二人だけの音 〜重ならない旋律が響くとき〜   作:Tmouris_

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バラバラになっていったみんなを見て、結月はどんな行動に出るのでしょうか。


第39話:二人だけの旋律

みんな、またバラバラになっちゃった。

もう、こんな思いはしたくなかった。

――バンドなんてしなければよかった。

 

『燈はそよがいいの!?こいつらがいいの!?』

 

何度も響くように頭の中で繰り返される。

 

立希ちゃんのあんな声……初めて聞いて、胸がズキっとした。

 

机の上に開かれたノートに頬をつけて突っ伏していると、チャイムの音が聞こえて来た。

 

「こんにちは。燈ちゃん」

 

玄関を開けると、結月くんが心配そうに顔を覗かせた。

 

「あ、どうして……」

 

「そりゃ、何日も既読スルーされたら心配もするよ」

 

メッセージ返さないとって思っても気力が出なくて返せずにいたんだっけ。

 

「入っても大丈夫?」

 

「……うん」

 

結月くんを部屋に案内して、二人で座布団に座る。

 

「それで?バンドで何があったの?立希ちゃんは話をふっても話を逸らすし」

 

私は結月くんの目を見られずに、下を向いたまま話し始めた。

 

「そよちゃんが、CRYCHICのためにバンド利用してたって……そしたら、愛音ちゃんもいなくなっちゃって。みんな……ばらばらになっちゃって」

 

ちゃんと説明できた自信なんてなかった。でも、結月くんは静かに私の話を聞いてくれた。

 

「一生バンドやるって約束したのに……そよちゃんか、愛音ちゃんか、楽奈ちゃんなんて選べなくて」

 

「何かをするって凄い難しいことだよね。考えたり、選んだり、傷つくこともある」

 

傷つく……そうだ、私が何かしようとすると、みんなを傷つけて、自分も傷ついて。

 

「だから、ずっと一緒にいるためにはさ、お互い傷つけあって、寄り添いあって……そういう温かいことだけじゃないんだと思う」

 

一緒にいるなら……お互いに、傷つけあう……じゃあどうしたら。

 

『俺は燈ちゃんと一緒にいたいから一緒にいるんだよ』

 

――そっか、お互いに話して、傷ついて……それでも一緒にいたいから頑張るんだ。

 

「燈ちゃんはどうしたい?」

 

私は……私は。

 

「みんなと、一緒にバンドしたい!そよちゃんも愛音ちゃんも楽奈ちゃんもみんなとバンドしたい!」

 

「じゃあさ、誰かを傷つけるかもしれない、俺らが傷つくかもしれないけど……もうちょい頑張ってみようよ」

 

私は力強く頷いた。きっと、まだ出来ることがあるから。

 

***

 

俺はバンドメンバーじゃないし、余計なお世話かもしれない。だけど、友達が頑張ろうとしてるんだから、できる限りのことをしよう。

今回は何も遠慮することはないんだから。

 

正直、燈ちゃんがやる気になった今、あんまり心配はしていない。

そよさんは……優しい人だから。

 

「結月くん。急にメッセージくれたけどどうしたの?」

 

羽沢珈琲で愛音ちゃんを待っていると、いつも通り明るく挨拶をしてくる。

 

「バンドのこと聞いたよ。今やばいんだって?」

 

「あー」

 

早速話題に入ると、愛音ちゃんは気まずそうに視線を逸らした。

 

「話聞いたんだ」

 

「燈ちゃんから大体のことは聞いたよ」

 

「じゃあ、知ってるでしょ私いらないんだって」

 

そう言いながら愛音ちゃんは自分の指を撫でる。

 

「燈ちゃんが愛音ちゃん誘ったら断られちゃったって悩んでたよ」

 

もうやる気ないんだって、今日会うまでは思ってたけど、全くそんなことないじゃん。

 

「私、そんな本気でバンドしてたわけじゃないし。あっちはあっちでやれば――」

 

俺はそれを遮るように愛音ちゃんの手を握った。

 

「そんなの嘘。だったら、こんなになるまでギターの練習しないでしょ」

 

指には絆創膏が貼ってあって、指の皮も固くなって……練習してなきゃこんな風にはならない。

 

「こんなの、気分だよ気分。まだバンドやるかもしれないし」

 

そんな軽いモチベーションでそんな練習は出来ない。

必死に練習をしてたから分かる。

 

「じゃあ、それでもいいよ。愛音ちゃんがなんで意地になってるか分からないけど。ギターの練習手伝ってあげるよ」

 

「結月くんって優しいと思ったけど、結構意地悪なんだね」

 

「いいや、今回はやりたいことをやってるだけだよ」

 

愛音ちゃんが張ってる意地がいつなくなるか分からないけど、次のライブの時にきっと役に経つ。

 

―――

 

「え?ライブ?」

 

RiNGで受付をしてたら、燈ちゃんが一人でライブの予約をしに来た。

 

いつもの歌詞のノートを手に持って。

 

「やる気なんだね」

 

燈ちゃんの目を見ると、こくりと頷いた。

 

「凛々子さん、スケジュールでソロ入れられるタイミングありますかね」

 

―――

 

「え、燈が?」

 

俺がライブのことを話すと、コーヒーを淹れる手が来るってお湯を零していた。

 

「結月なんで止めなかったわけ!?」

 

胸ぐらを掴むくらいの勢いで距離を詰められる。

 

「それが燈ちゃんのしたいことだし、俺もそうすればいいと思ったから」

 

そう言い返すと、舌打ちしながら作業に戻った。

 

「行かなくてもいいの?」

 

「……どんな顔して会えばいいんだよ」

 

―――

 

「楽奈ちゃんやっぱりここにいた」

 

Spaceのあった夜の駐車場で猫集会を開いてる、楽奈ちゃんを見つけた。

 

「バンド、やらないの?」

 

「バラバラで、つまんなくなった」

 

俺は楽奈ちゃんの横に座って猫を撫で回す。

 

「それならさ、めっちゃ面白い女の子がライブやるけど?」

 

スケジュールに高松燈って書いてあるのを見て、ピクリと肩を動かした。

 

「じゃ、俺は帰るから」

 

「やっぱり、おもしれーやつ」

 

―――

 

「疲れた……」

 

紬が淹れてくれた紅茶を口に運びながら椅子にもたれ掛かる。

 

「終わったの?」

 

「やれることはやったかな。これで元に戻らないなら仕方ない」

 

でも、きっと大丈夫。燈ちゃんの声はみんなに届くと思う。

 

だって、燈ちゃんの歌は心の叫びだから。

 

「紬も大変だったでしょ。そよさんのこと」

 

「……うん」

 

俺の隣に座った紬は肩に頭を預けた。

 

「俺も……久しぶりの演奏気合い入れないとな」

 

―――

 

「緊張してる?」

 

「結月くんと二人のライブ……楽しみ」

 

顔を強ばらせながらも口角を上げて俺に微笑みかけてくれた。

 

ライブが始まって、燈ちゃんのポエムリーディングが会場に響き渡る。

 

俺は、軽いメロディを流しつつ、燈ちゃんの邪魔をしないように演奏をした。

 

燈ちゃんの気持ちが伝わってくる。

どうしたらいいのか分からない。だけど、一緒にいて欲しい。この気持ちが届いて欲しいって。

 

ライブが終わって控え室にいくと、楽奈ちゃんが抹茶コロネを食べながら座ってた。

 

「ね?言ったでしょ?」

 

俺が楽奈ちゃんの正面に座ると、嬉しそうに笑う。

 

「おもしれー女の子」

 

「じゃあ、あとはよろしくね」

 




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