天音が静かに微笑む。
月光を背に、上空に浮かぶ艦載霊機が再び魔力の脈動を放つ。
「じゃあ……次は“本隊”のご挨拶ね」
彼女の軽やかな声とともに、空が割れた。
無数の艦載戦闘機――否、霊機が音もなく降下を開始する。
その機体は旧時代の零戦を思わせる姿を取りながらも、現代の戦闘機以上の飛行性能と霊的加速を持ち、御堂邸上空を一斉に旋回・展開していく。
結界の強度を見極めるように、数機が屋敷の各所に小規模な魔力弾を撃ち込む。
石畳が砕け、屋根が穿たれ、御堂邸がまるで戦場の砦のような様相を帯びていく。
「なるほど……空からの制圧か。狙いは私ではなく、ここを潰す気か」
御堂は冷静に呟くも、わずかに眉をひそめる。
周囲ではアーチャーが弓を構え、機体に狙いを定め始めていた。
「数が多すぎる。まるで軍隊だな……」
その瞬間、遥か遠く――大阪湾方面より、新たな霊波が感知された。
上空から一機だけ、ほかとは明らかに異なる“主機”が進入してくる。
機体全体が蒼白い霊気を纏い、その中心に立つ影が――
上空から降下してきたその機影は、他の艦載霊機とは明らかに異質だった。
艦橋を模したような甲板、周囲を守るように展開される9門の45口径46cm砲――
そして、その中心に存在する機体に乗り組む男。
白い軍服、冷厳な双眸。魂そのものが歴戦の鉄と化したような、揺るぎなき存在。
「……来たわね。ライダー」
天音の声に応じるように、戦場に彼が降り立つ。
「……空に浮かぶ日の丸が描かれた戦闘機。
そしてその周りに浮かぶ9門の大砲……。」
御堂の眼がわずかに見開かれる。
「大日本帝国海軍・連合艦隊司令長官、
重く吐き出された名は、この戦場の運命を決定づけるものだった。
「以下にも、私こそが、騎兵のサーヴァント、真名を山本五十六である。」
男は真名を看破されたにも関わらず、その表情は崩れることなく、堂々とする。
「…主よ、宝具を切ります。」
ただでは勝てない、と判断したのか、アーチャーが1歩前に出て御堂に宣言する。
「構わぬ。」
短く御堂が答えると、アーチャーは地面に槍を突き刺す。
「第2宝具、開帳。
勝者は語らない。ただ、すべてを導く。
『
戦局は、こちらに傾き始める。」
目を瞑り、詠唱をするアーチャーと地面に突き刺した槍から青白い光が発現し、その光が頭上の戦闘機達を貫く。
…しかし何も起こらない。
そう思った刹那、戦闘機と戦闘機が互いにぶつかったり、山や御堂邸内部に次々墜落していく。
その数20機程だったのが、8機にまで減少した。
「…ほう、やるね、アーチャー。」
その様子を横目にライダーは眉ひとつ動かすことなく呟く。
「続けて、第1宝具開帳。
時は来た。耐え忍ぶのもここまでだ。
我が矢は軍陣を貫き、敵を前進させぬ。
来たければ来るがいい——死地へ。
『
そう言った刹那、彼の背後から無数の矢が飛ぶ。その矢は残っていた零戦のエンジン部分を的確に狙い撃つ。
更に、矢先には火が点っており、ガソリンに点火した艦上戦闘機は次々と爆散していく。
「あら、大変。」
その様子を眺めていた天音は両手を前に向け、アーチャーと御堂に向ける。
「《
銃の形をしたその指先から霊弾が次々と発射される。
「《
その弾幕を宙に浮いた赤黒い壁が御堂とアーチャーの身を守る。
「素晴らしい。
まさか私の血を使うことになるとは。
それでこそ冠位の魔術師よ。」
だらんと垂れ下がった右腕からは絶え間なく血が流れでている。どうやらその防壁は御堂の血によって結成されていたようだ。
アーチャーと御堂による迎撃で艦載機の大半が失われ、戦局は一旦御堂側に傾く。しかし、それすらも織り込み済みであったかのように――
「ふふ……それでこそ、私が”美しく散る”に相応しい戦争だわ」
ニヤリ、と艶めかしく天音が笑みを浮かべる。
「ローマ兵風の格好。
それに第2宝具、遅滞戦術による敵の指揮統制を下げる盾とそこを的確に攻撃する第1宝具による矛。
貴方、共和制ローマの政治家であり将軍のクィントゥス・ファビウス・マクシムスね。
道理で芸達者な訳だわ。」
「……。」
アーチャー、ファビウスの眉がピクリ、と動く。
「だったら、この圧倒的火力を持つ私達には勝てない。」
そしてチラリ、とライダーの方を見る。
それに呼応するかのようにライダーが頷けば、静かに呟く。
「……では、見せよう。我が皇国の艦を。」
その言葉とともに、空が割れる。
霊海の底より浮上したのは、大阪湾に潜んでいたあの巨艦。
かつて日本の栄光と終焉を象徴した、伝説の戦艦《大和》。
大気が震え、空間そのものが濁る。神域すら思わせる霊圧とともに、巨艦が月光の下に姿を現す。
「これは我が國希望の
皇国の威信は、光は。ここにあり。
第1宝具、不沈艦、発艦――
『
天音とライダーが飛び上がり、大和の甲板に着地する。
「…マズイな。」
アーチャーの顔から初めて余裕が消える。
だらり、と汗を流せば、空に浮かぶ怪物を睨みつける。
「全砲門、発射用意。」
ライダーが、ゆっくりと右手を天に上げる。
「___撃て。」
そしてその手を、振り下ろす。
次の刹那。
御堂邸敷地内に容赦なく降り注ぐ魔弾。
その様子を男、山本五十六は静かに眺める。
「撃ち方、やめ。」
手を真横に掲げれば、その号令と共に砲撃が止む。
爆煙が晴れ、見えた御堂邸は跡形もなく、アーチャーとそのマスターである御堂の姿もそこになかった。
「…逃げられた、か。」
「仕方ないわよ。貴方のポテンシャルも十分に発揮出来なかったわけだし。
今日は挨拶程度ってことで。」
妖しく笑う冠位の魔術師。
「さぁ、海に帰りましょう。」
「…そうだね。」
ライダーがパチン、と指を鳴らすと大和は宙に消え、代わりに新しい艦上戦闘機が御堂邸跡地に着陸する。
その機体にふたりが乗り込めば、夜の空へと消えていく。
……ここに壮絶を極めた、のちにこの聖杯戦争最大の陸上戦と言われた戦いが幕を下ろしたのだった。
___
「……この私が、か……。なんたる屈辱……!」
アーチャーに支えられ、暗闇を歩く全身の至る所から血を流した御堂。
彼らは間一髪で御堂邸地下に存在する隠しシェルターに飛び込み、危機を回避した。
「仕方ありません。
あのライダーと私は、相性が悪すぎる。
本来のマスターであればあれほどの大規模宝具の使用、直ぐに魔力が切れ、そこを叩くことが出来たでしょう。」
「……ああ、だが手綱を握っているのはあの怪物だ。
…恐らくまだライダーもあの女も底力を隠している。」
御堂は憎たらしそうに歯を食いしばり、歩を進める。
しばらくすると、暗闇の中に一筋の光が見える。
その光の中……いや、壁が白色に塗られ、檻がある部屋に彼らは足を踏み入れると、その中にいるゴシックドレスを着た白髪の女を御堂は見下ろす。
「調子はどうだ。」
「絶好調!こんな檻の中じゃなければの話だけどねーっ!」
ガシャン、と音を鳴らし、格子を掴みかかるその女は、御堂の姿を上から下まで眺める。
「あっれ、オッサンボロボロじゃーん!?
もしかしてもしかして!負ぁけちゃったぁ〜?」
愉快そうにケラケラと地面を転がり、笑う女。
その様子を見ても何も言わず、牢屋の鍵を開ける。
「……まさか、このワタクシ様の出番って訳ぇ?
アッハハハハ!高貴な魔術師様が聞いて呆れちゃうわねぇ!」
挑発を続ける女に沈黙を貫く御堂。
彼はどこからか盃を取りだし、流れ出る血をそこに注ぎこむ。
それが十分に溜まると、彼は女にその盃を差し出す。
「御堂の血の元に。
契約だ”死徒”マーリス=ヴァレンタイン。
この聖杯戦争を掻き乱せ。」
その言動を見た彼女__マーリスは少しキョトン、としたが、直ぐに悪そうな笑みを浮かべ、盃の血をのみほす。
「ヒトの堕落こそ、ワタクシ様の愉悦!
いいわ!ワタクシ様がめちゃくちゃにしてあげる!」
そう呟きながら彼女は金色の何かを取り出す。
これが聖杯戦争をこの後、大混乱に導くのだった。
ー第1章 開戦 ENDー
-別次元 桜苑学園 音楽室-
「さぁ、旋律を奏でよう。
授業の始まりだ。」
「ちょ!先生背中!!バッサリ切れちゃってるって!」
「…ん、ああ、バーサーカーとの戦闘の時か。
大丈夫ただのかすり傷コフゥッ!」
「ダメじゃねぇかーーーッ!」
〜Nice Boat〜
「えーと、なになに…。カンペによると、戦闘不能の鷹取先生に変わり、代打をご用意したのでその方と”仲良く”進行してください。
…誰だろう。魔術のことに詳しい久我か、監督役である伊庭さんかな。」
「………」血ダラダラ
「…おじさんじゃねぇか!!!
相性最悪だし仲良く出来るわけないしこっちの方が怪我してるし!
…まあいいや。進めないといけないんでしょ。
じゃあ、前みたいにこのパネルを拾えばいいのかな?」デンッ!
ーーー
【クラス】アーチャー
【真名】クィントゥス・ファビウス・マクシムス
【属性】秩序・中庸
【ステータス】
筋力:C 耐久:B 敏捷:C+
魔力:D 幸運:B 宝具:A
⸻
【クラス別スキル】
●単独行動:B
マスター不在でも数日は現界可能。戦場における冷徹な判断力と、生存を前提とした戦術眼がこのランクを支える。
●対魔力:C
詠唱が二節以下の魔術をほぼ無効化できる。神代の魔術には通用しない。
⸻
【固有スキル】
●戦略眼:A
戦術の応用、臨機応変な指揮、敵の行動予測などを高レベルで実行可能。特に防衛・包囲・遅滞戦術に特化しており、奇襲や誘導の局地戦でも真価を発揮する。
●遅滞戦術:A
史上最も有名な“時間稼ぎ”の名手。無理な攻勢に出ず、敵の兵站と士気を削り、持久戦によって勝機を得る。
このスキルを持つ者は、戦況がどれほど劣勢でも致命的敗北を回避する“粘り”を有する。
●ローマの盾:A
自らが“盾”となり、国家と兵士たちを守るという信念がスキル化したもの。自軍の士気低下を防ぎ、周囲の味方ユニットが受けるダメージを減少させる精神干渉系の支援スキル。
彼がいる限り、ローマは崩れない。ファビウスとは、そういう存在であった。
⸻
【宝具】
『
ランク:A 種別:対軍宝具
レンジ:20〜80 最大捕捉:100人以上
ファビウスの戦術――すなわち、罠と包囲による待ち伏せ、敵を誘い込んだ後の集中砲火を具現化したもの。
この宝具発動中、彼の周囲に「見えざる弓兵部隊」が展開され、彼の指示で一斉に矢が放たれる。
これは実際に存在した兵士ではなく、ファビウスの記憶と信念、そしてローマ兵士たちの意志の投影である。
矢は魔力製のものだが、数は極めて多く、時間差による連射、包囲型射撃、拡散型制圧など多様な攻撃形態を取る。
ただしこの宝具は、対象の位置や状況をファビウスが完全に把握していないと、真価を発揮しない。
⸻
『
ランク:B+ 種別:対軍宝具
レンジ:0〜30 最大捕捉:50人
「勝者は語らない。ただ、すべてを導く。」
ファビウスの最たる戦略、“語らず・動かず・騙し・疲弊させる”という間接戦法の極致が宝具化したもの。
発動と同時に、戦場に特殊な精神干渉フィールドが展開され、敵軍は“違和感を抱かない錯覚”に陥る。
これにより敵は最適ではない戦術行動を最適だと錯覚し、誤判断を繰り返すようになる。
同時に、ファビウス自身と味方には俯瞰視点が与えられ、戦術行動の命中率と回避率に有利な補正が加わる。
この宝具により、ファビウスは「敵を討つのではなく、敵の判断を破綻させて自滅させる」という冷徹な支配を完成させる。
⸻
【解説】
クィントゥス・ファビウス・マクシムス。
古代ローマの政治家・軍人であり、“大遅延将軍”と呼ばれた男。ハンニバルに対抗するため、真正面からの戦いを避け、持久戦によって敵の消耗を待つ戦法を貫いた。
非道・卑怯と批判された彼の戦術は、やがて“ローマを救った最後の盾”とまで称される。
弓の名手ではない。だが、武具は常に彼の指揮によって飛び、敵を討つ。
戦術を“射線”とし、己が“盾”となる。戦場を操る彼こそ、真の意味でのアーチャーである。
ーーー
「これが私のアーチャーの全容だ。
宝具含め、今作では初めて全て開示されたサーヴァントだね。」
「…あれっ、でもおじさんが戦ったライダーも真名が開示されたんじゃ……?」
「いや、ライダーはまだ展開していない宝具を2個隠しているんだ。
…恐らく第2宝具が大和、そして零戦等を使役するための大元の宝具だ。
…あの火力が挨拶程度とか、むちゃくちゃすぎるって…。」泣
「あー、えーっと……ドンマイ……?」
「しかもあのマスター、殺しても生き返るとかそんなんチートやん…。
雪村ハンパないって…。」泣
「え、えーっと……。敵陣がチート過ぎておじさんのキャラ崩壊が始まってしまったので今回はここまで!
ここから戦局が大きく変わるらしいよ。楽しみにしててね。」