二人だけの音 〜重ならない旋律が響くとき〜 【完結】   作:Tmouris_

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閉じこもってしまったモーティスにどう寄り添っていくのでしょうか。


第47話:CRYCHIC

翌日の朝、学校の支度が終わったころにインターホンの音が鳴る。

 

(こんな時間に誰だろう?)

 

玄関の扉を開けると、そこには祥子ちゃんがいた。

 

「……どうしたの」

 

「睦に会って話がしたいんですわ」

 

祥子ちゃん、向き合う決心がついたんだ。

それは、嬉しくもあったけど、少し悲しくもあった。

 

祥子ちゃんが向き合おうとしているのは、きっと睦ちゃんで……モーティスじゃないんだろうな。

 

「ダイニングで待っててよ。モーティスに聞いてみるから」

 

祥子ちゃんをダイニングに案内して、俺はモーティスの部屋に入る。

 

「お兄ちゃん、誰が来たの」

 

「祥子ちゃん。睦ちゃんに会って話がしたいんだって」

 

そう言うと、すぐさま顔をぷいっと反らして、モーティスはむくれてしまう。

 

「嫌!祥子ちゃん睦ちゃん傷つけるもん。祥子ちゃんになんて会いたくない」

 

「そっか、分かったよ。伝えておく」

 

ドアを閉めて、祥子ちゃんと向き合うように椅子に座る。

 

「会いたくないって。ずいぶんと嫌われちゃったみたい」

 

「当然、ですわ……」

 

俺は時計を見て、まだ学校に行くまでは余裕があることを確認する。

 

「これからも別に朝でも放課後でも来てもいいよ」

 

「いいんですの?わたくし、睦を傷つけてしまったのに……」

 

怒っていなかったといえば嘘になる。

実際に祥子ちゃんに傷つけられて睦ちゃんと紬は眠ってしまうほど傷ついたし。

 

「別に、祥子ちゃんのせいってだけじゃないでしょ。ただ、学校にはちゃんと行くことと、家にはちゃんと帰ることだけ約束して」

 

「わかりました」

 

―――

 

それから祥子ちゃんは何日もうちを訪れて、モーティスに出会える日を待った。

 

だけど、ある日の夜。バタンと勢いよくモーティスの部屋のドアが開けられた。

 

「祥……!」

 

呼吸が浅い。おそらく、睦ちゃんが部屋から出てきた。

 

祥子ちゃんも椅子から立ち上がって、ゆっくりと睦ちゃんに歩み寄る。

そして、二人の手が重なろうとした瞬間。

 

「触らないで!」

 

モーティスは差し出された祥子ちゃんの手をはたき落とす。

 

「睦……」

 

「違う!私は!」

 

睦と呼ばれたモーティスは何かに酷く怯えているようだった。

 

しかし、祥子ちゃんはモーティスをそっと抱き寄せる。

 

「よかった……やっと!やっと!元に戻せるのなら私なんでも致しますわ」

 

そう言われると、モーティスは祥子ちゃんを突き放した。そして、そのまま部屋の中に戻っていった。

 

なんて残酷なんだろう。祥子ちゃんは睦ちゃんを大事に思ってる。元に戻すってことは……

――モーティスはいなくなっても構わないってことなんだろうか。

 

―――

 

少しベースを触って紅茶を飲んでいると玄関先から声が聞こえてくる。

 

祥子ちゃんと……誰だろ?

 

玄関を開けると、そこには祥子ちゃんと立希ちゃん、そよさんの三人が何かを話していた。

 

「というか、mygoって今日ライブ当日じゃなかったっけ……?」

 

「睦と祥子のことでみんな集中出来てない。だから、話に来た」

 

なるほど、立希ちゃんもなんだかんだ心配してくれてるんだ。

 

「ここじゃあれだし、中入んなよ」

 

三人を家の中に招き入れて、ダイニングで話を進めることにした。

 

「愛音から連絡来てる。返事しといて」

 

「自分でしたら?」

 

「あ〜俺がしとくよ」

 

俺はスマホを取りだして、mygoのグループに『今立て込み中』とだけメッセージを送った。

 

『リハまでには絶対に来て!』

 

まぁ、普段から練習しろ、遅刻するなって怒られてる愛音ちゃんからしたらこうも言いたくなるか。

 

「ここまで来たらほっとけないでしょ。解散したけどメンバーだったし……睦はどう思ってたか知らないけど。バンド楽しくなかったみたいだから」

 

それを聞いて、俺はズキっと心が痛む。

あの時、自分の気持ちで精一杯で睦ちゃんのことを責めてしまったことを思い出す。

 

「口にした言葉が全て真実とは限りませんわ……特に睦は己の失言を責めていましたもの」

 

……さすが祥子ちゃん。睦ちゃんのことをよく見ていたんだな。

 

「じゃあ、なんであんなこと」

 

「楽しくなかったのは睦自身がギターの演奏に納得できていなかったから」

 

謳わせたい。自分はギターを謳わせられてないってずっと言ってた。

 

「――睦はCRYCHICを大切に思っていましたわ」

 

そこまで言うと、モーティスの部屋がカチャリと開いた。

 

「睦ちゃんに会わせてあげる」

 

―――

 

「祥、傷ついてない……?」

 

祥子ちゃんはそれを聞いて睦ちゃんに謝った。

 

「立希、そよ……結月くん。ごめんなさいバンドめちゃくちゃにして。ギター下手で」

 

俺たち三人にも謝罪をして、最後に俺の方を見つめてきて目が合う。

 

「結月くん……嫌いになってない?」

 

「俺は睦ちゃん大好きだよ」

 

「……燈にも謝りたい」

 

直後、立希ちゃんの電話が鳴り。愛音ちゃんから「ライブちゃんとやるんじゃなかったのー!」とお叱りを受けて俺たちはRiNGに向かった。

 

スタジオにみんなで集まると、燈ちゃんがスっと歌詞ノートを祥子ちゃんに手渡した。

 

そこには『人間になりたいうた』が書かれていた。

でも、歌詞の内容は前と変わってて……

 

そこで、気を利かせた愛音ちゃんが睦ちゃんにギターを手渡す。

 

「楽奈ちゃんどっか行っちゃったし。ステージ使えば?」

 

―――

 

俺と燈ちゃんと立希ちゃんとそよちゃん……そして睦ちゃんに祥子ちゃん。

すっごく時間はかかっちゃったけど、話し合うこともなく、みんな事情も分からなく解散したCRYCHICはもう一度ステージの上に集まった。

 

人間になりたいうた……そこには色んな感情が込められていて、燈ちゃんの想い。それだけじゃない、祥子ちゃんのことmygoのこと……

 

そして、演奏が終わった。燈ちゃんが俺たちの方を振り向いて、涙を流す。

 

「CRYCHIC!くらいしっく……やれて良かった」

 

俺もみんなにつられて思わず涙が溢れてくる。

 

「もう一曲いいですか!」

 

立希ちゃんの言葉に反応して、祥子ちゃんは涙を流したまま俺たちを見渡した。

 

CRYCHICの曲……そんなのあの曲しかない。

 

――春日影

 

ずっと、心に残ってた。

ありのままの自分でいられて、燈ちゃんと睦ちゃんと隣に並んでバンド出来て……

 

きっと、CRYCHICはこれで最後……だけど、俺たちの心には残り続ける。

 

―――

 

ステージをあとに俺と睦ちゃんと祥子ちゃんで帰ろうとすると、海鈴さんが机に腰をかけて待っていた。

 

「私とも元鞘に戻りませんか」

 




オリジナリティを出そうと頑張って見たのですが、この話だけは原作が強すぎてほとんど原作によってしまいました……
スルーしようにもスルーできない回なのでお付き合いありがとうございます。
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