聖龍伝説 現政奉還記 創生の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 新世代型たちの脳裏に突如として浮かび上がる謎の光景と記憶は、彼らの始祖である小田原修司の記憶である事が判明した。小田原修司の記憶を、前世の記憶として思い出す新世代型たちの苦心が浮上する中、今度は彼らの脳内に直接あの黒武士の真意が伝えられてきた。黒武士は主だった異世界で暴虐の限りを尽くし、名立たるキャラクターを惨殺していく。そして黒武士は最終的にアニメタウンにて、彼ら新世代型たちの居住区や公共施設を破壊して居場所すら奪い取っていった。そんな中、バーンズはこの暴虐を行った黒武士を阻止するべく多くのキャラクター達に助勢を求めていくのだった。



現政奉還記 創生の章 世界の覇者たち

[銃器を愛した鬼神]

 

 バーンズが二次元界で主だったキャラクター達に助勢を掛けていた真っ最中の事、彼らを招集する声がバーンズの元に届いた。

 それはアメリカライフル協会の会長からだった。

 世間では、新世代型二次元人への非難が押し迫る中、会長からの招集にバーンズは表情を険しくさせた。

「ライフル協会の会長が、こんな時に招集とは……あまりいい気分じゃないな」

 召集に対して余り乗り気ではなかったバーンズ。だが彼を初めとするHEADに更なる衝撃の電報が届いた。

 それはライフル協会本部に、HEADだけでなく新世代型二次元人達も全員連れてくる事を条件としたのだ。

 

 聖龍隊の護送車の中で、物々しい雰囲気の中を縮み込む新世代型たちは一抹の不安に襲われていた。

 何台もの護送車の中で移送される新世代型たちと同乗するバーンズに、新世代型たちに付き添うプロト世代の海道ジンが話し掛けていた。

「ライフル協会……銃愛好家による市民団体にして、事実上の圧力団体である協会に御呼ばれするとは、一体……」

「……オレたち聖龍隊とライフル協会は裏で親密な関係を築いている。聖龍隊が輸入している銃火器は、殆どがライフル協会を通じて仕入れている物資だからな」

「そうだったんですか……でも、その協会の会長がなんで現政奉還の混乱時に、しかも黒武士が各地で猛威を振るっている真っ最中にあなた方聖龍HEADを……そして僕達を招集させたんでしょうか……?」

「さあな、この現政奉還での秩序の乱れで、奴さんもかなり儲けているのに……なんでこんな時に、しかも新世代型たちまで呼び付けたんだろうか……」

 真顔で会話するジンに対し、バーンズは険しい表情で考え込んだ。

 

 そして一同はライフル協会の本部へと到着した。

 本部の周辺には、武装警備員が物々しい雰囲気で警備・護衛しているのが目に入った。

 入り口にて、武装警備員が聖龍隊の護送車運転手に歩み寄り、検査する。

「聖龍隊だ、会長直々の招集で駆けつけた、入れてくれ」

「分かった、しばらく待て」

 屈強な警備員が一時の停止を促すと、警備員用の小屋に入って無線で許可が下りているかを確認しに向かう。

 そしてしばらく後、警備員は戻ってきて運転手に伝えた。

「許可は下りていた。入っていいぞ」

 無愛想な返答を受けた運転手は、そのまま護送車を走らせて本部敷地へと進入した。

 駐車場に護送車を停めると、聖龍隊の隊士の護衛付きで車内から新世代型たちが降りてきた。

 皆、物々しい雰囲気に呑まれて非常に困惑しているのが一目で分かる。

 そんな中、バーンズは皆の先頭に立ち、新世代型たちを誘導する。

「コッチだ、迷うなよ」

 敷地に入ってスグに目に付く入り口から屋内へと進入していくバーンズたちHEADに続いて新世代型たちも屋敷内に入っていった。

 屋敷に入るとレッドカーペットが敷かれた通路を直進し、バーンズたちHEADは迷う事無く突き進む。

 そんなバーンズにプロト世代のチョコが訊ねる。

「な、なんで聖龍隊はライフル協会なんて物騒な人たちと知り合いなんですか?」

 このチョコの疑問にバーンズは真顔で答えた。

「ライフル協会は、実質アメリカという大国を担っている組織の一つだからだ。アメリカ国民の9割以上が銃を所持している銃大国アメリカを支えている協会と親密な関係を保っていれば、聖龍隊はいつでも武力である銃火器を仕入れる事ができる。それに、アメリカを支える組織と結託してれば、世界がどんなに二次元人に敵意を向けていても迂闊にアニメタウンやオレたち聖龍隊には手出しできない。ライフル協会は実質アメリカそのもの。その協会と連携していれば、聖龍隊に敵対する組織は実質アメリカを敵に回しているみたいなもんだしな」

 武力の調達、及び聖龍隊や二次元人の実権保持にも繋がるライフル協会との関係を示唆されて驚きを隠せないチョコたち。

 

 そして一同は本部の最深部にまで誘導され、其処には複数のアメリカ人が着席していた。

 その複数のアメリカ人の中央に座っていたのが、ライフル協会会長であった。

「久々だね、バーンズ。そして聖龍HEADの諸君、みんな元気にしてたかい?」

「ああ、相変わらずだよ会長」

 深々と席に座る会長を前に、バーンズは腕を組んで面と向かい合う。

「こんな時にお呼びとは、一体なんでしょうか……しかも、一般人である新世代型たちも招き入れるとは……」

「ほほう、彼らが新世代型なんだね。ジュニア参謀総長」

 険しい面持ちで自分たち聖龍HEAD以外の新世代型たちを連れてきた理由を述べるジュニアに、会長は新世代型と聞いて目を輝かせた。

 そして会長は一しきり新世代型たちを見回した。

「………………………………」

 会長から一しきり見回された新世代型たちは戸惑うばかり。

 そして一しきり見回した会長は、新世代型たちを拝見して言った。

「うむ、なるほど。何処かしらにあの男の……小田原修司氏の面影が見える」

 会長にそう言われて、新世代型たちの多くが反論しようとした。だが、そんな彼らにバーンズは無言の圧力ともいえる眼光を向けて黙らせた。ライフル協会会長に下手な言い分を吐けば、聖龍隊はもちろん二次元人の在り方に多大な影響が出ると見込んでの圧力だった。

 そんな新世代型の心境も知らず、会長は聖龍隊総長バーンズに話し掛けた。

「ところでバーンズ君、きみの代になってから我らが融資している銃火器の仕入れ具合がグンと下がっているみたいだが……」

「ああ、最近は聖龍隊が開発した銃火器をベースに隊士達に備えさせているからな。しばらく銃器の仕入れはない」

「そうかい、だが……あまり我々を冷遇し過ぎない様にするのを心に留めてほしいのだがね」

「分かったよ、考えておく。ところで、なんでアンタ達は新世代型まで招集させたんだ?」

「それはもちろん、未来を担う二次元人たちの勇姿を拝見したいなと思った次第だよ」

 そういうと会長は再び視線を新世代型たちに向ける。

「君たち新世代型二次元人は……あの小田原修司をモデルに生み出された二次元人だ。それは解っているね」

 会長からの問い掛けに、どう答えていいか分からず戸惑う新世代型たちに代わりバーンズが答え返した。

「会長、彼らは確かに修司のクローンだが……修司とは別個の存在、生き物だ。そう修司と比較しないでくれ」

「ああ、悪いね。つい口が滑ってしまったよ」

 バーンズの代弁に会長は口元を微笑ませる。

 

 物々しい雰囲気とは違い、穏やかな口調で話すライフル協会会長に新世代型たちは形容し難い不気味さを感じ取っていた。

 そんな現状の中で、会長は再び新世代型たちに質問を投げかけた。

「では、小田原修司とは違う生命として君たちに訊ねたい。君らは我らが愛好している製造・販売されてる銃器について、どう思うかね?」

 現在アメリカなどで売買されている銃火器について、どう思うか訊ねられて、新世代型たちはどう返答すれば戸惑うばかり。下手に答えれば二次元人の立場が危うくなってしまうからだ。

 そんな皆がなんて返答すればいいか戸惑っている中、静寂な空気を切り裂く様にある一人が平然と挙手して答えた。

「はい、銃なんて物騒だと思います」「ね、燃堂!?」

 馬鹿正直に銃を物騒だと唱える燃堂力の発言に、親友の斉木楠雄やその他の新世代型たちは愕然とした。

 そんな正直に自分の意見を唱えた燃堂の言葉を聞き、会長は微笑みながら言った。

「ははは、君は正直だな。君みたいな正直者は好きだよ」

 怪しく微笑む会長の言動に、新世代型たちはきょとんとする。

 すると会長は新世代型たちに言った。

「はは……だがね、確かに銃器は危ないイメージが日本人には強いと思うよ。日本の銃刀法違反による罪科は稀に見る高レベルだからね。だが、私達は敢えて銃器についてはこう捉えている……銃が人を殺すのではない、人が人を殺すのだ、と……」

 この会長の発言に新世代型たちは一同に驚愕してしまうが、バーンズや聖龍HEADは落ち着いていた。

 すると会長に続いてバーンズもとんでもない事を述べた。

「修司も言ってたな。人は同じ人を殺せる残忍な生き物だと……何より、銃でなくとも人を殺傷できる術はいくらでもある」

「おお、バーンズ君。君も解って来ているではないか!」

 バーンズの発言を聞いて、会長は嬉々として喜んだ。

 と、このバーンズと会長の話を聞いてプロト世代のチョコが自分の脳裏に浮かんだ疑問をぶつけてみた。

「あ、あの会長さん……」

「ん? 何だい、可愛いお嬢ちゃん」

「会長さんは新世代型と自分達が好んでいる銃器を結び付けたい様に感じるんですが……それってなんでですか? やはり小田原修司となんか関係があるんですか?」

 チョコはいつになく険しい面持ちで会長に問い詰めると、会長は素直に答えてくれた。

「……そうだね。正直に言うと、やはり私達は新世代型を小田原修司の代役……彼の代わりに我らの宣伝を担ってくれると思っているからね」

「代役……それに宣伝って?」

「此処に君たちを招いたのは、それを述べる為でもあった。故に君らにも包み隠さず教えよう」

 チョコが一驚する中、会長は説明を始めようと、ポケットから小さなリモコンを取り出してボタンを押す。すると部屋は消灯され、皆の前にスクリーンの幕が下りてきた。

 そしてスクリーンに画像が投影された。その画像は、修司が誇らしげにライフルなどの銃器を装備している写真だった。

「こ、これは……!」

 画像を見て、出雲ハルキら新世代型たちは驚愕する中、会長は説明し出した。

「ご覧の通り、小田原修司は我らが推している銃器を宣伝する広告塔の役割を担っていた。これは小田原修司自身が私たち同様、銃火器をこよなく愛用していた人物であり、アメリカと言う銃社会に新たな1ページを刻んだ人物でもあるのだよ」

「新たなページ……?」

「そうだ。銃が危険なイメージがあるのは、犯罪だけでなくその取扱いや銃の構造による誤射での死傷事件が大きな観点だった。そこを小田原修司は、アメリカ政府と我々と協力して、誤射が特に多い子供用ライフルの安全性を高める法案を可決させた。これによって子供用ライフルの誤射や暴発が限りなく少なくなった」

「こ、子供用ライフルですって!?」

 イオリ・リン子が子供用のライフルと聞いて驚くと、会長は続けて語った。

「そうだ、私達が推奨する銃器には子供用のライフルや拳銃も含まれている。小田原修司は、そんな子供用の銃器に対しての世間の偏見を少なくするために、銃の安全性を向上させる法案を私達と協力してアメリカ議会に可決させたのだ。これにより銃の安全性は確立され、誤射や暴発は限りなく減少されたのだ」

 

 小田原修司がライフル協会と協力して銃の売買を推奨していた事実を知って愕然とする新世代型たち。

 自分達の始祖が危険な銃器の売買の広告塔を担っていた事実を知って、彼らの心境はどう変わったのだろうか。

 

 

 

[銃というもの]

 

 小田原修司とライフル協会が親密な関係を築いていたと知って、愕然とする新世代型たち。

 そしてあろう事か子供用ライフルの安全性を高める法案も可決させて銃器メーカーに売買させていた事実も明るみになって、皆は驚きが隠せなかった。

 そして修司が銃器を装備している写真が投影されているスクリーンの画像が切り替わり、画像は実際に銃器メーカーが売買している銃器の写真が投影された。

 だが、スクリーンに投影されたライフル銃の画像を観て、新世代型たちは騒然とした。

「こ、これって……!」

 新世代型たちが驚愕した。それはピンクや青色など、見栄えのいい色合いの子供用ライフルに混じって、ガンダムや二次元ヒロインをイメージしたカラーバリエーションの銃器も売買されている画像が映し出されたからだ。

 ピンクや青色など、一見すると玩具の様な見栄えの子供用ライフル。しかし、その中でも一際目を奪われるのが日本の二次元キャラをイメージしたライフル銃の存在だった。

 何ゆえ日本のキャラクターをイメージした銃火器がまでも存在しているのか気になる新世代型たち。

 そんな彼らの疑問を会長は代弁して答えた。

「これらの銃は小田原修司が……いや、聖龍隊が公認してくれたデザインの銃器でね。お蔭で子供用ライフルの売り上げがグンと上がった。最近では、アニメファンの大人までもキャラクター系の銃器を購入してくれているから私達にとっても有難い話なのだよ」

 日本のキャラクターグッズの一環としてデザインやカラーバリエーションに採用された銃器の存在に驚かされた新世代型たちは堪忍袋の緒を切らしてHEADに言い寄った。

「バーンズ、これってどういう事だよ!?」

「なんで日本のアニメキャラクターをモチーフにした銃器が実際に売買されているんですか!?」

 真鍋義久や星原ヒカル達の質問攻めにバーンズは一片の動揺もせずに平然と真顔で答えた。

「……これは修司の策だ。強大な権力を誇るライフル協会と親密な関係を築く為に、日本のキャラクターの利用権をライフル協会を中心とした銃器メーカーに譲渡したんだ。その結果、修司が考案していた子供用ライフルの安全性を向上させる法案も協会の圧力が相まって可決され、オレたち二次元人の人権も保持する事ができたんだ」

 このバーンズの話を近くで聞いていたライフル協会会長は、謙遜しながら話し掛けた。

「いやいや、私達に国を動かす様な強大な組織力はないよ。ただ、前々から懸念された子供用ライフルの安全性を向上させるという修司氏の提案した法案可決には、少しばかり力添えはしたがね」

「こ、子供用とはいえ銃だぞ! 安全性など関係ないだろ!」

 猿田学が問い詰めると、会長は冷然とした面差しで答えた。

「これだから日本人は……いいかい、銃で自分自身を護衛しない限り己の身を護れないのがアメリカという犯罪大国なのだ。私達は自分の身を自分で護れる銃がより多くの人に渡れるように促す協会なのだ。日本の様に、銃器そのものが危険と言う考えは持ち合わせておらん」

 会長の言い分に何も言い返せない新世代型たち。すると会長は続けて皆に語った。

「だいだい、それなら聖龍隊も同じだろ? アニメタウンでは街を警備する隊士には必ず帯刀を許していると言うではないか。日本人にとって刀が武士の誇りなら、アメリカ人にとっても銃は自己防衛の手段の一つなのだよ。解ったかい?」

 会長の語る言い分を聞いて、新世代型達は返す言葉が無かった。

 すると此処でバーンズが会長に話し出した。

「だが会長、それは全て修司の代の頃の話だ。オレの代でアンタらとの関係がどう変わるか分かんねえぞ」

 すると会長は涼しい顔でバーンズに言った。

「ふふ、だがバーンズ君。きみも小田原修司の様に賢明になる必要があると思うよ。彼は自分を含んだ多くの二次元人の存在を護る為に、我々の軍門に下り、協力関係に至った訳なのだ。私たちライフル協会は、もはやアメリカ国民そのもの。その協会と手を組み、関係を結んだ以上、聖龍隊はアメリカ国民を味方につけたも同然。聖龍隊を敵に回すと言う事はアメリカそのものを敵に回す様な意味合い……これからも二次元人の未来を守る為ならば、関係を壊す様な真似はしない方が得策だと私は思うよ」

「話を聞いていると……なんだか聖龍隊や二次元人は、ライフル協会の権力の傘に護られているみたいで嫌になるな」

 涼しい顔で語る会長の話を聞いて、棗恭介ら新世代型たちは聖龍隊や二次元人が権力の傘に護られているみたいに感じてしまう。

 そんな新世代型たちにバーンズが補足を語った。

「修司は聖龍隊が世界進出する際、アメリカのライフル協会との関係を友好的なものとする事で、世界情勢にも堂々と蔓延れるまでに組織力を高められたんだ。かつてライフル協会は、アメリカのJFK暗殺に一枚噛んでいたという都市伝説を聞いて、彼らの組織力の高さを見込んだ上で協力関係を結んだ。……ライフル協会を味方に付ければ国際情勢にも大きく乗り出せると踏んでな」

「じぇ、JFK暗殺にも噛んでいたって……!?」

 瀬名アラタが一驚するとバーンズは詳細を語った。

「……当時、ベトナムに進攻しようとしていたのを躊躇ったJFKだったが、軍の進攻が無くなれば銃火器の売り上げが下がると見込んだ軍事産業、それと結託していたライフル協会が売り上げを心配して暗殺を企てたって都市伝説があるんだよ」

「ふっ、タダの都市伝説だよ」

 バーンズの話に会長はほくそ笑むと、バーンズが話を付け足した。

「確かに暗躍していた、裏で糸を引いていた、黒幕だったという話は確証はない。だが、実際にライフル協会がそれを実行に移せる程の実力や権力があったのは確かな事。それ故に修司は、ライフル協会を敵に回すより味方につける道を選んだ。武力を愛する権力に共立する未来を修司は選んだ」

 アメリカの大統領まで暗殺できてしまうほどの組織力を持っている協会を敵ではなく味方につける未来を選んだ小田原修司。その話を聞いて新世代型たちは唖然とした。

 

 と、その時だった。

 皆が聖龍隊や小田原修司とライフル協会の関係性についての話を聞かされていた所に、部屋の戸を打ち破るように協会本部を警備していた警備員が部屋に飛び込んできた。

「た、大変です! テロリストが本部に攻め込んできました!」

 この警備員の言葉に、バーンズ達HEADや新世代型たちが驚愕する中、会長たち協会の幹部たちは冷めた顔で落ち着いていた。

「そうそう、例の黒武士……彼がどうやら、世界を荒らし回っているだけに非ず、ウィキリークスも余り公表していない情報を拡散したみたいなのだ。その中には私たちライフル協会と君たち聖龍隊が親密な関係を築いている事も暴露されていてな。君たち聖龍隊に敵意を向けているテロリストが、聖龍隊とは縁を切れと脅迫状まで送られていたのをすっかり忘れていたよ」

「まったく……自分達が狙われているって言うのに、よくそう呑気な事が言えるな」

 バーンズが呆れていると、会長は真顔で答えた。

「はは、まあそういうな。敵の敵は味方ならぬ、敵の味方は敵、と言うではないか。警備員だけでは心許ないし、久々に聖龍HEADきみらの戦力を見せてもらおうじゃないか。私達が推奨する銃器よりも格段に殺傷力のある戦力をね」

「………………………………」

 会長からの冷やかしを聞いて、バーンズは胸糞が悪くなりながらもHEADと共に出撃してテロリストを一掃し始める。

 HEADがテロリストの相手をしている間、部屋に残された新世代型たちに会長が言葉をかける。

「HEADも便利だ。私達に敵対する愚かなテロリストを一掃してくれて。君たちも頑張って聖龍隊の様な……いや、小田原修司の様な人間に成れるといいね」

「それってどういう事ですの?」

 会長の発言に新世代型の薙切えりなが問い返すと、会長は真顔で語った。

「二次元人と言うのは、何かを象徴する存在だと私は思っている。正義、平和、愛……そんな自己主張の塊みたいだとね」

 何を象徴するのかと訊ねられる新世代型たちが茫然としていると、会長は更に語り続けた。

「君たち小田原修司のクローンは何を象徴しているのかね? 彼の様に武力や権力、または自己犠牲を伴う戦いを象徴しているのか……そもそも、二次元人の存在は何かを世間に訴える象徴の様だと修司自身が言っていた。君たちは何を象徴としているのかね」

 二次元人はなにかを象徴する存在であると小田原修司は会長に言い残していたという。

 

 新世代型たちは小田原修司のクローンとして生み出された自分達は何を象徴しているのか問い詰められ、考えさせられた。

 小田原修司の様に暴力や武力、または自己犠牲による何かを護る象徴か。

 その答えは出せずにいた。

 

 それから聖龍HEADはライフル協会に立てついたテロリストを一掃し終わり、ライフル協会と談話を挟んだ後に撤退していった。

 因みに2013年度のアメリカでの銃の数は推定で2億丁以上。軍を含み100人あたりに約90丁だと言われている。

 そしてある銃器メーカーでは子供用ライフルを年間6万丁以上販売している。

 実際に子供用ライフルの暴発で子供が死傷する事例は後を絶たないが、その親はこうメディアに伝えている。

「皆さん、どうかお子さんには……安全な銃を与えてください」

 だが、果たして安全な銃などあるのだろうか。

 

 

[ハワード財団]

 

 ライフル協会との会談を終えたバーンズ一行。

 だが、それに相次いで今度は協会と同じく聖龍隊と協力関係を結んでいるハワード財団から招集がかかった。

 世界の三分の一を実質支配しているとも言われるハワード財団からも新世代型たちを同行させる様にと命じられたバーンズは、またも胸中に不安の種が撒かれた。

「協会の次はハワード財団か……嫌な事は立て続けに起こるもんだぜ」

 バーンズは憂鬱な気分のまま、今度はハワード財団の元を訪れる事になった。

 

 その道中にて。

 護送車の中で新世代型たちは同乗しているバーンズに問い掛けていた。

「バーンズさん、小田原修司は何であそこまでライフル協会と親密な関係を築いたんですか……」

 星原ヒカルが訊ねると、バーンズはやや呆れた様子で答えた。

「さっきも言っただろう。ライフル協会はアメリカ国民そのものとも言える巨大な協会だ。その協会と手を組めば、聖龍隊の敵=アメリカ国民の敵と言う立場を利用できると修司は考えたんだ。何より協会と手を結べば武器も格安で購入できるし、武器マニアの修司にとってはウハウハだったんだろうな」

「ぶ、武器マニアだったんですか! 修司さんは……」

 小田原修司が武器マニアだったと初耳のヒカルに、バーンズは語り続けた。

「ああ、修司は極度の銃器、いや武器マニアでな。今でも修司の家だった市長宅の地下には収集した銃器や武器が飾ってある。まあ、実際に使うのは殆どなかったけどよ」

「は、はぁ……」

 小田原修司が極度の武器収集家だと知って、愕然とする星原ヒカルら新世代型たち。

 

 そして彼ら一同は巨大な屋敷へと護送車に乗って赴いた。

 屋敷に足を踏み入れると、豪勢な内装が目立つ、正しく豪華絢爛が似合う家造りだった。

 その屋敷で最も広い応接間に一行は誘導され、待っていると肥満体の白人男性が現れた。

「よく来てくれたな、聖龍隊の諸君。そしてお初にお目にかかる、新世代型の面々」

 堅実ながらも無愛想な面持ちで挨拶もなしに聖龍隊と新世代型たちを呼び捨てにするこの白人男性に皆の視線が向けられた。

 この男性の紹介を、バーンズが代わって新世代型たちにした。

「この人はハワード財団の総財産を統括して管理するロックウッド氏だ。ハワード財団は貿易や外資、ありとあらゆる分野で富を得てきた、世界の三分の一を実質支配しているとも言える巨大な財閥だ」

「ふふふ、いつの日か全世界の富を独占したいものだよ」

 バーンズの紹介に、ロックウッド氏は冗談か本気なのか解らない微笑を浮かべた。

 そしてバーンズは、単刀直入にロックウッド氏に問いかけた。

「なんでオレらと新世代型たちを呼んだんだ? オレ達は遂さっきも……」

「遂、先ほどもライフル協会に招集された。と、言いたいのだろ?」

「な、なんでそれを!」

 バーンズが問い掛けている最中に返答するロックウッドの発言に、新世代型の直枝理樹が一驚するとロックウッドは普通に答えた。

「忘れた訳では有るまい。小田原修司の頃から結託している我らと聖龍隊、同じく聖龍隊と協力関係にあるライフル協会との繋がりは……私たちハワード財団とライフル協会そのものにも繋がりがあると言う事を。修司氏がよく言っていたよ。連携できない組織は必ずボロを出すってね」

 ロックウッド氏の話を聞いて愕然とする新世代型たちを視界に捉えて、ロックウッド氏は直訳して言った。

「なるほど、彼らが悪評高い小田原修司のクローン、新世代型か」

 このロックウッド氏の発言に多くの新世代型たちが不服を抱くが、聖龍隊の手前、彼らの権限保持の為に堪える選択肢を取った。

「彼らに対して、どうする気だ?」

 バーンズが問い詰めると、ロックウッド氏は真顔で答えた。

「いやね。小田原修司のクローンなら、私やライフル協会とも上手く連携できると思っていたのだが……庶民タイプに人民タイプ……殆どが政財界向きの二次元人でないのが残念だね」

「俺たちをどうしたい訳なんだ?」

 厳つい顔付きでロックウッドに訊ねる真鍋義久。するとロックウッド氏は単刀直入に申し出た。

「……私やライフル協会、そして多くの政財界の人間は完全とまでは行かないものの、小田原修司の代役が必要不可欠なのだよ。お互いに利害の一致を求めて、それに対して協力し合いながら解決を進めていくベストパートナーの様な二次元人が欲しかったが……う~~ん、上手くいかないものだ」

 真に身勝手なロックウッド、いやハワード財団やライフル協会の真意を知って新世代型の怒りは上昇していった。

「か、勝手なこと言わないで下さい! 琴浦さん達は自分たちが小田原修司のクローンとして生み出された事に納得してないんですよ! それなのに……」

「チョコちゃん、気持ちは解るけど此処は抑えて……ね?」

 余りにも身勝手な言い分に堪え切れなくなったプロト世代のチョコが訴えるが、それを聖龍HEADのキューティーハニーが宥め止める。

 すると、このチョコの言い分を聞いてロックウッド氏は冷ややかな顔で彼らに言伝した。

「確か、ライフル協会の会長殿も仰っていたな。二次元人は何を象徴しているかで、その本質や価値が決まるのだと。主人公は主人公、ヒロインはヒロイン、悪役は悪役、と……私達が求めるのは今の我々の地位と権力、そして何より財力の保持を担ってくれる立場の存在だ。小田原修司はライフル協会と結託して銃の安全性を高めた上で更に銃器売買の幅を広げ、私たちハワード財団には影で私たちに歯向かう輩を抹殺してくれる頼もしい逸材となってくれると、私たちは新世代型たちに期待していたのだが……」

 これを聞いてバーンズがロックウッドに話し付けた。

「残念だが、彼らは修司のクローンであっても修司じゃない。それぞれが個性を持つ、修司とは別の存在だ。悪いが、あんた達ハワード財団を死守してくれる兵力になってくれる奴は一人もいないよ」

 これを聞いたロックウッドは残念そうな面持ちで話し返した。

「ふぅ、そうか……では実質、新世代型には何の価値も無いではないか」

 しかし負けじとバーンズも力強い面魂で話を返す。

「そんな事は無い。新世代型にはそれぞれ、立派な価値というものがある。誰もが未来を創造できる素晴らしい可能性を秘めているんだ!」

 だが、このバーンズの熱弁を聞いても、ロックウッド氏は呆れ果てた様子で物言った。

「やれやれ、小田原修司から生まれた二次元人なのだよ。彼のように、破壊や殺戮をモットーとした人材でなければ使い道が無い。あと小田原修司の残った点と言えば、彼が社会人として出来そこないの発達障害者な部分だけ。新世代型たちにその様な欠点が現れなければ良いのだがね」

 あくまで新世代型を小田原修司のクローンという概念でしか捉えないロックウッド氏の発言に新世代型たちは怒りを通り越して呆れ帰ってしまった。

 

 アメリカ中の信頼と、武力を手に入れる為にライフル協会と。

 世界中にコネクションがある実質世界の支配者たる富を象徴する財団と。

 武力と富と親密な関係を築いた小田原修司は、果たして何をしたかったのか?

 新世代型たちは考えさせられるのだった。

 

 

 

[宗教国家]

 

 ライフル協会、そしてハワード財団。

 アメリカの武力を一括するライフル協会と、世界の富を担っているハワード財団から難癖を付けられた新世代型たち。

 バーンズたちHEADは、この背景には黒武士が流出させた機密情報である「新世代型二次元人は小田原修司のクローンに最も近い種」という事実と、それに伴う新世代型への風当たりを見越しての初回接触だったのではないかと論議した。

 しかし悪い事は立て続けに起こるものであり、またも聖龍HEADに新世代型たちを招集するようにと言伝する組織が出現した。

 それはなんと、バチカン市国からだった。

 

 ヨーロッパにある小さなバチカン市国は、元々は町であったアニメタウンを国家にする際に手本とした市国であった。

 まさしきキリスト教に治められている小さな国、それがバチカン市国である。

 そんなバチカン市国に御呼ばれされた皆々は、観光する暇もなく、バチカンの中央にある本堂に赴いた。

 バーンズたちHEADを先頭に教会本堂を直進する一行。

 そしてバーンズたちの前に巨大なキリスト像が現れ、その目前でバーンズたちは跪くと祈り始めた。

「主よ、我らが罪を許したまえ、我らは……」

「我らは罪を犯し、その贖罪を果たすものである……だったろう?」

 バーンズたちが祈祷している真っ最中に教会の奥から現れたのは、恰幅の良い修道士だった。

「バスデン、久しぶりだな」

「ええ、はいはい。お久しぶりですね、バーンズ殿」

 現れた恰幅の良い修道士に、バーンズは握手を求めるが修道士はそれを無視して新世代型たちの方へ歩み寄る。

 そして歩み寄った修道士は新世代型たちを一回り見て、こう言った。

「あなた方は神を信じますか?」

 するとこの質問に対し、時縞ハルトが答えた。

「神か、今となってはそんなの……余り信じたくも無い」

「おおっ、そうですか! 神を信じない、その精神……まさしく小田原修司と一致してますね!」

 神を信じないと断言する時縞ハルトの言葉を聞いて、修道士は嬉々として喜び舞い上がった。

 すると喜々と舞い上がる修道士に真鍋義久が問い詰める。

「おい、坊さん! あんたも俺たち新世代型を小田原修司の代理品としてしか見てねえのか!?」

「い、いいえ、違います! そもそも私たちキリスト信者は、クローン製法で命を人工的に生み出す技術を余り良く見てません!」

 修道士の発言に違った意味で悲愴な衝撃を受ける新世代型たちに、バーンズが宥め止める。

「まあ待て、お前ら。このバスデンはバチカン市国とオレたち聖龍隊の間に入って交渉を進めてくれる、いわば交渉代理人だ。そんな手荒に扱わないでくれ。でないと、オレたちが世界的に抹消されちゃうよ」

「たかがキリスト教でしょ? そんな教徒たちの集まりに、なにが出来るって訳ニャン?」

 バチカン市国を単なるキリスト教徒の集まりとだけしか捉えていない新世代型の森園わかなの発言を聞いて、バーンズは真顔で語った。

「バチカン市国を侮るな。バチカンは世界で最も教徒の多いキリスト教の大本山みたいな場所だ。そのバチカンを治める法王様の発言力は凄まじく、法王様がイエスといえば世界中がイエス、逆にノーといえば世界中がノーという始末。その発言力は相当なもので、それ故にアメリカ大統領よりも命を狙われやすいと言われてるんだ」

「その通りです、ミスターバーンズ。法王様は今でも多くのテロリストに命を狙われて、みんなみんな多忙なんですよ!」

 バーンズの話を聞いて、法王の命が今でも危険に曝されていると切実に訴えるバスデン。

 そんなバスデンは、まず聖龍隊への勅令を提出した。

「し、しばらく聖龍隊の隊士で法王様の身の回りを護衛して欲しいのです。テロリストである狙撃手は私の方で何とかしますので、その間聖龍隊は法王様の身辺を警護して欲しいのです」

「解った、そんな理由なら任せておけ。聖龍隊の護衛は常に最新かつ完璧に近いものにしてある」

「おお、頼もしい事です」

 法王の護衛をバーンズに頼んだバスデンは、次に新世代型たちに駆け寄り、丸みのある顔を近付かせて皆一人一人の顔を拝見した。

 バスデンに近くで顔を拝見された新世代型たちは戸惑うが、無事に皆の顔を拝見したバスデンは全てを見通した様な口調で物言った。

「ふぅ、数が多かったですが中々……何処と無く小田原修司の雰囲気を感じられマース」

 結局ここでも小田原修司と見比べられてしまう現状に落胆してしまう新世代型たち。

 すると、そんな気落ちする新世代型たちの心境を知らずにバスデンは語り掛けた。

「小田原修司、いくら神を信じない彼でも私たちキリスト教の組織力は高く評価してくれて大いに嬉しいデース。お陰でテロリストの排除を承ってくれたり、大変便利デース」

「神を信じない小田原修司が、キリスト教にだけは評価を下したって……どういう事なんだ?」

 バスデンの話を聞いて、出雲ハルキが首を傾げているとその疑問にバーンズが代弁した。

「キリスト教というよりも、その組織力の高さを修司は買っていたんだ。世界各地に拠点を置くキリスト教の情報収集力、そしてその支部が各々と管理している世界遺産による収益、財産など軽くアメリカを凌駕する……修司は、そんなキリスト教を、バチカンの情報収集力の高さを評価して協力関係を築いていたんだよ」

 このバーンズの話を聞いてバスデンは付け足した。

「修司殿はキリストを始め、神を信じない信仰心の欠片もない人物でした。ですが世界情勢を把握する為に情報を素早く収集できる我らキリスト教会と手を結んでくれたのです。人間不信な一面が目立っていた人物でしたが、世界情勢に多大な影響力を持っていた組織とは友好関係を保っていたのです」

「人間不信、いや誰も信じる事ができない人間が必要としていたのは……強大な組織力」

 バスデンが付け足した話を聞いて、瀬名アラタは誰も信じる事ができなかった小田原修司が結局最も必要にしていたのは組織力だったのだと険しい顔つきで合意する。

 そんな自分達の話を聴いている新世代型たちにバスデンは申した。

「皆さんは、あの小田原修司のクローンだと聞いています。どうですか? 私達と共に世界の平衡を……世界バランスを保持する活動に専念してみませんか?」

「えっ?」

 バスデンの申し出にきょとんとする新世代型たちに、バスデンは率直に申した。

「私達は、キリスト教を組織として認可した上で互いに協力関係を結んでくれる逸材を求めていマース。世界の均衡を、バランスを保持しながら守護する役目を修司殿の代わりに担ってくれないでしょうか? 修司殿が黒武士に惨殺されたと今メディアが取り上げていますが、本当に修司殿が殺められてしまったのなら、それだけで世界の均衡は崩れてしまいます。今、必要なのは彼の……小田原修司に成り代わる世界の均衡を保持できる逸材なのデーース」

 小田原修司が死亡したという報道が黒武士の手により流出している件で乱れている世界情勢。そんな修司に成り代わる逸材を新世代型たちに求めるバスデンの突然の申し出に新世代型たちは非常に戸惑ってしまう。

 そんな困惑する新世代型を視認して、バーンズがバスデンに申しつけた。

「バスデン、彼らはまだ現世に生まれて間もない新世代型だ。修司の様に、世界の均衡を陰で守護する役目は荷が重すぎる。それに……お前さんもハワード財団やライフル協会と同じだ。彼らを修司の代役としてしか見ていないな。もっと大きな視野で彼らを見てほしい」

「はは、Mr.バーンズ、これは失礼。現政奉還の煽りを我がバチカンも受けてしまって、ちょっと焦ってしまいました」

 修司の代理としてしか新世代型たちを見ていなかったバスデンは、素直に自分の考えを訂正して謝罪した。

 

 ライフル協会、ハワード財団、そしてバチカン。

 その全てが強大な組織力と影響力を秘めている巨大な存在。

 小田原修司は二次元人の未来を護る為、そして世界の均衡を保つ為、彼らと裏取引をしてまでも協力関係を築いていた。

 全ては二次元人の尊厳を護る自らの保身と、二次元人の為にだと、新世代型たちは後々バーンズから伝え聞いた

 

 

 

[修司の真実]

 

 ライフル協会、ハワード財団、そしてバチカンへと立て続けに振り回された新世代型たちは心身ともに疲労し切っていた。

 聖龍隊が小田原修司の代から強大な権力を持つ組織と関係を持っていた事実を知って呆然とする新世代型。

 武力・財力・そして情報と。世界の三大権力を陰で操る組織と結託してまで、小田原修司は二次元人達を護りたかったのか。そして、そんなキナ臭い権力で護られていた自分たち二次元人とは何なのかを考えさせられる新世代型たち。

 そんなところに聖龍隊とは親密な関係を保持している赤塚組の幹部達がやって来た。

「よっ、お前さんたち。なんだか今日は色々と振り回されて、お疲れの様だな」

「た、大将さん……」

 気軽に声を掛けてきた赤塚組の頭領である赤塚大作、通称大将に琴浦春香が答えた。

「聞いたぜ、聖龍隊を贔屓にしているお偉いさん達と会って来たんだってな。確かライフル協会にハワード財団……あっ、キリスト教の総本山バチカンにも足を運んだみたいだな」

 大将から一日の経過を尋ねられ、直枝理樹が返事した。

「はい、ホントに緊張の連続でした。何だか物騒な人達ばかりで……」

「ははっ、それはご苦労様だったな」

 理樹からの返事を受けて大将は笑みを浮かべ返す。

 すると大将は新世代型たちの顔を見詰めて質問してきた。

「ところでよ……実際に会ってみてどうだったか? ライフル協会の様な武器の売人の肩を持つ様な物騒な輩に、世界を実質支配している財団、そしてキリスト教の総本山はよ?」

 大将の質問に新世代型たちは一瞬黙り込んだが、即座に答え返した。

「そ、そういわれても……やはり、何処も僕たちを小田原修司の代用品としか見ていない。そんな印象でした」

「そっか……それは辛かったな。畜生、お偉いさんはお前達の事を何も解っちゃいない」

 理樹の返答に大将が顔を渋らせると、そこに幹部のミズキが言伝した。

「大将、それは少し違うわ。彼ら有力者は元々、新世代型を小田原修司のクローンとして生み出した……そう言った意味では、間違った視点で彼らを見てはいないわ」

「それがムカつくんだよ! こいつらを修司のクローンとして生産した世界の偉い奴らに俺は腹を立てているんだっ!」

 思わずミズキに反論する大将を見て、新世代型たちは如何に大将が自分達を想ってくれているか痛感する。

 するとそんな立腹する大将を前に、幹部であるテツが口を開いた。

「それにしたって……小田原修司の奴が、ライフル協会にハワード財団、そしてバチカンと通じていたなんて今でも驚くばかりだ。どれもこれも、全て世界の情勢を操作できる組織だもんな」

 テツの語る通り、小田原修司が通じていた組織が全て世界情勢を裏で操作できる程の実権を握っていた組織であった事に皆は驚くばかりだった。

 そんな皆が唖然としている中、新世代型たちと行動を共にしていたプロト世代のギュービッド達が唐突に話し始めた。

「それにしたって、どうやって小田原修司は此処まで強力な実権を持った組織と通じる事ができたんだ?」

「確かに。普通、一般の人が立ち入る事が出来ない……そんな権力者ばかりなのに、修司さんはどうやって関係を持てたんだろう?」

 プロト世代のギュービッドとチョコは如何にして小田原修司が世界情勢を動かせる組織と親密な関係を結べたのか疑問に思うと、新世代型たちもその考えに同意する。

 いや、新世代型二次元人達は、如何にして小田原修司が此処まで有権者達と親密な関係を築けたのかに対して疑問を抱くしか出来なかった。

 そして彼らは自分達が疑問に思った事実を確かめようと、小田原修司を良く知る聖龍HEADに答えを求めた。

 聖龍HEADに小田原修司が如何にして、世界情勢の陰の暗躍者達と関係を持てたのか訊ねる新世代型たち。そんな新世代型と同じく、なぜ旧知の友である修司が政財界をも動かせる組織と繋がりを持てたのか疑問に思った大将たち赤塚組の幹部もHEADに問い詰めた。

 するとHEADは思い詰めた面差しで新世代型や大将たちに語り始めた。

 

 元の始まりはアニメタウンが世界情勢に名乗りを挙げた頃より始まる。

 アニメタウンは実質、資本主義国家として格差の解消を目標にする国家として世界に上乗した。

 その国家としての運営は、独裁民主主義と言う、一人の人物を中心としたピラミッド組織構成の上位の人々が話し合い、物事を決める流れだった。

 当時のアニメタウン市長にして聖龍隊総長の小田原修司は、自分を中心とした聖龍隊の幹部を上位にした組織構成でアニメタウンを国家として運営させようとした。

 だが、突如として現れ、自国の主張を唱える小田原修司や聖龍隊幹部の主張はあまり認められなかった。

 そんな中で異常者(ヒール)と化した二次元人が三次元人を襲う事件が発生し、二次元人の立場は更に悪化した。

 この非常事態の中で、小田原修司は聖龍隊の幹部をHEADと俗称した上で、一人組織としての軍を構成させるべく、そして己自身を強化させる為に渡米した。そこで小田原修司はD-ワクチンでの人体軍隊実験に名乗りを挙げて、見事に欲していた力を得る。

 それからアニメタウンに帰還した小田原修司は、アメリカ軍の構造を真似て聖龍隊を本格的な軍隊として構成し直した。

 そんな少年から青年期に成長した小田原修司は、世界と並び立つにはそれ相当の実権と権力が必要だと認識した。

 そして修司は聖龍隊の武力を強めるべく、そして自分が愛してやまない二次元人を護る盾として利用できる権力を求めて、アメリカの基盤の一つであるライフル協会と結託。実質上、アメリカ全土を二次元人への味方に付けるべく、ライフル協会に日本キャラクターの利用権を譲渡する。その見返りとしてライフル協会は聖龍隊に大量の武器や火薬を提供した。

 それから財力での守りを中心とた防衛の要を必要とした小田原修司は、ユダヤ財閥をも軍門に降しているハワード財団と手を組み、彼らに聖龍隊と言う特殊能力者の軍事力を貸し出す見返りとして、聖龍隊や二次元人を反社会的存在から守るよう密約した。

 そして世界情勢を把握して、世界の流れを掴むために修司は各地に拠点や支部を置くキリスト教とも裏で密約を交わし、バチカンの重役達をテロリストから無償で護衛する代わりに、世界情勢の情報を聖龍隊に通達すると言う協力関係を布かせた。

 これらの有力者たちと手を組めた背景には、小田原修司が陰で密かに収集していた国家機密「コレクション・シークレット」が関係していた。

 JFK暗殺の真相、ダイアナ元英国王妃の事故の真実が納められたコレクション・シークレットが公にされれば世界情勢は崩落してしまう。そんな危険なパンドラの箱を修司は作り出していたのだ。

 そしてコレクション・シークレットに集められた機密情報は小田原修司と聖龍隊が保持する代わりに、世界は二次元人の人権を認め、その存在を許したのだ。

 さらに小田原修司は、もしも世界が二次元人に牙をむける様な事が有れば機密情報を公にすると世界に通達。半ば強引に二次元人の存在を世界に認めさせた。

 修司は更に国連に「二次元人に手を出せば世界中の国家機密を暴露する」と脅しと取れる通達をした上で、Dの力で常人以上の戦力を手に入れた自分は国連に人間兵器として我が身を売った。

 世界は小田原修司からの脅迫と、彼が築いた権力者達との防壁により、二次元人の存在を認めざる得ない中、同時に小田原修司を人間兵器として利用する運命を選んだ。

 こうして小田原修司は世界と戦いながらも、世界を味方に付けた事で自分と二次元人の保身を手に入れたのだ。

 その後、小田原修司は国連の下で世界と戦いながら、二次元人の未来を護る険しい茨の道を一人で突き進んでいったという。

 

 修司の真実を知って、悲愴な感覚に陥る新世代型たちと愕然とする大将たち赤塚組。

 そんな彼らにバーンズが重く険しい表情で語った。

「ライフル協会が武力なら、財団は文字通り財力。そしてバチカンは豊富な財力と組織力からなる情報収集力。修司は武力と財力と情報と言う三つの権力と同盟にも通じる協力関係を築く事で聖龍隊と二次元人の保身を保ってきた」

 自らが築いてきた協力関係で、大切な二次元人の保身を保持してきた小田原修司のやり方に汚いと感じる新世代型も少なくはなかった。だが、二次元人と言う立場の弱い存在を認可させるべく取った行動だと思うとやるせない気持ちに至ってしまうのだった。

 聖龍HEADから小田原修司の真実を聞かされた新世代型たちが動揺の色を隠せない中、そこに皆の話を陰で立ち聞きしていた者たちが新世代型たちの前に現れた。

「そうだ……修司さんは、前総長は全てを一人で背負いこむ……そんな人だった」

「! ジュン……」「順一さん……」

 物陰から現れた村田順一と彼が率いるスター・コマンドーの面々を見て、バーンズや琴浦春香たち新世代型は一驚した。

 現れたスター・コマンドーの面々は何も言わず、彼らの真意を代弁するかのように順一が新世代型たちに語り出した。

「修司さんが昔から、世界の名立たる権力者たちと結託して僕らの……二次元人の未来を護って来てくれた事は前々から知っていた。全てを一人で背負いこみ、全てを解決して、全てを護ろうとした修司さんの決意と決断は誰にも計れない……」

 暗鬱な面差しで語る順一の一言一句に誰もが耳を傾ける中、順一は更に語り続ける。

「聖龍隊、いやアニメタウンは……多くの二次元人の存在を守る為に、武力や財力を頼りにし続けてきた。ライフル協会、ハワード財団……どれも敵に回せば恐ろしい組織と利害を一致させる事で、聖龍隊や二次元人の敵を協会や財団の組織力で潰していった。そうして今の、血塗れの二次元人の未来が創られていったんだ……!」

 利害の一致を示し合せる事で、異常者(ヒール)という共通の敵を具現化させて協力関係を推し進めてきた小田原修司。そんな修司の陰の政策を知って、新世代型たちは愕然とした。

「総長……いや、修司さんは二次元人を守る為に、組織力を強固なものにする為に教会や財団と陰で同盟を結んだ。もちろん、それで多くの二次元人の人権や未来は護られたが……同時に、その陰で多くの血が流れていたのも確かなんだ。こう言うのも何だが、君たち新しい世代の二次元人が生誕された陰では、組織による弾圧が根強いのが事実なんだ」

 そして順一は自分の手を見詰めながら新瀬田型たちに衝撃的な告白をする。

「そして僕らも修司さん同様に、異常者(ヒール)の血で自分自身を染め上げてしまっている。僕らは英雄なんかじゃない……ただの血塗れの、人殺しなんだ」

 順一の重く悲しい告白を聞いて、愕然とする新世代型たちを横目にバーンズ達HEADも告白した。

「ジュン、それはお前達だけじゃない。オレたちHEADも……同罪だ。多くを守る為に、少数の命を……一部の命を異常者(ヒール)として排除してきたオレ達もまた修司とは別だが、血塗れの茨道を歩いていた。オレ達に救済はない、だが誰かが汚れ役を引き受けなきゃ、立場の弱い二次元人が今の様に存在を許された未来は訪れなかった。それもまた事実だ」

 好敵手でもある修司とは別の茨道を、自分達も突き進んできたと唱えるバーンズの言葉にも確かな重みがあったのを新世代型たちは感じた。

 そしてバーンズは順一の話も含み、友である修司の話を締めくくった。

「修司はこうして、誰よりも険しい茨の道を一人だけで突き進む選択をした。それは常人では計り知れない苦しみがあっただろうに……それでも修司は二次元人の現実(いま)を、未来(さき)を守る為に孤独な戦いを選んだんだ」

 このバーンズや順一の話を聞いて、大将は己の中に蓄積させた鬱憤を吐き出した。

「それじゃ何だってんだい……! 修司は、あいつは俺たち二次元人の未来を守る為に全てを抱え込んで、一人だけで戦っていたのか!? お前ら聖龍HEADは何もしなかったのかよ!!」

 小田原修司が一人で茨道を突き進んでいる間、HEADは何をしていたのかを問い詰めると、アッコが悲しげな表情で幼馴染でもある大将に話した。

「修司は何も言ってくれなかったわ。言い訳にしかならないけど、修司は何でもかんでも一人で勝手に決断して、全てを一人で背負いこむ悪癖があったの。そう、私達には何も話さず、気付いた時は一人で全てを背負っていたの……」

 すると大将は今まで堪えていた何かがはち切れたのか、バーンズの両肩を掴み寄せて言い放った。

「だからってよ! 哀し過ぎるじゃねえか……! 修司が、お前らが……そこまで自分を犠牲にしてまで創った未来が、いいや、未来がこんな現実だなんて酷すぎる……未だに二次元人の脅威が世間様に恐れられ、挙句の果てには未来を担う新世代型共はそんな修司のクローンだなんて辛すぎるじゃねえかよ……!!」

 バーンズに涙ながらに訴えかける大将の言葉に、バーンズは黙然と口を閉じ、他の聖龍HEADは悲愴のあまり顔を背けてしまう。

 そんな悲愴感募る現状の中で、新世代型の琴浦春香がバーンズに言いよる大将に駆け寄り、大将を止める。

「大将さん、もう……もう良いんです」

 悲しみ一杯の表情で大将に訴える琴浦春香。だが、そんな彼女や新世代型たちの面持ちを見て大将ははち切れた。

「……よくねえ、よくねえよ! お前さん達はどうなる!? 修司のクローンだっていう事実だけでも辛いっていうのに、そんな修司が……聖龍隊が残した血塗れの茨道をこれからお前さん達も歩まなきゃならないと思うと俺は、俺は……やるせねえよ」

 遂には目から零れる大粒の涙を腕で拭い始める大将。そんな大将に真鍋義久は涙は出ていなくとも泣きそうな面で言った。

「大将さん、そんなに泣かないでくれよ……」

 すると大将は腕で涙を拭いながら新世代型たちに言い返した。

「これはタダ泣いてんじゃねえ……! 哀しくっても泣かない、テメェらの代わりに泣いてやってんだ」

 この大将の漢気感じる発言に、新世代型たちは更に胸中の悲愴を痛感した。

 

 己が守りたかったものを守る為、一人茨の道を突き進むと決めた小田原修司。

 彼が突き進んだ茨の道は、血塗れの道だった。

 守る為に、皆に代わって己の体を血で染め上げた男の生き様は、過酷で非情な道のりだった。

 大切なものを認めてもらいたいが為に、己の大切な心を置いていった男の真実。

 非情な真実を知って、新世代型たちは自分達の体に流れる血の重さと宿命を痛感するばかりだった。

 

 

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