HUGっと!プリキュア~"雷光”と"真珠星”~ 作:やままん
・何者にも屈しない心と絶望しない気質が具現化したもの。燈火の心と気迫そのものを体現したアイテムであり、変身する前に雷雲を呼び寄せる作用がある。この雷雲は"アスパワワ"に満ち溢れており、相反する"トゲパワワ"の濃度を弱める力がある。
「暗い明日をぶっ飛ばすッ!雷のプリキュア、キュアブリッツッ!。」
「キュア…ブリッツッ!?。トーカが…"プリキュア"にッ!?。」
突然の出来事で頭の整理が追い付かないはな。当の本人は特に気にすることなく、拳を固めて構えを取る。
「何だかよく分かんねェけど変身したッ!。でも、これで化け物と戦えるッ!。」
「ト、トーカ!?。」
(分析開始。新たなプリキュア…"キュアブリッツ"。これは、社に報告しなければ。)
光学迷彩機能を使い、データ収集を行うルールー。その擬態はとても精巧で、2人は彼女の存在に全く気が付かない。しかし、そんな事を気にしている場合ではない。目の前にいる怪物を先ず、どうにかせねば…そう思い、燈火もといキュアブリッツは地面を踏み抜いて一気に飛び出す。
「でりゃあああッッ!。」
拳を固めて殴打。その威力は想像を遥かに超えて、直撃を受けたオシマイダーは公園の木々を薙ぎ倒しながら吹き飛ばされる。
「おぉ…自分でもビックリだ。まるで、弾丸じゃねェか。」
拳を握り締めては力を解くと、バチバチと電流が流れる。確かな手応えに、ブリッツは自信が湧いてくる。しかし、敵もやられっぱなしでは無い。身体を起こすと同時にその巨体から想像もつかないほどのスピードで右腕のシャベルを振り翳して来た。
「やべ…ッ…!。」
両腕をクロスして防ぐも、その重みで地面が陥没するほどの衝撃を受けた。ビリビリと両腕が痺れる…少し、油断した。
「トーカ!。」
「まだいたのか!?良いから逃げろって!。」
その場からの退避を促すブリッツ。しかし、はなはそれに応じない。そして、カバンの中からハート型のアイテムを取り出す。
「私も戦うよ、トーカ!。」
「戦うっつったってお前…!。」
「ごめん、私がその“キュアエール"なの!。」
「ッ…はぁ…ッ!?。」
突然のカミングアウトに呆気に取られるブリッツ。しかし、驚いている暇は無かった。相手は機械の上に怪物だ。その桁違いなパワーでシャベルに力が籠る。
「―行くよ!。」
はなはピンク色の"ミライクリスタル"を手に、ハート型のアイテム「プリハート」を取り出す。
「マジだったのか…!。」
「ミライクリスタル!ハート、キラっと!。」
光に包まれ、その姿を変えていく。
そして――
「輝く未来を抱きしめて!!みんなを応援!元気のプリキュア!キュアエール!。」
ピンク色の衣装に身を包んだ巷のヒーローがそこに現れる。彼女、野々はなこそがその"キュアエール"。ブリッツを援護する為に、自らも突撃を仕掛ける。そして、頭部に打撃を与えてその態勢を崩した。
「おっしゃあああッッ!。」
ほんの少し、力が弱まった隙を逃さない。ガードした態勢のまま両足に電気を走らせ、一気に力を放出。その場を何とか切り抜けた。
「大丈夫!?。キュアブリッツ!。」
「おかげで助かったよ!でもまさか、オメェがそうだったなんてなぁ。教えてくれても良かったじゃん。」
「えっと…これには深い理由がありまして…って、今はそんなこと言ってる場合じゃないよね!?。」
「確かに!。気にしてもしょうがねェ、このバケモンにぶちかましてやるッ!。」
そう言って、勢いをつけてまた走り出したブリッツ。知性のカケラもないその猪突猛進ぶりに、オシマイダーも思わずたじろぐ。
(キュアエールの出現を確認。野々はな…これも、貴重なデータ。)
「どっせぇえええいッッ!。」
無我夢中で振るった拳は右腕のシャベルを一撃で破壊した。
「えぇええッ!?。」
「この町から出ていけよ、この野郎ッ!。」
思いつく限りの攻撃を振い続けるブリッツ。相手に反撃の隙すら与えないその怒涛の攻撃に形成は一気に逆転する。
(…まだここで終わるわけにはいかない。リミッター解除。オシマイダー。)
「オォオオシマイダァアアア!。」
ルールーが指を鳴らすと、オシマイダーの身体から黒いエネルギーが放出。"トゲパワワ"によるものだ。
「何だコイツ、いきなり凶暴になりやがったッ!それに、なんか"チクチク"する…!。」
「"チクチク"?。どういう事?。」
「わかんねェけど、鬱陶しい感覚だ…なんだこりゃ?。」
(…"トゲパワワ"を感じ取っている?。)
妙な感覚に戸惑いながらも、当初の目的を忘れない。
そんな事を気にする余裕もないし、気にしても仕方ない…そう考えを切り替えたブリッツは強化されたオシマイダーに向かっていく。それに続き、エールも並走する。
「何か考えがあるのッ!?。」
「そんなもん無ェよ!ただ、ぶっ飛ばしゃ全部解決だろうがッ!。」
拳に電撃を宿し、飛び上がる。
「10万ボルトッ!サンダージャベリンッッ!!。」
落雷により更なる電力を得たブリッツの手刀が、強化型オシマイダーに直撃する。
その威力は凄まじく、当たった箇所が刃物のように切り裂かれた。
「おお…やってみるもんだな…。」
「今だよ、ブリッツ!。」
「今って…!?。」
「浄化!。オシマイダ―を浄化するのッ!。」
"浄化"と聞くも、ブリッツは小首を傾げる。
"浄化"てなんだ?そんなもん、どうやってやんの?。そんな考えが頭の中でグルグルと過っていく。
そして、選んだ答えは――
「よし分かった!。」
兎に角、走る。「分かった」と言いながら実際はどうしたら良いか全く見当も付かない。とりあえず、殴ってみれば何とかなる…そんな気がして、拳を固める。
「ううりゃあああああッ!。」
固めた拳から、電撃が迸る。体内に蓄積された余剰エネルギーがさらにその勢いを増加させて。
そして……"殴る"。
「うわッ!?そうじゃないって!!。」
「だって、どうすりゃいいか分かんねェよッ!。」
立ち込める砂煙。徐々に晴れると、殴られて大破したオシマイダーがショートを起こしながら爆散。それと同時に"トゲパワワ"が消えていく。
「ど、どうなったの…?。」
理解が全く追い付かないエールは、周囲を見渡す。そして視界に入ったのは…素体にされた作業員の男性だった。
「あれ…俺、何してたんだった…?。」
(……なんだかよく分からないけど、なんとかなった?。それに、今回送り込んできたのは…この間のチャラチャラした人…じゃないよね…。)
心に懸念が残るエールは辺りを見渡すも、オシマイダーを使役する幹部が見当たらない。
それに、今回の襲撃はいつもと違った気がする…そんな気味悪さを覚えながらも破壊された周囲の状況が元通りになるのを待つ。
――
――――
――――――
――――全く、元に戻らない。
そして、辺りからパトカーのサイレンが鳴り響く。
「ヤバイ!。行くよブリッツ!。」
「え、なんで?。」
「きっと、この騒ぎのせいで誰かが警察を呼んじゃったんだよ!。」
「お、おう…分かった。」
(…なんで、元に戻らないの?。オシマイダ―も浄化されてないし……ただ単に壊しただけ?オシマイダ―にされてた人も無理矢理元に戻っただけだったの…?。)
何とかその場から逃げる2人。いくら怪物退治とはいえ、周囲のものを破壊した事にそれなりの罪悪感がある。ここまでの騒ぎになったのだ、只事では済まされない。そして、何よりも……。
………………………………………。
「アホかぁああ!!。」
身を隠すように、何とかはなの家に辿り着いた2人の前に待ち受けていたのは人語を話すハムスターだった。経緯を説明したはなと周囲を破壊した燈火に怒声を浴びせる。
「ご、ごめん!。こんな事になるとは思わなくてぇ!。」
「…………。」
ハムスター…もとい「ハリハム・ハリー」に謝るはなとハリーを凝視する燈火。ジッと見てくる燈火にハリーは、少しばかりが気味悪さを感じながら。
「な…何や…?。」
「………ネズミが喋った!。」
「ズコォオオ!。だ、誰がネズミや!。オレはハリハム・ハリーさんや!。」
「おいはな!世にも珍しい喋るネズミだ!。はぁああ…生きてりゃ色んなモンと巡り会えるんだなぁ!?。」
「おい、話聞いとんのか!?。ネズミちゃう、ハリハム・ハリーさんや!ほら、復唱せえ!。」
「名前が長い、面倒臭い。」
「はぁああ!?。おい、何やコイツ!こない人の話を聞かへん奴がおるんか!?。」
「人?。ネズミだろお前?。そうだな…よし、お前の事は「ネズミン」って呼ぶ!これで文句無ェだろ!?。」
「…もう、好きにしてくれ……ところで、さっきの話はホンマなんやな?。」
帰ってくるなり、燈火を連れてきた事と、今の状況を説明したはなに、ハリーは再度問う。その問いかけにコクリと頷き、落ち着ていて話すことに。
「うん。オシマイダ―が現れて、戦ったまでは良かったんだけど壊れたものが元に戻らなくて…それに、燈火の変身した"キュアブリッツ"…オシマイダ―を浄化する所か破壊しちゃった。これって大丈夫なのかな?。オシマイダ―にされちゃった人が何とも無いといいんだけど……。」
その懸念に、ハリーは「分からない」といった表情をしながら。
「…なんとも言えへんけどその人、目ェ覚ましたんやろ?。」
「まあね。何が起きたか全く分からないって感じだったけど…いつもと違った感じになったからつい逃げてきちゃった。今頃、警察から事情聴取を受けてるんじゃないかな。」
「…せやったら、マズイ事になるで?その人があんさんらをバッチリ見とるんやったら全部話されてまう。それでこそ"キュアエール"が街ぶっ壊した事にされるかもしれへん。」
「うぇえええッ!?嘘、どうなっちゃうの私!?。」
「…ヒーローって言われへんくなるやろうな。」
「めちょっく!!!。」
「…まぁ、そんなことは置いといて…あんさんが新しいプリキュアかいな。さっきの雷、あんさんやったんやな。」
「そうだ!。キュアブリッツだ!。って……プリキュアってなんだ?。」
「あんさんらの変身する戦士の名称や。にしても、おかしいな……はなが覚醒した時は"はぐたん"の力が関係しとったのに、あんさんの場合は反応すらしてへんかった。でも雷が落ちた時、はぐたんは"笑っとった"んや。」
"はぐたん"と呼ばれる眠る赤ん坊に目を向けながら話すハリー。
燈火は徐にその赤ん坊に近付く。
「おい、何しとるんや?。」
「いや、この赤ん坊…前に夢に出てきた気がすんだけどな……。」
「夢?。」
「うーん…気のせいか!。赤ん坊なんて殆ど似たようなもんだしな!。」
そう言って、頭を撫でてやる燈火。すると、ニッコリと笑ってその小さな手を重ねてくる。
「そんで、あの怪物…オシマイダ―だっけ?。それ、仕向けてくる奴らはなんて言うんだ?。」
「"クライアス社"っていう組織や。その組織は"暗い未来"を創るために明日への希望のエネルギー"アスパワワ"を狙ってやって来よる。」
「アスパラ?。」
「"アスパワワ"やッ!。明日への希望に満ちた人間なら誰もが持っている未来へのエネルギーの事や。クライアス社はそのエネルギーを狙って仕掛けてくる。」
「へぇ…じゃ、それが取られちまったらどうなるんだ?。」
「未来が奪われる。時間が止まり、明日が来うへん…そんな真っ暗な未来が待っとるんや。」
「私はそれを止めるためにクライアス社と戦ってるんだ。はぐたんの為でもあるんだけど。」
はなは眠るはぐたんの頬に手を触れ、母親のような眼差しで見つめる。
それは、何としてもこの子を守りたい。そんな強い意志を感じさせて。
そして、それを聞いた燈火は2人の話す話が嘘じゃないと確信する。最も、自分も"プリキュア"として覚醒した以上、疑う理由もないが…。
「だからね、私と一緒に戦って欲しいの!。」
手を差し出すはな。勿論、断られる事を承知の上でお願いした。それもそうだ、化け物と戦う以前に世界を暗闇に包もうと企んでいる組織を相手にする…それは、彼の日常も崩してしまう事になる。それを誘うと言うことはそういうことだ。日常を奪ってしまう事に繋がる。だから、断られても仕方ない…そう思いながら、お願いする。
「いいぞ。」
即答。
あまりにもあっさりとした即答に、誘ったはなが困惑する。
「えっと、いいの!?。怪我しちゃうかもしれないし、トーカの日常だって…!。」
「そんな心配すんなって。別に適当に答えた訳じゃねェよ。断られると思いながらお願いして来たんだろうが。」
「そ、それもそうだけど…。」
「だから「いいぞ」って言ったんだ。それに、お前は友達だ。一緒に戦うなら“仲間"だ。仲間のお願いなら断わらねェ、拒否されてもオレが決めたらそうする。そういうこった、だからよろしくな?。」
差し出された手を逆に握り返す燈火。はなは安堵したのか、満面の笑みを浮かべながら。
「うん、よろしく!。あ、でも自分がプリキュアって名乗っちゃダメだよ?。ハリーからそう言われてるし。」
「おおう、分かった!。」
「………ホンマ、大丈夫かいな…。」
―――"プリキュア"として戦う事を決めた燈火。
これが、運命を大きく動かす。まだ知らない未来、自分達が"敗北"する未来。誰も分からないその未来を変える為に…「その結末」を否定する物語が始まりを迎えた――――
………to be continued。
次回
3話 "天使"、キュアアンジュ。