聖龍伝説 現政奉還記 創生の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

5 / 18
 黒武士の謎の発言を受けて、衝撃を受ける戦場の一堂。だがその直後、国連軍元帥赤犬の一喝により、聖龍隊が立ち上がり敵味方問わず手を差し伸べようとしたその時、突然彼らを襲う一団が。それは二次元人の存在に対して反発的な思想を抱く「反二次元思想主義」の軍勢だった。彼らは互いに戦闘し合い、激しく戦力を消耗した聖龍隊とスター・コマンドーと国連軍を一気に叩こうと奇襲を仕掛けてきた。三つ巴の勢力は、この奇襲に抗戦する為にも共闘戦前を布いて敵勢力と激突する。そんな中、その反二次元思想主義の軍勢の中に乗りの軽い青年の姿が。それはかつて北の国の残党軍総大将ヤン・ミィチェンの部下だったマン・サコンであった。サコンは自分の主君を奪った二次元人に一矢報いようと部隊長として反発組織に加わっていた。彼の猛攻に聖龍隊新人のキリトやアスナ達が苦戦を感じる中、主君の直接の仇である村田順一と対峙した時サコンの中の狂犬が目を覚まし、順一に一矢報いる。すると其処に台湾軍が国将軍シバ・カァチェンが割愛し、サコンとの間に入る。サコンと対決する事に至ったカァチェン、対峙した二人が垣間見えたのは過去の己自身だった。何とかサコンを取り押さえる事に成功した聖龍隊は彼を拘束。そして一同は今後の課題について様々な議題を論じるのであった。



現政奉還記 創生の章 和解する聖龍隊、遂に涙する流星

[猛省する流星]

 

 自分たち二次元人の存在に異議を唱え、反抗してくる勢力「反二次元思想主義」の軍勢を討伐し、その部隊長として籍を置いていたヤン・ミィチェンの片腕であった武将マン・サコン。

 数々の戦歴を潜り抜け、聖龍隊とスター・コマンドーと国連軍の三つの勢力は、どうにか凌ぐ事ができていた。

 国連軍は小田原修司のクローンである新世代型二次元人の身柄引き渡しを聖龍隊総長バーンズに訴えるも、バーンズはこれを拒否。新世代型たちは今まで通り聖龍隊の傍らに置いておく事に。

 そんな聖龍隊の生易しいやり方に半ば愛想を尽かした国連軍元帥赤犬は、自身の直属の部下である元帥補佐官ユーリ・ペトロフ、そして大将の黄猿と藤虎を引き連れて世界の安定を計る為に聖龍隊と行動を別にした。

 一方、「反二次元思想主義」の部隊長に潜り込んでいた北朝鮮の残党兵士マン・サコンは、台湾軍が国将軍シバ・カェチェンと対峙した結果、激情で生じた僅かな隙を突かれて敗れ、聖龍隊に拘束される事となった。

 

 これら一連の騒動の動きを事細かく詳細に見届けていた村田順一らスター・コマンドーの猛者たちは、深手を負い、傷だらけになった聖龍隊の隊士や自分達に着いてくれた兵士の惨状を一望して改めて自分達が起こした争いの大きさと悲惨さを痛感するのだった。

 自分達にとって有利な戦況を起こす為とは言え、一枚岩だった聖龍隊を分裂させてしまった順一は深く後悔の思慮に耽ってしまわれる。

 遂に村田順一は、聖龍隊の裏方の仕事に深く就いていた深澤マイを除外した、他のスター・コマンドーと共に聖龍隊に投降。聖龍隊を離反した裏切り者として拘束されてしまう。

「バーンズさん! 順一さん達は、自分たちの信念を貫いて、あなた達と激しく……意地と意地とをぶつけていたに過ぎないんです! どうか、順一さん達に寛大な処置を……」

「それができりゃあねえ……しかし順一たちがやった事は確かに聖龍隊への裏切り行為。簡単な処置を下せば、それだけ組織内の歯車が欠けて崩落しちまう。統制を取り続ける為には、寛大な処置なんて生易しい処置にできないのが、実情だ」

「そ、そんな……」

 プロト世代のチョコが必死になってバーンズに訴えるが、彼は聖龍隊の組織としての統治を維持する為には、それなりの厳しい罰則を順一たちスター・コマンドーに科させねばならないと言う。

 そんな物思いに耽りながら曇天を見上げるバーンズが語る実情に、チョコは暗い面持ちから一変、薄らと目に涙を浮かべた力強い面魂でバーンズに言った。

「バーンズさん!」「はっ、はい……?!」

 大地を震わせる程の大声でバーンズに呼び掛けるチョコ。驚きの余り、バーンズは軽く飛び上がってしまう。

 チョコは力強い面魂で、驚き慌てふためく顔のバーンズに言い切った。

「バーンズさん、確かに順一さん達は自分たちの信念に基づいて聖龍隊と決別し、挙句の果てには聖龍隊を完全に分裂させてしまいました」

「あ、ああ、その通りだ。ジュンは確かに人望があったんだが、それでジュンたちスター・コマンドー側に寝返る隊士も続出しちまったってのが一番の問題だよ。寝返った隊士一人一人に罰則を与えるよりも、騒動の発端たるジュン達スター・コマンドーに罪責を負わせるというのが筋の通った見解だとオレは認識している」

「だけど! 騒動の発端って……それは、私たちを縛り付けている異常者(ヒール)排除法案じゃないんですか!? ジュンさん達は、そんな悪法を改正する為にも自分達だけで今まで頑張ってきたんですよ……!」

「ああ、それは全く持ってその通りなんだが……前にも言ったろ。排除法案は、同時に二次元人の人権維持を保持する為の政策だと。簡単に法案の政策を改正されちまうと、今度は善悪関係なく、オレら二次元人全般が棄権に曝されちまう訳? 解った?」

「………………………………」

「ま、まあ、オレとしてもジュン達を何とか軽く処罰させたいとは常常思っているぜ。でもな、組織統括の為には、それなりの厳しい処罰も必要な訳なんだ。……解ってくれよ」

 話の終わりに、悲痛な胸の内を曝したバーンズは、チョコと話を終えると聖龍隊頭目HEADの許へと戻ろうとした。

 するとバーンズがHEADの許へと戻ろうとしたその時、チョコの方から威圧的な風が吹いてくるのをバーンズは背中で感じた。

 そして徐にバーンズがチョコの方へ顔を向けてみると、チョコは一際険しい面持ちでバーンズに話した。

「確かに、私たち二次元人は排除法案で生かされているのは長い旅路を皆と付き合っていく中で学んできました。大切なものを十とすると、残りの一を切り捨てなければ政治というのは成り立たないシステムなのも重々理解しています」

「………………」

「だからこそ! そんな運命に少しでも抗おうとした順一さんをこれ以上、追い詰めないで欲しいの!」

 チョコは涙ながらにバーンズに訴えかけ続けた。

「あの人は、聖龍隊が今まで仕出かした罪を……北朝鮮の解放に伴う悲劇も、二年前の乱世で背負った罪も、何もかも背負いすぎて、一人で苦しんでいるだけなんです! 実際、順一さんははスター・コマンドー全員で人間の業を背負っているって言っているけど……本当の処は自分ひとりで全てを背負って、最後には死ぬつもりなんです! そんな温かくも力強い武将、正直順一さんだけですよ!」

 チョコの涙ながらの訴えを聞いて、バーンズは険しい面差しでチョコに問うた。

「……だから、ジュン達の罪を……聖龍隊を裏切った罪は軽くして欲しいというのか?」

 バーンズの問答にチョコは涙目で力強く頷いた。するとバーンズは険しい表情のままチョコに冷たく語った。

「自らが背負うと決めた罪を軽くさせちゃ……ジュンの覚悟に申し訳ないだろう」

「!」バーンズの言葉に、チョコは気付かされた。

 そしてバーンズはチョコに背を向けたまま、一人HEADの許へと馳せ参じた。

 

 HEADの許に辿り付いたバーンズの目に飛び込んできたのは、順一たちスター・コマンドー側についた名立たる武将達がHEADに押し掛けていた真っ最中だった。

「Hey、聖龍隊のHEAD! オレたち漢族を贔屓にしてくれていた順一たちは釈放されるんだろうな?」

「村田順一は! スター・コマンドーの乙女達は、貴女方と同じく我々三次元人を先導してくれる戦乙女なんだ! そんな彼女達を暗い牢屋に閉じ込めておくなんて、由々しき事だぞ!」

「そ、某も! まだ順一殿との勝負がついておりませぬ! もし順一殿が聖龍隊の決定で打ち首になるのでれば、最後に今一度、某と一対一で戦わせてほしいでござるッ!」

 独眼竜デイ・マァスンも、戦乙女に憧れているイン・ナオコも、そしてモンゴル軍が国将軍代行者シン・ユキジも村田順一たちスター・コマンドーの釈放に対して訴え出ていた。

「聖龍隊! 戦の最中でジュン達に寝返ったのはワシらの決断なんじゃ。だからこそ、ジュンたちを解放してほしい!」

「わ、わしからも嘆願するぞ、聖龍隊! わしら弱体化しておる皇軍に士気と勇ましさを与えてくれた村田殿を解放してほしい! 何とかならんかのう……」

 戦闘中、聖龍隊からスター・コマンドー側に寝返った中国軍国将軍の徳竹康。同じ日本皇軍として共闘戦前を布いていた時乃宮彦麻呂率いる軍隊。彼らもまた順一の釈放について問い質してきた。

 そんな面々に、総長であるバーンズが代わりに答えた。

「ジュン達が何処の国の連中と結託してたなんて、今となってはどうでもいいさ。だが問題なのが一つ。奴の奇策で聖龍隊が分裂して、隊士同士が傷付けあい、戦力が消耗してしまった事だ」

『………………………………』

「身内外の事なら、多少目を瞑ってやれる。だが、身内と身内を討たせ合わせて信頼関係そのものを壊しちまったジュン達は、そう簡単に赦されざる立場じゃいられねえんだよ」

 バーンズの話を聞いて、一同は物静かに下を俯いた。

 

 その頃、村田順一を含むスター・コマンドーは、大人しく緊急時に設けられた牢屋の中で大人しく待機していた。

 その時、牢屋の中で鎮座する村田順一に、多大な戦渦は起こしていないとの理由で一人釈明された順一の幼馴染、愛澤マイが人知れず訪問しに来てくれた。

「ジュン、みんな…………大丈夫?」

 どこか哀愁漂うマイからの問い掛けに、順一は静かに口を開いてマイと語り合う。

「マイちゃん、本当にごめん。今になって、この戦争の代価が余りにも大きすぎた事が、悔やんでも悔やみ切れないよ」

「そんな……ジュンくん、それは私も、此処にいるみんなも同じ気持ちよ……」

 マイは心労し切った順一を癒すかのように、鉄格子に手を差し伸ばして格子に寄りかかる順一を抱き寄せる。

 しかし順一が感じていた罪過は並々ならないものであった。

「だけど、マイちゃん……僕は絆こそ、未来を築き、未来を照らすモノだと頑なに信じ続けてきた。けれど、結局のところはなんだい。絆を得る為に多くの絆を壊し、絆を結びつける為に多くの絆を断ち切ってしまった。こんな僕に、絆を説く資格があるのだろうか……!」

「………………………………」

「全ては師でありながらも憧れだった聖龍HEADに打ち勝つために……そして、誰もが笑って過ごせる世を築く為に……起こしてしまった戦渦だ。修司さんが築いてくれた絆を、繋がりを僕は壊してまでも新しい絆を得ようとしてしまった。これは、変え様のない強欲だ」

「ジュンくん……」

 腕の中で己が後悔の自責に押し潰されそうになる順一を前に、マイは何もできない、何の声も掛けられない自分が苦しかった。

 と、其処に。一人の女性がやって来て、順一たち牢屋の皆々を見守るマイへ静かに声を掛けた。

「……マイちゃん……」「! アッコさん……!」

 マイに声を掛けたのは、変身を解いた加賀美あつこだった。

 アッコは悲しげな表情を浮かべてマイと、牢屋の中に引き籠っている村田順一たちに話した。

「マイちゃん、ジュンくん達もそうだけど、あなたも疲れ切ってない? 少し休んだ方がいいわよ」

「いえ、私は大丈夫です……」

 同じ一人の男を想い合う女同士、アッコもマイも互いに腹を割って話した。

 そんなアッコに牢屋の中の順一は、険しい面差しで強がった。

「ッ……アッコさん! 僕たちスター・コマンドーは確かに聖龍隊を分裂させ、味方同士で傷つけ合わせた。それは確かな業であり罪だ。ですが、僕らは頭を下げる事はない……!」

「ええ、それは解ってる」「!?」

 アッコの返事に順一は一驚すると、アッコはそんな順一に話し出した。

「解っているわ、ジュンくん。そうでもしない限り、私たち聖龍隊に……いいえ、HEADに勝てなかったのは明白だもの。確かにあなた達は罪を、業を背負った……まるで修司の様にね」

「! 我が師、小田原修司と……!」

「そう、修司は排除法案を施行した時から多くの罪をたった一人で背負ってきた。命を奪い取って平和へと導く茨の道を、修司は選んで突き進んだ……今のあなた達は、その修司と同じ道を辿っているわ」

「っ、そうか……僕たちは修司さんのやり方に反発していたけど……いつの間にか、その修司さんと同じ道を辿っていたんだな。ははっ……」

 アッコから指摘を受けて、順一は思わず苦笑を浮かべて茫然とする。だが、そんな順一たちスター・コマンドーにアッコは唱えた。

「でも、だからって落ち込む事はないわ。誰にだって失敗の一つや二つはあるものよ。ジュンくん達が聖龍隊を離反してまでも、夢を叶えたかったの想い……私たちHEADは理解しているわ」

「アッコさん……」

 聖龍隊を離反と言う裏切り行為に至った順一たちを責める事なく、同感できると言ってくれるアッコの言葉に順一たちスター・コマンドーは感銘しながらも衝撃した。

 そしてアッコは、順一やマイ達その場の皆に伝えた。

「ジュン君、私は……あなた達の裏切り行為を赦してもいいと思ってるわ」

「え……!?」

 突然のアッコの発言に順一たちは愕然とした。規律を乱し、内政を打ち壊した自分達を釈明するアッコの発言は信じ難いものだった。

 そしてアッコは牢屋内の順一たちに最後に言い伝えた。

「もう少しだけ時間をちょうだい。きっとあなた達が聖龍隊に戻れるようにしてみせるから……聖龍隊は心正しい者にとっての居場所なんですもの」

 そう順一たちに伝えると、アッコはその場から去って行った。

 アッコの言葉に考えさせられる順一たちは困惑していた。一度とはいえ聖龍隊を離反し、そして内部から亀裂を生じさせて仲たがいさせた自分達は果たして赦される存在なのか。順一達は自問自答を繰り返すばかりだった。

 

 そんな順一達が考えさせられる言動を言い残して去って行ったアッコを追って、愛澤マイが思わず駆け出す。

 そしてマイはアッコを見つけると、即座に呼び止めた。

「あ、アッコさーーん……」

 マイに呼び止められたアッコは素直に立ち止まり、マイと向き合った。

「マイちゃん……」

「アッコさん、本気なんですか? ジュンくん達を……私たちスター・コマンドーを赦してくれるって」

 アッコの顔を見詰めながら問い掛けるマイの質問に、アッコは率直な眼差しで答えた。

「今はまだ、私たちHEADもジュンくん達への責任をどう果たさせるべきか検討中だけど……きっと他のHEADのみんなもジュンくん達を赦してくれる筈よ! 排除法案に関しては、私達自身も考えさせられていたし、ジュンくんの苦悩や葛藤も理解できるわ」

「そ、そうですか……」

 アッコから検討中だと知らされたマイは、悲しげなその顔を俯かせてしまう。

 そんな悲愴に満ちたマイの面差しを見て、アッコはマイに訊ねた。

「マイちゃん……あなたは、ジュン君の行く末が心配なんでしょ?」

「え…………は、はい……」

「今はまだ頭の中が整理し切れてなくて混乱している事でしょうけど……もうちょっとだけ待ってて」

「………………………………」

 しかし未だマイの中の不安はかき消せず、彼女は涙目でジュン達の行く末を思い悩むばかり。

 そんなマイにアッコは言い聞かせた。

「例え、あなた達が私達の言葉を信じられなくても、それでいい……私達もあなた達同様、修司の罪を背負う覚悟はできている……!」

「罪を背負う、覚悟……!」

「そう、私達はジュンくん達の様に罪を背負う覚悟を負っている。昔、聖龍隊がまだ結成されて間もない頃は全ての罪を人知れず修司に背負わせていた。私たちHEADが気付いた頃には、修司は自分一人で背負い切れない程の罪を背負って生きていた……私たちHEADは後悔したわ。もう少し、修司と一緒になって罪を背負い合えば、修司が起こした数々の凶行も防げたかもしれない、修司が人間兵器に身を落とす事もなかったのかもしれない。今となっては、もう手遅れだったけど……」

「………………」

「でも、手遅れでも一緒に背負い合って重みを減らす事はいつでも出来るの! 共に背負う覚悟はいつでも出来る……そうでしょう? マイちゃん」

「………………………………」

「そして何より、あなた達にはもっと聖龍隊を知ってほしいの……聖龍隊の存在意義は、排除法を制定させる為だけじゃない、人々を導く為の存在である事を」

「…………!」

「きっと、ジュン君達にも解って貰える日が来るわ……!」

 

 一人で多くの罪を背負ってきた小田原修司と、その師と同様に多くの罪を背負って生き抜こうと決意した弟子の村田順一。

 二人の男はそれぞれ同じ平和を目指しながらも、各々の信念には多少ながらの違いがあった。

 そんな男共を愛した二人の女は、彼らの未来の行く末を願い現実(いま)を生きる。

 

 果たして男たちの未来(さき)に光は有るのだろうか

 

 

 

[撫虎、現る!]

 

 と、アッコと深澤マイが自分達が愛した男たち、修司と順一の贖罪と言う名の未来について語り合っていた、その時。

 何やら現場がざわめき出していた。

「? 何かしら……」

 アッコとマイは何事かと思い、騒ぎがする方へ足を運ばせると聖龍隊の隊士達が騒然としていた。

「何があったの?」

 アッコが訊ねると、隊士が答える。

「あ、副長! スター・コマンドー側についていた中国の地方武将、イン・ナオコが突然押しかけてきてっ」

「え!」「えっ、ナオコさんが……!?」

 隊士の発言に、アッコもマイも驚愕する。

 

 その頃、押しかけて来たイン・ナオコは険しい面持ちで聖龍HEADと対談の機会を設けた漢族のデイ・マァスンとモンゴル軍が若虎シン・ユキジの許へ参った。

 険しい面持ちで登場してきたイン・ナオコを前に、バーンズやジュニアたちHEADは騒然となるが、ナオコはそんなHEADなど目もくれずマァスンとユキジの許へ参る。

「此処にいたか、貴様ら!」

「「?!」」

 バーンズと対談していただけだったマァスンとユキジは、突然のナオコの登場に驚き不思議がる。

「ええいっ、真面目臭くて威張り散らして暑苦しい! だから男は嫌いなんだ」

 このナオコの言動にデイ・マァスンが返答しようとすると、先にシン・ユキジが動いた。

「い、威張り散らしてなど居らぬ! それもこれも、貴殿の思い過ごしでござる!」

 熱血漢同士の物言いに発展しそうなところに、冷静なデイ・マァスンが声を掛ける。

「オーケイ、OK。似た者同士、好きなだけやってくれ」

 すると、このマァスンの発言にナオコとユキジの当人達は睨みを利かせた。

「貴様! 誰と誰が似た者同士だッ!」

「き、聞き捨てなりませぬぞ! マァスン殿!」

「What's?」

 マァスンの発言に怒り出すナオコとユキジは、得物を手にしてマァスンと三つ巴の戦いに突入してしまう。

「ディ! 今すぐ訂正しろ! 暑苦しいだけが取り柄のモンゴルの男と、私が似ているだと!?」

「マァスン殿! つまりはこのユキジが、この娘の如く周囲が見えていないと申されるか!?」

「OK、OK、どっちでもいい、Coolになりな……」

 英語で双方とも冷静になれと告げるマァスン。だが、これがいけなかった。

「……くうる、だと? 私に狂えと言ってるのか!?」

「なるほど! 狂わんばかりに熱気を高めろ、と! 承知したァ! マァスン殿ぉ! うおぉぉぁぁーー!!」

 英語を余り理解していない二人は勘違いし、マァスンは再度訴えた。

「Hey! 少しは頭を冷やしてムキになるな、ってことだ。Cool down、OK?」

「なんと! このユキジ、冷えては魂の炎が消えてしまう! ぬおぉぉおお! お館様ぁ、某は一体どうすれば!?」

「うるッさいぞ! ユキジィ! その暑苦しさを何とかしろと言ってるんだ!」

「こいつはまた、暑っ苦しいのに目の敵にされた……」

 好敵手であるシン・ユキジの様な熱血漢に感化されてきたデイ・マァスンも、同様に熱血漢のイン・ナオコに呆れ果ててしまう。

 

 そんな戦闘に突入してしまう三人を前に、バーンズ達は何とか宥め止めようとするが。

 激しく闘い合う三人の攻撃の威力に、バーンズらは簡単に吹き飛ばされてしまう。

「ギャッツビーーっ!」

 声を上げながら、電撃と火炎の攻撃の威力に吹き飛ばされて宙を舞ってしまうバーンズ。

 いつしか三人の戦いは現場をも巻き込んでいた。

「うわあっ!」「ひえっ!」

 電撃の六爪と炎の二槍に大剣が巻き起こす威力に、誰もが逃げ惑う。

「ま、マァスン様! ここは冷静に……」

「オレは冷静だ! 問題はこの二人の方だぜ……!」

 主従関係であるタク・モンジュロに呼び止められるものの、マァスンは至って冷静で対抗して来る眼前の二人の熱血漢の方を止めるべきだと進言する。

「大将、もうそれぐらいにして槍を仕舞って……」

「何を申されるか佐助ェ! 某は周りも見えない女子と同類にされたのだぞ! これを黙っていられるかァ!」

「周りが見えてないのは、貴様の方だろッ!」

 猿飛佐助に言われるも、ユキジとナオコの剣劇は激しさを増して行くばかり。

 

 この戦闘を陰ながら観戦していたアッコとマイは、人知れず対談していた。

「な、なんでイン・ナオコがやって来た訳……?」

「た、多分……さっきの戦でモンゴル軍と思う存分対決できなかったのを不満に思っての訪問かと……」

「え、モンゴル軍と……?」

「そうです。お忘れかもしれませんが、ナオコさんはモンゴル軍との戦で過去に許婚に逃げられて、そのまま死別したって過去があります。それで聖龍隊がモンゴル軍と同盟を果たしたのを聞いて、それで私たちスター・コマンドーの軍勢に下って一騎打ちを仕掛ける算段だったみたいです」

「そうだったわね……まあ、婚約者が生死不明である私には少し辛さが解るけど……どうしたもんかな」

「それでモンゴル軍を討伐する為、先の戦でも私たちスター・コマンドーに協力してくれてた訳なんですが……決着がつかなかった事に不満を抱いてるって感じですね」

 マイの話を聞いてアッコは呆れ果ててしまいながらも、この状況に打開を打ちたいとも思っていた。

 

 一方のマァスンやユキジやナオコ達の戦いは、一区切りついても終わりはしなかった。

「……そうだ! ナオコ殿には真似の出来ぬ熱気……魂の焔! それを見せれば、マァスン殿も似た者同士とは言えまい!」

 と、此処でユキジが勝手な解釈をして更に自らを熱気で包みこんだ。

「しかと見られよ! マァスン殿ぉ! うぉぉぉおおおおーーー!!」

「……黙れぇぇぇユキジィィィ! 私がいつ、貴様の真似をしたぁぁぁぁ!!」

「………………………………」

 ユキジとナオコ、二人の似た者振りの言動に、遂にマァスンは掛ける言葉を見失った。

「Give me a break. 勘弁してくれよ」

 呆れ果てたマァスンは、一足先に戦闘から離脱。戦いはユキジとナオコの一騎打ちに発展した。

「こ、これはマァスン殿! 何ゆえ……!」

「デイ! 貴様、私との戦いに不満か!?」

「もうどっちでもいい……二人で勝手にやり合っていな」

 このマァスンの他人事の様な素振りを見て、ユキジとナオコの決闘は更に激化した。

「ナオコ殿! そなたの身勝手さにマァスン殿は呆れ果ててしまいましたぞ!」

「身勝手なのはお前達……男の方だろッ!」

 更にナオコの大剣とユキジの二槍が激しく鬩ぎ合う。

 

「ぅおおぉ! モンゴルが熱き魂は不屈なりィィーーー!!」

「本ッ当に暑苦しい奴だな、モンゴルの兵士は!!」

 次第に双方ともに感情が激化して二人の胸中に燃える焔は更に燃え上がる。

 

 このシン・ユキジとイン・ナオコの闘いを遠目でマイ共々拝見したアッコは、途方に暮れた。

「ふぅ、やれやれ……あの二人、いい加減とめないと駐留基地の被害が拡大するわ」

 アッコは半ば呆れ果てながらも、コンパクトを手に取り出すと呪文を唱えた。

「テクマクマヤコンテクマクマヤコン……!」

 

 果たしてアッコは何に変身して二人を止めるのか?

 

 

 

[対決! 聖女VS猛虎VS撫虎]

 

 先の戦に不満を抱いた中国が地方武将イン・ナオコ。

 そのナオコと激しい闘いに発展してしまったモンゴル軍国将軍代行の武将シン・ユキジ。

 二人は既に頭に血が上り、周囲が見えていない状態で戦闘を激化させていた。

 既に現場は滅茶苦茶に荒れ果ててしまい、被害も甚大だった。

 それでも二人は闘いを止めようとはしない。HEADも他の聖龍隊士も、猿飛佐助も呆れながらも傍観するしか無かった。

 そんな二人の決闘を、陰ながら傍観してたアッコとマイ。するとアッコはコンパクトを用いて何かに変身した。

 

 一方のシン・ユキジとイン・ナオコの闘いは未だ続いていた。

「な、ナオコ殿! いい加減にしてくださらぬと、某は例え女子とはいえ手が抜けられませんぞ!」

「何を! 貴様、私が女だからって手を抜いていたのか!? 女は所詮、弱い生き物と……男は勝手に思い込むから嫌なんだ!」

 激しく言い合いながらも互いに得物を引かず、退かないユキジとナオコの両名。二人の決闘をHEADは止めたかった。

「もうっ、どっちもどっちで決着がつかない!」

「はぁ、これじゃどちらも疲れるまで闘い続けますよ」

「そ、そんな! このままじゃ駐屯基地が壊滅しちゃいますよ」

 二人が起こした衝撃で、髪の毛がぐちゃぐちゃになてしまったセーラーマーズに続いてナースエンジェルも呆れ果てていると、同じHEADの洞院リナが泣き言を申す。

 

 と、その時であった。

「こおらーーッ! そこの二人ーーーーッ!!」

『!!』

 何処からともなく叱りつけてくる怒声が辺りに響き、シン・ユキジもイン・ナオコも、HEADたち周囲の面々は一驚する。

 そして辺りを見渡していると、ユキジとナオコの前に大柄で屈強な者が姿を現した。

 筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)とした鍛えられた体、そして鋭く突起した双頭の角に赤く連獅子のような長い毛が特徴の被り物を被ったその大男を目の当たりにし、ユキジとナオコは同時に声を上げた。

「お、お館様!?」「モウ・コダイ!?」

 二人の、そしてHEADの前に姿を現したのは、今現在病身にて床に臥せっている筈のモンゴル軍国将軍のモウ・コダイ本人だった。

 この場に居る筈のないモウ・コダイを前にして、シン・ユキジは非常に混乱した。

「ど、どうして……お館様が此処に!?」

 するとモウ・コダイはユキジの疑問に、なぜか女の様な声で答えた。

「ふっ、それはじゃのうユキジ……お主と、そこのイン・ナオコなる女子が争い合い、周囲の者たちに迷惑をかけていると聞いたが故に、駆け付けて参った次第……」

「お、お館様……なぜ、その様な女子の声をしておるのですか?」

 ユキジは女声の主君モウ・コダイに不思議がっているその横では、イン・ナオコが今までにない険しい面持ちでモウ・コダイを睨み付けた。

「モウ・コダイ……! 貴様……! よくも抜け抜けと私の前に現れたな! 全ての悪しき男の元凶……モンゴル軍、その総大将!」

「ふっ、イン・ナオコよ……お主もまた、ユキジ同様熱き魂で猛進しておるようじゃな。……じゃが! 軍の将たる者が、周りの迷惑も考えずに喧嘩しておるとは、どういう了見じゃッ!!」

「ひえっ、も、申し訳ありませぬ……お館様ぁッ!」

 モウ・コダイの怒声にユキジは自然と謝罪を述べてしまう。

「な、なんで此処にモウ・コダイが……? い、いや待てよ。あの声、どっかで……」

 筋骨隆々の逞しい大男に似合わない可愛らしい声のモウ・コダイを前にして、バーンズは何かを察した。

 しかし、その一方でイン・ナオコはモウ・コダイを前にして恨み節を唱え始めた。

「モウ・コダイ……! 私の、女としての幸せを奪っておきながら、私がHEADの戦乙女に迷惑をかけているなどと……思い込みもいいところだ!」

「いやいや、お二人ともいい勝負だよ」

 ナオコの発言にバーンズが思わずツッコむ。

「お、お館様……! お言葉ですが、このナオコ殿が突然押しかけてきたのが事の発端! このユキジはそれを止めたに過ぎませぬ……!」

「大将もいい勝負だと思うけどね」

 シン・ユキジの釈明を聞いて、配下である猿飛佐助はイン・ナオコと対して変わりがないと呆れてしまう。

 しかし、ユキジとナオコの真意を聞いて、突然と出現したモウ・コダイは大声で怒鳴り散らした。

「ばっかもーーん! お前達、周りの者たちにどんな被害が被っているのか見えておらぬのか!」

「???」

 しかし女声のモウ・コダイの気迫に迫力を感じられないユキジやナオコは唖然とするばかり。

 すると、そんな唖然とする二人を前に、モウ・コダイは二人に言った。

「そこまでして闘い続けたいのなら……まずは、ワシが相手をしてやる!」

 女声のモウ・コダイは自分の背丈ほどもある自身の得物、軍配斧を振り回してユキジとナオコを威嚇。

「な、何ですと!? しかし、お館様、まだ病の方は……」

「ふっ、貴様らの喧嘩を止めるべく……病など、吹き飛んでしまったわ!」

「モウ・コダイ……此処で会ったが百年目! 世の乙女に変わり、このイン・ナオコが成敗してくれる!」

 ユキジの問いかけに気合満々で返答するモウ・コダイを前に、ナオコは戦意満々で大剣を翳した。

 

 突然現れたモウ・コダイの登場に、シン・ユキジとイン・ナオコはモウ・コダイと三つ巴の戦いを展開した。

「し、しかしお館様……病から復帰したのはいいのですが……なんでしょう、いつもの様な気迫が感じられませぬ」

「も、モウ・コダイ! 私を女だからと侮っているのか!? 話に聞いていた戦神の様な覇気が感じられぬぞ!」

「………………!」

 ユキジとナオコの指摘に、現れたモウ・コダイは口を噤んでしまう。

 そんな戦意と熱気の塊であるユキジとナオコを制止するべく立ちはだかったモウ・コダイを視野に入れて、バーンズ達HEADは傍観する。

「……アッコの奴、どうする気だ?」バーンズは思わず首を傾げてしまう。

 一方でユキジの振るう二対の槍とナオコが振り翳す大剣を軍配斧でどうにか防いでいくモウ・コダイ。そのコダイの戦いぶりを見て、ユキジとナオコは疑惑を感じた。

「や、やはり……お館様の様子がおかしい……まるで女子の様……!」

「モウ・コダイ……私を女だからと侮っているのか? いや、それにしても様子が変だ……!」

 自分達と対峙するモウ・コダイの雰囲気が可笑しい事に気付いたユキジとナオコ。二人は疑問に思いながらも得物を振るった。

 しかしモウ・コダイは、時おり軍配斧に慣れない感じでよろめく様子も見られ、二人の疑心は次第に確信へと近づいて行った。

「お館様が得物を振るっただけで千鳥足になる事など有る筈がない……! 何故だ……?」

「モウ・コダイ……歴戦の猛者だと聞いてはいるのに、この戦運びは可笑しすぎる!」

 ユキジとナオコの確信は、ようやく合致し、慣れない戦運びをするモウ・コダイに同時攻撃を仕掛けた。

「そりゃッ!」「えいッ!」

 ユキジの二槍とナオコの大剣がモウ・コダイに直撃。するとモウ・コダイは簡単に吹き飛ばされてしまい地面へと転げ回ってしまった。

 険しい面差しを卒倒するモウ・コダイに向けるユキジとナオコ。すると土煙の中で、転倒したモウ・コダイが輝き出し、蒼い光に包まれる。そしてその蒼い光の中から現れわれたのは、他でもないミラーガールだった。

「か、加賀美殿!?」「ミラーガール!」

 蒼い光の中から現れたミラーガールを視認し、ユキジもナオコも愕然とする。

 そしてモウ・コダイの姿から変身が解除されてしまったミラーガールは、腰を摩りながら立ち上がる。

「ふぅ……やっぱり、モウ・コダイの戦ぶりは草々簡単には成りきれないわね」

 モウ・コダイの姿からミラーガールへと戻った彼女を見て、ユキジは軽く混乱してしまう。

「ど、どういう事だ? お館様が、加賀美殿へと化けられた……!」

「何を言っているんだシン・ユキジ! その逆だ、ミラーガールがモウ・コダイに変身していたんだ」

 軽く混乱しているユキジに、ナオコが正論を唱える。

 

 するとナオコは姿を戻したミラーガールに問うた。

「ミラーガール、なんでこんな真似を……?」

「ふぅ、ナオコさん。あなたが思う所は色々あると思うけど、もう少し冷静になって。目の前の事にまっすぐ突き進んでちゃ、周りの事なんか見えないわよ」

 ミラーガールから指摘を受けたイン・ナオコは思わず視線を逸らしてしまう。

 そしてミラーガールは次にユキジにも言った。

「ユキジ君、熱血漢なあなたはとても勇ましいわ。だけど、今は今はで落ち着いて話を聞いてあげないとホントの将とは呼べないわよ」

「ぐぬぬ……! き、貴殿からその様に言われてしまうとは……まだまだ某は未熟……!」

 ミラーガールの説得を聞いたユキジは、ようやく己の落ち度を理解して深く悔む。

 と、そんな二人の喧嘩混じりの決闘に歯止めをつけたミラーガールの許に、HEADやデイ・マァスン達が歩み寄った。

「ふぅ、ありがとよアッコ。お蔭でようやく静かになった……」

「子供同士の喧嘩を止める程度、私一人で充分だわ」

「こっ、子供同士……!」

 歩み寄ったバーンズに返事するミラーガールの言葉に、シン・ユキジは軽く悲愴を受ける。

 

 そして二人が落ち着いたところで、ミラーガールは冷静になったイン・ナオコに訊ねてみた。

「ナオコさん、あなたが此処に来た理由って……モンゴル軍に不満をぶつけに来た訳じゃないでしょ」

「そ、そうだミラーガール。HEADの戦乙女たちよ、聞いてくれ……ジュン達を、スター・コマンドーの戦乙女たちを解放してほしい!」

「またその話か、イン・ナオコ……」

 ナオコの訴えに、前々からその訴えを聞かされているバーンズは呆然とした。

 

 

[愛澤マイの真実]

 

 先の戦で、己の信念のもと聖龍隊に離反した村田順一たちスター・コマンドー。

 その順一達スター・コマンドーに加勢した中国地方武将のイン・ナオコは彼らの釈放を強く嘆願。

 しかし順一たちに何かしらの重責を負わせなければならないと説くバーンズ達HEADの意向は深いものだった。

「HEADよ! 今すぐスター・コマンドーの者たちを釈放するんだ! 順一達は我ら、乙女の未来の為に奮戦してくれた功労者だ」

「イン・ナオコ、おいそれとジュン達を釈放する訳にはいかない。……ジュン達は覚悟を決めてオレ達に挑んだんだ。何かしらの罰を与えてやらなきゃ、その覚悟に申し訳ない」

「ジュン達はもう十分すぎるほど悔んでいる! 今回の戦はもちろん、二年前のアジア大戦からずっと! 私もすでに聞き及んでいる……北の国の残党軍総大将ヤン・ミィチェンを死に追いやってまで得た今の平和……嘘偽りに満ちた平和を真の平和に発展させようとジュン達は! スター・コマンドーの戦乙女たちからジュンの苦しみを聞いて、私は世の乙女を救うためだけでなく、ジュンが願う真なる平和の世の為に加勢したのだ!」

『………………………………』

 ナオコの訴えをHEADは黙然と聴き入れるだけ。

 すると其処に、聖龍隊を含む多くの軍隊が「反二次元思想主義」の軍勢によって深手を負ったのを聞き及んで援助に駆け付けてきた聖龍隊と親交の深い赤塚組その頭領である大将がナオコに声を掛けた。

「ナオコの嬢ちゃん、それ以上バーンズやアッコ達を困らせるなよ」

「か、海賊! 貴様らこそ、ぬけぬけと合戦が終わった後にやって来られたものよ」

「そういうなよ。俺達だって本当はアッコ達に加勢したかった。けれど、聖龍隊同士の……身内でのいざこざに、他人が介入するのはどうかと思って参戦しなかった訳よ」

「で、でも……身内同士だからこそ、赦し合えるのではないか?」

「簡単に相手の罪科を赦しちゃ、組織としては成り立たねえのよ。お前さんも、まだ軍隊の将として経験が浅いから解らねえと思うが……上の意向に刃向った連中を裁くのも将の辛い所よ。まあ、どちらにしろ俺たち部外者は順一たちの責が少しでも軽くなるよう祈るしか無いのが現実よ」

「っ………………」

 大将の話を聞いて、イン・ナオコは言葉を失くしてしまう。

 そして赤塚組の大将は話の矛先をバーンズ達HEADに向けると、彼らと対談し始めた。

「……それで、バーンズ? お前達はジュン達をどうしたいんだい?」

「大将、それは…………オレ達もまだ考え中だ」

「どうする気だ? ジュン達に何かしらの罰則を与えないと、隊としての規律が乱れちまうんじゃねえのか?」

 この大将の言動にセーラーマーズが苛立ちながら言い返した。

「だから悩んでいるのよ! 私達もできるだけ、手荒な真似はしたくないのよ」

「本家といえる新撰組なら、普通は切腹だよな……」

「もうっ、貴史くん、そんなこと言わないで!」

 赤塚組幹部の山崎貴史の思わせ振りな発言に、旧友の木之元桜は可愛らしく文句を言う。

「でも、あの人望厚いジュン君たちを処罰すると、それこそ更に波紋が広がるんじゃないかしら……ジュン君ほど気の優しい頼りがいのある人ってそうそういないもの」

「そうなのよ。だから、どういう処罰にするか迷いに迷っているのよ……」

 旧友である赤塚組幹部の秋夏子の言うとおり聖龍隊という組織に更なる反発の波紋が広がるのではないかと指摘されて、彼女の旧友であるHEADのキューティーハニーは思い悩む。

 皆が順一たちスター・コマンドーへの処罰や責務について考えていると、イン・ナオコが問い質した。

「み、みんなは昔から順一を仲間として信頼していたんじゃなかったのか? その順一に重い処罰を下すとか、本気で考えてないだろうな……?」

 イン・ナオコからの問い掛けに、バーンズ総長が真顔で語り始めた。

「ああ、そうだ。オレ達とジュン達は互いに信頼してきた仲間だった」

「そ、それなら何故……!?」

「だけどな、イン・ナオコ……信頼ってのは、積み重ねるのは凄く時間と労力が必要となる。だが、信頼が壊れるのはいつも一瞬だ……これは順一たちスター・コマンドーだけの問題じゃなく、既に聖龍隊内部でも順一たち同様、裏切ったり離反した仲間の隊士に不信感を抱く者が続出している。こんな状況に追い込んだ村田順一とスター・コマンドーは簡単には赦せないのよ……そこのマイも含めてな」

「! ……」

 バーンズの現状説明を聴いて愕然とする愛澤マイ。だが、それでも自由となっている愛澤マイに対してナオコはバーンズに問い質した。

「そ、それじゃなんで愛澤マイだけが解き放たれているんだ! 戦渦に大きく関与していなかったと聞いてはいるが、マイは順一の右腕としてどのスター・コマンドーの猛者たちよりも活躍していたのではないか?」

 するとこのナオコの疑問に、バーンズは率直に受け答えた。

「マイには、これから自分がどうするべきかでスター・コマンドーの運命を大きく変える術がまだ残されているからな」

「?! それはどういう事だ?」

 バーンズの話にナオコが首を傾げて訊ねると、それと同時に聖龍HEADの誰もが険しい顔色に一変する。

 そしてバーンズは険しい面持ちを一切変える事無くナオコに語った。

「……マイは、昔から聖龍隊の裏家業に……影の職務に就いていた」

「裏家業? それに影の職務って、何を言ってるんだ?」

「……マイがグールと呼ばれる異次元からやって来た怪物の、超次元的な生命体と人間の融合体である事は知ってるか。マイがまだグールだった頃、行き着いた先は人間の母体、その中の胎児という器の中だった。グールハンターと呼ばれる追っ手から逃れるため、マイは空っぽの人間の胎児の中に逃げ込んで、深澤マイという名を与えられた人間として生まれ育った。だが彼女は自身の生命を維持する為に、どうしても生きた人間そのものを生体エネルギーとして喰らわなければならない運命が待ち受けていた」

「………………………………」

 バーンズの重く険しい話を聞いて、ナオコは愕然と彼の話に耳を傾け続けた。

「そして遂にマイの前に、彼女や彼女の同族を執拗に追ってきたグール・ハンターと呼ばれる人間が現れた。だが、そんなグールの天敵とも呼べるハンターを相手に、マイは余裕で生き延びてそれは何故かというと、マイは人間と融合した事で従来のグールの力を超えた全く新しい力に目覚めて、正真正銘の怪物少女へと変貌していたからだ……だが、話はこれで終わりじゃなかった」

「ッ! 終わりじゃないって、どういう事だッ?」

 ナオコに問い出され、バーンズは新たな力に目覚めたマイのその後を赤裸々に語った。

「マイの人間を喰らう能力は、普通ではなかった。喰らった人間が能力者であれば、その能力者の能力をそっくりそのまま自分のものとして会得する事ができていたんだ。これはグールだった時には現れなかった症状らしく、やはり怪物少女に変貌してから得た能力だと思う。マイは吸収したグール・ハンターの記憶改ざんの能力を新たに使用して、周囲の人間達からハンターの顔を忘れさせた……その後もマイは、何らかの問題にぶつかった時、グールとして問題ある輩を喰らった後に、記憶改ざん能力で周囲の人間の記憶を消してたり書き換えたりもしていた。そんなマイに……あいつが目を付けた」

「ッ、鬼神・小田原修司か……!」

「ああ、そうだ」

 鬼気迫る目付きで問い掛けるナオコにバーンズは表情一つ変えず、そのまま彼は語り続けた。

「修司はマイの人の存在そのものを喰らい、消滅させるといった身体能力を高く評価した。そして生きた人間への記憶改ざん能力も等しく同じ。聖龍隊にとって邪魔な存在を、マイに生体エネルギーとして供給させる名目で喰わせたり、聖龍隊の秘密例えて言うなら変身ヒロインの変身シーンや変身解除の時の姿を目撃したり写真に収めた奴の記憶を改ざんさせたりさせた。ヒーロー・ヒロインにとって最も致命的な弱点をカバーする為、修司はマイを人間抹殺および記憶操作員として聖龍隊にスカウトしたのが、マイが聖龍隊に所属した切っ掛けだ」

「よ、要するにマイの能力を組織の為に利用する為に彼女を道具の様に扱き使っていたんだな小田原修司は! 女を道具のように扱う……典型的な女の敵だ!」

 話を聞いて激情するナオコを宥めながらバーンズは彼女に話しかける。

「まあまあ、確かに修司のやり方を見てると、そう捉えちまうのが普通だよ。だが、修司がマイにそこまでやらせていたのには、結局のところマイ本人と聖龍隊のためで、修司自身の自己保身や自己意欲の為では無かったのは理解して欲しい」

「マイと、聖龍隊のため……?」

 話を聞いたナオコはとても不思議がり、そんな彼女にバーンズは事の真相を語った。

「マイは異次元からの怪物グールと融合した事で、人間としての食事だけじゃ生命を維持する事ができなくなってしまった。生きた人間を人体エネルギーとして体内に吸収しなきゃ、マイは生き永らえない肉体へと変わってしまったんだ。修司は彼女を存命させるべく、聖龍隊に仇名す凶悪や陰湿な悪人を捕まえて、そいつらをマイに喰わせていたんだ。そして同時に、そんな奴らの失踪を悟られない為に、マイに周辺の人間の記憶操作での改ざんを行わせていたんだよ。マイに記憶改ざんをさせていた人間も、偶然に変身ヒロインの変身シーンを目撃したり写真に収めちまった連中で、そいつらが素のヒロイン達に何かしらの脅迫をする前に、マイを初めとする記憶操作能力を持つ能力者に、記憶を改ざんさせていた訳なんだ」

「そ、そうだったのか……マイは人間を喰らう事でしか生き永らえず、多くの戦乙女の数少ない平穏を守る為に目撃者の記憶改ざんを行わせていた訳なんだな」

「そうだ、解ってくれたか? 正直、マイはそういった意味では聖龍隊では数多く活躍してくれた女なのよ。一応は順一たちの処罰を軽くする為の工作員、つまりは敢えてマイだけ聖龍隊の裏方の重要任務に就かせて、それと交換条件で順一たちを釈放する算段をオレは考えているつもりなんだぜ」

「ふっ、バーンズよ。マイも所詮はスター・コマンドーの一員なんだぞ。スター・コマンドーの一員でもあるマイだけが、そんな特別待遇されては、何の意味も成さないだろう」

「あ、そうか。う~~ん、どうすりゃ良いのかねぇ」

 ナオコとの問答によって、抱えていた問題が振り出しに戻ってしまったバーンズは再び考え込んでしまう。

 可能な限り、マイも含むスター・コマンドー全員を救ってやれる方法をHEADは考え抜いた。

 

 

 

[悪党共の口出し]

 

 と、その時。スター・コマンドーへの適切な処罰を考えているHEADや赤塚組、そしてイン・ナオコが検討中の処に、とある連中が人目を避けてやって来た。

「おやおや、ジュン達の事で色々と悩んでいるご様子だね、バーンズ」

「が、ガイア! お前達、何処から入ってきた!?」

 目の前に颯爽と姿を見せたガイア・スコーピオン率いるスコーピオン同盟の来訪に、HEADや赤塚組は武器を手に取りガイアに一斉に向ける。

「おいおい、今はツマラナイ喧嘩は止めようぜ。ようやく赤犬たちがいなくなったのを確認して訪問してきてやったのに……。今は兎にも角にも戦時中、正義とか善人とか悪人とか関係なく、お互い無駄な戦力の浪費は控えましょうぜ」

 自分に向けられるサーベルや銃器を軽く押し退けて、ガイアたちスコーピオン同盟は前進する。そして彼らを取り囲む面々を掻き分けて、ガイアはバーンズの目前へと歩み寄る。

 バーンズの目前へと歩み寄ったガイアは、バーンズの顔に自身の顔を近付けさせると圧迫した空気の中で彼に問い掛けた。

「なあ、バーンズ。お前さん達はジュン達の処分に頭を悩ませている様だけど……」

「フンッ、悪党共と語る義理はねえ。オレ達は確かに戦時中の真っ只中だ、だから怪我する前に大人しく立ち去りやがれ」

 バーンズの言動に、周囲の聖龍HEADや赤塚組が臨戦態勢に入っているのを気配で確認したガイアは笑顔を浮かべてバーンズに言った。

「おいおい、だから今は戦時中……無駄な体力は消費せず、温存しときましょうって。それにオレ様たちはあんたらの本音が聞きたいだけなんだからね」

「本音、だと……?」

「ああ、本音だよ本音♪」

 ガイアの嬉しそうな質問にバーンズが返事すると、ガイアは更に笑顔を浮かべて言う。

 するとガイアは単刀直入にバーンズたちHEADに訊いた。

「お前さんたち、本当は………………ジュン達に帰ってきて欲しいんでしょ?」

 この真意を突いたガイアの質問に、HEAD一同は衝撃を受けた。

「お、おまえらなぁ……」

 ガイアの突拍子もない質問に、唖然としながらも対応するバーンズ。

 しかしガイアの

「バーンズ! ここは意地張ってないで、素直に謝り合って仲直りしたら? 喧嘩したら仲直り、これ世の常識でしょ?」

「だーーかーーらーー、そんな簡単な問題というか、レベルじゃないんだってのッ」

 お互いに信念と意地の張り合いで激突してしまった双方共に素直に謝罪して仲を戻せばと進言するガイアに、バーンズは問題は其処まで浅くなく根深いものであると反論する。

 するとガイアは付近の少し高めのフェンスに飛び乗って、そこで悠々と腰を下ろして話を続けた。

「もう信念だとか、意地の張り合いとか、済んだ話じゃん。帝や黒武士にも対抗する為には、また再結成した方が得策だとオレ様は思うよ」

「お前に言われなくとも帝や黒武士のことは忘れちゃいねえよ。それでも信念を賭け合ったジュンたちとは簡単に赦し合えるとは思えない……簡単に赦せば、それこそ相手の信念を愚弄する行為になってしまう」

 するとバーンズの話を聞いて、ガイアは鉄条網が上部に仕掛けられているフェンスの上で寝そべりながら語った。

「信念とか意地の張り合いだとか……つまらない事ばかりに囚われちゃっていると思わないかい、諸君?」

「!」

 ガイアの最後の一言に一驚するバーンズたち。するとガイアの部下であるピエールやワルド、そしてホワイトヘアーズが現場に連れてきたのは聖龍隊が保護している筈の新世代型二次元人たちだった。

「お、お前ら……ガイア、彼らをどうするつもりだ!?」

「なあに、言うなれば陪審員の立場でジュン達への処罰を決定してもらおうかと思ってね。ホラ、今ではもう日本でも施行されているじゃん、民間人による裁判員裁判が。それの真似事さ」

 新世代型たちにスター・コマンドーへの処罰を決定させると言い出すガイアの身勝手な言い分に、バーンズは怒りが爆発しそうだった。

 するとガイアは険しい面持ちでその場の皆に言い渡した。

「忘れた訳じゃねえだろ? 全ての争いの発端は剣帝・足正義輝……新世代型二次元人なんだって! 混沌と破滅を誘う種族ながら、オレ様たち現世の連中を未来に導いてくれる……いや、その未来を創世してくれる輩なんだよな? だったら、少しは自分の意見を話してみても良いんじゃないか?」

「うぅ、ぐすっ……わ、私たち、そんな人を導くなんて真似、できません……」

 ガイアの発した責任重大な事柄を聞きうけて、新世代型の一条ほたるら一部の子供達は泣き出してしまった。

「おい、蠍の怪人! 貴様、私の前で乙女を泣かすとはいい度胸だな! 何が新世代型だからだ。彼らはまだ、自分達が置かれた状況に混乱しているのだぞ!」

「おお、おお、怖い怖い。流石は撫虎と言われるだけは有るな、ナオコのお嬢ちゃん」

 大剣を突き向けるナオコの言動に、ガイアが宥めていると、ガイアの仲間達が彼女達に説き伏せた。

「僕としてはクイーン達を早々に釈放してほしいだけなんだよね」

 兵部京介が言うと、続けて雪華綺晶が意味深な発言を言った。

「混沌か破滅か、はたまた希望か絶望か。私たち旧時代の者を導く新世代型が、目の前の未来すら決められないなんてね」

「目の前の、未来……」

 雪華綺晶の言葉に、真鍋義久が疑問に駆られるとガイアが彼ら新世代型に言った。

「そうさ。帝も言っていただろう……自分たち新世代型は、破滅と混沌を誘い、未来を創世するべく生み出された種族。この言葉の真意なんて難しくって考える気も起こらねえけど、誰かの運命を創生する事ぐらいは可能だろ?」

「誰かって……誰の?」

 新世代型の薙切えりなが訊き返すと、ガイアはウィンクして答えた。

「もちろんっ、ジュン達の運命さっ。あいつらが此処で終わるようなタマじゃないのは、長年執拗にオレ様たちスコーピオン同盟を追い掛けて来てたんだから解ってるっての」

「………………」

 この時、新世代型たちはガイア・スコーピオンから村田順一たちスター・コマンドーが長年に渡って執拗に自分達を追跡して捕縛しようと互いに命を賭け合って世界中を駆け巡っていた経緯を語られる。

 そして話は戻り、スコーピオン同盟は連れてきた新世代型の面々にスター・コマンドーへの判決を決めさせる。

「お、おいガイア、テメェ! 中には歳相応も行っていない子供だって含まれているんだぞ! ジュン達の覚悟や意地に見合った処罰が下せると本気で思っているのか!?」

 ガイアに迫り怒鳴り散らす大将を目前に、ガイアは落ち着いた様子でのほほんと喋った。

「またそれかい? あ~~やだやだ、これだから軍隊の組織ってのは嫌いなんだ」

「??」

 ガイアの台詞に新世代型たちが戸惑っていると、ガイアは新世代型たちに向かって語り出した。

「いいか、お前ら! 覚悟とか、意地の張り合いだとか、信念だとか……それだけで激しくやり合っていた連中の事を悪く言うつもりはオレ様にもない。だけどな、信念の張り合いで仲が良かった組織が真っ二つになるなんて、どうかしてると思わない? 最初はピリピリッと喧嘩しちまったけど、最後は雨降って地固まるの如く、まるく修めるのが適正だとオレ様は思いまーーす」

 最後には手を挙げて自分の意見を伝えるガイアの言動に、新世代型たちもHEADも赤塚組も、イン・ナオコも深澤マイも唖然としてしまう。

 すると、そんなガイアの発言に同意するスコーピオン同盟の柊兄弟が発言を述べた。

「俺たちは所詮は悪党。ちょっとは信念や意地はあるが、組織の縛りとか結束なんて堅苦しい事は余り好きじゃないんでね」

「自由であればそれでいい。それが俺たちスコーピオン同盟なわけ」

 恵一と潤の柊兄弟は、組織の呪縛に囚われ過ぎず、自由奔放に今を生きている自分たちの生き様を誇らしげに語った。

 すると、そんな柊兄弟たち仲間のスコーピオン同盟を視野に入れて、ガイアがバーンズたちHEADに話し掛ける。

「話は戻すがバーンズ……ジュン達をどうする気だい? お前さん達の意見を、率直な意見を話してくれ。お前達HEADが、ジュン達にどうしてほしいのか……素直にな」

 バーンズから事の真意を追及されたHEADは、もう精神的に追い詰められてた。

「……う、うぅ……本当は私、ジュン君たちと仲直りじだいよぉーー」

「う、うさぎちゃん!?」

「そうよ、その通り。ジュン君たちだけに戦争の原因はないわ。お互いに、意地を張り張っていた私たちも同罪なのだから」

「結ちゃん……!」

「ガイアのいうとおり、私たちは軍隊という組織の枠に囚われすぎちゃっていたのかもしれない。もっと自由に、ジュン君たちを真正面から受け止めて、お互いにもっと話し合える機会を設けるべきだと思うわ」

「ちせ……」

 聖龍HEADのセーラームーン/コレクターユイ/ちせの素直な気持ちを聴き入れて、赤塚組の海野なる/市川レイコ/ミズキ達は目を輝かせる。

 するとガイアは次に、陪審員役として連れてきた新世代型たちに訊ねた。

「さあ、お前さん達の判決は? 聖龍隊と喧嘩して、聖龍隊をメチャクチャにした順一たちスター・コマンドーに下す罰則は?」

 すると、このガイアの質問に新世代型の出雲ハルキが微笑みながら返答した。

「……いいえ、これは僕らが決める運命では有りません。いえ、既に運命は決まったようです」

「ふふ、そっか……そっかぁ。ははははッ」

 己の中の素直な心情を解放されて、涙目で各々と順一たちと和解したいと願う聖龍HEADを見たガイアは高笑いし、イン・ナオコや深澤マイは感銘の笑みを浮かべた。

 

 そしてスコーピオン同盟は去り際、新世代型二次元人達に言い残した。

「……で、お前らはこれからどうしたい訳?」

「どうしたいと言いますと……」

 新世代型の星原ヒカルが訊き返すと、ガイアは咥え葉巻を蒸かしながら彼ら新世代型に言う。

「自分達がクローンだと知った上で、お前達はこれからどんな生き様を……物語を遺して行くんだい? オレ様たち二次元人は自分だけの物語を遺す為に今を生きている……その結末がハッピーエンドかバッドエンドかなんて解らないだろうが、それでも歩みを止めちゃ物語は進行しないだろ?」

『………………………………』

「自分と言う名の物語、それを遺すのが二次元人の生き様なら……立ち止まらず歩き続けるしかないだろ? どんな結末が待っていようと、癪だがオレ様たちも進み続けてる」

 そう言ったガイアは配下の仲間達と立ち去ろうとした矢先、新世代型たちに更なる言葉を言い残した。

「もう、お前さんたち新世代型の居場所は世間じゃ無くなっちまってるぜ。そんな中で、どんな居場所を……いや、自分の物語ってのを遺せるかが大事なんじゃないの?」

 ガイアは新世代型たちにそう言い残して、聖龍隊の駐屯基地を去っていった。

 

 そして聖龍HEADの本音を聞き出したガイア・スコーピオンたちスコーピオン同盟は、颯爽と立ち去った。

「まったくガイアったら! 聖龍隊に進言するなんて、どういう了見な訳?」

 スコーピオン同盟に新入りしたアルセーヌたち怪盗帝国の面々が、本来は敵対している筈の聖龍隊に助言する形で訪問した経緯について問い詰めた。

 するとガイアは真顔でアルセーヌたちに言った。

「オレ様たち悪党ができる事なんて、今の時代限られちまってる。それに、これから聖龍隊を働かせて、本業の盗みに悠々と入れるよう世の中を平和に導いてもらわなきゃ困るからな。HEADは素直な気持ちを吐き出せた、あとは奴らがどうやってジュン達とまた仲良くやれるか高みの見物よ」

「それで行く行くは私たち悪党が苦しむ時代に逆戻りになってしまうって事じゃない!」

「何を言っているんだ、アルセーヌ。オレ様たち悪党の道に楽な道はないんだ。いつ何処にいても狙われ続け、安息の時はない……ある意味、聖龍隊以上に茨の道だ。前にも教えた筈だぜ、悪党には悪党だけの過酷な運命が待ち受けているって。そんな過酷な日々を、どう楽しく愉快に過ごせるかが大事なのよ」

「………………………………」

 ガイアの台詞の数々に、アルセーヌたちは何も言い返すことができなかった。

 

 

 

[凛虎とグールの提案]

 

 聖龍HEADの素直な気持ち、ガイア・スコーピオンからの助言を受けて、新世代型たちはHEADが村田順一達スター・コマンドーと再び同じ道を歩みたいと強く願っている事を知った。

 信念と意地と誇りを賭けた戦いを乗り越えて、また同じ道を歩みたいと願い出る聖龍HEADの想いは確かであった。

 しかし、一度は聖龍隊を離反し、戦いを仕掛けてきた順一達スター・コマンドーへの処罰は、やはり下すべきであった。

 その処罰をどうするかで、彼らと聖龍隊の運命は大きく変わるとバーンズ達HEADは思い悩んだ。

 と、HEADが順一達スター・コマンドーへの処罰を考えていた所に、スター・コマンドーの一員でもある愛澤マイがアッコに申し出た。

「……アッコさん、いいえ、ミラーガール! 一つ私に任せて欲しい事があります!」

「え?」

「悪いようにはしません。でも、私からも伝えたい……ジュン君に、みんなに伝えたい意志が!」

 マイの瞳からは、揺るぎない力強い信念が垣間見えたのを、ミラーガールたちHEADも、新世代型たちも把握した。

 すると今度は今までの話を全て聞き入れていた中国が地方武将のイン・ナオコが皆に申し出てきた。

「HEAD! そして深澤マイ……貴殿らの、乙女の純情な想い、しかとこの身に感じた! 私も力を貸したい、遠慮なく言ってくれ!」

 このイン・ナオコからの申し出を受けて、HEADとマイとナオコは考えに考えた。スター・コマンドーへの最善の処罰を。

 

 そして考え抜いた彼らは、まず牢屋の敷地から総部隊長の村田順一以外のスター・コマンドーの隊士たちを呼び寄せた。

「よく来たな、今のお前らはタダの罪人だ」

「……心得ているぜ」

 総隊長のバーンズからの問いかけに、スター・コマンドー隊士の平賀才人は暗い面差しで力強く返答した。

 そしてスター・コマンドーの隊士全員を罪人呼ばわりした総隊長バーンズは、彼らに面と向かって言った。

「お前達はこれから……ジュンへの処罰の材料として、イン軍に引き渡す事になっている」

「へ?」「い、イン軍に? どういう事だ?」

 バーンズの申し出に才人も大門大も唖然とした。

 と、そこに聖龍HEADの女性陣も申し出てきた。

「あなた達にはあなた達でこれからも色々と考えてもらわなければならないわ。それがあなた達への罪科」

「???」

 キューティーハニーの言葉に、赤ずきんやハイパー・ブロッサム、明石薫らは呆気に取られるばかり。

 すると今度はネオ・クイーン・セレニティであるセーラームーンがスター・コマンドーの隊士達に告げた。

「あなた達の言う通り……排除法案は多くの矛盾と苦しみを抱えて施行されています。あなた達が排除法案をどうにかしたいという願い、私達も常々理解できます」

 そして聖龍隊副長ミラーガールがスター・コマンドーに伝えた。

「でも排除法案について、あなた達は誤解している様ね。あの法案の……表面上の頑なさに囚われ過ぎているわ」

「表面上の頑なさに、か……」

 ミラーガールに告げられ、スター・コマンドーの隊士達は大いに考えさせられた。

 すると彼らが考え出したその矢先、彼らをイン軍のなでしこ隊の乙女が無理やり立たせて連行していった。

「え、え?」

 突然連行され出させるイン軍の乙女たちに囲まれて、逃げられないよう捕縛されたまま引き渡される状況に半ば混乱する隊士たち。

「お、オレ達をどうするつもりだ?」

「総隊長! 私達をどうするおつもりで!?」

 大門大や日向ひまわりが訊ねるが、バーンズたちHEADは彼らが撫子隊に連行されていくのを見届けるばかり。

 そんな彼らを前に、バーンズは言い放った。

「よし、ナオコ、それにマイ! 後の事は頼んだぞ! ジュンが配下の者たちを人質に、どの様な行動に出るか……そして、どの様な考えに辿り着くかで全てが決まる!」

「うむ、心得た! マイ、共に頑固頭のこいつ等を……村田順一たちにガツンと伝えてやらんとな!」

「ええ! ナオコさん……」

 イン・ナオコと深澤マイが面と向かって意思疎通している最中、状況を呑み込めていないスター・コマンドーの隊士達は混迷を極めていた。

 

 それから数十分後、今度は総部隊長の村田順一が呼び出され、HEADの前に連れて来られた。

 順一は捕えられながらも、自身の強固な意志をひた隠しにはせず、堂々とした面持ちでHEADの前に鎮座した。

「相変わらず威勢がいいな、ジュン」

「はい、総隊長……」

 バーンズの呼び掛けに対し、順一は力強い眼力で返答する。

「捕えられても尚、己の決意と意志は曲げない、か……そういう頑固なところも、修司とそっくりになっちまったな」

「はい、今考えてみれば……僕らは、いえ、僕なんか特に前総長とそっくりになっていました。頑固なところも……」

「そして、一途なところもね」

 バーンズの問いかけに順一が答えると、ミラーガールが微笑みながら言う。

 そして順一はある疑問と共にHEADたちに訊ねた。

「HEADの皆さん、僕の離反に付き合ってくれた友……他のスター・コマンドーの仲間は、マイちゃんは何処に? そして僕らへの罪状は如何なものに……僕は、どんな罪科でも受ける覚悟です! ですが、マイちゃんや他のみんなにはそれほどの責はありません、どうか……」

「まあまあ、そう焦らず、落ち着けよジュン。みんな今のところは大丈夫だ」

「今のところ……? それはどういう事でしょうか、総隊長!」

 バーンズの返答を聞いて、順一は顔色を変えた。

 すると焦り出す順一に、HEADのセーラーウラヌスが冷然な面差しで言った。

「他のスター・コマンドーの隊士達は、みんなイン・ナオコの撫子隊が連れて行ったよ。彼女らは、モンゴル軍と決着をつけられると聞いていたのに、それを裏切ったスター・コマンドーに見切りをつけて、今でも息巻いているんだよね」

「何ですって!? くっ……これも僕の咎か」

 同盟と言う期待を果たせられなかった事に対し、順一は己自身を強く責めた。

 そんな順一にバーンズが近寄って来ては、こう申した。

「急いで仲間の……仲間になってくれたあいつ等とマイの許に向かえ。急がねえと、あのナオコの機嫌がますます悪くなっちまうぜ」

 そう言うとバーンズは順一を捕縛している手錠を解錠した。

「?! そ、総隊長……」

 何ゆえ自分の錠を解錠してくれたのか訳も分からず混迷する順一に、バーンズは再度言う。

「お前には今も昔も変わらねえ……無能な自分に付き従ってくれた掛け替えのない仲間がいる。そんな仲間たちと共に、これからどんな道を歩むか……どんな物語を創っていくか。それがお前達への処罰だ」

「そ、総隊長……!」

 掛け替えのない仲間と共に紡ぐ物語を創生する事こそ、スター・コマンドーへの処罰だと説くバーンズや、その考えに賛同するHEADの皆々に感銘を受ける順一。

 すると感銘を受け、その場で黙然と座り込んでいる順一にHEADの堂本海人が声を掛ける。

「ほら、さっさと立って仲間の許へ急げよ! 急がないと、短気なイン・ナオコが……いや、あのマイが何をしでかすか分かったもんじゃないぜ」

「え! マイちゃんが……どういう事ですか、HEAD!」

 婚約をも結んでいるマイの名を聞いて、焦燥する順一に七海るちあが言った。

「マイちゃんもマイちゃんで、色々とジュンくん達の事を考えているって事よ」

 七海るちあに続いてローゼンメイデンの真紅も順一に告げる。

「ほら、早く行きなさい。最愛の女性を待たせるだなんて、男としては最低の行為よ」

 眼前のHEADの温もりある言動と眼差しを受けて、順一は颯爽と立ち上がり、駆け足でイン・ナオコ軍の許へと走り出した。

 そんな走り出す順一の背中を見届けて、ミラーガールは思いに耽った。

「考える時間は必要でしょう……だけど、必ず帰ってきてね……聖龍隊は、誰にとっても……家族の様な場所なんだから」

 

 聖龍HEADから、一時的かもしれない恩赦を受けながらも、順一は仲間達が捕えられていると聞かされたイン・ナオコ軍の許へと駆けていた。

 そんな順一が走りながら思っていたのは、幼馴染でもある愛澤マイの事だった。

「マイちゃんはいつもそうだった……僕との何気ない日常を守る為に、影ながら僕との日常を守り続けてくれてた。そんなマイちゃんの負担を少しでも軽くしてあげたいと願ったのも……聖龍隊に志願して強くなろうと志した、その理由の一つだったっけ……」

 最初は何気ない日常を守る為に陰ながら奮闘していた恋人の深澤マイの負担を軽くさせようとしたのが、聖龍隊の一般隊士に志願した切っ掛けだったのを思い返す順一。

「……っと、物思いに耽っている場合じゃないか! 今、マイちゃんやみんなが苦しんでいるなら……それは確実に僕の責任だ」

 マイや仲間のスター・コマンドーが咎により苦しんでいるのなら、それこそ己の責だと強く自分に言い聞かせる順一。

「ナオコ殿にも、腹を割って謝罪しなければ……彼女が不服を訴えるのも、無理のない話なのだから」

 そして何よりも、モンゴル軍との決着をつけたいと同盟に賛成してくれたイン・ナオコへの謝罪も果たさねばと思い悩む順一。

 駆け足でイン・ナオコの許へと向かう順一は、HEADから受けた己だけの物語という名分についても考え込んだ。

「……まだ、どんな答えを出せばいいのかは解らない……だけど、僕は……」

 そんな順一が頭の中で思い浮かべたのが、己の師である小田原修司の顔だった。

「修司さん……僕はこの足で、貴方の元へと辿り着く……!」

 順一は己が師、小田原修司の高みを目指して今後も奮闘する意志を、頑なに守り続ける信念を持った。

 

 そして順一はイン・ナオコ軍の許へと駆けるのだった。

 

 

 

[意外な共闘]

 

 駆け続けた村田順一。

 彼はようやく、仲間達を連れて行ったイン・ナオコが指揮下に入る基地へと到着した。

 

「順一! よくも私を出し抜いてくれたな!」

「待ってください、ナオコ殿! 僕たちは、決してあなたを蔑ろにしたつもりはないんです!」

 基地に来て早々、順一に文句を言うナオコ。そんな彼女は更に順一に問い質す。

「一時的とはいえ、和平を求めたなら同じ事だッ! お前達に協調している我々も、罪科を背負う事になるんだぞ!」

「………………………………」

 一度とはいえ同盟を結んだ自分たちイン軍もまた同罪を背負うことになると言い迫るナオコの言葉に、順一は返す言葉がスグに見つからなかった。

「その償いは必ず……! 来るべき折には、あなた達に罪科が及ばないよう支援すると約束しましょう!」

「ふん、そんな言葉を信用しろっていうのか? あの虎を……モンゴル軍を討つ機会、私に譲るとは思えないぞ!」

「確かにモンゴル軍が将、モウ・コダイ殿は素晴らしい人物だ! だが、一度仲間と交わした約束を裏切ったりはしない!」

「どうだか……一度裏切った人間は、また同じ様に裏切りをするというではないか。聖龍隊を裏切ったお前達が、人から信用を得られると思っているのか?」

「そ、それは……」

 基地内を進軍しながら突き進む順一にナオコが問い掛けると、順一は再び口を噤んでしまう。

 そんな順一の言動を目にし、ナオコは苛立ちながら順一に言い切った。

「順一……本当にお前は、お前達は……彼女ぐらい大馬鹿だ……!」

 このイン・ナオコの言動に、順一は愛澤マイの事を思い出した。

「マイちゃん……愛澤マイは今どうしている? 彼女もまた、あなたの許を訪れている筈だ」

「さあな! もうお前には愛想が尽きたんじゃないのか!?」

「そうか……だとしたら、それも当然だと思うよ」

 聖龍隊を離反しながらも、その理想を叶えられなかった自分に愛想が尽きても当然だと思い込む順一。

 そして基地半ばまで進軍して来られた順一に、イン・ナオコが怒鳴った。

「順一! お前は、お前達は何にも解っちゃいない! 頼られなかったマイの辛さ……私の剣で思い知れッ!」

「マイちゃんの、辛さ……? 詳しく話してください、ナオコ殿」

 順一は愛澤マイの辛さを誰よりも知る為、イン・ナオコの許へと駆けつけた。

 

 基地最深部まで到達した順一の前には、イン・ナオコによって鎖で縛り上げられているスター・コマンドーの仲間達の姿が確認された。

「み、みんな!」

「ジュン、来るな! これは罠だぞ!」

「ああ、解っているとも!」

 ユウの呼び掛けに、順一は全てを承知の上で仲間の許に駆け付ける。

 そして皆の鎖を断ち切ると、そこに大剣を振り翳してイン・ナオコが登場した。

「スター・コマンドーよ! 私は、貴様らに……本当の罪を知ってもらう為にこの剣を振るう!」

「本当の罪……? どういう事ですか、ナオコ殿」

 イン・ナオコの言葉に順一が問い掛けると、ナオコは大剣を振るい攻めながら順一たちスター・コマンドーに語った。

「マイは……お前に相談して欲しかったんだ! お前が抱え込んだものを、共に背負いたかったんだ……」

「そうか……僕は人知れず、一人で全てを抱え込んでいたんだ……全く、マイちゃんは……」

 何事も全ての責を自分一人で背負っていた事を自覚した順一は、同時に愛澤マイの優しさと気遣いに心を打たれた。

 だが、それでも順一は、気高い面差しでナオコに言った。

「でも、マイちゃんにそれらを預ける訳には行かなかった……彼女はもう、十分過ぎるほど背負ってくれたのだから」

「マイがそう気遣ってくれと一度でも頼んだのか!? 結局、お前もそこらの男と同じだ……己を優先させてるだけだ!」

「………………………………」

 聖龍隊の影の役回りで多くを背負ってきたマイに、これ以上の業は背負わせられないと伝える順一に、ナオコはその気遣いこそ身勝手なのだと説き返す。

 大剣を振るうイン・ナオコに、手甲を失ったばかりの順一は回避し続けるばかり。

 そんな順一に少しでも手助けしようと、スター・コマンドーの隊士達は順一に加勢する。

「ジュンっ、こいつだ!」

 パワード・バターカップから預かり受けたハンマーを順一は振り翳し、地面に巨大な窪みと亀裂を生じさせる。

「絆の力……受けてみろッ」

 だがその攻撃は隙が大きく、イン・ナオコは悠然とかわしてみせる。

「結界!」

 そんなナオコの猛攻を阻止しようと結界師の墨村良守は、ナオコの周囲に結界を張り詰めて応戦する。

「ジュン、今度はオレたちの武器で……!」

 ハンター・スティールからの言葉を聞いて、順一は投げ渡された彼と才人とセレブナイトの剣を、両手と口で受け止めて構える。

「絆が力……受けてみろッ」

 順一は両手の刃と口で銜えた刃の、三つの刃から斬撃破を放ってイン・ナオコをけん制する。

 三つの斬撃をかわして、ナオコは順一にツッコム。

「って、お前はロロノア・ゾロか!?」

「ああ、やっぱり分かっちゃうか」

 ナオコからの的確なツッコミに、平賀才人は唖然と頭の後ろを掻いて立ち尽くす。

 

 と、順一が仲間の武器を借りて戦う「絆星願」を駆使してイン・ナオコと激闘を繰り広げていると、上空から黒い影が来襲してきて地上の順一やスター・コマンドーの面々に襲い掛かる。

 順一達が上空から飛来してきた新たな刺客を捉えようと、目を凝らして影の中で蠢く人影を凝視した。

 すると影の中から現れたのは、異様な翼に姿、そして力強い面魂を表情に浮かべる愛澤マイ本人だった。

「ぐうっ!? マイちゃん……!?」

 上空から突如として奇襲を仕掛け、自分たちスター・コマンドーに攻撃してきたマイに順一は愕然とした。

「マイ……! そうだ、お前の意志をそいつらに伝えてやれ!」

 そんな人間としての表情や顔付きだけを残して異形の怪物に変身しているマイに、イン・ナオコが激情を発声する。

 そしてグールという怪物の半人状態に変身しているマイは、イン・ナオコと共闘して周囲のスター・コマンドーを攻めていく。

 マイの闇からの攻撃に加え、攻撃範囲の広い大剣を振り回すイン・ナオコの猛攻に悪戦苦闘するスター・コマンドー隊士たち。

 自分以外の人間と連携を組み、共闘して接戦するマイの姿を目の当たりにして、順一は深く考えさせられた。

「マイちゃん……はは、不思議だね……僕以外の人と組む君を見る日が来ようとは……」

「…………!!」

 何処か寂しげな雰囲気を醸し出して苦笑する順一の表情を見て、マイは無言を貫き通すものの衝撃を受ける。

 そしてイン・ナオコに続いて深澤マイとも激しく接戦を繰り広げる順一は、仲間の武器を借りて応戦しながら思い耽る。

「やっぱりマイちゃんは強いな、HEADの先輩方と同じだ、今も昔も変わらない……変わってしまったとしたら……きっと僕の方だ」

「………………………………」

「僕は強くある為に、君に甘えるのを止めたんだ…………そんな僕は、やり方を間違えてしまったのかな……?」

 己を強くさせる為に、弱き己を全て捨て去ったつもりでいた村田順一は、何処かでやり方を誤ってしまったと同時に変わり果ててしまったのかと自問自答を繰り返す。

 そんな順一に、マイは更に強力な攻撃を仕掛ける。

 マイの攻撃を受けて、悶絶する順一。だが、本当に苦痛を感じているのは攻撃を仕掛けているマイの方だった。

 現政奉還が起こる前から、排除法案について考えさせられていた順一は悩み抜いていた。そんな時に起こった現政奉還で、より命を消費しなければならなくなった現状に順一は自問自答を繰り返した末に聖龍隊を離反。師でもある聖龍HEADと対峙する事で新たな世を築こうと思い立ったのだ。だが、その道中でも村田順一は「力による支配」を拒みながらも己が振るう拳もまた人を支配する武力なのではと自問自答を繰り返す日々。そんな順一の葛藤を、マイは絶えず見守るしかできなかった。

 確かに自分達は愛し合う仲、しかし男の方は世の為に力が支配しない世界を望んで、聖龍隊と決別してしまう。そんな男に仲間と共に付き従った女は、本当は男の苦悩や苦悶を共に背負って、男が背負う業や罪といった重荷を軽くさせたかったのが本音かもしれなかった。

 いくら怪物に変身できる能力があろうと、いくら他者の記憶を改ざんさせる能力を有しようと、本当に救いたかった男の心までは救済できなかった現実に女は落胆し、男の前に立ちはだかった。

 なぜ闘い合ってまでも男と向き合いたかったのか。それは男という、愚かな生き物には戦闘でしか伝えられない想いがあるのを女は聖龍隊で学んだからである。

 自分を愛してくれる女の直向な想いを戦闘の中で伝えられた男は、敢然たる勇姿で女に言い放った。

「マイちゃん……僕は未来を変える為、運命に抗う為……どんなに昨日を想おうと……この孤高(ばしょ)から降りはしない!」

「ふん……どこまでも不器用な連中だ……」

 戦い合う事でしか、己の率直な想いを伝えられない不器用な生き様を目の当たりにして、イン・ナオコはそんな男とそんな男に惚れた女に笑んだ。

 

 そして愛澤マイとの闘いが激しさを増していく中、順一の心中に何故か過去の情景が浮かび上がった。

「い、今のは……!」

 マイからの攻撃を受け流しながら、順一は今心中に浮かび上がった情景に一驚し、衝撃を受けた。

 それは、かつて聖龍隊に一般兵として入隊し、同時期に入隊した今の多くの仲間達と共に青春を謳歌していた過去だった。

 

 魔法使いとその使い魔であるルイズや才人、デジモンをパートナーにする大やトーマに淑乃、犬魔法の使い手徹之進、超能力者の薫や葵に紫穂、結界師の良守に時音、格闘術に秀でた兼一に美羽、ももこやみやこにかおる、元殺し屋のユウとニナミ、おとぎ話のキャラクター赤ずきんに白雪にいばら、暗い過去を背負った音無小夜、スティールたちスパイダーライダーズに忍者のひまわり達、人工生命体のハル、そして昔から自分を想い慕ってくれた深澤マイ。昔から順一と絆を結んでくれた仲間が、それこそ星の様に存在していた。

 最初、聖龍隊では彼らは平等に扱われ、能力を使用禁止にした状態で組織内の雑用を一緒に行わせた事も多々あった。魔法や超能力を禁じられた状態でトイレ掃除などの雑務をさせられていたルイズや薫たちが文句を言う中、秀でた能力を持っていない順一だけは懸命に雑務に身を入れていた。当初、そんな馬鹿真面目な順一に愛想を尽かしていた皆々であったが、その順一の真面目で純粋な想いに引き寄せられ、次第に絆を深めていった。

 しかし次第に明らかとなっていく排除法案の闇を前に、時おり順一と彼らの師匠である小田原修司は度々衝突。だが、そのつど仲間達が順一を支え合った。

 そして遂に北朝鮮進攻で手柄を立てた彼らは、修司達HEADから「流星の精鋭部隊」という意味を持つ総合部隊として認可された。その折、多くの仲間達からの支持を受けて順一は総部隊長へと就任した。

 

 そんな過去を順一は思い出していた。

 すると其処に深澤マイが新たな一撃を順一にお見舞いする。攻撃を受けた順一は、まるで走馬灯の様に再び過去を思い出す。

 戦場で敵に囲まれた際、グール化して飛来してきたマイに間一髪のところを救われて苦笑いする順一。彼は彼女の懸命な戦ぶりを見て、自分もいつか誰に頼る事もなく強さを維持できる武人に成り上がりたいと強く願う様になる。

 しかし過去を思い返した順一は悟った。誰にも頼らず強さを誇示するのは、到底無理だということを。全ては意地の張り様、頑固な考えの下で無理強いして強がっている事を。そして忘れてはいたが、自分達はずっとお互いを支え合って共に生きてきた事を順一は思い出した。

 

「ふん、意地を張るのもそれぐらいにしておくんだな」

 マイからの攻撃を受けて、戦意喪失した順一にイン・ナオコが睨み付ける。そんな彼女の言葉を聞いて、順一は改めて思い知らされた。

「意地、か……そうだな。僕たちは……ずっと隣同士で支え合って生きていたのかもしれない」

 気付いていなかった訳ではない。ただ、意地を張りすぎた為に少しばかり忘れてしまっていたのかもしれない。そう、ずっと隣で支え合ってくれた関係だという事に。

 そして地面に座り込む順一は目の前の、人間の姿になった愛澤マイに手を差し伸べて彼女に尋ねた。

「……マイちゃん、僕の本音を聴いてくれるかい? 過去(かつて)の様に、お互い胸の内を晒して語り合ってくれないかい?」

 昔の様に、聖龍隊に所属し始めていた頃のように、全てを最初から始める為にも、順一はマイに問い掛けた。

 するとマイは、目を輝かせて順一の問い掛けに優しくも強く答え返した。

「ええ、何度でもジュンの本音を聴くわ……私は、村田順一の……誰の道行も照らす明星を愛する、一人の女だもの……!」

 何度失敗を重ねようとも、何度だって本音を聞き入れると返したマイの真意には、どんな者の道行きも照らす明星を誰よりも愛する乙女の力強い意志と想いが積み重なっていた。

 そんな順一とマイを見て、スター・コマンドーの隊士は優しく見守り、イン・ナオコは少し羨ましいのか涙目を背けていた。

 

 

 

[はち切れた想い]

 

 その後、村田順一たちは聖龍隊本隊のところに帰還。

 彼らの帰還を受けて、HEADは順一達が新たな道を見出した事を察する。

 スター・コマンドーの帰来を受けて、多くの隊士が順一たちを暖かく受け入れた。

 村田順一が孤高の場所に居続ける覚悟を決めながらも、同時に己が意地を張り合って、信念と言う強さを誇示していた事を黙認した。

 

 そしてとある川辺で、村田順一たちスター・コマンドーは木の下に集まっていた。彼らは昔の思い出を思い返しながら、現実(いま)を静かに過ごしていた。

 そんなスター・コマンドーの面々に、バーンズたち聖龍HEADが歩み寄ってきた。

「順一……」「総隊長……!」

 静かに声を掛ける総隊長バーンズの一声に立ち上がる順一。

 バーンズ達HEADが何故か思い詰めた眼差しを浮かべているのを、遠くから静観している新世代型たちは察した。

 そして互いに向き合うスター・コマンドーと聖龍HEAD。互いに反発し合っていた双方ともに一種のこう着状態に陥っている最中、アッコがバーンズに肘で突いて早々に言いたい事を伝える様に催促する。

 バーンズはアッコに急かされると、自身の頭に手を乗せて順一達に言った。

「その、なんだ……普通、総長たるオレがこんなこと言うのは場違いもはなはだしいんだが、その………………済まなかったな」

「そ、総長!」

 バーンズの突然の一言に一驚する順一たち。しかしバーンズはそのまま順一達に話し続けた。

「前々から……いいや、本当に昔から、お前達には重責と言うものを背負わせすぎちまった。修司の意向でお前達を聖龍隊最初の精鋭部隊に仕立て上げた頃から、二年前のアジア大戦でヤン・ミィチェンを討伐させたりと……心の重荷を背負わせ過ぎた。本当に済まなかった……!」

 するとバーンズに続いて参謀総長のジュニアも順一達に申し出る。

「君たちみたいに若い世代の戦士たちにまで数々の重荷を背負わせ、苦しめてしまった……その苦悶の末に行き付いてしまったのが今回の反乱だと僕らは思っている。全ては今までの聖龍隊の意向と信条、それらが君らを苦渋の決断にまで追い詰めてしまったんだろう?」

 このジュニアの言動に、順一は強く反論した。

「そ、それは……! 確かに僕らは重い業を、重荷を背負ってきました! でも、それはあなた達に強要されていたからじゃない! 僕らが自分自身の決意で背負おうと覚悟した上での重責です……誰にも非はありません」

 すると今度はHEADのセーラームーンが悲しげな面差しで順一達に語った。

「でも私達は……多くの二次元人を守る為に修司くんが制定した排除法案にすがるしか道はありませんでした。あなた方が忌み嫌っている様に、十の人々を守る為には少数の……一の人々を切り捨てていかなければなりませんでした」

「そ、それを! ジュンは俺たちを現実(いま)に失望させまいと、俺たちを先導して今まで頑張ってくれたんだ! 言っちゃなんだが、あんた達の意向とかで順一は聖龍隊でも皇軍でも働いてきた訳じゃない! 俺たちの……そして多くの人々の力になれるようにと頑張って来ただけだ!」

 セーラームーンの言葉に平賀才人が反論する。

 すると再びバーンズ総長が順一たちスター・コマンドーに伝える。

「多くを守るには、大義を成すにはそれなりの代価が必要となる。無償の正義、無償の庇護などこの世には存在しない。かつてオレ達を先導してくれてた修司は、それを理解した上で排除法案を施行した。一部の命を代価として犠牲にし、多くの人命を救済する力へと変化させる法案……それが異常者(ヒール)排除法だ。等価交換というまでには至らなかったが、今生の二次元人達を一人でも多く救済できる法案は排除法以外に術が無かった」

 バーンズの悲痛な説明に続き、コレクターユイが瞳を潤わせて語る。

「たくさんの人の想いを守るには、それ相当の代価が必要だった。私たちHEADは、異常者(ヒール)になってしまった二次元人の大部分を処分するしか今の平和を……今の偽りに満ちた平和を守るしかできなかった」

 コレクターユイに続いて木之元桜も悲しげな面持ちで話した。

「偽りの平和しか私たち聖龍隊には守れない……その不条理な現実を修司さんは受け止めていた。私たちは、そんな修司さんの悲痛な想いを理解した上で、修司さんと共に偽りの平和を守り続けるしかできなかった……」

「偽りの平和の中で……多くの命を奪い取る現実の中でしか、私たち聖龍隊は存在を許してもらえなかったんですね……」

 木之元桜の話を聞いて、スター・コマンドーの風林寺美羽が思い詰めた表情で語る。

 すると此処でバーンズが力強い表情に顔を一変させて、熱弁を語り出した。

「……だがな、オレ達は立ち止まっちゃいけないんだ! どんな理不尽な現実だろうと、不条理な世の中だろうと……オレたち聖龍隊は、戦い続けなきゃならないんだ、その運命と……!」

 二次元人に突き付けられる理不尽な現実と不条理な世の中、そんな過酷な運命であろうと力無き者の剣であり盾である聖龍隊は、その過酷な運命と向き合い、戦い続けなければならないと説き伏せるバーンズの決意に満ちた眼差しから感じられる力強さに圧巻されそうになる順一たち。

 バーンズやジュニア、そしてその他の聖龍HEADの辛辣な想いを親身に受けて、順一は新たな覚悟を決めて言い放った。

「……はい、総長、HEAD! 僕は少し焦り過ぎていたのかもしれません……僕は、いや僕たちは思い出しました。聖龍隊に入って間もない僕らは、確かに別々の時間を過ごして事も多かったです。ですが、時を過ぎるほどに少しずつお互いの距離が縮み、やがては一本の運命と言う道を一緒に突き進むまでに絆が深まったあの頃を……!」

 この順一の凛然とする熱弁に、バーンズは微笑んだ。

「フッ、そうだな……お前達は最初、別々の道を歩いていた。だが、共に修行を重ねて行く毎に力を合わせ、協力し合い、やがては一つの結束として繋がりが結ばれていったんだっけな」

 バーンズの微笑みを前に、スター・コマンドーの隊士たちは表情を緩め、順一は更に熱弁しようとする。

「はい、なので僕らはまた、一から全てを始めたいと思います! 最初の頃の様に、少しずつでいい……少しずつ、人と人とを結びつける絆を束ねて行って、この世を変えて行きたいと思います! また時間はかかるかもしれませんが……僕たちはまた最初から、絆を集めて行きたいと思います!」

 己の胸に右手を翳して力強く語り通す順一の様子を一目見て、バーンズは険しい表情で順一たちに訊ねた。

「……また聖龍隊の罪を背負って生きて行くつもりか? 修司が背負ってきた重荷を、また背負う気でいるのか?」

 これに順一は力強く返答した。

「はい! 聖龍隊が背負ってきた業から、罪から逃げたりはしません! 我が師、小田原修司が積み重ねてきた罪科からも、決して逃げたりはしませ……」

「ソレがダメだと言っているんだ!!」

 突然のバーンズの怒声に、順一もスター・コマンドーの隊士達も一驚する。

 すると怒鳴ったバーンズは静かに順一に歩み寄り、順一の眼前で立ち止まると彼をそっと抱き締めた。

「そ、総隊長……?」

 突然の総長からの抱擁に、何が何だか分からず困惑する順一。

 すると、そんな困惑する順一たちスター・コマンドーに、バーンズは肩を震わせて語りかけた。

「もう無理しなくていいんだ……! そうやって自分を強く見せるのはやめろ……世界と同じで、自分を偽らないでくれ……!」

「! そ、総長……!」

 バーンズの言葉に順一は衝撃を受けるも、バーンズは順一を放さず抱きしめたまま語り続けた。

「オレたち聖龍隊の罪だけじゃなく、修司の罪まで背負って生きて行く事はない……! 聖龍隊の罪は、オレたちHEADが引き継ぐ……修司の罪を背負うのは、あいつ自身最も望んじゃいねぇ……お前達はお前達で、現実(いま)を正直に真っ直ぐ突き進んでほしい……!」

「………………………………」

「偽りの自分で周りを欺くな、偽りの笑顔で自分を飾り立てるな……困ったときは素直に助けを求めろ、泣きたい時は思いっきり泣いちまえ……! お前達の涙も、オレらがきっと受け止めてやるからよ……ッ!」

 バーンズの一言一句を聴いて、順一の常に明るかった瞳が徐々に暗く、水が溜まって来た。

 そして最後にバーンズは、そんな順一の水が溜まる瞳と面と向かって言った。

「オレは、オレ達は……もう絶対に、お前達を独りにはさせない」

 このバーンズの台詞を聞いて、順一も彼に賛同するスター・コマンドーの隊士達も全員が心を貫かれた。

 そして積み重ねてきた堰が一気に崩れ落ちたかの様に、まず順一の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。それを見たバーンズは、順一の後ろ手に立っているスター・コマンドーの隊士達にも声を掛ける。

「お前達も辛かっただろう……でも、もう我慢する必要はないんだ。泣きたいなら思いっきり泣いちまえ!」

 バーンズの最後の一言に感銘を受け、スター・コマンドーの隊士達も堪えていた涙が一気に瞳から溢れ出ては滝の様に涙を流し始めた。

 

 誰の心をも照らし続け、道を指し示す明星。それがスターすなわち流星の精鋭部隊の名の道理。

 それ故に最初の精鋭部隊であるスター・コマンドーの面々は、その人々の心を照らし続けるという大義名分を自分達で設け、施行した。

 しかし、それ故に人々を不安がらせる泣き顔や痛心な表情を浮かべる事は出来なくなってしまった。

 人々を照らし、現実(いま)を燃え尽きるまで駆け抜ける流星としての大義を果たす為、彼らは涙を捨て去った。

 誰にも涙を見せず、常に人知れず堪え続けてきた彼らスター・コマンドーの道のりは険しいものだった。

 

 スター・コマンドーが遂にバーンズ達HEADに説き伏せられ、せき止めていた涙が一気に瞳から溢れ出た。

 そんなスター・コマンドーの心情が、この時緩んでしまったのか遠くから静観していた新世代型二次元人達の共有感知で彼らに伝わってしまった。

 だが、新世代型達の心中に伝わってきたスター・コマンドーの真情は、重く切なく、そして哀しいものだった。

 なぜ村田順一たちスター・コマンドーが平和を得られたか、その理由が切なかった。

 彼らは大切なものと引き換えに、あるものを手に入れた事が新世代型たちに伝わった。

 少年だった村田順一は、まず最初に涙を捨てました。その代わりに少年は笑顔を手に入れました。泣き顔の上に、偽りの笑顔の仮面を被ってまで。

 次に青年へと成長した順一は武器を捨てました。その代わりに青年は、命の重みを知りました。彼が浮かべる微笑みと拳は、夥しい血で濡れていた。

 最後に彼らスター・コマンドーが捨ててしまったのは、彼らが一番大切にしていた(もの)でした。

 誰よりも純粋で、心そのものが美しかった愚直な青年ヤン・ミィチェンと繋げられなかった絆を断ち切って、彼を失くした。

 偽りの笑顔を崩壊させた彼ら。その代わりに彼らは、誰もが笑って過ごせる平和な世を手に入れました。

 

 北朝鮮の残党軍総大将ヤン・ミィチェンとの対面で、スター・コマンドーは大きく変わった。

 彼の様に愚直でありながらも、純粋で美しい心を持っていた青年を死に追いやってまで得た平和が偽りのまがい物である事をスター・コマンドーは理解していた。

 そんな偽りの笑顔で自分自身を偽って来たスター・コマンドーの面々は、自分達と同じく偽りに満ちた平和を壊し、聖龍隊や小田原修司が積み重ねてきた多くの大罪を代わりに全て背負って世直しをしようと運命に挑んだのだ。

 新世代型たちは、改めてヤン・ミィチェンという人物の評価を見直すと共に、村田順一たちスター・コマンドーが背負ってきた悲しい重荷と保持してきた笑顔の切なさを痛感した。

 

 

 

[流星の運命(さだめ)]

 

 遂に思いの丈を全て吐き出すように、バーンズ達HEADに説き伏せられた事で号泣した村田順一たちスター・コマンドー。

 彼らが遂に流した涙を目の当たりにして、HEADも感極まって貰い涙を目から零す。

 聖龍隊の蟠りが解れた情景を目の当たりにし、同時にスター・コマンドーが背負ってきた重荷の重さを痛感した新世代型たちも涙を流す。

 偽りに満ちた世界をほぐそうと、偽りの笑顔を顔に貼り付けていたスター・コマンドーの意地が崩れ、泣き顔と言う本当の素顔が垣間見れた瞬間だった。

 

 HEADとの対談、そして一通り涙を流し切った村田順一たちスター・コマンドーは川の向こうを見詰めながら耽っていた。

 そんなスター・コマンドーに、新世代型たちは歩み寄り、徐に声をかけてみる。

「……順一さん」「ああ、君たちか」

 新世代型の琴浦春香の声に、順一やスター・コマンドーの隊士たちが涙で真っ赤になった眼を向ける。

 この時も村田順一たちは、はち切れた想いが爆発して思考が緩んでいたのかテレパシーで心理が解ってしまう状態だったので、新世代型たちは共有感知を通して順一たちスター・コマンドーの真情を自然に読み取っていた。

「済まないね、こんな泣き顔……君たちに見せてしまうとは」

「いえ、いいんです。俺たちもさっき、隠れて見ていましたけど……その、なんだ………………辛かったんですね」

 他人に泣き顔を曝してしまった経緯を詫びる順一に反して、真鍋義久たち新世代型は順一たちの真情を悟って掛ける言葉を懸命に脳裏で探っていた。

 新世代型たちは琴浦春香と斉木楠雄、二人のテレパシーから共有される思考で村田順一たちスター・コマンドーの苦心を知った。

 捨てる宛もない感情。心清らかな青年をも死に至らしめてまで手に入れた偽りに満ちた平和。こんな世界を、時代を創る為に自分達は戦っていたのか。ヤン・ミィチェンを失ったスター・コマンドーは彼の死後つねに考えるようになっていた。

 偽りの平和を保持し続ける世情。そんな世界を少しでも変えようと、夜空という現実を照らし続ける明星、いや流星は煌びやかに現実の時代を駆け抜けたが、焦り過ぎた為に流れ尽きてはその輝きを消滅させてしまった。

 順一たちスター・コマンドーの喪失感を感じ取った新世代型たちは、思い切って順一にある疑問を問い掛けた。

「順一さん……」

「なんだい、星原ヒカル君」

「あなた達にとって、ヤン・ミィチェンとはどんな人物だったんですか? 純粋で、心美しい武将だったのは理解しました。けれど、僕らはまだ理解し切れていない。ヤン・ミィチェンとは如何なる人物だったのか……」

 この疑問に順一は、真っ赤な眼で答え語った。

「ヤン・ミィチェン。彼はとても美しく、誰よりも祖国を愛し続けた忠節なる武将……例えて言うならば、夜空に輝く月のように美しかった」

「夜空の、月……」

「そうだ、蓮城寺べる。僕らが時代を駆け抜ける流星であるなら、ミィチェンは夜空に燦然と輝き続ける月そのものだった」

 順一はそのまま新世代型たちに語り継いだ。ヤン・ミィチェンという一人の男について。

「同じ夜空に輝く星と月……されど、その輝きは全く違うものだった。僕らは燃え尽きるまで激しく、止まる事が許されない流星。それに反して月は、その場に留まり続ける……大きな星だ」

『………………………………』

 順一の話を、新世代型たちは悲愴な面持ちで聴き入れる。

「本当の星とは素晴らしい。どんなに暗い夜空でも、明るく輝き、夜でも地上を照らしてくれる。だけど流星は違う……流れ星は空から地に堕ち、そして地上に到達する前に燃え尽きて消え果ててしまう。もし、そのまま地上に堕ちてしまえば、多くの命を奪う事だろう」

 順一は空を見上げながら語り続けた。

「それでも僕は、星になりたかった。夜空の様に漆黒の現実をも照らせる明星になりたかった。けれど結局は地上に堕ちる前に消滅してしまう流星に……現実を駆け抜ける流れ星になってしまった。立ち止まる事が許されない、迷うことも泣くことも許されないまま、ただ前に向かって猛進する流星に、僕らスター・コマンドーは成り上がってしまった。平和を強く望む、強欲な流星に……」

 すると、この順一の話を聞いてスター・コマンドーの一員である愛澤マイが訴えた。

「それは違うわジュン君!」「っ、マイちゃん……!」

 マイの悲痛な涙を浮かべる眼差しを直視して、戸惑う順一。そんな順一や、周囲のスター・コマンドーを前にマイは打ち明けた。

「ジュンくん、あなた達は知らなかった。あなた達は既に、夜空を照らす星だった事に……でも私はスグには気付かなかった、あなたたち明星の、いいえ、流星の孤独を」

「マイちゃん……」「マイ……」

 マイの告白に順一も他のスター・コマンドーも茫然と耳を傾ける。

「ジュンは昔から、私達を……周りを輝かせてくれたわ! グールである私はもちろん、誰であろうと心を開き、平等に接してくれた……それだけでも嬉しいのに、ジュンは……いいえ、みんなは辛い選択ばかりしてきた。多くの人々の為に、敢えて苦しく辛い選択ばかり選んで孤高という頂から降りようとは決してしなかった……!」

 このマイの辛辣な告白を聞いて、新世代型たちは更に順一たちスター・コマンドーに問い掛ける。

「あなた達はいつも苦しい道を選ぶ。あなた達はいつも苦しい道を選んで突き進んでいく……!」

「人には「自分のために生きろ」と説きながら、あなた達は自分自身の為に生きようとはしない」

「私達のため、世界のために……選び、苦しみ、耐え続けている」

「私たちは、あなた達に何もしてあげられない。このもどかしさ……」

 新世代型のイオリ・セイ/イオリ・リン子/鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)/荊千里(いばらちさと)の訴えを真に受け止めるも、順一たちは黙り込む。

 そんな黙り込む順一たちに、皐月は再度問い詰めた。

「何故あなた達は、独りで泣こうとされる。いつも、いつの時でも、独りで泣いているばかり」

 この質問に対して、順一は真顔で答えた。

「それもこれも、全ては僕たち自身で決めた覚悟だからさ。多くの矛盾と挫折を乗り越えて、僕たちは現実(いま)を生きている」

 すると順一は徐に歩き出し、川の辺まで歩み寄ると、川向こうに顔を向けて宣言した。

「ミィチェン、僕たちは君を忘れない。自分がしたことを決して忘れない。いつかまた……そう、来世でも君に会う時まで答えを探す」

 順一は、いやスター・コマンドーはヤン・ミィチェンとまた数奇な運命の果てで再会できるその時まで、彼から問われた「絆を断ち切って絆を得る」という矛盾に答える覚悟を宣言した。(答えろ順一! この矛盾の行方を!)ミィチェンから問われた疑問に答えられる日が来るまで。

「マイちゃんと、みんなと、共に答えを見つけてみせるよ」

 自分には、愛してくれる女性が、そして頼りがいのある仲間がいる。この仲間と共にいつか答えを見出して見せると宣言する順一の言葉に、マイもスター・コマンドーの面々も賛同する。

「だからそれまで……向こうで待っていてくれ、ヤン・ミィチェン!」

 答えが見付かり、再会するまで冥界で待ってくれと、あの世のミィチェンに声が届く様に順一は叫んだ。

 

 そして一通り、思いの丈を吐き出した村田順一は、瞳に残った涙の余韻を腕で拭うと満面の笑顔で新世代型の皆々に告げた。

「もう泣くのも悩むのもヤメだ!!」

「!?」突然の順一の告白に衝撃が轟く新世代型たち。

「僕たちはのうのうと生きようと決めた。繋がらない絆を断ち切って、絆を丸く収めてそれで良しとする。そんな強欲で身勝手な生き方を貫いて、最後の最後には地獄でミィチェンと再会するまで彼の矛盾を答えられるようにしておく! これで良いのだ!」

 そして順一は胸を張って堂々と新世代型たちに語り続ける。

「全てを受け入れ、全てを背負って、全てを与えて、全てを照らせる……そんな自分になる為、前へ前へ進もう!」

 全てが叶えられるまでに己を成長させる為に、潔く次の時代に向けて前進していくと決める順一は、新世代型二次元人の皆々に訴えかけた。

「だがもし、僕たちの歩みが立ち止まり……また僕たちが暴走した時は……新世代型のみんな! その時は、君達が僕らを止めてくれ!」

 突然の順一からの嘆願に戸惑いを隠せない新世代型たち。そんな一同に順一は真顔で訴えかけた。

「新世代型の諸君! 僕は友が笑い合って暮らせる世を創りたい、民が穏やかに暮らせる世を創りたい、人が人でいられる世を創りたい。だから、みんな……またその眼で、我が師、小田原修司とは違うその瞳で見届けてほしい。僕たちがいつか創る次代を……人と人が支え合える次代を」

 敢えて小田原修司のクローンという概念とは別に、個々の瞳で自分達がいつか創る人々が支え合える次代の到来を見届けて欲しいと切願する順一の熱弁を聞いて、薄暗かった表情にホンの僅かな光を見出す新世代型たち。

 その上で順一は、常に昔から自分を想い慕ってくれる愛澤マイに歩み寄ると、彼女にも伝えた。

「マイちゃん、君にも見届けて欲しい。ずっとずっと僕の傍で」

 この順一からの告白に、マイは目から涙を零して喜んだ。

 するとその時、村田順一を取り巻くスター・コマンドーの面々の思想が新世代型の共有感知を通して伝わってきた。

 

(ジュン。なぜ昔、貴方にお仕えしたのか、答えられなかった。だが決して、己が保身のためでも、君が弱いという哀れみでもなかった。そう……自分達には、あなた以上の御方がいなかったまでの事。村田順一……あなたの傍にいられる事、仕えられる事、その絆に、心からの感謝を)

 

 この掛け替えのない仲間からの絶対的信頼があってこそ、村田順一の人望も一際偉才を放っているのだろうと新世代型たちは思った。

 だが、それ以上に新世代型たちは順一たちスター・コマンドーの心の奥底に隠れた本音をも共有感知で読み取ってしまう。

 それは

 

(ミィチェンは……それでも、誰よりも美しかった)

 

 凶王と呼ばれ、多くの人々から恐れられていたヤン・ミィチェン。

 村田順一たちスター・コマンドーは自然と彼の純粋で美しい心に惹かれていたのであろうか。

 それでも順一たちはヤン・ミィチェンを死に追いやった。

 その罪科は拭いきれないものだからこそ、順一たちスター・コマンドーは懸命に現実(いま)を生き続けている。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。