一応続いてる感じで第二部みたいな
不定期でUPしていく予定です
メイのレベルも100になり、南西部にある街に移動する馬車の中、
ぼんやりと流れる風景を見ていたら宿泊予定である中継地点の街に到着した。
既に時間は夕方を過ぎていて夕飯のメニューを考えていたメイは、
こちらに来てからパンばかり食べていたような気がして、
最近は毎朝卵かけご飯を食べていても日本食が恋しい…。
この国の主食がパンだから洋食系のおかずになるのは仕方ないにしても、
食材の問題で作れなかったり習慣の違いで食べれなかったり、
結構違いがあるんだなぁとぼんやり考えていた。
日本に住んでいた時も、海外旅行をした人が和食を恋しくなったり、
日本のファストフード(牛丼やラーメン)など食べたくなるって聞いたことがある。
ホームシックとまでは言わないけれど、そんな感じに近いかもしれない。
まず街に着いたら宿屋を確保、4人居るからコテージタイプが理想だけど、
金額を考えると贅沢は言えない…まあお会計はウィル持ちなので、
ウィルが『ここにする』と決めてしまえば誰も文句は言わない。
今回のお宿は今までのコテージタイプとは違い部屋は二部屋取る事に、
食堂がなくてキッチンも無い宿だった、食事は外食で賄うらしい。
そもそもコテージタイプとかそういう宿自体がなかったようだ。
日本人の感覚を持つメイは別に普通だと感じたし、
高級旅館のような部屋食とかいろんなパターンがあっても驚かない。
ビジネスホテルみたいに食事無しの宿だって沢山あったし。
しかしこの世界の宿は基本的に食堂が併設されている確率が高く、
キッチンすら無いのは珍しいようだ。
さてどうしたもんか。
手持ちの食材をリメイクしたりお馴染みのサンドイッチでもいいけど…。
メイの手料理が当たり前になっているウィル達は、
どこかで外食しないといけないのかとちょっとテンションが下がっている。
なんせどこもかしこも味付けは塩だけだし…。
あったとしてもオリーブオイルの香りとか、
食材の新鮮さを感じられるくらいで、泣く程美味しい訳ではない。
「夕食どうしようか…」
宿屋の部屋で会議。
「外食っつっても、なぁ…?」
リックの微妙な顔にウィルも同意し、ミィナは死にそうな顔をしている。
よっぽど腹が減っているのか声も出さない。
ちなみにミィナは世の外食をあまり知らない、
エルフの森に居た時は木の実や野菜が中心で、
奴隷だった時にパンの切れ端をもらったのが街の記憶だ。
それ以外はメイの手料理しか知らないから外食なんて食べたことが無い。
だがリックだけでなくウィルまで微妙な顔をしているから、
ミィナは察してしまったのだろう。
「とりあえず今夜はいつものサンドイッチでいいかな?
キッチンが使えないなら仕方ないよね」
作ってもらえるだけありがたいのだが、できればがっつり肉を食いたい…。
ウィルもリックもミィナも、顔に肉って書いてある気がする。
「この間みたいに外で焚き火して…と言うのは無理なのか?」
「さっき宿屋に聞いたら火気厳禁だとよ」
ウィルの質問に答えたのはリックだった、だから絶望した顔してるんだ。
ここにもアルバート家のタウンハウスがあれば良かったのに…。
結局お昼と同じオークかつのサンドイッチと、
ホーンラビットのサラダチキンを副菜として、
他にサラダとオニオンスープというメニューに落ち着いた。
メイと出会うまでここまで美味しい食事をしたことがなかったのに、
メイの作る料理を一度でも食べてしまうともっと食べたくなる。
今までの味気ない料理ではなく知らない味をもっと知りたい。
人間の食欲は恐ろしいものだ、流石三大欲求と言われるだけはある。
次の日、近くにダンジョンは無いらしいので市場でお買い物をします。
今回寄った街はこれといった特産品も無くそれなりの品揃え、
野菜や川魚が多い、観光地って訳でもないから仕方が無いか。
せめてキッチンを使える施設があれば良いのだが…。
(最悪コンビニに頼ろうかな…)
なんて考えてしまうくらいにはメイも困っていた。
自作できないお菓子や、こちらで入手できない調味料、
日本の味が気になるメンバーのために色々購入はしてるんだけど、
できれば現地の食材を使って作りたいメイとしては、
あまりコンビニに頼りたくないと言うのが本音である。
なので今まで一度もみんなにコンビニ弁当を出したことがない。
普通に考えれば便利なんだからもっと活用すればいいのに…と思うが、
メンバーの健康を考えるとコンビニ弁当はあまりお勧めしたくないようだ。
あくまで最終手段、どうしても料理ができない時や、
食材が底を尽いたり緊急事態に陥った場合でなければ、
メイはコンビニ弁当という選択肢は取らないだろう。
午前中に買い物を終えて部屋に戻ってきたが、
昼食のことを思うと普段元気なミィナまでしおれてしまっている。
どうにかしてあげたいけど…どうしよう?
「メイ」
「どうしたのリック?」
午前中は別行動だったリックが宿屋に戻ってきた、
ちょっと嬉しそうな顔をしているのは気のせいだろうか。
「さっき教会に行ってきたら、台所使わせてくれるってよ」
「えっホント!?」
「ただし条件があって、奉仕活動をしたら…ってことだった」
「奉仕活動…?」
一体何をすればいいんだろう。
無料でキッチンを借りるなんて申し訳ないし、
奉仕活動の内容によっては全然やりますけど!
「掃除と孤児院に居る子供達の相手と、もしくは寄付。
どれかいっこやってくれってさ」
うーん、掃除ってどのくらいの範囲だ?
子供の相手って言われても、何歳くらいなのか分からない。
「寄付なら俺が出そう」
ウィルが紅茶を飲みながら平然と答えて、教会への寄付は吝かではないらしい。
キッチンを使うレンタル料と思えば寄付でもいいのか…うーん。
「掃除ってどこを掃除するの?」
「それは聞いてみないと分かんねぇな」
ともかく、キッチンをお借りできそうなので皆で教会に行ってみよう。
街の片隅にある教会は小高い丘の上にあった、とても見晴らしがよく景色も良い。
いかにもファンタジーな風景はずっと眺めていたいような雰囲気がある。
教会にやってくるとシスターが迎えてくれて、奉仕活動の内容を説明してくれた。
掃除の選択肢はふたつ。
庭の草むしりと、トイレ掃除だった。
庭は広いけど草むしりなんていつもの採取と変わらないし、
トイレ掃除でも全然いいけど…なんて考えていたら。
「子供達の相手でもいいんだよな?」
「ええ、勿論です」
リックの質問に笑顔で答えるシスター。
「じゃあそっちで。 俺掃除苦手だし」
リックは大雑把だもんね、良い意味で。
「子供の相手か…」
大丈夫だろうか、不安になる。
そもそも出産経験もなく人様の子供を相手に遊んだこともない、
もし怪我でもさせてしまったらどうしようと、
メイの表情が若干曇ってしまった。
ウィルは寄付をするから子供の相手はしないらしい、
ミィナとリックは子供達と一緒に遊ぶことに抵抗が無いみたい。
(どうしよう…)
子供が嫌いって訳ではない、命が重くて触るのが怖いのだ。
ミィナに手を引かれてやってきたのは子供達が過ごしている広い部屋だった、
知らない人が来たことで緊張している子供も居れば、
遊んでくれると聞いてわくわくしている子供も居る。
勿論不安そうにしている子供も居る訳で…。
(せめて怖がらせないようにしよう)
ミィナとリックに子供達を任せてメイは部屋から出る、
誰も見ていないのを確認して廊下の陰でコンビニへ。
子供が喜びそうな物ってなんだろう…一緒に遊べる物ってなんだろう。
以前シャボン玉を買ったけど万が一口に入ったら危険だし…。
「これにしよう」
メイはある物を買って戻ってきた。
椅子とテーブルをお借りして一人で黙々と作業。
何をしてるんだろうと覗き込んできた男の子に気付いて、
メイは笑みを浮かべながら。
「こうやって遊ぶんだよ」
手にしたのは折り紙で作った紙飛行機。
軽く飛ばしたら子供達の視線が一斉に集まり歓声が上がった、
なにそれ!と集まってきた子供達に折り紙を配って一緒に折る。
たちまち部屋は紙飛行機が飛び交い子供達の楽しそうな声で溢れかえった。
上手に折れて遠くに飛ばせる子、ちゃんと折れなくて真剣に悩む子、
器用でも不器用でも、みんなそれぞれにあれこれ悩んだり、
上手な子が小さい子に教えてあげたり、健やかな子供達に囲まれてメイは安心した。
怖がらせたり喧嘩になったりしなくて良かった…。
ついでに鶴を折ったり花を折ったりして皆にプレゼント。
ちなみにミィナもリックも一緒に折って子供達と遊んで楽しそうでした。
子供達の声が聞こえたのかウィルが部屋までやってきた、
楽しそうにしている子供達だけでなくメイが笑顔で良かった。
(メイはどんな気持ちなんだろう…)
子供を授かるタイムリミットが過ぎてしまったと言っていたのを思い出した、
女神の祝福には見た目や身長体重は現世からの引き継ぎと書いてあったから、
恐らくメイは出産ができないだろう。
確かにメイとの子供を見てみたい気はするし、
公爵家としては世継ぎのことも考えなければならない。
しかし、死ぬまで冒険者でいることを決めているので、
子供が居なくてもメイさえ隣に居てくれたらそれでいい。
なんなら養子を取ってもいいのだし、未来のことは分からない。
「ウィルもやってみる?」
部屋の入り口に凭れ掛かっているウィルに気付いたメイが笑顔を向けてきた。
「ああ、望むところだ」
折り紙を一枚もらってメイに教えてもらい折ってみる。
「…なかなか難しいな」
綺麗に折れない…。
「ウィルでも苦手なことってあるんだな」
手先が器用なリックに言われると腹が立つ。
それでも一応投げてみるとやっぱりうまく飛ばない。
人には向き不向きがあるんだ。
誰だって得意なことや苦手なことがあって当然で、
支え合うならお互いに補えばいい、人間は凸凹にできているのだから。
折り紙はうまく折れなかったけどメイが笑ってくれたならそれでよし。
そろそろ昼食を作っていきます。
ミィナとリックはまだ子供達と遊んでいるので、
ウィルと一緒に先に引き上げさせてもらいキッチンに立つ。
「今日はお子様ランチを作るよ」
「お子様?」
「私の居た国では子供向けのランチがあるんだけど、
別に子供だけしか食べちゃいけないって訳でもないし、
なんか今日はお子様ランチを食べたい気分だから」
ちょっとコンビニ行って来るねと言うメイが財布を持って姿を消した。
すぐに戻ってくるだろう、今の内に手を洗ってカトラリーの用意、
冒険者になる前は考えられなかったな、食事の手伝いなんて。
公爵家の人間として育ったウィルにしてみれば、
食事の用意なんて侍女がやる仕事だったし、
冒険者になっても食事は食堂だったり店で食べていたから、
まさか自分が食事の手伝いをする日が来るなんて思ってもなかった。
「ただいま!」
大量の荷物を持って戻ってきたメイ。
「大量だな」
「うん、あの子達の分も作ろうと思ったらつい…」
先程遊んだ子供達の分まで作るつもりらしい、そこまでやらなくても…。
まあ、メイが作りたいと言うなら反対はしない。
大量に買って来たのは丸っこいパンだった、見ただけで柔らかそうなのが分かる。
まずは大きな鍋で大量の卵を茹でる、別のフライパンでお米を炊いて、
その間にバッファローの肉とボアの肉を7:3の割合で細かくみじん切り。
メイが何を作るのか想像も付かないウィルは任せられた野菜の皮むき。
魔法カバンがあるから時間を気にせず作れるのはありがたい、
ひき肉を作ったら白身魚を一口サイズに切って軽く塩コショウしカバンに入れる。
お米はまだ炊きあがらないから先にゆで卵をなんとかしよう、
ウィルにも手伝ってもらってゆで卵の殻を剥き、
大きなボウルでひたすら潰す、マッシャーが無いからフォークで。
それなりに潰したらマヨネーズと塩コショウ、はちみつ、
隠し味にマスタードを少々加えて混ぜる、これで卵フィリングは完成。
炊き上がったお米を蒸らしつつウィルが皮むきしてくれた野菜を切る、
じゃがいも、にんじん、たまねぎを一口大に切って鍋に入れバターで炒め、
ある程度火が通ったら火を止めて小麦粉を馴染ませ、
コンソメキューブとローリエを入れて弱火に掛ける、
牛乳を少しずつ加えとろみを付けたらしばらく煮込む。
シチューが焦げないように混ぜなきゃいけないからウィルに鍋を任せて、
次にひき肉をボウルに入れて卵、パン粉、牛乳、みじん切りたまねぎ、
ナツメグ、塩コショウを入れて豪快に手で混ぜる。
日本だとにんにくや生姜を入れる場合もあるけど、
メインじゃないからこんなもんでいいでしょう。
一体どんな料理ができあがるのだろう、お子様ランチとは一体…。
ウィルはメイが作る料理は一種の魔法だと思っている。
想像した物を作り出すのは魔法に近いと感じるから。
混ぜて捏ねたひき肉を掌より小さい塊にして丸める、
一個10センチ無いくらいだろうか、それを大量に作ってフライパンで焼いていく。
表面に程好く焼き目が付いたら水を深さ1センチくらい入れて蓋をし、
蒸すように焼き、途中で引っ繰り返しながら10分くらい焼く。
焼いた肉をカバンに入れて次に白身魚を揚げるため、
溶いた卵に小麦粉を混ぜて白身魚を潜らせパン粉を付けて揚げる。
なんか思った以上に、いつも以上にメニューが多いような…?
「どれだけ作るんだ?」
「もうちょっと、あともう一種類作ったら終わりだよ」
お子様ランチと言うのはメニューが多いのか?
何を作っているのかちっとも分からない。
シチューのじゃがいもに火が通ったのでローリエを取り出し火を止めて、
最後に塩コショウで味を調えてシチューは完成。
大きなお皿をテーブルに並べて先にサラダをウィルが盛り付け。
ホーンラビットの肉を小さく切って、たまねぎにんじんピーマンもみじん切りに、
フライパンで炒めたらコンソメとケチャップを投入し、
ケチャップの酸味を飛ばしてから白米を一緒に炒める。
とても美味しそうな匂いが鼻だけでなく腹まで刺激してくる。
チキンライスができたらソースを作ります、
ケチャップとウスターソースを混ぜて簡単ソース。
「ウィル、手が空いてるならパンを切ってもらってもいい?」
「ああ、パンって…これか?」
ウィルが指差したのは丸っこいパン、ロールパンだった。
まずはメイがお手本でロールパンを縦に切れ目を入れる、
完全に切って分割してしまうのではなく半分くらい切る感じ。
「ロールパンに切れ目を入れたら、そこに卵フィリングを詰めちゃって」
ふぃりんぐ…?
またしてもメイがお手本を見せる。
切れ目を入れたロールパンに初めに作った卵フィリングを詰める、
これもサンドイッチの種類なのだが、パンが柔らかくてウィルは苦戦してしまう。
フィリングを詰めるとパンを潰してしまいそうで怖い…。
しかし慣れてくるとコツが分かって次々と卵サンドロールパンを量産。
メイは白身フライで微妙に残っている溶き卵に、更に卵を追加して掻き混ぜる。
ちょこっとだけ小麦粉が残ってるけど気にならない程度だ。
小さなフライパンに卵液を入れて薄焼きにして、
そこへさっきのチキンライスを気持ち少ないかなというくらい乗せる。
何を作ってるんだろうとウィルの視線が釘付けに。
メイは器用にフライパンを揺すってチキンライスを卵で包んだ、
本当に魔法かと思った、卵のベールに包まれたチキンライス、
一見しては中身が分からないくらい綺麗に包まれていた。
オムライスはひとつずつしか作れないから時間が掛かる、
大きな皿にミニオムライスをひとつずつ乗せて、
カバンにしまっていたミニハンバーグをオムライスの隣に。
「ウィル、そろそろミィナとリックを呼んで来て、
あとシスターさんも」
「子供達は呼ばないのか?」
「うーん…」
できれば子供達にも作ってあげたいけれど…。
「みんなお米が食べられるか分からないし、
卵サンドとハンバーグだけじゃ少ないかな?」
「いや、充分だと思う」
後はサラダとシチューもあるし。
取り敢えずウィルはミィナとリック、そしてシスターを呼んできた。
「子供達のお昼にどうぞ」
メイはシスターにロールパンの卵サンドと鍋のシチューを渡して、
別皿のミニハンバーグとサラダも渡す、シスターは恐縮しながら受け取る。
まさか子供達だけでなくシスターの分まで作ってるとは思わなかった。
メイ達はキッチンのテーブルでいただくが子供達は別の部屋、
一緒に食べても良かったがメニューが違うので、
子供達に嫌な思いをさせてしまうかも…と不安だったから。
あえて部屋は別々にしてもらったのは、差別とまでは言わないが、
オムライスを求められても作るのに時間が掛かって、
メイの食べる時間が無くなってしまうからだ。
皿にミニオムライス、ミニハンバーグ、白身フライ、サラダを盛り付け、
オムライスにはケチャップ、ハンバーグには簡単ソース、
白身フライにはタルタルソースを掛ける。
スープのシチューも用意してみんなで席に着いていただきます。
「メイちゃん、今日のご飯は豪華だね!」
「これね、私の国ではお子様ランチって言うの、
名前とは裏腹に年齢制限は無いし誰でも食べられる豪華メニューだね」
卵サンドのロールパンも甘くて柔らかくて美味しいし、
オムライスも美味しい、ハンバーグは肉の塊でミィナが絶賛してくれました。
また作ってー!と言うミィナにメイは笑顔で応える。
ウィルは自分で作った卵サンドの美味しさに感動し、
リックは肉と野菜のバランス、そして温かい飯に毎度感心していた。
初めてのロールパンに驚く三人、柔らかくて美味しいパンは毎日食べたいくらいだ。
メニューそれぞれ舌鼓し全部食べてご馳走様でした!
皿を洗ったり後片付けをしていたら空の鍋を持ったシスターがやってきた。
「子供達の分だけでなく私どもの食事まで、ありがとうございました。
とても美味しくて子供達があんなに静かに集中して食事をしたのは初めてでした、
もし宜しければ卵を使ったサンドイッチの作り方を教えてもらいたいのですが…」
「こちらこそキッチンを使わせてもらってありがとうございます。
美味しく食べて貰えて良かったです、柔らかいパンは入手が困難なので、
パンに挟むフィリングなら教えることができますよ」
「よろしいのですか!」
シスターの笑顔が満開になってメイも嬉しくなる。
先程作った卵フィリングはコンビニで売っているマヨネーズを使ったが、
マヨネーズは手作りもできるので作り方を教えることに。
卵や油はこっちの世界にもあるから作れるので安心だ。
シスターと一緒に作ろうと思ったら、他のシスターも呼んで来るとのことで、
教会に居るシスター全員が勢ぞろいした(6名)
「まずは卵を卵黄と白身に別けます、こんな感じで…」
シスターに見守られながら卵を割って半分にし、
黄身を左右の殻に移動させるようにして白身を落とし別ける。
ボウルに黄身、塩とお酢を入れて泡だて器でしっかり混ぜ合わせ、
油を少しずつ加えながら更に良く混ぜて白っぽくクリーム状になったら完成。
「ゆで卵と合わせれば先程の卵サンドみたいになるし、
ゆでたじゃがいもに混ぜればポテトサラダにもなるし、
そのまま野菜に掛けても美味しく食べられると思います」
言いながらメイは前に作ったことのあるポテサラを皿に出して、
シスターに味見してもらった、これをパンに挟んでも美味しいよ。
他にも香草を混ぜたりたまねぎやピクルスを混ぜてタルタルソースにしても良し。
タルタルソースも味見してもらって美味しいと言ってもらえました。
「冷蔵庫があれば2~3日持ちますが、無い場合はその日の内に消費してくださいね」
そしてなるべく新鮮な卵を使ってくださいと念押し。
残った白身は小麦粉と牛乳を混ぜてフライパンで薄く焼きクレープ状にし、
サラダを巻いたりそれこそ卵フィリングを巻いても良い、
そんな風に無駄なく食べられる方法を教えた。
他にも色々と工夫して挑戦してもらいたい。
シスターと一緒に後片付けをしていると子供達がキッチンまでやってきて何故かもじもじ。
どうしたのかな?
「おいしいパン、ありがとう!」
「お肉もおいしかった!」
「あったかいスープもありがとう!」
それぞれにお礼を言われて嬉しいやら照れるやら、
誰かの笑顔に繋がってくれたなら作ったかいがあったもんだ。
子供達とシスターがキッチンから出て行っていつものメンバーだけになった、
この後は部屋を掃除して宿屋に帰るだけ。
「それにしてもまよねーず?って手作りできるんだな」
「うん、材料があればね」
リックが何やら考えながら聞いてきた、もしかして自分で作りたいのかな?
手先が器用だし料理人に向いてそうな気がする。
もともとメイはめんどうくさがりでズボラだった、
うつ病から立ち上がっても料理は苦手で本当は自分が作った料理は、
自分で食べても美味しいと感じられたことが少ない。
親だったり外食だったり、自分以外の人が作った料理は美味しいと感じるのに、
自分で作っても美味しいと思ったことは数少ない。
だからこそ、誰かに美味しいと言われると嬉しいし安心するのだ。
完璧を求めている訳ではないし、自分に自信が無いのもあるが、
自分で作ると美味しくない…この現象は何が原因なのか良く分からない。
それでも、みんなで一緒に食べて美味しいと言ってもらえるから、
作って良かったと毎回思えるし、次は何を作ろうかと考えに発展する。
自分は完璧ではない、寧ろ不完全な部分が多いと思う、
けれども、それはメイだけのことではない。
ウィルだって強くて高レベルだとしても苦手なことがあるし、
お互いに補って笑顔になれるならそれに越したことはないのだ。
のんびりと宿屋に戻り部屋でごろごろ。
明日になったら宿を出発し次の街に向かう予定。
今後、もし今回みたいにキッチンが使えない場合、
教会に助けを求めてもいいのかなと選択肢が増えた。
子供達の笑顔を見られるなら毎回教会に行って奉仕をしたり、
食事を振舞うのも悪くないな…なんて。
出産経験がなく子供の相手は怖いと思ってたけど、
なんとか乗り越えることができて良かった。
「メイちゃん」
「ん?」
「今日の夜ご飯はどうするの?」
キッチンは使えないし昼は教会で作れたけど。
「ミィナは何を食べたいの?」
「まるいぱん!」
ロールパンを食べたいのか…ふむ。
「じゃあお昼の卵サンドと、サラダチキンのサンドと、
ボアかつサンドと…後はサラダとスープと…」
「お、おいしそう…! 早く食べたーい!」
またロールパンを食べられるのかと興奮しているミィナ、
今まで硬いパンが当たり前だったから柔らかいパンに嵌まってしまったようだ。
じゃあ今後はロールパンをメインにしようかな?
硬いパンも慣れればいけるし料理によっては合うし美味しいんだけどね。
「そうだ、ミニハンバーグもサンドしてみる?」
「あのお肉をサンドするの!? 絶対美味しいやつじゃん!」
目がキラキラしてるミィナ、やっぱり肉が一番みたい。
「そろそろ夕方だし準備しようか、ウィルとリック呼んで来て」
「はーい!」
部屋にある机の上を片付けてコンビニへ。
ロールパンだけでなくバニラとチョコのアイスも買って来た。
みんなが集まったので机の真ん中に卵フィリングやサラダチキン、
ボアかつとミニハンバーグ、サラダや野菜たっぷりスープを並べてロールパンを配る。
マヨネーズだけでなくケチャップとソースを混ぜた物やオーロラソース、
他にもチーズやキャロットラペ、ピクルスなども並べた。
「好きなものを自分でサンドして食べてね」
メイはミィナの分のロールパンに切れ目を入れてあげて、
それぞれ食べたい物を自分でサンドするビュッフェ形式にした。
三人が一斉にミニハンバーグを選んだのには笑ってしまった、
お昼に美味しいとは言ってくれていたけど、
ジューシーな肉のうまみは思った以上に衝撃だったらしい。
ステーキとは違う、けれど肉のうまみがしっかりあって、
大きくて食べ応えもあるし、何よりパンとの相性が抜群なのだそう。
前世界ではハンバーガーがあったくらいだし納得っちゃ納得。
「はんばーぐとトマトとチーズをはさんで、
おーろらそーすで食べると一番おいしい!」
「ボアかつも捨てがたい」
ミィナもリックも真剣な顔です。
するとウィルは鋭い目付きでミィナとリックを睨む。
「何を言う、卵とサラダチキンの合わせ技も忘れるな」
「「その手があった!」」
ウィルの自信満々な台詞に二人が驚愕して真似をして食べる。
「まあ美味しく食べてくれるなら何でもいいよ」
「メイちゃんはどれが一番好き?」
「一番は決められないけど…うーん」
ある程度食べ終えたのでメイはカバンからアイスを取り出す。
「私はアイスサンドかな」
「あいす…?」
夕食も終盤なので残り物は全てカバンにしまって、
ロールパンにアイスを挟んでデザートです。
なんだっけ?マリトッツォみたいな?あれはホイップクリームか。
「バニラとチョコがあるからね」
言いながら二つ作ってミィナに渡す、
ミィナはアイスが分からず恐る恐る口に運んで…。
「メイちゃん、あたしこれが一番だと思う」
めっちゃ真剣に言うね。
「お肉より?」
「どっちも一番!全部一番だよ!」
もう本当に幸せそうに言ってくれるからこっちも幸せになる。
ウィルもリックもアイスサンドに挑戦し美味しいと言ってもらえた、
ウィルは元々甘い物が得意ではないけど、
コンビニの味は珍しいので完食してくれました。
「メイちゃんの特殊スキルってお店に行けるんだよね?」
「うん、コンビニね」
「それってどんなお店なの?
いつも美味しいもの買ってきてくれるけど、
他にはどんな物が売ってるの?」
素朴な疑問にウィルもリックも真面目な顔で耳を傾ける。
「コンビニは小さなお店だけど沢山の物が売ってて、
食べ物もあれば飲み物やタバコ、本や文房具、
日用雑貨とか、あると便利な物が揃ってる感じかな。
でも専門店じゃないから品揃えはそれなり」
「じゃあ、このあいすもいっぱい売ってるの?」
「売ってるよ、多分10種類以上」
「そんなに!?」
メイは首を捻って考える。
「昼に行った教会の礼拝堂くらいの広さだよ、
いや、もうちょっと広いかな…」
「そんなに広いのか!?」
今度はウィルが驚いた。
教会自体はこじんまりとした大きさで礼拝堂は小さめだとは思うが、
今まで小売店と聞いていたからもっと小さいと思っていたのだ、
街角にある雑貨屋くらいのイメージだった。
まさかそんなに広い店だなんて…。
「まさに便利なお店、コンビニエンスストアの略でコンビニって言うの、
淹れ立てコーヒーの機械もあるし、綺麗なトイレもあって使えるしね」
なんならスマホ写真をプリントできたりもするし、
前世界でもなくてはならない存在だったと思う。
「めっちゃ便利すぎじゃね?」
「いいでしょ~」
みんなをコンビニに連れて行けないのが残念でならない。
後は注文で様々な商品を買えるし、ホットスナックも充実している、
この世界では考えられないくらい便利なお店だ。
前世界でも便利だと思ってたけど、その恩恵を受けられるなんて…。
(流石、女神様の特殊スキルだわ)
お弁当は保存料とか気になるしあまりお世話にはなりたくないけど、
たまにならいいかもね、みんなコンビニの味が気になるみたいだし。
そろそろシャワーを浴びて寝よう、ミィナと同室なのでシャワー室待ち。
ウィルがお休みを言いに来て少し話す。
「それにしても【コンビニ】とは本当に便利なんだな」
「そうだね、前世界でも使ってたし」
何百年も、何千年も先にあるような便利な世界にあるお店、
そんなお店に行けるなんて特殊すぎて神の加護以上の物を感じる。
今日は教会に行ったり子供達と遊んだり、お子様ランチを作ったり、
ダンジョンに潜るのと同じくらい疲れてしまったのかメイが欠伸を零した。
そろそろおいとましよう。
「メイ、おやすみ」
「うん、おやすみ」
いつもならそこでウィルが別の部屋に引き上げるのに何故か動かない、
どうしたんだろうと思ったら…。
軽く頬に口付けされた。
びっくりして固まるメイ、ウィルもちょっと恥ずかしそうにして、
視線を泳がせつつ部屋から出て行って、そんなウィルの背中をボーっと見送った。
ほっぺにチューとか…。
今更になって顔が熱くなって、口付けされた頬を片手で押さえる。
(いきなりでびっくりした…)
だからと言って前もって宣言されても恥ずかしさは変わらない気がする。
改めて恋人だと思い知らされてしばらく動けなかった、
ミィナに声を掛けられるまで頬を押さえたまま。
普段から恋人らしいことなんてひとつも無くて、
みんなで一緒に居るから甘い空気になったこともない。
寝る前にちょっと話す時くらいしか二人きりにならないし…。
(好き、だと思う…でも、どうやって返せばいいのか…)
自分からキスするなんてそんな勇気は全然無い、
こうしてウィルが行動してくれてありがたいような、
申し訳ないような…と言うか反応に困る!
嬉しさと恥ずかしさが同時に襲ってきて身悶えてしまう、
これからは少しずつでも恋人らしいことを返していけたらいいな…。
(道のりは長そうだ…)
変な話しだよ、結婚までしてたのに、セックスだってしたことあるのに、
たかがほっぺにチューで動揺するなんて。
シャワーで頭を洗い盛大な溜息をシャワーの水音に隠した。
ベッドの中で考える。
この世界でたくさんの『好き』を見つけられたらいいなと思ってる、
同じくらいウィルのことも好きになれたらいいなと思う。
お子様ランチみたいに大好きなメニューを寄せ集めて、
ひとまとめにしていっぱい味わって笑顔になって、
この世界をまるごと愛せるようになりたい。
前世界で生きていた時はこんなこと考えたこともなかったけど、
この世界に落ちてきて自立したいと強く考えながら、
頼もしい仲間と恋人に恵まれて、独りじゃないと感じて、
もう充分に幸せに満ちてることに気付いた。
ああ、誰かを愛することってこんな感覚なんだ、
『好き』が増える度に誰かを幸せにしたいと思う、こんな感じ。
この世界に転生させてくれてありがとう、イナンナ様。
『お子様ランチ』 終わり