ルディ子SS集   作:まりん!!! in ICE

1 / 2
ルディ子、初めての“おねだり”練習

迷宮の呪いによって突如“女性の身体”となったルーデウスは、母ゼニスを探すため、時折兄貴分のゾルダートに助けられながらも冒険者としての日々をこなしていた。

 

そんな折、エリナリーゼという父パウロの旧パーティメンバーが母ゼニスに関する情報を伝えに合流。

状況は差し迫っているが、雪に閉じ込められた北方大地から思うように動くこともできず、旅支度の合間にギルドでのんびりする時間もあった。

 

そして今日も、ギルドの片隅で繰り広げられるのは、ルーデウス(ルディ子)と愉快な仲間たちによる、ささやかなひと幕である。

 

・・・

 

迷宮都市へ向かう準備が進む中、ルーデウスはギルドの片隅で朝食を摂っていた。

スープに口をつけようとすると、長い髪が邪魔をする。

 

「ったく……面倒な身体になったもんだ」

 

ぼやきつつ髪を後ろに払っていると、軽快な声が耳に飛び込んでくる。

 

「ふふ、おはようございますわ、ルーデウス」

 

振り返れば、そこにはエリナリーゼ。相変わらずの貴婦人然とした佇まいで、こちらを微笑ましげに見つめていた。

 

「あなた、女の身でありながら、その立ち居振る舞いは如何なものかしら?

せっかくの麗しい姿、もう少し自覚なさってもよろしいのではなくて?」

 

「俺はこんな見た目ですけど、あくまで男です。振る舞いまで変えるつもりはありませんよ」

 

そう言ったところで、エリナリーゼが引き下がるわけもなく。

 

「時には愛嬌も必要ですのよ、ルーデウス。例えばお買い物ひとつ取りましても、女らしさを武器にすれば不思議と物事がうまく言ったりするもの。交渉ごとは、武器や魔術だけではありませんわ。

お願い上手は世渡り上手。さあ、練習いたしますわよ」

 

「急に何なんですか!」

 

全力で否定するも、エリナリーゼの勢いは止まらない。

気付けば両手を胸の前で組まされ、強制的に“おねだりポーズ”を取らされていた。

 

「ほら、もっと可愛らしく、上目遣いで!」

 

「いや、意味が分からないんですが……」

 

「つべこべ言わない!」

 

「……お、お願いしますっ!」(半ギレ)

 

そこへ、低い声が割り込む。

 

「朝からなにやってんだ、泥沼」

 

ゾルダート。

ギルドのいつもの面々に混ざり、呆れたような、それでいてどこか楽しげな表情を浮かべていた。

 

「ふふ、見ていてくださいまし。今、ルーデウスは『おねだり練習中』ですのよ」

 

「あんたがそそのかしてんだろ。泥沼がそんなことするキャラかよ」

 

「俺だって、やるときはやる。必要ならな」

 

ルーデウスはむっとして強がってはみたものの、顔の朱は誤魔化せない。

そんなルーデウスに、ゾルダートはニヤリと笑いかけた。

 

「“必要なら”って言いながら顔真っ赤じゃねぇか。無理すんなよ。どうせごますりの方が得意だろ?」

 

「言っとくけど、俺だって昔からある程度は愛嬌で生きてきたんだ。

……ただ、女の姿で“おねだり”は……慣れてないだけだ」

 

「そりゃそうだ。似合わねぇもんな。

……でも、まぁ。世の中、案外そういう“ギャップ”が効くんだよ」

 

意外な一言に、ルディ子はきょとんとする。

そんな彼女にゾルダートが指をさした。

 

「試しにやってみろよ。俺相手に」

 

「それ、いい考えですわね。ゾルダート、よろしくて?」

 

「はあ!? 勝手に話進めないで下さいよ!」

 

慌ててルーデウスが抗議するが、二人は期待のまなざしでこちらを見ている。

観念したルーデウスは、深くため息をつく。

そして、顔を伏せがちにしながら、ゆっくりと口を開いた。

 

「……ゾルダート。お願いがあるんだけど」

 

「おう?」

 

「今度の依頼、ちょっと無茶な値引き交渉が必要でさ。

……俺じゃ、うまくやれる気がしない。だから、その、コツを教えて欲しい」

 

ゾルダートは少し黙り、腕を組んでルディ子を見据えた。

 

「……いや、普通に頼めばいいじゃねぇか。

お前がそうやって素直に頼めば、大抵のヤツは動くぞ」

 

「……え?」

 

「愛嬌とか小細工とか、お前がやっても気色悪い。だが、“真っ直ぐ頼む”のはお前の得意分野だろ。

それが一番効くんだよ、バカ」

 

「…………なんか、いいこと言ってるっぽいですわ」

 

「……なるほど。わかった。じゃあ俺は、俺のやり方で行くよ。ゾルダート、ありがとな」

 

「別に? 見てらんなかっただけだ」

 

そっけない態度で手を振り、ギルドの面々の元へ戻っていくゾルダート。

その背中を見送りながら、ルーデウスはふっと笑った。

 

「……ほんと、素直じゃねぇ」

 

「お二人とも、似た者同士ですわね」

 

そんな他愛ないやり取りが、迷宮都市へ向かう前の、束の間のひとときだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。