HUGっと!プリキュア~"雷光”と"真珠星”~ 作:やままん
昔々、ある所に1人の男の子がいました。
その男の子はとても変わっていました。いつも寝ていて、時間になったら帰る。ご飯はたくさん食べるし、やりたくない事は絶対にしない。
でも、これだけは違った。
それは…「仲間を傷付けるものは絶対に許さない事」。
どんなに打ちのめされても、死にそうになっても、いつもボロボロになりながらでも、その仲間の涙を拭おうと何度だって立ち上がる。
そしてその男の子の周りには、「明日に満ちたエネルギー」が満ち溢れていた。本人は何も知らない。だけど、他の人から見ればそのエネルギーは勇気を与えてくれるもの。
そして、こう呼ぶ人がいる。
「私達の道を切り開く為に前に進む人。進んで進んで…最後には背中を押す人」と。
仲間の窮地に、雷と共にやってくるその男の子。
自分の明日とか、世界の明日になんて興味はない。たたただ、仲間の明日を照らす雷のような人。
だから、みんな付いていこうとする。その背中を見て。
けど、男の子はそれをとても嫌がる。そして、決まってこう言うんだ。
「オレは“英雄"なんかにゃなりたくねェ。窮屈だ」っと。
――仲間達はそれを聞いて、不思議と笑ってしまう。“英雄"になりたくないくせになんで“英雄"のような事をするのか…っと。
そして、こう答える。
「"仲間"だからに決まってるからだろ?」っと。
―――そして、11年前。
男の子は“仲間"の為に黒い渦の中に消えた。
こう、言い残して。
「大丈夫、オレが何とかするっ」
……………世界は真っ暗闇だ。
みんな、明日を諦めてこの“永遠"を生きようとしている。けど、私は“永遠"なんて認めない。要らない。煌めく明日がそこになくとも、その為に必死になれる"未来"の方がずっと素敵だからだ。
貴方は今、どこで何をしているの?。
あれから皆、貴方を待っている。けど、貴方は戻って来ない。あれからもう、11年も経ってしまった。でも信じているよ。みんな、貴方が帰って来る事を。
そう…雷と共にまた私達の所に帰って来ると。
―――11年前のあの日、私達“プリキュア"は。
――“敗北"した。
……………………………………………
「今日も1日、頑張ろう。」
…そう言って、私は一枚の写真を見る。
私の名前は暁ハルカ。自分に自信が無く、そして自分の事が世界で一番嫌いな中学生。
この写真に映るものは、かつて"プリキュア"と呼ばれた戦士の写真。もう、“この世界"では名を忘れかけられている存在。因みに、この名前を口に出すといけない風習となっている。それは……。
「…サイレン…そっか、「クライアス社」の出社時間なんだね。」
街に響くサイレンの音。そう、この街に聳え立つ巨大な企業「クライアス社」への出社を指示するサイレンだ。
この世界に“時間"という概念は存在しない。いや、消えてしまったんだ…11年前に。私が4歳の時に、この世界は真っ暗闇になってしまった。そこから、この会社が世界の全てを動かす権利を持っている。学校も何もかも、クライアス社が決めた所に行く。私もそうだ、今は中学3年生だけど卒業したらクライアス社付属の高校に行く事が決められている。受験勉強も何もしなくていい。ただ、淡々と決められたレールの上を進むだけ。そして、その先はクライアス社への入社…この会社の社訓は“永遠"という幸福だという。何の意味かさっぱり分からないけど、時間を取りあげられたこの世界そのものが“永遠“だとすれば、それはこの上ない“幸運"に巡り会えてると言いたいんだろう。そう、今のこの世界を作り上げたのはクライアス社なのだから。
でも、私は…そんなのは嫌だ。ちっぽけな私がいくら叫んでも変わることがないのは分かってる。けど…"あの人"達が居ればきっと…変わるはずだから。11年前、私を助けてくれた人達…イジメに遭ってもここまで耐えられたのはあの人達という存在があったからだ。そして、私はあの人に…お礼を言いたいんだ。
"雷を纏いながら、拳で戦うあの男の人"に。
そう、思っていたその時……。
…ぎゅ〜……。
「えっ……何、今の……?。」
何処からともなく聞こえる赤ちゃんの声。
は……ゅ〜…。
「赤ちゃんの……声……?。」
は〜〜っぎゅ〜〜ッ!!。
――――――――
世界に響く赤ん坊の声。
この声から全てが動き出す――
HUGっと!プリキュア~"雷光”と"真珠星”~
始まります。