バーカウンターでぐーすか眠りこける相棒マスコットを眺めながら、思う。
俺ってやっぱり場違いなんじゃないかって。
最強の堕天使、神代の英雄、双子の祟り神、物語から生まれたヒロインたち、神、神、神、神…。
この戦場にはとんでもない奴ばっかりだ。
どうせ、真名を明かさなかったアサシンどもも人間じゃないに決まってる。
人間だったとして、そもそもアサシンになるような人間は普通じゃないに決まってる。
「……はあ。」
カラン、と氷の音。
ヴィンツェンツィオが用意した酒は悪くない。こんな世界でも、酒はうまい。それが逆に虚しかった。
「おや、暗い顔ですね。」
「ん……ああ、暁の…。后羿、だったか。」
「ええ。ご一緒しても?ジェームズ。」
「おうよ。」
グラスに酒を注いでやると、后羿は景気よく飲み干した。意外とやるな、コイツ。面白くなって、さらに酒を注ぐ。
バーカウンターに二人。
神代の英雄と飲めるとは、人生何が起きるか分からねえな。
いやまあ、もう死んでるんだけど…。
「さっきはありがとな、助けてくれて。」
「いえ。僕はターゲットを狙ったに過ぎませんから。」
なんてことのないように言う。
先ほどの問答でなんとなく、こいつのターゲットがシャマシュだということは察していた。ただ、そうあっけらかんと告げられるとビビる。
何、神代の英雄って皆こうなの?
「……お前も大変だな。」
「おや。貴方もでしょう。この場所では戦いにくいはずだ。」
俺のグラスに酒を足して、后羿は少し笑った。
「この感覚は久しいですね。貴方のような芯のある人間と酒を飲み交わす機会は少ない。」
「そう褒めるなよ。俺はただの船乗りだって。」
「ただの船乗りは彼に立ち向かうことすらできませんよ。あの状況で生き残っていたというだけで、僕は貴方を認めている。」
そこにおべっかや気遣いはない。容姿に見合わぬ、無骨な信用。
「そんなことないよ」とか「元気だしなって」みたいなうわべだけの慰めじゃない、飾りっ気のない無色の受容。
「…お前って、意外と不器用?」
「はは。見破られましたか。貴方に比べるとずっと不器用ですよ。僕は英雄なんかじゃない。」
后羿はグラスを傾け、くすりと笑った。
「ただの、狩人ですよ。」
「っふ、ははは!こえーなあ。」
だめだ。俺、こいつのこと好きだわ。
隕石みたいな攻撃をしてくるかと思ったら、ただの狩人、だって。
それが謙遜ではなく矜持であることくらい、俺にもわかる。
俺だって、英霊じゃなくて「船乗り」だからな。
「まあ、精々頑張ろうや。」
「ええ。」
掲げたグラスが、かちゃんと音を立てた。