Fate/Last waltz   作:高堂でにむ

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「言い出したのは私だからね。進行役は私が引き受けよう。」

 

 

陽のセイバーは鷹揚な仕草で続ける。

どうやら、この場は彼が仕切ってくれるらしい。

 

まだ誰も名を明かしてはいないというのに、私の胸は緊張で張り裂けてしまいそうだった。

 

私の真名(正体)

 

それを明かすということは、私にとっては…。

罪の告白と同義だったから。

 

 

「さて、最初に名を明かすのは誰かな?」

「あたし、もう言ってるのよねぇ。真名。」

「う、ウチも……。」

 

 

バーサーカー陣営の二人の告白。

驚嘆に目を丸める雷のセイバーとは対照的に、陽のセイバーは笑い出した。

 

 

「はっはっは!そうだったか。なら、君たちからどうぞ。」

「あたし、カルメン。」

「ウチ、かぐや姫!」

 

 

…どちらも、物語上の人物だった。

 

二人は何の未練も緊張も、不安もなく真名を明かす。

その自由な姿は小鳥のように美しかった。

 

カルメン様は言っていた。

 

「気の向くままに、赴くままに。心に従い生きていく。」と。

戦場にあってなおその姿勢を崩さない彼女。

狂気を感じるほどの自由が、彼女をバーサーカーたらしめているのだろう。

 

 

「二人ともありがとう。さて、次は誰かな。」

「あ、じゃあ私!」

 

 

手を挙げたのは私の隣…、春のランサーだった。

 

 

「私はペルセフォネだよ。コレーって呼ばれてた時もあるけど。」

「あら、じゃあ私も。サラスヴァティよ。」

 

 

ランサーの二騎はどちらも女神様らしい。

とはいえ、戦場で戦っていた逸話は聞いたことがないけれど。

どうしてランサーなのだろう?

 

特に、ペルセフォネ様は武器の逸話も聞いたことがないし……。

戦いが苦手と言っていたのは、本当のことみたい。

 

 

「なるほど、女神様だったか。どおりで別嬪さんたちだったわけだ。」

「随分な誉め言葉ね、船のライダー?」

「あはぁ、あたしたちには言ってくれないわけ?

妬いちゃうわぁ。」

「おいおい、揚げ足取りは止めてくれよカルメン。

もちろんここにいるのは全員素敵な女性たち(レディ)だよ。」

 

 

余裕を感じる仕草で、軽くウインクを飛ばす。

 

船のライダーは、意外にも落ち着いているみたい。

一回目の戦闘前は、ずっとため息をついていたのに。

 

いや、おそらくはこちらが彼の本性なのだろう。

 

ただ、先ほどは…。

多分、海のライダーに関してのことで混乱していたのかな。

相棒が小さいとなれば、びっくりするものだ。

 

 

「んじゃ、折角だし俺も言おうかな。俺は、」

「おっ、名乗るのか?ジェームズ!」

 

 

机の上にちょこんと座り、バナナを食べていた海のライダーがにっこりと笑った。

 

 

「あっちょ、俺言おうとしてたのに先に言わないでくれる!?」

「む!?す、すまん…。」

「ったく、かっこつかねぇなあもう。

……このちっちゃいのが言った通り。俺はジェームズ・クック。まあ…船乗りだよ。」

 

 

彼は単に「船乗り」と言ったけれど…。

 

その実情は違う。

 

キャプテン・クックは幾度の航海を乗り越えた正真正銘の冒険家だ。

彼の仕草や声色の節々に滲む色気や自信は、そこから来ていたのだろう。

 

 

「船乗りとは謙遜だな。」

「あんたらに比べたら大したことはないさ。俺は運がよかっただけだよ。」

 

 

雷のセイバーの言葉に、クック様は笑って返す。

 

…きっと、それも本心なのだろう。

 

けれど、彼の話しぶりに自虐はない。

自嘲もない。

ただ、自分は海で生き抜いてきたという自負がある。

それこそが、彼の錆びついた魅力につながっているのだろう。

 

 

 

真名開示

春のランサー

真名 ペルセフォネ

ギリシャ神話における冥界の王妃。デメテルの娘であり、元はコレーと名乗っていた。

ハデスにより誘拐され、冥府の王妃となる。

 

 

歌のランサー

真名 サラスヴァティ

インド神話における芸術と学問、知恵の女神。

歌を愛する彼女は、二対の腕でヴィーナを奏でる。

 

 

船のライダー

真名 ジェームズ・クック

史上初めて壊血病による死者を出さずに航海を成し遂げた人物。

卓越した航海術と統率力、勇気を合わせ持つ海の男。

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