「ねえ、皆のこと春ちゃん、歌ちゃんってよんでいーい?」
恋のバーサーカーは歌のランサーの隣に寄り添うように座りながら、甘えるように問う。
「あら、もちろん構いませんよ。」
「私も平気だよ!」
「ふふ…じゃーねぇ。あたしのことは、カルメンって呼んで。」
恋のバーサーカー…否、カルメンと名乗った女はにっこりと微笑んだ。
「おやおや…。」
こんなところで名を明かしてしまうとは。
今頃、ステラを通してこれを見ているキャスターも頭を抱えているだろうね。
「なっ、ば、バーサーカー!?」
「んー、何驚いてるのぉ?」
「あーぁ、言っちゃった。恋ちゃん、なんかね、真名言っちゃダメらしいよ。」
「あらぁ、そうだったかしら。まあいいわ。あたし、名前で呼ばれるの好きなのよね。」
だから、皆もカルメンって呼んでちょうだい。
カルメンはなんてことのないように続けた。
それが何を意味するのか、理解しているのかしていないのか。
バーサーカーの狂気によるものなのか、はたまた彼女自身の性質なのか。
それは誰にもわからなかった。
しかし、少なくとも。
名を呼ばれるのが好きという根拠だけは嘘ではなさそうだ。
まったく、予想通り、シナリオ通りとはいかないものだね。
思わず笑みがこぼれる。
恋のバーサーカーは驚愕する周囲を気にすることなく、うんと伸びをしながら続ける。
「まあ、いいじゃなぁい?どうせ、いつかは知ることになるんだし。」
「そーだけどぉ。もー。恋ちゃんってば自由すぎ。」
「あはぁ、月ちゃんがそれ言う?」
微笑ましくも、どこか危なげなやり取り。
バーサーカー陣営はすでに気を許し合っているらしい。
ふと、顔を上げる。
ステラは赤くきらめいた。
ああ、時間だ。
「さて、君たち。…そろそろ鐘が鳴る。」
僕が告げると、カルメンはひょいと立ち上がった。
「そお?じゃ、またねー、春ちゃん、歌ちゃん。」
「ちょぉ、待ってよ恋ちゃん!」
蜘蛛の子を散らしたようにバーサーカーたちが散っていく。
その様子を見て、春のランサーと歌のランサーは寂しそうに微笑んだ。
「私たちも…行きましょうか。」
「そ、そうだね。じゃあ、片づけを…。」
「ああ、気にしなくて構わない。後で僕が片付けておくからね。
もしよければ、またの機会にゆっくりお茶を飲んでくれ。」
「そ、そっか。ありがとう。ヴィンツェンツィオ。」
戦場へと歩み出す二人の背中を見送りつつ、僕もその場を後にした。
真名開示
恋のバーサーカー
真名 カルメン
ビゼー作曲のオペラ『カルメン』の主人公。情熱的な愛を歌い、破滅的な結末を迎えるファム・ファタールとして描かれる。
恋に生き、恋に死ぬ女。
次回以降、しばらく更新が金曜日のみとなります。
ご了承ください。