「話は終わったみたいだね。」
しんと静まりかえる部屋に声が響く。
ヴィンツェンツィオだった。
相変わらず、その感情を読み取ることはできない。
「真名を開示したサーヴァントに関しては、次の戦闘開始時に魔力を配布する。
これ以降の真名開示は魔力贈与の対象外だ。」
彼の言葉とともにステラは白銀に輝いた。
――――
薄暗い天文台の中は、静かだ。
かすかに聞こえるのは衣擦れの音と、スティアの稼働音だけ。
そこに、僕の靴音が響く。
カツン、カツン。
この音は好きだった。
静かに歩いた方が行儀はいいのかもしれないけれど。
彼はいつもの猫背のままにじっとステラの本体を眺めている。
解散し、それぞれの部屋に戻っていくサーヴァント達の様子。
その魔力状況。
真名、宝具、霊基状態。
それらすべてが、彼のステラの上に表示されている。
相変わらず、君は研究熱心だね。
「父上。」
声をかけるが、彼はしばらく答えなかった。
まるで、声が届くのが遅れているようだ。
「……ん、ああ、ヴィンスか。状況は。」
「サーヴァント達の真名開示は滞りなく進んでいます。船のライダーとアサシン陣営は開示を拒否しました。」
「ああ。予想の範疇だ。」
キャスターはこちらに視線を寄越すことなく、半分夢心地で応えた。
うっとりとステラを見つめる様子は、まるで少年のようだ。
「スティアの状況はいかがですか?」
「恙ない。彼らの霊基状況も安定している。このままいけば、儀式は素晴らしい出来になるだろう。」
「それは喜ばしい。」
天文台の上部からは、薄暗い光が零れている。
星さえ霞む、光と影の境界。
その光。
それはまるで祝福のように、あるいは呪詛のようにこのスティアという舞台を満たしている。
「ヴィンス。」
「はい。」
彼はようやくこちらに目を向ける。
悍ましいほど深い闇の瞳。
「次の戦闘時間ではさらなる波乱を期待している。」
「勿論です。」
「分かっていると思うが、まだ殺すなよ。黄昏が満ちるにはまだ早い。」
「承知いたしました。」
僕の答えを聞いて、彼はまたステラに目を戻した。
それが、僕が去る合図だった。
天文台を後にする。
黄昏の空は、相変わらず茜色に染まっている。
寸分も変わることなく。
絵画のような自然さと、夢のような不気味さで。
君は何を見ているのかな、キャスター。
名もなき、宙に憧れた君よ。
空に輝く星は見えない。
「しかしね、君。」
問いかける。
「見えなくても、そこに星はある。」
僕はそれを知っている。
「真理の光を求める者がいる限り、夢は消えない。」
感じる。
この黄昏を越えた先にある光を。
「君の夢がどれほど強くても、僕はそれを否定しなくては。」
それが、人間ってものだろう?
キャスター。