聖龍伝説 現政奉還記 創生の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 スター・コマンドーの策により、完全に分裂してしまった聖龍隊。HEADはこの混戦を打開しようと、急ぎ村田順一たちスター・コマンドーを打倒しようと躍起になっていた。それと同時に新世代型たちは自分達以外の新世代型二次元人Sパルなる総監視者の存在を知り、彼の冷徹なまでの仕事振りと帝の現政奉還に共感している様を見せつけられる。その頃、密かに進攻していた元帥赤犬が先導する国連軍が小田原修司の血族たる新世代型二次元人を標的に総攻撃を仕掛けるが、兵士達は足正一派の立花宗茂とシマ・ギンテルによって討ち止められ、赤犬率いる黄猿と藤虎の三名は黒武士によって戦闘不能に陥られる。と、その時、台湾軍が国将軍シバ・カァチェンが混戦と化した戦場を一人離脱して剣帝・足正義輝の許を訪れる。そして帝に打ち勝ち、己の胸中に秘められていた野心を叶えようと勝負を挑む。が、帝はまず心を失ったと表す黒武士と対決せよとカァチェンに申す。熱戦の末、黒武士に敗れたカァチェンの許に、今度はミラーガールが駆け付けてきた。そしてミラーガールはカァチェンと共に黒武士と共闘するが、そこへ赤犬たちも共闘し合い、黒武士打倒に燃える。しかしその時、赤犬に一つの通達が。それは世界議会が混乱の元凶である新世代型二次元人を抹消する為、戦場に無人爆撃機を投下するというのだ。この最悪の事態に戦場の誰もが動揺するが、黒武士が颯爽と上空を飛来してきた無人爆撃機を撃墜し、事なきを得たかに思えた。しかし黒武士は何かに感化されたのか、戦場にいる多くの兵力を無造作に殺傷し始め、混沌に陥れ出した。すぐさまHEADとスター・コマンドーも黒武士を制止しようとするが、黒武士の強さは凄まじく歯が立たなかった。そして黒武士が衝撃の発言をした。「小田原修司は犠牲になったのだ」この黒武士の発言に、誰もが黒武士が新世代型の始祖である小田原修司を殺害したのではないかと疑心に駆られる。そう殺伐とした状況の中、足正義輝と黒武士は何処かへと消えてしまわれた。



現政奉還記 創生の章 突然の奇襲、狂犬と成り果てた若者

[黒武士が去って……]

 

 聖龍隊とスター・コマンドー。両者は互いに痛み分けをした。

 双方との激しい合戦に加え、突如として戦場に乱入して誰彼問わず攻撃してきた黒武士の猛攻を受けて。

 それらが全て加わり聖龍隊とスター・コマンドーは非常に消耗し切っていた。

 それは国連軍も同じであった。彼らもまた猛将シマ・ギンテルと立花宗重、そして同じく黒武士との合戦で戦意を失うほど消耗していた。

 だが戦闘での体力や戦意の消耗よりも彼らを一同に衝撃させたのは、黒武士が残した言葉。

「小田原修司は犠牲になった。我ら破滅の一族の犠牲にな」

 小田原修司が犠牲の犠牲になったのだと告げた黒武士が残した言葉に、誰もが意表を突かれた。

 誰もが黒武士の手によって、小田原修司が亡き者にされたと思い込んでいた。

 何故なら足正義輝の現政奉還、そして聖龍隊という彼が結成した組織内でスター・コマンドーが離反して双方が合戦をしたにも関わらず、小田原修司は表舞台に姿を現す事が無かったからだ。

 そんな状況下での黒武士の発言は、多くのキャラクター達を虚無感に誘った。

 

 多くのキャラクター達が虚無感に陥っている中、帝である足正義輝によって戦場の傍観者達にさせられた新世代型二次元人たちがメタルバードの同行の元、戦場に歩んできた。

 名立たる多くのキャラクター達が喪失感に陥る中、新世代型たちは各兵士や隊士達の間を通り抜けて進行した。

「つ、強すぎるぜ、あの黒武士って奴……」

「あの小田原修司をも……鬼神さえも倒したというのか……」

「まさか、自分の始祖にあたる人間を手に掛けたとでも言うのか……!」

 兵士や隊士たちは、自分達を相手にたった一人で刃向って来た黒武士の強さと、その黒武士が残した言葉に衝撃を受け、満身創痍に陥っていた。

 そんな兵士や隊士たちの間を通り抜けて、新世代型たちが歩み続けると、兵士や隊士たちに囲まれて一人落胆するミラーガールの許に辿り着いた。

「み、ミラーガール……」

 新世代型たちが声を掛けようとするが、とてもそんな雰囲気ではなかった。

 自分の婚約者が倒された、亡き者にされたと言われて落ち込むミラーガール。そんな彼女を慈しみの眼差しで見詰めていると、そこに黒武士との闘いで腕を痛めた村田順一が負傷した腕を押さえてやって来た。

 新世代型たちと同様に、慈しみの眼差しでミラーガールを見詰めた順一は、続けて周辺の満身創痍の兵士や隊士を見渡す。

 兵士や隊士たちは完全に戦意を失い、誰もが度重なる戦闘で激しく戦意も体力も消耗していた。順一は改めて自分達が引き起こしてしまった内戦の醜さに痛感した。

 すると、そんな満身創痍に至る聖龍隊の軍勢とスター・コマンドーの軍勢、そして同じ状況下の国連軍兵士たちに元帥である赤犬が怒声を飛ばす。

「お前らッ! 何をそんなにしょげちょるんじゃボケェッ!!」

「あ、赤犬……っ」

 突然の赤犬元帥の怒声に、ミラーガールたち周辺の者たちは顔を上げた。

「お前ら! 何を仲たがいしてたと思いきや、今度は黒武士っちゅう奴の訳わからん戯言に動揺されとるんじゃ! あの修司がそう簡単にやられる訳なかとうに! もっと自分らを治めていた総長の実力を信じぬけェ!」

 消沈する聖龍隊組織に檄を飛ばす赤犬は、続け様に国連軍の兵士達にも告げた。

「おまはんらも、もっとシャキっとせんか! 一度ぐらいの敗北で、そんなにしょげておっては天下の国連軍の名が泣くぞ! わしらは聖龍隊の連中とは違うんじゃ、もっと気張ってけぇや」

 独特の広島弁で国連軍兵士にも檄を飛ばして喝を入れる赤犬の激励に、国連軍兵士は傷付きながらも続々と立ち上がった。

 そして赤犬はその強面で再び聖龍隊の意気消沈したHEAD達に顔向けして、睨み付ける。

 赤犬の睨みからは、激励にも近い感情が感じられた。その赤犬に睨まれたHEADは、ミラーガールたちはスッと立ち上がり、周辺の隊士達に告げた。

「さあ! 喧嘩はお終い! みんな、負傷者は誰であろうと助けましょう!」

 ミラーガールたちの呼びかけに、隊士たちは穏やかな顔を浮かべて隣にいる別の隊士やスター・コマンドー側に寝返った兵士の肩を担いで動き始めた。

 それを見たスター・コマンドー軍が総大将、村田順一も各兵士達に伝令した。

「負傷した兵士を……いや、聖龍隊の仲間達を中心に手を貸すんだ!」

「は、はい!」

 村田順一からの伝令を聞いて、兵士達は潔く返答した。

 そして聖龍隊側の隊士と、スター・コマンドー側の兵士が手に手を取って互いを気遣い始めた、その時だった。

 

 戦場を立ち去ろうとするメタルバードたち聖龍HEADの無線通信が細々ながら受信した。

「こちらメタルバード、なんだ?」

 メタルバードが半分疲れ気味で通話に出ると、送信してきたのは赤塚組の大将こと赤塚大作であった。大将たち赤塚組は、仲たがいの形で戦い合う聖龍隊とスター・コマンドーとの合戦に参加する意気込みがなく、その戦いに対してだけは中立の立場を取っていたのだ。

 そんな赤塚組の大将は慌てた様子でメタルバードたちHEADに話した。

「ば、バーンズ俺だ! 大将だ!」

「おう、なんだ大将か。どうしたんだい、そんなに慌てて」

「お、お前たち戦争はどうなったんだ!?」

「まあ、なんだ。結局のところ双方痛み分けで終わったかな? それよりもどうしたんだ、そんなに慌ててよ」

「そ、そうだ! 気を付けろ!」

「?? なんだ急に?」

 メタルバードは大将の真意が分からず困惑する。と、大将はその真意の程をメタルバードに説いた。

「今お前さんたちの方に謎の軍勢力が大軍で迫ってきている! 俺様たちは一応、中立の立場だけど、さっきから何度もお前達に通達しようと引っ切り無しに無線を入れてたんだ! それがようやく繋がって……」

「なにっ? 謎の軍勢だって……」

 大将からの通達を聞いて、メタルバードは自身のレーダー能力で周辺を探ってみた。すると遠方から確かに謎の軍勢が大軍で押し寄せてきていた。

「あ、あの軍勢はなんだ?」

 メタルバードが声を上げたその時、その軍政から響いてくる地響きが現場の聖龍隊やスター・コマンドー、そして国連軍にも伝わった。

「え? なに? この地響き……」

「この地響きは、いったい……!」

「なんじゃ、この揺れは……!?」

 ミラーガールに村田順一、そして赤犬が地響きに気付いて顔を向けるが、時すでに謎の大軍勢は目の前まで迫って来ていた。

「な、なんだ、あの軍隊は!?」

 一人の隊士が謎の軍勢に気付いて声を上げたその瞬間、その隊士の額に銃弾が着弾して隊士は絶命してしまった。

 皆が突然の攻撃に動揺していると、その軍勢を指揮する一人の兵が一声を上げた。

「サコン隊、抜刀! 奴らを皆殺しにしてやんな」

 突如として戦場に乱入してきた謎の軍勢を指揮する若者らしき声。その声に導かれる形で軍は先導される。

「なんじゃなんじゃ今度は!? また新たな異常者(ヒール)の勢力か!」

 突然の乱入軍に嫌気がさす赤犬に、国連軍大将の黄猿が声を掛けた。

「赤犬、今し方本部から連絡が入ったよ……奴らは二次元人に敵意や殺意を向ける「反二次元思想」の連中だよぉ。どうも、合戦で戦力を消耗したわっしら二次元人を皆殺しにする為に軍を束ねて襲撃してきたみたいだねぇ」

「! 反二次元思想主義の連中か! こげな時に……!」

 自分たち合戦で消耗している者たちを襲撃しに来たのは、二次元人に対して反感や敵意を向けている「反二次元思想主義」が結成した軍隊だった。彼らは二次元人を三次元人つまり自分達の敵として排除する思想があるのだ。

 そんな反二次元思想の軍勢は、消耗して動く事すら侭ならない聖龍隊や国連軍がその動きを察する前に進撃し、更に妨害電波で自分達の進撃が悟られないよう裏工作を進めた上で攻めてきたのだ。

 

 

 

[二次元を嫌う者]

 

 長時間に渡る紛争で消耗しきった聖龍隊とスター・コマンドーと国連軍。

 そんな三つ巴の勢いが衰えた勢力を狙い目に、反二次元思想主義の者たちが押し寄せてきた。

 彼らは今の世では完全なテロリスト扱いで、反社会性な組織として見られている。

 しかしその勢力は衰える事無く、二次元人やその技術に反感の眼差しを向け続けている。

 そんな反二次元思想主義の武装軍隊は、バイクや軍用車に搭乗して三つの軍隊の周りを走り出す。

「今だ! 二次元人(バケモノ)共を取り囲め!」

 二次元人を差別する反二次元思想主義の指揮官が、三つの軍そのものを取り囲むよう指示。

 すると思想主義の軍隊は一つの輪になる様に編隊を形成させて、二次元人たちの軍勢を完全包囲する。

「クソ、取り囲まれたか……!」

 自分たちが完全に包囲されてしまった戦況に焦燥の色を顔に浮かべるメタルバード。

 すると二次元人たちの軍勢を包囲した思想主義の軍勢が攻撃を始めた。

「行くぞ、殺れッ」

 二次元人たちを完全方した軍勢は、そのまま携帯しているショットガンなどの強力な銃火器で銃撃を開始。

「うぎゃッ」「ぐふっ」

 銃弾を浴びて絶命する聖龍隊の隊士やスター・コマンドーの兵士たち。

 この事態に聖龍隊とスター・コマンドーは防御の構えを取るよう兵達に指揮した。

「銃撃に気をつけろ! 前方をバリアーなどの能力で防ぐんだ!」

 この順一の指示に、彼の直属の配下である墨村良守たち結界師の面々が輪になって襲撃してくる思想主義の軍勢の前に急いで飛び出して、術を使用。前方からの銃撃を防ごうと必死になる。

 だが此処で思想主義の軍隊は次にボウガンを取り出して、上斜めに向かって矢を発射。矢は円を描く様に降り注ぎ、二次元人たちの軍勢を襲う。二次元人の軍勢は、真上から降り注ぐ夥しい程の量の矢に困惑し、次々と矢の餌食となってしまう。

「きゃっ」

 と、ここで大量の矢の一本が聖龍隊のキュアマーチの腕に直撃。彼女の腕に痛々しく矢が突き刺さってしまった。

「キュアマーチ、大丈夫か!?」

 突然のボウガンによる矢の雨を見て、急ぎ薄い金属の幕に変形して皆を護ろうとしたが遅れてしまったメタルバードがキュアマーチに呼び掛ける。

 急ぎ救護班ンがキュアマーチたち矢を受けた仲間の許に駆け付けるが、傷口を見て愕然とした。何故なら傷口が紫色に変色していたからだ。

「! 毒矢か……!」

 救護班は相手が射た矢が、猛毒の矢だと知って愕然。急ぎ傷口の手当をする。因みにキュアマーチら、変身した彼女達は新陳代謝が向上しているため、多少の毒素で死なない。

 しかしその最中にも、二次元人達を嫌う三次元人による軍勢は攻撃を絶えず行い、二次元人達を駆逐しようとしていた。

「おやおや~、足正軍が撤退したと思いきや、お次は反二次元思想主義の三次元人たちから攻撃を受けるとはねえ~……赤犬、彼らとはどうするつもりだい?」

「ううむ……三次元人とやり合うのは少し気が引けるが……連中は既に世界から異常者(ヒール)と分別された輩。遠慮なく処罰の対象にせんと……!」

 黄猿と赤犬は、三次元人のみで構成された反二次元思想主義の面々に攻撃を開始した。

「うぎゃ~~!」「うわあ~!」

 赤犬の肥大化した溶岩の両腕、そして黄猿の周囲へのレーザー攻撃が思想主義の軍勢を蹴散らしていく。

「くっ……二次元人(バケモノ)風情が、我ら創造主たる三次元人を殺めるとは、何たること!」

 赤犬と黄猿の攻撃に、思想主義の指揮官は憤りを感じては反撃の命を下す。

「反撃せよ! 二次元のバケモノ共を皆殺しにするのだ!」

 遂に国連軍と反二次元思想主義の軍勢同士が衝突してしまった。

 だが、思想主義の軍勢は聖龍隊とスター・コマンドーの二つの軍勢にも攻撃を仕掛ける。

「放てッ!」

 思想主義の指揮官は毒矢を仕込んだボウガンを一斉射出するよう部隊に指示。毒矢は発射され、プリキュアの女子達に浴びせられようとしたその時。デビルマンが毒矢の前に立ちはだかり、目から光線を発射して全ての矢を消滅させて防いだ。

「で、デビルマン……」

「プリキュアたちよ! さっきはさっき、今は今だ。今はとにかく、相手の軍勢から生き残る事を最優先に考えよう!」

 キュアブラックの問い掛けに毅然とした態度で答え返すデビルマン。彼女達は一致団結して眼前の思想主義軍に徹底抗戦を始めた。

 その頃、三次元人である思想主義の軍勢を前にメタルバードと村田順一は悩んでいた。

「う~む、困ったもんだ。下手に反撃すれば、コッチが異常者(ヒール)と世情に捉えられちまうかもしれねえし……」

「で、ですが……このまま手を拱いてしまえば、被害は更に甚大な事に……!」

 双方共に三次元人に反撃すれば、返って自分達が異常者(ヒール)だと世間から捉えられてしまう可能性を示唆して、メタルバードも順一も葛藤していた。

「だ、だからって! このまま何もしなかったら、俺たちも含んで全員が標的にされて殺されちまうじゃないっすか!」

 手を拱いて葛藤するメタルバードと順一に反撃を急かすよう先ほどから焦り出している新世代型の真鍋義久。

 するとその時、混乱する聖龍隊とスター・コマンドーの軍勢の中からポツリと聞こえてきた。

「くっそぉ……元はと言えば、新世代型が戦乱を始めたのが発端なのに……」

 この誰とも解らない発言に、新世代型たちは人知れず悲愴な思いに駆り立てられた。

 一方で反撃するかどうか苦悩している聖龍隊総長メタルバードとスター・コマンドー総部隊長村田順一。と、そんな二人に思想主義軍と抗戦している赤犬が怒鳴った。

「何をしちょるんじゃ貴様らは! 相手は既に世界が認めとる異常者(ヒール)じゃろうが! 悩む必要なぞなかあ! さっさと手を貸さんかッ!」

 この赤犬の叱咤に、メタルバードも順一もハッと我を取り戻し、それぞれ聖龍隊とスター・コマンドーに通達する。

「聖龍隊! 反二次元の連中に反撃しろッ!」

「スター・コマンドー、反撃開始! ……些か心苦しいが、生きる為にも反撃するんだ!」

 メタルバードと順一の指令を聞いて、聖龍隊とスター・コマンドーは思想主義の軍勢に一斉反撃した。

 

 三次元人でのみ構成された思想主義の軍勢に国連軍と同じ様に抗いを決めた聖龍隊とスター・コマンドー。

「こなくそッ」

 そんな軍勢の中には、混戦に紛れ込んで火事場泥棒を働いていたガイア・スコーピオン率いるスコーピオン同盟の者たちの姿も確認された。

「あ、ガイア! あんたら……」

 聖龍隊ニュー・スターズの一員マカ=アルバーンが思想主義の軍勢と抗戦するガイアたちを見て、声をかけようとするが、そんな彼女にガイアは言い返した。

「今はとやかく言っている場合じゃないっしょ! 兎にも角にも、この襲撃を押さえ込まねえと……!」

 ガイアは仲間達と共に周辺の殺意に沸く三次元人を殴打して気絶させてながら混戦を乗り切っていた。

 このスコーピオン同盟と同じく、聖龍隊とスター・コマンドーの軍勢は苦戦しながらも相手を気絶させる程度で済ませていた。後々、三次元政府から何かと指摘されない為である。

 この混戦の中、スコーピオン同盟だけでなく聖龍隊やスター・コマンドーに加担した三次元人の軍勢も思想主義の軍勢に迫っていた。

「イヤッホウ!」「はぁッ!」

 中国軍が地方武将デイ・マァスンとモンゴルが国将軍代行シン・ユキジたち三次元人の武将達が思想主義の軍勢に本気で反撃していく。

「なッ、き、貴様ら……二次元人(バケモノ)共に加担するのか!?」

 思想主義軍の指揮官が三次元人の武将達に問い掛けるが、三次元人の武将達は真顔で言い返した。

「わしらは聖龍隊……いや、二次元人から進むべき道を指し示された! 進むべき道へと導かれたんじゃ!」

「二次元人だろうと何だろうと……乙女を傷つける愚かな男共の好きにはさせんッ!」

 武蔵丸の肩に搭乗する中国軍国将軍の徳竹康と、中国が地方武将イン・ナオコは立ち向かってくる思想主義軍と真っ向から対立する。

「きええェ……! 貴様ら、ワシを皇軍が親族、時乃宮彦麻呂だとしっての狼藉か!? ワシら皇軍と親身になっておる二次元人を愚弄するのは、皇族を愚弄するのと同じじゃぞ!」

「それが気に喰わぬのだ……暗君め!」

 及び腰で巨大な槍を手に対峙する時乃宮彦麻呂に思想主義の兵士は不満をぶつける。

「ぎゃああッ!」「ぐはッ!」

「悪いけど、ただ悪戯に命を奪うしか能のないあんたらは、ここで消えてちょうだい」

「無造作に悪事を働く貴様らは、もはや同じ人とは見れねえな……!」

「あ、あんたらの方こそ……人間か?」

 攻めてくる思想主義の人間を、容赦なく斬殺していくモンゴル軍忍頭の猿飛佐助とデイ軍が副将タク・モンジュロの情け容赦ない鉄槌に、思想主義の兵士が問う。

「申し訳ないが、貴方方に抗えと命じられております……故に、貴方方には此処で果ててもらいましょう……」

「くぅ、台湾の欠かれカァチェンが……二次元人に寝返るとは……!」

 聖龍隊の命を率直に遂行する意思を示す台湾国将軍のシバ・カァチェンに、思想主義の指揮官は表情を歪ませる。

 

 その一方で白兵戦には手出ししていいのかどうか葛藤している者たちが。

 巨大ロボットに搭乗するSRMの面々だった。

 彼らは白兵戦にはなるべく介入しないように言い渡されていたが、実は此処でその事情以外にも動けない理由があった。

 それは彼らが搭乗する機体に謎のコンピューターウイルスが電送され、機体が思うとおりに動かせなかったのである。

「クソッ、どうなってるんだ!? 機体が動かない……!」

「みんな、焦りは禁物よ。今ウイルスの除去に専念しているから……」

 焦るアスラン・ザラに艦長のマリュー・ラミアスが指示を出す。

 

 SRMのメンバーが稼働不能に陥っている最中も、反二次元思想主義の軍勢は攻撃の手を緩める事は無かった。

 

 

 

[猛攻する三次元の青年]

 

 コンピューターウイルスによってSRMの各機体が稼動不能に陥っている時、その最中にも戦闘は続行していた。

 SRMの面々の動きが封じられている際、聖龍隊とスター・コマンドーそして国連軍は懸命に反二次元思想主義の軍勢と抗戦する。

「うっ!」「うぎゃ!」

 しかし味方兵は悉く思想主義の敵兵によって、ある者はボウガンで頭を射抜かれて、ある者は銃撃の雨を浴びて絶命してしまう。

 そんな戦況を刻一刻と変える為に、遂に聖龍HEADとスター・コマンドーが反撃を展開する。

 メタルバードの強風が敵兵を吹き飛ばし、村田順一の拳が敵兵の集団に唸る。

二次元人(バケモノ)共め……やってくれるわ」

 反撃に転ずる聖龍隊を前に、思想主義の軍勢は感情を昂らせる。

 しかし聖龍隊の反撃は留まらず、思想主義の軍勢を迎撃する。

「私達も黙っているばかりじゃダメね! ルーキーズ、反撃するのよ!」

 聖龍隊の頭目HEADが動いた事でスター・ルーキーズの総部隊長ミラールが指令を下す。

 巴マミや暁美ほむら達の銃撃が思想主義の兵士達を迎撃していく。

「お嬢ちゃんたち頑張っているじゃないか! オレ様たちも頑張らないと!」

 と、魔法少女達の活躍を拝見し、ガイア・スコーピオンたち犯罪結社スコーピオン同盟の面々も思想主義の兵士達を殴り飛ばす。

 そんなガイア達と共闘し、敵兵を鎮圧していくデイ・マァスンやシン・ユキジたちアジアの武将たち。

 と、そんな三次元人の武将や、時には聖龍隊とも共闘を組むスコーピオン同盟を視認して、国連軍元帥赤犬が睨みを利かせる。

「ガイアッ……貴様ら、こげな時にわしらの前に出てくるとは、いい度胸じゃけぇ……!」

「今は喧嘩している場合じゃないっしょ! 早く目の前の連中を押し退けねえと……」

 悪役集団であるガイア・スコーピオンたちの存在に己の正義が赦せないと信念を燃やす赤犬に対し、ガイアは今はとにかく目前の思想主義の連中を片付けるのが先決であると進言する。

 まさに悪役も何も関係なく、二次元人側と三次元人側で交戦が続けられている中、戦況に変化が。

「ぬぅ……き、貴様ら! 二次元人(バケモノ)共に加担して、恥ずかしくないのか!」

「へっ、何を抜かしやがる……二次元だろうと三次元だろうと関係ねえだろうが」

「その通り! 彼らは我らと共に時代を駆け抜ける武士(もののふ)である!」

「テメェらこそ、悪事の数々を暴かれて居場所のなくなったクズだろうがッ!」

「悪いけど、あんたらの居場所はこの世にはない……さっさと冥途に行きな」

 思想主義の兵士達が二次元人に味方する三次元人の武将達に問い掛けるが、デイ・マァスンやシン・ユキジは凛然たる面魂で反論し、二人の主従であるタク・モンジュロと猿飛佐助は冷淡に吐き付けた。

 そんな三次元人の武将と、思想主義の軍勢がぶつかっていた正にその時。

「ぐおっ」「うぎゃッ」

 思想主義の兵士達の背後から、彼らを射抜く矢と縛り付ける糸付きのくないが飛んできた。

「なぬッ?」「あ、あれはまさか……!」

 全員が攻撃してきた方角へ目を向けてみると、そこには何と足正派の武将達が一部とはいえ登場していた。

「つ、鶴姫ちゃん!」「かすがさん!?」「ギンテル、さん……!?」

 プロト世代のチョコ、新世代型の瀬名アラタ、そしてミラーガールは驚いて参上した武将達の名を口に出した。

「へへ、皆さん、先ほどの戦はお疲れ様でした☆ また卑弥呼様からお告げがありました……今度は聖龍隊の人達のお手伝いをする様にって」

 麗しい笑顔で答える鶴姫は、弓矢を連続で発射し、思想主義の兵士たちを倒していく。

「ケンノフスキー様からの命令だ。今お前たちに死なれては困るらしい……なので私が直々に下種共を片付ける!」

 そう言うとくノ一かすがは単身、思想主義の軍勢の中に飛び込んで周辺の敵を糸付きくないで縛り上げて一掃していく。

「ミラーガール、さっきは大事なこっとに気付かせてくれてありがとばい。せめてものお礼と言うのもなんじゃが……助太刀するばい!」

 剣豪シマ・ギンテルは敢然と敵兵に突撃し、自慢の示現流で敵兵を切り倒していった。

「スコーピオン同盟に続いて、さっき戦った武人たちも加勢しにきてくれるとはな……!」

「ええ、ホントにありがたい話です! ……聖龍隊そのものにも、かけがえのない絆が健在していたんだ」

 助太刀してくれる悪役同盟や武将達を視認して、メタルバードと村田順一は感謝し尽くせない思いで一杯だった。

 そんな助太刀してくれる戦力も相まって、次第に戦局は聖龍隊側に有利になって来ていた。

「思想主義の連中め……なにが二次元反対じゃ! 元はと言えば二次元人に悪事を暴かれて居場所のなくなっただけの異常者(ヒール)の分際で偉そうに……」

「まあまあ赤犬、彼らは結局のところ其処が分からないから異常者(ヒール)なんだよ。要するに自分がどんなに価値のない人間か理解してないだけなんだよぉ」

「因果応報……全ては自らが犯した過ちが自分に帰ってきたっちゅう訳でござんす」

 聖龍隊共々、思想主義の軍勢と戦っている国連軍の赤犬/黄猿/藤虎は、思想主義の輩に対する本音を吐いた。

 

 戦局が次第に二次元人側に傾きつつある戦況の中、ある一人の青年だけは一向に降伏する気配がなかった。

「そりゃ!」「きゃっ」

 青年は強烈な蹴りでスター・ルーキーズのアスナを蹴り飛ばし、豪快に吹き飛ばす。

「このガキ……!」「あらよっと、それッ」

 アスナを蹴り飛ばした青年に、仲間のエギルが背後から襲いかかるが、青年は軽々と後ろ向きに跳躍してはエギルの両肩に足を置いて飛び乗った。すると彼はエギルの頭頂を手にしている双刀で斬り付けて、血を噴き出させる」

「うわっ」

 頭頂から血を噴き出して倒れるエギル。それと同時に青年は華麗に地面に着地すると次の標的を見定める。

「へへっ……次はどいつだい?」

 青年は好戦的な態度を示して、完全に聖龍隊の新人たちを威圧。

 すると其処に先ほど蹴り飛ばされたアスナが再度、青年に攻撃を仕掛ける。が、青年はアスナの攻撃をひらりそらりとかわして、彼女の手首に深い切り傷を与えた。

「うっ!」

 手首に深い傷をつけられ、悶絶するアスナ。すると今度は彼氏であるキリトが青年に向かって斬りかかった。青年はキリトの斬撃を華麗な足踏みでかわしていくと、一瞬の隙を突いてキリトの頭に強烈な頭突きを打ち込んだ。

「ッ!」

 頭突きを喰らったキリトは額から夥しい程の血を噴出させてそのまま卒倒してしまう。

「見たか! これが本場のパッチギや!」

 頭突きを打ち込んだ青年は卒倒するキリトに向かって得意げに叫ぶ。

 だが戦況は青年に対して極端に不利であった。既に同じ思想主義の軍勢は、国連軍によって排除されたか、聖龍隊によって戦闘不能にさせられて身柄を拘束されたかで、戦っているのは青年を含み一部の兵士のみだけとなっていた。

 しかし、そんな戦況下でも青年は降伏の姿勢は見せず、聖龍隊に抗い続けるばかり。

「チッ、二次元人(バケモノ)め……!」

 青年は例え自分一人になろうとも戦いを辞めない覚悟を秘めていた。

「あいつ、最後まで抵抗するつもりよ……」

 ミラールが青年が最後まで抗う覚悟を秘めている事を示唆していると、青年の憎悪に滾った顔を見た村田順一たちスター・コマンドーがある事に気付いた。

「彼は……まさか!」

 順一たちスター・コマンドーは青年の許に駆け寄ると、青年に声を掛けてみた。

「き、君は……もしかして!」

 声を掛けられた青年は、憎悪に滾った顔を順一たちに向ける。

「……順一……村田順一! ようやくまた会えたな……ミィチェン様の仇!」

「君はやはり……ミィチェンの側近だった……」

 スター・コマンドーと青年は顔馴染みだった。

 そんな突然の再会に一驚するスター・コマンドーに新世代型たちが駆け寄っては、順一たちに問い掛ける。

「じゅ、順一さん……あの人は……」

 新世代型のキャサリン・ルースが問い掛けると、順一は真剣な面差しで答えた。

「……間違いない。かつてあのヤン・ミィチェンの側近だった、マン・サコン! 見た目は、髪を染めて少し変わったけど」

 順一の返答に新世代型たちは騒然となった。

「や、ヤン・ミィチェンの側近!?」

「それじゃ、彼も北朝鮮の残党な訳!?」

「凶王と呼ばれ、恐れられたヤン・ミィチェンの部下だった男……ウソだろ!?」

 新世代型たちは各々でヤン・ミィチェンの名を聞いて恐れ戦いた。ヤン・ミィチェンと言えば二年前のアジア大戦で名を轟かせた悪名高い武将の一人だったからだ。そのヤン・ミィチェンの部下だったマン・サコンは、かつて黒髪一色だった頭髪を今では赤と茶のツートンカラーに染め上げていた。

 そのマン・サコンなる青年は、順一や新世代型たちを睨み付けて怒声を言い放った。

二次元人(バケモノ)共! ミィチェン様が仇、今討たせてもらうぜ」

 そう言うとサコンは両手に双刀を持って、目前の村田順一に襲い掛かろうとする。

 すると、そんなサコンの悪態を目撃して新世代型たちが騒ぎ出す。

「な、何を言ってんだにゃ! そっちこ北朝鮮の軍人として今まで悪いこと重ねてきたくせに……」

「なに……!」「にゃっ」

 新世代型の森園わかなの発言にサコンは激怒、激しくわかなを睨み付ける。

 怯むわかなだったが、そんなわかなの発言に感化されて他の新世代型たちも挙ってサコンに悪口を言う。

「そ、そうだそうだ! 拉致に核実験……色んな悪事を働いてきた北朝鮮に忠誠を誓っていたヤン・ミィチェンの側近が!」

「ヤン・ミィチェンってあれでしょ! 敵味方問わず、残虐非道な行いを繰り返してきた武将……!」

「ミィチェンって野郎のせいで聖龍隊だけでなく三次元人もたくさん虐殺されたらしいし、未だにそのミィチェンに忠誠を誓っているだなんてどうかしてるよ」

 このヤン・ミィチェンへの悪口を受けて、サコンは怒りに燃えた。

「て、テメェら……小田原修司のガキだけでも腹立たしいのに、ミィチェン様の悪口をほざくとは……何べん切り刻んでも足りねえな!」

「な、何言ってやがるんだ! 敵味方問わず殺傷してきたミィチェンを快く思っている人間なんか、この世に居ないよ!」

「それもそうだ……! テメェらは人間じゃねえ。俺たち三次元人が生み出しちまった二次元人(バケモノ)だ……!!」

 プロト世代のギュービッドの言い分に、サコンは苛立ちながら返した。

 するとその時「みんな、やめてくれ!」と声が。

 皆がその声の方に目をやると、そこには悲壮感に満ちた険しい面持ちで立ち尽くす村田順一が。順一は荒れる言動を吐き散らす新世代型たちに言った。

「みんな……頼む、それ以上ミィチェンを悪く言うのは止してくれ」

「順一、さん……?」

 突然の順一の嘆願に琴浦春香たち新世代型たちは唖然とする。

 すると順一はマン・サコンと向き合って彼と対話を始めた。

「サコン……君には、いいや、君たち北朝鮮の残党軍にはホントに申し訳ないことをした。ミィチェンを狂気に駆り立てた事も含み、此処に謝罪する」

「謝ったところで、ミィチェン様は……俺たちの国は戻らねえ!!」

「ああ、そうだ。謝ったところで君たちが忠誠を誓っていた北朝鮮は……いいや、本当に忠義を尽くしていたミィチェンは帰ってこない! そう、僕たちスター・コマンドーがこの手で……」

「ああ、そうだ……ミィチェン様はお前たちの手で……!」

 主君であるヤン・ミィチェンを殺めたのはスター・コマンドーだと説くマン・サコンは殺意に満ちた刃を両手に、今にも順一に飛びかかろうとしていた、其処にある一人の老兵が割り込んできた。

「待つんじゃサコンどん!」「! ギンテルの爺さん……」

 順一とサコンの会話に割り込んできたのは、剣豪シマ・ギンテルだった。ギンテルは真剣な顔つきでサコンに言った。

「サコンどん、おまはんらが聞いている順一どん達の武勇伝は少しばかし違うとる! ミィチェンどんは本当は……本当は自害したんばってん!」

「なッ……なんだって……!」

 ギンテルからヤン・ミィチェンの死の真相を聞かされたマン・サコンも新世代型たちも言葉を失くした。何故なら世間一般で聞かされている村田順一たちスター・コマンドーの武勇伝では、ヤン・ミィチェンを討ち取ったのは村田順一だと伝えられているからだ。

 そんな衝撃の事実を聞かされたサコンを前に、新世代型たちはギンテルに問うた。

「や、ヤン・ミィチェンはスター・コマンドーに……順一さん達に討たれて死んだんじゃなかったのか!?」

「それは国連が自分たちの側にとって都合のいい解釈を立てる為にでっち上げた作り話ばい。本当は追い詰められたミィチェンどんが自分の刃で……折られた長刀で自分の腹に突き刺して割腹したんばい!」

「そ、そんな……自害だなんて、アタイらそんな話聞かされてないよ!」

 新世代型の真鍋義久の問いかけに答えるギンテルの返答に、同じく新世代型の纏流子は愕然とした。

 だが真実を聞かされても尚、マン・サコンの憤りが納まる事はなかった。

「……そんじゃ何かい? ミィチェン様は、ミィチェン様は……討ち死にっていうカッコいい死に様じゃなく、自害っていうみすぼらしい死に様で逝っちまったってのか……!」

 サコンの睨みに新世代型たちが怯む中、村田順一はその睨みを敢然と受け止めていた。

 

 

 

[サコン対ジュン]

 

 かつて聖龍隊が進攻し、討ち滅ぼしたテロ支援国家「北朝鮮」

 その北朝鮮に厚い忠誠心を持っていたのが、後に凶王と呼ばれ恐れられた抜刀術の名手ヤン・ミィチェンだった。

 今から二年前、破邪王と共に新政軍を立ち上げ、聖龍隊に反旗を起こした北朝鮮の残党軍の総大将ヤン・ミィチェン。

 辛くも聖龍隊はヤン・ミィチェン率いる北朝鮮の残党軍を壊滅させ、ヤン・ミィチェンを自害に追い込んだ。

 だが、当時の政権は聖龍隊およびスター・コマンドーの武勇伝に花を咲かすために、ヤン・ミィチェンを徹底的な悪人に仕立て上げ、彼の死も自害ではなく最後まで無残に抵抗したものとして公表。それが現在に置いても定説になってしまっていたのだ。

 この事実を村田順一を始めとするスター・コマンドーの面々から伝え聞いた新世代型たちは衝撃を受けた。

 そしてヤン・ミィチェンの死の真相を語った村田順一は続けて新世代型たちに伝え話した。彼の主従マン・サコンと対峙しながら。

 

「……ミィチェンは決して狂気に駆り立てられた武人では無かった。ただ、誰よりも純粋で人を疑わない……不器用な人間だったんだ」

「不器用な、人……?」

 順一の語りに新世代型の琴浦春香が反応すると、村田順一の婚約者である愛澤マイが悲しげに代弁した。

「ヤン・ミィチェン……彼ほど祖国への忠誠心に厚い人はいなかった。非常に短気で、目指す目標以外の事は目に入らない視野の狭さが欠点だったけど……それ以上に純粋でまっすぐ過ぎて融通が利かない人間だった。簡単に言うと、馬鹿正直にまっすぐ進み過ぎて損をしちゃう人間だったのよ……」

 悲愴満々に語り明かすマイの話を聞いて、そのヤン・ミィチェンの部下であったマン・サコンが険しい顔つきで言い放った。

「そうよッ! ミィチェン様は、あの人ほどまっすぐで純粋な人間はいなかった! 確かに、短気で馬鹿正直すぎて損しちまう、融通の利かない点はあった……だけど! 俺さまはあの人の生き様に救われた……あの人の純粋な想いに憧れた! それを二次元人……貴様らが全部、根絶やしにしやがった……!!」

「そ、そんな人間だったのか……! ヤン・ミィチェンという武将は……!」

「聖龍隊も認めた、最も純粋な武人ヤン・ミィチェン……僕らはただ凶悪な武人としか伝えられてなかったけど、彼を慕う武人は居たんだ」

 目の前のサコンの話を聞いて、新世代型の出雲ハルキと星原ヒカルは凶王ヤン・ミィチェンの意外な素性を知って愕然とする。

 すると再び村田順一が重い口を開いてサコンと対話した。

「……サコン、確かに僕たちは戦争に勝った後、ずるい手で名声を得た。上からの圧力で情報を捻じ曲げて、ミィチェンに対する見方を世間に悪い様に伝えてしまった。その点は心から詫びよう……! けれど、ミィチェンが忠誠を誓っていた北朝鮮を破滅に追い込んだのは間違いでないと僕は信じたい!」

「!」村田順一の発言に、サコンは愕然とする。

「かつての北朝鮮……それは悪政を布き、民を脅かす国家なだけでなく、外国からも多くの人を拉致して、挙句の果てに核実験まで繰り返してきた間違った国家だった! その国家を放置する事は、僕らとしても到底見逃す事ができなかった! 北朝鮮の諜報員がアニメタウンに進攻してきたのを切っ掛けに、僕たち二次元人は大義名分を振り翳し、北朝鮮を逆に進攻した! そして北朝鮮の政権を崩壊させて、そこの民を解放させたのは間違いでは無かったと、今ではハッキリ言える!」

「だから俺たちを追い詰めたっていうのか!? 確かに、俺らの国は外国から人様を拉致ったり、核実験も幾度となく繰り返してきた……! だからって……!」

 新世代型たちが順一の罪人発言に衝撃を受け、サコンは自分の祖国が犯した過ちを自覚する言動を吐くと、サコンは怒りに満ちた形相で説き始めた。

「ミィチェン様が言ってぜ。どんなに強固な軍を率いても……どんな綺麗ごとを嘯いても……ミィチェン様は見ていた。テメェらの大罪を!!」

 これに対し、順一は頑なに険しい面持ちで受け答えた。

「ああ、解っている。綺麗ごとばかり嘯いて、周りを欺き続けてまで得た今の信用……大いなる絆は、偽りで塗り固められてた……」

 しかし順一は険しい強面に表情を一変させると、サコンに言い放った。

「だが! 全ての絆が偽りだったとは、僕たちは思わない!」

 全ての絆、人との繋がりは全て嘘偽りではないと説く順一の発言に、サコンは更に怒声を噛ました。

「テメェらは昔からそうだった! 自分達の野望を……夢や希望で飾り立たせ、ミィチェン様の……俺たちの未来を奪った!!」

 サコンの怒声に満ちた本心を聞いて、順一は意を決したように唱えた。

「そうだ! それが僕たち二次元人の決意であり罪だ! サコン、君の主ヤン・ミィチェンにも、あの金将軍にも……このアジアを任せられなかった!」

「テメェらはそれで満足だったろうな! 聖龍隊の大義名分を果たせられ、罪人として扱われた多くの北の国の仲間を次々と処刑しやがった……絆を掲げたお前達に、俺は全ての絆を奪われた。最後の希望だったミィチェン様まで死なせられ……俺は狂犬として貴様らに最後まで喰らい付く覚悟を決めた!」

「ならば! その覚悟を僕に、僕たちスター・コマンドーに向けてくれ! 終わらせてみせる、悲運な運命はここで! 終わらせる……!」

「終わりにはさせねえ……! テメェら……テメェら二次元人どもを皆殺しにするまで、俺の歩みは止まりはしねえ!!」

 村田順一とマン・サコン。未来を奪った者と、未来を奪われた者。その両者が激突する。

 

「笑ってんだろ? 俺を、ミィチェン様を……北朝鮮の敗北者を嘲笑ってんだろ!?」

「僕たちは誰も笑わない! 絶対に!」

「俺たちの絆を奪い、その一方では絆を説く! 答えやがれ、二次元人! この矛盾を……!」

 順一の拳とサコンの双刀が激しくぶつかり合う。

「ミィチェン様に死んで詫びろ! そして宣言するんだ、掲げた絆が嘘八百ってよ!」

「それだけはできない! 僕たちは決して、絆を捨てない!」

 順一とサコンの一騎打ちは、まるで二年前の対ミィチェンの様に感じられるスター・コマンドーと聖龍隊。

「僕は……僕は、これ以上ミィチェンの絆を奪いたくはない! サコン、君までも奪いたくない」

「もう俺からは奪ってんだろ……! 祖国を、ミィチェン様を……!!」

「君も、北朝鮮のやり方には賛成だったのか? 他者を踏みにじり、人の希望を奪い尽くす……その政策に!」

「俺は正直、北朝鮮とか関係なかった! ただミィチェン様が信じていたモンを壊した聖龍隊、貴様らが憎いだけだ!」

 拳と蹴りが激突し合う中、順一とサコンは語り合った。

「貴様らみたいなのをなんていうか知ってるか……? ペテン師、イカサマ野郎だ!」

「確かに、僕たち二次元人は姑息なまでに今を生き延びてしまっている……」

「アンタ、自分に嘘ばかりついてんだろ? だからイカサマ野郎ってんだよ!」

「ずけずけと言ってくれる。だが釈明はしない。言葉でなく、拳で僕の心を知ってくれ!」

 順一は振り翳せられるサコンの双刀を拳で弾くと、がら空きになったサコンの腹部に強烈な拳を打ち込む。

 腹部に強烈な拳を打ち込まれたサコンは、それでも立ち続けて亡き主君の想いを代弁した。

「あの人にとって……祖国がどんだけ重かったか……! 本っ気で解らなかったのか、順一ッ!?」

「解っていた、いや、つもりだったのかもしれない。……それでも僕たちは選んだ、北朝鮮よりも民を!」

「それがイカサマ……嘘っぱちだってのは当にお見通しだ! 本当はあの鬼神……そこでボケっと突っ立っている新世代型の親父にあたる小田原修司に言われるがまま北朝鮮に攻めたんだろッ!?」

「それでも……それでも僕らは選んだんだ! 我が師、小田原修司の意志よりも尊い、民の命を……!」

 互いに一歩も引かない熾烈な闘いを、周りはその激しさから介入する事が出来なかった。

「ジュン!」「ジュンさん……!」

 順一を心配するが余り、彼と同じ罪を背負う覚悟を決めているスター・コマンドーの白浜兼一と風林寺美羽が呼び止めるが、順一はスター・コマンドーの皆に言った。

「僕だけで闘わせてくれ! 彼の苦しみは……北朝鮮の軍人たちへの罪は僕が背負う!」

「何を言ってんだジュン! ……俺たち、もう決めたんだ。ジュンだけじゃない……俺たちも一緒に、ジュンと一緒に罪を背負って生きて行くって!!」

 順一の返答に、スター・コマンドーの平賀才人が強く返事する。

 一方の順一は、勢いを増してくるサコンの斬りと蹴りの二種ある戦法に苦戦を強いられていた。

 鋭い刀での斬撃に、強烈な蹴りによる打撃の嵐。順一はそれらを両腕で防ぐだけで精一杯だった。

 その一斬り一打には、順一たちスター・コマンドーの、いいや全二次元人への恨み辛みが籠められている事実を順一はひしひしと感じていた。

 多くの命を奪って来た順一に降り注ぐ、北の国の兵士達の恨み辛みが籠められた斬撃と打撃の嵐。

 

 順一は幾度の戦闘で力を消耗していたにも関わらず、サコンの憎しみに満ちた攻撃を何度も受け止め防ぎ切った。

 黄金色の拳と、サコンの朱色の刃が激しくぶつかり合う。

 と、二人の闘いが激しさを増してきた、その時。

 順一の黄金色の手甲が、想いを力に変える特性の手甲がサコンの憎悪の刃を受けた拍子に砕け散り、順一の傷だらけの手が晒されてしまった。

「!」「! (ジュン……!)」

 己の手甲が砕け散ったのを目の当たりにした順一と、その情景を目撃した仲間のスター・コマンドーは戦いた。

 長きに渡り使用してきた手甲が、おそらく強度が弱り、限界を来したのだろう。

 そして順一の手甲が砕け散ったのを視野に捉えたサコンは、容赦なく順一の晒された素手に双刀の片割を振り下ろして突き刺した。

 順一の拳に双刀の一刀が突き刺さり、刃が刺さった傷口からは夥しい程の血が噴き出した。

「きゃあっ!」「じゅ、ジュン!」

 順一の拳から出血が噴き出すさまを見て、マイは悲鳴を上げ、音無小夜も声を上げる。

 一方の順一は右手の拳、その手の甲に短刀を突き刺されながらも、声を上げる事なく苦痛に耐えていた。そんな順一に更なる痛みを与えようと、サコンは順一の手に刃を突き刺したまま傷口を抉るように手を動かしながら、それを軸に順一へ強烈な蹴りをお見舞いした。

「ぐッ!」

 手の甲の痛みに加えて、防御できない状態への強烈な蹴りが順一を悶絶させる。

 そして手甲が砕けた事も含めて、順一は利き手を深く負傷した事態で戦闘不能に陥ってしまう順一。

「まだだ……まだ、ミィチェンの魂に応える為にも……ここで、終わる訳には、いかない…………」

 利き手を負傷しても、闘争心は潰えない村田順一だったが、仲間であるスター・コマンドーが決闘する二人の間に割り込んで、サコンを制止する。

「ジュン、そこまでだ! もう無理すんじゃねえ!」

「サコン、復讐で自分を落ちぶれさせる真似はしないで!」

 スター・コマンドーの平賀才人が傷ついた順一に声を掛け、同じくスター・コマンドーのハイパー・ブロッサムがサコンを制止する。

 だが、主君を奪われたサコンの怒りは収まらなかった。

「まだだ……まだ、テメェらの首を……テメェら二次元人どもの首を、ミィチェン様に捧げなきゃ、俺の気が済まねえ!!」

「くっ、また悲しき闘いを繰り返さなきゃならないのか……! 二年前同様、北朝鮮の残党と悲しき闘いを!」

 怒りが収まらないサコンを前に、スター・コマンドーのセレブナイトが悲痛に叫ぶ。

 そしてサコンは単身、負傷した村田順一を取り囲むスター・コマンドーに突撃した。

「うおおおおおおおッ」

 怒声にも近い雄叫びを上げながらスター・コマンドーに突撃するサコン。

 と、その時。スター・コマンドーに突撃するサコンを未然で制止した人物が。

 それは二次元人に何か思いを寄せる台湾軍が国将軍シバ・カァチェンであった。

「テメェ……何様のつもりだ?」「………………………………」

 自分の攻撃の邪魔をしてきたカァチェンに、サコンは睨み付けて威嚇した。だがカァチェンは冷然とした面持ちでサコンを見詰めていた。

 

 

 

[一人と独り]

 

 聖龍HEAD、そして足正軍に思想主義の軍勢。幾たびの戦闘を繰り返してきた村田順一は消耗し切り、限界が近づいていた。

 そんな順一を圧倒し、追い詰める事に成功したマン・サコン。彼は順一の首を今は亡き主君ヤン・ミィチェンの墓前に供える為、順一の首を断頭しようと斬りかかった。

 だがその時、自分よりも格段に多くの人々から慕われる順一に何か思う所があったのか、台湾が国将軍シバ・カァチェンがサコンの凶行を制止した。

 カァチェンによって断頭を阻害されたサコンは、カァチェンを二次元人に味方する裏切り者として捉え、彼と対峙した。

「シバ・カァチェン……! お前が俺の邪魔をするってんなら、テメェも二次元人共々嬲り殺すまでだ!」

 だがこの時、双方は気付いていなかった。お互いの胸中に秘められた過去に、忌わしくも儚い酷似した共通点がある事に。

 

「テメェ……俺の邪魔すんのか?」「………………」

 お互い初対面であるサコンとカァチェンは、互いに向かい合う。

 すると、そんな緊迫した時間の中でサコンの方からカァチェンに問い掛けてきた。

「アンタ、なに二次元人どもに吹き込まれた? コイツらほどズル賢い連中はいないっしょ」

「何も、吹き込まれておりませぬ……強いて言うなら、彼らの生き様に何かを見出したと言えば宜しいのでしょうか……?」

「ふっ、やっぱりね。コイツら、見た目はともかく中身は絵の具とかで作られたバケモンだぜ。生き様も何もないっしょ」

「確かに……彼らは私たち三次元人の妄想から生み出された産物……けれど、私は確かに感じたのです。人の子ではない、彼ら二次元人の中に光を見出したんです……」

「チッ、訳わかんねえぜ……ま、いいか。二次元人に味方する以上、テメェも俺が片づけるだけだ」

 サコンは一通りカァチェンと対話すると、双刀を抜刀して戦闘態勢に突入する。

 

「さあて、アンタは半か丁か……這入りやす!」

 戦闘を賭け事の様に捉えているサコンは、カァチェンに向かって突進。カァチェンも対峙するサコンに向かって突進する。

 と、二人に衝撃が走った情景が、対峙する二人を襲った。

 対局した二人が垣間見えたのは、希望を失った過去の己と、希望を見出した過去の己自身であった。

「私?」「俺!?」

 互いの得物と得物、逆刃薙(さかばなぎ)と双刀が激突した瞬間、二人は互いに時が止まったかの様にこう着状態に陥った。

 だがカァチェンとサコン、二人はハッと気が付いては双方ともに距離を置いて対峙した。

 そして戦闘に突入するカァチェンとサコンは激しく刃を交える。

 すると此処でサコンがカァチェンと闘いながら彼に訴えかける。

「あんたに俺の何が解るんだ……! 主君を、国を……生きる目標を、全て奪われた人間の辛さが解るのか!?」

「私には……いえ、私には少しだけ理解できます。過去(かつて)の私の主君、モウ・チェイファン殿は、冷酷でありながらも多くの人望をかき集めておりました。その主君が破れ、死に果て、砕け散った現実(いま)もチェイファン様の人望は厚いものです」

「だったら! テメェも解ってんだろ!? 二次元人の存在で、死に追いやられた三次元人がどれだけいるのか! こいつらが存在しているお蔭で、世界がどれだけメチャクチャにされちまったか……!」

 このサコンの怒りと切なさに満ちた言動を聞いて、新世代型たちは胸を締め付けられるほど苦痛に溺れた。そんな中、カァチェンはそんなサコンに返事をする。

「はい、確かに二次元人の存在で今生の世が乱れ続けている情勢は私も同意です……ですが、彼らはただ悪戯に世間をかき乱している訳ではないのです……彼らは私たちの様な迷い子なる三次元人を導いてくれる道標でもあるのです」

「私たち、だぁ? それに導いてくれるって……何を抜かしやがる!」

 カァチェンの言葉が理解できないサコンは苛立ちに満ちた形相で斬りかかるが、カァチェンは身を反らして回避するとサコンに申し渡した。

「私たちは同じです……! 先ほど垣間見えた私と貴方の過去……主君に拾われ、主君を失い……私達の過去と現実(いま)はとても酷似しています……」

「俺とあんたが、同じ過去に今、だと……!」

「ええ、そして……そんな三次元人を光ある未来(さき)へと導いてくれる、希望と言う光を与えてくれるのが二次元人なのです……! 私は、現実(いま)に至るまで二次元人達と行動を共にしてきました。そして少しだけ解ったのかもしれないのです……彼らは、私たちの様な迷い子たる三次元人を未来(さき)へと導いてくれるのではないかと……」

「なッ……! ふざけてんじゃねえぞ! 俺にとって、自分を導いてくれた存在はミィチェン様だけだ! 二次元っていうバケモノ共じゃねえ! 俺の未来を指し示し、生きる希望を与えてくれた……いいや! 生きる希望そのものだったミィチェン様は二次元人どもに殺されたのも同然だ! テメェは、そんな連中に生き甲斐を感じていやがるのか!?」

「……解りませぬ。しかし、二次元人には無限の可能性が秘められていると言われています……私は、そんな彼らの可能性に惹かれているのは確かなのかもしれません……」

「無限の可能性だと……? それってつまり、危険なバケモノにも変身しちまう可能性もあるって事じゃねえか!!」

 何とか闘いながらサコンに問い掛けて彼と解り合おうとするカァチェン。しかしその目論見も悉く外れ、サコンはカァチェンに反発しながら蹴りと刃の両方で迫り続ける。

 それでもカァチェンは、自分と似たような過去を持つサコンをどうにかしたいと考え、彼の憎悪をかき消すために説き続ける。

「私を見てくれ……しっかりと、見てくれ! 私は貴方だ……未来の貴方だ……!」

「フザケタ事言ってんんじゃねえ! 俺が……アンタみたいに二次元人(バケモノ)共の世話に為るなんて、天地がひっくり返っても有りはしねえ!!」

 カァチェンの必死の訴えに耳を貸さないサコンは、強烈な攻撃をカァチェンに仕掛ける。

「この世は所詮、一天地六……勝つか負けるかが、世の中の理っしょ」

 この世の全ては勝つか負けるか、結果だけがモノを言うと断言するサコンの台詞に、対峙するカァチェンも彼らの決闘を見守っていた新世代型たちも愕然と目を見開く。

 主君を失い、活きる目標全てを失ったサコンを相手に、カァチェンは彼を説得できないのか自分を責め始めた。

「私達は……ただの影法師に過ぎないとでもいうのか……? 違う……違う! 私は、今の私は現実(いま)の自分に絶望なんぞしていないッ!」

 今の自分は二次元人達との出会いや経験から、絶望や不幸に陥ってないと自分に強く説き掛けるカァチェンは、再度サコンに訴えた。

「では、まず……二次元人を許す前に、私と共に歩んでほしい……同じ三次元人として、同じ境遇を積み重ねてきた者として……同じ時を生きようではないか」

「!!」カァチェンからの提案に、サコンは衝撃を受けた。

 北の国で孤児として、物心ついた頃から一人で生き抜いてきたサコンにとって自分を必要だと認めてくれた存在は、今は亡き主君のヤン・ミィチェンだけだった。ミィチェンに認められたサコンは、それから変わった。ミィチェンに褒めてもらうため、ミィチェンの功績に繋がりそうな事は率先してやった。そして北の国が壊滅した後も彼は傷心したミィチェンを支え、二年前の乱世まで共に生き抜いてきた。だがその二年前の乱世でミィチェンを失ったことで、サコンは全てを喪失してしまった。

 そんな自分を受け入れてくれるカァチェンに、サコンは二年前に失ったミィチェンとカァチェンを重ね合わせた。

 と、次の瞬間。カァチェンの逆刃薙(さかばなぎ)がサコンの双刀を弾き飛ばした。得物である双刀を弾かれたサコンは、蹴りでカァチェンに応戦しようと足を蹴り上げるが、全ての蹴りをカァチェンに防がれてしまう。

 そしてカァチェンは無防備になったサコンの額を逆刃薙(さかばなぎ)の峰の部分で打ち付け、サコンを退かせる。

「ッ……!」

 額を薙の峰部分とはいえ打ち込まれたサコンは、額を押さえながら後ろへと退く。

 するとそのサコンに聖龍隊の隊士達が駆け付け、サコンを取り押さえて動きを封じた。

「は、放しやがれ、テメェら……!」

 取り押さえられたサコンは、自分を押さえ付ける隊士たちに反抗するものの、隊士たちはガッシリとサコンを押さえ付けていた。

 すると押さえ付けられているサコンに、双刀を弾き飛ばしたカァチェンが歩み寄り、声を掛ける。

「サコン……貴方は強い。過去(かつて)の私は、現実(いま)に絶望して未来(さき)へと進む意欲も湧かなかった……けれど、貴方は過去の喪失にも打ち勝ち、今なお主君の仇を討とうと必死になっている……本当に、素晴らしい」

「………………!」

「だが、憎悪だけでは創れる未来(さき)も無い。怒りや憎しみだけの未来(さき)など、未来(さき)ではない……」

「ッ………………」

 カァチェンに指摘を受け、サコンは口元を歪ませた。

 

 そしてそのままサコンは隊士たちに連行されていかれた。

 かつて、孤独だった自分を、欠かれた心を持つしか能が無かった自分を二次元人によって今まで導かれた劣将シバ・カァチェン。

 かつて、一人だった自分を、生きる希望を持てずに苦しみの中で生き抜いてきた自分を主君になる人物に拾われて未来に光を見出した武人マン・サコン。

 二人の武将の、孤独だった現実(いま)と、全てを失った現実(いま)を賭けた闘いは、一旦は終わった。

 

 そして新世代型二次元人達は、初めて北朝鮮の残党軍総大将ヤン・ミィチェンの事実を知って愕然とした。

 凶王と呼ばれ、多くの人々を殺傷してきた残忍と言われた武将。だが、その実態は自分を偽らず、全てを率直に受け止めすぎた為に損をしてばかりの哀しき武将だった事を。

 このとき新世代型二次元人達の心中には、多少ながらも北の国を滅ぼし、ヤン・ミィチェンを死に追いやった事に対して罪悪感に苛まれる心境を持つ者が現れていた。

 

 

 

[戦闘が終わり……]

 

 聖龍隊とスター・コマンドーの決戦が、国連軍や黒武士の介入に続き、反二次元思想主義の乱入によって殺伐とした現状が鎮まり返った荒野で。

 スター・コマンドーの軍勢を指揮していた村田順一は、長きに渡る自分達と聖龍隊の反発に己が師である小田原修司が介入してこない現状にようやく気付いた。

 黒武士の言う通り、小田原修司は彼の……いや、新世代型二次元人の犠牲として葬られたのかと疑心暗鬼に至った。

 村田順一は、聖龍隊総長バーンズに停戦の義を持ちかけた。バーンズ自身も、小田原修司の事はもちろん、黒武士の暴走を止めるべく順一たちとの停戦協定に応じた。

 戦場跡地には、一度は仲たがいしてしまった聖龍隊とスター・コマンドー、聖龍隊に与した隊士もスター・コマンドーに寝返りして与した隊士も、敵味方問わず戦闘の傷を癒していた。いや、この戦いに敵も味方も無かったのかもしれない。

 そんな情景を村田順一たちスター・コマンドーの面々が眺めていると、彼らは改めて自分達が信念の為に仕出かした争いの醜さを痛感した。一枚岩だった聖龍隊を分裂させ、友や好敵手同士を争わせて、傷つけ合わせた罪科を順一たちは非常に重く受け止めた。

 

 その一方で、聖龍隊総長バーンズと国連軍元帥赤犬は兵士達が休息している広場の片隅に設けられたテント内で対話していた。

「バーンズ、聖龍隊内部で起こった内乱は貴様ら身内の問題として見過ごす事はできるが……新世代型二次元人に対してだけは見過ごす訳にはいかん……! 奴らは、既に自分達が小田原修司のクローンじゃと知って、精神に異常をきたした輩も少なくはない筈じゃ。ここはワシら国連軍に新世代型の身柄を預けた方がよかぁね」

「いや、赤犬。新世代型は此方で身柄を預かっておく。お前らのところじゃ、連中も落ち着いていられやしねえからな。……ヤクザみたいな風貌の軍人を前に、落ち着けっていうのも無理な話だが」

 自分達がクローンである事を周知した新世代型が何らかの異常をきたすと指摘した赤犬は、彼らの身柄を国連軍に譲渡するようバーンズに指示。だがバーンズはこれを拒否し、新世代型二次元人達は今後も聖龍隊内で身柄を預かると赤犬に言い切る。

「ワシらが言わなくとも、新世代型の事で三次元政府が黙っとりゃせんぞ……! いずれ政府から勅令が下るじゃろう……!!」

「そん時はそん時だ。オレ達は今をどうにか立て直す事の方が最優先……ま、新世代型に対してはオレ達も目を光らせているから安心しろよ」

「フンっ、まあ、ワシらとしては足正義輝の現調で乱れ切ってしまった世界の秩序を鎮圧する役目がある。その役目で多忙なばかりのところで問題を起こしちょる新世代型の身柄を預けてくれるなら好都合じゃわい。……ところで、例の北の国の残党軍兵士じゃったマン・サコン、あいつはどうするつもりじゃ?」

「あいつも新世代型同様、こっちで処理しとくよ。北の国の問題は、修司の頃から連なっている聖龍隊の課題だからな」

「フン、そうかい。まあ、あやつも危険な人間……いや、狂犬と呼ぶべき輩じゃ。それを聖龍隊の方で始末してくれるなら、それも好都合……煮るなり焼くなり好きにせい」

「どちらにしろ……オレたち聖龍隊は修司のクローンとしてではなく、一人一人の二次元人として新世代型を保護していくつもりだ。今までも、これからも……。そしてマン・サコンに対してもオレ達なりのケジメをつけるつもりだ。まあ、お前さん達はお前さん達で、世界の秩序を取り締まってくれや」

 新世代型たちの身柄に対しての議題を対談し合った二人は、次に凄まじい戦力を秘めていた、あの黒武士に対して議案し合った。

「あの黒武士……本当に修司を倒しちまったのかね?」

「よくある異常者(ヒール)の戯言かと思うが……まあ、少なくとも修司の身に何かあったのかもしれないというのは、解るかもしれん……」

「確かにな……オレ達HEADとスター・コマンドー、師弟関係だったオレ達が仲たがいして聖龍隊に緊迫した空気が流れた瀬戸際だったっていうのに、修司は一向に姿を見せなかった。何か問題が生じたと言うのが最もな説だが……」

「正義に対しても不信感を募らせていた修司がどうなろうと、わしは全く知らんが、新世代型である黒武士が始祖である小田原修司を殺めた可能性があるっちゅうのが気に食わん! 三次元人に危害を加える二次元人を……異常者(ヒール)を放置しておく訳にはいかん!」

「それもそうだが……まだ黒武士が新世代型だと決めつけるのは早くないか? それと、黒武士が今どこに居るのか見当もつかん。此処は黒武士に対する情報を待つしかオレ達にはできないんじゃないのか?」

「ううむ……! 何もできない、このもどかしさだけは慣れんわッ! こうしている間にも、黒武士が如何なる異常行動を……悪事を働くか!!」

 黒武士に対する情報が届くまで待機するしかない状況に、赤犬は苛立ちを覚えるばかりだった。

 スター・コマンドーとのけじめ、新世代型二次元人の身柄、戦場で捕えたマン・サコンの処分、そして黒武士に対する大きな課題を三つ残して、バーンズと赤犬の対談は終わった。

 

 同じ頃、聖龍隊スター・ルーキーズの【TIGER&BUNNY】のキャラ達が、足正義輝への進撃にも加担した国連軍元帥補佐官ユーリ・ペトロフと話を持ちかけていた。

「ペトロフ! お前さんたち国連軍は、本当に新世代型二次元人を危険視しているのか!? 同じ二次元人じゃねえか……!」

 ワイルドタイガーが問い掛けると、彼らの話し掛けにユーリ・ペトロフが冷淡な面差しで答え返した。

「全ては上層部が……世界が決めた決議です。我々、国連軍はそれを遂行に移しているだけの事……あなた方、上辺だけの正義を振り翳す英雄気取りの輩とは考えそのものが違うんです」

「なんだと!」「虎徹さんッ」

 ペトロフの言い分に怒り出すワイルドタイガーをバーナビーが取り押さえて宥めると、タイガーを取り押さえながらペトロフに問う。

「ペトロフさん、僕たちは確かにお互いの正義の価値観の違いで聖龍隊と国連軍と言う立場に分裂してしまいました。でも、僕らが目指していた所は同じだった筈……争いも差別もない、平和な世の中を目指していたんじゃなかったんですか!?」

「私は私の正義を認めてくれた赤犬元帥に従うまで……今の私が目指すのは、赤犬元帥が目指す異常者(ヒール)無き世界。それを果たす為なら私は……いいえ、私たち国連軍は如何なる強硬な正義も怠らないつもりです」

『………………!』

 ペトロフの国連軍が如何なる強硬な正義も怠らない発言に、タイガーたちは愕然とする。そんなタイガーたちにペトロフは、新世代型二次元人への対策を述べた。

「まあ、今あなた達が保護している新世代型二次元人につきましては……確かに彼らは自分達の出生の秘密を知って愕然としているのは事実です。ですが、今は経過を観察するのが得策だと私的には思います。いくら危険な可能性を秘めている新世代型とはいえ、全員を監禁して監視するのも一苦労しますしね」

 元帥補佐官ユーリ・ペトロフは、自分たち国連軍の強硬な正義を否定する事無くワイルドタイガーたちNEXTヒーローたちに語った。

 

 その頃、聖龍隊に捕縛されたマン・サコンは拘束させられた状態で軟禁されていた。

 そんなサコンに何かしらの手を差し伸べたいと願い出る武人が、ウェルズたち聖龍一般隊士達に訴え出ていた。

「……カァチェン、お前さんはあのサコンって奴をどうしたい訳なんだ?」

「はい、ウェルズ殿……私は、あのサコンなる者に不思議な縁を感じているのです……」

「不思議な縁?」

 カァチェンが申す不思議な縁と言うのを聞いて、一般隊士の森谷賞がカァチェンに問い返す。

「はい、あのサコンなる者と対峙した時、確かに垣間見えたのです……私たちの過去と現実(いま)には限りなく近いものがあると……」

「限りなく近いもの……つまり、酷似しているところがあると言いたいのか?」

 盲目の剣士、早見青児が問うとカァチェンは物静かに返答した。

「はい、早見殿……私は過去に夢や希望を喪失しました。が、今生の現実(いま)で私は聖龍隊の方々と出会い再び希望と言う名の光を見出せました……。あのサコンなる人物も同じです……私同様、生まれながらに希望を持てず、されど一度とはいえ希望を見出せたが、再びその希望を失ってしまった……己の祖国と主君という希望を失い、現実(いま)に至ったんです……」

『………………………………』

「ですから、どうも他人事の様には思えないのです。あのサコンは過去(かつて)の私そのもの……! 夢や希望を失い、現実(いま)という混沌の世を彷徨う迷い子……どうか、サコンと話をする機会を得させてもらえないでしょうか?」

 カァチェンの申し出を黙って聞き入れるウェルズ達。するとウェルズは険しい面持ちで言った。

「あのサコンなら、今さっきまで暴れ回っていたのがようやく落ち着いてきやがった……けれどよ、お前さんと話して、あのサコンって奴が変わるのかね?」

「………………!」

「言っちゃあ何だが、あのサコンが抱いている憎悪は並々ならないものがある。祖国はともかく、その祖国に忠誠を誓っていた主君を失い、その狂気の矛先を仇である俺たち二次元人に向けている。そんな奴と話をして、お前さんはあの男の何を変えられるんだい?」

 ウェルズから厳しい指摘を受けるカァチェンは言葉を失った。するとウェルズに続いて、一般隊士の木之元桃矢と月野進悟もカァチェンに問うた。

「そうだな、俺たち二次元人が北の国に対して仕出かした事は大きい。そして二年前、残党軍を率いていたヤン・ミィチェンを死に追いやった事も含めて、あのサコンが俺たち二次元人を許す気には、そうそうならないだろう」

「修司さんに扇動されたとはいえ、北の国を滅ぼしたのは俺ら聖龍隊なのは間違いない事だし……悲しいけど、そんな聖龍隊を目の仇にする輩は多いんだよな。あのマン・サコンが簡単に心を開いてくれるとは、到底思えないし……」

 数々の指摘を受けて、カァチェンは考え込んでしまい黙然としてしまう。

 そんな考え込むカァチェンを目前にし、ウェルズは溜息をついて彼に言った。

「ふぅ、やれやれ、仕方ないな。まあ、鉄格子越しで対面するなら何も文句は言わねえ。お前さんの一言一句がサコンに通じるといいな」

「は、はい……ありがとうございます、ウェルズ殿」

 カァチェンは素直にウェルズに礼を申し述べた。

 

 

 黒武士の「全ての個性(いろ)を滅ぼす」宣言から始まり、その直後に奇襲してきた反二次元思想主義の軍勢。その軍勢の部隊長に収まっていた北の国の残党軍兵士だったマン・サコンの捕縛。

 

 様々な問題が山積みとなっている現状で、聖龍隊とスター・コマンドーが辿る道は。

 

 そして二次元人に対して主君の仇として恨み続けるマン・サコンの心境は、カァチェンによってどう変わるのか?

 

 聖龍隊/スター・コマンドー/国連軍/黒武士/マン・サコン/そしてシバ・カァチェン。

 多くの武人たちの思想が複雑に絡み合う中、彼らは動き出す。

 

 果たして二次元人から多くの夢や希望と言う光を見出させられたシバ・カァチェンは、二次元人によって希望を摘ままれ奪われたマン・サコンの心情を変える事ができるのであろうか。

 

 

 

[マン・サコン]

 

属性:風

武器:双刀

肩書:双天来舞 (そうてんらいぶ)

登場時の書き文字:勝負

一人称:俺

出身国:三次元界:北の国

 

概要

 かつて北朝鮮の残党軍を従えたヤン・ミィチェンの忠実な部下であり、新世軍所属の兵士だった若者。

 残党軍の斬込み隊長で、自らが指揮する部隊を「サコン隊」と捉えている。

 嫌いなものは幽霊とイカサマ。

 

性格

 見た目通り軽い性格。賭け事を好み、3つのサイコロを常に持ち歩いている。

「マジ」「~ッス」等の若者言葉を駆使する。

 明るく空気が読めるタイプであり、コミュニケーション能力も非常に高い。

 しかし普段のチャラけた言動とは別に、容赦なく他人の心を抉る言動も見られる。

 だがそれは裏表があるわけではなく、「どちらも表の顔」である。

 

 

 北朝鮮のコチェビ(孤児)として生まれ育ったサコンは幼少の頃から一人で生き抜く為に泥棒や略奪を繰り返していた。

 そんなサコンはある日、親の用事で荷材を運搬していた幼少期のヤン・ミィチェンと出会い、彼を襲撃して荷材を奪おうとしたが、幼少の頃から剣術に秀でていたミィチェンに返り討ちに遭う。

 しかし、そんな襲撃してきたサコンの無鉄砲さに何かを見出したミィチェンの計らいで、自分が指揮する軍の養成部隊に加えてもらった。(幼少期から、親に優秀な軍人として育まれたミィチェンは、自分が認めた同年齢の子供を軍人に育成する施設を、親から提供されてたらしい)

 祖国の為に忠義を貫くミィチェンに憧れを抱き、いつかそんなミィチェンに近付こうと精一杯養成所で自分を鍛えた。そのため、彼が忠誠心を抱いているのはあくまでミィチェンに対してであり、北朝鮮やその政治的思想にはあまり興味が無い。

 命を賭けられるほどミィチェンを慕っているものの、ミィチェンに対する忠誠心も本人の祖国に対するような依存的な感じではなく、他の従者みたいに「あくまで自分は自分、ミィチェン様はミィチェン様」としっかり分けている。

 しかし聖龍隊の進攻により国が壊滅し、それにより暴走したミィチェンを、身を呈して身を呈して諌める。

 サコンの命懸けの説得で、ミィチェンはなんとか正気を取り戻す。

 その後、国の崩落により精神的悲痛を受けたミィチェンは過度の拒食症に陥ってしまい、それまで以上に身を細めてしまったという。

 そして二年前のアジア大戦でミィチェンは順一たちスター・コマンドーによって自害に追い込まれてしまい、それによってサコン自身は狂犬の様な禍々しい目付きへと変貌してしまったという。

 

 サコンの半生を簡略的に言えば、孤児の頃は野良犬、ミィチェンに出会ってからは忠犬、ミィチェンの死後は狂犬といった感じ。

 

 

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