Fate/Last waltz   作:高堂でにむ

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鐘が鳴る。それが、始まりの合図。

 

始まりは常に終わりを内包する。

半日経ったというのに、自分自身の決意は鈍るばかりだ。

自分の願いのために、ペルセフォネ様を殺す。その覚悟が私には無い。

 

丘の上に立ちながら、微かに息を吐く。あのお茶会を終えてからというもの、どうにも胸が重く苦しい。

 

触れれば触れる程、彼女の心は温かい。まるで陽だまりのよう。

ペルセフォネ様だけじゃない。サラスヴァティ様、かぐや様、カルメン様、花君様…。

皆、それぞれの矜持を持って生きてきた人。私とは違って、自分であるということに誇りを持っている人たちばかりで。

 

彼女たちに触れるたび、私は心が砕けそうになる。

ギネヴィアという人間を、その愚かさを呪いたくなる。

 

 

「なら、死んでしまえばいい。」

 

 

そうかもしれない。

私は、元より力を持つ者ではないのだから。戦場に立つのが間違いなのかもしれない。

 

 

「きみはね、ここにいるべきじゃないんだ。」

 

 

一度生まれてしまった思考は、まるで毒のように脳を冒していく。

 

ルシファーは言っていた。

本気であの人の死を悔い、今までの出来事を償いたいのなら、願いなんて持つべきではなかったと。

 

 

「私は、」

 

 

ここに立つ資格なんて、最初からなかった、?

 

 

「そう。だからきみは、いつだって何も守れない。」

 

 

頭が痛い。

何も、分からない。

いたくて、苦しくて、むねが、ぎゅうとして、

 

めのまえになにか、しろい、ひかりが、

 

 

「――《白く、粉雪のような甘美(カンタレラ)》」

「あ、」

 

 

ないふが、あって、?

 

 

「まてまてまてぇい!!」

 

 

ぽふ。

 

柔らかい感触が背中に触れる。その拍子に、体が前方へ倒れる。

頭上を間一髪で何かがよぎっていった。キィン、と甲高い金属音が鳴り響く。

 

何かが、弾かれたような。

 

 

「おい!平気か姫さま!」

「…うみの、らいだー、さま?」

「おっ、覚えててくれたのか!うむ!」

 

 

揺らぐ視界の中、肩からひょっこり顔を出したのは海のライダー。

 

なにが、おきたの?

 

 

「…ふふふふふ!!」

 

 

状況を理解するより先に楽しげな声が聞こえた。

顔を上げると、クック様の剣をナイフで受け止める影のアサシンの姿があった。

 

 

「きみ、本当に守られてばかりなんだ!お姫様だからねえ、仕方ないね、!」

 

 

心底楽しんでいる、と言った風に、影のアサシンは笑った。

 

 

「ったく、お前ほんと容赦ないな!?ターゲットだからってそんな襲いにいけるもん!?」

「きみたちが甘すぎるんだ、ジェームズ。」

「それは否定しないけど、よっ!」

 

 

キィン、と高い音。剣とナイフとでは、明らかにクック様に分がある。

 

 

「っはははは!!!楽しいねえ、ギネヴィア!きみを殺すのは苦労しそうだ…!」

 

 

まだはっきりしない脳が、恐怖だけを感じ始める。身体が震えを抑えきれず、がたがたと肩が揺れる。

 

影のアサシンは状況を理解したのか、薄暮の中に姿を消した。

 

 

「ったく、姫さんも大変だな。あんなのに狙われて…。」

「……その、クック様、海のライダー様。助けてくださりありがとうございます。」

「いいってことよ!びっくりするぐらいたまたまだしな。」

「た、たまたま…?」

「うむ!姫さまたち、ジョシカイ?ってやつしてただろ?

その時にうまいモン貰ったみたいだから、どこにあるか教えてもらおうと!」

「戦いが終わってからにしろよって言ったんだけど、マスコットくんが聞かねえからさ…。

ま、今回はラッキーだったけどよ。」

 

 

……つくづく、運のいい女だな、私は。

 

 

 

【宝具開示】

影のアサシン

宝具 《白く、粉雪のような甘美(カンタレラ)

毒…ではなく、「毒に侵された相手に対する特効攻撃」。毒としてのカンタレラは武器の一つにすぎず、彼の本領は自分が狙った相手を没落させることにある。

サーヴァントに対し毒はさしたる脅威ではないが、彼のカンタレラは精神に作用することもできる。

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