聖龍伝説 現政奉還記 創生の章 作:セイントドラゴン・レジェンド
[黒武士からの伝達]
祖国を、主君を奪った二次元人へ恨み憎しみを滾らせるサコンが基地を出て一日が経過。
新世代型二次元人達は、自分たち二次元人が、そして自分達の始祖である小田原修司が仕出かしたサコンへの仕打ちに心を痛めていた。
悲惨な生い立ちながらも、ヤン・ミィチェンに命を救われ、敵を作りやすい性格だったミィチェンを心から支えようとしたサコンの配慮。
しかし、そんな二人の青年を絶望に追い詰めた北朝鮮への進攻と、その進攻を良しとした世界情勢の厳しさを痛感した一同。
祖国を、主君を失って狂気に陥ったミィチェンをサコンが命懸けで制止したにも拘らず、ミィチェンは頭髪脱色と拒食症の二重の苦難を浴びてしまう。
二次元人への人権が確立されていなかった時代背景ゆえに当時よりアジアで猛威を振るってた北の国を攻め入って、二次元人の有難味を世間に訴える為に進攻した聖龍隊と小田原修司。
そんな彼らによって、ようやく手に入れた希望を失い、奪われたサコンの怒りと悲しみは絶大なものだった。
新世代型二次元人達は、自分達の
「………………………………」
「お前たち、大丈夫か……?」
「ああ、バーンズさん……」
「朝から調子悪そうな顔してるな。まあ、お前達の今の心境なら無理もねえけどよ」
悲愴な面持ちを浮かべる新世代型たちにバーンズが声を掛けると、そんな新世代型たちの中から星原ヒカルが返事をする。朝から調子が悪そうな彼らを見て、バーンズは彼らの心をテレパシーで読み取って、如何な理由で調子が出ないのかを悟った。
「……まだ1日しか経っていねえけど、あのサコンがまたお前らを殺しにかかって来てもオレらが全力で護るから安心しとけ」
「はい……でも……」
「殺されても仕方がないのかもしれない……自分達、新世代型二次元人は北の国を攻め落とした修司さんのクローン……殺意を向けられても仕方ないのかもしれません」
サコンが再び新世代型たちを殺しに向かっても全力で護り抜いてやると言い切るバーンズに、鹿島ユノと出雲ハルキが重々しく返事する。そんな二人の返事を聞いて、バーンズは「そんなこと言うなよ」と、優しく言葉をかける。
バーンズは悲愴感に苛まれる新世代型たちを前に、彼らに唱えた。
「……カァチェンからも聞いているよ。お前達、カァチェンとサコンの会話を立ち聞きしてたらしいな。……確かにオレら聖龍隊、いや二次元人は自分達の人権を確保する為に当時からアジア各国にとって目の上のたんこぶだった北朝鮮に進攻して制圧した。北朝鮮の軍政権を打破して、北朝鮮の思想を壊滅させた……オレ達の中じゃ、それは立派な正義だと捉えているが、それでも一部の北朝鮮の、特に軍人に絶望を与えたのは間違いない」
険しくも悲愴な面持ちで語るバーンズ台詞を聞いて、新世代型二次元人達は胸中に秘めていた疑問をバーンズにぶつけた。
「戦争で情報戦略は如何に大切で、重視すべき戦略の一つだとは理解できますが……本当にそんな、効果は大きくても残酷な手段を取らざるべきだったのですか?」
出雲ハルキの質問に、バーンズは険しい真顔で答えた。
「当時から北朝鮮の国民は誤った情報を与えられ、軍政権を崇拝するまでに至ってしまっていた。そこで修司は……いや、此処は敢えてお前達に対しての間柄で始祖と呼ぼう。始祖である修司は北朝鮮の国民に正しい情報を流出させることで、北朝鮮を内部から崩落させる作戦を思い付いたんだ。信仰心厚い北朝鮮の国民に、キム将軍や軍政権の真実を伝えた事で、北朝鮮の内部情勢は大混乱。そこにトドメを刺すようにオレたち聖龍隊が軍事力を進行させた事で、北朝鮮は呆気なくそして脆く崩壊したって訳よ」
「ヤン・ミィチェンが言っていた、世界が裏切ったって意味は……」
バーンズの話を聞いて、サコンの話に出ていたミィチェンが裏切りと評した事情についてキャサリン・ルースが問うた。
「それは当時から北朝鮮の脅威に晒されていたアジア各国は迂闊に北朝鮮に制裁的行為が行われなかった。だが、オレたち聖龍隊が……二次元人が北朝鮮に進攻すると分かった途端、世間はオレたち聖龍隊を野放しして口出ししてこなかった。これには北朝鮮の制圧にオレたち二次元人がしくじり、世間的にオレたち二次元人が恥を掻くのを予想しての、放置したんだ」
「しくじるのを待っていたって……!?」
斉木がきょとんとした顔で問い掛けると、バーンズはこれにも真顔で答えた。
「しくじりってのは、オレたち聖龍隊が北朝鮮への進攻に失敗して、外交的にオレたち二次元人の上に立とうって世界中が狙っていたんだ。北朝鮮の開放に失敗すれば、二次元人なんか見下せるって感じでな。そんな感じでオレ達の北朝鮮への進攻はどの国も異論を言わなかった訳」
「なんだと……! つまり失敗する可能性を見透かして、北朝鮮に攻めさせたって訳なのか……!」
「怒るのも道理だ。しかし、修司の指揮とオレたち聖龍隊の総戦力も相まって、北朝鮮は落城。貧困に喘ぐ国民は救済され、拉致された人々も帰るべき国へと帰還できた訳だ」
二次元人が進攻に失敗する可能性を見透かして、彼らを見下せる機会を作る為に敢えて野放しにしていた世界情勢に磯谷ゲンドウが怒ると、バーンズは彼を宥めた。
「まあ、昨日アッコが言っていたが……当時はまだ二次元界と三次元界は交流を始めたばかりで、二次元人の人権は非常に弱かった。故に、その人権を強くする為にも、冷たい世間体を掻い潜って北朝鮮に進攻した訳だ」
するとバーンズは昔を思い出しながら新世代型たちに語り出した。
「そう、昔……あれはジュン達もまだ若かった頃、アニメタウンに二人組の諜報員がやって来てオレら聖龍隊と真っ向から対決した。その二人が北朝鮮からの刺客だってのは、後々分かったが、修司は二人のスパイの潜入に憤りを感じて国際情勢に訴え出た。しかし世界は核を保有している北の国に反抗する事を非常に恐れた。その現状に修司は北朝鮮を解放する決意を固めた。そしてオレたち聖龍隊と共に北の国へ進攻する直前、北朝鮮の国内に正しい情報を流し込んで内情を乱してから突撃した。国民の多くがクーデターを起こし、情勢が乱れている北の国に攻め入るのは実に容易かった。北朝鮮では、多くの傷を体や心に負いながらも聖龍隊は北朝鮮の軍勢に勝利する事ができた。……だが、今ではミィチェンやサコンの様な軍の青年の青春を奪っちまったと後悔している面もあるがな」
そう語るバーンズの表情には、どこか居た堪れない感情が見え隠れしていた。
と、バーンズが昔語りを終えたその直後。異変は起こった。
「うっ……!」
突如新世代型達が頭を押さえて苦しみ出した。
「! どうしたんだ、お前ら? オイ!」
バーンズは慌てて皆に呼びかけるが、それと同時に新世代型たちの心中をテレパシーで読み取った。
するとバーンズの脳内に流れ込んだ新世代型二次元人達の心中の映像を見て、バーンズは驚愕した。
それは大勢の人を日本刀で殺傷している光景だった。バーンズは、この光景をテレパシーで見て、新世代型二次元人たちが今まで見てきたフラッシュバックの映像がなんなのか、ようやく分かった。
「お前達、今の記憶……!」「き、記憶って……何の事っすか?」
バーンズの問い掛けに真鍋義久が頭痛に喘ぐ頭を押さえて問い返す。
バーンズは険しい顔つきで新世代型たちに話した。
「ようやく分かったぞ……お前達が今まで見てきたフラッシュバックの映像……紛れもなく、修司の記憶だ!」
「し、修司の記憶!?」
話を聞いて新世代型の時縞ハルトが顔を上げる。
新世代型たちの視線が一斉にバーンズに向けられるのを視認したバーンズ本人は、険しい目つきで新世代型たちに唱えた。
「間違いない、今までお前達の脳内に急激に流れていたのは……修司の記憶に相違ない! 人間兵器だったアイツが多くの人間を殺傷していた頃の記憶が流れていたんだろう……」
「そ、それってどういう事ですの?」
薙切えりなが問い返すと、バーンズは今まで彼らが見てきたフラッシュバックの記憶を拝見して己の推測を立てた。
「おそらく、お前達は修司の記憶までも遺伝の形でコピーしちまったんだろう。今までお前達を見て分かったんだが、やはり身体的や能力など、一部を修司から引き継いじまっている傾向が見られる。身体的特徴や特殊能力の一部をコピーしちまっただけでなく。修司の記憶そのものもお前達に遺伝しちまったんだろう」
「そ、そんな! 殺人鬼でもある小田原修司の記憶まで、私達に受け継がれてしまっている訳!?」
バーンズの推測を聞いて薙切アリスは悲観するが、そんな彼女たちを見てバーンズは憐みの表情を浮かべる。実質、小田原修司は彼ら新世代型にとっては親の様な存在であるが為に。
すると更に新世代型たちの脳内に映像と共に声が伝わってきた。バーンズは、彼らの心理を隅々までテレパシーで読み取って周知するよう取り組んだ。
すると急激な頭痛に悩まされる新世代型たちの脳内からバーンズに伝わったのは、口を手で押さえ込んだ様な聞き覚えのある声だった。
(我が血族よ、我の声が届いているか? 今から我は世界の色を……個性というものを破壊し、滅ぼす。我らの血に流れる忌まわしい破滅の血に則りな)
声の主は不明だったが、その声が伝えたい事はハッキリと新世代型たちの脳内に届いた。そしてそれはテレパシーを介してバーンズにも伝わった。
「い、今の声は……!」
バーンズは声を聞いて、それが先の大戦で対峙したとき、僅かな時間の中であったが喋った黒武士の声に酷似している事に気付いた。
そしてバーンズだけでなく、新世代型たちも自分たちの脳内に届いた声が黒武士である事に気付いた。
皆が茫然としていると、そこに聖龍隊の隊士が駆けつけてバーンズに報告しに来た。
「も、申し上げます! 世界各地、及び異世界にて、黒武士が突如として現われ、暴虐の限りを尽くしているとの報告が!」
「なんだと!」
隊士からの報告を受けて、バーンズも新世代型たちも一驚する。
先の大戦で黒武士が申した「
[黒い凶刃]
黒武士が共有感知で新世代型二次元人達に伝えたの言葉は現実のものとなっていた。
確かに黒武士異世界各所に現れては暴虐の限りを尽くしていた。
黒武士が現れのは、二次元界の日本。
そこで黒武士に追われ、逃げ惑う人物が。
その人物は時おり、黒武士に反撃するものの攻撃を全て弾かれたり回避されたりして全く手が出せずにいた。
「はぁはぁ、はぁ……!」
呼吸を乱し、黒武士に恐怖するその人物は走った。黒武士から逃げる為に必死になって走った。
だがその人物の行動を予測しているのか、黒武士が必ず先回りしてその人物を追い詰める。
再び攻撃しようとする、その人物の手を黒武士は無情にも漆黒の長刀で斬り払い、切断してしまう。
「うわ……ッ!」
片手を切断されて声にならない悲鳴を上げる人物。
そんな彼に黒武士は歩み寄り、恐怖で慄く彼の顔を空虚な瞳で見据えると、更に冷酷に反対側の腕も肩の所からバッサリ斬り付けた。
「ッ!」
遂に両腕とも切断されて、攻撃の手段が封じられた彼は再び逃げ出そうと不自由な身体で走り出そうとした。
だが、そこを黒武士は見逃さず、背後から今度は両足を一度に斬り付けて切断してみせる。
両足も続け様に斬り落とされて転倒してしまう人物を、黒武士は達磨状態のその人物を立たせて見下ろした。
「不甲斐ないな、ハルナワよ」「ッ…………!」
月明かりに照らされて、黒武士が見下ろす人物の血にまみれた惨状が浮かび上がる。【アラタカンガタリ〜革神語〜】の登場人物であるハルナワだった。
ハルナワは、両手両足を切断され、夥しい血の海の真ん中で直立させられては自分を見下ろす黒武士に申し付けられた。
「だが安心しろ……革も、門脇も……お前の物語に登場する存在は全て、我が消滅させる。故に、安心して先に逝くがよい」
「………………ッ!」
全ての物語の存在を抹消すると恐怖で慄くハルナワに告げる黒武士。
そして黒武士はそっと無表情な面を外して、ハルナワに素顔を曝した。その黒武士の瞳からは、一滴の雫が垂れ流れた。
「ッ! お前は……」
ハルナワが黒武士の素顔を見た次の瞬間、黒武士は手にしていた長刀を振り翳して一瞬の内にハルナワを縦に真っ二つに切断した。
真っ二つに切断されたハルナワの死骸は黒武士の前で転げ周り、黒武士は死に絶えたハルナワを直視すると再び仮面を装着して素顔を隠した。
そして漆黒の夜の闇の中を、黒武士は姿を消したのであった。
そして場所は移り変わり、ここは【トリコ】の世界。
グルメ界を牛耳ろうと暗躍する組織NEOの拠点、いや拠点だった場所では。
多くのNEOに与していた人間が殺害され、辺りに夥しいほどの死体が散乱していた惨状の中に黒武士はいた。
彼の手には血に染まった長刀が握られ、そして目の前にはハルナワと同様に両手両足を切断され、挙句の果てには下あごを刀で削ぎ落とされたNEOのリーダー格であるジョアの悲惨な姿が在った。
黒武士は自分と真っ向から対決したジョアの手足を切断した上で、食を感じられる下あごを削ぎ落とした状態で彼に話しかけていた。
「ジョアよ、幼少の頃から培ってきた食運も……いや、悲惨な過去もここで全て終わらせよう。なに、安心せい。もうこれからは誰も飢える事もない、誰も食を独占する真似はしない……全てがまっさらな桃源郷に生まれ変わる。何の
「………………」
黒武士の話を戦意を失っていない眼差しで見据えるジョアの首に、黒武士は長刀を添えて言った。
「だから………………安心して往生するが良い。あの世でな」
次の瞬間、黒武士はジョアの首を一振りで刎ね飛ばした。
悲惨な幼少期を、過去に辛い日々を過ごした事で、全ての食材を独占しようと目論んだジョア。だが、そんな野望に燃えていた彼も空虚な魂の前では無力そのものだった。そして意図も容易く刀を一振りで首を刎ねられてしまった。
ジョアの最後、そしてNEOの壊滅を見届けた黒武士は
また場所は移り変わり、今度は【マギ】の物語の中で。
黒武士は此処にいた。
彼は幾度も斬り捨てて行ったのか、少しばかし疲れが見え隠れしていた。
そんな黒武士が腰を下ろしていたのは、アル・サーメンの集会の場その中央。
黒武士はアル・サーメンの面々を皆殺しにして、少しばかり疲れが出てしまった様だ。
黒武士の空虚な瞳には、血で真っ赤になった床や死体がチラつくばかり。真っ赤な情景ばかりを目視して黒武士は半ば呆然としてしまう。
彼が本当に見たい光景は何なのか。彼が本当に眼に焼き付けたい
そしてアル・サーメンなど【マギ】の大方の組織を潰し終わった黒武士は一人外へと出て行った。
外に出た黒武士。そんな彼の前に立ちはだかる者たちが。
それは聖龍隊より隊士や戦車などの戦力を派遣してもらったレーム帝国/鬼倭王国/煌帝国などの連合軍だった。
「へっ、オレ達の物語で色々と好き勝手してくれやがったな、オイ」
聖龍隊が用意した場違いな戦車の上で、ジュダルが座り込みながら黒武士に言う。
そんなジュダルたち連合軍の部隊を目前にした黒武士は、長刀を濡らす血を指で拭うと刀を鞘に納め、抜刀の構えを向ける。
精神を集中させ、全神経を長刀に集結させる黒武士。
そして黒武士の神経が高まり、ジュダル達が攻撃を仕掛けようとした瞬間。黒武士の長刀は素早く、目にも止まらない速度で抜刀された。
素早く抜刀された長刀は、戦前の戦車や隊士そして各国の兵士を斬り払い、吹き飛ばした。しかもそれだけでなく、なんとジュダル達が上に乗っていた戦車も横斜めに真っ二つに切断されてしまった。
「!?」
自分が上に飛び乗っていた鋼鉄の戦車が真っ二つに切断されて、ジュダルは戸惑ってしまう。
そして次の瞬間、戦車は大爆発。ジュダルを含む多くの者が戦車の爆発に巻き込まれてしまう。
「う、うう……ッ!」
大破した戦車の下敷きになり、爆発に巻き込まれて身体の各所に火傷などの傷を負ってしまったジュダルは思うように動く事が出来なかった。
そんなジュダルの元に強力な斬撃を斬り込んだ黒武士が歩み寄ってきた。
黒武士は血が通ってない様な空虚な眼差しで、傷つき戦車の下敷きになったジュダルを見下ろす。
「ッ……!」
まるで自分を見透かしている様な、その空虚な眼差しに見詰められてジュダルは黒武士に敵意を向ける。
ジュダルは最後の抵抗とばかしに、黒武士の足を自由が利く右手で掴もうとするが、黒武士はジュダルが伸ばしてきた右手を足で踏み砕いた。
「ぎゃ……ッ!」
軽く踏み付けられたかのように見える黒武士の踏み込みは、ジュダルの右拳の骨までも容易くそして容赦なく砕いた。
右手の骨を踏み砕かれて悶絶するジュダルを見下ろし、黒武士は言った。
「何の意味もない……我に如何様な兵力も魔力も……どの様な力すら無へと帰るのみ」
黒武士の一言一句に怒りを露わにするジュダル。
と、黒武士とジュダルは同じく戦車の爆発に巻き込まれ、大破した戦車の下敷きになっていた練紅玉が気が付いて「う……っ」と弱弱しく声を発したのを聞き逃さなかった。
練紅玉の声に気付いた黒武士が彼女の方を向いた途端、ジュダルは慌てて黒武士を呼び止める。
「ま、待て! ババァに何をする!?」
すると黒武士は慌てるジュダルに申し付けた。
「お主は何も出来ぬ、何も守れぬ……己が最も嫌う弱者、お主はそんな弱者となんら変わらん」
黒武士はジュダルの右手の骨を踏み砕きながら冷徹な言葉を浴びせる。
そして黒武士は長刀を振り上げると、一気にそれを振り下ろして強力な斬撃を練紅玉へと放った。
黒武士の斬撃に気付く練紅玉。だが気付いたのも僅かに遅く、黒武士の斬撃を浴びて爆発の光の中へと消えてしまった。
「ババァーーーーッ!!」
ジュダルの悲痛な叫び声が虚しく響く中、黒武士はそんな悲愴なジュダルに再度申し付けた。
「今はまだ死ぬな。お主にも全ての世界、全ての感情の無……全てが白へと帰る虚無を味わってもらわなければな……」
そうジュダルに言い残し、黒武士はどこぞへと消えていった。
爆炎が舞い上がり、多くの兵士や隊士が傷付き、ジュダルの心にも深い敗北感を残して黒武士は跡形も無く現場から姿を消した。
[新世代型への危惧]
ここは現実世界の病院。
此処に【マギ】の世界から担ぎ込まれた隊士に混じり、負傷したジュダルや
ジュダルは一人、病院のベッドの上で黙々と苛立ちを覚えていた。だがそれは黒武士に痛め付けられた苦渋の想いからでなく、黒武士に対して何もできなかった己の弱さに対しての苛立ちだった。
自分自身に怒りを覚えるジュダル。するとそんな彼の元に一人やって来て声を掛ける。
「よっ、調子はどうだい?」
ベッドの上で苛立つジュダルに飄々と声を掛けてきたのは、聖龍隊総長バーンズだった。
バーンズはベッドの上でふて寝するジュダルに調子よく声を掛けるが、ジュダルは尤もらしくそんなバーンズに顔を背ける。
だがバーンズは黒武士に対して大敗したジュダルに声を掛け続ける。
「こりゃまた酷くやられたもんだな、ジュダルの坊主」
年下のジュダルの傷の具合を見下ろしてバーンズは言う。しかしジュダルは何も言い返そうとはせず、顔を背けたまま。
と、ここでジュダルは肝心な事を思い出し、バーンズに問い詰める。
「お、おい! ババァは……ババァは無事なんだろうな!?」
このジュダルの慌てぶりに、バーンズは戸惑うものの即決で答えた。
「練紅玉の事だな。安心しろ。同じ、ここの病院で安静にしてるよ。命に別状はないって医者も言っているぜ」
「こ、この世界の医者と技術は大丈夫なんだろうな」
「大丈夫大丈夫! 今は眠っている様に気を失っているが、時期に目が覚めるってよ」
バーンズから練紅玉の容態を聞かされ、ジュダルは異世界の医療技術や医者を信用できるか文句を言うが、バーンズは大丈夫と連呼してジュダルを説得する。
そしてバーンズから練紅玉の容態を聞いたジュダルが一安心したのを見届けて、バーンズはジュダルに真顔で問い掛けた。
「ジュダル、どうだ? ここは一つ、俺らと停戦を結ばねえか?」
「はぁ? 停戦だと?」
バーンズの突然の提案にジュダルは眉を吊り上げて言い返す。そんなぶっきら棒に返事するジュダルにバーンズは語り続ける。
「黒武士の凶行……いや、奴自身を止めるには聖龍隊だけでも心許ない。何より、お前だってこのまま黒武士に負けっ放しは嫌だろ? 大切な練紅玉を傷付けられてご立腹の筈じゃねえのか?」
「………………………………」
「即決に言えばな、オレはお前さんの力を借りたい訳なんだ。マギでもあり、戦意に満ちたお前さん達とオレらが組めば鬼に金棒よ!」
「……なんで、オレにそんな事を……」
バーンズの話に耳を傾ける様になったジュダルが問うと、バーンズは真顔で答えた。
「う~~ん、そうだな………………戦意に満ちたお前さんが何処となく修司に似ているからかもな」
この台詞を聞いたジュダルは、真顔でバーンズに返した。
「似ているって…………オレは新世代型じゃねえぞ」
「ハハッ、それもそうだけどよ」
小田原修司のクローンである新世代型二次元人ではないと説き返すジュダルに、バーンズは笑顔を浮かべる。
しかし、そんなジュダルにバーンズは再度問う。
「それで? オレらと組んでみないか? なぁに、アラジン達にはオレからも上手く言っておくからよ」
「………………」
「……考えてみろ。敵の敵は味方って言うじゃないか。ここは共通の敵である黒武士を倒すため一緒に戦おうぜ」
バーンズからの再三の説得に、ジュダルは考え込んだ。
そして……「チッ、仕方がねえな。オレ様が付いてないとダメなんだな、テメェらは」と、ジュダルはやや自棄気味でバーンズに返答した。
「ニヒッ、そうこなくっちゃな」
ジュダルから承諾を得たバーンズは、ニヤケ顔を浮かべると自身の足元に置いてある紙袋からジュースを取り出した。
「さあさっ、同盟の記念だ。一杯やろうぜ。あ、もちろんジュースだけどよ」
「禁酒禁煙は続いているようだな、聖龍隊は」
「まあな。修司の頃から続いている決まりだからな」
ジュダルは過去に自分を負かした事がある小田原修司が決めた「禁酒禁煙」の鉄則に則るバーンズに嫌味を言うが、当のバーンズはジュダルに紙コップを手渡すと、それにジュースを注いで共に盃を交し合った。
そんなバーンズとジュダルの様子を陰ながら見守っていたアラジン/アリババ/モルジアナの三名は、平穏に話が済んだ事に一抹の安堵感を覚える。
それから数時間後。
病院のベッドで安静にしていた練紅玉もようやく目を覚まし、包帯姿のジュダルとアラジンたち、そしてバーンズの会合の元、話し合った。
「……と、いう訳だ練紅玉。此処は一つ、お前ら煌帝国の連中とも正式な同盟を結びたい。神出鬼没にして、強靭な力を持つ黒武士に対抗するには最早聖龍隊だけでは不安なんだ。昔は色々とあったが、この三人……アラジンやアリババ、モルジアナ達も力を貸してほしいと訴えている。ジュダルも黒武士にやられっ放しは癪に障る様だし、停戦の上に共闘戦前を強いてくれる事を承諾してくれた。後は煌帝国の長であるアンタの意見を貰えれば幸いだ」
バーンズから事情を語られ、練紅玉はアラジン達にジュダルの顔を見合わせてしばし考え込んだ。
そして考え込んだ練紅玉は、徐に語り始めた。
「……いつだったか。前総長の小田原修司からも言われたわねぇ……「自分も
昔、聖龍隊の前総長だった小田原修司から掛けられた言葉を思い出す練紅玉。彼女もまた、友達作りを目標としているが、それが苦手な性分なのだ。
そんな練紅玉は顔を見上げて表情に淡い喜びを浮かべて語り続けた。
「でも……私は嬉しかった。そう言ってくれた小田原修司の何気ない言葉に、私は若干ながらも救われた……まぁ、友達の多さでは今でも修司には敵わないけど」
次の瞬間、練紅玉は力強い笑顔で皆に言った。
「そんな小田原修司がどうなったのか……こうなったら、あの黒武士を叩きのめして無理やりにでも吐かせてやるわっ!」
この練紅玉の答えを聞いて、一同は胸を撫で下ろした。
「よし! これで決定だな! お互い、利害の一致は図れた訳だし、最後の最後にはハッピーエンドで終わらせましょうか!」
黒武士に対抗する新たな戦力が味方についてくれた事に、バーンズは大いに感謝する。
そしてバーンズは練紅玉たち煌帝国の面々も聖龍隊に協力してくれる事を伝言しようと、練紅玉が寝ている病室から抜け出ようとする。
するとそんなバーンズに、ジュダルが険しい面持ちで呼び止める。
「おい、バーンズ!」「バーンズさんと呼んで欲しいな……なんだ?」
バーンズは背を向けたままジュダルの呼び掛けに応じる。そしてジュダルはそんなバーンズに
「……例の二次元人、新世代型はどうするつもりだ? 聞いた話だと、あいつら共有感知って言う能力で黒武士の思考をホンの少しだが通じているみたいじゃねえか。黒武士みたいに危険な
ジュダルの険しい面持ちに、アラジン達は動揺し、練紅玉も表情を険しくする。
的確な指摘を告げるジュダルに対し、バーンズはしばし黙り込んだ後に素っ気無く返答した。
「……オレはアイツらを……新世代型たちを信じたい。アイツらなら、どんな境遇も乗り越えて立派に未来を創ってくれるって事をよ」
バーンズの言葉に険しい表情を向けたままのジュダルに、バーンズは背中越しで語った。
「ジュダル、お前さんの言いたい事は尤もだ。だが、それだからって奴らの可能性をも摘み取ってしまっては未来に何も遺せなくなる。確かにまだ危惧する点は大いにあるが……それでも、オレは信じてみたい。新世代型の可能性を……!」
そう言い残して去っていくバーンズの背中は輝いていた。
[畏怖からの伝言]
所は変わって、アジアのとある地に設けられた聖龍隊の駐屯所。
此処に新世代型を大半とする一般人はバーンズ総長の指示の元、待機していた。
異世界の各地で自分達と同じ新世代型と思われる黒武士が、凄惨な惨状を作り出している現状に落ち着くことが出来ない一同。
そんな彼ら新世代型たちの言い知れぬ不安を目前に、プロト世代のチョコや桃花・ブロッサムに海道ジンは居た堪れない心境だった。
と、プロト世代の三人が新世代型たちの現状に悲痛な心境を持っていた、その時。
「う……っ!」
再び新世代型たちに頭痛が襲い掛かった。
「こ、琴浦さん、大丈夫?」
身を案じてプロト世代のチョコが駆け寄るが、新世代型たちの頭痛はやむ事は無く、それどころか再び黒武士の声が彼らの脳内に響いた。
再び自分達の脳内を襲う頭痛と黒武士の声。黒武士からの新たな伝言が新世代型たちの脳内に直撃する。
(我ら破滅の血族には特定の居場所など要らぬ。過去の居場所は全て我がかき消す故、お主達はただ見過ごしておれ)
そう黒武士からの伝言が頭の中に再生され、新世代型たちがきょとんとしていた、その時。
「お、おい! テレビを見てみろ!」
たまたまその場から離れて、ジュースを買いに行っていたプロト世代のギュービッドが慌てた様子で新世代型たちが滞在していた部屋に叫び込んできた。
皆が茫然としている中、ギュービッドは皆が見ている前で部屋のテレビを付けた。
するとテレビに映し出されたのは、異様な光景と音声だった。
「ご、ご覧ください! これは一般人が撮影した映像ですが、黒武士がアニメタウン各所を襲っています!」
ニュースキャスターが説明する中、新世代型たちは映像を見て愕然とした。
「な、なんだよ、これ……」
黒武士が訳もなく、アニメタウンを襲撃している情景を目撃して、新世代型たちは唖然とする。
そして映像は切り替わり、今度は黒武士が学校などの公共の場を破壊している情景が映し出されたのだが、その情景を目にして新世代型たちは驚愕した。
「あ、あれは私達の学校……!」「僕たちが通っている学校だ!」「俺らの学園まで……クソッ!」
自分達が通っている学校が黒武士に破壊されている情景をテレビで観て、新世代型の琴浦春香と直枝理樹そして幸平創真は絶句した。
すると再び新世代型たちの脳内に黒武士からの伝言が強制的に流れ込んできた。
(お主達の学校、家、住まい、街……すべてを無に帰し誘った。これで主らに、いや我らに帰る場所など無くなった。共に世界を桃源郷にするため醜い世を生き抜こうではないか)
黒武士からの伝言で、彼が故意に自分達が通う学校や住まいなどの居場所を破壊していた事実を知って愕然とする新世代型たち。
世界に溢れる
「あーーッ!! あたいお気に入りの店がッ!」
「もうっ、ギュービッド様それどころじゃないでしょ!」
黒武士の破壊範囲は広く、新世代型達とは関係ない建物まで含まれている現状をテレビで目視したギュービッドが嘆く中、そんな彼女に弟子のチョコが訴える。
新世代型二次元人達が、自分達が通っていた学校や町、居場所が全て黒武士によって破壊された現状をテレビで確認した直後。
そこにバーンズがやや慌てた様子でやって来た。
「お前達!」「ば、バーンズさん……!」
ジュダル達が担ぎ込まれた病院から急いで駐屯所に戻って来たバーンズに、直枝理樹たちは顔を向ける。
バーンズは彼ら新世代型たちが既にテレビで自分達の居場所が黒武士の凶行によって破壊され尽くされたのを知った後だと知り、彼らに労いの言葉をかけた。
「……もう既に知っている様だな。黒武士がアニメタウンにも襲撃してきた。オレら聖龍隊の本隊が居ない隙を突いての襲撃だ。……オレたちHEADが不在の時を狙いやがって……不甲斐ないぜ」
「バーンズさん……」
自分達HEADが不在のアニメタウンに襲撃した黒武士の凶行に己の不甲斐なさを痛感するバーンズを直視して、琴浦春香たち新世代型は悲痛な想いに駆り立てられる。
しかしバーンズはスグに顔を上げて、新世代型たちに言った。
「……オレはこれからHEADと共に一旦アニメタウンに帰還する! お前達は悪いが、この駐屯所でしばらく待機し続けてくれ。ジュンたちスター・コマンドーも日本に一時帰国していて、目立った戦力は不在になってしまうが、幸いなことにアジア各地の武将が停戦状態を申し渡してくれた現状では大した事は起きないだろう。お前らはもう少し大人しくして、オレの帰りを待っていてくれや!」
そう言うとバーンズは皆の前から颯爽と駆け出して、急ぎアニメタウンへと帰還していった。
バーンズに言われながらも、今世間では自分たち新世代型への危惧が募っている現状を沁み沁みと痛感していた新世代型たち。
新世代型と思われる黒武士が起こした数多の惨劇。それに伴い新世代型への危惧が募っている現状に呑み込まれつつある新世代型二次元人たち。
もう自分達が帰るべき場所は、居場所は無くなってしまったのだろうか。
そして此処から完全に新世代型たちの安息の日々は、穏やかな日常が崩壊していくのを新世代型たちは薄々ながらも実感していた。
[黒が残した惨状と懸念]
愛機シルバー・ウィングで急ぎアニメタウンに帰還したメタルバード及び聖龍HEAD一同。
そこで彼らを待ち受けていたのは、随所随所破壊されてしまった故郷の姿だった。
「こいつは……! どうなってやがる……?」
何故か黒武士が破壊したのは極一部の建物や公共の施設のみで、アニメタウン全体から見てみれば大した被害では無かった。
「どうして、黒武士はアニメタウンの一部しか襲わなかったのかしら……?」
セーラーマーズが首を傾げていると、メタルバードは襲撃さえた場所を一目見てある重大な事実に気付いた。
「みんな、襲撃された場所を良く見てみろ……全部、新世代型に関係している場所だ」
メタルバードに指摘されて、他のHEADもようやく気付いた。
「あ、ホントだ! 襲撃されたマンションやビル、それに家や学校なんかは全部新世代型たちが利用している所だ!」
コレクターユイに続き、鳳凰寺風も気付いた。
「ホントですわ。彼らが住まいにしている家やマンション、そして通学している学校などが殆どですわ」
聖龍HEADは此処でようやく襲撃された建物や施設が新世代型に関与している建物だという事を周知した。
と、ここで参謀総長のジュピターキッドがアニメタウンに待機していた隊士に状況を訊ねた。
「負傷者などは出てないのか?」
「はい! 奇跡的にも怪我人は一人も出ていません!」
隊士は敬礼のポーズでジュピターキッドに報告する。
幸いな事に黒武士の襲撃で怪我人は一人も出ていなかった。
「それなら大事は無いな。他に支障が出てはいないか?」
ジュピターキッドに続いてメタルバードも隊士に訊ねると、隊士はハキハキとした態度で申し返した。
「はっ! 施設の利用者で、プロト世代などの二次元人が不服を申しております! 自分たちの住まいはどうしてくれるのかと」
「そうか……それなら聖龍隊の一部の施設を開放して、其処を仮住まいとして提供しよう。その間に施設や住まいの修復を進ませろ」
「了解しましたッ!」
メタルバードから指令を承り、隊士は駆け出していった。
「……ふぅ、また新世代型への風当たりが増すね」「そうだな」
新世代型が関与している住居や施設の襲撃で、新世代型そのものの風当たりが増す事に、ジュピターキッドもメタルバードも頭を悩ませる。
そして次にメタルバード達が訪れたのは、聖龍隊の死体安置所。
此処には先の黒武士の凶行で殺された多くのキャラクターの死体が安置されている。
「……コイツは酷い。殆どバラバラじゃねえか」
死体の惨状を見て、メタルバードは我が目を疑った。ハルナワ、ジョア、ハル・サーメンの面々の殆どが惨たらしい状態で死体に成り果てている現状に目も当てられなかった。
「ハルナワは手足を切断された上で、頭頂から真っ二つに切断され……ジョアは同じく手足を切断の上に下顎を削ぎ落とされて首を刎ねられ……ハル・サーメンの連中は悉く斬り捨てられていると見た。この死体の断面から見て、黒武士はやはり凄腕の剣術を持っていると見える……」
死体を検分して黒武士の腕前を再認識するメタルバード。
メタルバードたち聖龍HEADは、目の前に広がる無数の安置された死体を見て、改めて黒武士の惨さを痛感するのであった。
この惨状から、聖龍HEADは黒武士の凶行からなる、新世代型たちへの危険視が増すだろうなと思いに至った。
それから数日も経たない内に、聖龍HEADの元へ煌帝国を初めとする聖龍隊と同盟を求める異世界の王族や皇族が馳せ参じてきた。
「苦しゅうない、おもてを上げよ」「って、そう偉ぶらない」
聖龍隊の総長らしからぬ物言いに、ジュピターキッドがバーンズにツッコム。
そんな穏やかにやり取りする聖龍HEADを前に、共に馳せ参じてきたジュダルは壁に寄りかかりながらバーンズに問うた。
「おい、バーンズのおっさん。相手はたかが一人だろ? 黒武士相手に、多数の国家を巻き込む事は無いんじゃねえか?」
このジュダルの疑問に、バーンズは答えた。
「確かに相手は黒武士一人だ。だが、奴の実力は相当なものだと推測できる。現に、凄腕の聖龍隊士の殆どが奴に歯が立たなかったからな。かき集められるだけの戦力は集めておきたいんだ」
「へぇ~~、それで今まで敵対してきたオレらの様な連中とも共闘しようって魂胆か」
「昔は昔、今は今だ。お互いに黒武士の驚異に悩まされている以上、協力し合わなければ奴の思うがままになるのは目に見えているだろ」
ジュダルに話し続けるバーンズは、更に彼へ語り続ける。
「ジュダル、確かにオレ達とお前達の間には色々有った。けれど、今は利害の一致を求めて黒武士打倒の為にこの場に集まったんだ。協力してくれるだろ?」
「………………………………」
バーンズの話に黙り込むジュダル。すると、そんなジュダルに練紅玉が言った。
「ジュダルちゃん、ここはバーンズの提案に乗るしか私たちに残された道は無いわよ」
「ッ……解った解った。癪だが、聖龍隊の傘下に加わってやるか」
練紅玉に指摘され、ジュダルも渋々ながら参加に降る事を呑んだ。
この展開を目の当たりにしたバーンズは、徐に手を前でパンッと叩くと勢いよく椅子から立ち上がった。
「よっしゃッ! これで大方の目処は付いたな。後は新世代型たちをどうするかだ……」
このバーンズの発言を聞いて、ジュダルはすかさず新世代型たちへの処遇について語った。
「それなら即刻監禁するのがイイぜ! アイツらは既に黒武士とキョウユウカンチって能力で意思疎通しちまっているんだろ? いつオレ達の敵になるか解ったもんだじゃない!」
共有感知による黒武士との意思疎通が可能な新世代型たちに危険性を覚えたジュダルは、即刻彼らを監禁するのが得策だと説く。しかしこれにバーンズは即決して言った。
「まだその段階じゃない。確かに新世代型には今のところ、黒武士からの意思疎通が見られる訳だし、その前から修司の記憶を受け継いじまっている傾向が見られる。今は不安になるのは解るが、経過を見守ろうじゃないか」
「だ、だが! ……オレよりも強かった修司の記憶だけでなく、力までも遺伝しちまった新世代型が本当に最後までオレらの味方に……敵にならない補償は無いんだぞ!」
ジュダルの言い分に、その場の誰もが口を噤んでしまった。
小田原修司の記憶まで受け継いでしまった新世代型、その彼らが共有感知で黒武士と意思疎通できる点。新世代型への懸念は大きくそして増すばかりだった。
と、其処へ颯爽と現れる三人が、会談している場へと出現した。
「会談のところ、失礼します」「おお、お前達か! 久々だな」
バーンズの前に颯爽と現れたのは、彼と同じ超獣族の三人だった。この三人は前々から聖龍隊と協力関係にあり、特に王家継承者だったバーンズの命には素直に遂行する。
「王子こそ、お久しぶりです」
「聖龍隊総長への就任、おめでとうございます」
「ガッハッハ! 王子が遂に聖龍隊の長を務められる日が来るとはなぁ!」
「へっ、オレだってその気になれば修司以上に聖龍隊を指揮できりゃあ」
久々の対面に気さくに話し出す超獣族の四人を前に、同じく久々の来訪に気持ちを穏やかにする聖龍HEADと反して、三人の超獣族を初見したジュダル達は大いに困惑した。
「な、なあ、バーンズ……その三人は……」
ジュダルに問い掛けられ、バーンズは嬉しそうな表情を向けて答えた。
「おっ、そうだったな。お前さん達とは初めて顔を見合わせるな。紹介しよう、超獣族でもかなり武術に秀でた三人だ」
バーンズの紹介の元、まず最初に細身でバーンズより身長のある落ち着いた風貌の超獣族男性が名乗った。
「始めまして、私はフリージスと申します。以後、お見知りおきを」
丁寧な口調で頭を下げて名乗るフリージスを、バーンズが更に詳細を述べた。
「オレたち超獣族が一人一人異なった特殊能力を持っているのは知っているな。このフリージスは冷気を自在に操る。それだけでなく、視界に届く範囲の物体の温度までも下げちまう念動力を持ってる。……昔はオレの教育係でビシバシ躾けられたっけ……」
「フフ、王子がその気でしたら……また教育しても構わないんですよ」
「そ、それだけはご勘弁! 第一、お前だって今じゃ人間に成り済まして大学で教授までやっているし、勉強はもう足りているだろ!」
「知識の教養に、足りる足りないはありませんよ王子……まだ解らないようですね」
「ひっ」
フリージスの手厳しい言動に、流石のバーンズも動揺し尽くしてしまう。
「……そういえば、アンタも王族だったんだよな。今は滅びちまった超獣族の……」
「あ、ああ、そうだぜ。それが今では聖龍隊の長なんだから凄いだろ?」
バーンズもまた超獣族の王家出身だという事を思い出すジュダルに、バーンズは得意げになる。
フリージスの紹介が済み、続いて三人の中で唯一紅一点の女性が名乗り出す。
「私はロンガー! 誇り高き超獣族の女戦士だ! かつてバーンズ王子に武術を叩き込んだ事がある!」
「ロンガーは武芸の達人でな。オレも昔は苦労したぜ……」
手足の長い長身のロンガーなる女武人の様な超獣族に、バーンズはその厳しい手解きに苦労した経験を思い出す。
「おれはヴォイス! 超獣族の王家では武道の達人として名を馳せた! 得意技は岩なんかを破壊できちまう強烈な大声だ!!」
「ヴォイスは生まれ付き地声が大きくてな……その地声で巨力な空気砲を口から発射して攻撃する事ができる……マッチョなのはコイツ自身、筋トレが趣味なだけなんだが、これまた凄い怪力の持ち主で……」
三人のうち最も大柄で恰幅のいい体格をしているヴォイスは、口から出る破壊衝撃砲と怪力が自慢だと付け加えるバーンズ。
三人の超獣族の精鋭も揃ったところで、フリージスがバーンズに問い質した。
「王子、話には聞きました……例の新世代型二次元人は如何するおつもりで?」
「それなんだが……オレはこのまま彼らの経過を観察しようと思っている」
フリージスの質問に対し新世代型の経過を観察すると答えるバーンズの言葉に、その場の誰もが黙然と話しに聞き入る。
「……確かに皆が思っている通り、あいつらは既に修司の遺伝子だけでなく記憶までも受け継いじまっている。そして何より黒武士からの言伝を共有感知で受け取れちまうっていう驚異が感じられる」
「……………………………………」
「……だが、オレたちHEADは彼らを……新世代型をとことん信じて、守っていきたいと思っている。奴らが修司のクローンだから守るって訳じゃない。修司とは違う命、違う生命だからこそ優しく見守っていきたいのが、オレらHEADの見解だ」
かつて自分達を導いた小田原修司のクローンとは別物の命として、個々の個性として見守る見解だと主張するバーンズたちHEADの意志にその場の誰もが黙って耳を傾け続けた。
果たして、新世代型の未来はどうなるのか?
彼らの穏やかな日々は、壊れてしまうばかりだった。
[超獣族オリキャラ]
フリージス
人間年齢:54
バーンズより長身で落ち着いた雰囲気の容姿。
普段は人間社会に紛れて生活。とある有名大学の教授を務めている。
特殊能力は冷気を自在に操り、視界で捉えた遠くのものも凍て付かせる念動力を備えている。
バーンズが王家継承者だった頃、彼の教育係を勤めていた。
ロンガー
人間年齢:28
超獣族の誇り高き女武人。自分にも相手にも厳しい一面がある。
女性らしく引き締まった体格に、長い手足と長身が特徴。
基本的に棒術を得意とするが、状況に応じて様々な武術が使用可能。
バーンズが王族時代、彼に武芸を叩き込んだ実績がある。
ヴォイス
人間年齢:35
超獣族の武術の達人で、大柄な体格に大きな地声、そしてマイペースな性分。
口から空気の咆哮を撃ち出す事ができ、大岩なんかは簡単に風穴を空けられるほど強力である。
更に怪力を秘めており、これが原因か不明だが筋トレが主な趣味だという。