暴龍の花歌   作:マンコションベン

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第1話

「オラッ腹パン!」

 

「ぎゃはははは」

 

「うわっこいつ睨んでるよ!弱肉強食ってルールに従ってるだけの俺等に激おこじゃん!ウケる」

 

「おおっ!こえっこえーよ、ぼくちゃん震えちゃう!なあ!肉!」

 

「おっだんまりか?!だんまりくんか!おらよっ!」

 

 夜の公園、俺の腹に焼けるような激痛が走る。痛みで転げ回りそうになり、悔しさで魂が削れ、脳には怒りとその怒りを発散してはいけないという警告が響き、その直後空が落ちてきた。

 

なんてことはない。顎を殴られひっくり返っただけだ。

 

 目の前には三人の若い男達。一見チンピラだが、こいつらの言葉の節々から自分がヤクザである事を誇るような言動があるため、おそらくヤクザだろう。

 

 怒りと悔しさと無力感で痺れる脳はどこか俯瞰するかのようにそう答えをだし……その直後更に飛んできた激痛を処理し初めた。

 

 なんてことはない。家に帰ろうとしたら、酔ったコイツラに因縁をつけられ、公園に連れ込まれ、リンチにあっているだけの話だ。

 

 その手際の良さにはこういう事を日常的にやっているのが察せられる、邪悪さがあった。

 

 だがこいつらは勢いと攻撃性が異常だった。

 

 驚くべき事に既に俺の右目と睾丸は潰され、俺はうめき声をあげる事しか出来なかった。

 

 弱り目に祟り目というか悪い事は重なるというか、こいつらの仲間らしきバンが公園の入り口へ到着した。そこから明らかに邪悪な光を目に讃えた連中が出てきた。ああ、殺される。何も考えてない、遊び半分の暴力で。

 

 どうしてこうなった…このありふれた言葉と共に俺は俺の人生を振り返り初めた。

 

 俺の幼少期はそれほど悪いものではなかった。発達障害という人生即ゲームセット級のデバフはあったが、それでも幼少期はそう悪いものでは無かった。

 

 小学校では変人扱いされ、中学では虐められたが、害と言えばその程度だった。

 

 しかし中学2年生で、俺は何をやっても意味も無く何も出来ないという観念に取り憑かれた。そしてそれ以降何もする気も無くただ俺は日々を怠惰に生きていた。

 

 俺は今に至るまで怠惰に生きる事は罪では無いと思っていた。

 

 悪とは言葉か暴力によって他者を傷つける事、奪う事、それが悪であり、それをしなければ善人であると思っていた。

 

 全くの間違いだった。

 

 他人を傷つけ無ければ善だと?他人を傷つけないことなど当たり前、死体にだってできる。

 

 少なくとも俺は怠惰に生きた尻拭いを親を筆頭とする他人に押し付けていた。

 

 俺のようなクズは総じて自分に甘い。それ故に自身の怠惰、それこそ課題を出さない事、言いつけを守らないと言った小さな事がどれだけ周囲に迷惑をかけていたか気づけなかった。

 

 それだけではない、良い高校を出て良い大学に入ればそれだけで社会でやっていく力がつくものだと思っていた。

 

 それ故成人するまで俺は漫画とゲームとスマホと勉強以外本当に何もしていなかった。

 

 全くの間違いだった。

 

 人は一人では生きて生けないと言う言葉がある。この言葉を初めて聞いた時の俺は、中二病真っ盛りだったので、しゃらくせえ甘ったれた言葉だと思っていた。

 

今になって気づく。この言葉の真の意味は、〈一人でいるしかない奴は死ね〉と言うものであると。

 

 人間は社会性生物だ。他者と言葉で連絡しあう事で協力する社会生物だ。それ故コミュニケーション能力が無いやつは人間ではない。

 

 多少勉強ができた程度ではひっくり返せないほど、重度のコミュ障と言うデバフは大きい。

 

 その二つの勘違いにより、怠惰により

 今の俺は〇イジのクズ共、ウシジ〇くんの債務者コースを俺は爆走した。

 

 フリーターやって定職にもつけないまま生活保護受給者になり、愛していてくれた家族からも見捨てられ、家を追い出された。

 

人生における分かりやすいミスも派手な悪事もする事無く、しかしただ怠惰に過ごし続けていた事で俺の人生はクソみてえな経路を辿ったのだ。

 

 

 まあ仕方ない、クズの俺に相応しいクズの末路だ。大人しく受け入れよう……………………………………………………………………………………

 

 ……嫌だ!まだ全然人生を経験できていない!風俗にも生きたかった!もっと美味い物を食いたかった!まともに働きたかったし飲み会にも生きたかった!旅行にも生きたかった!まだ体験してない事が多すぎる!

 

 ふざけんなクソ野郎共が!他者の命も!誇りも!人生も!奪いやがって!いっときの加虐性を満たすためだけに人の人生を消費しやがって!ぶっ殺してやる!何が弱肉強食だ!

 

テメェらヤクザは警察にも自衛隊にも暴力で勝てねえからこそこそこそこそ逃げ回る弱者じゃねえか!弱者が弱肉強食論振りかざしてんじゃねえ!そんなに肉になりてえならお望み通りぶっ殺してやる!

 

 その時声が響いた。明らかに日常的に大声を出してないであろう、酷く震えた、怯えた声が!

 

「申し訳ありません!どうかその人を見逃してくれませんか」

 

 その言葉と共に太った冴えない男が公園に駆け込んできた。

 

「お願いします!ストレス解消の為に傷つける人間がいるのなら僕がサンドバッグとなります!なのでどうか彼は家に返していただけませんか!」

 

俺は素直にこの太った男を素晴らしい人間だと思った。中学の頃いじめを体を張って止めようとしていたB君を思い出した。

 

弱者を守る盾となる、その精神はまさに英雄、ヒーローだ。

 

しかしクソ野郎は何故かヒーローを強く憎む。

 

こっからの流れはご想像の通り。

 

乱入してきた、俺を助けようとしたその男も、嬲られ、嘲られ、奪われ、壊されるお決まりの流れだ。

 

俺と同じように壊されそいつも死に体だ。

 

「おっこいつそろそろ死ぬべ…たっちんスマホ出して…第3回!チキチキ死亡撮影会はじめまーす!」

「エントリー番号三番、たっちん。とどめ、いきます」

「いけドロキ撃てドロキ!」

「ギャハハハ!」

 

 

 その時警察のサイレンが響いた。舌打ちと共に、男達は逃げ出した。

 

去っていく足音の中、声を出すのに慣れてないであろうかすれた声が響く。

 

「あ…あの、そこの方…だ、大丈夫ですか?」

 

瀕死の俺よりも酷い目に遭いながらもその男は俺に声をかけてきた。

 

この人の行動は、無駄に出しゃばり、無駄に殴られ、無駄に殺されるだけの、意味の無い行動だった。

 

 しかし俺にはそうではなかった。

 

 虐められていた時もそうだったが、この世でなによりも辛いのは虐げられている自分を、周りが放置し、誰も助けてくれない事。

 

 世界には自分は要らないと言う結論を無関心と言う金槌で叩きつけられる事。

 

 この人が来なければ俺は無関心と言う地獄の中死ぬはずだった。そう言う運命だった。最悪のバットエンドを迎えるはずだった。

  

 しかし彼の無駄な行動は、その運命を覆した。

 

…そうだ、俺はこうなるべきだったんだ。

 

 他人に害を与えないのではなく、他人に幸福を与える者になるべきだった。

 

命をとして、一人の人生を救い、なお他人を気に掛ける事ができる者になるべきだった。

 

ただ、そんなだいそれた事、根っからのクソ野郎である俺には出来ない。絶対に。だからこそ、死ぬ直前に声をかけた。

 

「ありがと……」

 

 「ごめんなさい…助けられなかった…ごめんなさい…ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

あなたが謝ることじゃないだろと俺は思った。悪いのは奴らだ。

 

 「母さんも…ごめん、俺先に死んじゃう…」

 

 そして、ヒーローは、死んだ。

 

英雄はゴミのように。

 

 ……理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ理不尽だ 

 

 

 

「死にたく……ねえよぉ……」

 

走り去るあいつらのバンを睨みつけた。視線で人が殺せるなら絶対に殺せる程強烈に。

 

 俺とお前ら、同レベルのクズなら同レベルの死に方であるべきだとそう言う思いを込め……そうでなけりゃ理不尽だろうが。

 

そして俺は死んだ。

 

  

気がつくと俺は家に戻っていた。カレンダーの日付を見る 

20XX年9月14日

 

 は…なんだコレ。

辺りを見回すと、そこは俺の部屋だった…中学生の頃の。

 

 

 

 これっていわゆる走馬灯って奴か。

 

 …話は変わるが皆様は天国と地獄の存在についてどう思われるだろうか。

 

 持論だが答えは〈ある〉だ。

 

死ぬ直前で、体感時間が極限まで圧縮され、産まれてから今までの事を振り返るようになるというのはある程度科学的に証明されている。

 

その中で善人は今までの善行を上映され、クズは今までの悪行を放送される。それが賞と罰になるため天国と地獄は存在するのだと思っていた。

 

 ここから俺の、怠惰でほぼ何もしてこなかった、虚無に近い人生が放送されるのだ。それが俺への罰。怠惰という罪への罰、地獄。

 

しかし、走馬灯は始まらなかった。

 

 それだけじゃない、胸が重い

 胸にてをやる。手が沈み柔らかく潜り込む。しかしはっきりとした弾力を持って押し返してくる。

 

「は?」

 

 なんでおっぱいが俺の胸に?

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