「ここは空中庭園都市、スティア。永遠の黄昏。常に朝でも夜でもない時間が続く。」
そう言うと、キャスターはカーテンを開く。
目を見張るような黄昏の、紫とも金とも赤ともつかない美しい空が目に飛び込んできた。
それはまるで、おとぎ話のようだった。
キャスターは続ける。
「そしてこの場所は、どこにも属さない。ゆえに…君たちには知名度補正がない。良くも悪くもね。」
「どこにも属さない?とはいえ、地球上のどこかにはあるだろう。」
「それは秘密だよ。」
キャスターはウインクを一つ。
茶目っ気のあるものではなく、その空虚な愛嬌がむしろ空恐ろしかった。
「そして、今回の聖杯戦争ではマスターがいない代わりに、サーヴァントが各クラス二騎ずつ召喚されている。君たちは同じクラスの相棒とタッグを組み、この聖杯戦争に勝利しなければならない。」
…ということは、先ほど上を見上げていた右の男性、もしくは派手な登場をした左の少年(?)が私の相棒になる、ということかしら。
できることなら、右の方がいいな、なんて考える。
金髪の青年が手を挙げ、聞いた。
「勝利条件は?」
「簡単さ。生き残ればいい。ただし条件がある。」
一つ、それぞれ指定された
一つ、相棒となるサーヴァントを殺された場合は、必ず復讐すること。
一つ、生き残ること。
「まあ、そう難しいことじゃないだろう?」
確かに、彼の言うとおりだった。
他のサーヴァントを排除して聖杯を勝ち取るという仕組みは、通常の聖杯戦争と変わらない。
ターゲット云々の話は、おそらく彼の研究に関することだろう。
「さて、それぞれのクラスが二つずつあるわけだから、呼びにくいだろう。そこで、便宜上の名前を勝手につけさせてもらった。」
そう言うと、彼は一人ずつ指さしながら仮の名を与えていった。
陽のセイバー、雷のセイバー。
春のランサー、歌のランサー。
暁のアーチャー、花のアーチャー。
罪のキャスター、罰のキャスター。
海のライダー、船のライダー。
悪のアサシン、影のアサシン。
月のバーサーカー、恋のバーサーカー。
……私は、罪のキャスターだった。
そして、私の相棒となる罰のキャスターは、左の…。
遅れてやってきた彼だった。
「えっ、ちょっと待って。」
さっき船のライダーと呼ばれていた――私の右隣に座っている男性が声を上げる。
灰色の髪をした、錆びついた色気。
彼は困惑したように問う。
「俺の相方、もしかしてコレ?」
船のライダーが指さした先にいたのは、おおよそ十五センチほどだろうか、手乗りサイズの男だった。
小さなウミガメに乗っている。
彼は先ほど海のライダーと呼ばれていたはず。
小さな体躯でがはは、と笑いにっこりと親指を立てる。
「よろしくなぁ。」
「嘘だろ!?」
悲鳴のような声とともに、彼はキャスターを見る。
キャスターは笑うだけだった。
絶句する船のライダーをしり目に、海のライダーは船のライダーの肩によじ登り、居心地よさそうに座っている。
…ちょっと、ちょっとだけ可愛いと思った。
「ああ、そういえば。もう一つ。通常の聖杯戦争と違う分、いくつか守ってもらうルールがある。
別に守らなくても勝利に影響はないが…。守らなかった場合はこちらでペナルティを課す…かもしれないから、そのつもりで。」
キャスターが手を鳴らすと、一人の少年が現れる。目元を黒い布で覆っている。
「彼はヴィンツェンツィオ。私のオートマタだ。
此度の聖杯戦争の監査役でもある。何かあれば、彼に言うといい。詳しいルール説明も彼に任せてあるからね。」
オートマタはお辞儀をし、ひっそりとその場に立っていた。
「私はここで見ているから、君たちは好きにするといいさ。」
いい結果を期待している。
キャスターはそう言って背を向けた。