聖龍伝説 現政奉還記 創生の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 遂に始まってしまった聖龍隊とスター・コマンドーの大一番ともいえる大決戦。大軍を率いて順一達に挑む聖龍HEADに対して、スター・コマンドー軍は少数の精鋭で挑もうとする中、全ての乱世の発端である現政奉還を引き起こした足正義輝と同じ新世代型の面々は一様に困惑していた。そして足正義輝と共に戦の流れを見守る一方で、足正軍についた名立たる武将達が仕掛ける足正義輝からの試練を突破しながら、聖龍隊とスター・コマンドー軍は進軍する。そして迎えた聖龍HEADとスター・コマンドーとの決戦。力の差は五分と五分、しかし戦局は大軍勢を率いていた聖龍隊に軍配が上がろうかと思われたその直前、なんと突然聖龍隊の多くの隊士や、同盟相手である中国軍がスター・コマンドー側に寝返り、戦況が五分五分にされてしまった。この謀略に聖龍HEADは驚く中、村田順一達スター・コマンドーは決意に塗り固められた強面で再び聖龍HEADと対決する。はたして、この戦いの先に終止符は打たれるのであろうか……



現政奉還記 創生の章 怒涛の展開、全てを監視する者Sパル現る

[混戦する戦乱]

 

 スター・コマンドーの軍勢を追い詰めていた聖龍隊軍勢。

 しかし突如として進攻していた聖龍隊の半数以上の軍勢が、聖龍隊の軍旗を下して代わりにスター・コマンドーの軍旗を掲げて、味方であった筈の聖龍隊を攻撃し始めた。

 これは村田順一が前もって、密通などの方法でスター・コマンドー側の軍勢が苦境に追い詰められた際には此方側に寝返る様にと嘆願していたからである。

 この順一の秘策に戦況は五分と五分まで戻されてしまった聖龍隊は、味方であった隊士と戦わざるを得なかった。

「ッ……ジュンの奴、まさか此処までの戦略を練っていたとは……!」

 聖龍隊総長バーンズことヒーロー名メタルバードは、村田順一が用意していた秘策に苦汁を舐める思いだった。

 

 突如として敵方であるスター・コマンドー側に寝返った元味方の隊士達に対して、聖龍隊に属したままの隊士達は非常に困惑していた。

 しかしスター・コマンドー側の兵士に寝返った元隊士達は、順一たちスター・コマンドーの武将達の名を叫んで進撃する。

「今の腐敗した政権にとって代わるのは、ルイズ殿や才人殿たちの様な人材なのだ!」

「勇気溢れる大さんやハンターさん達と、新時代を築くんだ!」

「ユウ殿やニナミ殿と共に、次代を駆け抜けるのだ!」

「俺らには薫ちゃんに赤ずきん、ブロッサムがついている! 負ける気がしねえ!」

 スター・コマンドーの名武将の名を叫び、新時代を夢見る元隊士達の進撃に現役隊士たちは果敢に抵抗する。

「まさか……お主らが順一殿に寝返るとは……!」

「一緒に聖龍隊で頑張ろうって、決めたじゃないか!」

「今までの友は実は敵……何とも悲しき事じゃ」

 聖龍隊士は悲痛な想いでスター・コマンドー軍兵士に変わった元仲間と戦闘を開始。

 

 一方、一般の聖龍隊士に限らず戦闘に参戦してた名立たる二次元人も互いに戦いをしていた。

「くっ、まさか白哉。お前と、また刃を向け合うとはな……」

「ふふ、私も些か順一殿の思想に興味が湧いてね。……いいえ、少し違いますね」

「?!」

「……また貴方と。黒崎一護とこうして刃を向かい合いたかったのが本音かもしれない」

「チッ、言ってくれるじゃねえか……ッ!」

 黒崎一護はかつて死闘を展開した朽木白哉と宿命的な闘いに乗り出した。

 

「プリキュアたち、オレは順一の思想につく! どんな生命だろうと、弱き者を尊ぶ村田順一の思想にオレは未来を賭けてみたい!」

「その為に、私たちと戦おうって言うの!? ……デビルマン!」

「そうだ。それが、この戦争でのオレ達の大罪であり運命なのかもしれない……行くぞ、プリキュア!」

 悪魔の力を持つデビルマンが、順一の思想に未来を賭けてプリキュアたちと戦闘に突入する。

 

 同じ刻、聖龍隊の後方支援として待機していた聖龍ロボットメンバーズ、通称SRM内部でも亀裂が生じていた。

「ッ……! まさかSRM内部にまで、ジュンの思想に感化された仲間がいたとは! お前達も、その勢力か! ……J9!」

「フッ、私たちが元々は金で動く雇われ遊撃隊である事を忘れたか、アスラン……私達は前もってジュンたちスター・コマンドーから前金を貰っていたのだ。悪いが此処は雇い主でもあるスター・コマンドーのために戦う」

 自分達が所属しているSRM内部にも村田順一の思想に感化された仲間がいた事に衝撃を隠しきれないアスラン・ザラに対して、報酬で動く部隊であるJ9こと【銀河旋風ブライガー】のリーダーであるアイザック・ゴドノフはアスランたちガンダムに搭乗した面子と応戦を始めた。

「みんな、もうやめてよ! ……仲間同士で傷付けあうなんて、間違っているわ……!」

 HEADとスター・コマンドーの思想の食い違いから勃発してしまった仲間討ちの現状に、【ガンバスター】のタカヤ・ノリコは切なくなる胸の内を抑え込んで仲間達に呼びかける。

 

「ど、どうしよう……味方が……仲間同士が戦ってる……」

「ボォーッとしてんじゃないわよバカシンジ! こうなったら無理やりにでも戦いを止める以外、手はないでしょッ!」

 仲間であった味方同士が戦い始める現状を目の当たりにして酷く戸惑う碇シンジにアスカ・ラングレーが怒鳴り返した。

 

 と、聖龍隊が分裂してしまった現状の中で、通信機から聖龍HEADに話を掛ける者たちが。

「バーンズ……」

「総長、おれたち話さなきゃならない事が……」

「っ? どうしたんだ、ガッシュ、フロート……」

 メタルバードが返答したのは【金色のガッシュ】のガッシュ・ベルと聖龍隊ニュー・スターズの総部隊長フロートだった。二人は険しい声色でメタルバードに話をした。

「実は……」

「おれ達の方にも、ジュン達から密書を受け取っていて……スター・コマンドーが危機に陥った時に、此方側に寝返らないかと催促の書状を受け取っていたんだ……!」

「なにッ!? 本当か?」

 ガッシュとフロートからの伝言に目を丸くして驚くメタルバード。それに対してガッシュとフロートは申し訳なさそうに答えた。

「そうなのだ……ジュン殿は私たち魔物の軍勢にも密書を送ってきて、その時が来たら自分たちの軍勢に手を貸してほしいと嘆願してきたのだ……」

「おれんところも同じだ……でも、おれ達は仲間同士で傷つけ合うのはどうかと思って……結局、ジュン達には手を貸さなかった」

「いや、よく言ってくれた、二人とも……」

 メタルバードは正直に申し渡してくれたガッシュとフロートの両名に感謝しつつ、目前の順一達と激しくぶつかり合う。

 

 多くのキャラクター達が聖龍隊側とスター・コマンドー側について各々で激戦を展開している最中、メタルバードは通信で順一達に寝返った中国軍総大将の徳竹康に問うた。

「竹康、これがお前の目指す未来か?」

「おうよっ、これがワシが選んだ未来じゃ! ワシはバーンズ、お主らも超える……そして行く行くは順一殿も越えてみせる!」

「天晴れだな、竹康! それぐらいの度胸が無けりゃ、中国を束ねる長とは言えんよ」

 聖龍隊に向かって反旗を翻した竹康の判断と、彼が抱える目標を聞いてメタルバードは感極まった。

 未来を築く上で、どの相手の意向に便乗するか選択しなければならない時が必ず来る。竹康はその選択を乗り越えて、現実(いま)を戦い抜いている。その決意にメタルバードも他の聖龍HEADも感服した。

 

 完全に分裂した聖龍隊の中で、スター・コマンドー側に寝返った隊士たちの攻撃を受けて、ニュー・スターズは混戦してた。

「クッソ! 完全に分裂しちまいやがった……これじゃ混戦と言うよりも、カオスだな」

「この混乱もジュンは予測していたんでしょう……この混乱に乗じて、私たち聖龍隊を一気に倒す算段なのよ!」

 周囲の戦況がもはや混沌と化している現況に冷や汗を拭うフロートに、同じニュー・スターズのシャナが意見を述べる。

 フロートたち聖龍隊側の隊士たちはスター・コマンドーの軍勢に反撃を開始。様々な手法で反撃を行い、どうにか戦況を塗り替えようとする。

 すると此処で思わぬ事態が。

 反撃を行うフロートやアンリエッタたちニュー・スターズの総合部隊に元トリステイン王国の兵士だった軍勢が攻めてきた。

「かかれーーッ」

「アンリエッタ王女、申し訳ないが討ち取らせてもらいますぞ!」

 スター・コマンドーに寝返ったトリステイン王国の兵士たちは躊躇う事無く王女であるアンリエッタが所属するニュー・スターズに進攻する。

「そ、そんな……!」

「我々の兵士達までも……ジュンの人柄についたか!」

 元トリステイン王国の兵士たちの進撃に、アンリエッタやアニエスたちは元兵士たちの進撃に愕然とした。

「順一さん達を斬るなら、まず俺を斬れーー!」

「順一殿こそ、明日への希望なのだ!」

 進撃してくる元兵士たちは、村田順一達スター・コマンドーに進撃するニュー・スターズに奇襲する。

「迎え撃て! スター・コマンドーに寝返った以上、奴らは我らが敵だ!」

 アニエスは心を鬼にして順一達に寝返った兵士達に攻撃するよう、配下の軍勢に命を下す。

 

 寝返った者とそうでない者たちが、必死になって自分の信ずる主君と信念の下で激しく戦い合う光景を目にして、戦いを謁見している足正義輝は喜々と舞い上がった。

「わはは! 流星の朋輩たちもやるではないか! まさか、このような秘策を隠していたとは! いや、見事なり!」

 一方、順一たちの戦術を称賛する帝に反して共に戦いを見守っている新世代型二次元人たちはやるせない想いで胸がいっぱいだった。

「そんな……聖龍隊が、聖龍隊が完全に分裂しちゃった……」

「ウソだろ……! まさか、順一さんがこんな真似するだなんて……!」

 村田順一が仕掛けた戦法を目撃して、俄かには信じられない心境に至る琴浦春香や真鍋義久たち新世代型は一同に衝撃を受ける。

 

 

 

[反撃の一手]

 

 村田順一の仕掛けた戦術によって、完全に二つに分断されてしまった聖龍隊。

 分断された聖龍隊は各所で各々の理念に基づいて戦いを始めてしまった。

 するとスター・コマンドー側に寝返った二次元人によって、聖龍隊が足正軍から奪取した陣地が逆に奪い取られてスター・コマンドーの陣地が形成されてしまう始末が勃発。

「ッ! 陣地が奪われたか、これはマズイ……!」

 戦況に大きく左右する陣地の奪取を許してしまった戦況に、メタルバードは焦りの色を顔に浮かべる。しかし彼を初めとする聖龍HEADは依然として対峙する村田順一たちスター・コマンドーと激しい攻防を展開していたため、その地から動く事が侭ならなかった。

「さあ、どう動く? バーンズ……!」

「わたし達と戦うか、陣地を奪い返すか……どっちかしか無いわよ!」

 戦い合う明石薫と赤ずきんの問い掛けに、メタルバードは二人の態度に反感を覚えながら言い返す。

「前から言っているだろう……! バーンズさん、か、総長と呼べと!!」

 メタルバードは超能力で戦う薫と魔法で戦う赤ずきんに突風を吹き付けて威嚇。二人は突風で身動きを封じられた。

 そして二人の動きを止めたメタルバードは独断で苦肉の策を講じた。

「こうなればやむを得ない……禁じ手の戦法を取るか」

 そういうとメタルバードは、後方支援に回っているSRMに指令を伝えた。

「アレを使うぞ……! 射出用意!」

「発射準備完了! 今より戦場に撃ち込みます!」

 SRM所属の隊士は、その指令を率直に受け入れ、仕掛けの用意をする。それは一時的に呼吸が困難となり、行動を制限させるという毒素の霧を散布させる仕掛けを戦場に発射していくというものだった。

「バーンズさんッ!? そんなの使うなんて……ッ!」

「これが戦……お前達、しかと目を凝らして脳裏に刻んでおけ」

 聖龍隊が繰り出した仕掛けに新世代型たちは目を疑うが、メタルバードはテレパシーでこれぞ戦争の業なのだと説いては脳裏に刻むよう言い付ける。

「ば、バーンズ殿! これは使わぬと申されていたのでは……!」

「なに甘ったるいこと抜かしてんだ大将! ……この非情さこそ戦なんだって、いい加減学べ」

 メタルバードが使用を許可した毒素の濃霧に対して、実際には使用しないと聞かされていたモンゴル軍総大将シン・ユキジが異議を申し立てようとするが、それに側近である忍の猿飛佐助は情けを捨てた戦いこそ、戦なのだとユキジに説いた。

 そして毒塵針と呼ばれる仕掛けが射出され、戦場へと突き刺さる。すると毒塵針から紫色の毒素がばら撒かれ、ガスマスクを所持していない兵士の動きが封じられてしまう。

「ぐ、ぐぅ……力が、抜けまする……! 毒のもとを破壊せねば……軍は壊滅ですぞ……!」

 この聖龍隊苦肉の策に、村田順一たちスター・コマンドーはこう述べた。

「なるほど、総長……あなた方も苦肉の策を用意されていたのですね」

 順一達はメタルバード達も自分たちが用意した裏切りという名の謀略同様に、非情なる苦肉の策を準備していた実情に悔む。

 

 そして同じく聖龍隊が用意していた毒塵針の仕掛けを見た帝、足正義輝は次の様に述べた。

「ほほう、毒の濃霧で相手の動きを封じる、か……これもまた、戦が見せる醍醐味の一つと言えような。ハハッ」

 毒の濃霧を使用して兵力の動きを封じる作戦もまた戦が見せる醍醐味の一つだと言って、愉快に笑い飛ばす帝。そんな帝に反して傍らの新世代型たちは非情な戦略が繰り広げられる目前の戦場に心が痛んでいた。

「毒の霧までも持ち出すとは……バーンズさんも苦しい判断を下したものだ」

「ああ、だけど聖龍隊の半数と同盟軍であった中国軍を味方につけたスター・コマンドーを相手にするには、こうして戦力を削る必要があるのかもしれないな」

「そ、そんな! 確かに戦力は五分と五分でちょうど良くなったといえばなったけど……寝返りに毒ガスだなんて、少し卑劣すぎるよ!」

 新世代型の出雲ハルキと星原ヒカルの言い分に、瀬名アラタが反論。

 

 毒塵針の仕掛けを射出させたメタルバードは、次に通信で味方兵に告げた。

「聖龍隊! 毒塵針の許に急げ! 今頃ジュンたちの軍勢が必死に毒塵針の仕掛けを破壊しに向かっている筈だ! その破壊工作に勤しむスター・コマンドーの兵力を叩けッ」

「了解しやした! おれたちが向かいます!」

「私も行くわ! ジュンたちの軍勢に毒塵針を破壊されちゃ、戦況が引っくり返せないもの」

 メタルバードからの指示に、聖龍隊総部隊長のフロートとミラールが仲間達を引き連れて毒塵針破壊活動を阻害しに進軍した。

 そして毒塵針の仕掛けを護りに向かわせたメタルバードは、相変わらず対峙し続ける村田順一たちスター・コマンドーの総合部隊に言った。

「さあ、どうするつもりで? このままじゃ戦場に毒ガスが充満して、大切な兵力が消耗しちゃうよ?」

 多少下種な顔付きで物言うメタルバードの問い掛けに、順一は余裕感じさせる笑みを口元に浮かべて言い返した。

「大丈夫……僕を信じてくれた友が……絆はそう簡単に負けません!」

「自分の側についてくれた仲間を信じる、か……よく言った!」

 次の瞬間、メタルバードと村田順一は再びぶつかった。

 

 その頃、既に毒塵針の仕掛けを破壊しに進軍したスター・コマンドー勢の武将が辿り着いていた。

「Ha! なんでい、案外もろかったな」

 六爪の刀を操り、雷を纏う漢族の若き長デイ・マァスンが仕掛けの一つを破壊し終えていた。

 そんなデイ・マァスンの許にモンゴル軍が国将軍代行のシン・ユキジが駆けつけた。

「マァスン殿! ここに居られたか!」

「Ha、ユキジ! まさか聖龍隊が毒ガスなんてデンジャラスなweaponを使うとは驚きだぜ」

「むむ、某も些か不満でござる……あらゆる命を奪いつくす毒ガスまでもバーンズ殿が準備していたとは、申し訳ない気分でござる」

「なぁに、謝らなくたっていい。これが戦……情けを捨てきるのも、将の在るべき姿なんじゃねえのか?」

「き、貴殿は以前より……漢族を束ねる長として、その真情も背負っていたのでござるか!?」

「フッ、それは…………戦って学びな! モンゴルの若虎!」

 デイ・マァスンは戦の手段を完全に学び切っていない好敵手のユキジに解らせる為、敢えて彼に闘いを挑んだ。ユキジも二対の槍でマァスンが振るう六爪の竜の刀と交えた。

 すると、このマァスンとユキジの闘いの勃発を目の当たりにしたマァスンのお目付け役にて彼の右目であるタク・モンジュロが慌てて駆け寄ってきた。

「マァスン様、今参ります……!」

 モンジュロは主君であるデイ・マァスンの助太刀に入ろうとした。が、その時。

「ッ! ……」

 突然モンジュロの死角から大型の手裏剣が飛んできて、モンジュロは辛うじて避ける。

 モンジュロが目を向けてみると、そこには大型手裏剣を二つも器用に扱うモンゴル軍が忍、猿飛佐助の姿があった。

「チッ、猿飛……また俺の邪魔を……!」

「邪魔しようとしてるのはあんたでしょうが。……お互いの大将同士が決着をつけようとしているんだ。此処は部外者である俺様達が介入するなんて野暮な真似は止めときましょ」

「お前……自分の主君が命を賭けて決闘しようとしているのを、高みの見物か!?」

「う~~ん、そういう訳でもないんだな。悔しいけど、お宅の竜王って名乗っちゃってる漢族の長には学ぶべき処が沢山あるんでね。ウチの大将と闘わせて、少しでも将としての自覚とか身に付けてほしい訳」

「なるほど。お前はお前で主君の成長を見届ける腹か……それなら俺たちは俺たちで殺り合おうじゃねえか……!」

「そうなっちゃいますね、実際問題……ま、あんたともそろそろケリをつけようとは思っていたけどな」

 主君が近くで死闘を展開している最中、タク・モンジュロと猿飛佐助も死闘を開始した。

 

「ほぉれ武蔵丸! そこじゃ! 一気に叩き壊せ!」

「!!!!」

 その頃、スター・コマンドー側に寝返った中国軍総大将の徳竹康は、側近であるサイボーグ武蔵丸の肩に搭乗して毒塵針の仕掛けを次々に叩き壊していってた。

「はははっ、どうじゃ聖龍隊! お主らが仕掛けた毒塵針も、武蔵丸の前では爪楊枝並みに脆いぞ!」

 毒塵針を叩き壊し続け、武蔵丸の肩に搭乗する竹康は喜々と舞い上がる。

 すると其処に毒塵針の破壊を阻止するべく、フロートが率いるニュー・スターズが駆けつけてきた。

「おおっ、おめえさん達か! わしらが毒塵針を破壊していくのを止める気だな?」

「徳竹康……あなたもまた、ジュンに……才人さん達の思想に思いを寄せるのですか?」

 ニュー・スターズのアンリエッタが竹康に質問すると、竹康は笑顔で返答した。

「ハハッ、そうじゃぞアンリエッタ殿。わしらは既に腹を括った! 新しい時代を築けるのは、若き力……すなわち順一殿が適任じゃと! そしてわしは何れ、次なる時代で順一殿たちスター・コマンドーも超えてみせる! その為に今わしは決断を下したんじゃ!」

「オウオウ、言っちゃってくれちゃってるじゃないのボウズ。おれらも舐められたもんだな」

 竹康の返答を聞いて、フロートは悪態をつきながら返事する。

 と、ここでニュー・スターズのマカ=アルバーンが巨大鎌で武蔵丸に攻撃を仕掛けてきた。

「これ以上、好き勝手させやしないわ!」

 マカの巨大鎌が直撃する寸前、武蔵丸は素早く自分の肩に乗っている竹康を地面に優しく降ろすと、己が振るう巨大なドリル状の槍でマカの鎌を受け止め、弾き返してしまう。

「ッ!」

 巨大な螺旋状の槍で弾き飛ばされたマカが睨みを利かせる中、武蔵丸は仁王立ちで巨大な槍を頭上で片腕で回転させてから地面に突き立てる。

 するとマカに続けと同じ作品であるブラック☆スターやデス・ザ・キッドも武蔵丸に攻撃。だが装甲の厚い武蔵丸に、二人の斬撃に射撃は歯が立たなかった。

 更に高町なのはやフェイト達が魔力の武器で武蔵丸に砲撃。だが武蔵丸は左肩に常備されている六甲紋の盾で砲撃を防いで自身を防御。傷一つ付かなかった。

 追い詰められたニュー・スターズは金剛番長や卑怯番長、更にはシャナにアレン・ウォーカー達に一斉に襲撃させて、武蔵丸を袋叩きにする。しかし結果は変わらず、武蔵丸は無傷だった。

「あ、相変わらず硬すぎるよ、あの装甲……」

「私達の攻撃を、全て受け止め切っているわ。昔以上に強くなっているみたいね」

 アレン・ウォーカーとリナリー・リー達は【戦界最強】を欲しい侭にしている武蔵丸に如何なる攻撃や戦術が有効か黙考する。

 

 別所では。

 一人の老人が軍隊を引き連れて、そそくさと戦場の各所に仕掛けられた毒塵針の仕掛けを必死に壊していってた。

「ぜぇ、ぜぇ……ふぅ、年寄りにこんな重労働させるとは。順一殿も考えもんじゃの」

 そういって仕掛けを破壊していくのは、日本皇軍の総大将、時乃宮彦麻呂であった。

 彦麻呂は必死に時乃宮家栄光槍で毒塵針の仕掛けを壊していくが、そこにスター・ルーキーズの新人勢【SAO】【AW】【マギカ】の三組が皇軍の行動を制止しに来た。

「爺さん、悪いが此処で撤退するか、潔く白旗を揚げて降伏するか……選びな!」

「右に同じく! 無意味な争いは避けるが信条!」

 時乃宮彦麻呂に剣を向けて降伏を促すキリトの横には、同じく臨戦態勢に入って降伏を求めるシルバー・クロウが突っ立っていた。

 キリトとシルバー・クロウ、そして多くの聖龍隊新人勢に取り囲まれて、時乃宮彦麻呂は喝を飛ばした。

「な、何を申す! 日ノ本の民と芽吹く桜の木にワシは誓っておるんじゃ! 未だ震災の傷跡癒えぬ日ノ本に、再び桜の木を満開させようと……お守りくだされ、ご先祖様……ヒエッ」

 と、熱弁していた彦麻呂の足元に、日本皇軍からの砲撃が撃ち込まれて彦麻呂の熱弁は途切れてしまった。

「こぉら~~! 砲撃の合図はまだ出してないぞっ! お主ら、時乃宮家と日ノ本を復興させる気はあるのか!? ぎょええぃ……」

 突然の砲撃に熱弁を邪魔された彦麻呂が怒り心頭で怒鳴り叱ると、砲撃手が申し訳なさそうに述べた。

「すいません、砲台の調子が悪くて……」

「まっ、二年前の乱世で仕舞いっ放しじゃったからの」

 砲撃手の言葉を聞いて、彦麻呂も二年前より蔵の奥で仕舞いっ放しであった為に不具合が生じた事実を受け止めた。

 そんなこんなで、時乃宮彦麻呂は自力で目前に立ちはだかるスター・ルーキーズの新人達と対峙する。

「なんじゃ、こんな老いぼれ一人、聖龍隊の若造共だけで間に合うとでも思っておるのか?」

「いやいや、そんなつもりじゃないですよ、時乃宮様」

「私達は私達なりの礼儀で、貴方を迎え撃つ処断です」

 彦麻呂の暗君な言動にキリトとアスナが返事すると、彦麻呂は時乃宮栄光槍を振り回して威勢を良く見せ始めた。

「たとえこの身が朽ち果てようとも、日ノ本の桜は果てさせぬ! ぬっ、ぐぐぐ~~、よいしょッ!」

 彦麻呂は自分で地面に突き刺した時乃宮栄光槍を抜いて、及び腰になりながらも体勢を立て直して言った。

「御守り下され! 御先祖様~~、キィィ!」

 

老成剛毅(ろうせいごうき) 時乃宮彦麻呂 登場

 

 キリトやアスナ、そしてシルバー・クロウにブラック・ロータス、更に鹿目まどかや暁美ほむら達は時乃宮彦麻呂と対決する羽目に至ってしまった。

 

 

[総てを監視する者]

 

 スター・コマンドーの勢力に対抗しようと戦場の各所に毒の霧を発生させる毒塵針を射出させたメタルバード。

 これにより一部の兵士が動きを封じられてしまう結果に至ってしまった。

 急ぎスター・コマンドー側の武将達は毒塵針の破壊に着目するが、それを見越してメタルバードが味方兵であるフロートやミラールに命じて毒塵針を破壊しに向かうであろう武将達の撃破を命じる。

 まずは破壊に専念していたデイ・マァスンの処にシン・ユキジが到着して各々の宿命を感じつつも決闘に乗じた。

 その二人の間近では、側近であるタク・モンジュロと猿飛佐助が激しく闘い始める。

 ニュー・スターズは徳竹康とその側近である武蔵丸と。

 スター・ルーキーズの新人勢は日本皇軍総大将の時乃宮彦麻呂と朧気な戦いを開始。

 そして相変わらず聖龍HEADとスター・コマンドーは激しくぶつかり合っていた。

 

 そんな戦況を高台である宮跡では、足正義輝と新世代型二次元人が各々の武将の活躍を様々な心境で受け止めていた。

「うむ……! 最初は突然の味方からの寝返り攻撃に奇襲を受けた聖龍隊が騒然となり、戦況を五分五分にまで戻しておったが……今度は毒塵針にて戦場の支配権を独占しようと聖龍隊が仕掛けたか。うむ! 戦とは、何が起こるか分からぬから面白いぞ! ハハッ!」

 帝である足正義輝が嬉々と笑んでいる一方で、戦争をほぼ強引な形で観戦させられている新世代型二次元人は胸が痛む一方だった。

 多くの人命が失われていく戦場。そこには憎悪など無く、ただひたすらに自分が信じる主君と信念を掲げて戦い続ける多くの武士(もののふ)(つわもの)の姿だけがあった。

 各自、己の理念の元で参戦し、時には寝返ってかつて刃を交わした好敵手と死闘を展開する場面が目立っていた。

 己の理念で戦い続ける兵士や隊士、そして何よりも戦士達の姿を目の当たりにして新世代型達は言葉を発するのを忘れるぐらい呆然としてしまってた。

 するとその時、帝たる足正義輝の口から思わぬ言葉が出てきた。

「ふむふむ、これぐらい熱気が盛んな戦が展開すれば……Sパルもまた一際その眼に人間の実情を焼き尽くせよう」

「?! Sパル?」

 足正義輝が発した「Sパル」なる単語に新世代型たちが反応すると、足正義輝は問答を返した。

「うむ? 其之方達はSパルを知らなかったのか……吾らと同じく、新たなる時代を築くために創造された新世代型二次元人その一人ぞ」

「わ、私たち以外にも新世代型は存在していたのか!?」

 義輝の語った事実に、新世代型の猿田学は驚愕した。そんな驚愕する新世代型たちに義輝公は凛然たる面差しを向けて説いた。

「皆の者! 戦の熱気に促されたが余り、うっかり忘れておった。実は例のルミネ一派の反乱が鎮められた直後、三次元政府は前々から計画していた新世代型二次元人の生誕に着目した。それがSパルなる新世代型二次元人よ。Sパルは吾らと違い、完全に小田原修司のクローンとして生み出され、政権を離脱した小田原修司の代わりにこの世の総てを監視する務めを与えられた二次元人……吾らが住む世界や次元とは一線を引く、異空間で淡々と己が与えられた役職に従事している者よ! 誰が呼んだか、総てを監視するもの……監視社会の象徴とまで陰口を叩かれてしまっている」

「監視社会の象徴……Sパル……」

 足正義輝から総ての世界や次元を監視するSパルなる自分たちと同じ新世代型二次元人の存在を知り、瀬名アラタや他の新世代型たちは愕然とした。

「そ、それじゃ……今でも、そのSパルって奴は俺たちの事を監視している訳?」

「その通りだ、燃堂力よ! 基本的にSパルは世界の各所に仕掛けられた監視カメラを通して、総ての世界を監視している訳だが……予と同じ千里眼を持つSパルは、今この場で新時代の到来を待つ吾ら同族の新世代型二次元人を監視する形で見守っている事だろう」

 新世代型たちにSパルが常に今生の世を監視している現状を述べた足正義輝は、突然天に向かって言葉を投げた。

「Sパルよ! 国連総長足正義輝が願い出る! その姿を吾らが同族の前に晒してはくれないか!」

 足正義輝が天に向かって声を上げると、天空より青い光の柱が差し込んできて、その光の柱の中から一人の青年が姿を現した。

「!! ……ッ」「う、ウソだろ……! あの姿……」

 天空から差し伸べられる光の柱の中から姿を現した青年を見て、真鍋義久ら新世代型二次元人たちは絶句した。

 光の柱の中から姿を現した青年。それは逞しい体躯に全身を信者の様な蒼いローブに身を包んだ、あの小田原修司と完全に瓜二つの容姿だったのだ。小田原修司と違う点と言えば、Sパルは黒髪の小田原修司に反して金髪碧眼という容姿であった。

 完全にその姿が、金髪碧眼の小田原修司と酷似している監視者Sパルの登場に、異様な空気を感じ取る新世代型たち。

 すると光の柱の中から現れたSパルは床に着地すると、徐に瞳を開いて近場にいる新世代型たちにその顔を向けた。

 金色の髪に碧い瞳をしているSパルに見詰められ、ざわめきだす新世代型たち。と、皆が動揺しざわめいていると、Sパルの方から彼らに話しかけてきた。

「……なるほど、彼らが私たち同様にルミネの一派に代わって生み出された新世代型なのか」

 Sパルの発声に一驚する新世代型たちとは打って変わり、帝である足正義輝はSパルに話し返した。

「その通りぞ、Sパルよ! この者たちが、吾らと同じく新たなる時代を築く同胞の新世代型ぞ!」

「そうか、足正義輝よ……彼らもまた、混沌の世を変える為に生み出された哀れな同胞……」

 凛然と語る足正義輝に対して、Sパルは何処か虚無な瞳で新世代型たちを見詰め続ける。

 

 そんなSパルの登場を、彼が出現した光の柱を目撃して聖龍隊やスター・コマンドーも気が付いた。

「Sパル! まさか、奴も帝が仕掛けた乱世に一枚かんでいやがるのか!?」

「Sパル……! 彼もまた、変わりゆく混沌の世の狭間で僕らを監視しているのだろうか……?」

 共に凌ぎを削り合い激しくぶつかり合うメタルバードも村田順一も死力を尽くして闘い合いながらSパルの登場に気が付く。

 以前、聖龍隊は政府の陰謀によって記憶を喪失してしまっている状態のSパルと接触した事があるのだ。その後、Sパルは無事に三次元政府によってその身柄を確立させたのだが、その直後に世情とは隔離された異空間での「総監視者」の役職に就いてしまったのだ。

 そのSパルが何ゆえ、乱世に引き戻された世情と関与しながら、乱世を引き戻した足正義輝と面と向かって対話しているのだろうか。

 

 Sパルの実情を、帝が自ら放流させている真意を共有感知で受け止めた新世代型たちが理解すると、Sパルの悲しい実情に感化される新世代型たちも当然の如く現れた。

 世情とは隔離され、一人孤独な異空間で全ての世界や次元を監視し続けるSパルの実情に胸が締め付けられた。

 すると、そんなSパルの実情を共有感知で知って、同情した新世代型がSパルに話しかけた。

「なんだか貴方、かわいそうだね……ずっと一人で監視し続けている一生だなんて……」

 満艦飾マコの同情に対して、Sパルは表情を微塵も変えずに返答した。

「私は自分を可愛そうだなんて思ってはいない。人々は常に安らぎを求めている……故に、誰かが混乱を招く可能性のある危険な存在を監視し続ける必要があるのだ」

 と、このSパルの意見に真鍋義久たち一部の新世代型たちが異議を申し出した。

「おい、混乱を招く危険な存在って……あんたは世間の人間すべてをそんな風に見ているのかよ!」

「仕方のない事だ。人間とは問題を起こす生き物……その人間たちを総て監視して、危険かつ異常な行動をとった者を適正させるのも私の仕事だ」

 この人間総てを危険視している様なSパルの思考に、新世代型たちは多少ながら立腹した。

「異常な行動をとった人間……まさかSパルよ! わしの義理の息子である功がある日突然、特殊警察に連行されていったのも……!」

「そうだ、琴浦善三……あなた達の周りで異常者(ヒール)としての行動をとった人間は、私の特権により警察機構などの組織に連行されたのだ」

「! そ、それじゃ……法月仁やマシタにベイカー、ナイン・バルトが連行されたのも……」

「そう、室戸大智……皆、私が異常者(ヒール)だと独断した上で、通報した異常者(ヒール)だ。これも、全ては私の役目……総監視者として世間の安寧を壊しかねない存在を通達するのが私の責務なのだ」

「あんたの……あんたのその責務で、琴浦の親父さん達がどんな酷い目に遭ったのか知っているのか!?」

「……いいや、残念ながら知らぬな、真鍋義久よ。私はただ、自分の責務を……自分が負っている役目に対して忠実に従っているまでの事」

「!!」

 ただ冷淡に己の責務・役職として役目を果たしているだけだと述べるSパルの言動に、真鍋義久たちはSパルに対してあまり感情を感じる事ができなかった。

 するとSパルは次の様に人間を評価した。

「人とは安らぎを求める生き物……故に、人は自由より安全を求めるようになった。互いに警戒し合い、疑い合い、そして監視し合うまでに社会は落胆した。私は、そんな社会を同族不信にまで至ってしまった人間に代わって、総てを平等な立ち位置から監視する役目を担った」

 安らぎを求めるが余り、自由な日常よりも監視社会をとるようになった世情。互いに疑い合う社会にまで発展した現実は、同族である人間に監視させるよりも、より高等な立ち位置から総てを監視するSパルを生み出したのだと言うのだ。

 すると此処で一つの疑問が生じる。何故Sパルは自らの地位を含めて多くの政権を無力化させた「現政奉還」を起こした足正義輝には何のお咎めも出さないでいるのか。

 この疑問に新世代型二次元人に代わって、プロト世代のチョコがSパルに問い掛けた。

「あ、あの……Sパルさん」

「何かね? 黒鳥千代子……」

「な、なんで……あなたは……異常な言動をとる二次元人や三次元人を異常者(ヒール)として通報する役目を担っている貴方は足正義輝の事を通報しなかったのですか!?」

「………………………………」

「今まさに起こっている戦争は、現政奉還が全ての起源なんです! その現政奉還を起こした将軍様を、Sパルさんはなんで通報しなかったんですか!」

 強い眼差しでSパルに訴えかけるチョコに対してSパルはしばし無言を貫いた。

 そして徐にSパルは口を開いてチョコたちの疑問に対して答え出した。

「……それは……足正義輝の起こした現政奉還は、決して全てが間違いだとは言い切れないからだ」

「え!?」

 Sパルの発言にチョコはもちろん他の二次元人たちも愕然とした。そんな中、Sパルは語り続けた。

「足正義輝の言う通り、今の世情の人々には未来を本気で創造しようとする強い熱気は感じられなかった。……あの日、相も変わらず変わり映えのしない世情を監視し続ける私の許に足正義輝が声をかけてきた。「今の世の民草に、未来を創造する熱気は感じられぬ。人々に眠る熱気を呼び起こさなければ」と義輝公は私に言ってくれた。義輝公の意見に賛同した私は、総てを監視する者としてだけではなく、同じ小田原修司のクローンとして生み出された新世代型二次元人として……同じ忌まわしき鬼神の血を引く血族として、義輝公の現政奉還を最後まで見届けようと、初めて胸の内が熱くなるような決意を示した。監視者として、鬼神の申し子として……私は、全てを見届けようと決心したんだ」

「全てを見届ける覚悟……それが、貴方が下した選択肢か」

「その通りだよ、海道ジン……何より、私が監視し続ける世界が少しでも新しく生まれ変わると言うのなら……この混沌の世界にも未来は切り開けると私は確信している」

 Sパルは二次元人たちに語り終えると、彼らも見守る戦場に目を向けて再び語り出す。

「見てご覧、確かに一枚岩だった聖龍隊が真っ二つになって、戦況は混戦の一途を辿っている。けれど誰もが己の手で未来を創ろうとする強い意志に溢れ返っている。私が監視し続けていた平和な日常では到底、感じられない人間の熱気がこの戦場からは感じられる。誰もが己を打ち明けてぶつかり合う強い生き様が溢れ返っている……!」

「誰もが胸の内を開いて、本気でぶつかり合える世界……それもまた、人々の強い意志が織り成す次代の息吹よ!」

 Sパルの語り手を聞いて、足正義輝も強い意志が織り成す未来の姿を夢見ていた。

 

 総監視者Sパルと、そんなSパルまでも言い包めてしまった足正義輝らと共に、黒武士と新世代型二次元人達が戦況を見届けていたその頃、聖龍HEADとスター・コマンドーの凌ぎ合いは高みを極めていた。

 

 

 

[極まる決戦]

 

「はぁ、はぁ……」「ゼェ、ゼェ……」

 決戦を極めていたメタルバード率いるHEAD、そして村田順一率いるスター・コマンドー。両勢力は互いに消耗し合っていた。

 互いに傷つけ合い、戦力を消耗し合った満身創痍のHEADやスター・コマンドーを見て、同じく満身創痍に成り果てたミラーガールは胸を締め付けられた。かつては同じ思想の元、平和の為に共闘し合っていた仲間だった人々と傷つけ合い、ミラーガールは自然と瞳を潤わせる。

 そして仲間のセーラー戦士やマーメイドメロディーズを横目に、メタルバードは目前で満身創痍になった村田順一たちに訊いた。

「ジュンよ、今一度訊こう……修司の教えでは、民の全てを笑ませられないと悟っているんだな」

「はい、そう確信しています」

 聖龍隊創設者にして自分達の良き理解者、小田原修司が残した異常者(ヒール)排除法に対して意見の食い違いが生じた為に、今こうして争い合っている現状にメタルバードが指摘する。

「……修司の教えが全て正しいものだとはオレ達も認知していない。だが、全ての民が救えるという荒唐無稽な夢物語も認められやしない……! だが、敢えて聞こう。オレ達と共に在るならば、それも叶えられるとは思わなかったのか?」

「ッ……そ、それは……!」

 如何に夢物語でも、共に歩めたのならそれが叶えられたのではないかというメタルバードからの指摘を受けて、順一は激しく動揺した。

 そんな動揺し出す順一を視認して、メタルバードは重い口を開く。

「……そうか、そうだよな。一を切り捨てなければ十を守れず、少数派よりも多数派に賛同しなければ世間を渡っていけぬように、オレ達の道行は醜くいモノへと成り果ててしまった……」

「………………」

「だが! その様な劣化した魂ではオレ達に勝てない!」

 静観し合うメタルバードと順一であったが、メタルバードはそんな重たい空気を切り裂くように言い放った。

「前へと、未来へと進みたいか順一! それならオレ達を倒していけ! 修司の教えを……この世の偽りに満ちた平和を保ち続けるオレ達を超えて見せろッ!」

 かつて修司と共に順一たちスター・コマンドーのメンバーを指導していったメタルバードたち聖龍HEADは、師である自分達を超えてから偽りに満ちた世界に代わる新時代を創造せよと順一たちスター・コマンドーに言い放った。

 そして双方ともに消耗し合ったHEADとスター・コマンドーは、かつて聖龍隊内で指導していた頃を思い返しながら再び戦いに興じる。

 かつてセーラーマーキュリーから水の必殺技を伝授してもらったロンリー・バブルス。ジュピターキッドから植物を使った戦術を学び得たいばら姫。

 双方ともに昔を思い返しながら、再び苦渋の決戦に投じる。

 お互いの意地と意地、信念と信念をぶつけ合いながら激しく衝突する。

「順一ィーーッ!」「バーンズさん!」

 と、此処でメタルバードと村田順一は好敵手であり師である小田原修司から直伝された頭突きで激しく取っ組み合い、そのまま硬直。

「あの日に……かつてのオレ達には戻れないのか!? 順一!」

「もう過去は顧みない……僕たちの歩みは止まらない!」

 また同じ聖龍隊として生きて行けないのかと説くメタルバードに対して、村田順一は過去に顧みない信念でメタルバードと激突する。

 聖龍HEADとスター・コマンドーはもはや自分達が使える特殊能力や術を使わず、肉弾戦で激しくぶつかり始めた。

「お前達なら、もっと違う形で未来を創ってくれると信じてた!」

「そのつもりでしたが……やはり、お互いの心が届かなかったほど遠くなっていたのでしょう」

 離別という形以外で未来を創造してくれると信じてたメタルバードに反して、順一はその未来が築けなくなったほどお互いの心が遠ざかったのだと辛い真情を述べる。

 順一の拳を鋼の肉体で受け止めながら、メタルバードは反撃しながら順一に説いた。

「オレ達とお前らの勢力が今まで通りであれば……どんな困難をも乗り越えられただろう……!」

「ええ、僕もそう思います……! だが戦いを力でねじ伏せるだけでは、誰も笑えはしないんですッ!」

「今のお前も……そう、お前達も! 戦略で一枚岩だった仲間同士を争わせてまで、未来を押し開くのか!」

「やむを得ない判断でした……ですが、聖龍隊内にもいたんです! 僕らの様に、現政権のやり方に疑問を持つ同志たる存在が!」

「その存在を……隊士たちを先導して反逆を行わせたのは順一! 貴様の罪だぞ!」

「はい! 僕は、いや僕たちスター・コマンドーは……喜んでその罪を、業を背負って生きていきましょう! わが師、小田原修司が全ての罪を背負って生きていた様に……!」

 と、メタルバードと順一が問答を繰り返している処に、他のHEAD同様にスター・コマンドーと烈戦を繰り広げているミラーガールが哀しい想いを吐き散らすかのように順一たちに叫んだ。

「それは違うわジュンくん! 修司はあなた達に罪を背負わせる為に戦っていた訳じゃなかった……次の世代で未来を切り拓く為の逸材として、人物として修司や私達はあなた達が進むべき道を先導してたのよ!」

「その次なる世代を明るく照らす為……僕達は聖龍隊最後の罪人として、この戦いに勝利します!」

 ミラーガールの訴えにも己の信念を曲げない順一の拳を、ミラーガールはミラー・シールドで受け止めるも、その凄まじい風圧と衝撃に受け止めきれず後方に吹き飛ばされてしまう。

「きゃっ」

 地面に背中から倒れるミラーガール。すると其処に順一が追撃とばかしに拳を振り下ろしてきた。

 ミラーガールは横へと身を転がして順一の打撃を回避するや、身を起こして再び立ち上がる。

 そして順一はもちろん、ユウやセレブナイトと激しい攻防を展開していたメタルバードは再び静かに対峙すると順一たちスター・コマンドーが目指している道のりを察して切なくも儚く申した。

「そうか、結局お前は選んだんだな……オレや修司、そして聖龍隊が歩んできた茨の道よりも、険しく遠い……果てなき未来(さき)を」

「はい、僕たちは選びました……! 貴方や修司さんの意志と同等の、護るべき無数の未来(さき)を!」

 順一たちスター・コマンドーが聖龍隊が辿ってきた道のりよりも険しい道を突き進む決心を固めていた事実を察するメタルバードに、順一は仲間達と同様の険しい顔付きで小田原修司や聖龍隊の意志と同様に護るべき無数の命を護る覚悟を示した。

 かつて弱き人々を、二次元人と三次元人が共存する為に創られた異常者(ヒール)排除法。しかしそれは同時に無数の人々の未来を、生を奪う法案。そんな法案に、冷たき掟に縛られない世を創生するべく、村田順一は聖龍HEADに死闘を挑んでいた。

 そして聖龍HEADもまた、自分達がかつて小田原修司と共に育てた弟子に当たるスター・コマンドーと決戦を挑む事で、一つの時代に新しい区切りを付けさせようとしていた。

 新しい世に、時代に老兵は必要ない。そう自覚していたメタルバードは、仲間であるHEADと共に動きを止めて順一たちと向き合う。

 順一たちスター・コマンドーが動きを止めたHEADに目を向けて、体勢を構えているとメタルバードが徐に語り始めた。

「……ふぅ、修司たち三次元人を受け入れ、共に共生の道へと突き進んだ結果がこれか。一握りの未来を誇示する為の思想、そして無数の命を保持する為の思想……その二つの思想が真真っ向から対立しちまった。この戦いを免れなかったオレ達の実力なんて、ちっぽけなもんだぜ。現に……三次元人との共生を歩んできたからこそ、永遠の命を持っていた二次元人の寿命も時と共に進行している。オレ達の身体にも、ここぞとばかしに老化が進んできやがってる……」

 三次元人との共生を歩んできたが故に、永遠の命を持つと言われていた二次元人の肉体にも老化の現象が現れ始めた事実にメタルバードは沁み染みと切情に浸った。

 そして他の聖龍HEADもまた、己の身体に老化が進んでいる現状を噛み締めながら、世代交代というべき目の前の戦いに終止符を打とうとスター・コマンドーに向かった。スター・コマンドーも目前に迫る聖龍HEADの意気込みを察してか、再度人の域を超えた戦いへと乗じる。

「順一ィーー!!」「バーンズさぁんッ!!」

 メタルバードの鋼の拳と順一の絆の力を蓄積させた拳が今、激しくぶつかり合う。

 

 と、メタルバードと村田順一。双方が互いに仲間を引き連れて戦局の極みに至ろうとしたその時。双方同時に通信機が受診した。

「此方、メタルバードッ!」「村田順一だ! 何かあったか!?」

 メタルバードと順一は互いに激しく闘い合いながら通話に出た。すると通話に出たのは、それぞれの隊士と兵士であった。

「そ、総長大変です……!」「順一殿、一大事……!」

「どうした? こっちは今取り込み中なんだが」「何があった?」

「そ、それが今まで……」「混線していて連絡できなかったんですが……」

「突如として戦場に……」「我々の目の前に……」

「「トンでもない連中が現れたんですよッッッッッッ!!」」

「「!?」」

 通信を送信した隊士と兵士の発言に、メタルバードと順一は激しく戸惑った。

 すると通信を発信していた隊士と兵士、その両方を同時に叩きのめして黙らせた問題の連中を束ねる輩が代わって通信に出た。

「オレ様たちが戦場にいたら迷惑だとでも? こんな仲間内での喧嘩、こっちが迷惑してるわッ!」

「そ、その声……!」「ガイア、お前か……!?」

 メタルバードと順一が驚かされた事に、戦場に乱入してきたのはガイア・スコーピオン率いるスコーピオン同盟の面子だった。

「ガイア、なぜ君達が僕たちの戦場に……?」

「それはだな、順一の坊主……こんなつまらない喧嘩をし合うよりも楽しい事があるって事を、オレ様たちが教えに来たって訳よ!」

「まためんどくさい奴が戦場にやって来たもんだ。やれやれ……」

「バーンズ! 聖龍隊同士で喧嘩している暇があるなら、おんぷちゃんにアクセサリーの一つぐらい買ってやんな」

「ガイア、君達が戦場に乱入してくるとは……やれやれ、なんだか毒気が抜けちゃったよ」

「戦なんて毒は、無い方がいいさ」

 呆れ果てるメタルバードと順一に、ガイア・スコーピオンは笑顔を振りまきながら応答する。

 そしてそのガイアを筆頭としたスコーピオン同盟は、勢力を維持したまま聖龍隊とスター・コマンドーの軍勢をかき分けて進撃していった。

「そこのけそこのけ、ガイア様のお通りだい!」

 ガイア・スコーピオン達は、戦場で戦い合う聖龍隊とスター・コマンドーの兵力を気絶させながら削っていった。

 

 聖龍HEADとスター・コマンドーが決死の想いで戦闘を展開していた頃。

 足正義輝の千里眼で戦場の戦況を隅々まで視認していた新世代型二次元人たちは改めてHEADと順一たちスター・コマンドーの決意に満ちた信念の戦いを目視して愕然としていた。

「……順一さん……皆さん……」

「みんな、誰もが自分の信じる未来を築き上げるため、信念を貫いて戦い通しているんだ……!」

 凄まじい戦闘を繰り返して互いに傷付け合う聖龍HEADとスター・コマンドーを悲観して嘆く琴浦春香に対して、同じ新世代型の瀬名アラタはHEADもスター・コマンドーもそして多くの隊士や兵士達も己が信じる道を突き進んでいる力強さに感服した。

「新しい世、新しい時代……それを創世する為に現実(いま)を戦い抜く存在。それが戦士というものなのかもしれない」

 懸命に戦い合う聖龍隊とスター・コマンドーの勇姿を見て、総監視者であるSパルは戦士の本質を説いた。

 と、その時。今まで無言を突き通していた黒武士が突然言葉を発した。

「ッ……帝よ、この混戦に乗じてか何者かが此方に向かってきている……一人だ」

「なぬっ、一人で吾らが拠点としているこの地に赴く者がやって来たか。それは楽しみだな朋よ、ハハッ」

 何者かが知れない輩が此方に向かってきていると黒武士から伝言された足正義輝は、その来訪する者の到着を心より待ち望んでいた。

 

 

 

[決闘]

 

 その者は得物を携えて単身、足正義輝や新世代型二次元人たちが屯っている拠点へと足を運ばせていた。

 その道中には大勢の足正勢の兵士が来訪者を出迎える様に整列していた。

「皆、朋を憎むな。称賛と、そして敬意を以って接するがいい」

「御意!」

 此処までの道中に大勢の足正軍兵士を討伐してきたその者に帝は称賛と敬意を以って接するよう配下の兵士や武将達に言伝する。

 そして、味方をつけず単身で突き進んできた者に足正義輝は、まずその者に詫びの一つを申し出た。

「朋よ、面白うない戦をした。主君として、臣共の不義を詫びる」

 此処までの道のりで、真価を発揮しなかった臣達の不義を詫び申す足正義輝。

 そんな彼の者を待ち受けるかのように列を成して整列する足正軍兵士に対しても帝は詫びを入れるように申し出た。

「開け放って待つも一興……と、思うたのだが。皆がならぬと煩く云うのでな」

 拠点への道のりを全面的に解放して出迎えようとしていたが、兵士などの臣下達が反論した為に思い通りにはならなかったと詫びる足正義輝。

 そしてその者は遂に、新世代型二次元人である足正義輝たちの許へと辿り着いた。

「一目あれば十分だ……あのお方は、それで全てを悟られる」

 相手を一目見るだけで、その人物像や背景を悟られる帝の眼力を述べる足正軍武将。

 そして新世代型の前に現れた、その人物に帝以外の新世代型二次元人達は大いに驚かされた。

 

「か…………カァチェン!?」

 それは台湾軍国将軍にして、劣将として苛まれている武人、聖龍隊に属してスター・コマンドーや帝の軍勢と戦い合っていたシバ・カァチェン本人だった。

「カァチェン、あなたが一人で此処まで……」

「はぁ……はぁ……」

 新世代型の薙切えりな達が驚いている中、カァチェンは息を切らして帝の前に参上した。

 カァチェンは息を整える間もなく、帝に逆刃薙(さかばなぎ)を突き向けると、それを阻むかのように黒武士が帝とカァチェンの間に割り込んでカァチェンと向き合った。

 黒武士と対峙するカァチェンの来訪に、帝たる足正義輝は嬉々として言い放った。

「予の朋輩をすべて討ち進んだは其之方だな……? 見事だ、朋よ! 其之方こそが、予の待ち望んだ伝令よ!」

「私如きが伝令とは……冗談が過ぎる帝であらせる」

 カァチェンを待ち望んだ伝令と称賛する帝に対し、カァチェンは過ぎたる冗談だと目付きを鋭くさせる。

 すると其処に、新世代型の琴浦春香が単身やって来たカァチェンに声をかけようとした。

「か、カァチェン……」

 琴浦春香が声をかけようとしたその矢先、カァチェンは実に刺々しい口調で目前の黒武士に申し出た。

「そこを退いてくだされ!」「!」「私は……私は、貴方に用は無いのです……!」

 カァチェンの第一声に驚き震える琴浦春香を気にせず、カァチェンは目前の黒武士を睨み付けながら申した。

 そんな今までとは一線を置いたカァチェンの登場に、多くの新世代型二次元人たちが戸惑う中、帝たる足正義輝はカァチェンに申し渡した。

「黒武士が其之方と一手仕合うてみたいそうだ。すまぬが相手をしてやってくれ、朋よ」

「私は貴方に用があるのです、帝よ……この混沌たる乱世を、現政奉還を引き起こした貴方に……!」

 鋭い眼光を黒武士から帝へと移したカァチェンの並々ならぬ様子に、新世代型たちは異様な空気を察した。

「な、なあ、なんだかカァチェンの様子おかしくないか?」

「そうだね。最初、会った時よりも何というか、勇ましく感じられるけど……」

 時縞ハルトやエルエルフ達は、最初カァチェンと出会った時よりも彼が勇ましく感じられる様子を悟った。

 そんな中、カァチェンが黒武士と闘う様に申し渡した帝に己の意思を言い伝える。

「全ては貴方がいけないのです……現政奉還という乱世が起こらなければ、私は……」

「………………………………」

 カァチェンの言動に新世代型たちが目を向ける中、カァチェンは次の様に強く唱えた。

「私は……過去に捨てた儚い夢を、再び追いたいと願う事はなかった……!」

「過去に捨てた、夢……?」

 カァチェンが発した言葉に新世代型の仁科カヅキが疑問視すると、カァチェンはその訳を語り始めた。

「かつての私は身内も無く、孤独な日々を過ごすばかりの幼少を過ごして来ました。そんな私は、やがて武人となり、そして儚くも夢を抱く様になりました……誰からも疎まれる私は、逆に誰からも恐れられる存在に……怪王に成りたかった……! この乱世で私は、聖龍隊と出会い、新世代型と出会い……過去に捨てた夢とは違う穏やかな現実(いま)を望む様になりました」

「カァチェン……」

「けれども! ……友として私に接してくれた新世代型が……そう、帝である貴方を含めた新世代型が鬼神小田原修司のクローンである事を知ってから、私の中の安寧が音を立てて崩れ落ちました。……かつてこの世を恐怖で制していた小田原修司は、私が憧れる畏怖なる存在! その小田原修司のクローンである新世代型の貴方が引き起こした現政奉還は、今の私からしてみれば、またとない好機にしか捉えられないのです! ……私は怪王に、誰からも恐れられる存在に成りたい……! この想い、生まれながらに鬼神の申し子として生を受けた貴方には理解できないでしょう……!」

 切実な実情を述べるカァチェンに新世代型たちは胸を締め付けられる。このカァチェンの問い掛けに、帝は真顔で返答した。

「うむ、済まぬが予には……いや、吾らには理解(わか)らぬ。其之方はつまり、恐れを欲しているというのだな? 吾らが始祖、小田原修司にも引けを取らぬ畏れを……」

「そうだ……この戦乱でHEADが、村田順一が私の中に犇いていた野心を滾らせたのだ……! かつての私が欲した夢を、野心を叶えるためにも帝! 貴方は私が討つ!」

「その為に、聖龍隊とスター・コマンドーの熱戦を余所に自分一人でこの場に乗り込んできたのか……ワハハハハッ! それよ! その願望の、欲望の熱気こそ予が欲していた人の意思よ!」

 カァチェンと対談して、帝はカァチェンの胸中で犇いていた「怪王」への感情こそ己が欲していた人の欲望にして熱気そのものだと嬉々とする。

「……それで、予を打ち倒して其之方は如何する? この世を恐怖で制したいか? それとも……」

「今はまだ解らぬ……だが、答えを求める為にも……私は貴方方を討つ! それで全てが終焉(おわる)はず!」

「成るほど、答えを見出す為にも刃を向ける、か……それもまた一興」

 己が求める答えを見出す為にも帝とその側近である黒武士に刃を向けるカァチェンの意思を聴いて、足正義輝は納得する。

 そして足正義輝はシバ・カァチェンの意思を汲み取って、彼の意向に賛同した。

「よし、許そう! ではまず最初に黒武士と仕合ってみないか、始之朋よ」

「始……私が?」

「そうよ! 其之方と同じく、この黒武士もまた以前は熱気を滾らせていた。予は、この黒武士がまだ黒武士に降る前に学び得た。誰かに力を、道を、そして機会を与える事で未来を切り拓かせる意志を与えられると……そう、予に全ての道楽を教えたのは黒武士に堕ちる前の武士(もののふ)だったのだ! 始之朋よ、其之方はかつての黒武士と同じく欲情のままに戦い抜いた一人の武将なのだ!」

「私が、かつての黒武士と同じ…………気に入らぬ」

 足正義輝から、かつての黒武士と同じだと説かれたカァチェンは、無心無情の黒武士と同列にされるのを快く思わなかった。

 そして黒武士が長刀に手を翳して臨戦態勢に入るや否や、足正義輝は手に持つ(しゃく)を回転させてカァチェンに申し開いた。

「若き息吹よ! 運命を……未来(あした)を創れ!」

 これに対し、カァチェンも逆刃薙(さかばなぎ)を片手で回転させながら目前の黒武士と帝に睨み付けた。

「私にそれが……できるというのか……!?」

 自分に運命を、未来を創世できる実力があるのか疑問に思いながらも、目の前の黒武士と対決を始めるカァチェン。

 

 始まってしまったカァチェンと黒武士の一戦を前にして、新世代型二次元人達は一様に戸惑ってしまう。

「私は自分を……現実(いま)の自分を乗り越えたい……! その為に、貴方にはこの逆刃薙(さかばなぎ)の錆になってもらおう……!」

「………………………………」

 闘志をむき出しにして闘うカァチェンに対して、黒武士は一切の言葉を捨てて右に左へとカァチェンの攻撃を受け流して戦況を制す。

「風よ靡け……私よ、冷静であれ……!」

 無数の風の刃を発生させて仕向けるが全て避けられてしまう現状に、カァチェンは自らを落ち着かせ、冷静さを保持していた。

 しかし此処で攻撃の一手に集中してたカァチェンの戦況に変化が。黒武士が回避から転じて攻撃に回ったのだ。黒武士の攻撃は、長刀を素早く居抜く抜刀術には不似合いな、重く威力の高い斬撃であった。カァチェンは、この重い一太刀を細い腕からなる腕力で受け流しつつも反撃の隙を伺っていた。

「か、カァチェンさん、其処まで無理しなくても……」

「あなた方は黙って其処で目視していてください……か弱き人の生を受け付けない、力強くも畏れ多い鬼神の申し子の前で、私は証明したい……!」

「か、カァチェン……!」

 新世代型の小野田坂道の問い掛けにカァチェンは冷たくあしらった。この今まで見せた事のないカァチェンの冷淡さに新世代型たちは衝撃を受ける。

 もはや眼前の黒武士の事で頭の中が一杯一杯であったカァチェンは、黒武士と刃を交えながら新世代型たちに今の本音をぶつけた。

「貴方方には所詮、理解できないでしょう……! 生まれながらに鬼神の血を受け継いで、その畏怖をも受け継いだ貴方方に……私の苦心など理解できないでしょう……!」

「………………!」

 生まれながらに鬼神の血筋を受け継いでいる新世代型には己が抱える苦心も理解できないだろうと冷たく語るカァチェンの言葉に、新世代型たちは衝撃を受けた。

「私は鬼神の様に、誰からも恐れられる存在に……多くの人から慕われる逸材へと成り上がりたかった! 弱虫で臆病者の欠かれカァチェンという殻から、解放されたかった……!!」

「カァチェン、お前……そんな風に俺達を見ていたのか……!」

 鬼神の様に畏れ多くも人望溢れる逸材に成りたかったと説くカァチェンの真意を聞いて、カァチェンも自分たち新世代型を小田原修司のクローンとしてしか見ていない実情を知り真鍋義久たち新世代型たちは悲観する。

 新世代型たちが愕然とカァチェンの真意を知って悲観する中、カァチェンは黙々と帝が見届ける中で黒武士と刃を交える。

 ただ強く、周りから蔑ろにされず畏れられたい、そんな自分に成り果てたいと願うカァチェンは黒武士と真っ向対決を仕合う。

 しかし黒武士の強さは凄まじく、カァチェンの斬撃を難なく受け流しつつ、彼の逆刃薙(さかばなぎ)を長刀で弾き返す。

「私は此処で……この場では終わらない……! 新世代型の様に畏れられる……彼らの様なバケモノに成り果ててでも叶えたい野心がある! 貴方を、そして帝を討ち取って、本当の怪王に成るんだ……!」

 畏怖を取り込み、誰からも畏れられる事で今までの無力な自分と差別化を図ろうとするカァチェンの真意とは空しく、逆刃薙(さかばなぎ)の斬撃を黒武士は軽々とかわす。

「何故だ……何故、思い通りに事が運ばない……! 私はただ、弱い自分を拭いたい……それだけだというのに……!」

「弱き己を捨て去るが為に、友と認めてくれた者の戦いから逸早く離脱し、この場に参上仕ったのか……始之朋よ」

 思い通りに黒武士に攻撃が当たらない苛立ちに次第に呑み込まれていくカァチェンに、闘いを謁見する足正義輝は聖龍隊とスター・コマンドーの決戦を誰よりも早く離脱して一人だけ進軍してきた顛末なのかと説き返す。

 聖龍隊とスター・コマンドーの決戦に参戦したにも関わらず、彼らの決戦の様子を拝見した事で己の胸中に潜む野心を滾らせて単身帝の拠点へと突入したカァチェン。そんな彼を待ち受けていたのは、黒き実力である変えられない現実(いま)であった。

 

 鬼神小田原修司の様に、畏怖なる存在に成りたくて。

 その小田原修司のクローンである新世代型の様に選ばれた存在に成り上りたくて。

 小田原修司のクローンである帝が引き起こした現政奉還で戦果を示したいが為に。

 その他の全てを蔑ろにしてまでも進撃したカァチェンは、越えられない絶対的強さを誇る黒武士と闘った事で絶望的な現実(いま)を悟った。

 

 

 

[進撃する国連軍]

 

 一時ばかし黒武士と決闘を仕合ったシバ・カァチェン。

 小田原修司のクローンである新世代型の様に畏れられたいが為に単身闘いを挑んだ彼を待ち受けていたのは、黒武士との絶望的な力の差だった。

「はぁ、はぁ……!」「………………」

 満身創痍で朽ちた床上に倒れ込むカァチェンに対し、傷一つ付かなかった黒武士は冷然と床上で這いつくばるカァチェンを黙視していた。

「つ、強すぎる……!」

 カァチェンは黒武士との間には埋め尽くせない程の実力が潜んでいる事にようやく気付き、黒武士に対して逆に恐怖を感じ入り始めてしまっていた。

「………………散れ」

 黒武士が言葉を発した次の瞬間、黒武士は黒い長刀を振り下ろしてカァチェンの頭蓋を斬り砕こうとした。

 誰もがカァチェンの最後かと多くが目をつぶってしまった瞬間だった。新世代型の一人、纏流子が床に転がっていた逆刃薙(さかばなぎ)を拾い上げ、慣れない薙刀を振り回して黒武士の一太刀からカァチェンを守った。

「り、流子殿……」「………………」

 突然の流子の助太刀に、カァチェンは唖然とし、黒武士は黙然と立ち尽くした。

 そしてカァチェンを寸前で助けた流子は、皆が注目している中で徐に姿勢をカァチェンの方に向けて彼に言葉をかける。

「カァチェン……」「ッ……は、はい……」

 流子に声をかけられて一瞬震えるカァチェン。すると流子はそんなカァチェンを険しい面差しで見下ろしながら言った。

「アタイ達を……鬼神の子供であるアタイら新世代型の様になりたいんだな?」

「! ……」

「どうなんだ……!」

「!! は、はい……私は、もう誰からも傀儡の様に扱われたくありません。誰からも注目され、そして畏れられる……畏怖なる存在に成り得たいのが、私の僅かながらの願望……私は、懸命に己の信念を賭けて戦い合うHEADや順一殿たちを見て、私自身の中にすこぶっていた野心が息吹きを返したのです……」

 流子の一睨みからカァチェンは己の中に眠っていた野心などの実情を赤裸々に語り明かした。

 己の野心が息を返したと豪語するカァチェンを睨み付けながら、流子は彼の胸倉を掴んで顔を眼前に近付けさせて言った。

「それで、なんだその及び腰は? 黒武士に一発も攻撃が当てられなかったからって其処で諦めるのか? ……あんた、震えてるぞ」

 流子に指摘され、カァチェンは初めて自分の足腰などの身体が身震いしている事実に気付く。

 その震えは黒武士に攻撃が当てられなかった悲観か、黒武士への絶対的な恐怖か、それとも流子たち新世代型達へなのか。

 すると流子は下を俯いたまま身震いするカァチェンに話した。

「……もう、誰がなんと思おうと勝手だよ。アタイ達が鬼神、小田原修司のクローンなのは間違いないしな……」

「………………………………」

「確かにアタシ達は鬼神って呼ばれるほど恐れられている小田原修司のクローンには違いないかもしれないけどよ……アタイみたいに人間離れした奴もいるのは確かだけどよ……!」

 そして次の瞬間、流子は涙で滅茶苦茶になった顔を上げてカァチェンに言った。

「……グスッ、アタイはともかく、他のみんなまでバケモノ呼ばわりしちゃ、お前本当に友達失くすぞ……」

「!!」

 流子の涙ながらの訴えを眼前で捉えたカァチェンは衝撃の余り顔色を一変させる。

 今まで自分の欲望に忠実なあまり他者の事を蔑ろにしてまで闘い抜いていた自分の身勝手さを痛感したカァチェンは自然と体の震えが止まった。

 そして胸倉を掴んでいた流子の手から解放されたカァチェンは、自然と地べたに座り込んで放心した。

 涙ながらに訴えた流子の想い、そして新世代型の心境を訴えつつも「友達を失くすぞ」と自分を気にかけてくれた流子の思いやりにカァチェンは衝撃を受けた。

 

 と、その時だった。

 聖龍隊とスター・コマンドーが戦闘している戦場とは正反対の地から砲撃が繰り出された。

「な、何!?」

 突然の砲撃音にイオリ・リン子らが驚き目を向けてみると、曇天の空が背景で隠れながらも数発の砲弾が此方に向かって飛んできていた。

「きゃあっ、な、何なんですの!?」

 突如自分達の方へと飛来してくる砲撃に、新世代型の花園まりえが叫び、一堂に動揺する。

 すると飛来する砲弾の前に黒武士が飛び出して、地上から目にも止まらぬ早業で抜刀すると砲弾は全て空中で真っ二つに切断されて爆発した。

 俊敏な抜刀術で飛来する砲弾を全て切断した黒武士の居合抜きに、新世代型たちは一同に驚愕する。

 すると戦場とは正反対の荒野から砂煙が舞い上がる中、姿を見せたのは国連軍の兵士達だった。

「こ、国連軍!?」「なんで国連軍が此処に……!?」

 新世代型の室戸大智や井ノ原真人が愕然としていると、足正義輝が余裕を感じさせる笑みで語った。

「ハハッ、今頃になって予を討ち取りに来たか灼熱之朋よ。だが、既に一番乗りは別の武人が成し遂げているぞ」

「ど、どういう事なんですか? 国連軍と言えば、国連総長である貴方の配下の軍勢なのでは……」

 進攻してくる国連軍を眼で捉えて喜々とする足正義輝に、新世代型の直枝理樹が訊ねると帝は平然と答え語った。

「うむ、既に予は国連総長の地位を捨てておる。故に彼之朋らは予の軍勢とは違っておる……現政奉還という世界の混乱を生み出した予を討伐するべく、灼熱之朋である赤犬が予の方へと進攻しているという訳だ」

「そ、そんな……! それじゃあんたは既に国連軍からは異常者(ヒール)と認定されちまっているのか!?」

 足正義輝の説明を聞いて驚愕するギュービッドが問い詰めると、帝は笑みを浮かべて語り返した。

「うむ! そういう事になってしまうか……だが、道楽で世情を混乱させたのは予の過ちが一つ。吾は勤しんで国連軍からの討伐を受け切ろうと思ってる」

 笑みながら語り返した帝は、さらに己の千里眼で国連軍の現場を指揮しているのが誰なのか見通した。

「ふむふむ……なるほど、やはりな。予を討伐するべく、国連軍の最強戦力が揃っておるわ!」

「さ、最強戦力ってまさか……」

「うむ、その通りぞ鹿島ユノ! 元帥赤犬に、大将である黄猿と藤虎も健在である! ハハハッ、皆、予を打倒したくて仕様がない様だな」

 赤犬/黄猿/藤虎の三名までも揃っている国連軍の進撃に対しても余裕ある笑みで嬉々とする足正義輝の態度に、新世代型たちは呆気に取られてしまう。

 

 一方の国連軍では。

「元帥殿! たった今入った情報によりますと、現在足正義輝の許には一般の二次元人が集団で居りますようで……」

「フン! 所詮、そいつらも足正義輝の現政奉還に煽られた異常者(ヒール)じゃろう……悪は全て排除する! それがワシの正義じゃ!」

 兵士からの通達を聞いても、元帥赤犬は「悪の可能性」を感じられる足正義輝や付近の者たちを根こそぎ排除するという危険な思想で心中を溢れさせていた。

 そんな過激な思想をする赤犬に、黄猿と藤虎が話し始める。

「赤犬、そんなに興奮しなさんなって……所詮、足正軍の兵士は能力者じゃない普通の人間で溢れ返っている。わっちが丁寧に危険な輩だけでも排除してやるよぉ」

「しかしなんですね。帝の御傍に居られる無数の器、その中でもひと際ドス黒く異質な器が気になりやす……これは、どう考えても危険な輩が混じっているのだけは明白ですなぁ」

 三人の内、盲目の藤虎だけは憎悪に満ち溢れた黒武士の存在に逸早く気付いていた。

 そして武器を装備した国連軍兵士に元帥赤犬は強く命じた。

「よいか! 足正義輝は既に議会で平和を脅かす異常者(ヒール)と認定された。全員、容赦なく足正軍と戦えッ!」

 現政奉還で平和を乱した足正義輝を異常者(ヒール)に位置づけしたと配下の兵士達に命じる赤犬の指揮の下、国連軍は進撃した。

 大地が轟き雄叫びを上げるが如く、国連軍は足正義輝の拠点へと進攻。だが、国連軍兵士の前に二人の猛将が立ちはだかった。

「チェストーーッ!」「雷鳴……!」

 その二人の猛将が仕掛ける技に、兵士達は動揺し、進撃を阻まれてしまう。

 鬼の異名を取るシマ・ギンテル、忠節に厚い武人立花宗茂。二人の猛将の攻撃はそれこそ雷鳴が如く戦場を震わせ、兵士達を威圧する。

「こっから先は……」「私達を倒してから進みなさい!」

 進軍する兵士達に、ギンテルと宗茂は厳つい風貌で圧倒する。

 兵士達も、歴戦の猛者であるシマ・ギンテルと立花宗茂に簡単に近寄る事はできなかった。

 そんな兵士達にシマ・ギンテルは容赦なく巨剣を振り下ろして一刀の如く斬り捨てる。

「チェストーーッ!」「うわあ!」

 情け容赦なく斬り捨てるシマ・ギンテルの示現流の一太刀に兵士は絶叫。

 その様子を、拠点から眺めていた新世代型たちは新たに戦火が起こってしまった事態に悲観するばかりだった。

 

 そんな国連軍の進撃を知って、ガイア・スコーピオン率いるスコーピオン同盟は焦り出した。

「チッ、赤犬のおっさんめ……帝を討ち取って、自分達の手柄にするつもりだぜ」

「兄者、どうしましょう? 私達だけでは総力で向かってくる国連軍を相手にするには、少し戦力が足りませぬ」

「ピピッ、国連軍との戦いに勝利する確率28%……」

 焦るガイアに弟のクリスタル・スコーピオンとメガロ・スコーピオンが口添えする。

 スコーピオン同盟は、大軍で迫る国連軍相手に如何様な行動を取るべきか迷った。

 

 

 

[明白される実体]

 

 突如として戦場の反対側の荒野に出現した国連軍の大軍に足正一派のシマ・ギンテルと立花宗茂が出迎えていたその頃。

 国連軍が進撃する荒野の反対側の戦場で激戦を繰り広げている聖龍隊とスター・コマンドーにも、国連軍が進撃している事態が報告された。

「チッ、赤犬の奴め。オレ達が仲たがいしている隙を突いて帝に進軍していたとは……!」

 聖龍隊総長メタルバードは、自分たち聖龍隊とスター・コマンドーが敵対している隙を突いて足正義輝に進撃している行為に釈然とできなかった。

 

 一方で国連軍は、その赤犬の指示によって着実に進撃を進めていた。

 だが地上ではギンテルと宗茂の猛威によって進撃が阻まれている現状が続いていた。

 この事態に元帥赤犬は非情の戦術に出る。

「砲撃部隊、帝が拠点であるあの高台に向けて攻撃を開始せいッ」

「し、しかし元帥……帝の傍には一般人も多く居られる様ですが、このままでは彼らも巻き添えになってしまいます!」

「少しの悪の可能性がある以上……微塵の猶予も与えちゃあいかんのじゃ!」

 反論する兵士に赤犬は檄を飛ばすと、再度砲撃部隊に命じる。

「砲撃開始! 足正義輝を吹き飛ばせッ」

 赤犬の命令が下った事で、砲撃部隊は帝たちが屯っている高台へと攻撃を開始。

 無数の砲弾が足正義輝や多くの新世代型たちの方へと向けられ発射され、多くの者が困惑し戸惑う状況下で、黒武士が再び行動を起こした。

 目にも止まらない抜刀術で長刀を抜くと、その瞬間に全ての砲弾を切断して空中で爆発させて処理をしてしまう。

 この黒武士の砲撃阻害を目撃して、赤犬はしかめっ面を浮かべる。

 そんな赤犬に同期の黄猿が話し掛けた。

「赤犬、いきなり砲撃は流石にマズいんじゃないのかなぁ? 地位を全て捨て去ったとはいえ、あっしらの元上司にも当たる国連総長なんだよ。此処はまず、通信機で投降してもらうよう説得するのが道理じゃないのかなぁ~」

「ムム……面倒じゃが、そうするしかないのお」

 黄猿に説得されて、赤犬は無線通信で足正義輝に直接訴え出た。

「元国連総長、足正義輝に通達する! おまはんは現政奉還などというフザけた与太事を仕出かした大罪人として処罰する! 大人しく黒武士共々投降せいッ」

「ハハッ、灼熱之朋よ! 吾ら新世代型二次元人が引き起こした現政奉還は気に入らなかったか? 現に其之方たちが屯っている地とは反対側の戦場で、今まさに聖龍隊とスター・コマンドーが未来(さき)を創り出そうと奮戦しておるぞ」

「聖龍隊の下らぬ仲違いはどうでもいいんじゃ! ワシは現政権の全てを無力化して無秩序な世を始めた主を正義の名の下、裁くだけじゃ! 同時に、今まで多くの国々や世界で暴れ回った黒武士も一緒にのう……!」

「ハハッ、参ったな……どうも其之方には新しい世を創世しようとする気は起きてない様だ」

「当り前じゃバカもん! 悪のいない高等な世界こそ、ワシが目指す世界じゃ……それがなんじゃ。主ら新世代型が世間を騒がせて追ってからに……あの男とそっくりじゃ!」

「その男とは……吾らの始祖、小田原修司の事か?」

「!! お前……」

 赤犬は唐突に足正義輝の口から出た言葉に、己の言葉を失くした。すると続け様に義輝は赤犬に語り続けた。

「吾らは生まれながらに混沌の世を望んだ……新たな時代を望む鬼神、小田原修司の血筋を受け継いでいる。その受け継がれし血脈から犇々と溢れ出す闘志は、次なる時代を創世する……だがな灼熱之朋よ、吾らはただ悪戯に世情を乱していた訳ではないのだ。次なる時代を、新たなる次代を創造する若き芽吹きの再来を……今生の世に人々の熱気を吹かせたいのだ! 誰もが己に正直に生きていける、そんな世を到来させたいのだ」

「……何を訳の分からぬ事を抜かしよるんじゃ! 次の世代を育み、時代を築き上げるのは絶対的正義を掲げる……ワシら国連軍じゃ!」

「ふむ、なるほど! 其之方にも信念があったか! では、その信念を吾らにぶつけてきてくれ……」

 次の瞬間、足正義輝は全ての戦場に流れている無線通信の会話の中で衝撃的な発言を述べた。

「吾らは混沌と次代を望む新世代……鬼神小田原修司の血筋を受け継いだ、鬼神のクローンであり、鬼の申し子! 吾らに其之方達の熱意を然りとぶつけておくれ!」

「しょっ、将軍様!?」

「遂に言っちゃったよ……琴浦たち新世代型が小田原修司のクローンだって言っちまったよ」

 突然の足正義輝の公言に、プロト世代のチョコやギュービッドは愕然とした。

 

 その足正義輝の公言に戦場はざわめき出した。

「な、何だって!」「あの新世代型が、小田原修司のクローン?」

 聖龍隊の隊士やスター・コマンドーの兵士は新世代型二次元人の真実を聞いて思わず合戦の手を止める。

「What's?」「な、なんと! あの新世代型の童達が……」

 帝からの明言を聞いて、対決し合っていたデイ・マァスンとシン・ユキジの動きが硬直する。

「なんてこった。前々から只モンじゃないと睨んでいたけど、まさか鬼神の血を引いていたとは……」

「クローン、だと? しかも、寄りにも寄って、あの鬼神小田原修司のクローンとは……!」

 主君が為に激しく仕合っていた猿飛佐助とタク・モンジュロも、帝の発言に一時戦闘を中断する。

 足正義輝の公言を受けて、聖龍HEADもスター・コマンドーも衝撃を受けた。

「! 帝の奴、遂に公の場で公言しちまいやがったか……!」

「! 義輝公、みんなの前でそれを言ってしまうとは……!」

 帝の公言に衝撃を受けるメタルバードに対して、村田順一は自分たちスター・コマンドーも以前から周知している新世代型二次元人の真実を公言されて激しく動揺する。そんな中、スター・コマンドーが動揺し尽くしている現況に、新世代型たちが帝も使用している無線通信で戦場で戦い合っている村田順一達に言い伝えた。

「じゅ、順一さん、聞こえますか!?」

「チョコちゃん、春香ちゃん、どうして君達が帝と一緒に……」

「話せば長いんだけど、それよりも俺達が小田原修司のクローンだって事は……」

「ま、真鍋くん、それは……」

「良いんです。私たち、既に知っています。自分達が小田原修司のクローンだってこと……」

「そ、そんな! ……なんという事だ。君らは既に知ってしまっていたとは……」

 棗鈴からの言伝を聞いて、村田順一は彼ら新世代型の心境を悟って悲観する。

 

 戦場で戦う聖龍隊とスター・コマンドーの軍勢に衝撃が走る一方で。

 戦場とは反対側の荒野から進攻してくる国連軍兵士も、新世代型二次元人が小田原修司のクローンだと知って愕然とする。

「新世代型が、まさか小田原修司のクローンとは……!」

「奴らを生かしておけば、後の時代の脅威となろう!」

 新世代型二次元人が小田原修司のクローンであると知った国連軍兵士は、彼らを生かしておけば再び厄災が引き起こされると恐れて更に進撃に勤しむ。

 すると国連軍の指揮官が、砲撃手に急いで命じた。

「目標補足! 標的は足正義輝ら、新世代型一派! 狙い撃てーーッ!」

 指揮官からの指令に、砲撃手は大砲から砲弾を発射。高台の新世代型たちに向けて砲撃を仕掛ける。

 

 

 

[黒武士との激突]

 

 帝である足正義輝の公言により、戦場と荒野の皆々に自分たちが小田原修司のクローンに近い種だと明言された新世代型二次元人たちは非常に困惑した。

 しかし、ざわめく聖龍隊とスター・コマンドーの軍勢に対して、荒野から攻めてくる国連軍は新世代型が小田原修司のクローンだと知って、顔色を変えて進攻する。

「新世代型を生かすな! 奴らこそ、平和を乱す混沌の象徴よ!」

 そう言って国連軍兵士は帝と黒武士と新世代型たちが駐屯している拠点に進攻。

 そんな戦況の中、国連軍は遠方から砲台で砲撃を激化させて、新世代型たちへ砲撃を晒す。

 しかし国連軍からの砲撃及び銃弾は、全て黒武士が一刀のもと、切断するか弾き飛ばすかして攻撃を防いで見せる。

 黒武士の防衛に、国連軍元帥の赤犬は苛立ちを覚え始めていた。

「ぐぬぬ……ッ! 黒武士め、やはり奴もまた新世代型の二次元人じゃな」

 新世代型を防衛する黒武士の行動から、彼もまた新世代型二次元人だと認識する赤犬。

 と、そんな苛立つ赤犬に黄猿が申し出た。

「赤犬、戦場での戦いは兵士達に任せて……あっしらは直接拠点を叩けば良いんじゃないかなぁ。あっしら最強戦力をぶつければ、如何に黒武士と言えどスグにやられちゃうよぉ」

「……フッ、その手があったな。戦場でのシマ・ギンテルと立花宗茂への攻撃は兵士らに任せて、わしらは直接黒武士を叩くばい」

 そう黄猿と話し合った赤犬は、大地を溶岩で溶かしながら地底から進攻し、黄猿は全身を光に変換して拠点へと直接飛来する。そんな二人の会話を傍らで聴いた藤虎は、自らの重力操作の能力で浮上させた岩石に飛び乗って飛行する。

 

 そして最初に拠点へと到着したのは、光の速度で移動してきた光人間の黄猿だった。

「おやおや~~、こんなにたくさん……みんな、殺しちゃっても良いのかなぁ」

 到着した黄猿は、目の前にいる大勢の新世代型二次元人を前に全員を殺しても良いのか思慮に耽る。

 黄猿の到来に脅え切る新世代型二次元人たちに対し、帝とSパルは平然と出迎え、黒武士は黄猿に敵意を向ける。

 敵意を向けてきた黒武士が目前まで摺り足で歩み寄ってきたのを視認した黄猿は、容赦なく黒武士に対して攻撃を仕掛けた。

「おぉ~~、君が悪名高い黒武士かい? 悪いけど、ここで死んでもらうよ~」

 黄猿は指先から黄色い光線を発射しようと、人差し指を黒武士に向ける。

 そして次の瞬間、指先から光線を発射した黄猿。だが黒武士は引き抜いた長刀で黄猿の光線を弾き返して防いでしまう。

「おやおや? あんさん、案外やるようだねぇ~」

 間延びした独特の口調で黒武士に話し掛ける黄猿。だが黒武士は黙然と黄猿に対して口を紡ぐ。

「……なるほど、喋らないってのは報告書に記載されている通りだねえ~」

 黒武士が戦闘中は一切喋らない報告を知らされていた黄猿は、黒武士と対峙する。

 黄猿が光速で黒武士の間近に接近すると、彼は片足を上げて蹴りの体勢に入り、力を溜める。それに対して黒武士は黄猿の蹴りからは逃げようとはせず、俊敏な抜刀術で長刀を居抜いて黄猿に連続で斬撃を浴びせる。

「おおっと」

 光子力エネルギーで構成された肉体を持つ黄猿には本来、物理攻撃は効かない筈なのだが何故かこの時の黒武士の斬撃は黄猿に痛感を与えていた為に、黄猿は堪らず体勢を崩して蹴り上げの戦法を阻害された。

 黄猿が怯んだのを良い事に、黒武士は黄猿に対して連続で斬り付け、黄猿を追い込んでいく。

「おいおい、わっしの体に傷を付けるとは……お前さん、覇気を習得しているのかい?」

 しかし黄猿の問い掛けに対し、黒武士は何も答えずただ長刀を抜刀して連続斬りを仕掛けるのみ。

 すると其処に自身の重力の能力で浮遊させた大岩に乗って飛来してきた藤虎が到着。先輩大将である黄猿に加勢する。

「黄猿殿、あっしも加勢しやしょう。その黒武士からは、並々ならぬ憎悪が感じられます……放っておけば何れ、あっしら国連軍にとって脅威になる可能性もありやす」

「ふぅ~~ん、君は目が見えない分、相手の心理を読み解くのが得意だったんだねぇ。言われてみると、この黒武士からは尋常じゃない程の気迫を感じられるね~~」

 藤虎の申し出に黄猿も彼が加勢する事を承諾。二人がかりで黒武士と戦う事に。

 だが、戦いに参入した藤虎にも黒武士は長刀で威嚇。藤虎は自らが杖代わりにも使用している日本刀で黒武士の刃を受け止める。

「目が見えなくとも、敵の姿はハッキリと捉えていやす」

 盲目ながらも敵対している相手の気配を捉えている藤虎は、黒武士に向けて刀を振るった。

重力刀 猛虎(ぐらびとう もうこ)!」

 藤虎は刀に能力を行使し、それを振るった方向へ向けて強力な重力帯を発生させる必殺技で黒武士に攻撃。黒武士は壁が陥没するほどの重力に引き込まれ、斬撃を防御できてもそのまま吹っ飛ぶように距離を突き放される。

 しかし黒武士は藤虎の必殺技を直撃したにも関わらず、平然と立ち上がり、対峙している黄猿と藤虎に抜刀していく。

「あっしの技を受けても立ち上がるとは……並の生き物ではないでやんすね」

 藤虎は黒武士を、人間の枠ではなく生物の枠から外れた怪物の様に補足した。

 すると此処で藤虎は、自分達の戦いを見届けている一般の二次元人たちに気付いて彼らに声をかける。

「あんさんら、大丈夫でござるか?」

「あ、はい……なんとか」

 藤虎からの質問にイオリ・リン子が返事すると、藤虎は二次元人たちに警告した。

「気を付けておくんなはれ……あっしや黄猿はんの攻撃は、尋常ならざる範囲に効果を発揮する技。どうか距離を置いて、あっしらの技に当たらないよう気をつけておくんなまし」

「は、はい……!」

 藤虎からの警告に、新世代型たちは素直に返答した。

「あばれ火祭り」

 その新世代型たちが遠ざかったのを気配で悟った藤虎は、頭上から無数の隕石群を重力で引き寄せて黒武士に大打撃を与える事に成功する。

「凶悪な剣……危のうござんした」

 黒武士が振るう刃を凶悪な剣と指摘する藤虎が、刀を鞘に納めようとしたその矢先。

 頭上から降り注いだ隕石群の中から黒武士が出現し、再び藤虎や黄猿に攻撃を仕掛けようとしてきた。

「な、なんて奴……!」「しつこい奴だねぇ、黒武士って」

 強靭な肉体と体力を誇っているのか立ち上がる黒武士を前に、藤虎は愕然とし、黄猿は多少面倒臭がりながらも黒武士に向かって指から光線を発射し、黒武士の体を射抜く。

 しかしなんと黒武士は黄猿の光線に貫かれても微動だにせず、平然と立ち上がっていた。

「おやおや、ウソだろぉ? あっしのレーザーを受けても立っていられるだなんて……」

 光線に貫かれても立ち続ける黒武士を前に、俄かには信じられない黄猿。

 黄猿と藤虎、両名が近くで戦いを見守る新世代型たちに遠慮して黒武士と真っ向対決をしていた、その時だった。

 黒武士の足元が赤く輝き出しては、次の瞬間黒武士の足元の床下から灼熱の溶岩が噴き上がって、黒武士を呑み込んだ。この時、黒武士を呑み込んだ溶岩の破片が近場にいた新世代型達にも降りかかって来た。

「うわあ!」「よ、溶岩が……アチチチッ」

 頭上から降り注いでくる溶岩の破片に新世代型たちは逃げ惑うばかり。

 すると黒武士を呑み込んだ狛犬の形状をした溶岩の中から、地底を溶かして進攻して来た赤犬が姿を現した。

「ふぅ……どうにか地底から最も厄介な黒武士を捕まえる事ができたけぇ……おい、カァチェン! 聖龍隊に移籍したおまはんが何でこげな処におるんじゃ! 邪魔だから向こうに行っとれ」

「………………は、はい……」

 聖龍隊で少しは自覚や意思を持ち始めていたカァチェンだったが、赤犬の厳つい強面と言動に返す言葉が見当たらず、一線から身を退いた。

「黄猿、藤虎! なにをノロノロと働いちょるんじゃ! 黒武士の様な、危険な悪を潰す為には……それ以外、余計な事は考えるな! 如何なる犠牲が出ようと、わしらはわしらで正義を敢行するんじゃあ!」

「! あいつ、相変わらず悪と見做した相手には容赦ないみたいだな……!」

 以前と同様に、悪と見做した相手は容赦なく正義の名の下、処罰という殺害を執行する赤犬の言動に、新世代型の真鍋義久は口元を歪ませる。

 すると赤犬が狛犬の形状をした溶岩の右腕で黒武士を捕らえている最中、藤虎が赤犬に物申した。

「今のあっしに見えるのは、揺るぎないあっしの正義のみ! 申し訳ないですが元帥殿、この新世代型の童たちに悪意は感じられませぬ。故に処罰する気も起こりません」

「なにッ!?」

 藤虎の反論に厳つい強面を更に険しくさせて赤犬が一睨みすると、その一睨みに新世代型たちが怖気づく中、黄猿も赤犬に物申す。

「赤犬、確かに彼らは小田原修司のクローンに近い種だって事は、既に周知しているよ。けどねえ……それだけで処罰の対象にするのも、どうかと思うんだけどなぁ。此処はまず、現政奉還っていう混乱を引き起こした足正義輝を連行して詳しく調書するのが適切な行動だと思うよ」

「……! じゃが、新世代型には大いに問題がある……かのルミネの一件から全てが始まり、更には凶悪で陰湿な異常者(ヒール)が発生し続けた。小野崎功、三枝一族、セレディ・クライスラー、鬼龍院羅暁(きりゅういんらぎょう)、法月仁……そして遂には全てを始まりに戻したと訳の分からぬ乱世を引き起こした足正義輝! 新世代型には、数え切れん悪がぎょうさん発生しちょる! この事実をどう説明するつもりじゃ、黄猿……!」

「う~~ん、確かに君の言うとおりだよ赤犬。けれど、その問題ある新世代型を生産していったのは紛れもなく三次元政府。その政府の意向で新世代型たちは生み出され続けて、遂には足正義輝という国連総長に就ける二次元人も生み出された訳じゃないか。そんな新世代型を全て悪と捉えるのは、生産した三次元政府が間違った政策をしたって反発する事にも成りかねないんだよぉ。まずは何事も聴取して、それから問題を片付ければ良いじゃないか」

「ッ……気に入らん。実に気に入らんが……確かに、三次元政府の政策に異論するのはマズイ事じゃきい……」

 黄猿の説得に赤犬も不服ながら納得し、落ち着かせた。

 そして赤犬は黒武士を捕らえた溶岩の拳を、少し離れた処に放り投げて溶岩の塊ごと黒武士を遺棄する。

 それから赤犬/黄猿/藤虎の三名は、最初から戦いを傍観していた足正義輝とSパルの目前に迫って二人に言い寄った。

「Sパル……! 本来、総監視者のお前さんは外界に干渉する事は禁じられている筈……それなのに、何ゆえ義輝公と結託して現政奉還なんぞという訳の分からぬ帝の道楽に付き合っておるんじゃ……!」

「赤犬元帥……前々から思っていたのですが、貴方は自分同様に非情に徹していたにも関わらず、多くの人々から人望を集めていた小田原修司に、僅かながらに嫉妬していた傾向がお有りだったのでは?」

「! それがなんじゃ、今の状況に何の関係がある?」

「多くの人々から畏怖の目で見られてきた上に、多くの二次元人の人望をかき集めた小田原修司のクローンとして生み出された私たち新世代型にとって、本当の小田原修司を拝見して知る事はまだ叶っていない。私達は小田原修司という人間を良く知るためにも、彼と同様に未来を創造する人の意志を芽吹かせたいだけなのだ。私のように、感情が欠落した二次元人にも熱い意思を植え付けてくれる小田原修司の様な逸材を、私達は求めているんだ」

「!!」

「灼熱之朋よ。其之方は今の世に嘆いてはおらぬか? 善悪関係なく、人々には未来を創造する熱気が失われている現状を……」

「何を抜かしよる! 世の中の連中に熱気が有ろうと無かろうと、悪事を働かれるよりはマシな世界じゃわい!」

「そうか、実に残念だ。輝かしき未来を創世する吾らの活動に同意してくれると思っておったのだが……」

 赤犬がSパルや足正義輝と対話していると、先ほど赤犬が放り捨てた溶岩の塊が突如として揺れ動き、その微動に新世代型たちが最初に気付く。

「??」

 動き出す溶岩の塊に皆が視線を向けると、そんな視線を向ける新世代型たちの行動に気付いて赤犬たちも溶岩の方に顔を向ける。

 すると次の瞬間、半ば固まりかけていた溶岩の塊が内部から破裂するかのように砕け散り、中から黒武士が仁王立ちで立ち上がったのだ。

「う、ウソだろ!?」

「溶岩に呑み込まれたにも関わらず、生きているだなんて……!」

 溶岩に包み込まれたにも関わらず、生存している黒武士の現状に新世代型の燃堂力と幸平創真は驚愕する。

 そして溶岩の中から出てきた黒武士は、再び赤犬たち国連軍の最強戦力と戦おうと向かってきた。

「くっ……まだ死んどらんのかあ!!」

「おやおや、ゴキブリ並みにタフなんだねぇ~」

「未だ納まってないようですねぇ、あんたの凶悪な……憎悪の刃!」

 赤犬/黄猿/そして藤虎は再び黒武士と真っ向対決する事に至った。

 

 

[動き出す聖女]

 

 帝と新世代型たち、そして総監視者のSパルが滞在している最終拠点に赤犬率いる国連軍が進行していたその頃。

 スター・コマンドーと激戦を展開していた聖龍HEADその一人であるミラーガールが国連軍の進行に危険な予感を脳裏に浮かべていた。

「赤犬が……国連軍までも動き出したなんて……! このままじゃ新世代型の子達に危険が……!」

 前々から新世代型二次元人に対して危険視していた赤犬率いる国連軍の進行に、ミラーガールは新世代型たちに危険が迫っているのを予感した。

 ミラーガールは互いに凌ぎ合うHEADとスター・コマンドーに訴えた。

「ねえ、みんな! 国連軍が、新世代型の子達に迫っているわ! なんとかしないと……」

 しかしミラーガールの訴えに対して、仲間達は冷たかった。

「今はそれどころじゃねえ! ジュンたちを打ち負かさねえと……!」

「未来を創造するのはジュンくん達か、私達か……ここで決着をつけないと!」

 メタルバードにキューティーハニーの言葉がミラーガールの心に突き刺さる。

 ここでミラーガールは初めて気付いた。自分達の周りには、かつて仲間内であった者同士が死線を越えてまで互いに虚しくも争い合っている惨状に。

 これを見たミラーガールは居た堪れなくなり、胸が詰まった。聖龍隊とスター・コマンドーの戦乱を引き起こしたのが自分達だと胸を締め付けられた。

 ミラーガールはここで仲間であるHEADに再度訴え掛けた。

「みんな! 今は争い合っている暇はないわ! 国連軍を止めないと、新世代型の子達がどうなっちゃうか……気にならないの!?」

 しかしミラーガールの訴えに、スター・コマンドーと激戦を繰り広げている聖龍HEADは眼中に無かった。

「うっさい! 今はジュン達と決着をつける方が最優先だ!」

「先輩……いや、師としてジュン達と決着をつける方が先なんだ!」

 この言葉にミラーガールは身勝手さを感じたが、先ほどまでの自分も此処まで好戦的で意地を張っていたのかと思うと、自己嫌悪してしまう程に心が痛んだ。

 そしてミラーガールは、眼前の相手と戦うしか脳裏に無い聖龍HEADやスター・コマンドーに対して堪忍袋の緒が切れた。

「……いい加減にしてっ!」

 ミラーガールは投てき武器にもなるミラー・シールドを振り回して、戦いに没頭しているHEADやスター・コマンドーに投げつけた。

 全員にシールドが直撃し、皆が目を回してしまったところにミラーガールが自身の心中を語り明かした。

「みんな、もう落ち着いて! 確かにお互いに譲れない想いや意地が……信念があるのは解るわ! けど、だからって周りが見えなくなるほど自分を追い詰めないで!」

 ミラーガールから「周囲が見えなくなるほど自分を追い詰めるな」と指摘されたHEADやスター・コマンドーは、かつての小田原修司を思い出した。彼もまた、己の理想を実現しようと一時的に周囲が見えなくなっていた時期があったからだ。

 己の信念を貫く為に周囲を顧みなくなった小田原修司という過去を思い出して、HEADとスター・コマンドーの両勢力は双方ともに地べたに座り込んで茫然と考え込んでしまった。

 そんな仲間たちにミラーガールは言い残した。

「私は……私達の信念や意地を張り合う前に、危険な目に遭っている弱者を……新世代型たちの処に向かうわ! 弱い人も助けられないなんて、それこそヒーローじゃないもの!」

「!」

 ミラーガールの言葉に衝撃を受けるHEADやスター・コマンドーたち。そんな彼らを横目に、ミラーガールは瞳に涙を浮かべてその場から離脱した。

 

 改めて聖龍HEADから離脱したミラーガールが戦場を見渡してみると、戦争の混乱は激しさと酷さを増していた。

 戦渦は寝返りから始まり、それが瞬く間に膨張してしまい、戦場は混戦の一途を辿っていた。

「ここまで……ここまで、戦争が激化してしまうなんて。私たちは、なんて馬鹿な真似を……!」

 自分達の意地の張り合いが此処まで戦争を進展させ激化させていた現状に、ミラーガールは心を痛めた。

 こんな状態では、簡単に戦争を止める事は不可能だった。しかしミラーガールは(こんな時こそ……)と心の内で涙ながらの決意を固めて即座に行動に移した。

 それは実に単純なもので、ミラー・シールドで争い合っている兵士の頭部を殴りつけて、気絶させてまでも戦闘を制止させる事だった。

「イテっ! な、なんなんだ……?」

「ミラーガール!? なんで彼女が……?」

「ミラーガール殿、どうしたのでござるか! 乱心してしまわれたのか……?」

 突然のミラーガールの行動に隊士や兵士たちは困惑してしまう。

 そして、そんな彼女の行動は無線通信を通して先ほど彼女に殴り付けられた聖龍HEADに伝えられた。

「そ、総長! ミラーガールが突然、敵味方関係なく攻撃を仕掛けてきました! 攻撃された仲間は皆、頭部を殴られて気絶してしまってます!」

「そうか、アッコが…………あいつめ」

 隊士からの報告を聞いて、メタルバードたち聖龍HEADはミラーガールが苦心の末に行動を起こしているのだと即急に察した。

 

 自分達の意地の張り合いで起こってしまった戦渦を少しでも宥めようと、ミラーガールは視界に入ってくる争い合う隊士や兵士を殴り付けて気絶させる事で強制的に戦闘を辞めさせていた。

 視界に入ってくる争い合う兵士や隊士の戦闘を強引に止めて行くミラーガールは、戦場を大きく迂回して聖龍隊とスター・コマンドーの戦場とは反対側の荒野から足正義輝の許へと向かおうとしていた。

 しかし荒野でも国連軍の兵士が足正軍の兵力と一戦始めており、簡単に突き進む事もできなかった。

「仕方がないわ……彼らの争いも止めないと」

 ミラーガールは苦渋の決断で、争い合う国連軍の兵士と足正軍の兵士を同等にミラー・シールドで殴打して気絶させていった。

 するとそんなミラーガールの視界に衝撃的な光景が飛び込んできた。

「チェストーーッ!」「うぎゃあ」

 足正派に加わっている剣豪シマ・ギンテルが鬼の様な形相で国連軍兵士を一刀の元に叩き斬って死合っている惨状だった。既にギンテルの周囲には無数の国連軍兵士の骸が転がっていた。

「ギンテルさん、あの顔は……!」

 ミラーガールはギンテルの顔を見て仰天した。ギンテルの形相、それは人の域を超えてしまった鬼の形相。人の心を失った、かつて温情な剣豪だったギンテルとは裏腹の姿だった。

「チェストーーッ!」「ひええっ」

 情も心も全てを捨て去り、本物の鬼と化したシマ・ギンテルの猛威に敵兵達が恐怖で逃げ惑うが、ギンテルは逃げ腰の兵士にも容赦なく巨剣を振り下ろしその命を奪う。

「チェスト! チェスト! チェストーーッ!」

 鬼気迫る威圧感で次々と兵士の命を奪っていくシマ・ギンテルにミラーガールが駆け寄り、制止する。

「ギンテルさん、もうやめて!」

 地面に這いつくばって逃げようとする兵士と、そんな兵士にも容赦なく叩き斬ろうとするギンテルの間にミラーガールは割り込んだ。

 ギンテルは巨剣を振り翳し、間に割り込んできたミラーガールにも巨大な刃を振り下ろそうとするが、その瞬間、ギンテルの目に飛び込んできたものが。

 それはミラーガールの鏡の様に美しい瞳に映し出された、自分の形相。ミラーガールの、彼女の瞳に映し出された自分の形相を見てギンテルは気が付いた。

「っ! なんちゅう顔ね……」

 自分の鬼の様な形相をミラーガールの瞳から映し見たギンテルは巨剣を降ろし、ギンテルに斬られそうになった兵士は命辛々逃げ出した。

「示現流は完成し、鬼になる道も見えた……じゃっどん、こげな顔」

 ギンテルは自らの巨剣に映し出した己の形相を改めて見て、思い悩んだ。

「若きに伝える訳にはいかんばい……」

 本物の鬼に成り下がってまで伝える示現流は示現流ではないと、鬼の形相になっていた自分の面を見てギンテルは悟った。

 ミラーガールが温かい眼差しで見詰める中、ギンテルは愛刀青嵐を地面に突き刺して、青嵐に焼酎をぶっ掛けた。

「青嵐よ、すまんのう」

 ギンテルは此処まで自分達が進んできた示現の道のりが無駄になってしまった事を青嵐に詫びた。

「求めるは、魂に楔ば打つ示現の心……もう一度、オイに付き合ってくれんね」

 人の心を失ってまでも得た示現流は間違いであったと悟ったギンテル。彼にミラーガールが歩み寄り声をかける。

「ギンテルさん……」

「ミラーガール、よくぞ人の心ば失ったワシを気付かせてくれた」

 ギンテルは遠くを見詰めながら、ミラーガールに語った。

「示現の道は確かに鬼の道、茨の道じゃ……されど、それを扱うのは人じゃ。人の心を失った剣士が示現を示して良い訳がなか! ……おまはんの瞳を見て、それがようやく分かったばい」

「ギンテルさん……」

 落ち込む様子のギンテルを目の当たりにし、ミラーガールは胸が締め付けられた。

「……じゃが、ミラーガール。ワシはまだ間に合うかのう? 鬼と恐れられながらも、多くを導いてきたおまはんの婚約者、修司どんの様に鬼でありながら人を導けるかのう」

 ふっと顔を上げてミラーガールに問うギンテルの質問に、ミラーガールは笑顔で答えた。

「……ええ、きっと大丈夫。ギンテルさんが人の心を、温もりを忘れない限り……きっと、多くの人達を導ける筈よ!」

「そっかぁ、そっかのぉ……わはははは!」

 ミラーガールからの言葉で背中を押されたギンテルは、高笑いしながら腰にぶら下げている焼酎瓶を一気飲みした。

「ぷはっ……ほれ、おまはんも飲んでみんしゃい!」

「ええ、ありがたく頂くわ」

 戦場のど真ん中、それでもミラーガールはギンテルから賜った焼酎を瓶ごと一気に飲み上げて一息つく。

「ふぅ、修司の前じゃこんなに飲めないわね」

「がはは! 相変わらず、いい飲みっぷりじゃの!」

 ミラーガールの飲みっぷりにギンテルはこれまた大笑い。

 そして互いに同じ酒を飲み交わしたギンテルとミラーガールは一時ばかし語り合った。

「ミラーガール、今のオイには……足正派に加わったオイには詳しく語れんが、あの黒武士を止めねば大変なことになるばい」

「え? 黒武士を……」

「そうじゃ、あの黒武士は人の心も鬼の心も失くした武人……その果てにあるのは破滅の道のりだけばい! 早く行って止めんしゃい」

「……分かったわ。ありがとう、ギンテルさん!」

 ミラーガールはギンテルに礼を言うと、即行で戦場を駆け抜けていった。

 一方の、ミラーガールの慈愛の瞳で我を取り戻したシマ・ギンテルは彼女の背中を見届けると今まで忘れていた穏やかな表情を浮かべられた。

「未来を……明日を創れるのは、人の心だけばい」

 そう言い残すと、シマ・ギンテルは一人戦場から離脱した。

 

 

 

[対談する聖女と帝]

 

 ようやく己の真情に、平和を願う己の願いに気付いたミラーガールは戦場を迂回しながら互いに傷つけ合う者たちを気絶させて戦闘を中断させながら帝である足正義輝の許へと足を急がせる。

 足正義輝の許には総ての監視者Sパルと大勢の新世代型二次元人が。そして、そんな新世代型を危険視する国連軍元帥赤犬率いる黄猿と藤虎も集結している。

 ミラーガールは急ぎ、足正義輝の許に駆け付けて新世代型二次元人たちの安否を確かめたかった。

 

 そしてようやくミラーガールは足正義輝が待ち受けている拠点へと辿り着き、その場にいる皆の安否を確認した。

「み、みんな……無事?」

「あ、アッコさん!」

「か、カァチェン……貴方さきに来てたの?」

「み、ミラーガール殿……」

「Sパル、まさか貴方とまた会えるなんて思いも寄らなかったわ」

「ミラーガール、私も君が一人でこの場に来訪するとは思ってなかった」

 ミラーガールの到着に涙目で出迎える新世代型たち。自分より先に来ていた事に驚きながらも互いに顔を合わせるミラーガールとシバ・カァチェン。そして以前にも顔を合わせた事があるミラーガールとSパルはお互いの再会に険しい面持ちを浮かべ合った。

 そしてミラーガールは最も懸念していた国連軍元帥と大将たちが気になり、広間を見渡してみると其処には信じ難い光景が広がっていた。

 なんと国連軍元帥である赤犬も、大将である黄猿と藤虎も、三人とも満身創痍に打ちのめされて床上で悶絶していた。

「えっ……こ、これは……!?」

 倒れている赤犬や黄猿、藤虎を捉えてミラーガールは愕然とした。

 すると混戦の一途を辿っている戦場をかき分けて、単身で来訪してきたミラーガールに帝、足正義輝が言葉をかける。

「素晴らしき心・技・体の持ち主だな、朋よ! まさに次代の息吹き、其之方こそ天下創世に相応しい!」

「! 足正、義輝……」

 一人で来訪してきたミラーガールを次代の息吹と称賛する帝に対し、ミラーガールは全ての争いの元凶である足正義輝を見つめて茫然とする。

「よくぞ来た、鏡之朋よ。其之方が吾らが許に来訪するのを、予は心待ちにしておったぞ!」

「し、将軍様……これは、あなたが?」

 ミラーガールは眼前で倒れている赤犬/黄猿/藤虎を倒したのが問い質すと、足正義輝は丁重に述べ返した。

「いや、予ではない。この黒武士が、予に降りかかる戦火を全て振り払ったに過ぎない」

「え! 黒武士……!」

 帝の言葉にミラーガールは以前にも自分達と激しく戦い合った黒武士が、元帥や大将たちを返り討ちにした経緯に驚いた彼女は、帝の傍らに佇んでいる黒武士に目を向けてみるとその途端、黒武士は鞘に納められた長刀を掴んでミラーガールに只ならぬ敵意を向けた。

「っ!」

 目を向けた途端、敵意をむき出しにしてきた黒武士の行動に一驚するミラーガール。

 すると帝である足正義輝はミラーガールに訊ねた。

「鏡之朋よ、其之方は如何なる目的でこの場に訪れた?」

「わ、私、ええっと……それはつまり、其処の新世代型のみんなが大丈夫かなって心配して駆け付けてきた訳で……」

「成程な。つまり其之方は予が同胞である新世代型たちが赤犬や黄猿によって痛め付けられてないか心配で駆け付けてきたという訳か」

「え、ええ! そうよ……」

「うむ、それは大丈夫ぞ、鏡之朋よ! 吾ら新世代型二次元人に降りかかる火の粉は全てこの黒武士が吹き飛ばしてくれるのでな!」

「黒武士が……? なんで黒武士が貴方の側近に……?」

「それはだ、鏡之朋よ。この黒武士が心情を、心を失ってしまった武人ゆえに予が世話をしているからだ。まさしく心も情けも……感情すら失いかけている。だが! この現政奉還で黒武士は少しずつではあるが己が心情を取り戻しつつある。吾が起こした現政奉還が、少しは黒武士の空虚な心に響いてくれたらしい」

「そ、それじゃ何!? 黒武士の心を取り戻すためだけに、貴方は現政奉還なんて混乱を引き起こしたというの!?」

「それだけではないぞ、朋よ! 誰もが己を開放し、己の野心を曝け出した末に、今生の世は多くの熱気に渦巻いた。誰もが己の野心に、心に正直になれた事でこの熱気溢れる乱世が起きたのだ!」

「その為に平和だった世の中が、仲の良かった人々が争い始めてしまったのよ! 貴方にはそれが解らないの?」

「いや、解っておる! しかし民草が平和な時の中で堕落した日々を過ごすより、己に正直な世界で野心を滾らせる方が面白みを感じぬか、朋よ」

「それでも! ……それでも、皆が築き上げた平和を壊してまで得た熱気なんて……!」

「その平和は正真正銘の平和……真の平和なのか、朋よ」

「え……!」

 足正義輝に突き返され、ミラーガールは言葉を返せなかった。

「其之方たちHEAD、いや聖龍隊が築いた平和は嘘偽りのない本当の平和だったのか? 偽りに満ちていたからこそ、その平和は崩れ去り、聖龍隊とスター・コマンドーが離反した原因にもなったのではないか?」

「そ、それは……」

 帝の進言に返す言葉が見当たらなくなったミラーガールに、Sパルも語り出す。

「私は総監視者として多くの現実を見てきた。しかし誰もが与えられた平和の中で何もせず、悪戯に時間の中で堕落した日々を過ごしている現状しか見られらなかった。ミラーガール、君が、聖龍隊が齎した平和で人間は堕落した生活を過ごしてしまっているんだ」

「だ、だからって、そんな……」

 足正義輝やSパルの言葉に反論できないミラーガールは喉元が詰まる思いだった。

 すると二人の問答にしばらく言い返せなかったミラーガールは、意を決して心中を語った。

「……確かに、私や修司それにみんなで一緒になって導いてきた平和は偽りに満ちている。偽りだらけの世の中になってしまったわ」

「………………………………」「アッコさん……」

 ミラーガールの語りに琴浦春香たち新世代型は黙って聴き入れた。

「それでも私や……いいえ、修司や聖龍隊のみんなは平和を目指した。見えない未来への道を、白紙のページを埋める様に明日を創って来た。みんな誰もが予測できない白紙の未来(さき)を埋める為に奔走していた。それは言えるわ!」

「だが鏡之朋よ、それは其之方や聖龍隊という一部の人間だけではなかったか? 一部の限られた人間しか未来を創らないというのは、実に面白みがないと予は思うのだが」

「確かに。限られた人間、一部の人間だけしか未来を創ろうとしないのは問題だわ。だけど、それを強要せず、共に未来を創っていくという道も少なからずあると私は信じたい」

「共に……か」

「はい。貴方を含む現実(いま)を生きる多くの新世代型二次元人にも言えます。一人一人で未来を創るのは大変かもしれない、けどみんなで協力し合っていけば……よりよい未来が創れると私は信じたい!」

「すなわち共生の道こそ、未来を創生する道だと其之方は思うておるのだな」

 足正義輝からの問いかけに、ミラーガールは力強く返答した。

「ええ! 私と修司、二次元人と三次元人が今でも共生の道を手探りで探し続けてはいるけど……それでも、みんなが共に平和の中で生きて行ける世界が来るのを私は信じて行きたい……!」

「しかし互いの思想の違いだけは放っておけないのではないか朋よ。人とは互いに違う思想を抱く事で衝突し合ってしまう生き物でもあるぞ。予は、そんな人の性を活用して現政奉還を起こしたが、目論見通り人々は互いの意見の食い違いから衝突した……これで共生の道が拓けると思うのか、朋よ」

「……衝突し合いながらも、最後はみんなで笑い合って手に手を取る世界が……次代が来るって信じましょう」

 そういうとミラーガールは帝に対して笑顔を向けた。足正義輝はミラーガールの微笑みを見詰めていると、彼女の鏡の様な綺麗な瞳に己が顔が映し出されているのをハッキリと自負した。

「そうか、その眼……映し出した者の真情を明確に映すその方の鏡の様な眼こそ、吾らが始祖、小田原修司が恋した瞳、か……」

 ミラーガールの鏡の様に透き通った瞳を直視して、帝であらせる足正義輝はその美しさに魅了されると同時に自分達の始祖である小田原修司が何ゆえミラーガールこと加賀美あつこに恋したか納得した。

 ミラーガールの瞳に酔い痴れた足正義輝。だが彼は未だ今生の世に満足はしていなかった。

「だがしかし……鏡之朋よ! 予は未だ満足しておらぬ。人々が未来を欲するその熱気と息吹は……まだ予を、世界を満たしておらぬ! そして予と同じく、未だ空虚な心という器を満たされていない者が此処に……前へ出ろ、黒武士!」

「………………………………」

 足正義輝の号令に黒武士はミラーガールの前へと出た。

「鏡之朋よ、其之方が本当に今生の世を思い、人々を平和で安寧な世に導きたければ……この黒武士の空虚な心を満たすが良い! 其之方の対応次第で黒武士は如何様にも変化するぞ!」

 この足正義輝の提案に、ミラーガールは半ば呆れながらも承諾した。

「ふぅ、やれやれ……これだから武人は呆れちゃうのよ。修司もそうだったけど、男って死線を乗り越えないと満足できない生き物なのよね」

 そういうとミラーガールは、短剣であるミラー・ソードを手に取るとそれを日本刀の形状に変化させる。

「ほほう、それが話に聞いていた其之方の物質を変化させる能力か……ハハッ、素晴らしい! その様な力を余す事なく全て使い切り、仕合え朋よ!」

 足正義輝はミラーガールの能力を大いに褒めちぎり、黒武士との対決を推奨する。ミラーガールも、黒武士を、そして帝を満足させる為に身を構えた。

 未来への共生の道を信じて疑わない聖女ミラーガール。対するは空虚な魂を持つ謎の武人、黒武士。両者の闘いを、見守る新世代型二次元人達も、闘いを見届ける足正義輝とSパルも、黒武士に抵抗したが惜しくも敗れ去ったシバ・カァチェンも、そして帝や黒武士を連行しようと迫りながらも敗れてしまった赤犬/黄猿/藤虎も。皆が挙って聖女と黒武士の決闘を謁見した。

 

 

 

[対決! 黒武士と聖女]

 

 未来を得る為に空虚な魂を満たそうと刃を構えるミラーガール。

 対するは空虚な魂へと成り果ててしまった武人、黒武士。

 

 二人の対決が遂に始まった。

「えいっ」

 まず最初にミラーガールが仕掛ける。だが、その攻撃を黒武士は無言のままひらりとかわしてミラーガールに太刀を振りかざす。

 しかしミラーガールも黒武士からの一太刀を避けて、距離を置く。

「流石に、一筋縄ではいかないようね……」

 以前にタイの都市部で遭遇した際にも目撃した並々ならぬ力量を拝見したミラーガールは、黒武士から簡単に一本取る事は難しいと悟っていた。

 そしてミラーガールと黒武士は互いに刃を交し合って、激しい鍔迫り合いに発展。

 両者共に一歩も引かず、激しい押し合いが続いた。

 が、ミラーガールの方が力負けしてしまい、黒武士に吹き飛ばされてしまう。

「うわっ」

 吹き飛ばされたミラーガールは後方に転倒してしまい、そこに黒武士が漆黒の長刀でミラーガールを突き刺そうと跳びかかってきた。

「ッ!!」

 真上から一気に長刀で突き刺そうとしてきた黒武士の行動に一驚するミラーガールは、咄嗟に身を回転させて黒武士からの一撃を回避する。

 そして真上からの攻撃を回避したミラーガールが体勢を立て直していると、決闘を観戦している新世代型たちが彼女に声をかける。

「ミラーガール! そいつ無口なくせにメチャクチャ強いぞッ!」

「バイオハザード事件だけじゃなく、B.S.Lでの戦いも密かに見ていたらしい!」

 新世代型の燃堂力と黒川令から投げられた言葉を聞きながら、ミラーガールは顔についた土を手で拭い取る。

「まさか! バイオロジック宇宙研究所にまで私達の様子を見にきていた訳!? これじゃSパル以上に監視していたみたいじゃないの」

 ドレフ将校が引き起こした一連の事件の中心だった宇宙研究所にまで足を赴かせて密かに自分達を視ていた黒武士の行動に、ミラーガールは総監視者Sパル並みに厄介だと皮肉交じりの台詞を呟く。

 そんな中、黒武士はミラーガールに向けて今度は突きの姿勢で長刀を構えると、猛進してミラーガールに突撃してきた。

「!」

 ミラーガールは黒武士から繰り出される強烈な突きを、どうにか避けたり盾で防いだりして防御する。

 しかし俊敏で的確な黒武士の突きの攻撃はミラーガールを苦しめ、徐々に彼女を追い詰めていく。

 

 眼前の広間で行われているミラーガールと黒武士の決闘を謁見する足正義輝は、一つの妙案を閃いた。

「そうだ! 折角だし、戦場で戦う者たちにも、この光景をお披露目しよう! 鏡之朋と黒武士が仕合うこの闘いを……!」

 そういうと帝である足正義輝は、所持している巻物状の端末を広げて、何やら操作し始めた。

 すると曇天の中から戦場を覆い被さる程の巨大な物体が現れた。

「な、なにあれ?」

「アレは……モニター画面! それに、スピーカー?」

 曇天を突き抜けて現れた巨大液晶画面とスピーカーに【超獣機神ダンクーガ】の結城沙羅と【コンバトラーⅤ】の南原ちづるは目を疑った。

 帝の操作によって曇天の中に隠れていた巨大モニターとスピーカーに、戦場にいた誰もが愕然と空を見上げているとモニターとスピーカーから映像と音声が同時に放出された。

「えいっ」「………………」

 映像には互いに奮闘するミラーガールと黒武士の決闘の様子が流されていた。

「あ、アッコ!」「アッコさん……!」

 空に掲げられるモニターに映し出されるミラーガールと対局する黒武士の様子を視認して、メタルバードも村田順一も唖然とする。

「アッコの奴……一人で勝手に飛び出して行ったと思いきや、まさか帝の処に出向いちまうとは……」

「でもアッコさんらしいですよ。……僕らとは違い、純粋に平和を望んでいるからこそ、あそこまで単独行動が取れちゃう訳だ」

 互いに激しく戦い合うメタルバードと村田順一も、戦闘中に目に飛び込んできたミラーガールの決闘を観て各々で想いを犇き合わせる。

 

 一方、自分と黒武士の闘いが戦場に公開されている事も露知らないミラーガールは、懸命に黒武士と刃を交えていた。

 しかし黒武士の方が圧倒的に実力の差が大きく、ミラーガールは戦況としては押され気味となり、圧倒されていた。

「はぁ、はぁ……ふぅ、案外強かったのね、貴方」

 以前、バイオハザードに見舞われたタイの都市部で遭遇した時は直接対決しなかったとはいえ、その凄まじい強力に圧倒されてしまうミラーガールは険しい面差しで黒武士を見詰める。

 だが黒武士はミラーガールに対して、何かに取り付かれたかのような激しい執着心と憎悪を滾らせて彼女に襲い続ける。

「ッ!」

 黒武士からの一撃にミラーガールは跳躍して回避するが、代わりに攻撃を受けた床は見事なまでに粉砕された。

「な、なあ、あの黒武士……アッコさんと本気で闘ってないか?」

「本気も本気、本気でアッコちゃんを殺そうとしているみたいだわ……!」

 黒武士の様子を観察して、彼が本気でミラーガールを殺めようと殺気立っている現状である事に新世代型の瀬名アラタと美都玲奈は気付いた。

 しかし本気で殺意を滾らせている事は、ミラーガール自身も気付いていた。

「この黒武士、本気で私を……!」

 すると黒武士はミラーガールに斬撃を連続で放ち、彼女を細切れ並みに斬り付けた。

「ッ!」「ミラーガールっ!」

 黒武士によって全身を細切れに斬り付けられたミラーガールは床に倒れ込み、新世代型の月影ちありが彼女の名を叫ぶ。

 そしてヨロヨロになりながらもミラーガールは立ち上がり、左腕に嵌めているコンパクトを起動させて呪文を唱えた。

「て、テクマクマヤコン……!」

 するとミラーガールの体が蒼く輝き出して、彼女の姿が一変した。

「ヤマトナデシコスタイル!」

 ミラーガールは宇宙で初めて会得した変身フォルムで傷ついた体を再生すると同時に、攻撃力を上げて交戦しようと考えた。

「……宇宙で新たに得た姿、か……」

「あら、やっと喋ってくれたわね。口が利けないのかと思っていたわ。それにしてもタイではもちろん、宇宙でも私達の事を覗き見してたなんて少しデリカシーが無いわよ」

 携えていた日本刀を薙刀に変化させて黒武士と対峙するミラーガールは、前々から覗き見をしている黒武士に異議を唱える。

 と、次の瞬間、黒武士は真っ向からミラーガールの方へと踏み込んだ。ミラーガールは薙刀で黒武士の足元に強風が吹き荒ぶほどの一振りを仕掛けるが、黒武士はこの足元からの攻撃を難なく跳躍して回避すると再び真上からミラーガールの頭部目掛けて長刀を振り下ろした。

 ミラーガールは薙刀を持ち替えて、頭上からの攻撃をどうにか防げた。黒武士の刃と薙刀の柄が火花を散らしながら激しく激突する。

 するとこのままでは勝負がつかないと判断した黒武士は、ミラーガールの顔面を蹴り飛ばしてお互いに距離を置かせた。

「ぐっ!」

「アッコさん!」「酷いわ、乙女の顔を蹴り飛ばすだなんて」

 黒武士に顔面を蹴り飛ばされ吹き飛ばされるミラーガールを見て、純真な乙女の顔を蹴り付けた黒武士の行為に新世代型の彩瀬なるや蓮城寺べるはいきり立った。

 その一方でミラーガールの顔を蹴り飛ばしてまで距離を置いた黒武士は、再度改めて長刀を身構えるとミラーガール臨戦態勢を向ける。

 

 完全に黒武士にとって一方的な状況下での中、ミラーガールは勝利への糸口を探していた。

 一方の帝、足正義輝はミラーガールと黒武士の決闘を目の前にしながら、少しばかり飽き始めていた。

「ふ~~む、どうやら戦局は動かないらしいと見えた。このままではどうにも面白みが無い。やはり聖女は誰かを、他の戦士を手助けする役回りの方が輝きを見出してくれるのであろうか」

 帝は先ほどから余り変化が見られないミラーガールと黒武士の闘いを見て、面白みが足りないと愚痴を呟いていた。

 そんな危機的状況下の中、新世代型たちは一度自分達を負かした黒武士と戦う勇気が無く、Sパルと足正義輝は傍観に徹していた。だが一人だけ、聖女の傍らで密かに戦意が湧き上がっていく者がいた。

 

 

 

[共闘する事で]

 

 目にも止まらぬ俊敏な抜刀術で長刀を自在に操る黒武士の猛攻に、ミラーガールは苦戦を強いられていた。

 黒武士が放つ連続の居合い抜きからなる斬撃攻撃はミラーガールを苦しめ、次第に彼女を追い詰めていった。

 既に足正義輝連行の為に駆けつけて来た国連軍の赤犬/黄猿/藤虎は黒武士により返り討ちに遭い戦闘不能に。

 この危機的状況下の中で、一人傷付くミラーガールの許に歩み寄る者がいた。

「か、カァチェン! 貴方、そんなボロボロで大丈夫なの?」

 歩み寄ってきた青年は、聖龍隊側に就いた台湾軍国将軍シバ・カァチェンであった。

 カァチェンは満身創痍という訳では無かったが、黒武士に対しての恐怖心で身が縮み込んでいた。

 それでもカァチェンはミラーガールに歩み寄り、声をかける。

「わ、私の心配などしてる暇なぞ有りませんよ、ミラーガール……あの黒武士は強い。こんな欠落した心を持つ私でも、それは然りと解ります」

「うん、そうね……生半可な相手じゃないってのは、私も重々理解しているわ」

 カァチェンとミラーガールはお互いに立ち並んで長刀を携える黒武士と対峙する。

 立ち並んでミラーガールとカァチェンは言葉を交えた。

「カァチェン、あなた本当に大丈夫? 少し震えているわよ」

「もう十分休みました故。それに、このからだの震えも抑えて見せましょうぞ」

「意気込みは十分。だけど、無理はしないでね。私もまだまだ戦えるんだから、貴方にばかり無理はさせないわ」

「そのお気遣い、誠に有難うございます。聖女殿……」

 ミラーガールの気遣いに、カァチェンは心より感謝の意を述べた。

 そんな二人の会話を聞いて、足正義輝は二人一組になったミラーガールたちに言伝した。

「鏡之朋よ、そして始之朋よ! 双方、互いに協力し合って黒武士と相対せよ!」

 帝の許しを得て、黒武士は長刀に手を置いて抜刀の構えを取るのに対し、ミラーガールは渋々ながら帝の道楽に付き合い、カァチェンは弱い己を変えたいが為に向かい合った。

 

 相対する黒武士は、まずゆっくりゆっくりと少しずつ摺り足で歩み寄り、ミラーガールとカァチェンに抜刀と同時に踏み込む体制に入る。

 ミラーガールはミラー・シールドを前方に構えて防御の姿勢に、カァチェンは逆刃薙(さかばなぎ)を握り締めて黒武士と相対する。

 そして次の瞬間、黒武士は前方へと強く踏み込んでミラーガールとカァチェン二人に斬り込んだ。目にも止まらぬ抜刀術での連続斬りをミラーガールは盾で防ぎ切ると、同時にカァチェンに攻撃の指示をする。

 指示を受けたカァチェンは黒武士に向けて鎌鼬の刃を発射して攻撃。黒武士はその風の刃を全て漆黒の長刀で受け止め、防いでみせるとお次は俊足な動きで接近してカァチェンに斬り込む。

「!」

 無言の圧力で斬り込んできた黒武士の斬撃にカァチェンは一瞬動揺するが、その隙をミラーガールが盾で防いでカァチェンを死守する。

「カァチェン、やっぱりまだ戦うのは……」

「だ、大丈夫です! 私は強く、畏れられる存在になりたい……!」

 未だ身震いが納まらず、上手く戦えないカァチェンを気にかけミラーガールが声をかけるが、カァチェンは憧れる自分に昇格したい一心で無理をしていた。

 憧れる自分になりたい。その一心でカァチェンは黒武士への恐怖心を抑え込み、黒武士へと斬りかかって行く。

 しかしカァチェンが振るう逆刃薙(さかばなぎ)を黒武士は長刀で全て受け止め防ぎ切り、カァチェンの攻撃を全て無力化してしまう。

 此処でカァチェンは多少焦ってしまい、我武者羅に黒武士に逆刃薙(さかばなぎ)を振るい続けてしまった。

「カァチェン、無茶はしないで!」

 傍らのミラーガールが声をかけるものの、目の前の黒武士に頭の中が一杯になってしまってたカァチェンの耳には彼女の声は届かなかった。

「まだだ……まだ私は、諦めきれない……!」

 憧れる自分の姿を夢見て、カァチェンは必死に懸命に我武者羅に逆刃薙(さかばなぎ)を振るった。だがその全ての刃は黒武士に届く事は無かった。

「何故だ……何故、私の刃は届かない……! 何故、私の想いは叶わないんだ……!」

 次第に苛立ちが募って来たカァチェン。そんな彼に黒武士は急接近し、カァチェンの逆刃薙(さかばなぎ)を弾き返して痛烈な一撃をお見舞いした。

「うぐっ……!」「か、カァチェン!」

 痛烈な一撃を喰らったカァチェンを見て、戦いを見守っている新世代型の幸平創真たちは動揺の色を隠せなかった。

 そして黒武士は無情にも痛烈な痛手を負ったカァチェンにトドメの一撃を浴びせようと刃を掲げた。

「か、カァチェン!」「!」

 新世代型の瀬名アラタが声をかけるが、カァチェンは黒武士のトドメの攻撃に気付くのが僅かに遅く、黒武士はそのままカァチェンに一太刀浴びせようとした。

 が、その瞬間、カァチェンに振り下ろされる黒武士の刃が防がれた。カァチェンが目を見開いてみると、自分と黒武士の間にミラーガールが割り込んで、黒武士の刃を盾で受け止めていた。

「せ、聖女……!」

 驚くカァチェンに、ミラーガールは更に驚かす言葉をかけた。

「カァチェン、一人で突っ込むのは危険よ……あなた一人で戦っている訳じゃないんだから」

 ミラーガールのこの言葉にカァチェンは衝撃を受けた。そう自分は一人だけで戦っている訳ではないのだ。その事実を思い返され、カァチェンは非常に今まで焦っていた自分自身に憤りを感じた。

 そんなカァチェンの想いを知ってか知らずか、ミラーガールはカァチェンの目前にミラー・シールドを床に差し置く形で置いて、再び日本刀の形状に変化させたミラー・ソードで黒武士と闘い始めた。

「カァチェンはしばらく休んでいて! その盾は持ち主の傷を回復させる機能も兼ね備えているから、休んでいる間に少しでも傷を癒して!」

 ミラーガールは自身の装備品の一つミラー・シールドの機能を説明しながらカァチェンに休むよう指示を出して単身黒武士に挑んでいった。

「ああ、聖女……貴女だけでも危険です。どうか、どうか……私もご一緒させてください……!」

 しかしカァチェンは自分だけが取り残された虚無感に苛まれて、ミラーガールに最後まで共闘させてほしいと嘆願する。

 一方でミラーガールと黒武士は再び激しい剣劇を仕合っていた。

 だが戦況は相変わらず黒武士が優勢であり、ミラーガールは押し切られていた。

 

 そんなミラーガールとシバ・カァチェンの共闘を、戦場を覆う曇天から現れた巨大モニターとスピーカーを通して、戦場の者たちは各々の戦闘をすっかり忘れて見入ってしまっていた。

「み、ミラーガールも中々やるな……」

「ええ、普段は戦う姿なぞ全く見せませんからね、彼女は」

 互いに激しく仕合っていた黒崎一護と朽木白哉は、普段は戦闘など全くしないミラーガールの実力を垣間見た。

「す、凄いのだ、ミラーガール殿……それに、あのカァチェンなる若者も中々のものぞ!」

 戦場に魔物の軍隊を率いて出撃しているガッシュ・ベルも、黒武士と対峙する二人の戦いぶりを称賛する。

「あの黒武士……何処か悲しげな、哀愁ただよう憎悪が感じられる」

 一方でミラーガールとカァチェンと対峙する黒武士の戦いぶりを見て、デビルマンは彼から感じられる哀しげな憎悪に気付いた。

 

 その頃の戦場では。

 長年の戦いの情景で完全に両目を失ってしまった盲目の戦士、キューティーハニーが夫、早見青児が日本刀を武器に戦場を駆け巡っていた。

 何とか気配だけで敵か味方かを選別する青児は、僅かな殺気にも俊敏に反応する。

 するとそんな青児が感じ取った気配の中に、憶えのある気配が三つほど、弱々しく戦場を移動しているのを青児は察した。

 青児は重傷を負っているのかと思い、俊足で三人の元へと駆け付ける。

 そして青児が駆けつけた現場では、満身創痍の木之本桃矢/月野進悟/森谷賞の姿があった。

「お前達は……全員、無事のようだな」

 早見青児は気配で聖頭親族の三人が無事な事に気付いた。

「え、ええ、こっちもどうにか生き残れています……」

「しっかし、ジュンさんがまさか聖龍隊を完全に二分割するだなんて、思ってもみなかった」

「賞、進悟、これが戦争というものだ。二年前とは違い、今度は仲間同士で争い合っているがな……」

 聖龍HEADが親族が一人、木之元桃矢が言う台詞に、同じ親族である月野進悟と森谷賞は悲愴な面持ちを俯かせる。

 

 ちょうど同じころ、互いに激しく衝突し合っていた聖龍HEADとスター・コマンドーも曇天から突き出る巨大画面で確認できるミラーガールたちと黒武士の戦いを観戦するため空を見上げていた。

「……アッコ……」「アッコさん……」

 メタルバードと村田順一は激しく黒武士と戦い合うミラーガールたちの姿を見て、表情を険しくさせる。

「アッコちゃん……」

「アッコちゃんだけじゃないわ。カァチェンも、必死になって自分を変えようと黒武士と戦ってるわ……」

 ミラーガール/カァチェン/黒武士の戦いを見上げて、セーラームーンとセーラーマーズは物思いに耽る。

「アッコさんは争い合ってしまった私たちに代わって、帝に思いを伝える為にきっと一人で向かっていったのね」

「アタイたち、どうも自分勝手にただ争い合っちまったみたいだな……」

 懸命に戦い抜くミラーガールを見て、スター・コマンドーの三宮紫穂と明石薫は自分達の身勝手さを痛感する。

「で、でもこのままじゃ、アッコさんもカァチェンさんも黒武士にやられてしまいます……!」

「そうね。あの黒武士、只の武人って訳でも無さそうですし……」

 得体の知れない黒武士の実力を認識して、スター・コマンドーの白浜兼一と風林寺美羽も警鐘を口に出す。

「このままじゃ、二人とも黒武士に殺されちゃうわ……!」

「特にアッコさん、ミラーガールは危ないわ! 黒武士がミラーガールに攻撃を集中しているのが見ているだけでも解るもの!」

 セーラーマーキュリーとナースエンジェルは黒武士がミラーガールを目の敵にしている事実を皆に告げる。

 この仲間達の警鐘を聞いて、メタルバードと村田順一は悩みに悩んだ。自分達のこれからの行動に。

 

 

 

[吟芽(ぎんが)]

 

 必死に共闘して黒武士を倒そうとするミラーガールとシバ・カァチェン。しかし黒武士の実力は未知数であり、完全にミラーガールとカァチェンを押し切っていた。

「っ!」「!」

 懸命に戦う二人だったが、黒武士は二人を難なく長刀による抜刀術で吹き飛ばし、二人をけん制する。

「こ、このままじゃやられちゃう……!」

「はぁ、しかし……今この場で戦えるのは私とミラーガールしかおりません」

 抜刀術で吹き飛ばされたミラーガールとカァチェンは完全に追い詰められ、苦戦を敷かれていた。

 だがしかし、黒武士は情け容赦なくミラーガールとカァチェン、特にミラーガールを集中して追撃して来る。

「きゃあっ」

 黒武士の追撃がミラーガールに連続で直撃。カァチェンも新世代型たちも見守る事しかできなかった。

 その反面、戦いを見届けている剣帝足正義輝と総監視者Sパルは冷静な表情でその情景を眺めていた。

 追い詰められ、黒武士に迫られるミラーガールは、思い切って黒武士に問うた。

「ね、ねぇ、聞かせて……あなたは何故、戦うの? 何のために……」

 しかし黒武士は無言でミラーガールに歩み寄り、彼女に一太刀浴びせて命を奪い取ろうとする。

「や、やめろ……!」

 シバ・カァチェンが満身創痍で床を這いつくばりながら黒武士に言う。が、黒武士はその歩みを止めようとはしなかった。

 と、ここで思わず新世代型二次元人たちが黒武士を制止しようと飛び出そうとするが、その行為を帝が無言で制止する。

 そして黒武士が壁に寄りかかり、満身創痍に至ったミラーガールに最後の一撃をお見舞いしようと刃を振り上げた。

「……散れ、偽りの希望」

 黒武士はぽつりと呟き終ると同時に、振り上げた刃を一気に降ろそうとした。

 と、その時。

 黒武士の兜に何か硬いものが投げ付けられ、黒武士の動きが止まった。

 黒武士が何かと振り向くと、そこには意外な人物達が二人そろって参上していた。

「あ、アレは……!」「まさか……!」

 その二人を目撃した新世代型二次元人たちは目を見開いて一驚した。

 その二人とは。聖龍隊を総べる総隊長、バーンズ・ウィングダムズ・キングズことメタルバードと、スター・コマンドーを率いて新時代を切り開こうと奮闘する村田順一の二名だった。

 メタルバードと順一は、二人そろって剣帝、足正義輝の許へと参ったのだ。

「ば、バーンズ……!」「順一さん!」

 対峙してしまっていた二人が何ゆえ揃ったか定かではないが、二人の登場に新世代型の真鍋義久と琴浦春香は喜々とした表情を見せる。

 二人は険しい面差しで足正義輝と向き合った。

「おお、聖龍隊を束ねたる総長である風神之朋。そして流星の如く燃え尽きるまで猛進し続ける絆之朋。二人そろっての登場とは、如何なる心境の変化か?」

 メタルバードを風神、順一を絆之朋と称する足正義輝を前に、まず初めにメタルバードが帝に問い掛ける。

「天ってのは、アンタの事か」「ふむ、そうなるかな。風神之朋よ」

 メタルバードの問いかけに、帝は真顔で真剣に答え返す。すると次に絆之朋こと村田順一が帝に申し上げた。

「初めまして、剣帝 足正義輝公殿! 某、村田順一! 恥ずかしながら此処に、聖龍隊総長と共に参りました次第!」

「ハハッ、そう硬くなるな絆之朋よ。もっと大らかに予と接してくれたまえ」

 若干硬い口調の順一に、帝はリラックスして接するよう順一に言い渡す。

 そして足正義輝は改めて二人に問い質した。

「……して、其之方達は如何なる心境の変化で、二人そろってこの場に馳せ参じたのかな? 予との対面を願って、お互い凌ぎを削り合って激しくぶつかっていたではないか!」

「まあ、それは、なんだ……ある女に気付かされたんだ。仲間内で喧嘩しているほど、状況は生易しいものじゃなくなっているってよ」

「僕も、恥ずかしながら気付かされました。今は師弟として、好敵手として戦い合う暇があるなら……未来への縮図、そう、新たな世代の若者達を救済する事の方が大事なのだと」

 足正義輝の質問に、メタルバードと順一は答えると、二人は揃って新世代型二次元人たちの方に目を向けた。

 この二人の言動に、足正義輝は敏感に二人の心境を見通した。

「フハハハッ、成程な。其之方らはすなわち、鏡之朋の働きを見て予の許へ訪ね仕ったという訳か!」

「……そうなるかな。帝よ、自分と同じ新世代型まで戦に巻き込んで何を企んでいやがる」

「剣帝よ……次代を待ち望む貴方が、何ゆえ世界を直接破壊してきた黒武士に手を貸している訳ですか?」

 凛然とする足正義輝に対し、メタルバードと村田順一は険しい面差しで帝に問い質した。

 すると足正義輝は口元を笑ませて二人の疑問に答え申した。

「吾ら新世代型はその名の通り、次なる時代を築く為に生み出されし鬼神小田原修司の申し子! 混沌たる世が行きつく先を見届ける義務がある! この黒武士も同じである……混沌たる世界に哀しみしか感じられない、この黒武士は混乱と破壊しか齎さなくなった。予は世界の武人から伝わる熱気を黒武士に伝え、この朋を満たしてやりたいのだ! そう、かつて其之方らが吾らが始祖、小田原修司より導かれたのと同じく……予はこの黒武士を再び導きたいのだ! この混沌たる世を治める為に生み出された者として……そして新世代に新たなる熱気を伝える忌まわしい鬼の子供の一人として、空虚な器に成り果てた黒武士を力強く導かせたいのだ!」

 新世代型として、混沌たる世界を治める国連総長として、何よりも多くの二次元人たちを導いた鬼神小田原修司の申し子として、混沌の世界が行きつく先を見届け、更には黒武士を導かせたい道理であると述べる足正義輝の言葉に、つい先刻まで気絶していた国連軍元帥赤犬が口を開いた。

「世の中を混乱にしているのは……貴様ら、破滅の血筋を受け継いだ新世代型が問題じゃろうに……!」

「赤犬!」「!」

 突然の赤犬の発言にメタルバードも村田順一も驚き動揺するが、赤犬は黄猿と藤虎と共に立ち上がっては帝に物申した。

「修司の血は……奴の血には世界を破滅に導く「破滅の化身メシア」の血脈も脈々と受け継がれておる。修司の血を受け継いだ新世代型二次元人、貴様らには世界を破滅に導く可能性があるんじゃ! わしら国連軍は、その可能性を持つ新世代型二次元人を今まで危険視し、可能な限り監視しておった……」

 赤犬の説明を聞いて、帝やSパル以外の新世代型達は悲しくなった。

 すると、この赤犬の議論にミラーガールが反論した。

「それは違うわ赤犬! 新世代型の二次元人には無限の可能性が秘められているの! その可能性を危険とか、そんな偏った考えで摘んじゃいけないの!」

「なにを言うとんじゃボケェ! 危険な可能性を放っておく事の方が悪じゃ! わしは世界に破滅を齎すかもしれんメシアじゃった修司のクローンっちゅう新世代型の生産続行を前々から三次元政府に対して反対しとったんじゃ!」

 このミラーガールと赤犬の論議を前に、足正義輝はしばし考え込んだ。

「うむ、吾ら新世代型には確かに小田原修司の血筋を受け継いでいる。故に、世界を滅ぼそうとしてしまった破滅の化身メシアたる小田原修司の血筋を受け継いでいる事かもしれん」

「そ、そんな……!」

「それじゃ、私たちは一体なんのために生まれてきたの……」

 赤犬の話を聞いて少しながら彼の意見に賛同する足正義輝の発言に、同じ新世代型のキャサリン・ルースや森谷ヒヨリらは悲愴感に苛まれる。

 そして赤犬たちの話を全て聞き入れた足正義輝は目前にいる全ての武人達に告げた。

「話を戻そうではないか、朋らよ。先ほども申した様に、予は空虚な魂に成り果ててしまったこの黒武士の心を少しでも満たしてやりたいと思ってる。故に、世界の名立たる武人達を一堂に集めさせてこの創世の地で戦わせたのだ」

「要するに、帝よ……この戦も全てはあんさんの道楽っちゅう訳ですな」

 足正義輝の話を聴いて、大将藤虎は表情を強張らせる。

「ハハッ、そうなってしまうかな、重力之朋よ。……して、其之方達は黒武士に対して如何なる処断をしたいのだ?」

「無論、決まっちょる! 剣帝よ、お前も黒武士も世間を騒がせた罪人に違いない……よって、わしら国連軍によって裁かれるのが筋っちゅうもんじゃわい!」

「そうか、そうなってしまうか……だが予や黒武士を補導させる前に、この黒武士そのものを打ち負かす事はできるか? 灼熱之朋よ」

「其処まで言うのなら……手始めに、その黒武士を正義の名の元、跡形も無くしちゃるわい……!」

 足正義輝からの提案に赤犬は乗ってしまう。

「では其之方達にも引き続き、この黒武士と一戦仕会おうてもらおうか。予はまず、この黒武士の空虚なる器が満たされた処を拝見したい」

「なんだそりゃ? 黒武士を満足させたら、次はアンタとやり合っても良いのかよ」

 メタルバードが足正義輝に訊き返すと、帝は真剣な顔付きで答えた。

「うむ、そうだな。予を天とするならば、この黒武士は其之方たちと予の間を阻む曇天といった感じの武人かな?」

 この足正義輝の言い分に、村田順一が問い返す。

「曇天である黒武士を突き抜けなければ、天である貴方には到底辿り着けないという事なのですね?」

「む! その通りぞ、絆之朋よ!」

 帝であらせる足正義輝の一言に、その場の武人は皆揃って黒武士に視線を送る。

 視線を送られた黒武士は、彼らの闘志や戦意を察知してか長刀に手を差し伸べる。

 こうして帝の妙案により、駆けつけて来たメタルバードや村田順一を含み、最初に黒武士に敗れてしまった元帥赤犬と大将である黄猿と藤虎、そして今まで二人がかりで黒武士に抗戦していたミラーガールとシバ・カァチェン。計七人の武人が黒武士に一斉に攻撃した。

 

 足正義輝は次なる時代を創ろうとする若き芽吹きを吟味するが為に。

 彼らはまるで銀河の中央で仕合う様に戦い始めた。

 

 

 

[爆撃から目覚めた破壊]

 

 剣帝・足正義輝の計らいにより、一人を相手に七人がかりで戦い合わなければならなくなった面々。

 メタルバード/村田順一/ミラーガール/シバ・カァチェン/赤犬/黄猿/藤虎の七人は、黒武士を相手に仕合を展開する。

 その激しい戦火を間近で謁見する足正義輝と総監視者Sパル、そして新世代型二次元人たち。

 更に戦場で突如、曇天を突き破って出現したモニターから戦いを見届ける戦場の隊士や兵士たち。

 誰もが対黒武士との戦いを見て、鼓動が脈打つ興奮を覚えている中、帝自身もさめ上がらぬ興奮に感化していた。

 

「感じるぞ……天下を吹き荒ぶ欲望の熱気! だが、未だだ……これでは、未だ届かぬ……!」

 

 戦況に流れる人の熱気に嬉々とする足正義輝。だが、それでも己の心と黒武士の空虚な魂を響かせるには程遠いと驚嘆する。

 帝が目前の戦況に感情が昂っている中、実際に黒武士と戦い合っている者達は苦戦を強いられていた。

「ッ、オイオイ、何なんだよ、この黒武士は……!? 攻撃が全て避けられるか弾かれるしかねぇじゃん」

「赤犬たちやミラーガール達と戦って随分時間が経っている筈なのに、体力が消耗している気配すらない」

 黒武士と対立する直前まで対峙していたメタルバードと村田順一は、黒武士を相手に現状打破の精神で一致団結して共闘するが、黒武士の回避能力と体力の消耗の無さに動揺されるばかり。

「おい、こらカァチェンしっかりせんか! お前さん、それでも国将軍じゃろうが!」

「め、面目ありませぬ。赤犬元帥……」

「ちょっと赤犬! カァチェンは今はもう国連軍側じゃなく、私たち聖龍隊の仲間なのよ! 頭ごなしに怒鳴らないでちょうだい」

 赤犬から檄を飛ばされ縮み込むカァチェンを目の当たりにして、ミラーガールが赤犬に文句を言う。

 と、ここで黄猿が黒武士に向けて光線を発射しようと指を向ける。それに便乗してメタルバードも右腕を砲口に変形させて黄猿共々、黒武士に向けて光線を発射。黒武士は光線を長刀で弾き返しながらも威力の高さに思わず体勢を崩してしまった。

 其処に今度はミラーガールとカァチェンの二人が黒武士に急接近して、怯んだ黒武士を徹底的に連続で斬りつける。

 二人が斬り込んだ次の瞬間には、藤虎が己の能力で浮かせた岩石を黒武士に叩き付ける。藤虎の攻撃が直撃したのを確認して、地上から村田順一が地面に拳を打ち込んで光の筋を黒武士に向けて打ち放つと同時に、黒武士の真上から赤犬が肥大化させた溶岩の右腕で黒武士を掴んで跡形も失くす勢いで燃やし尽くした。

 赤犬の溶岩で、ようやく決着がついたと思われたその矢先。赤犬が黒武士を握り締めている溶岩の手がバッサリと縦に切り裂かれ、その切れ目の中から無傷の黒武士がぬっと歩み出てきた。

「う、ウソだろ!? ここまでやっておいて、傷一つ付いていないのかよ!?」

「むぅ……! やはり新世代型、此処までバケモン染みているとは……」

「それ、溶岩に変化できる貴方が言える柄かしら?」

 斬撃や溶岩でも傷一つ付かない黒武士の耐久性を前にして愕然とするメタルバード同様、赤犬も愕然とするがミラーガールに一言言われてしまう。

 

 と、七人が懸命になって黒武士と相対しているその時。赤犬が所持していた携帯が鳴り響いた。

「ん、なんじゃこげな時に……」

 赤犬は渋々ながら携帯に出た。

「おい、赤犬! こんな時に電話か。マナーモードぐらいにはしておけっ」

「うっさいわい! わしだって出たくて出てる訳じゃなかあ! 上層部からの電話じゃけい」

 メタルバードに難癖を付けられてしまう赤犬だが、上層部からの電話という事で渋々出た事を赤犬は怒鳴り散らしながら語る。

 そして電話に出た赤犬は、周りが黒武士と死闘を展開している中で通話を初めた。

「ほい、わしじゃ、赤犬。なにか用か…………なに? なんじゃと? ……それは本気か!? まだわしらが居るっちゅうのにか!!」

 通話している赤犬は突然、興奮し出した。皆が黒武士と戦いながら何事かと赤犬に意識を向けていると、一人黒武士との対戦から抜けた黄猿が赤犬に訊ねた。

「赤犬ぅ、なぁにがあったんだい? 上はなんて言ったんだい?」

 すると赤犬は険しい強面で黄猿に答えた。

「……上層部は、これ以上危険な新世代型二次元人を野放しにしておく訳にはいかんと決議したらしい……」

「ふむふむ、それはわっしらも同じだからねぇ。……それで、どうしたの?」

「上層部め、わしらが黒武士に手を拱いているからって、対戦略爆撃機でこの地に爆弾を落とす算段らしい」

「え! でも戦場にはまだ国連軍の兵士もいるし……何より、わっしらまで爆撃に巻き込む訳?」

「上はそうしてでも新世代型を消したいらしい……わしらごと爆弾で戦場ごと吹き飛ばすつもりらしいわい!」

 この赤犬と黄猿の対話を聞いて、黒武士と戦っていた者達は全員手を止めた。すると黒武士も自然と動きを止めて立ち尽くす。

「ちょっと待ってくれよオイ! 爆撃って、聖龍隊とスター・コマンドーの戦場だけでなく、荒野側にこの拠点も含まれているのか!?」

「そんな! 新世代型には罪はないのに……どうして!」

「恐らくは多くの武人が一堂に集まったこの戦場を丸ごと消して、全ての問題を一発で解決しようという魂胆なのでしょう」

「か、カァチェンそんな憶測止めて! 赤犬、なんとか爆撃を止められないの? 新世代型だけでなく、私や貴方までも爆撃に巻き込まれるのよ!」

「そ、そう言われてものう……上が決めた事をわしらが中断させられる訳ないじゃろ」

 混乱するメタルバードに、新世代型に罪はないと説く順一、カァチェンの憶測を制止しながらも赤犬に爆撃停止を願い出るミラーガール。しかし赤犬は上層部からの決定事項を自分達が変更できる訳はないと簡単にミラーガールをあしらう始末。

 するとモニター越しに、この情報を聞いた戦場の隊士や兵士達が戸惑っている中、曇天の彼方から明星が如き輝く物体が接近してきた。

 目を凝らしてよく観てみれば、それは無数の爆弾を搭載して飛行する無人爆撃機だった。

 次第に戦況に近付いてくる無人爆撃機を視認して、聖龍隊側もスター・コマンドー側の軍勢も大いに困惑した。

「大変だぞ! このままじゃ空爆でおれっちらは消されちまう!」

「何とかできぬのか、なんとか……!」

 困惑する隊士と兵士が入り乱れて混乱する中、聖龍隊の新人であるキリトが自分たちの上官ミラールに問い掛けた。

「な、なあミラール! あんたのミラージュ・ガンをスナイパーライフルに変化させて、あの無人爆撃機を打ち抜けないか……」

「バカ言ってんじゃないわよ!」「!」

「……私たち二次元人が勝手に、三次元側の物を破壊すれば、それこそ異常者(ヒール)の表れ。迂闊に手出しできないわ」

「そ、そんな! それじゃ、一体どうすれば……」

 アスナの悲痛な訴えに、ミラールは空を見上げて如何なる行動を取るのが最善か考え始めた。

 地上の皆々がそうこうしている内に、無人爆撃機は戦場真上に到達。爆撃の態勢に突入した。

「だ、駄目だ! 総員、避難しろ!」

 メタルバードが通信機で戦場にいる全ての隊士達に避難命令を出すが、果たして間に合うのだろうか。

 

 するとその時、避難命令を出したメタルバード達と対峙していた黒武士に変化が。

 黒武士は目を赤く光らせ、禍々しいオーラを放ち始めたのだ。

 突然の黒武士の変化に、周りの誰もが一驚した。

 そして次の瞬間、黒武士は突然駆け出すと荒廃した宮の外に飛び出し、そのまま外に飛び出すと同時に尋常でない程の跳躍力で跳び上がり、上空の無人爆撃機に突っ込んでいった。

 メタルバードたち黒武士と対峙していた者たち、彼らの戦いを見守っていた新世代型たち、そして地上の多くの命が黒武士の突然の行動に驚愕。

 一方の黒武士は無人爆撃機に飛び乗って長刀を突き刺すと、そのまま頭部から後方部にかけて切り裂いた。

 黒武士によって切り裂かれた無人爆撃機は裂かれた個所から火を噴いて、そのまま飛行不能に陥ると地上に落下、墜落してしまった。

 無人爆撃機を撃墜した黒武士はというと、戦場のど真ん中に着地。着地地点の大地を陥没させるほどの衝撃を帯びて地上に着地した。

 そんな地上に着地した黒武士の物々しい雰囲気に呑み込まれそうになる戦場の隊士や兵士たち。

 すると聖龍隊の隊士が一人、黒崎一護が黒武士の許に駆け寄っては声をかけようとした。

「な、なあ、あんた……」と、黒崎一護が声をかけようとした、その瞬間。

 スパッという音と光が一瞬を過ぎったと認識された次の瞬間、なんと声をかけようとした黒崎一護が左肩にかけて胴体を斜め下に向けて斬り付けられたのだ。

「い、一護!」

 血を噴き出して倒れる一護を見て、仲間達が声を上げる。

 そして一護を斬ったのは、他でもない抜刀術に長けている黒武士本人であった。

 黒武士はその瞳に夥しい程の憎悪を滾らせて、周囲にいる合戦していた隊士や兵士達を前触れもなく斬り付け出した。

「うわあっ」「な、何なんだよ急に……って、うぎゃあ」

 突然の黒武士の長刀での斬り付け行為に戦場の隊士や兵士たちは逃げ惑い始めた。

「ど、どうなっているんだ!? なぜ黒武士は突然この様な真似を……」

 爆撃機撃墜から地上への着地に至るまで全て遠視していた村田順一は、突然の黒武士の凶行に愕然とした。

 すると、そんな黒武士の凶行を同じく目撃した帝、足正義輝は眼前の皆々に語り始めた。

「うむ、よもや……此度の聖龍隊とスター・コマンドーとの戦に加え、其之方達との戦いで黒武士の中の心意に何かしらの影響があったのかもしれん」

「つ、つまり……! 私達の戦争や、私達との仕合が黒武士を凶行に走らせた訳!?」

「フンッ、これじゃから新世代型は信用ならん……」

 足正義輝の話を聞いて、ミラーガールは一驚し、赤犬は新世代型を信用できんと愚痴を零す。

 しかし明確な理由も解らないまま、黒武士は周辺の兵士や隊士に襲い掛かっていった。

 その頃、メタルバードと村田順一以外の聖龍HEADとスター・コマンドーは自分達の主将の許へと駆け付けていた。

「バーンズ、いったい黒武士はどうなっちゃったの!?」

「ひ、光、それがオレ達にもどういう事か訳が分からなくって……っ」

「ジュン! 黒武士が突然暴れ出しているぞ!」

「良守、どうやら黒武士の心境に何らかの変化が現れたみたいなんだ……!」

 駆け付けてきた仲間の獅堂光や墨村良守に、メタルバードと順一が答える。

 その間も、黒武士は無双の如く周辺の者たちを次々に抜刀しては斬りかかるばかり。

 この惨状を目撃して動揺するメタルバードに、村田順一が申し出た。

「総長! ここは敵味方関係なく、共闘してでも黒武士を抑え込まなければ! どうか今一度、僕らの軍と協力してくれませんか……黒武士の実力は、お互い対峙した時に理解できた筈。共に黒武士を抑えなければ戦況は更に悲惨な事に……!」

「そ、そうだなジュン……聖龍隊! スター・コマンドーの軍勢と協力して、黒武士の無双を止めろ!!」

 順一からの指摘を受けて、動揺してたメタルバードは順一の申し出を受け入れてスター・コマンドーの軍勢と聖龍隊を共闘させ、黒武士の凶行を阻止しようと動いた。

 この様子を間近で見て、国連軍元帥赤犬は呆れ返っていた。

「フン、さっきまで仲たがいしておったちゅうに……それを黒武士を前に共闘するとは呆れてしまうわい。何よりバーンズの采配の無さには程ほど呆れるわい」

 村田順一から指摘を受けてから指示を出したメタルバードの采配振りに、赤犬は彼の将としての経験不足に呆れてしまう。

 

 小田原修司からまだ聖龍隊総長の座を譲り受けたばかりのバーンズことメタルバードには、未だ大軍を指揮する程の采配は備わっていなかった。

 そんな状況下で、聖龍隊の軍勢とスター・コマンドーの軍勢は突如として凶行に走った黒武士の暴走を制止しようと志した。

 

 

[小田原修司の畏怖]

 

 突如として凶行に走った黒武士の猛威を押さえるべく、聖龍隊総長とスター・コマンドーの総部隊長から指示を受けた軍勢は一致団結する。

 しかし手当たり次第に斬りかかる黒武士の凶行を押さえる事は草々簡単ではなかった。

 名立たる二次元キャラクターの高威力の技を浴びても受けても、黒武士の甲冑には傷一つ付ける事はできず、キャラクター達は黒武士に苦戦を敷かれていた。

 そんな戦況を頂である帝の拠点で傍観している国連軍元帥赤犬は、強面の形相で言った。

「フン、さっきまでいさかい合っていた連中が簡単に連携できる訳がなかぁ。このままではいづれ、黒武士に全滅させられちまうわい」

「言ってくれるな、赤犬……! 確かに、オレたち聖龍隊とスター・コマンドーは争い合っていたが、徒党を組めばどんな敵も一触即発……だと思う」

「って、バーンズ。そんな自信なさげに言わないでよ……」

 威勢よく赤犬に反論するも、最後は自信を損失している言動を取るメタルバードにミラーガールが鋭く指摘する。

 すると黒武士と大軍勢が激突する戦況を眺めていた大将黄猿が上官であり同期の赤犬に話した。

「だけどね赤犬、あの凶行を働く黒武士を放っておくのはどうかと思うよぉ。実際に世界各地に出没しては、破壊活動をしていた輩だし、ここは国連軍として何か動かなきゃならないんじゃないのかな~~?」

「ううむ、聖龍隊の連中を助けるのは癪じゃが……仕方ない」

 黄猿から指摘され、赤犬は命令を告げた。

「国連軍! 聖龍隊に進撃する黒武士を打ち倒せッ!」

 赤犬からの命令を受けて、国連軍も黒武士に向かって進軍を開始した。

 一方の黒武士は、まるで憎悪をぶつけるかの如く聖龍隊を攻めていた。

「聖龍隊! ここが踏ん張り時よッ! 黒武士に総攻撃!!」

 聖龍隊特攻決死隊隊長のウェルズ・J・プラントが総攻撃を命じると、隊士たちは装備している武器を砲撃して黒武士を制止しようと試みる。

 聖龍隊の攻撃は黒武士に直撃。しかし黒武士の甲冑は傷一つ付いておらず、黒武士の進撃は留まることが無かった。

「お、俺たち雑兵じゃ無理だ! 主人公級のキャラを連れてこい!」

「主役級の奴らでも、こんな化け物は無理だ……!」

 隊士や兵士たちは如何なる攻撃を受けてもビクともしない黒武士の耐久性に恐れ戦き、退散してしまう。

 そんな黒武士と戦って傷つく隊士や兵士達を見て、聖龍HEADは決断した。

「もう我慢できない……私たちも出撃しようよ!」

 獅堂光が言うと、続け様に他のHEADも言い始めた。

「そうよ、このまま黒武士の凶行を黙って見ている訳にもいかないわ。私達も参戦しましょう!」

 光の言い分に、セーラームーンも同意する。

 仲間たちの本音を聞いて、メタルバードは決断した。

「よし! オレ達も参戦しよう! 今度こそ黒武士を止めて見せるんだ。ジュン! オレ達とまた共闘してくれないか!?」

「はい! もちろんです、総長……誰の味方でも無くなった、あの黒武士の凶行を何としてでも止めなければ!」

 メタルバードの決断に村田順一も賛同し、聖龍HEADとスター・コマンドーはかつての日々の様に団結した。

 するとメタルバードは続けて国連軍元帥の赤犬にも言葉をかけた。

「赤犬! もうこうなったら国連軍だろうが聖龍隊だろうが関係ない! ここは組織の枠組みを抜けてでも、黒武士を打倒しようじゃないか」

「うむ、利害の一致から協力を得ようというんじゃなバーンズ……ま、わしとしては破壊行動に出た黒武士を制裁できれば、それでええわい」

 互いの利害の一致を認め、赤犬は聖龍隊と共闘戦前を敷くことを承諾した。

 そして聖龍HEADを筆頭に、足正義輝の許を訪れていた武人たちが黒武士の方へ向かおうとした。

 が、その矢先。村田順一がピタリと足を止めた。

「? ジュンくん……?」

 スター・コマンドーの深澤マイが突然立ち止まる順一に気が付くと、他の面々も急に立ち止まった順一に顔を向けた。

 立ち止まった順一は、今までの戦いを帝と共に最初から見届けていた新世代型二次元人たちに姿勢を向けて彼らと話し合い出した。

 

「……みんな」「順一さん……」

 順一の真剣な面差しに、新世代型の琴浦春香が返事すると順一は話し続けた。

「……君たちが既に真実を、自分たち新世代型二次元人が我が師、小田原修司のクローンに近い種である事を知ってしまっていた事には驚かされたよ」

「ああ、俺たちも受け入れがたい真実だけど……」

 順一の話の話を聞いて、加納真一は複雑な心境で答え返すと順一は意志の強い表情で新世代型たちに語った。

「我が師、小田原修司の遺伝子から生まれ出た次なる時代を築き上げる者、新世代型二次元人……かつて僕は、新たな時代を築く為に古き時代を滅ぼそうとした初期の新世代型たちと戦った」

「今年の2月に起こった、軌道エレベーター管理官ルミネの一件ですね」

 星原ヒカルが訊ねると、順一はそれについても話し続けた。

「ああ、ルミネたち初期の新世代型たちは古い時代の象徴である施設を拠点として活動し、聖龍隊に戦いを挑んだ。彼らの思想は確かに間違っていた、けれど次代を創り上げようとするその意志は確かなものだった」

「……な、何が言いたい訳なんだ? 結局……」

 順一の話を聞いた真鍋義久が懸念を募らせると、順一は真顔で語り続けた。

「そんな新世代型である君らの血筋には、確かに我が師、小田原修司の血筋が確かに受け継がれている……」

『………………………………』

「しかし……君たちは恐ろしく思わないか?」

「恐れる……何をだ?」

「修司さんを……そして、修司さん自身が導き、築いてしまった今の世を」

「自分達は……恐れを感じるほど、まだ小田原修司という人間を……自分達の始祖を知らない」

「ははは! それもそうだな!」

 新世代型と話をして、彼らがまだ自分たちの始祖にあたる小田原修司について詳細を知らない事実を知った順一は笑い飛ばした。そして己の真情を代わって語り明かした。

「だけど僕は……怖い、怖くてたまらないんだ。大切なものを護るためならば、それ以外の存在を蔑ろにしてしまう修司さんの非情さに……そして、そんな修司さんを心から慕い……今なお悲しき道を突き進むHEADの方々が」

『………………………………』

 十を守る為ならば一を切り捨てる考えを持つ小田原修司と、その考えに従い今なお悲しい運命を辿るHEADに怖ろしさを感じ入ってしまうという順一の真情を聞かされ、新世代型たちは言葉を失う。

 だが、順一はそれでも包み隠さず己の真情を明かしていった。

「でも、何より……そんな修司さんに、HEADの皆さんに惹かれてしまう僕自身が怖い。強大な力故に、その力に魅入られてしまう……その力の根底に辿り着くのが、最も怖いんだ」

「順一さん……」

 非情に徹する小田原修司と聖龍HEADに魅了されてしまう自分自身が最も恐ろしいと語る順一に、琴浦春香たち新世代型たちは悲愴感に苛まれる。

「僕は臆病者だ……だけど新世代、君達だけは責めて違う道を歩んでほしい。HEADだろうと僕だろうと……何より自分自身と、嘘偽りなく真っ直ぐ向き合ってほしい」

 しかし順一は語る事を止めず、新世代型たちに真っ直ぐ自分と向き合って欲しいと訴える。

「その道行きの先にある答えこそ、今の世を導ける……そんな気がしてならない」

 偽り無く自分と向き合える道の先にこそ今生の世を導ける答えが隠れているかもしれないと順一は説いた。

「これまた随分と見られたもんだぜ……」

「小田原、修司……それ程までの男か……」

 この順一の説明に、新世代型のレイジ・アスナとプロト世代の海道ジンは改めて小田原修司の人望の高さに驚かされる。

「僕は罪を負った……そして、これからも負い続ける。いつか必ず、全ての罪を裁かれる時が来るだろう」

 そして順一は、いづれ背負い続けた罪が裁かれる時が来ると新世代型に告げると、続けて彼らに言い放った。

「だが、今ではない! それは僕たちが港の絆を束ね、世界を一つとした、その後だ!」

 絆を護る為に絆を利用し、そして裂いた大罪が裁かれるのは新たな世を創世した後だと順一は語り終わる。

 

「今は黒武士を止める為、再び一つとなったが……未来を創造する為ならば、僕は如何なる罪をも背負うつもりだ! それこそ我が師、小田原修司が生き抜いてきた道! ……だけど、君たちはどうか穏やかな道を歩んでいってほしい」

 敢えて聖龍HEADや周りの者たちが見ている前で己の信条を語った順一の熱弁に、新世代型たちは衝撃に揺れる。

 そして考えさせられた。

 未来を築き創る為には、対立や衝突も避けられない実情なのであろうか。

 未来を後世に遺す為には戦う道も仕方がないのか。

 

 次代を築く役目を負わされている新世代型二次元人たちは、順一の語った実情に対して深く考えさせられた。

 

 

 

[犠牲になった鬼神]

 

 突然、周辺の兵士や隊士たちを襲撃し始めた黒武士。

 その凶行を阻止するべく動き出した国連軍であったが、彼らの加勢も及ばず黒武士は猛攻を続けていた。

 そんな中、黒武士の凶行を制止するべく遂に聖龍HEADとスター・コマンドーが手を組み、そして国連軍元帥赤犬と黄猿/藤虎も加勢。そして聖龍HEADに導かれた若者シバ・カァチェンも皆と共に進軍する。

 各自の理念を持ちながらも、無差別襲撃を繰り返す黒武士を止めるべく一行は混乱の極みに至る混戦状態の戦場に出撃した。

 

「みんな大丈夫か!? いま助けるぞ!」

「そ、総長~~!」

「みんな無事か!? 後は僕らに任せて負傷者の手当てに回れ!」

「承知しました!」

 メタルバードと村田順一の姿を見た隊士や兵士達は挙って、舞い上がるほど喜んだ。

「国連軍兵士よ! お前らはどうしちょるんじゃ! たかが一人の異常者(ヒール)相手に手こずりおって……!」

「げ、元帥殿っ。されど黒武士の戦力は想像以上で、我ら国連軍の戦力では太刀打ちできません……!」

 現場で苦戦を強いられている国連軍兵士に檄を飛ばす赤犬に、実際に黒武士と戦った指揮官達は涙目で訴える。

「HEADたちが駆け付けて来てくれたぞ……! 聖龍隊! HEADを援護しろッ」

 特攻決死隊隊長のウェルズがHEADの援護を隊士たちに指示する。

「負傷者は聖龍隊だろうが俺たち側だろうが救済しろ! 黒武士から負傷者を守るんだ!」

「委細承知!」

 スター・コマンドーの墨村良守からの伝達に、スター・コマンドー軍の武将は承知仕り、協力し合って負傷者をナースエンジェルやセーラームーンの許へと移送する。

 その間に、現場の戦士たちは黒武士に猛反撃を転じていた。

「みんな、行くわよ! 一斉射撃!」

 総部隊長ミラールの一声で、デス・ザ・キッドや巴マミたち射撃系の能力者たちは黒武士に弾幕を浴びせる。

 だが、黒武士はその甲冑や胴体を銃弾が貫通したにも関わらず、即座に銃痕が消失したのだ。

「傷口がスグに再生しちゃうなんて……並の猛者じゃないようね」

 銃弾の痕がスグに消失してしまう状況を前に、ミラールは動揺を隠し切れなかった。

 そんな黒武士が圧倒する戦況を、帝である足正義輝は面白おかしく拝見しながら戦場の戦士や武士達に申した。

「古式ゆかしい政など、面白くもなかろう? 故に、天へ還し奉った……あの星が、それよ」

 気づけば曇天が少しばかり晴れ渡り、空には一番星が輝いていた。帝は、その一番星を指し示して言った。

 一方で戦況は、黒武士が完全に圧倒。【ジョジョ】や【SAO】の面々を斬り飛ばして凄まじく周囲と抗戦する。

 黒武士は目にも止まらぬ抜刀術で居あい抜きすると、その斬撃が連続で聖龍隊の名立たるキャラクター達を切り刻む。

 そんな戦況を眺めて、足正義輝は黒武士と懸命に立ち向かう隊士や兵士たちに申した。

「勝負は時の運だと云う……ならば、運そのものを打ち負かしてしまえば好い……容易いことだ」

 運も実力の内だと説き伏せる足正義輝の言葉を聞いてか聞かずか、隊士や兵士達は黒武士に挑みかかる。

「このヤロー!」

 聖龍隊士でマン・ヒールズの一員月詠イクトと【マギ】のモルジアナが同時に黒武士に飛び掛る。だが黒武士はイクトの打撃を曲げた腕で受け止め防ぎ、同時にモルジアナの跳び蹴りを空いている左腕で掴んでは力強く握り付けた。

 モルジアナが捕まったのを助けると同時に黒武士へと攻撃しようと、ニュー・スターズの梅枝ナオミと居合番長そしてシャナが急接近する。しかし黒武士は左腕で掴んだモルジアナを振り回して接近してきた隊士を悉く吹き飛ばし、最後にはモルジアナを投げ飛ばす。投げ飛ばされたモルジアナは金剛番長に受け止めてもらい、衝撃を和らいでもらった。

 アレン・ウォーカーと神田ユウ、そしてラビの三人は協力して黒武士を倒そうとするが、黒武士は長刀を自在に扱って三人を返り討ちにする。

 と、ここで聖龍HEADとスター・コマンドーも総動員で加勢して、暴走する黒武士を宥め始める。

「お前、一体全体いきなり暴れ出すとか正気の沙汰じゃないぞ」

「オレ達にかかれば、お前なんかアッというまに取り押さえちまうぞ!」

 キング・エンディミオンとハンター・スティールに挟まれても尚、黒武士は冷然とするばかり。

 すると此処で啖呵を切ったハンター・スティールが仲間のスパイダーライダーズと共に、蜘蛛の糸で黒武士を拘束し始めた。

「どうだ! これで動けない……え?!」

 動きを完全に封じたと思った矢先、黒武士は自らに巻きつく強靭な糸を自力で引き千切り、ハンターたちスパイダーライダーズの目測を突破する。

 そしてハンター達に黒武士は、長刀を一瞬で抜刀する事で発生させる鎌鼬を放って攻撃。「うわッ」突風の鎌鼬に怯むと同時に全身の各所を切り付けられてしまうスパイダーライダーズ。

 と、ハンター達に鎌鼬をお見舞いした黒武士の背後その死角から、キューティーハニーと音無小夜が不意を突いて斬りかかった。だが黒武士は二人の斬撃を前を向いたまま長刀で受け止め、二人の刃を止めてしまう。

「「!!」」

 後ろを振り向く事無く、気配だけで刃を受け止めた黒武士に愕然とするキューティーハニーと小夜。その二人の刃を、黒武士は二人共々弾き飛ばす。

 後方から斬りかかって来た二人を弾き飛ばした黒武士の猛攻を視認して、メタルバードはHEADの仲間達に呼び掛けた。

「マーキュリー! マーメイドメロディーズ! ウォーター・フェアリー! 黒武士の周囲に水を張り巡らせるんだ! さくらは皆の支援でウォーター(水)を使えッ」

 メタルバードからの指示を受けて、彼女達は黒武士の周囲に大量の水を展開させる。

「白雪、バブルス! 君たちも加わるんだ!」

 その状景を見た村田順一も加勢しようと、スター・コマンドーの仲間である白雪とロンリー・バブルスに作戦に加わるよう指示。二人は順一の指示に従い、水を操作して黒武士を水で完全包囲する。

 大量の水に囲まれ、逃げ場を失った黒武士は慌てる様子も無く平然とそして不気味に立ち尽くしていた。

「今だ! 黒武士を水攻めにしてやれッ」

 メタルバードの合図で、水を操作している者達は皆、黒武士を水で包み込んだ。

 だが、これで黒武士に対して決定的な打点になっていない事から、メタルバードは己の右腕を砲身に変形させて周囲の仲間達に伝えた。

「今の内に高圧電流で黒武士を電気攻めだ! 電撃発射……!」

 メタルバードが右腕の砲身から強力な電撃を発射すると同時に、HEADのセーラージュピターにちせ、そしてスター・コマンドーのハルが黒武士に高圧電流をお見舞いする。

 強力な電撃を受けて、全身を隈なく電気に呑まれた黒武士。だが次の瞬間、黒武士は自分を被う電撃全てを長刀に集結させて、自らへの電撃攻撃を全て無力化してしまう。

「ッ! なんて野郎だ……!!」

 接近してからの攻撃も、遠距離からの属性攻撃も全て無力化しつつ反撃する黒武士の圧倒的強さに絶望するメタルバード。

 すると此処で戦況を圧倒する黒武士に対して、ミラーガールが先陣を切って特攻した。

「これ以上、仲間を傷付けさせないッ!」

 強い意志を胸中に秘めながら、ミラーガールは自分の後ろに接近攻撃が得意な隊士達を引き連れて特攻する。

 しかしミラーガールが接近すると、黒武士は彼女のミラー・ソードを鎧に包まれている左手で掴んでは離さず、そこに無数の剣を発射してきた美樹さやかの攻撃を全て腕一本長刀のみで弾き返してみせ、更にキリトやアスナたちの接近戦をも片手だけで制してしまう。

 その間も、絶えず離さないでいるミラーガールの刃。黒武士はその生気のない瞳でミラーガールを見詰めると、前触れも無く彼女のミラー・ソードを離した。

「っ……!」

 突然刃を離されて一瞬困惑したミラーガールに、黒武士は長刀を抜刀して彼女を連続で斬り付けた。

「きゃあっ!」

 全身を斬り付けられたミラーガールは、無数の切り傷を負ってしまう。

「アッコ!」

 全身に無数の切り傷を負ってしまったミラーガールを観てメタルバードが絶叫する。

 

 そして戦いは黒武士が圧倒的な強さを誇示させた事で皆の戦意を削いで完結へと向かおうとしていた。

 すると黒武士は徐に、傷つき満身創痍に陥ったミラーガールの手前に一つの指輪を静かに置いた。

 ミラーガールがその指輪を不思議そうに思いながらも、その指輪を摘まんでは間近で観察した。

 そして指輪を観察したミラーガールは目を見開いて、実に驚愕した表情で言い放った。

「これ……これ、修司の……修司のじゃない!」

 ミラーガールが摘まんだ黒武士から渡された指輪。それはミラーガールと婚約した小田原修司と対なる婚約指輪だった。

 何ゆえ黒武士が、小田原修司が加賀美あつこと婚約した際にペアで作った指輪を所持しているのか、ミラーガールだけでなく他のHEADやスター・コマンドーの面々が困惑していると、指輪を所持していた黒武士がミラーガールの疑問に答えた。

「それは今生の世を離れた浮世人、小田原修司が遺した遺物の一つよ」

「遺物って……!」

 黒武士の発言にミラーガールが動揺すると、黒武士は周囲の者たちが聞こえる様に意味深な発言を述べた。

「小田原修司は犠牲になったのだ。我ら破滅の一族の犠牲にな」

 破滅の一族の犠牲になったと聞かされて、誰もが新世代型と思われる黒武士が小田原修司を殺めたのかと脳裏を過ぎらせた。

「犠牲になったって……つまり修司さんは……修司さんを殺したってこと!?」

「我らを導いてくれた鬼神、小田原修司を……新世代型の黒武士は殺めたのか!」

「そんな、自分達の始祖を殺したなんて……血も涙も無えじゃねぇか!」

 黒武士の発言を聞いて各々の想いを吐き出す隊士たちは衝撃に呑み込まれた。

 すると騒然となる戦場に、黒武士は言い放った。

「小田原修司は犠牲になったのだ……破滅の血族を目覚めさせる、大いなる犠牲に成り得たのだ」

 この黒武士の言動に、ミラーガールも戦場の隊士たちも動揺し切った。

「修司が犠牲になったって……どういう事なの? 黒武士!」

 しかしミラーガールの問い掛けに、黒武士は無言で答えようとはしなかった。

 ミラーガールは黒武士が答えてくれないのならと、険しい顔を足正義輝の方へと向ける。

 

 遠方の地で黒武士との戦いぶりを拝見していた帝、足正義輝はミラーガールの視線に気付いて、黒武士に代わって代弁した。

「うむ、確かに……今の状況で、小田原修司は死んでいるのも当然といった状態だろう。黒武士の言う事にも一理ある」

「そ、そんな!」

「新世代型が……僕らと同じ新世代型が、始祖に当たる小田原修司を殺めたって言うのか……!?」

 足正義輝の発現を聴いて、新世代型のコウサカ・チナや小野田坂道は愕然とする。

 

 戦場の誰もが黒武士と帝の発言に衝撃を受ける中、黒武士は冷然と直立するばかりだった。

 果たして、本当に黒武士は小田原修司に危害を加えたのだろうか。

 

 

 

[本当の破滅]

 

 戦場の皆々に衝撃的な事柄を告げた黒武士。

 そして黒武士はその事実を直接的に告げたミラーガールの前から、離れ始めた時。

「お、おいテメェ、本気で小田原修司を殺したっていうのかッ」

 と、放心状態のミラーガールの前から離れようとする黒武士に、聖龍隊士の門脇将人が問い詰めようと肩を掴んだ瞬間、黒武士は腕を振り払い、その衝撃で将人を吹き飛ばしてしまう。

「ま、将人!」「将人様……!」

 吹き飛ばされ、地面に転げまわる将人に仲間の日ノ原革とミヤビが駆け寄る。

 泥まみれの将人が黒武士を睨み付けるが、黒武士は平然と歩み、そして数歩歩くと黒武士は唐突に跳躍して一気に帝の許へと距離を縮めた。

 衝撃的な発言をした黒武士の再来に異様な雰囲気で出迎える新世代型たち。

 そして帝であらせる足正義輝の許に戻った黒武士は、その固く閉ざしていた口を開いて帝に物申した。

「……帝よ。これが戦乱の極み、混沌の末に辿り着いた結末よ……」

「ふむ、理想を追求し、ゆえに一枚岩だった聖龍隊が完全に分裂……だが、其之方という混沌を打ち破ろうとする者の乱入によって再び一つとなった力。これが聖龍隊、そしてスター・コマンドーという力の源か!」

「その力の根源は極めて醜い……理想や野心を高め、互いに傷つけ合い、そして何よりも仲間内で争いを勃発させる……まさしく愚の骨頂よ」

「そうか……其之方には、そう見えて仕方がないのだな、黒武士」

 足正義輝の問いかけに黒武士は小さく頷くと、再び語り出した。

「……人命を大事にする、理想を掲げる、未来を創生する……そんな戯言で大きな紛争を起こした者たちに、未来を創造する事は叶わないと我は思っている」

「ふむ、そうか……」

 小さな声で語り続ける黒武士の言葉に、帝は淡々と聞き入れる。

「それにじゃ、帝……その方は未だ気付いておらぬが、世の者は既に醜き野心を滾らせる者が多くおるぞ」

「なぬ!? それは誠か、朋よ」

「うむ……人は欲望願望に支配された生き物。その欲を満たすが為に、誰かを利用し、誰かを蹴落とす……そこにいる新世代型たちを見れば解る筈。奴らは己が夢を……いや、欲望を満たす為に今までどんな汚らわしい所業をしてきた事か……」

「よもや……民は既に、各々の焔を、その身に宿していたとでも言うのか……?」

「如何にも……新世代型、我ら呪われし血脈の者は前々よりその欲望を満たすが為に、どの様な汚い所業をしてきた忌わしき種族……」

「チッ、俺らのこと散々な言い様だな」

 帝に語る黒武士の言動に新世代型の真鍋義久は苛立ちが募る。

 そして黒武士の話を聞いた帝は、彼の思想に同意するかのように首を縦に振って言った。

「ふむふむ、成程な……予が起こした現政奉還の時よりも前に、民草は既に欲望の熱気を……己が焔をその身に宿していたという訳か! ……ははは! そうか、予はまだまだ民草の事を……この世の真情を理解してはいなかったのだな!」

「…………………………」

 庶民の事をよく理解していなかったと高笑いする足正義輝に対し、黒武士は冷然と聞き入れるばかり。

 そして黒武士の話を聞いた足正義輝は、凛然とした面差しで黒武士に問うた。

「それで、朋よ。其之方の熱は滾ったか? 数多の武人と仕合おうて其之方の胸中にも焔は滾ったのかな?」

「……いいや、焔は着火しておらぬよ帝。それよりも我は決めたぞ、帝……」

「うむ、其之方のその決意もまたある意味滾る焔と思うのだが……それで、何を決意したのだ? 朋よ」

 何かを決意した黒武士の意思もまた胸中に揺らぐ焔だと説く帝からの質問に、黒武士は衝撃的な決心を語った。

「……我は、本当の意味で世界を終わらす。混沌を生み出し、破滅の象徴たる新世代型二次元人……その血脈の一員として世界を白紙に戻す」

 この黒武士の発言に、耳にした大勢の皆々が衝撃を受ける。

「世界を、全てを終わらすというのは……具体的にはどういう事なのだ、黒武士」

 帝が問い掛けると、黒武士は冷然とした眼で語り明かした。

「この多種多様な種族が繁栄する世を……様々な思想で埋め尽くされた、混沌の世は実に醜い。例えてみれば、白紙に様々な絵の具を使い塗り潰し、薄汚ない混沌を象徴する一枚だ。かの小田原修司は言い残した……人とは、個性とは色である。その人々や個性を表す色で覆われた現世は実に様々な色合いで潰し合っている正しく薄汚い作品へと変貌してしまっている」

「成程な。様々な色、つまり多くの人種や個性が豊富となった現世という白紙には溢れかえる程の色が混ざり合い、美しくなるどころか返って薄汚くなってしまったという訳だな」

「その通り……小田原修司という一人の人間によって描かれた、現世という白紙は既に修復不可能なまでに様々な色で潰し合い、醜い作品へと成り上がってしまった。我は、破滅の血族たる我は、その様な作品を……多くの個性という色で塗り潰された醜い現世という作品を終わらせ、それこそまっさらな白き世界を創造する……」

「つまり、朋よ……其之方は様々な感情や個性に溢れ返った彩りが多すぎる世界を終わらせ、全てを白紙に戻す作業を行うのだな」

「そうよ帝……! 我は、破滅の血が己が体に流れている我らは今生の世を終わらせる責務がある……

「ちょっと待てよ! ……我らって、俺たちまで巻き込まないでくれよ!」

 帝との語り合いの最中、黒武士に突然怒鳴った真鍋義久の発言に、黒武士は平然と述べた。

「我らは、我ら破滅の血族は世界を新たに導くことを……世界を新たに創造することを運命付けられている。そして今の世では、混沌の世では誰も導けん……誰も幸せにはなれない。故に、この混沌たる世界を終焉へと導き、新たにまっさらな白き世界を創造することが我ら破滅の血族の使命なのだ」

「ふざけるな! 世界が混沌だらけの世の中だからって、全部を終わらせちゃ意味がないだろう!」

「え、えぇっと……つまり、世界にはたくさんの思いや人たちがいるから、そんな混ぜこぜな世界なんか終わらせちゃおうって考えちゃっている訳!?」

 多くの個性(いろ)で溢れかえっている世界を終焉へと導くのが破滅の血族たる所以だと語る黒武士の台詞に、新世代型の幸平創真が反論すると、ようやく黒武士の言っている話の意味を苦労して理解した燃堂力は一人で勝手に混乱する。

 そんな各々で黒武士の発言に衝撃を受ける新世代型二次元人たちを前に、黒武士は平然と語り明かした。

「この世は既に、汚い個性(いろ)で覆われてしまっている。こんな醜い世界を後世に遺すよりも、跡形もなく消滅させた方がそれこそ真っ白な世界を遺せる。……何色にも染まっていない、美しい白き世界を……」

 多種多様な個性(いろ)で染め上げられた醜き世界よりも、全てを消滅させた真っ白な世界の方が何物にも勝る美しい世界だと豪語する黒武士。

 すると己の信条を包み隠さず語った黒武士は、そのまま現場から立ち去ろうとする処で大勢の者たちに冷酷にも言った。

「これより、多くの異世界や各地におる暗躍するキャラクター達を抹殺しに行く。全ては白く尊い世界を創り上げるため……」

 そう言い残すと、黒武士は突如発生した黒い霧の中に入っては完全にその姿を消した。

 そして黒武士の信条を全て聞き及んだ帝、足正義輝もまた皆に言い残しながら立ち去って行く。

「はははは! 決着は、またの機会だな! それまで燃え尽きるな、朋よ!」

 全ての者達に凛然とした笑顔を振り撒きながら、帝は立ち去って行った。

 

 黒武士が言った一言一句に誰もが衝撃を覚え、多くの者が放心状態に陥っている最中。

 しばし放心状態に陥っていたメタルバードが新世代型たちの許へと駆け付けた。

「お前たち……!」「ば、バーンズさん……」

 上空から飛来してきたメタルバードに新世代型たちと共に多くを見届けていたプロト世代のチョコたちが駆け寄ってきた。

「大丈夫か、お前たち」「ああ、なんとかね」

「僕たちプロト世代を含む全員が無事です! けれど……」

 ギュービッドに続いて発言する同じプロト世代の海道ジンが見つめる先を、メタルバードも目を向けてみると其処には落胆している様子の新世代型たちが。

 メタルバードは彼らに歩み寄り、声をかけた。

「お前たち……」

 黒武士から、自分たち小田原修司という破滅の血を受け継いだ新世代型二次元人は世界を滅ぼし、そして新たな世を創生する宿命があると告げられて考え塞ぎ込んでしまう新世代型たち。

 落ち込む彼らに掛けてやる言葉が見付からないメタルバード。何故なら自分たち自身もまた、黒武士が申す通り各々で欲望を曝け出して戦い合っていたからだ。

 すると其処に去って行った足正義輝と共に戦を傍観していた総監視者Sパルが歩み寄り、メタルバードに話し掛ける。

「バーンズよ、久しぶりだな……」

「ああ、ホントに久しぶりだなSパル……お前さんが記憶を失った一件以来だな」

 対面するメタルバードとSパル。するとSパルは徐にメタルバードに問い掛けた。

「君は、あの黒武士をどう思う?」

「どう思うって……危険な奴だとは思うが」

「そうか……彼の言う通り、この世界は個性という色で溢れ返り、美しくなるどころか醜い容貌に成り果ててしまっているのかもしれない」

「そんな……お前さんまで黒武士の意見に賛同するのかよ?」

「世界の多くを見ているけど、確かに二次元人を初めとする種族が増えた事で情勢が混乱している現実も実際ある。増え過ぎた人口、そして種族に信念……様々な個性(いろ)が増え過ぎた今の世を黒武士はリセットしたいのだと思う」

「全てをリセットして、真っ白で何もない世界を創造する気か……あぶねえな」

 メタルバードと対話するSパルは立ち去る直前、最後にこう言い残した。

「気を付けてほしい。あの黒武士は本当に世界を破滅させるつもりだ。外界に干渉を許されていない私では止める権限も無いが……同時に、この私でも止める事はまず不可能だろう。無論、君たち聖龍隊が、おそらく分裂した君たちがまた一つになれたとしても勝てる確率は極めて低い…………用心してくれたまえ」

 そう言い残すと、Sパルは姿を消して自分が居るべき異空間へと帰って行った。

 

「……個性(いろ)が増えてしまったが故に、何もかも消滅させた真っ白な世界を創造する……か」

 

 メタルバードは黒武士が言い残した一言一句を思い返しながら考え込んだ。

 果たして黒武士は本当に世界を終焉させ、何もない世界を創造するのだろうか?

 そして聖龍隊とスター・コマンドーが仲たがいしても、聖龍隊が分裂しても決して姿を現さない小田原修司は本当に黒武士に討たれてしまったのか。

 

 戦場の兵たち誰もが満身創痍の放心状態の中、時だけが無情にも過ぎ去っていった。

 全てはまだ謎に包まれたままである。

 

 

 

[Sパル]

 

 Sパル

 

 現代社会を見守る為に生み出された特別な初期の新世代型二次元人。

 見た目は小田原修司と瓜二つだが、金髪碧眼という根本的な容姿の違いがある。

 かつて小田原修司は二次元人を恐れた三次元人の政府から、二次元界総てを監視する「監視者」の称号を得ていた。

 しかし時は流れて、世情はテロも同様に引き起こす三次元人にも恐怖心を募らせた傾向から、平等な立場から総ての世界を監視する逸材を求めた三次元政府はSパルを生み出した。

 小田原修司が二次元界の「監視者」に対し、Sパルは全ての世界や次元を監視する「総監視者」の称号を与えられ、普段は特別な異空間から監視カメラなどを通して世界中を監視する役職に就いた。

 これによりSパルは「監視社会の象徴」とまで呼ばれてしまっている。

 Sパルの監視によって、人々の脅威になりそうな異常者(ヒール)はすぐさま彼によって通報され、処罰の対象として連行されてしまう。

 通報・通達以外の外界への干渉は固く禁じられている。

 己の与えられた役職に冷淡なまでに忠実であり、感情が上手く発達していない様子。

 因みにSパルの「S」は修司の頭文字から取られている。

 

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