Fate/Last waltz   作:高堂でにむ

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「こんにちは、歌のランサー。気持ちのいい時間ですね。」

「……あら、こんにちは、暁のアーチャー。」

 

 

ヴィーナの音は、穏やかに響く。

 

それは心地よい、川の流れのようであった。

黄昏の下で歌とともに聞こえる音楽は、昔話の天女のそれである。

 

 

「こんなところで何をなさってるんです?」

「ふふ。それはこちらの台詞だわ、アーチャー。どうしてここに?」

 

 

彼女がいるのは、庭園の外れ。

空中庭園都市(スティア)の端に最も近い場所であった。

 

わざわざ来ようと思わなければ来れない場所であるし、わざわざ来ようとも思わない場所だ。

 

 

「いやなに、あまりに美しい音色が聞こえたもので、つい。惹かれてしまいました。」

「あら、嬉しい。よく、聞き取ってくださったのね。」

「狩人は耳が良いものです。鼻も、目もね。」

 

 

暁のアーチャーは静かに目を閉じる。

それはあまりに優しい音色だった。

 

まるで、この戦いを憂うかのような。

 

 

「…戦いはお嫌いですか?」

「ええ、そうね。私自身がすることも…。誰かが争うことも、好ましくないわ。」

「では貴女、どうしてここに。」

「頼まれたら断れないの、私。」

「はははっ、貴女もですか。」

 

 

彼は機嫌よく笑う。

 

ふと、遠くから轟音が響いた。

すでに戦いは始まっているのだ。

 

 

「僕はあなたを殺しません。理由がありませんから。」

「あら、そう。」

「ですが、貴女を守る理由もない。……戦いたくないのなら、お気をつけて。」

「…ええ、ご忠告感謝するわ。」

 

 

暁のアーチャーは背を向け、瞬きの間に消えた。

 

優しい男だ。

その優しさが、凶と出るか吉と出るか。

はたまた…。

 

 

「…悲しいわね、戦いは。」

 

 

ヴェーナは止まない。

 

 

6

剣戟は響く。

時折、銃声。

 

俺、もとい船のライダーは、相棒である海のライダーからもらった支援を得て善戦…。

できるわけもなく。

 

 

「っ…!」

「君たち、両方とも支援系だろ。そろそろ諦めてもいいんじゃない?」

 

 

いやこれ無理だが!?!?!??

遊ばれてるもん俺!!

完全に!

 

陽のセイバーと対峙しつつ、心の中は嵐だ。

だって目の前にいるのは、完全に「人間を超越した者」の威圧。

 

戦ってるっていうか、日照りに一人で立ち向かっているような心地だ。

 

 

『サーヴァントの接近を感知』

 

「は!?!?」

 

 

この状況でもう一騎…!?

いやいやいや、俺死んじゃうって!

 

が、しかし。

矢を弾いたのは陽のセイバーの方だった。

 

俺の背後から、俺ではなく彼のほうを的確に攻撃する。

 

…もしかして、助けられてる?

 

 

「助太刀しましょうか、船のライダー。」

「お願いします!!!!」

 

 

誰だっていい。

俺を助けてくれるなら、マジで誰だっていい。

 

声の主は、あの時暁のアーチャーと呼ばれていた男だった。

 

細身だが芯のある体格。

成程、アーチャーとは納得だ。

 

 

「……成程ね。面白くなってきた。」

 

 

ぶっちゃけ三対一でも勝てる気はしないけど。

だって一人はミニミニマスコットだから。

 

とはいえ、助太刀してくれるならありがたい話だ。

そもそも俺、支援のほうが得意だし。

 

暁のアーチャーは一歩前へと進み出る。

互いに、静かににらみ合っている。

 

しかしそこには静けさなどない。

 

耳が痛くなるほどの、獲物と狩人の無言の戦いがあった。

 

 

「分かるか?セイバー、僕が何者か。」

「分かるさアーチャー。お前は私を殺す資格がある。私を殺すとしたら、それはお前の矢だろう。」

 

 

……なんでこんなバチバチなのこの人たちは!?!?

 

 

「おお、新入りか!すけだち助太刀!」

 

 

そう言いつつ、俺の相棒はさらなる支援を始めた。

 

…つっても、俺の肩で歌ってるだけなんだけど……。

踊ってるし…。

 

しかし、コミカルな見た目とは裏腹に、体にはさらなる力が宿る。

 

 

「おお、これはありがたい。礼を言います、海のライダー。」

「うむ!構わん!」

「狙われてるのお前なの分かってる!?」

 

 

ったくこのマスコットくんはほんとにもう…。

 

片手に剣、片手に銃。

しっかりと握り直し、俺は再度、陽のセイバーと対峙した。

 

背丈ほどある大剣を軽々と持ち上げ、陽のセイバーは穏やかに笑う。

 

 

「では、はじめようか?」

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