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「なあ、姫さん。どっか変なとことかねえ?」
「私、ですか?少し意識が混濁しているようですが、特には……。」
「うーん、気のせいか?」
クック様は私をじっと見つめると、ううむと唸った。何か変なところでもあるのだろうか。
「まあいいや。念のため、な。」
彼は柔らかく微笑むと、海のライダー様を持ち上げて自らの肩に乗せた。
私の前に跪いたまま、胸ポケットからコンパスを取り出す。
「針路問題なし、風は穏やか。波はなく、敵影もなし。」
ふいに、潮の匂いがした。穏やかな風は私たちの周囲を取り巻いていく。魔力の渦が集まるのを感じる。
それは明確な意思を持っている。
間違いない。宝具詠唱だった
「まだ知らぬ夢を踏破し、新たな希望を抱く。雲間に活路を見出せば、旗は白く輝く。」
「クック、さま?」
「《
パキィン、と何かが砕け散るような音がした。
瞬間、思考を覆っていた靄が晴れていく。自分の胸に巣食っていた濁った不安も、歪んだ恐怖も、夢だったみたいに消えていく。
「お、効いたみたいだな。顔色が戻ってきた。」
「っあの、これは…。」
「俺の宝具。つっても大したことないけどさ。派手な攻撃はできねえけど、毒とか病気とか呪いとか、そういうのに結構効く。
姫さん、アイツに何か盛られてたっぽかったから。」
「うむ。見るに、毒の類だったようだな。」
影のアサシンが、何かをしたのだろう。
おそらくは、お茶会をした時。様子がおかしかったのはあの後からだ。
「助けてくださりありがとうございます。」
「いいよ。俺たちは特に争う理由もないんだし、こういうのって助け合いだろ?」
「お礼、と言うわけではありませんが……。影のアサシンの宝具について、共有させてください。」
「おお!あのネズミ小僧の!して、なんだった?」
「彼の宝具は《
私の言葉を聞いたクック様は、大きく息を吸い、そして吐いた。
「……アイツって、チェーザレ・ボルジア?」
「宝具から察するに、おそらくは。」
「成程ね、納得。俺も詳しく知ってるわけじゃねえけど…。まあ、姫さんのこと付け狙うのも分かるわ。姫とか王とか好きそうだもん、アイツ。」
「とはいえ、奴が姫さまに執着してるのはそれだけじゃないと思うぞ。」
「なんで。」
「勘だ!」
その言葉の、直後。
『敵性存在を感知しました。』
強い衝撃と爆風、轟音とともに訪れた強い光。
「やあ、海のライダー。探したよ。」
「うげぇっ…!」
あからさまに嫌な顔をする海のライダーを見つめ、シャマシュ様はにこりと微笑んだ。
【真名開示】
影のアサシン チェーザレ・ボルジア
異例の若さで枢機卿へ上り詰めた人物。
ボルジア家に伝わる秘伝の毒「カンタレラ」を使っていたとされる。
陰謀論者、大犯罪者、裏切りと肉欲と途方もない残忍さを持った人物と評価される。
一方で支配者としては有能であったとも言われている。
【宝具開示】
船のライダー ジェームズ・クック
《
目の前にさし迫る恐怖や脅威を「乗り越えるべき障害」とみなすことでそれらを踏破しようとする宝具である。味方を災いから守り、生き残るための支援。
病、呪い、毒などの状態異常や精神異常に対し強い浄化作用を持つ。