Fate/Bound Chord   作:Kiku_kz

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第1章 ー開戦ー
情報の価値


〜A.M. 7時 阿倍野区 帝塚山 久我邸〜

 

朝の光が帝塚山の洋館を淡く包んでいた。カーテン越しの陽射しは柔らかく、どこか夢の続きのような現実感を遼にもたらしていたが、心は落ち着かないままだった。

昨夜の戦い。正体不明のサーヴァントたち、御堂 継宗(みどう つぐむね)の冷笑、そして、自分ではどうにもならなかった現実――。

 

そんな思いを胸に抱えたまま、白峰 遼(しらみね りょう)久我 朱音(くが あかね)の用意した朝食に手を伸ばす。整えられた食器と香り高い紅茶が、朝の静けさに溶け込んでいた。

そして学校で見慣れたはずなのに、どこか見慣れない制服に袖を通している朱音の横顔。けれどその美しさにさえ、どこか現実味が感じられなかった。

 

…当然だろう。あの戦いから一夜たったとしても、まだ心の整理はつかない。

 

「白峰君、今日は学校はお休みして」

カップを口元に運びながら、唐突に朱音が静かに言った。

 

「御堂の動きも気になるし、下手に外へ出て巻き込まれるわけにはいかないもの」

 

当然のように言われたその一言に、遼は少し驚いたように顔を上げた。

 

「でも、久我は行くんだろ?それって……久我のほうも危ないんじゃ……」

 

「大丈夫よ。私には護身の心得もあるし、それに――向こうも表立っては動けないはず。私が普段通りにしていれば、かえって油断を誘えるわ」

 

朱音の言葉には不思議な説得力があった。

あの戦いの場に乱入してきて余裕そうにした上で遼を助け、この屋敷に連れてきたのだ。

自信があるのだろう。

 

そんな会話を横目にふと、向かいに座るセイバーが静かにカップを置いた。現代の服装に身を包みながらも、背筋はぴんと伸びていて、その姿はどこか神聖さすら帯びている。

 

「安心して。

どんな場所でもどんな状況でも、リョウは私が守る。

だけど今日休暇を取る、というのはいい判断だと思う。心の整理も付けれるだろうし、ね。」

 

セイバーは優しく微笑みながらウィンクをし、そう声に出す。

その声は優しかったが、どこか断言の響きを含んでいた。

 

「……女の子に守られるのって、なんか変な気分だな。」

 

遼はふと漏らすように呟いた。

セイバーは少しだけ目を細めて、まっすぐに彼を見つめた。

 

「少しくらいは慣れておいて。

君は朱音の大切な人なんだから。

……だから、君のことは私がちゃんと守る。大丈夫、信じて」

 

「――は、はぁっ!?」

 

唐突なその言葉に、2人は声を裏返らせた。

 

「いやいや、僕たちは別にそういう関係っていうか、いやまあ確かに助けてもらったけど……でも……!」

 

慌てて言い訳のように口を動かす遼の隣で、朱音も一瞬、動揺したように視線を逸らした。

 

「……セイバー、それはちょっと誤解を招く言い方よ。別に、そういう関係じゃ……ないわよ。」

 

顔を少し赤らめながら、朱音が言う。

だが、セイバーはあくまで平然とした顔で二人を見つめていた。

 

「そう? 私はただ、“信頼している人”を守ると言っただけなんだけど」

 

その返しに、今度は遼と朱音が言葉を失った。言い返せないまま、互いの視線がふとぶつかって、また同時に逸らす。

 

――なんだこの気まずさは。

 

遼は心の中で天を仰ぎながら、手元の紅茶をすすった。

 

「若いねぇ、おふたりさん。」

 

そんな声とともに、青白い光が部屋の一角に瞬き、上は白色のポロシャツ、黒のスキニーパンツに身を包んだランサーの姿がゆっくりと現れる。

 

「安心しな坊主。

オマエの"大切な人"はオレがちゃーんと守ってやるから、な。」

 

ランサーはニヒルな笑みを浮かべながら遼に近づくと、馴れ馴れしく肩に肘を置く。

 

「ランサー、おいたはそこまでにしておけ。」

 

その姿を見たセイバーはいつの間にか席から立ち上がっており、ジッ、とランサーを睨みつける。

 

「おー怖い怖い。

んじゃ、オレはドロンしますわ。

朱音、いつでも準備は出来てるからな。」

 

おっかない、と言わんばかりに肩をすくめれば、ランサーは再び青白い粒子を発しながら空間に溶けていった。

 

「……なんだったんだ……。」

 

遼は少し耳を赤くしながらその様子を眺めてつぶやく。

 

「……あー、ごめんなさいね白峰君。

アイツ、人を揶揄うのが趣味なのよ。」

 

額に手をあてがいながら朱音は深いため息を着く。

 

「……ランサーは護れるのに、僕は護られる側、か……。

根本のスペックが違うとはいえ、やっぱり何もできないのは悔しいな」

 

そう遼が呟くと、セイバーは少し表情を和らげて、穏やかに微笑んだ。

 

「その気持ちは大事にして。焦らずに、ゆっくり自分の役割を見つけていけばいいさ。」

 

その声に、遼は少しだけ胸の奥が温かくなるのを感じた。強く、まっすぐな眼差し。それが自分に向けられているだけで、不思議と勇気がわいてくる。

戦う力などないかもしれない。けれど、それでも、ただ守られるだけでは終わりたくない――そんな想いが、少しずつ芽生え始めていた。

 

〜A.M. 10時 中央区・心斎橋〜

 

あれから少し後、遼は朱音の洋館を後にし、セイバーとともに大阪の街へと歩を進めた。昨日の激しい戦闘から一夜明けて、彼の心にはまだ深い不安と疲労が残っていたが、セイバーの提案に背中を押された形だった。

 

『気分転換に散歩でもしないか?この時代のことも、もう少し知っておきたいと思っていたんだ』

 

凛とした騎士の面持ちを見せつつも、セイバーの口調はどこか柔らかく、女性らしい優しさが滲んでいた。その言葉に、遼は小さく頷いた。

 

彼らが向かったのは、朱音の住む帝塚山からほど近い、大阪市中央区・心斎橋。昼間の繁華街は活気に満ち溢れ、カラフルな看板が軒を連ねる商店街やデパートの前には多くの人々が行き交っていた。タクシーやバス、そして車が行き交い、独特の大阪の喧騒を作り出している。

 

「たこ焼きの香り……いい匂いだな」

 

遼は鼻をくんくんと動かしながらつぶやいた。道端では揚げたての串カツを売る屋台が煙を上げ、食欲をそそる油の香りが風に乗って漂ってくる。

そういえば大阪に来てから半年、自分の心の整理からか、こうして外に出ることはあまりなかった。

店先で呼び込みをする店員の元気な声や、買い物袋を提げた若者たちの笑い声が絶え間なく続き、街はまさに“食い倒れの街”そのものだった。

歩道には観光客や買い物客が行き交い、みな思い思いにこの賑やかな空間を楽しんでいる。遼はその光景に少し心が和らぐのを感じたが、同時に胸の奥には引き続き不安がこだました。

 

「御堂のことは気をつけなければいけない。

まだ安全とは言えないんだよな……」

 

遼の言葉に、セイバーは鋭い眼差しを向けた。

 

「油断は禁物だけど、こうして普通の人々が笑い、賑わう日常があることを忘れてはいけない。

だ・か・ら!今はリフレッシュしなきゃ!」

 

少しセイバーが前を歩き出すと、突然くるりと遼の方を向き、明るい笑顔で語りかけてくる。その様子は、彼女が騎士だということを忘れさせてくれた。

 

(……そうだ。セイバーだって英霊以前に1人の人間だ。セイバーなりに与えられた一時の第2の人生を楽しんでいるのかな…。)

 

なんてことを考えながら彼女の言葉と笑顔は遼にとって救いとなった。騒がしい街の中で、戦いに巻き込まれる前、いや、両親を失う前の“普通の生活”がそこに確かに存在しているのだ。

 

「僕にはまだ、守るべきものがある。だから強くならなきゃいけないんだ」

 

何を守るのかはまだ分からない。

自分自身の身を守るのか、それとも朱音のことを守るのか。

だけど遼は少し強く決意を込めて言った。

 

セイバーは柔らかく微笑みながら、遼の肩に手を置いた。

 

「その通りだ、リョウ。最初はみんな不安に思う。でも、守るべき人のために、強くなれるのさ。」

 

昼下がりの大阪の街は、喧騒と活気の中に生命力を感じさせる。

遼はその中で、少しずつ自分の役割を探し始めていた。

 

「いらっしゃいいらっしゃい!たこ焼き焼きたてやでー!アツアツほっかほかや!食べてかへんかー?!」

 

そんなことを考えていると、突如道端の屋台から、人の良さそうな店主の元気な声が響く。鉄板の上でたこ焼きがころころと回され、ぷくっと膨らむ香ばしい匂いが周囲に漂っている。

 

「たこ焼き……?日本人はタコを食べるのか…?」

 

店主の声を聞いたセイバーが物珍しそうに屋台の方に向かって歩いていく。

 

「おっ、お嬢ちゃん、ほんまに別嬪さんやなぁ!こんな美人さん、そうそうおらんで!お嬢ちゃんをアテにビール呑んだら最高やろなぁ!旅行で大阪来てんの?」

 

店主がにこやかに声をかけると、セイバーは背筋を伸ばし、凛とした表情のまま軽く笑みを浮かべて答えた。

 

「そう言ってもらえるとは、ありがたいよ。そう、旅行で来てるんだ。

未知の食べ物だから心踊ってるよ。味も当然、美味しいんだろうね。」

 

「日本語も上手いやんか!

ええ外人さんや!よっしゃ!気分ええからたこ焼き2個まけといたるわ!」

 

そのやりとりに遼が横で苦笑いをこぼす。

 

「ほんと、大阪の人はノリが良いな…ついでに人懐っこい

そして、もう適応したんな、セイバー。」

 

感心したように声を漏らせば、たこ焼きを何個か既に頬ばっているセイバーが遼の元へと戻ってくる。

 

「はふっ、はふっ!

うん、美味しい!タコがこんなにも上手いとは…!外はカリッとしていて噛んだらドロっと溢れ出てくる旨み……!

上にかかっているソースも最高!」

 

満足そうに目をキラキラさせ、満足そうに笑みを浮かべるセイバー。その様子を見た店主が満足そうに頷く。

 

「気に入ってくれたようで何よりや!ほな、次は串カツもいっとこか!この辺の味、色々試してみたらええわ!」

 

店主はそう言いながら向かいにある串カツ屋台を指を指す。

そちらを見てみれば、屋台の熱気と活気が街全体に満ちていて、人々の笑い声や呼び込みの声が絶え間なく続いている。

 

「ありがとう店主さん。

タコヤキ、気に入ったよ。また暇な時に寄らせてもらうことにするね。」

 

セイバーのその言葉を聞いた店員の店主は嬉しそうに頷き、

 

「おおきにな!またいつでも寄ってや!うちの味、気に入ってくれて何よりや!

ほかの店に浮気せんといてな…!」

 

冗談っぽく笑う店主の声に、セイバーも笑顔を返した。

そして、また2人は賑やかな大阪の街並みを歩いていく。

 

遼の表情は少し柔らかくなり、

 

「街の人たちの温かさ、改めて感じるな……。

こんな雰囲気なら、少しくらい外に出てみるのも悪くないかもな」

 

セイバーは遼を見て静かに頷き、

 

「新しい土地の空気を味わうのは、戦いの間の貴重な時間だからね。こういう時こそ、気持ちを整えるべきだ。」

 

それぞれが心の片隅で、今後の戦いに向けて気持ちを引き締めながらも、ほんのひとときの安らぎを感じながら、歩を進める。

 

……セイバー、なんか普通に観光楽しんでるし。

 

そう思いながら、遼はたこ焼きを手に取り、アツアツの一粒を口へ運んだ。

 

「――熱っ、でも、うま……!」

 

ふわっと広がる出汁の香りと、もちっとした生地の中に感じるタコの歯ごたえ。普段なら気にも留めないような味が、今の彼には格別だった。隣でセイバーも再びひとつ口に運び、「おお、これは……!」と瞳を輝かせる。

 

「うん、よく考えてみれば、これは戦の糧にもなりそうだ!」

 

「いや、戦に持って行く食べ物じゃないと思うけど……」

 

呆れつつも笑いがこぼれる。

肩に乗っていた重たい不安が、少しずつ解けていくのを感じた。

 

朱音とセイバー、そしてあのランサー。

自分はまだ、ただ守られる側でしかない。

けれど、こうして少しずつ、日常の中で自分を取り戻していくことが、きっと第一歩になる――そんな気がした。

 

「よし、じゃあ串カツ屋台行ったあとはアレ行こうか?商店街の端っこにあった、謎の“くじ引き屋”。すごく怪しい雰囲気出してたけど……」

 

セイバーが楽しそうに次の行き先を指さす。

その背中を追いながら、遼はふっと笑った。

 

「……うん、付き合うよ。せっかくだしな」

 

――まだ戦いは終わっていない。御堂の動きも、他のマスターたちの存在も、不穏な気配は確かに迫っている。

だが今だけは、ほんのひとときでも“普通の高校生”としての時間を取り戻したかった。

 

その時、遼の胸の中には、確かに小さな“火”が灯っていた。

守られるだけでは終わらない、戦う覚悟の種火が――。

 

そんなことを考えていれば。

 

「……あれ。」

 

気がつくと、心斎橋の喧騒を離れ、人気のない路地へと足を踏み入れていた。

昼夜を問わず光が溢れる繁華街のすぐ裏手とは思えないほど、そこは不自然なまでに静かだった。街灯の明かりはあるはずなのに、妙に心許ない。まるで、音と光の情報そのものが抜き取られたかのような感覚。

近くにセイバーはいない。

不審に思い、遼が立ち止まると、すぐにそれは現れた。

目の前に気配すらなく、ただ“そこにいた”。

 

黒髪のミディアムボブ、全身黒ずくめの女。煙の立ちのぼるタバコを咥えながら、感情の読めない表情で遼を見下ろしている。

 

「“君”が何者か、私はもう知っているよ」

 

突然の言葉に、遼の喉が鳴る。

 

「なに……?」

 

「君の魔力適性、精神傾向、行動履歴――すでに解析は完了している。白峰 遼。魔術の素質があるかすら分からない、御堂 継宗に利用されようとしてた、ただの一般人」

 

「……どうして僕のことを……?」

 

「理由は単純。“情報価値がある”から」

 

一歩、遼が下がる。女は動かない。咥えていたタバコを背後に投げ捨て、ただ口元にごくわずかな変化を浮かべて続ける。

 

「魔術を知らない君が、なぜ聖杯戦争の渦中にいるのか。誰が、何のために、君を巻き込んだのか――知りたくないか? “真実”を」

 

その声は囁くように柔らかで、しかし明確な圧を孕んでいた。

 

脳裏に浮かぶ。朱音、御堂、セイバー――

――昨夜の惨劇。知らなければ良かったとすら思った数々の光景。だがそれでも、彼女の言葉は、遼の本能をかすかに刺激した。

 

「……知りたい……。けど……」

 

その瞬間だった。

 

風が揺れた。違う、風ではない。空間が、裂けた。

 

「……っ」

 

足元の影が、伸びる。否――

“這い出してくる”。

 

黒。歪んだ人影。感情も、顔も、存在感すらもない。

その“影”は、一瞬で遼の眼前に迫っていた。

闇から突如と現れた、空間に浮かぶ髑髏の面。

首筋に、冷たい鉄が触れる。

黒い短刀。殺意。死の気配。

 

「――アサシン」

 

女の声が呼びかけるだけで、それは動きを止めた。

 

「やめて……くれ……!」

 

遼の声は震えていた。

首筋から流れる、一筋の線の感覚が恐怖心を煽る。

 

「安心して。君を殺すかどうかは、“情報次第”だ。」

 

女が一歩、遼に近づく。声は囁きのように、だが明確な冷たさを持っていた。

 

「“敵”か、“道具”か。今、私が判断しているところだから」

 

遼の顔から血の気が引く。全身が粟立つ。

 

この女は――本気だ。

 

そしてその時。

 

風の中に、もう一つの気配が割り込んだ。

 

鋭く、まっすぐで、鋼のような“剣の気配”。

 

――セイバー。

 

次の瞬間、短刀が空を裂く。アサシンが一歩後退し、暗闇に溶ける。

 

そして、気がつけば女もまたふっと気配を薄めるように、霧散するようにその場を離れていた。

 

残された遼は、その場に崩れ落ちる。心臓は暴れ、呼吸は浅く、全身の震えが止まらない。

 

ただひとつ、彼の脳裏に焼き付いたのは、あの女の言葉だった。

 

――「真実を知りたくないか?」

 

「リョウ……!すまない、私が傍に居たにもかかわらず……!」

 

黒い剣を両手で構え、同じく黒い鎧に身を包んだセイバーは周囲を警戒するように見やる。

 

『おぉ、怖い怖い。

そんなに怖がらせないでくれ。私はただ、挨拶をしたかっただけだ。

私のアサシンも、君とは戦いたくないってさ。』

 

「私のマスターを攻撃しておいて不都合なことを……!

出てこい卑怯者!逃げるのか…!」

 

セイバーが周囲にそう叫ぶ。

ーーー直後。

 

(ーーー来る……!)

 

セイバーのスキル:直感が発動する。

目の前の空間の輪郭が黒くぼやけたかと思えば、その空間から再び髑髏が浮かび上がる。

 

「ほらァ!

そんなに言うからよォ!出てきてやったぜェ!喜べよォ!」

 

髑髏……アサシンが黒い短刀を手に遼の眼前に迫る。

 

「う、うわああああああああああッ!!」

 

せめてもの抵抗、と言わんばかりに彼は地面に落ちていた石を拾えば、それを髑髏に向かって投げつけようとする。

 

ーーー刹那。

遼の腕に緑色の線が浮かび上がり、それが光ったかと思えば、それに呼応したかのように石が青白く光り、ものすごいスピードで発射される。

 

「何……ッ!?」

 

想定外の出来事に驚いたアサシンにその一撃が当たる。

パラパラと骸骨の面が欠け落ちれば、肌黒い肌色で顔にヒビのような傷跡が刻まれた青髪の男の顔がその隙間から覗く。

 

「…チ、想定外だったぜ。

まさか土壇場で化けるとはなァ。」

 

アサシンは再び闇へと溶ける。

 

『……いい。

ここは引く。それまでに答えを出しておこう。

手荒な真似をして申し訳なかった。挨拶代わりとして許してくれ。

…私の名は榊原 晶(さかきばら あきら)。しがない魔術師情報屋さ。

何かあれば、ご贔屓に。』

 

空間に響いた榊原 晶の声は、興味深そうな響きを残して消えた。

 

『敵か、道具か』

 

その言葉が、今も耳の奥に刺さっている。

――自分は、どちらなのだろう。

答えは、まだ出せないままだった。

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