気遣い、感謝いたします。琴浦善三殿。しかし自分は我が主の意思を尊重し、最後までこの雷切と共に戦い抜く覚悟を決めております。……此処だけの話、あなた達も既に戦渦の真っ只中に巻き込まれてしまっております。折を見て、全員逃げ出してください。いつ何時、戦争の火種が其方に転がってくるか分かりません」
「は、はぁ……」
「森羅万象一切を断ち切る手前の雷切でも斬れぬもの……それは、宗助様への忠と義なり……!」
互いに気遣い合う新世代型と立花宗茂は、最後は内緒話で幕を閉じた。
「ギンテル殿、貴方まで帝の軍門に降るとは……何ゆえ?」
「皐月どん……ワシは、歳を取り過ぎた。故に、自分の示現を見失ってしまった……」
「示現を、見失った……?」
「そうじゃ……以前、あんさんらと激しい死闘を繰り広げたあの日からも……オイは強い剣豪と激しく死合ったばい。じゃっどん、かつての勢いは無くなる次第じゃ……オイは思った! このままではいかんと! 示現の道を後世に遺す為には、まず己の示現を完成させねばと……!」
「………………」
「そこでワシは思った! ワシは、再び鬼となる……人々を恐れさせ、畏縮させるほどの鬼へと返り咲くと! 再び自らを修羅の道へと導いて、目の前の敵を一人残らず容赦なく一刀の元に斬り捨てていく無情の鬼へと戻る以外……ワシの示現を完成させる道はないと!」
「自分から鬼へ……そんな! 爺さん、あんた自分から人間を捨てる気かよ!」
「ギンテルさん、貴方の強さを追い求める信念や覚悟はよぉく理解できます。けれども、人の情を捨ててまで手に入れた教えが後世に残るとは到底思えません……!」
「じゃっどん! ワシにはこれ以外の道は残されておらんのじゃ! 流子どん、未来どん、元々人でなかった主らに……貧弱な人の子として生まれなかった主ら新世代型にはワシの気持ちは分からんよって……!」
貧弱な人の子として生を受けなかった新世代型には自分の苦心は理解できないと、再び大剣を振り回して鍛錬に勤しむシマ・ギンテルには新世代型の訴えは届かなかった。
「わたくしは以前と同じ、帝にこの身を捧げ奉る覚悟です。新世代型の皆々よ……わたくしは只、軍神としての務めを果たすのみ……!」
「だけどケンノフスキー……どう考えても俺達は納得できない……いたずらに世を乱すような将軍に、手を貸すなんて……!」
「ふふ、案外帝と同じ血を引きながらも視野が狭いのですね……ヨド殿、いや新世代型の皆々…………賽の帝は、紛れもなく天下人の器……今はただ、一つを違えているだけなのです」
「一つ……? それは一体……?」
「ふふ、エイミー殿……今は何も言いません、どうかわたくし達を信じてください。この世はいずれ、あるべき姿へと辿り着きます……」
「あるべき姿……では聞くけど、貴方自身は自らが天下人に相応しい人物だとは思わないの?」
「ほう、わたくしにそのような事をききますか、日暮真尋よ。わたくしは軍神……乱世の渦でのみ輝く者。健やかなる世を治める器ではありません」
「そんな! そんな事って……!」
「よいのです、瀬名アラタよ、そう悲観なさらず……なればこそ、わたくしはあの方を見出しました。武勇、知略、そして器量……あらゆる賽に抱かれし、その存在を……」
「それが……将軍……足正義輝……」
「そうです。あとは、ただ一つ……人の心への寄り添い方さえ知り得たなら……」
「人の、心への寄り添い方……!」
「そうです、琴浦春香よ……あの方は、人の心へ寄り添う術を未だ見出せないまま……その術を、誰かが説いて差し上げれば、この乱世も早々に終焉へと向かうかもしれません……」
人への心の寄り添い方。それを知れば帝の心境にも何らかの変化が訪れるかもしれないと説くケンノフスキーの台詞に、新世代型たちは圧巻された。
「お前達がいくら騒ごうと……私は揺れ動かない。私はあくまで剣。ケンノフスキー様という鞘に納められてこその剣。その剣たる私がケンノフスキー様にとやかく言う立場で無い事は、お前達も重々承知している筈だ……」
「……貴女、かすがさんでしたわよね。貴女がケンノフスキーを相手に人言えない心持ちだって事は、同じ女として理解できますわ。……ならば、貴女自身はどうお考えで? ケンノフスキーが足正義輝の配下に降った事を……!」
「……! 鋭い指摘をするな、薙切えりな……確かに私は、ケンノフスキー様が足正傘下に降った事を余り好ましく思っていない……が、それでも私はただ黙って付き従うのみだ! それが忍たる私の使命……!」
「かすがさん……」
「悲観しないでほしい、彩瀬なる。忍には忍の生き様がある……! されど、私には解らない……ケンノフスキー様のお考えが……! ……軍神として、世の乱れを歓迎されているのか……? いや、違う! あの方は無粋に民を思わない武人ではない……! きっと、きっと私の様な一忍には到底思い付かない思想があるからこそ、帝の下に付いているのだ……!」
「ううん、ケンノフスキーにはケンノフスキーの考えがある、か……」
「では逆に聞くが、室戸大智よ、そしてその他の将軍と血を分けし鬼の申し子よ。貴様らには理解できるのか……? 熱気が無いというだけで世を乱し、乱世を引き起こした将軍・足正公の考えが……!」
「そ、それは……!」
「ふんっ、どうだ、やはり何も言えないだろう。同じ鬼神の血を引いているだけで、何も分かってないくせに……!」
『………………………………』
「でも、ケンノフスキー様が、誰かの下に付く日が来るなんて…………確かに、帝は桁外れの男なのは間違いない……こうして同じ地に立っているだけでも震えが来るのだから……」
「……将軍は、やはり忍として見ても強いと思うのか?」
「ああ、纏流子よ……! 貴様らと同じ、あの残虐非道で名を馳せた武人・小田原修司の血縁者だけあって、あの将軍は底無しの強さだ……!」
くノ一かすがから改めて帝の強さを説かれた新世代型たちは、底無しの強さだと説かれて絶句した。
「御神託がありました……卑弥呼様より、将軍様の……そして黒武士の方を御救いなさるようにと!」
「く、黒武士を救えだって!?」
「そのお告げは、いくらなんでも……」
「まあっ、卑弥呼様の御神託を信じないんですか! えぇっと、エルエルフさんに、小野田坂道さん……ふぅ、鬼神様の血を引く新世代型の人たちって、結構数が多くて目が回りますぅ」
「その鬼神の血を引くって言い方はやめてほしいわね。私達だって好き好んで鬼の血を引いた訳じゃないのよ!」
「まっ、悪い御口ですよ、琴浦久美子さんっ。折角、改心していいお母さんに復帰できるというのに、自分達の始祖様にあたる鬼神様を悪く言うのはプンスカプンですよっ!」
「で、でも鶴姫ちゃん! 前々から思っていたけど、その卑弥呼からの御神託って本当に信頼できるものなの!?」
「まあ、美都玲奈さんまでそんな事言うんですか? ……私には聴こえます、古からの導きが。あの日、夢枕にユラーンと立ったのは間違いなく、あの古の王国・邪馬台国を治めていた卑弥呼様なんです! 私には解るんです……卑弥呼様は何かを訴える為に私の夢枕に立って仰って下さいました。千歳の時を経てもなお、争いの絶えぬ今を強く憂い……わたしにこの乱世を、平和に導くようにと……」
「そ、その為に帝と……あの黒武士に協力するのか?」
「そうですよっ、真鍋義久くん! 乱世を平和に導くには……まずは心を失くしてしまった黒武士さんをお助けしないと!」
古の巫・卑弥呼より乱世を鎮めるようにと告げられた鶴姫。幼い彼女はその卑弥呼の言葉を疑わず、まずは心を失くしてしまった黒武士を救済しようと帝の軍門に降ったのだと新世代型たちに明るく説き明かす。
[帝の防壁]
新世代型達との一時の対談を終えた各武将たちは、帝の詮議に集った。
「……ふむ、此処がこうでな……其之方はこの地を守護して欲しい……」
帝は各武将たちに各々の配置を位置付け、武将達もそれに同意していく。
「ふむ、なるほど……さすがは帝、懸命なる判断です」
帝の的確な指示に同意し尽くすケンノフスキー。
「わっかりました! では、この場は僕とおやっさんで何としてでも死守して見せます!」
「うむ、しかし鹿之朋よ。其之方に託した役目柄を忘れるでないぞ」
「はいっ、心得てるっす!」
指示された場所を死守して見せると意気込む鹿之助に、帝は各々に与えた役目を忘れるなかれと釘を刺す。
「では、オイと宗茂どんは帝と新世代型の面子を背後から防衛する役割で良いんじゃな」
「手前とギンテル殿に任せられた大役……己が忠義の下に果たして見せましょう……!」
「うむ、頼んだぞ! 其之方ら」
自分たちに課せられた役目を果たそうと強い意志を示すシマ・ギンテルと立花宗茂に、帝は頼もしさを感じる。
「わたしもビューーンと一っ走りでお役目を果たしてみせますっ! 見ていてくださいね、将軍様、黒武士さん☆」
「うむ、巫女よ大いに期待しているぞ」
「…………………………………………」
可愛く意気込む鶴姫に、帝は期待をしていると返す一方、黒武士は相変わらず無言のままだった。
「……ふ~~ん、妾はこの地にて訪ねてくる
「ああ、頼んだぞ、マリア!」
帝からの返答を受けたマリアは、スグに話の矛先を変えて実弟のサイ・チョウセイに言った。
「それじゃチョウセイ、貴方も義輝に言われたとおり、かの地を守護するのよ。夫婦仲良くね♪」
頭の上がらない実姉に言われ、チョウセイは義を感じられない戦に出陣するのをもどかしく思う。
そして帝からの指示を受けた大元の武将達が各自動いていく中、マリアのみが帝たる足正義輝公の許で気ままに寛いでいた。
「ふふふ♪ もうすぐ、この世を満たす戦が始まるのね……」
「あんた、何だか楽しそうだな……」
新世代型の真鍋義久が有意義に過ごすマリアを凝視して問い詰めると、マリアは微笑みながら答え返した。
「ふふ、だってそうでしょ? もうすぐで義輝の……いいえ、あなたたち新世代型が望む乱世の引き際が始まるのだから♪」
「私たちは別に望んでなんかいません」
マリアの返答に鹿島ユノが強く返すと、マリアは微笑を絶やさず答える。
「あら、望んでいたんじゃなかったの? 戦争、すなわち乱世が終わるその時を……」
「そ、それは……!」
「ふふ、この争いは聖龍隊とスター・コマンドーが各地の武将達を引き連れて決戦をすると同時に……義輝に向かって戦を仕掛ける大一番♪ この大戦の結果が乱世を長引かせもすれば、逆に終結へと誘う結果にも繋がるのよ?」
「そ、それは、そうですが……」
マリアの言い分に新世代型のイオリ・セイが口を閉ざすが、その情景を凝視していた帝が笑い飛ばしながら自らの同胞達へと話し掛ける。
「はははは! この後に及んでまだ悩んでいるのかね、同胞よ! 既に時は来たり……満ち足りた時の中から選ばれし
「誰もが貴方を目指して、この地に赴くという計算ですか……」
「はははは! そうとも、室戸大智よ! 頂という目的があれば、人は自ずと炎うものさ。予という頂を求めて、如何なる武将が歴戦を潜り抜けて辿り着くのか予にも見通せぬよ!」
如何なる平行宇宙や予知能力を有する帝であっても、どの武将が己の軍勢を掻い潜り自らの前に辿り着くのか見当が付かないと胸の内を解き放つ。
すると帝は、そんな戦に大層不満のある同胞達に訊ねた。
「……して、同胞よ! 其之方らは天下を求めぬのかな?」
「え? て、天下だって!?」
「その通りよ。其之方達にも類まれなる武の才能がある者たちが居るではないか! その才で、天下を目指そうとは思わぬかね?」
『………………………………』
新世代型たちは忽然と黙り込んでしまった。
「ふ……興味が無い、か」
黙り込む新世代型たちを見て、帝はぼそりと呟く。
すると帝は今度は無線で試練という防衛に徹するケンノフスキーに問い掛ける。
「はははは、どうだケンノフスキー! 時には焔の世に身を置くのも悪くは無かろう?」
「ふふ……ええ、貴方様の仰るとおり」
「氷たる其之方に、生まれて初めての熱を贈れた! これ以上に喜ばしき事もないな……!」
「……おそれながら……わたくしは既に、ほむらを帯びておりました」
「……ほう?」
「モンゴルが虎、モウ・コダイと相まみえし戦場……あれに勝るほてりを、わたくしは未だ知りません」
「ふむ、そういえば其之方は、長らく彼の雄と競り合いを続けていたのだったな……」
ケンノフスキーから、かの好敵手にてモンゴル将軍に座していたモウ・コダイとの戦こそ熱気を感じた初めての合戦と伝え聞いて帝は思った。
「……好敵手、己が対というものか? それは予の知らぬ炎いだ、ケンノフスキー……羨ましいな……」
「………………………………」
帝は羨ましく思った。好敵手という、自分と相対しながらも共に並んで競い合え、お互いに成長し合える間柄の存在に。
好敵手という存在を羨ましく思った帝は、ケンノフスキーに再度訊ねた。
「ケンノフスキーよ……予も、その好敵手とやらが欲しくなった! どの様にすれば欲せるかね?」
「ふふ、みかどよ……それを求めるは、未だこの戦場に漂う熱気では足りないと感じ入る者が……貴殿の傍らにおるのでは?」
ケンノフスキーに問われて、帝が辺りを見渡してみると、彼の視界には戦いを好ましく思わない二次元人たちと、自分の身体の装飾ばかり気にするマリア、そして無言で鎮座する黒武士の姿しか映らなかった。
しかし、それらの情景を目にした帝はケンノフスキーが伝えたい意志がハッキリと伝わった。
「……これでは足りぬと感じる者もまた居る、か……いや、鋭い指摘だ! 感謝するぞ、朋よ!」
無線でケンノフスキーに感謝の意を述べる帝、そしてその帝から感謝の意を受け取ったケンノフスキーは徐に微笑む。
そして帝は振り返ると、己が後方にて佇む新世代型たちに問うた。
「吾らが同胞達よ! 未来を決する大一番の前だ! どうかね? この場にて……予の前でその実力を見せてくれるかね?」
「な、何だって!?」突然の帝の提言に困惑するギュービッドたち。
そんな困惑する皆々を前に、帝は絶えず語り続ける。
「予は好敵手……今の言葉で言うライバルという存在に限りない可能性を見出した! 共に競い合いながらも、同時にお互いを称賛し合い互いに成長し合う関係……すなわち好敵手! 其之方達は今日まで、その好敵手と競い合い、高みを得た筈……! その高みを、どうか予の目前で披露してくれ!」
「ひ、披露と申されても……」
己が実力を披露してくれと申されても困り果てるばかりの
すると帝は顔を背け、視線を先ほどから黙然と鎮座している黒武士に向ける。すると黒武士は帝からの視線を受け取ると、立ち上がり、帝と二次元人たちの前に進む。
そして両側の間で立ち止まった黒武士は、姿勢を二次元人たちの方に向けると再び人形の様に固まって動かなくなる。
「無論、予と其之方たちでは実力に差が有り過ぎる! よって、まずはこの黒武士と一戦始めるのをお勧めするぞ。なに、武器がなくて戦えないというのなら……ほれ、この通り武器は無限に貸し出すゆえ」
帝が指を鳴らしてみると、なんと空間から数多の種類の武器が山ほど出現し、辺りに突き刺さる。この場景を見て二次元人達は騒然とする。
一方の黒武士は、帝から直々に戦いの許可が下りたという事なのか、腰に携えている長刀から漆黒の刃を静かに抜刀し、その切っ先を二次元人たちに向けて己の戦意を表す。
「……こうなったら、やってやるよ……!」
「な……!」「りゅ、流子ちゃん!?」
黒武士に戦意を向けられて、己の戦意もむき出しにする纏流子に、実姉の皐月も親友の満艦飾マコも衝撃を受ける。
そんな二人の衝撃を前に、流子は己の真意を熱く語り明かした。
「現政奉還だが何だかしらねえが……自分で熱くなれないからって世の中に戦乱を巻き起こした将軍様にホントの喧嘩って奴を見せてやる! それに、売られた喧嘩は買うのがアタイの道理だいっ!」
「流子ちゃん……」「流子……」
世の中に熱気が感じられないだけで、己自身を熱くさせられないでいる帝に本当の戦いを示して見せると意気込む流子の熱意を目前にして、マコも皐月も愕然とする。
そんな流子の熱意を受けて、他の新世代型たちも熱意を発し始めた。
「ぬおおおッ! 纏流子にだけ戦わせては、かつての本能字四天王の名が泣くわ! この
「私も黙って見過ごせるほどバカじゃないよ! こうなったら本物の戦争が始まる前に、この黒武士を倒しちゃおうっ」
「フッ、腕が鳴る……相手にとって、不足なし!」
「僕は正直、戦闘向きではないが……B.S.Lで戦前で活躍していた経験を生かして、サポートぐらいはこなせるだろう」
「て、テメェら……」
すると四天王たちに続いて、その筆頭にして流子の実姉である
「仕方がない。ここは私も加わろう」
「ね、姉さん……!」
「流子、私もこれ以上……身勝手な帝の立ち振る舞いには限界を感じていたのだ。それが例え、同じ小田原修司の血を引いている同族だろうと……! それに、妹だけに戦わせるのは姉としては不甲斐ないだろ?」
「あ、ありがとう姉さん!」
実姉である皐月からの申し受けを聞いて、感激する流子。
こんな【キルラキル】の面々に影響を受けてか、他のキャラたちも参戦の意を表す。
「私も行きます……! これ以上、この将軍様の思い通りにはさせたくありません!」
「ボクたちも同じっす! 争いは此処で終わらせるっす!」
栗山未来たち【境界の彼方】そして【ガッチャマンクラウズ】の面々も黒武士に対して参戦の意を示す。そんな参戦の意を示す面々を見て、朧気な視線を向ける黒武士。
更に特殊な戦闘能力を身に付けている面々だけが参戦の意を示している訳ではなかった。
「私も行くわ! 銃器でのサポートぐらい、わけないわ!」
「仕方がないな、此処は僕も参戦させてもらおう。一刻も早く、この戦争を終わらせて……燃堂や皆と一緒に家に帰りたいからな」
「けっ、あんたは相変わらず素直じゃないんだな」
素直に皆と家に帰りたいと堂々と言えない斉木に、纏流子が軽くツッコム。
すると今度はプロト世代のチョコまでも言い出した。
「何なら私も黒魔法で……! 黒武士を倒して、少しでも状況が良くなるんなら、みんなで協力し合って……」
「って、おいおいチョコ! あんたまで武人気取りはやめないかっ」
「でも先輩、チョコおねえちゃんの言うとおり……此処はみんなで一致団結して黒武士を倒して、将軍様に私たちの実力を見せ付ければ、話はソッコーで解決するんじゃないかな?」
「っ……やれやれ、しょうがないな」
チョコの発言を受けて、ギュービッドも桃花・ブロッサムも黒魔法での援護に徹する構えを示す。
そんな戦前に立つ面々を目前に、黒武士は一度引き抜いていた長刀を鞘に差し戻すと、身構えて臨戦の体勢を構えた。
[黒武士の実力]
そんな事で、話の流れから黒武士と一戦交える事となった二次元人たち。
ある者は自らの能力で、ある者は自らが扱える得物で、またある者は帝より授け賜った武器で黒武士と対峙する事となった。
二次元人たちに対して黒武士は、長刀を腰に携えている鞘に戻してからの体勢で身構えていた。
しかし無言でじりじりと踏み足で距離を詰めてくる黒武士に対して、二次元人たちは言い知れぬ恐怖で縮み込んでいた。
得体の知れぬ恐怖を纏いながら距離を詰め、着実に迫ってくる黒武士を前に、二次元人たちは最初の一手を踏み込めずにいた。
「……な、なあ、みんな! コイツとどう戦えばいいんだ? 正直、何してくるか分かったもんじゃないっ」
黒魔法で援護しようと身構えながらも、何を仕掛けてくるか不明の黒武士相手に怯え切ってしまうギュービッドたち。そんな彼女達の言葉に応えようと、まずは纏流子が動いた。
「さ……最初はアタイから!」
流子は黒武士に向かって斬り込んだ。しかし、黒武士は流子が振り付けてくる片太刀バサミを身を反らして軽々と回避するとそのまま横へと俊足移動してしまう。
「な……ッ!」
人間離れした回避運動に愕然とする流子と他の皆々。
しかし、そんな流子の最初の一手が、他の二次元人たちにも動きを与えた。
「わ、私たちも攻撃するわよっ!」
「あ、相手は避けてばかりだ! 速攻で決めよう!」
銃撃戦を展開する時縞ハルトの声を皮切りに、銃器を連射する二次元人たちは黒武士に向かって銃弾を連射し続ける。
しかし黒武士は彼らの銃撃戦を嘲笑うかのように避け続け、俊足で移動するばかり。
そんな黒武士に沙耶達は銃器を連射して、何とか着弾させようと必死になる。だが黒武士は彼女達の銃撃をかわし続けるばかり。
だが、遂に黒武士を銃撃戦で挟み込み、射線と射線が交差する位置にまで追い込むことが出来た。二つの射線が交差する位置では回避は不可能、と思われていた。
しかし黒武士は交差する射線の位置で、常人離れした動きで二つの射程を同時に回避し、銃撃から身を反らす。この黒武士の回避運動に新世代型たちは愕然とするばかり。
「ど、どうなってんだ、アイツの動きは!?」
「銃弾を全て潜り抜けるように避けていく……!」
「ば、バカな……! こんなの、人間の動きじゃないぞ!」
全ての銃弾を回避していく黒武士の動きを目の当たりにし、愕然とするプロト世代のギュービッド/桃花/海道ジンの三名は目を丸くする。
すると此処で黒武士に異変が。なんとぶらりと垂れ下げていた両手を突然、腰に携える長刀に差し置いて抜刀の構えに入ったのだ。
しかし黒武士と銃撃戦を展開する者たちの距離は遥かに遠く、抜刀しても刃が届かぬ距離であった。
「どんなに抜刀が早くても、この距離なら届かない!」
如何に抜刀術が長けていようとも、長距離からの攻撃は不可能と踏んだ犬塚キューマたち銃撃班は絶えず銃を乱射して黒武士をけん制する。
しかし次の瞬間、黒武士の動きが消えたと思った瞬間には、黒武士は銃撃を行っていた者たちの背後にその位置を変えて抜刀までしていた。そして華麗に抜刀した刀を鞘に戻すと、その瞬間に銃撃していた者たちが連射していた銃器が全て叩き斬られ、分解してしまった。さらに銃撃していた者たちも、その場に倒れ込んでしまう。
「さ、沙耶!」「みんな!」
黒武士との戦いを見守っていた
床に倒れ込む皆を見て、纏流子が怒りの太刀筋を黒武士にぶつける。
「て、テメェ! みんなを良くも……!!」
今では友となり、仲間となり、何よりも同じ境遇に喘ぐ存在を斬り付けた黒武士の行為に怒りを露にする流子。するとそんな流子を見て、実姉の
「流子! お前一人では無理だ! ここは皆で息を合わせて共闘するのだ!」
「流子さん、あなた一人で戦っている訳ではない事を忘れないで!」
そして流子と互い違いに黒武士に攻撃していく皐月と未来。しかし黒武士は、そんな三人の美少女の刃を軽々と回避しながら同時に漆黒の長刀で弾き返して攻撃を防いでしまう。
一方で、黒武士に銃器ごと斬り付けられた面々を看病する満艦飾薔薇蔵たち二次元人たちが、心配そうに斬り付けられて倒れ込む面々を見詰めていると、診立てた薔薇蔵が言った。
「……大丈夫、みんなみね打ちで済まされている」
この薔薇蔵の言葉を聞いて皆はホッと胸を撫で下ろす。
しかし銃器を手にしていたとはいえ、明らかに武力に差がある面々を容赦なく斬り捨てた黒武士の行為に、エスパーの斉木楠雄が静かに感情を昂らせていた。
「さ、斉木……?」
明らかにいつもとは目の色を変えている斉木の様子に逸早く気付いた燃堂力が声をかけると、斉木はいつもの微笑みで燃堂に言った。
「燃堂、ちょっといつもの僕とは感じ変わるけど……気にしないでくれ」
「う、うん……分かったよ。でも無理はするなよ、斉木」
燃堂に気にかけてもらいながら、斉木は単身、流子たち三人と剣戟を仕掛け合う黒武士に向かっていった。
「黒武士……いくら相手が強力な銃火器を持った少年少女らといっても、それだけで斬り捨てるのは気に喰わないな」
本来、情に厚い性格の斉木楠雄は平然と相手を斬り捨てる黒武士の行為に許しがたい感情を抱いていた。
そして斉木は超能力で黒武士と応戦するが、黒武士は自分に降りかかる全ての超能力を黒刀で弾いては防いでみせる。
「その黒刀……タダの刀じゃありませんね……!」
黒武士と対峙しながら、斉木は黒武士が扱う長刀・黒刀が並の武器ではない事を察する。
するとその情景を楽しげに観戦している帝が言い放った。
「ふははは! いや同胞よ! 黒武士が使用する長刀……漆黒・黒之輝の切れ味を察するとは流石ぞ!」
帝から称賛の言葉を受け取った斉木は、絶えず黒武士に超能力をぶつけてみるが、黒武士は全ての超能力を無力化して斉木に斬り込んできた。
「僕のエスパー技を悉く無力化している……! この力は一体……!?」
自身の超能力を悉く無力化する黒武士の能力を察して、斉木は愕然としながらも必死に応戦する。
と、その時。斉木との戦いに夢中であった黒武士の背後を、流子と未来が取った。
「後ろががら空きだよッ!!」
二人同時に黒武士に斬りかかろうとする流子と未来。だが黒武士は器用に背後からの攻撃を長刀で防ぎ、自身を守ってみせた。
「ッ……!」「っ……!」
背後からの攻撃をも背を向けたまま防衛してしまう黒武士の技量に圧巻させられる流子と未来。
と、そこに今度は流子が実姉の皐月が声を上げながら二人に言い寄った。
「二人とも、そのままだ……! 黒武士は私が斬る!!」
流子と未来が黒武士の動きを封じている間に、自らが黒武士に斬り込もうと猛進する皐月。
しかしその時、黒武士は自身の背後を取った流子と未来を長刀で激しく弾き飛ばした。
「うわッ」「っ!」「りゅ、流子……! 未来!」
弾き飛ばされた二人を見て愕然とする皐月。すると黒武士は刀を鞘に納めて、抜刀の構えを示すと姿勢を皐月に向けた。皐月は黒武士が目にも止まらない抜刀術で斬り込んで来るのを咄嗟に理解し、防御の構えを取った。
そして黒武士が抜刀すると同時に目にも止まらぬ俊足で皐月に踏み込み、斬り込んでいった瞬間、皐月が使用していた帝より貸し出された名刀があっさりと切断されて、皐月もろとも吹き飛ばしてしまう。
「ね、姉さん!」
先ほど黒武士に弾き飛ばされた流子と未来が、吹き飛ばされた皐月を見て唖然としていると、立ち昇る硝煙の中から皐月は立ち上がり、再び黒武士と対峙しようと眼光を鋭くさせる。
「くっ……おのれ……!」
吹き飛ばされた際の衝撃で受けた痛みに苦しみながら立ち上がる皐月を観て、帝は高笑いしながら声をかけた。
「ふははは! どうした同胞よ? 其之方らの実力はこの程度のものか? いや、安心したまえ……代わりの武器ならいくらでも貸し出そう」
そう言うと帝は、立ち上がろうとする皐月の目の前に新たな名刀を出現させて使用を許可させる。皐月は不本意ながらも帝からの武器を手に取ると、再び黒武士に向かっていった。
「あ、あの刀……かなり高いんだろうな」
「帝め、何気に物には執着を示さないみたいだな」
出現させる名刀の価値を気にする瀬名アラタに対し、星原ヒカルは帝が物に執着する事がない事実を周知する。
一方で、皐月や流子たちに加勢しようと
「ぐっ、この武器……でかい分だけ重過ぎる……!」
「い、今まで極制服を着て戦っていた分だけ、ツケが回ってきたみたいですね……」
「これじゃ、思うように戦えない……皐月ちゃん達を援護できないよ!」
「くっ、オレはまだまだ戦える……! 極制服無しでも勝利を勝ち取ってみせる!」
「そりゃッ」
掛け声と共に黒武士に斬りかかる猿投山。しかし黒武士は彼の剣戟を容易く回避すると、漆黒の長刀を薙ぎ払うように振り付けて猿投山の所持していた日本刀を弾き返した。
「ッ!」
日本刀を弾かれて戸惑う猿投山。するとその一瞬、猿投山は黒武士の目と合った。戦闘前は虚ろな眼差しをしていた瞳が、猿投山が見たその一瞬だけ何とも凄まじい憎悪を発していたのだ。黒武士の瞳から感じられる無限の憎悪を感じ取った猿投山は一瞬だけ怯んでしまった。
と、次の瞬間。黒武士は怯んだ猿投山を一刀の元、斬り付けた。
「うッ……!」
上半身を斬り付けられた猿投山は悶絶し、そのまま吹き飛ばされてしまった。
「さ、猿投山!」
黒武士の斬撃で吹き飛ばされてしまった猿投山を見て絶叫する皐月。
すると黒武士は次の標的を、援護攻撃を仕掛けようと必死になっていた残りの三名に定めた。三人に狙いを定めて、憎悪に滾った瞳で一睨みする黒武士の眼光に恐怖で背筋が凍り付く三人。
そして黒武士は三人に一気に距離を縮め、一瞬で抜刀する居合い抜きで三人を一気に片付けた。
「が、蟇郡! 犬牟田……蛇崩!」
黒武士によって無情にも斬り捨てられた三人を見て声を上げる纏流子。
と、三人に斬り込んだ黒武士に栗山未来が、自身の血を結晶化させて生成した刃で黒武士と対峙する。
しかし黒武士は栗山未来の剣戟を難なく突破してみせると、一振りで彼女の刃を砕け散らせて次の瞬間には栗山未来を叩き斬った。
黒武士の一太刀で斬り捨てられた栗山未来は忽ち倒れ込み、そこに同族の新世代型たちが心配して慌てて駆け寄り、看護する。
この黒武士の猛攻に反撃しようと、斉木楠雄と纏流子そして
三人は各々の技量で黒武士を攻撃しようと、一斉に飛び掛る。が、次の瞬間。黒武士は一瞬の抜刀術で三人を容赦なく吹き飛ばし、返り討ちにしてみせた。
「さ、斉木!」「流子ちゃん! 皐月ちゃん!」
一刀で軽々と吹き飛ばされてしまった三人を凝視して、親友である燃堂力や満艦飾マコが名を呼び上げる。
その一方で黒武士に吹き飛ばされた三人は悶絶していたが、その内の一人纏流子は朦朧としながらも立ち上がり、再び黒武士に片太刀バサミの切っ先を向けた。
「こ、このヤロッ……!」
最後の力を振り絞って黒武士に斬りかかろうとする流子。だが次の瞬間、流子と黒武士が合間見えた一瞬の出来事。
二人が合間見えた次の瞬間、黒武士は抜いていた長刀を鞘に納めると流子が手にしていた片太刀バサミが何と真っ二つに切断されてしまったのだ。
『!!』
生命戦維をも断ち切る事ができた片太刀バサミを意図も簡単に真っ二つにされてしまい、戦いを見守っていた者たちも流子本人も愕然とした。
「あ、アタイの、片太刀、バサミ……が……」
流子が呟いた次の瞬間、彼女の首筋から夥しい程の血が吹き出した。鬩ぎ合いの瞬間に、黒武士に首筋を斬り付けられていたのだ。
「流子ちゃん!!」
首筋から血を吹き出させ、倒れる流子を見てマコが泣きながら彼女に駆け寄った。
そしてマコに続いて、流子同様黒武士との戦闘に負けた者たち、そして戦いを見守っていた者たちが駆け寄って看護すると、看護していた満艦飾薔薇蔵が言った。
「……これもまた大丈夫だ。流子ちゃんの再生能力で、スグに傷口が消えていく」
薔薇蔵の言うとおり、流子の傷口は彼女の凄まじい再生能力でスグに消滅していった為に、出血もスグに治まった。
そして満身創痍になった戦前の者たちと同様に、心も身体もボロボロになった纏流子は愕然とした眼差しで断ち切られた片太刀バサミを見て絶句した。
「か、片太刀バサミが……」
今まで幾度の戦闘を乗り越えてきた片太刀バサミが、黒武士の一刀により切断された現状を流子は受け入れるしかなかった。
そんな満身創痍になった勇士達に、戦いを見守っていた者たちの目前に黒武士が歩み寄ってきた。
無言で歩み寄ってくる黒武士に只ならぬ威圧感を覚える一同。
すると次の瞬間だった。
「…………これが、お前達の実力か…………」
なんと黒武士が言葉を発したのだ。
[乱 開幕]
何とも口篭った様な、威圧感を感じさせる声色で言葉を発した黒武士に驚愕する一同。
すると、そんな一同と同じく黒武士が言葉を発した事に驚愕した帝が喜々とした表情で歩み寄ってきた。
「おお、おお……! 黒之朋よ! 遂に其之方、言之葉を取り戻す事ができたのだな!」
喜々として声をかけてくる帝に対して、黒武士はその虚ろな眼差しを向けるだけだった。
しかし帝は、黒武士が言葉を取り戻した事実にのみ舞い上がり、新世代型たちに声をかける。
「わはは! 同胞よ! 遂に黒武士が失っていた言之葉を取り戻せたぞ! これも、故に其之方たちの活躍あっての事! まっこと感謝するぞ!」
黒武士が言葉を取り戻せたのは、全ては黒武士と真剣勝負をした新世代型たちの功績だと述べる帝からの拝謁に、新世代型たちは目をパチパチさせて困惑する。
するとその時、言葉を取り戻した黒武士が帝に言った。
「……帝よ、もう茶番は終わりにせぬか? そろそろ大一番を仕掛けようではないか……」
「おお、もう其之方は全てに決着を付けたくて体がウズウズしているのだな! よし、分かった! 乱世の終わりか、はたまた始まりか……乱を始めようではないか!」
そう黒武士に言い返した帝は、手にしている
そして曇天の隙間から差し込む光の下、その下には軍備を完備させた聖龍隊とスター・コマンドーの軍勢が両者を睨み合う様に大地を覆っていた。
「じゅ、順一さん!」
「遂に始まるのか……聖龍隊とスター・コマンドー、信念と信念を賭けた大一番が!」
互いに両者を思いやる様に大地に立ち尽くすバーンズと村田順一の姿を見て、新世代型の琴浦春香と星原ヒカルが声を上げる。
大地を覆う兵、兵、兵の大群。それらの大群を従えて今まさにぶつかり合おうとする聖龍隊とスター・コマンドーの軍勢を見て、圧巻を覚える二次元人たち。
そんな大地を覆う兵士達を引き連れる聖龍隊とスター・コマンドーの軍勢は以下の通りであった。
聖龍隊側
モンゴル軍/中国大軍
対するスター・コマンドー側は。
中国デイ軍/中国イン軍/日本皇軍
聖龍隊は本軍に数々の部隊やSRMを従えた上でモンゴルや中国の協力を得て、大所帯で攻める一方。スター・コマンドーは中国の地方軍であるデイ軍やイン軍そして日本皇軍という僅かな戦力で聖龍隊と挑まなければならず、戦力の差は大きかった。
「な、なんて数だ……!」
二次元人たちは、その大地を覆う程の兵士の数に圧倒されてしまう。
そんな大地を覆う兵士達を見て、帝は兵達から感じられる熱き闘志に頗る感情を解き放った。
「おお、世界に熱きこだまが響いている……! 朋輩よ……始まりの世にて、その心を燃やせ!」
帝は大地を覆う程の兵士達に、闘志を燃やせと説き掛ける。
そんな帝に、新世代型の星原ヒカルが険しい面持ちで訊ねる。
「これでは……両軍勢に多大な被害が被りますよ! それも解っているんですか!?」
「うむ、確かに……これほどまでの兵の数に、そして熱気がぶつかれば、両軍とも多大な被害が被るであろう……だが、それも戦の醍醐味よ。死んでいった者たちの骸を踏み越え、戦前へと躍り出る脈動感。そして死地へと赴く覚悟の成せる技の数々……予は、胸が高鳴っておる!」
「ッ……最後まで、戦を道楽としか見てねえのか……!」
帝の言動に、真鍋義久は怒りと同時に呆れ果てた。
だが、そんな道楽者とも云わざる帝の言動に二次元人たちが様々な感情を滾らせる一方、帝自身も今目の前に広がる現状に昂っていた。
「うむ……世界中の熱き闘志が伝わってくる……天を見よ! 予によってかき乱された、あの雲を……!」
二次元人たちと黒武士が帝の言葉で徐に空を見上げてみると、帝の言うとおり曇天はかき乱されたように荒れ狂っていた。
この曇天が広がる大地にて、今まさに空前絶後の大戦が始まろうとしているのだ。
そして帝は、今まさに目の前の戦場で勃発するであろう大戦を前に、いざ戦い合う兵士たちに向かって言葉を投げかけた。
「さあ、民草よ! 灰も残さぬ程に炎え! それでこそ、この世に生まれ落ちた意味があろう!」
灰も残らぬほどの熱き闘志を胸に、戦い尽くせ。そう兵たちに説き掛ける帝の言葉に、帝の軍勢の兵士たちは無言で聞き入れていた。
その中で、帝に代わって直接兵士たちに指示を与えていく黒武士も、黙然と腰を下ろすばかり。
だが帝の兵は、黙然と鎮座する黒武士の意思が伝わっているのか、進軍してくる聖龍隊とスター・コマンドーの両軍に抗戦する体制を構える。
二次元人たちは思った。この荒ぶ現状を、自分達では解決できないか。止める事ができないのかと。己の無力さを痛感するばかりだった。
一方で、スター・コマンドー側の大軍勢と帝側の軍勢の両勢力を相手に戦う聖龍隊側の軍勢では。
中国軍総大将 徳竹康が武蔵丸を傍らに何か企んでいた。
「武蔵よ、これも戦の成せる業だ。ワシら中国軍が、新たな次代を創世するためにはこの作戦が一番なのじゃ」
「!!!!」
「うむ、解っている! 後世で卑怯者と蔑められようとも、ワシは今の中国を……そしてゆくゆくはアジア全土の為に行動に移すと! 武蔵、お互い、いやワシ以上に頑張らせて済まないが、よろしく頼む」
「!!!!」
果たして徳竹康が、いや中国本隊の大軍が狙っている事とは何か。
それはこの時、聖龍HEADの知らぬ所であった。
[新武将紹介]
時乃宮彦麻呂
属性:氷
武器:時乃宮栄光槍
防具:盾
肩書:
登場時の書き文字:登場
一人称:わし
日本天皇家が親族、時乃宮家が当主。腰痛持ち。
自己中心的な言動や行動から、周りから呆れられるほどで、俗説に言う「暗君」の年寄りであるが、日本や民を思いやる気持ちは強く、周囲からは愛されている。
二年前の亜細亜大戦以降は、他人を気遣う言動や行動が増えているとの事。
高齢から水虫やぎっくり腰などの持病が多い。
徳 竹康
属性:雷
武器:槍
防具:草摺
肩書:
登場時の書き文字:登場
一人称:ワシ
中国国将軍にして、中国本部軍総大将。多くの兵士達から慕われている人望者。
武蔵丸に依存している己の未熟さを承知しながらも争いの無い平和な世を目指す少年大名。
武蔵丸とはきっても切れない関係にあり、それはまさに草間大作少年とジャイアントロボのようである。
武蔵丸の圧倒的な戦闘力に目を付けた武将達によって何度も誘拐されるハメになっていた。
二年前の亜細亜大戦では、戦前で活躍する村田順一の姿を見て、いつか彼の様な武将になりたいと対抗意識を見るようになる。
中国泰平後は、中国将軍にまで登り詰め、多くの人民と兵士を束ねて中国を軍事的に治めている。
武蔵丸
属性:雷
武器:機巧槍
防具:鋼具足
肩書:
登場時の書き文字:起動
一人称:不明
幼少期の頃から竹康に仕えていた日系中国人。
まだ竹康が幼い頃、事故に遭いそうになった所を身を挺して守ったために全身に重傷を負った武蔵丸は全身を改造。今の様な屈強なロボの様な姿へと変貌する。
二年前の亜細亜大戦でも、人民に自由をという思想を抱く竹康の夢を叶える為に自ら戦地に出撃。戦界最強の名を欲しいままにする。
その後、中国平定後も国将軍に納まった竹康の側近として働き、今日に至る。
人体改造されて、今の様な姿になった反動か、言葉を話す事ができず「!」や「?」を組み合わせて意思疎通する事が可能。