機動戦士ガンダムGQuuuuuuV《ジークヴァイス》 作:飯炊きめっしー
蒼き亡霊 Part.1
U.C.0079年10月 《サイド3・フラナガン機関地下棟》
午前9時、ブザーが鳴った。
だが、それは“訓練終了”の合図でしかなかった。
本当に終わるかどうかは、少年の気分次第だ。
「てめぇら、舐めてんのかァァァァッ!!」
響き渡る怒声。粉砕された訓練用マネキンの破片が天井にまで飛び散る。
訓練区画の中心、息を切らしながら暴れる少年——ゾルタン・アッカネン。
右眼の義眼は鋭く光り、拳にはまだ熱が残る。訓練服は裂け、足元にはマネキンの残骸が転がっていた。
「またやってるな……」
監視窓の向こう、研究員たちは引きつった顔で呟いた。
「1週間でマネキン16体破壊……あれ、
「そもそもアレは兵器扱いなんだが……まぁ、それも今日で終わりだ」
「え?」
主任のゲオルグ博士が端末を見ながら静かに言う。
「さっき、中佐から通達があった。“投入”だとさ」
◇
「へぇ……やっと俺を
ゾルタンは面談室で足を組みながら鼻で笑った。
義眼が赤く光り、監視カメラのレンズを睨みつける。
向かいに座るゲオルグは、黙って資料端末を操作している。
「お前が飼い殺しにしてると思ってたぜ、博士。何年、ここに閉じ込めてたんだっけ? 俺の人生の何割だ?」
「お前の“制御”には時間が必要だった。だが、もうそれも限界だ。
モナハン中佐が判断を下した。お前を前線に出す」
「中佐が、ねえ……」
ゾルタンは苦笑した。
「“親父殿”が、俺を手放すなんてな。ずいぶんと潮目が変わったもんだ」
「事実、戦況は変化している。シャアとシャリアが前線で突出した成果を挙げ、連邦はニュータイプの脅威を認識した。
……そして我々技術本部は、フラナガン機関の成果を実証する必要に迫られている」
「つまり俺は“データの裏付け”ってわけか。血の通った、歩く証明書」
「なら、証明してみせろ。お前が“結果”で黙らせることができると」
「……望むところだ」
◇
格納庫に案内されたゾルタンの視線が、巨大な影に吸い寄せられる。
「こいつが……俺の“箱”か?」
「gYMS-β。コードネームは──
ゲオルグが語る声には、いつになく誇りが滲んでいた。
「お前のための
それは、静かに佇む白銀の巨体だった。
全身を淡く反射する滑らかな装甲。角張りながらも有機的なフォルム。
──ゾルタンの知るMSのどれとも似つかないそのMSは、自身の義眼と同じ赤い眼をしていた。
「……白いのな。てっきり黒塗りかと思ってたぜ」
「モナハン中佐の指示だ。“お前には白が似合う”と」
ゾルタンは機体の胸元に手を置き、笑った。
「そりゃ皮肉か褒め言葉か……ま、気に入ったよ。
“白で来る”ってのは、派手に汚れる覚悟があるってことだろ?」
◇
《重巡洋艦ネブローズ艦内・ブリーフィングルーム》
壁面のモニターに映し出される宙域マップと、連邦の哨戒拠点群。
その正面に立つのは、ジオン技術本部の政治将校、モナハン・バハロ中佐。
「目標はサイド5外縁部の宙間観測網“アルセス・ノード”。連邦がニュータイプの探知を目的に設置した拠点だ」
「NTの探知? へぇ……連邦もずいぶん神経質になったもんだな」
「我々の“先行者”——シャアとシャリアの戦果が、それほどまでに脅威と映ったのだろう」
「だろうな。オカゲサマで俺も外に出られるってモンだ……首輪付きだがな」
「ジオンはこの戦争の主導権を奪われつつある。だが、フラナガン機関の成果と、技術本部の力が示されれば——まだ、挽回できる」
「……そういう重荷、嫌いじゃないぜ」
ゾルタンは立ち上がり、ニヤリと笑った。
「じゃあアンタに見せてやるよ。ジークヴァイスと、この俺の本気ってヤツをな」