いのり、とは。
誰かに、何かに、「こうあってほしい」と願うこと。
のろい、とは。
誰かに、何かに、「こうあってほしい」と願うこと。
それは時に善い形で、時に悪い形で、世界に蔓延っている。
「ねえ、歌のランサーさん。」
「何かしら?」
話しかけておきながら躊躇している様子の春のランサーを、歌のランサーはただ黙って待っていた。
「どうして、ここへ来たの?」
「あら、本質的な問いね。」
若草の髪がふわりと風に揺れた。
穏やかな音色は、まるでここにあることを祝福するかのような優しさ。
黄昏の下に響くヴェーナの音色は、実に優美であった。
「私はなんでもいいのよ。呼ばれたから来たの。聖杯にかける願いというのはそこまで強くないわ。」
「……そっか。」
「貴女は?」
「私は…。春が続けばいいと、そう思うの。」
とある、人のために。
春のランサーは、歌のランサーを見た。
腕が二対ある彼女は、それらを器用に動かして、一対でお茶を飲み、一対で弦を奏でる。
一見異形にも思えるけれど、彼女自身の穏やかな柔らかさと同化して、この世では作り得ない美しさを醸し出していた。
春のランサーの視線に応じるように、歌のランサーもまた、彼女を見た。
「なら、貴女の願いが私の願いだわ。」
「え?」
「聖杯にかける願いが強いサーヴァントばかりじゃない。…私たちは、特にその部類みたい。」
祖国を救いたい、愛する人を助けたい。
そんな大層な願いじゃなくてもいい。
「貴女、戦うのは苦手な性質なんでしょう。私もそうよ。」
「う、バレちゃった?」
「ええ。似た者同士ね、私たち。」
戦えなくても…戦わなくても、いい。
願うだけでもいい。
求めるだけでもいい。
その願いが、私たちをここに呼んだ。
「他の人たちに怒られちゃうかもしれないわね。」
「うん…。でも、仕方ないよ。」
だって、私たちは戦いに向いてない。
争いに向いてない。
春を歌おう。
それが、私たちの役目だから。
「せめて、皆の願いが叶いますように。」
Episode ”pleasure”
――――fin.
春のランサー
145cm
淡い桃色の髪に青い瞳。低い位置で緩く二つに結んでいる。
春の訪れを感じる風のような爽やかな少女。
少女のしなやかな肢体を持ち、ふんわりとした古代ギリシア風のドレスを纏う。
歌のランサー
164cm
若緑色の髪に青い瞳。長い髪を揺らしている。
腕が二対ある。まるで彫刻のように美しく、体には何かの紋様が描かれている。
女性らしいふっくらとした体形をしており、インド風の白い衣をまとう。