HUGっと!プリキュア~"雷光”と"真珠星”~   作:やままん

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1話 雷光のキュアブリッツ

 

……………………………

 

――6人の戦士達の前に居るのは、本を片手に空を見上げる1人の男。

全員が地に平伏し、今まさに世界の崩壊を待つだけであった。

 

 

「もう手遅れだ。"時の崩壊"は始まり、世界は間も無く停止する。受け入れるんだ、"永遠"を。」

 

 

本を閉じ、全てを終わらせるかのように儚い顔をしながら、男は戦士達に歩み寄る。

 

 

「どーだっていいんだよ世界の事なんて。ただ、オレが気に食わねェのは…!。」

 

 

震える足取りで立ち上がり、額を流れる血を拭って拳を握り締める。

その後ろには敗北をを悟り、絶望感に打ちひしがれる仲間達。

 

 

「トーカ…!。」

 

「お前が仲間を泣かしたことだ!。」

 

 

もう、動けるはずがない。男は少しばかり、驚く。この絶望的な状況でもまだ挫けていない事に。そして、その“理由"に。

 

 

「あかんッ!何しとるんやッ!戻れッ!。」

 

「まさか……ッ!?。」

 

「データ解析……ッ…いけません、あの渦は…!。」

 

「嫌なのです燈火先輩!ここはみんなの力を合わせれば…!。」

 

「そうだよ…1人だけカッコつけて……ッ!。」

 

 

「お前らァアアアアッッ!。」

 

 

空に現れた漆黒の渦の前、満身創痍な少年は涙を流しながらも立ち上がろうとする仲間達に目を向けて。

 

 

「大丈夫、オレが何とかしてやる。だから…"またな"?。」

 

 

笑いながら、その中へと消えていった……。

 

 

………………………………

 

 

ジリリリリリリ。

 

何の変哲もない朝。部屋の中に響くけたたましい目覚ましの音。

少年… 来嶋燈火は目を覚ます。

 

 

「うーん…もう朝か…まだ眠ィな…。」

 

 

未だ、頭が覚めてない燈火はゆっくりと身体を起こして洗面台へと向かう。冷たい水が顔に触れ、眠気が徐々に覚めていく。制服に着替え、両頬を叩いて気合を入れて。

 

 

「うしッ!行くかッ!。」

 

 

勢い良く、飛び出したのはいいものの…外は滝のような雨が降り注いでいた。少し歩くだけでずぶ濡れになる程にまで激しく…そう、本日の天気は大雨。一日中降り続ける警報級の雨だ。一瞬、思考が止まりどうしようかと悩んでいると…。

 

 

「電話?。こんな朝っぱらから誰だ?。」

 

 

ポケットの中でスマホが震える。ディスプレイに表示されたのは「野々はな」と表示されていた。そう、ついこの間転校して来た女の子だ。

燈火は彼女の事を知っていた。何せ、小学時代に同じクラスメイトだったからだ。地区の関係で別々の中学校となっていたがつい先日にここ、「ラヴァニール学園」に転校してきたのだ。

 

その再会は彼女の前髪がおかしな事に気付いて大爆笑してしまったせいで、よく目を合わせるとお互いに気付いた…と言った所だ。昔馴染みということもあり、連絡先を交換してはたまにこうして電話をしてくる。

 

そして、電話に出る燈火。

 

 

(あれ、今日はちゃんと充電してたんだね?おはよ。)

 

「おはよう。んで、何だ?。」

 

(何だ…って…トーカの事だから学校行こうとしてるんじゃないかなって。連絡網、見てないでしょ?。)

 

「連絡網ぅ?。」

 

 

言われるがままに、スマホのディスプレイに表示された通知を見る。グループチャットを開くと、「本日は大雨洪水警報が発令されている為、休校とします」とかかれていた。

 

 

「休校ォ!?。嘘だろ、起き損じゃんッ!。」

 

(起き損って…昨日、ホームルームで先生が言ってたでしょ?。天候次第では休校になる可能性があるから、連絡網を見るようにって。話聞かずに帰っちゃうからそうなるんだよ。)

 

「むぅう…って事は今日は休みかッ!。よっしゃ、もう一回寝ようッ!。」

 

(折角起きたんだから勿体無いよ…でも、ちゃんと家に居るんだよ?。)

 

「オメェはオレの母ちゃんかッ!。まぁでも、オメェの言うことも一理あるな…うん、行くぞ!。」

 

(…へっ?「行くぞ」?。)

 

 

電話越しに、はなは彼が言った一言に小首を傾げる。

嫌な予感しかしない…そう思った矢先、その予感は的中する。

 

 

「“キュアエール"を探しにだよ!。こんな土砂降りなんだ、困ってる奴の所に現れるかもしんねェだろ?。」

 

 

“キュアエール"。

巷で噂となっている謎のヒーローでありここ、“のびのび町"で度々起きる「謎の怪物騒動」の解決に一役を担っている有名人である。

 

燈火はその人物に会おうと、放課後によく出掛けている。

その名前を聞いたはなは何故か…しどろもどろとなって。

 

 

(うぇえッ!?な、何でキュアエールを探しに!?。こんな雨だよ!?きっと現れっこ無いって!。)

 

「なんで?。」

 

(何でって……ト、トーカこそどうしてそこまでキュアエールに会いたいの?。)

 

「えっ?そりゃ友達になる為に決まってんだろ。」

 

(と、友達…!?。)

 

「そうだ!ヒーローと友達なんてそうそう居ねェだろ!?。そう言うわけで、オメェも暇だ。今からそっち行くから支度してろよ?そんじゃ!。」

 

 

ブツッと、勢い良く電話が切れる。そしていつの間にか、彼の日課である「キュアエール探し」に参加させられる事になったはな。

それよりも、彼女は戸惑う。

 

 

「…参ったなぁ…トーカ、ノリノリだし…どうしよ……。」

 

 

そう呟きながら、机の上を見る。そこに置かれているのはピンク色の宝石と、ハート型の端末。

 

 

(…いっそ、"変身"して前に出たらそれで済むかな…いや、ダメダメ!私は何処に行った?ってなるし…うわわわ…面倒な事になったなぁ…。)

 

 

そんな事を考えながら、あたふたしていると電話が掛かってくる。

 

 

「えっ!?もう来たのッ!?うぅ…あぁ、もうッ!どうにでもなっちゃえッ!。」

 

 

考え付かなくなったのか、机の上に置いていた宝石とハート型の端末をカバンに入れて勢いよく部屋を飛び出すはな。何を隠そう、彼女こそが「キュアエール」。しかし、正体については他言無用と、覚醒時に現れた「ハリハム・ハリー」にそう言われている。それは家族にも同様で、彼女が正体を明かすことは御法度である。故に、クラスメイトのこの行動にも慎重にならなくてはならない。自分が「キュアエールです」と名乗るわけにはいかない。兎に角、彼が諦めるまで何としてもこの秘密を守り通す必要がある。

 

 

(…そもそも、何で喋っちゃいけないんだっけ?。ああ、もういいや…とりあえず、トーカの気が済むまで何とか持ち堪えよう…お願いだから今日は出てこないでー…!。)

 

 

……………………………………………。

 

「大量の"アスパワワ"が検出された?。」

 

 

とある場所。

そこに佇む巨大なビル。この周りには"何もない"…いや、まるで時が止まったかのようにとても静寂な場所だ。そして、そこに数名の“社員"がいる。1人の少女が"上司"と思われる男性に報告書のようものを提出すしながら"アスパワワ"と呼ばれるエネルギーについて説明する。

 

 

「はい。ほんの一瞬ですが、まるで一箇所に集めるかのように爆発的に増えた場所があります。」

 

「ふーん…ここ、例の"プリキュア"がいる街でしょう?。」

 

「ちょうどいいじゃないッスか。その"プリキュア"を始末するついでに調べてくるってのも。一石二鳥、昇格待った無しじゃん!。オレちゃんに任せてくださいよ!。」

 

「……………。」

 

 

その中でも一際、異彩を放つ人物に全員が"出撃"を申し出る。「社長秘書」の役職を持つ人物だ。各社員に目を向けた後、"出撃"する人物を決める。

 

 

「既に"ボス"への稟議を提出済みですし、今回はそのデータ取りを優先すべきでしょう。頼めますね、「ルールー」?。」

 

 

「ルールー」と呼ばれた少女に目を向けると、彼女は頭を下げて。

 

 

「はい。では、早速出撃致します。」

 

「…へぇ、昇進に興味が無いくせして意外と抜け目がないじゃん?。」

 

 

真っ先に出撃を申し出た青年「チャラリート」は悪態を突くかのように彼女に絡む。しかし、無機質な彼女はそれを気にも留めない。

 

 

「今回はデータ取りと言うことで私が適任と判断したまでです。既に"プリキュア"と交戦済みの"係長"の実績とは程遠いと。」

 

「…ま、何でもいいけど!じゃ、頑張ってねー…"バイト"君?。」

 

(…この大量の"アスパワワ"…これ程にまで希望に満ち溢れた者がいると言うのか…この目で確かめる必要がある。)

 

 

……………………………………………。

 

「はぁあ…居ねェな。ま、こんな雨の中で外出る奴もそんなに居ねェか。」

 

 

"キュアエール"捜索から3時間。公園で休憩しながら燈火は成果が得られない事で半ば、諦め掛けていた。

 

 

(よし、このままやり過ごせば何とかなりそう!。)

 

「ヒーローってのは本当にいたんだな。」

 

「何?トーカってば、ヒーローに憧れてるの?。」

 

「違ェよ。ただ、そいつがどう思って怪物退治をしてんのか知りたいだけさ。だってほら、自分が死ぬかもしんねェだろ?なのに、なんでそこまで頑張んのかなって。」

 

「…理由なんて、無いと思うよ?。ただ…誰かの幸せを奪おうとするのが許せないだけ…そうだと思うよ。」

 

「そっか?。ま、損得勘定で動くヒーローってのはカッコ悪いよな。でも…なんでオメェが分かるんだよ?。」

 

 

ギクっと、はなは肩を震わせる。普段は何も考えてないような本能で生きてるようなものなのにこう言う時だけ痛い所を突いてくる。慌てながらでも、何とか言葉を出そうと振り絞る。

 

 

「そそそ、そんなのトーカが今言った通りじゃない!?。損得勘定で動くヒーローなんてカッコ悪いというか!?。」

 

「ふーん…そりゃそうか!よし、ここで切り上げて飯食いに行くかッ!。」

 

(はぁああ…やっと、諦めてくれたぁ…うんうん、このまま何もなければ……。)

 

 

安堵した表情でやり過ごしたと確信したはな。しかし、現実はそこまで甘くはなかった。自分達のすぐ近くで木々が薙ぎ倒される音が響き、その視線の先には…。

 

 

「オシマイダー…。」

 

(ぁ……終わった………。)

 

 

巨大なシャベルアームを振り翳した怪物がこちらにやってくる。でも、自分に置かれた状況よりも気になることがある。

 

 

(え…こっちに向かってくる…?。)

 

「な…なんだありゃ!怪物が出たのか!?って事は、キュアエールが…!。」

 

「そんな事、言ってる場合じゃない!逃げてトーカ!。」

 

「逃げろっつったって…オメェはどうすんだ!?。」

 

「わ…私は……!。」

 

 

意を決した彼女はカバンの中に手を入れる。自分の正体がバレる事よりも、重要な事がある。ここで躊躇してしまえば、彼を傷つける事になる。そして、さっき言った通り「誰かの幸せを奪う事が許せない」。目的なんて分からないが、恐らく自分だろう…ここで逃げ回る方が彼を傷付けてしまう。そんなの…「イケてる自分」じゃない。だったら…!。

 

 

「――オメェが逃げろ。」

 

「えっ…何言って…!?。」

 

「あの怪物の気を引きゃ、街が滅茶苦茶になるのは防げる。だったら、オレが粘るからオメェは逃げろ。その間にきっと、キュアエールが来てくれるはずだ。大丈夫、オレが何とかする!。」

 

「っ…だから、その"キュアエール"は私が…――。」

 

「うおおおおお!!。」 

 

 

話を全く聞かずに怪物に向かって走り出す燈火。武器も何もない…ただ、拳を固めて突撃する。その様子を影から見つめるのは「ルールー」。

 

(…理解不能です。何の力も持たないただの人間が"オシマイダー"に敵うはずが……。)

 

 

ただの人間の無謀な行動。

そう思うルールーだが、頭の中で計測している「数値」が異常値を示す。

 

 

(…大量の"アスパワワ"が彼に集中している!?。まさか、検出されたあの異常はもしかして…!。)

 

 

走り出す燈火の周りに淡い光が集まり出す。それはやがて、視認出来る規模にまで達しはなの目にもしっかりと見えていた。

 

 

(何これ!?。トーカの周りに光が!。)

 

「お前をぶっ飛ばすッ!!。」

 

 

ガンッと、鈍い音が響く。怪物「オシマイダー」のシャベルに拳が当たった音だ。当然、そんなものが効くはずもなく…誰もがそう思っていた。

 

その直後、突然空が暗くなる。雨音がより激しくなり、時間が止まったかのように全てが遅くなる。

 

そして…“雷"が彼に向かって落ちる。

 

 

「ト…トーカ!?。」

 

(…膨大なエネルギーを検知…まさか……!。)

 

 

周囲に迸る電気。彼の手には、青と黄色の宝石。そして、雷の形をしたアイテムが握り締められていて。

 

 

("ミライクリスタル"!?。まさか…2人目の…!?。)

 

 

……………………………。

 

「…えらい近くに雷が落ちたな……。」

 

 

赤ん坊を抱く1人の青年。そして、その赤ん坊は…“笑う"。

 

……………………………。

 

「何だかよく分からねェがこれ、使えって事だろ!?。頭ん中で囁いて来るから分かるッ!。」

 

 

自身の手に握られている「ミライクリスタル」を雷型のアイテムを開いてその中心に嵌め込む。そして…。

 

 

「ミライクリスタル!。えーっと…なんでもいいッ!。」

 

 

また、雷が彼に落ちる。紫電を振り払い、そこに現れたのは…。

 

 

「暗い明日をぶっ飛ばすッ!雷のプリキュア、キュアブリッツッ!。」

 

 

明日を照らす"雷光"のプリキュア、爆誕―――。

 

 

………to be continued。




次回
2話 "翼"と"雷光"。
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