二人だけの音 〜重ならない旋律が響くとき〜 作:Tmouris_
最近、燈たちは新しいバンドを始めたらしい
それを聞いて凄く嬉しいはずなのに、胸の奥がぎゅっと締め付けられるみたいだった。
結月もちょっと関わってるみたい。
どんどんCRYCHICが消えていくみたいでちょっと寂しい。
どうしたら私は結月の傍にいられるんだろう。CRYCHICが無くなって、ありのままで好きで居られなくなって……睦ちゃんは眠ちゃって。
これからどうすればいいんだろう……
***
スタジオに入って、愛音ちゃんが練習の成果を披露する。
「どう?結月くんに教わって頑張ったんだから」
「で、最後まで弾けるの?」
「これからだし!」
愛音ちゃんは飲み込みが早くて教えがいがある。基礎的なことはどんどん覚えていく。
「曲はどうする?」
そよさんがそう言うと、燈ちゃんからノートを取り出した。
あれは、燈ちゃんの歌詞ノート。
「曲は私が書く。結月手伝って」
「え!二人とも作曲できるの?」
そよさんも愛音ちゃんも驚いて俺と立希ちゃんを見つめた。
「燈が書いてきたんだから私たちでやる」
***
「こんど私たちRiNGのライブに出ることになって、それが終わったら、睦ちゃんも誘うね。祥ちゃんのことも誘おうと思ってるんだけど」
『伝書鳩になってはいけませんわ』
結月はCRYCHICは終わったって言ってた。それに、祥もそよと会いたがってない。
だから――
「行かない」
***
「立希ちゃんに結月くん着替えてきたの?」
「はぁ……初めて学校サボっちゃった。母さんにドヤされる」
「え!サボってきたの!?」
まさか、俺もサボらされるとは思わなかったけど、そこまでしたかいがあってかいい曲が仕上がった。
さっそくみんなを集めて曲を流す。
「暖かい……」
曲を聴き終わった燈ちゃんは微笑みながらそう呟いた。
早速演奏の準備をしていく。
「あれ、指抑えるやつないの?」
「立希ちゃん、パソコンで簡単に出来ない?」
「出来ない」
でも、あれが無いと初心者の愛音ちゃんには厳しいだろうな。
「いいよ、TAB譜は俺がなんとかするから」
そんな話をしていると、楽奈ちゃんがどんどんと中に入ってきた。
たしか、楽奈ちゃんのパートを作ってなかったはずだけど。
しかし、譜面を見ると、完全にオリジナルで弾き始めた。
やっぱり、楽奈ちゃんは天才だ。
―――
楽奈ちゃんはやってこなかった。
そういえば元々メッセージとかみるタイプじゃないからな……
「アレンジ考え直す……」
―――
『アレンジどうするの?楽奈ちゃんあり気で作るか、これ以上弄りすぎると愛音ちゃんも着いて来れなくなっちゃうよ』
『分かってる』
これは大分立希ちゃん疲れてるな……
―――
「今日は楽奈ちゃんいるから昨日の楽譜だね」
「出来るようになるまでは個人練」
大分というか、かなりピリピリしてるな。
「みんなが合わなきゃバンドじゃない。お前も全然だめ」
「ちょっとそれは言い過ぎじゃない?愛音ちゃんにずっと付きっきりで教えてるけど、ずっと頑張ってるよ」
そんなこと言ってる間に楽奈ちゃん帰っちゃったし。
***
「今日もまた来てましたわ!」
紅茶を一口飲んでから祥はそよのことで怒っていた。
「そよは今バンドをやってる。私も誘われている」
「話をつける必要がありますわね」
「ライブの日なら会えると思う」
***
ついにぶつかり合いが起こった。
愛音ちゃんと立希ちゃんが意見のぶつかり合いになってる。
「俺もいるし、楽曲の調整とか、愛音ちゃんの指導とか」
「私だけじゃ頼りないってこと?」
立希ちゃんは力強く拳を握る。
「私は祥子みたいにはできないんだよ!」
やっぱり気にしてたんだ……祥子ちゃんは作曲から調整まで一人でスムーズにこなしてたからな……
その次の日の夜に愛音ちゃんと燈ちゃんが学校に凸ったらしく、問題は解決したらしい。
―――
今日はライブ当日。いつもは近くで見守ってるけど、今日はPAとしてみんなのことをサポートする。
初ライブの愛音ちゃんだけじゃなくて、立希ちゃんも随分緊張してる様子だった。
ライブ直前の入場でみんなに声をかける。
「大丈夫だよ燈ちゃん。全力で歌えば届くから」
―――
あぁ、音もバラバラだし、なんなら曲も止まっちゃってるよ。
やっと演奏が始まった時、偶然祥子ちゃんと紬が入ってくるのが見えた。
(なんで二人がここに!?)
そんなことより作業に集中しないと。
音は辛うじて合ってはいるけど、燈ちゃんの声が出てない。
だけど、祥子ちゃんと視線が合った瞬間にいつも通りとは言えずとも声がしっかりと出てきた。
一曲目は無事に終わって、無事にライブが終わったと思ったのに……
「私は!必死にやるしかできない!だって!私の歌は心の叫びだから!」
燈ちゃんのMCが終わった瞬間に聞き覚えのあるイントロが楽奈ちゃんのギターから流れた。
ダメだ……嫌だ、それだけは。
祥子ちゃんが傷つく……何よりあの綺麗な過去が変わって欲しくない!
だけど、聞いていたら嫌でも分かった。燈ちゃんにとっての春日影はもうCRYCHICにはないんだ。
そっか……燈ちゃんは前に進んでいるんだね。
CRYCHICの思い出が脳裏に浮かぶ。気がつけば涙が流れて。悲しいし寂しい。
でも、その変化を受け止めきれない人だっている。
観客席の方を見ると、紬だけが残っていて、祥子ちゃんの姿は見えなかった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
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