おばさん、よくある異世界転生する   作:竹モカ

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いろいろランクアップ


⑧『ランクアップ』

ダンジョンを出て馬車に戻ると夕方だった、およそ三時間くらい潜ってたことになる。

御者さんは半分寝てたし、侍女のエリンは心配ではらはらしていたようだ。

なんとか宿泊予定の街に着いて宿屋を取る。

しかも取った宿は簡素な宿ではなくコテージだった。

「キッチンがある!!」

リビングにキッチンが着いてて個室がいくつかあるタイプ。

高級お宿じゃないですかヤダー。

ウィルがお支払いをすることになっているが、

それじゃあ申し訳ないのでメイも少しだけ出すことに決まって、

やっと今夜のメインイベントです!

ウィルとミィナだけでなく御者さんとエリンも一緒に食べます。

本来なら使用人が貴族のウィルと同じ食卓に着くことは有り得ないことだが、

ウィルは貴族より冒険者としての生活が長いのもあるし、

メイが皆で一緒に食べましょうと言うので、

特に反対もせず一緒に食べることになりました。

「まずはステーキでしょ、他はどうしようかな」

ミィナは楽しそうに小躍りしてるし、ウィルも澄ました顔しながらもちょっと嬉しそう。

エリンは喜びのあまり泣き崩れて御者さんはおろおろしてた。

とりあえず先に副菜をなんとかしよう、ステーキの付け合せと言えばフライドポテト?

あとはブロッコリーを茹でたりサラダも欲しいところ。

サラダのレタスはミィナに千切ってもらって、

ブロッコリーを茹でている間にじゃがいもを切る。

フライパンで大目の油を温め、じゃがいもを揚げて避けておく。

ついでにたまねぎもスライスして、バターを熱した小鍋に大量のたまねぎを入れ、

色が変わるまで炒めたら水を入れて沸騰させコンソメキューブを投入、

沸騰してきたら塩コショウで味を調える。

メインと副菜、スープまであればまあいいかな?

ブロッコリーも茹で上がりお皿にフライドポテトも盛り付けて、

いよいよステーキを焼いていきます。

油でにんにくを炒めて香りが立ったら、塩コショウをした肉をじっくり両面焼く、

皿に取り出し残った油にスライスたまねぎを入れて、

バターとポン酢を一緒に煮詰めてステーキソースの完成。

エリンにも手伝ってもらって出来上がったステーキやスープにサラダ、

硬いパンも並べて、さあいただきます!

メイはナイフとフォークでミィナの分のステーキを切り分けてあげて、

食べやすい大きさにしてから自分の肉を切る、一口頬張ればもう天国だった。

ジューシーで脂も甘くしつこくない、高級ステーキ並みの美味しさで泣きそうだ。

こんなに美味しい肉に出会えるなんて本当に幸せ。

メイだけでなく皆が美味しいと口を揃えお替りまで要求してくるけど…。

「スープとサラダを食べないとお替りはダメ!」

メイの方針としては肉だけでなく野菜もしっかり!なので、

皆は渋々レタスを頬張る、新鮮野菜だから美味しいのに。

でもやっぱり肉には敵わないのだろう、全員がステーキのお替りをしたのだった。

「もうお肉無しの生活には戻れないよぉ…」

食後の紅茶を飲みながらミィナの呟きに苦笑い。

あれだけ美味しいお肉は滅多にないだろう、

ウィルに頼んで沢山狩ってきてもらって良かった。

バッファローの肉のストックは充分だし、この先の旅も楽しくなりそうだ。

ポーション作りもレベル上げも楽しいけど、やっぱりご飯も大切だ。

 

各部屋にシャワーがあるのでひとっぷろ浴びてから寝巻きに着替える。

寝巻きと言ってもスウェットなんだけどね…。

ミィナはノエルと一緒に寝ると言うので、メイは今夜一人です。

部屋の灯りを落として窓の外を眺める。

この世界に来て一ヶ月、色々あったけど少しは成長できてるのかな。

ウィルに助けてもらってばかりで申し訳ないな…。

それに。

(守られるだけじゃダメだって分かってる)

ウィルには守らせてくれと言われた。

前世界でも夫に守ってもらっていて、自力で生きていくなんて無謀だと思っていた。

一人立ちする目標は変わらないけどミィナという仲間も増えたことだし、

協力して冒険をするのも悪くないんじゃないか。

それが依存だと言われたら違うと思うし、

レベルが低くて戦闘は苦手だとしても、料理でサポートできれば万々歳。

誰かのために役に立ちたい、少しでもウィルとミィナの力になりたい。

非力な私にできることは少ないけど、やらないよりやってみよう。

失敗を怖がって立ち止まってもいいんだ、

無気力になって過去を振り返ってもいいんだ、

ダメな理由なんてどこにもない。

そして、手を差し伸べ共に歩いてくれる人が居るのだから。

(あ…)

流れ星。

私もいつか、ウィルを守れるようになるのかな。

ウィルだけじゃない、ミィナのことも。

(なんかちょっと眠れないな…)

灯りを点けることなくベッドで横になってスマホを眺める。

目によくないけどたまには許してくれ。

スマホの中で中級ポーションを作り少しでも旅費を稼ぎたい、

明日になったら街に出て売ってウィルに宿代を払おう。

(イナンナ様、私はやっと人並みになれたでしょうか)

食って寝て戦ってお金を稼いで、人として当たり前のことができているでしょうか。

「あれ…?」

ステータス画面を眺めていたらジョブに変化が。

調合のランクがBからAになっている。

「いつの間に!?」

調合ランクAってことは、上級ポーションが作れる!それだけじゃない、

材料さえあれば万能薬(状態異常全種類対応)が作れるじゃないか!

待てよ、材料って…。

「ある、ちょっとだけある!」

必要な素材が揃っていた、作らない選択肢はないだろう。

メイはベッドから飛び起きて震える指先で、

上級ポーションと万能薬をひとつずつ作ってみた。

アイテム欄に増える上級ポーションと万能薬。

「嘘みたい…嬉しい…。

 私、成長してるんだ…」

どうしよう、凄く嬉しい、早くウィルに伝えたい!

喜びを分かち合える仲間が居るってこんなに幸せなんだ!

「イナンナ様ありがとー!!」

小声で叫んでベッドに寝転がりごろごろと身悶えて、

両手でスマホを持ったまま目を閉じる。

怖い戦闘や他人からの悪意など色々嫌なことはあったけど、

嬉しいことを積み重ねて楽しんでしまえばトラウマも薄くなってくれるかな。

いや、ウィルとミィナに負けないようにトラウマを乗り越えていこう。

よし、こうなったら上級ポーションと万能薬に必要な素材を集めよう、

明日からダンジョンに通ってこつこつと集め、

誰かに使ってもらえるポーションをいっぱい作ろう。

あって損はないのだから、がんばるぞー!

 

朝起きて朝食の前に部屋を飛び出し、既に起きているウィルに駆け寄って、

ウィルの手を両手で握り締めメイは泣きそうな笑顔で。

「聞いてウィル!調合のランクがAになったの!

 上級ポーションと万能薬が作れるようになったんだよ!」

「本当か!良かったなメイ」

最初こそ驚いていたウィルだがメイの喜びが伝わって、

珍しくウィルの笑顔を見ることができました。

やっぱり分かち合える仲間が居て良かった、

一人だったら誰にも知られること無く燻っていたかもしれない。

ミィナを起こして早速朝食作り、朝はパンとサラダと残っているスープ、

付け合せにポテトサラダもあるよ。

バッファローの肉を薄切りにして焼肉のタレで軽く焼く。

レタスとトマトもおまけにチーズもパンに挟んでいただきます!美味しい!

「あーもう最高、生きてて良かった…」

メイの呟きに「そんなにか…」とウィルは肩を竦める。

確かに美味しいけどそれ以上に、メイが着実に成長していることが嬉しかった。

勿論レベルや冒険者ランクはまだまだ低いけど、

一歩ずつ確実に成長していくメイをずっと見守っていたいから。

まだこの気持ちを伝える気はない、伝えることでメイに迷惑は掛けられない。

それに…。

(きっと、置いてきた夫を愛しているだろう)

被り付いたサンドイッチは美味しいけど、なんとなく苦味を感じた気がする。

 

本当なら街を出発して王都に向かう予定だったが、

メイが上級ポーションと万能薬を作れるようになったので、

しばらく滞在してダンジョンに潜り素材集めに集中することになった。

メイはワガママを言ってごめんと頭を下げたが、

仲間がやりたいと思うことを手伝うのは当たり前だ。

特別な急用やクエストを抱えている訳でもないし遠慮は要らない。

ひとまず朝一で冒険者ギルドに行って各種ポーションを売り、

ついでにクエストが無いか確認、いくつかやれそうなので依頼を受ける。

ミィナは冒険者になったばかりだしメイもランクを上げたいと思っているので、

二人に付き合うのも吝かではないウィルは今日もバッファローを狩る決意を固める。

だってあんなに美味しかったし、これからも食べたい。

上級ポーションや万能薬を作るのに必要なランクはAで難しい部類になる、

しかし必要な素材はありきたりな物ばかりだが必要とされる種類が膨大で、

ジョブランクAの人でも作ることは難しいとされている。

初級ポーションみたいに材料が三つだけとか、

そこらへんに落ちてる素材という訳ではないから、

あまり流通はしていないため高価買取されるそうで、

メイはお金を稼げることに一安心だ、これで宿代を払える。

そもそも普通の調合師は調合する場所や機材を確保しないと作れないし、

膨大な素材もそのまま使うのではなく煮詰めたり乾燥させたり色々手間が掛かる。

スマホひとつで調合できてしまうメイが特別なのだ。

(その内エリクサーとか作れるようになるのかな?!)

最上位のポーションを作るのが今のところメイの夢であり目標だ、

戦うことが下手でも誰かの役に立ちたいから、

自分にできることを適材適所で、パーティってそう言うもんでしょ。

ダンジョンの五階に来てバッファローはウィルに任せ、

今日は素材集めに気合を入れるメイ、ミィナも手伝ってくれるらしい、

周りに魔物が居たらミィナが排除してくれる。

クエストの薬草集めも兼ねているからミィナも乗り気だ。

ひとつ問題があるとすれば、ミィナが弾として使う魔石が減らないことだった。

撃っても撃っても、ビー玉(スライムの魔石)が減らない。

魔物を倒すと魔石が落ちるから逆にどんどん増えてしまって、

ミィナの魔法カバン(小)は魔石で埋まってしまいそうだった。

「やっぱり4桁は多かったか…」

「撃ってもなくならないから増えちゃうね」

それでもミィナは笑顔でスリングショットを撃つ。

この階層に居る魔物は色違いのスライムとゴブリン程度、

バッファローは奥に行かないと遭遇できないのだ。

ちなみにスリングショットは遠距離なので、

ノエルにも魔石や素材拾いを手伝ってもらっている。

なのでミィナとノエルは仲良しだ。

昼を挟んで素材集めと、クエストに必要な薬草を集めて三時前にはダンジョンを出る。

あんまり長く居ても飽きてしまうし、もうバッファローは大量に入手したし、

そろそろ街に戻ってクエストの報告とポーションを売り捌きたい。

夕方になりコテージに戻ってくる、御者さんはこの街で交代するみたいで、

出発する日になったら改めて御者を頼むのだそうだ。

エリンは王都まで一緒です、王都にある公爵家の別邸で仕事を続けるらしい。

一日中暇じゃないかと心配していたが、侍女として掃除をしたり、

洗濯までしてくれるので本当に助かっている。

それ以外は趣味の刺繍をしているとのことで、

心行くまで刺繍ができて幸せだと言っていた。

メイのレベルも28まで上がったから、明日からはもう一段下に潜ることになりそうだ。

新たな薬草(香草)や素材、そして肉が待ってると思うと、

ダンジョンのことが好きになってきたメイだった。

冒険って楽しい、一緒に戦う仲間が居るともっと楽しい。

 

次の日、ダンジョンの六階にやってきました。

ここは五階と同じくバッファローが居るだけでなく、

スライムが出現しない代わりにもう少し強い魔物が居るらしい。

メイのレベルが適正だから一人でバッファローと戦っても良いが、

肉は大量に確保したので別の魔物を倒したいところだ。

ウィルとミィナと三人で六階を進む、初めての階層では危険かもしれないので、

予めノエルにはカバンに入ってもらってます。

相変わらず森林エリアで視界が悪い。

「居たぞ」

ウィルの小さな声に皆が立ち止まる。

「あれってオーク?」

ミィナの声も小さい。

「オークってなに?」

「人型の豚ってところだ」

説明下手か…分かりやすいけど。

オークはゴブリンと同じく人型に近いが大きさも性格も異なり、

ゴブリンよりも好戦的であるようで、大きな斧を持ってうろうろしている。

巨体が歩くだけで地響きがこっちまで届きそうだ。

そう言えばスモールボアの説明の時に大きさを聞いたけど、

メジャーなレッドボアはスモールボアの三倍だったはず、

きっとレッドボアはオークと同じくらいの大きさなんだろうなあ。

それデカすぎない?怖いわ。

「ひぇっ あんなの倒せないよ」

「足を切り落として動きを止めるから、メイはダガーでとどめを刺せ」

「首を切り落とすの? そんな力技無理だよ!」

メイが持つ武器は短剣で、心臓を突いたとしてもきっと一突きでは倒せない。

「ダガーが無理なら魔法だな」

「魔法…」

言われてみれば魔法で戦ったことって無いかも。

アクアダガーは水属性で少し伸ばしたり程度はできるけど、

魔法一本で魔物を倒したことは一度も無い。

「無理そうか?」

「うーん…」

やったことないから分からないよ。

「頭の中でイメージを強く練って魔力を込めればいい、

 首を刎ねるなら風魔法でやれると思うぞ」

風魔法か…かまいたちみたいに風の刃を飛ばす感じ?

一応生活魔法として火水風は基本的に使えるから、

それを最大限強くして魔力を込めればいいのかな?

「やってみる」

「そうだな、じゃあオークが動かないように固定してやる」

「固定? 足を切るんじゃなかったの?」

「考えてみたら足を切っただけだと暴れそうだから」

「なるほど…?」

言われてみたらそうだけど、痛みでもんどりうつのは目に見えている。

「いくぞメイ、いいか?」

「はい!」

森の中から盗み見るオーク目掛けてウィルが片手を突き出した。

「絶対零度《Ⅲ.アイスフォール》!」

なんだって!? 何か唱えたぞ! いかにもファンタジーっぽい!

息つく暇もなくオークの足が凍り付き、その氷はみるみる大きくなって、

オークの胸元まで覆って動きを止めてしまった。

何事か驚くオークは動く首できょろきょろと辺りを見渡しながら、

仲間に警告を発しているのか大きな叫び声を上げている。

(すごい、氷魔法だ…!)

「メイ!」

「あ、はいっ」

詠唱?とか、魔法の名前とか全く分からないけど、

風を練って練って大きくして、ニョッキやラザニアを捏ねるみたいに!

「いけー!」

両手を突き出し一生懸命作り上げた風の塊をオーク目掛けて投げ付けた。

ギュゴォオッ!

凄まじい音を巻き上げながらオークに向かっていく風の塊、

かまいたちを想像していたから鎌みたいな形で飛んでいき、

オークの首を一発で跳ね飛ばし鮮血が飛んだ。

「上出来だ、良くやった」

メイの肩に手をぽんと置いたウィル、ウィルの魔法がなければ無理でしたよ、ええ。

「てか、風魔法ってすごい…」

自分で魔法を使っておきながらなんだが、風魔法が恐ろしく強いのだと実感した。

以前使った風魔法なんてせいぜいドライヤーくらいだった、

ミィナを助けたいがために自己流で温風を作った程度である。

魔法の先生が居れば魔法の使い方や威力の調整などもできるかもしれない。

それに魔法の名前も…あの…名前とかカッコイイじゃん…?

ウィルのアイスフォールもなんか格好良かったし…!

いかにも魔法って感じで厨二病を発症しそうです、4X歳なのに。

残っているのは氷漬けの首無しオーク、ちょっとグロい。

ウィルが近付いて火魔法を使って氷を溶かし、

地面にオークの巨体が転がったことで解体に入る。

人型に近いと見るのも怖いな、バッファローは平気だったけど。

今まで散々ホーンラビットやスモールボアの解体を見ていたから、

バッファローくらいは大丈夫だけど人型はなあ…。

「メイちゃん」

「ん?」

「もしかしてレベル上がったんじゃない?」

「え?」

慌ててスマホを見てみると本当にレベルが上がっていた。

オーク一体しか倒してないのに上がったの!?

よっぽど強いオークだったのかな…?

「この調子でオークを倒したら一時間で適正値を軽く越えるな」

「いやいいです!ゆっくりでいいです!」

そりゃあウィルやミィナに近付きたいけど手伝ってもらって倒すなんて、

冒険者としてどうなんだろうと思うし…。

助け合いをするのが仲間だとは言え、おんぶに抱っこは望んでない。

するとウィルが呆れた顔で溜息を吐いた。

「逆に、そのレベルの低さで上級ポーションと万能薬を作れることを心配しろ」

「ぐぬぬ…っ」

分かってます、分かってますとも!

いつもポーションを売却してるからギルドでの売却価格とか、

受け付けのお姉さんの話とか聞いてるとランクAの調合師は珍しいみたいで、

調合する際の場所とか機材をどうしてるのか結構聞かれる。

素材を何度でどれだけ煮詰めるのか、とか…。

そんな中で上級ポーションと万能薬を持っていったから、

余計に話を聞こうとする姿勢を見せられて焦ったものだ。

だってスマホで作ってるから説明なんてできないし…。

もしエリクサーなんて作れちゃったら大変なことになりそうだ。

ウィルが言うには王宮に所属している魔法研究の責任者なら作れる…らしい、

ただ、それも噂であって本物のエリクサーを見たのは128年生きてて数回程度、

滅多なことでは出回らないし、もしあったとしても国で確保に動くようだ。

まあHPMP状態異常全回復に身体強化までしちゃう代物だもんねえ…。

そんなこんなで素材を採取しつつオークを同じ方法で倒しながら、

時にはミィナもスリングショットでトドメを刺したりして、

充分な量が(素材も肉も)集まったので一旦ダンジョンを脱出することになった。

聞くところによると、ダンジョンは十階刻みで帰還石と言うものが設置してあり、

十階のエリアボスを倒すことで帰還石を使えるようになるらしい。

その石に触れるとダンジョン入り口まで戻ることができるようだ。

そんな親切設計ありがたいけど十階まで行ける気がしない…。

ちなみに余談ですが、肉のためにオークを狩っていたらレベルだけでなく、

ジョブランクまで上がってくれたのでオーク様様…ウィル様様です。

レベル 28→31

剣術 D→C

魔法 風F→E

剣術はダガーを使うことで多少慣れてきたのと、

魔法は風魔法を使いまくったせいです。

 

今夜はウィルのリクエストでオークのトンカツです。

オークだからトンかどうか分からないけど揚げ物になりました。

今回はコンビニで中濃ソースを買っておいたので完璧ですよ!

サクサクの衣にじゅわっと広がる肉のうまみ、

罪悪感マシマシの脂もパンとの相性が良い。

サラダにスープ、野菜もたっぷり食べて果物のデザートまで。

ごちそうさまでした。

ああお米食べたい。

硬いパンも悪くないけどお米食べたい。

もういっそのことコンビニで売ってるパックご飯食べようかな。

自分用ならパックご飯で充分だし、コンビニのレンジで温めれば食べれるし。

本当は土鍋で米を炊く方が美味しいんだろうけど、

お米を食べるのは一人だけなので躊躇してしまう。

大量に作っても…  あ。

「そうか!土鍋で炊いて魔法カバンに入れればいいのか!」

「えっ なに急に、どうしたのメイちゃん」

「魔法カバンに入れておけばいつでも炊き立てのお米が…っ」

「おこめ?」

「確か無洗米が売ってたはずだから、やっとお米食べられる!!」

「メイちゃん…?」

ミィナが声を掛けても独り言を続けるメイ、余程お米が食べたかったらしい。

もしお米を炊くならまず土鍋が…いや待てよ、普通の鍋でも炊けないことはないか?

「ちょっと買出し行ってくる!」

「ええ!?今から外出なんて危ないよ!」

急いでコテージのリビングから部屋に戻ろうとするメイを、

ミィナが慌てて腕を掴んで止める、もう外は暗いし一人で買出しだなんて!

「大丈夫だよ、えっと…特殊スキルでどうにかするだけだし…」

「そうなの?お外に行かない?でも買出しって…」

困惑するミィナにどう説明しようか悩む、ちらっとウィルを見遣ると小さく頷いていた。

ミィナも仲間なんだし秘密にしていたとしてもいつかはバレるんだから、

今の内に打ち明けても問題ないだろう。

「あー 私の特殊スキルって買い物ができるんだ、

 いつも食べてるお菓子もそこで買ってるんだよ」

「そうだったの!?」

散々カステラやシュークリーム、チョコにアイスにどら焼きまで食べておいて!

今まで不思議に思わなかったのだろうか。

しかしミィナはエルフの集落でしか生活基準を知らないので、

大きな街や貴族はそれらを普通に食べていると思っていたらしい。

メイが特別に買っているなんて知らなかったのだ。

特殊スキルのことは秘密だよと約束して。

まあそんな訳で、早速お買い物です!

メイは一応個室に戻ってノエルをお留守番にしてコンビニへ。

目的の無洗米だけでなく、衝動に駆られてふりかけ(のりたま)と、

インスタントの味噌汁をお買い上げして戻ってきた。

良く考えたらコンビニおにぎりみたいに手軽なお米を食べればいいのに、

恐らくメイは『食事』は皆で一緒にという考え方で、

初日に食べたツナマヨおにぎりのことはすっかり忘れていたらしい。

歳を取ると物忘れが酷くなって困る…元々メイはうっかりおっちょこちょいだし。

今日はもう夜ご飯を終えたしお腹は空いてないけど早速作ろうと思う。

フライパンにお米(三合)と水(540ml)を入れて平らにしたら火に掛ける、

煮立ってきたら蓋をして弱火にし、汁気がなくなるまで15分加熱。

火を止めてそのまま10分ほど蒸らしたらできあがり。

スマホの料理レシピ万歳、レシピ見なかったら作れなかったわ。

前世界では炊飯器のお世話になりっぱなしで土鍋で炊いたことなかったし。

「なんか不思議な匂いだね、甘いような…」

「噛めば噛むほどほんのり甘い、それがお米」

意味不明なことを言いながらフライパンで炊いたお米をヘラで解すメイ。

「この国だと主食はパンでしょ?

 私の居た国ではお米が主食だったから、

 食べたくて食べたくて仕方なかったの」

「主食が違ったのか」

驚いたウィルの声に振り返る。

「言ってなかったっけ?」

「てっきり同じくパンだと思っていた」

「パンも食べるんだけどね、お米の方が馴染み深いかな」

そうなのか…ちょっと食べてみたい。

オークトンカツでお腹一杯だけど味見くらいはしてみたい。

ウィルとミィナの目がキラッキラしててメイを見詰めてくるので、

小皿にご飯を少し盛ってふりかけをサラっと掛ける、

スプーンと一緒にテーブルへ。

「召し上がれ」

「「いただきます」」

二人は同時にスプーンでお米を掬って口へ運んだ。

「んんっ!」

「これは…」

「え?どっち?美味しい?無理そう?」

「おいしー!!」

「うまい」

二人の言葉を聞いてメイは胸を撫で下ろした。

主食として食べるにはまだ抵抗はあるだろうけど、

食べれないほど嫌悪感などはないようで安心した。

炊きたてのお米をフライパンごと魔法カバンに入れようとして気付く。

「なんか勢いで作っちゃったけど、このフライパン貰っても良かったの?」

「好きなだけ使え、足りないなら買えばいい」

ウィルは小皿のお米をあっという間に食べて完食。

「そうだよ~フライパン買うお金くらいあたしが出すよ?」

それもどうなんだよ。

ミィナにフライパン買ってもらうくらいなら自分で買い足すわ。

メイも小皿にお米を少し盛って味を確かめる、

ああ、本当に良かった、久しぶりのお米だ。

「牛丼、カツ丼、親子丼、カレーライスにオムライス!

 考えただけで堪らん…」

呪文を唱えるメイはちょっと怖いが、知らない単語の料理は興味がある、

きっとその内メイが作ってくれることを期待して、今夜はおやすみなさい。

お米は日本人にとって間違いなくランクSでした。

 

 

数日ダンジョン目的で街のコテージに滞在していた一行。

そろそろ王都に向けて出発します、流石に素材(&食材)を集めすぎて、

ミィナは魔石を捨てなきゃいけないくらいになってきた。

勿論捨てずにメイが預かることに…最初にあげた4桁が返還されました。

ギルドに行ってクエストをこなしたのでメイとミィナの冒険者ランクが上がりました。

メイはE→Dへ、ミィナはF→Eに。

最終的にメイのレベルも34まで上がり、少しずつでも成長していることにほっとする。

寄り掛かるのではなく支え合いができるように精進したい、

そして料理で皆が笑顔になってくれたらもっと嬉しい。

街を発つ前に教会に行って女神様にお祈りを捧げる。

(イナンナ様、日々成長できているみたいで嬉しいです、ありがとうございます)

『あなたの努力はいつの日か報われるでしょう、これからも楽しんでくださいね』

イナンナの優しい声が聞こえてきて、初めてこの異世界に来て良かったと思った。

前世界に居たらずっと変わらないままだったかもしれない、

大きな切欠がなければ一歩を踏み出す勇気も出ず、

夫に頼りきりになって、ダメ人間になって腐っていたような気がする。

だからと言って夫のせいと言う訳ではなく、

自分がうつ病を切欠に何も手に着かなくなって、

料理も掃除も洗濯も、お風呂に入ることすらできなくなった過去があり、

心の病は誰かの支えがないと立つ事すら難しいのだと知っていた。

そんな私を優しく支えてくれていた夫には感謝している、

感謝しているからこそ幸せになって欲しいのだ。

今まで散々迷惑を掛けてしまったから、私より素敵な人と幸せになって欲しい。

こっちはこっちで適当に適度に生きていくから心配しないで、

今の私には仲間が居るから、もう大丈夫だよ。

(今まで、本当にありがとう)

ノエルを抱き締めながら空を見上げる、繋がっていない空、

時間軸さえ同じかどうか分からない別世界。

いつかあなたに感謝が伝わってくれたらいいな。

お互いに依存から卒業できたような…そうだったらいいのだけど。

 

───

 

王都まであと少しの所までやってきました。

数日もすれば王都に着くと聞いたので、最寄のダンジョンでのレベル上げです。

ついでにギルドでクエストを受注して向かいます。

素材もある程度持ってるし必要な物は特に無いけど、

このダンジョンは初心者向けではなく普通のダンジョンとのこと。

適正は階層×7だそうで、レベル34のメイは五階くらいが適正です。

一度でいいから最下層まで行ってみたいな…いつの日か。

しかし王都から近いせいもあって魔物の数は少ないらしい、

ダンジョンは素材だけでなく魔物も一週間経たないと復活しないから、

通う冒険者が多いと魔物が粗方倒されてしまって、

メイが行く予定の五階は魔物がほぼ居なくて復活するまで待たないといけない。

「なんて理不尽…!」

「魔物を倒さなくてもいいんだから楽だろ」

「そうだけど…」

「じゃあ一気に十階まで行こうよ!」

ウィルとミィナの言葉にメイは青ざめる。

「だってここの十階って言ったら適性レベル70でしょ!?

 私死んじゃうよ!?」

「俺が足止めするからメイがトドメを刺せばいい」

前回のオークを思い出してぶるぶると震えるメイ。

そんな簡単に朝飯前みたいに言わないでもらいたい、

ウィルがレベルいくつなのか知らないけど、

適正以上の階層に行くのはめちゃくちゃ怖いじゃないか。

レベル差が倍以上もあると攻撃が当たらない気がするのですがそれは…。

「人が多く訪れるなら十階のエリアボスも倒されてるのかな?」

「それは行ってみないと分からないな」

「とりあえず行ってみようよ!

 ボスが居ないならもっと潜ってもいいんだし」

「ヒェ…」

恐ろしいこと言わないでミィナちゃん。

そんなこんなで街から出てダンジョンに向かう、

エリンには宿(またコテージタイプだった)で待機してもらって、

目指すはダンジョン十階…らしいです。

メイは恐々とウィルの背後に隠れながらゆっくりと進む、

ウィルもメイが怖がっているのを分かっているので歩調は緩やかだ。

ミィナは緊張していないようで辺りをぐるぐるしながら嬉しそう。

「ここの十階に居るエリアボスはレアドロップが優秀で、

 できればレアアイテムを入手したいところだが…」

「え?じゃあとっくに倒されてるでしょ」

「そうでもない、物理攻撃も魔法攻撃も効き難いから、

 冒険者の中では避けて通るのが有名なんだ」

物理も魔法も効き難いって…どうやって倒すのよ?

疑問に思いながら進んでいくと大きな音が聞こえてきた、

どうやら十階に到着したようです、ここまで来るのに魔物と遭遇しなかったのは、

冒険者達が魔物をほとんど倒したって本当のことだったみたい。

「先客が居るな」

ウィルが立ち止まったのでメイもミィナも立ち止まり、

十階に居るエリアボスをこっそりと盗み見た。

大きな音は誰かが戦ってる音だったみたい。

一足遅かったようだ。

遠くからじっくり眺めて観察しよう、今後いつか来た時に倒せるように。

しかし戦っているのはどうやって見ても一人だった、

たった一人で立ち向かうとか相当レベルが高いのかもしれない。

「なかなかやり手だな、物理も魔法も効き難いから毒を使っている」

「なるほど、毒なら少しずつHPを減らせるってことね」

一人で立ち回っているがボスに毒を入れて、

ある程度HPが減るのを逃げたり防御しながら待っている作戦のようだ。

ちなみにエリアボスはでっかい蜘蛛みたいな魔物で、

できれば近付きたくない嫌悪感でいっぱい。

ボスが倒されるのを見学して今日は帰れそうだ、

メイは心の片隅でホッと胸を撫で下ろしたのだった。

 

 

 

 

 

続く

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