極寒の空を、いくつものヘリがゆっくりと飛んでいた。
降下していく先は、世界の果て――南極に最も近い孤島、“アイグランド”。
「……全ガーデンとの通信断絶。反応は確認されず。ヒュージの反応も消失済み……」
部隊員の一人が、レーダーを見つめて呟いた。
「そんな……。ここは、確かに――」
降下した彼女たちが見たのは、凍てつく白の地獄。
かつて“アイグランド学園”と呼ばれたガーデンは、すでに姿を失っていた。
建造物は崩れ、CHARMも、盾も、血と共に凍りついている。
だが。
その中心に、
ただ一人、少女がいた。
傷だらけの制服。白銀の髪は雪に溶け込み、ほとんど見えない。
それでも、彼女は倒れてはいなかった。
凍てつく風が吹く中――彼女は、立ったまま、動かない。
「……リリィです。生きてます! 一人……だけ、生存を確認!」
支援部隊のリリィが駆け寄る。少女の手には、氷に包まれたままのCHARM。
まるで、この場所を……最後まで守ろうとしたかのように。
「まさか…信じられない……。この数のヒュージを、一人で……」
足元には、無数の白い花が咲いていた。
氷の中で静かに、けれど確かに揺れている――
それは、哀悼の証。
誰かのために咲いた、命の記憶。
やがて、少女の体が力を失い、雪の上へ崩れ落ちる。
支援部隊の誰かが、震える声で問いかけた。
「……この子は、いったい――」
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「……ずっと、続くと思っていた。
変わらない日々が、いつまでも続くと、そう思っていた――」
冷たく透き通る空気。
遠く白い海を臨む、銀の大地。
アイグランドは、確かに厳しい場所だった。
けれどその厳しさは、同時に静けさであり、優しさでもあった。
私はこの島が、世界でいちばん好きだった。
だから守りたかった。
それが、私のやりたいことだと思っていた。
――だが、守れなかった。
炎に包まれる校舎。
砕け散る塔。
凍てついた地に、次々と倒れていく仲間たち。
叫ぶ声も、助けを求める手も、私には届かなかった。
必死守ろうとした。
必死に負けないようにしていた。
でも、無理だった。
私を心配してくれる人もいた。
一生戦ってくれた子もいた。
こっちは任せろ!と託した仲間もいた。
その声も、もう覚えていない。
気づけば私は、倒れていた。
赤く染まった雪の上に、誰かの手を握ったまま。
そのとき、確かに思った。
ああ、終わったんだと。
けれど、目覚めたとき。
そこには、誰もいなかった。
ただ静寂と、白銀の風景だけがあった。
あの時と同じような冷たい空気。
でも、何かが違う。
全てが違ってしまっていた。
変わらないのはヒュージに襲われ絶望的な状況に陥った故郷という事実だけ。
立ち尽くす私の周囲にヒュージが集まってくる。
まるで獲物を見つけたかのように。
手にはCHARMが握られていて、不思議と力は湧いてくる。
なら、やることはひとつだった。
そこからはただ必死にヒュージを倒し続けたことしか覚えていない。
意識があったのかも分からない。
でも、斬り続けた感触だけは残っている。
気持ち悪いと思いながら、私の意識は明確にブラックアウトしていくのだった。