暴龍の花歌 作:マンコションベン
インターホンを覗くとそこにいたのは俺の顔面偏差値に匹敵する顔面偏差値を持った絶世の美青年だった。
年齢は20代前半で身長は180程度だろうか。知性と善性と洒脱さをちょうど絶妙な割合でブレンドしアクセントでちょっとの凶暴性を入れたかのような尊顔。
金髪をあの何とも言えないイケメンカットにセットしている。
正統派な勇者様、王子様と言える造形だが、服装はラフにシャツに薄手の服を羽織り、ペンダントをつけるという量産型ファッション。
しかし美形が着ているためアホみたいなこなれ感を出している。
やべぇ、ゴリッゴリの陽キャやん。俺達クソ陰キャの天敵。ヤンキーとは違い
そして奴はやたら耳障りのいい、落ち着いた声で喋り初めた。
「あーすみません。お忙しい所失礼します。ちょっとお話したい事が」
「すみませーん、私達実はこれから予定が入っていまして」
母さんは明らかにこの場にそぐわない雰囲気を持った青年を方便を使って追い返す事にしたようだ。しかし次の瞬間、奴は人好きのする笑みを浮かべ、目には誠実さを讃えながら、口をいたずらっぽく動かした。
「最近、そう具体的に言うと1時間以内に、妙な事は起きてい無いでしょうか。例えば、息子が娘に、それもムチムチボキューンの肉体に妹ボイス搭載した童貞の夢みたいな絶世の美少女になっているとか。更にその彼は約10年先の未来で殺されてからタイムスリップして来たとか。ごめんなさい、それ、僕のせいなんです」
こいつ、こちらの、明らかな、ファンタジーな異常事態を完璧に把握して、俺達にコンタクトを取ろうとしている。
明らかに普通の人間ではない、最高に警戒して向き合わなければいけない相手。そう、警戒しなくてはならない相手なのだ。なのに俺達は、こいつに、好感を抱いてしまっている。
胡散臭い、よく分からない奴なのに、奴の話す言葉、声の一つ一つが、耳から脳へと侵入し、俺達の脳へ絡みつき、好感度と言う概念を直接注入されているかのような不気味さがある。
ああ、そうだ、声があれなんだ。1/fゆらぎだったか。煽動者や先導者が持っているという聞いたものを心地よく感じさせ、高揚させる声だ。それなんだ、こいつの声は。
少し話は変わるが一昔前、《人は見た目が9割》、そういう身も蓋もないタイトルの本があった。しかしそれは間違いである。なぜなら人の印象は、実際は顔だけでなく、声の比重も相当に大きいのだ。
とあるゲームの話だが、神秘的な女神かの様な神々しきラスボスが、ラスボス戦直前になって、社会不適合者の、コミュ障小者ひきこもりというべき本性を全開にするゲームがあった。
プレイした当時はそのどんでん返しに驚いたが、そもそも何故こんな社不適女を女神と勘違いしたのか。そう思った。やはりその神聖を帯びた顔は大きな要因だった。しかしそれ以上に大きかったのは、清楚と憂いを煮詰めたかの様な聖女の様な、声。これだった。これで勘違いしていた。
貴方がたにも今までの人生を思い返して欲しい。アレなやつは声聞けば一発でアレなやつだと分かっただろう。強者は声から強者だと分かっただろう。性格の悪い奴は性格の悪さが声にも出ていただろう
第一印象を強く決めるのは顔だけでない声もだ。
そして奴の声は第一印象を完璧なものにする。
本来警戒すべき場面だったが、母さんも俺も奴を警戒できなかった。まるで10年来の親友かのように感じた。
母さんがインターホンの前で俺に顔を向けた。
「どうする? ■■ 開ける?」
「どうするって……開けるしか無いだろ。奴はこんなよく分からない現象起こした元凶かも知れない。下手にでないと不味い」
そう言って俺は玄関のドアを開けた。
「あの……貴方は」
母さんが言った
美青年が口を開く。
「初めまして、信頼していただいた事にまずは感謝を」
そう言って奴は母さんに深々と頭を下げた。
「そして、初めまして。僕の、妹」
そう言って奴は俺に手を差し出して来た。これが俺と、最強生物の王、龍帝ウルスラグナとの出会いだった。
「ア……ドモ」
いろいろツッコミたかったが陽キャのコンタクトや! 何かすぐ反応しなくては! そう思い、俺は思わず反射的に手を差し出した。
「うん、ありがとう」
「あ、あの……貴方は家の■■がなんだか凄いことになった原因を知っているんですか? いや、さっきの話から考えると元凶ですね……ちょっとお話をお聞かせいただけないでしょうか」
「はい、もちろんです。そのために僕はきたのですから」
そして俺を見て陽キャは言った。
「ごめんね、君が僕の妹になったのは、良かれと思って僕がやったことだったんだ。もし余計なお世話というのなら取り消すよ」
そしてリビングでの話が始まった。
美青年は母さんが持ってきたコーヒーを旨そうに飲み、茶菓子を一瞬で平らげた。俺が言えることじゃねえけどすげえ食欲だな
「さて」
美青年が言った。
「まず■■くん、■■くんのお母様は神を信じるでしょうか」
「「は?」」
「はは、やっぱりそういう反応をなされますよね。その通り、神が、いるかは分かりません。ですがこの世には怪物、魔物、モンスターと呼ばれる者達がいます」「「え?」」
こいつ何電波な事言ってるんだという雰囲気が広がる。
次の瞬間青年の腕が鱗で覆われていく。宝石の美しさと鱗の荒々さを兼ね備えたそれは肘を越えて手首まで行き腕を覆った。そのまま変化は指にまで向かい鋭利極まり無い斬撃の絶対概念を押し込んで作ったかのような爪が顕現する。
「そしてその怪物達の王、最強種として君臨する種族があります」
次は青年の肩口が爆発するかのように膨れ上がっとそこには皮膜を携えた力強い翼が展開される。
「それが僕、及びに■■くんの種族。龍種です」