機動戦士ガンダムGQuuuuuuV《ジークヴァイス》 作:飯炊きめっしー
加筆修正が間に合いません…!!
ジークヴァイスと蒼色の不明機。
互いの距離が近づくにつれて、それまでぼんやりとしていた輪郭が鮮明になる。
バイザーゴーグルに、V字アンテナ。
「なるほどな、どこの誰だか知らねぇが……」
見紛う筈もない。即ちそれは──、
「つまり……テメェは、"ガンダム"って事かい!」
ゾルタンの叫びと共に、ジークヴァイスの瞳に鋭く赤い光が灯る。
その刹那。まるでその叫びに応えるかのように、敵機のバイザーが一瞬緑色から赤色へと変化し──
──ッ!?
それは野生動物の勘のようなものだった。
まるで不意に刃物を喉元に突きつけられたかのような死の感触。
もしこの瞬間、咄嗟にシールドを放り投げて機体に急制動をかけていなければ、今頃は盾ではなく機体の方が吹き飛んでいただろうということをゾルタンは本能的に理解した。
だが、そのような状況であっても……否、そのような状況だからこそであろうか。
死に対する恐怖のそれ以上に、ゾルタンは未だかつて感じた事のないような熱い高揚感が、自身の内側から湧き上がってくるのを感じていた。
「……ハハ、面白ぇ。面白ぇよガンダム!! 戦いってのは、こうじゃなくっちゃなァ!!」
シールドの爆発に紛れ、ジークヴァイスは敵機の死角となる斜め下側へと潜り込む──が、その動きをまるで読んでいたかのように敵機が急反転——鋭く回転し、痛烈な蹴りを叩き込む。
激しい衝撃と共にジークヴァイスの左肩装甲がめくれ、警告灯が一斉に赤へと染まる。
「ぅ、がァ……ッ!!」
猛烈な勢いで弾き飛ばされるジークヴァイス。
しかし、常人なら即座に昏倒する程の強烈なGを受けながらも、ゾルタンは即座に機体を反転。急制動をかける。
その眼前にはビームサーベルを抜刀し、今まさにジークヴァイス目掛けて斬りかかろうとしている蒼い
「その首、貰った──ッ!!」
カウンターで放った必殺のビーム。
ゾルタンはその瞬間、"勝ち"を確信していた──。
──ッ!?
しかし、放たれたビームの光は敵機を捉えることなく、虚しく宙を切り、暗黒の宇宙の闇に吸い込まれて行く。
「馬鹿な……ッ!?」
亜光速で放たれたビームは、接近戦の間合いでは絶対に回避不可能な筈だった。
しかしビームが放たれる直前、敵機はまるでその攻撃が来ることを
明らかに物理法則を逸脱したかのような異常な動き。
如何に強化人間のゾルタンであったとしても、同じ機動を行えば、その負担に身体が耐えられないことは明らかであった。
必殺の攻撃を外された事で半ば呆然とするゾルタン。
一方の蒼い機体も突如としてその動きを止め、まるでこちらを観察するかのように、不気味にその場に立ち尽くしていた。
「……お前、何者だ?」
蒼い機体のバイザーが一瞬、赤く光る。
思わず身体を硬直させるゾルタン。
──だが、それだけだった。
ジークヴァイスのセンサーが“揺らぎ”を拾う。敵機の内部で、"何か"が作動しかけたような反応。
しかしそれは起動せず、沈静化した。
ゾルタンの中に、奇妙な感覚が残る。
何かが“反応しなかった”。
何かが“足りなかった”。
「──ッ、俺に興味はもう無ェって、そう言いてぇのか!?」
応答は無い。だが蒼い機体はゾルタンにまるで"そうだ"とでも言わんばかりに踵を返し、スラスターを吹かす。
「待て──ッ、まだ終わってねぇ!!」
追い縋ろうとスラスターを吹かそうとしたゾルタンであったが、アラートを示すピープ音がコクピットに響く。
ゾルタンがモニターに目をやると、先程までの度重なる無茶な回避運動のツケが回ったのか、ジークヴァイスの推進剤の残量表示は深刻な値を示していた。
舌打ちをし、再び蒼い機体を目で追うゾルタン。
しかし、その軌跡は既にステーションの影へと消え、見えなくなっていた。
「くそ……ッ!!」
◇
「おいモナハン……アイツは何者だ」
「知らん──、と言っても信じないだろうな」
自身を睨みつける眼光に一瞥もくれず、モナハンはコーヒーを啜る。
ゾルタンはモナハンの態度に苛立ちを隠すこともせず、軍服の上衣を脱ぎ捨て、ソファーにどっかりと座り込む。
「……チッ、気に食わねぇ。わざわざ俺が駆り出されたってことは、何か"裏"があるんじゃねぇかとは思ってたが」
「"今"は何も言えん。それだけだ」
クソッ──!!
自らの不快感を表すかのように、自室のロッカーを殴るゾルタン。扉は拳の形にひしゃげ、もはや原型を留めていない。
あの時敵機は、明らかに何かを発動しかけていた。
事実、ジークヴァイスのセンサーは局所的なミノフスキー粒子の相反転現象──、その揺らぎを観測していた。
──だが、アイツはまるで"お前では足りない"とでも言うかのように、"何もせず"ただ俺の目の前から消えやがった!!
ゾルタンは黙って拳を握りしめる。
連邦は、奴らに“備えていた”。なのに、自分は——その枠にすら入っていない。
「だったら、超えてやるよ……。俺が、“あれ”を発動させる側になってやる」
ゾルタンは怒りを抑えるように、右手の指を己の額に強く食い込ませる。
そしてその時──、格納庫で整備中だったジークヴァイスの眼が、わずかに赤く揺れた。
その場に居た者で、それに気づいた者は誰も居なかった。