6
それが、ことの顛末。菅原道真という英霊が「文化人」と「怨霊」に分かたれた理由。
浄玻璃鏡に映し出されたものを見つめていると、くすくすと笑う声がした。
「おまえ、ほんとうにつまらないね。」
「……遅かったな。ギネヴィアは?」
「ああ、しくじった。ジェームズと海のライダーに防がれて。
……ふふ、かっこよかったよ。おまえにも見せてやりたかった。」
何が楽しいというのか、この男は。宝具まで使って仕損じるとは。
「っは、ぁ……。」
膝をつき、苦しげに肩で息をする雷君。茫洋とした眼差しでこちらを見つめ、歯を食いしばって立ち上がろうとする。
「生前の罪を、そのまま精神汚染として転用する宝具。その汚染は悪人ならより重く、善人ならより軽くなる。」
「きみは自ら、毒の杯を飲んだんだね、雷君。」
ナイフが引かれるその瞬間だった。
甲高い音とともにチェーザレのナイフが弾かれる。咄嗟に戦闘態勢を取るが、それと同時に足元に矢が刺さる。
それは柔らかな突風を巻き起こし、軽やかな花の香りとともに視界を乱した。
攪乱の術式。后羿ではない。
「花君か……!」
花に紛れた彼女は微かに微笑むと、雷君を背負ってそのまま消えた。
7
あたし、わかんないのよね。歌ちゃんがどうしてここに来たのか。
春ちゃんも月ちゃんも花君も、ギネヴィアですら願いを持っている。だというのに、歌ちゃんはヴィーナをつま弾くばかりで戦いになんて全然見向きもしない。
「だから、遊びに来ちゃったわぁ。」
「……貴女からダンスの誘いを頂けるとは思わなかったわ。カルメン。」
掌の上で、くるくるとダガーを弄ぶ。少し重みのあるこれは、別にあたしが好きで持っている刃じゃない。サーヴァントとしてこの戦場で生き抜くために、最低限の武装をしているだけ。
「歌ちゃん、ほんとは強いでしょぉ?多分、あたしと月ちゃんを一緒に相手取っても勝てちゃうくらい。」
「さあ、どうかしら。……戦いは嫌いなの。」
それは多分、ほんと。ここに来てから、歌ちゃんは全然楽しくなさそう。
あ、嘘。さっきの女子会は楽しそうだったけど。でも、戦うってことを嫌がってる。って言うか多分、ノリ気じゃない。
まーぁ、ノリ気じゃないってだけで戦わないでいるんだったら、それもそれでおもしろいけど。
「私は祈られる神なの。」
歌ちゃんはかなしげ。あーぁ、かわいいんだから。
「祈られて、それに応えるのが私だわ。」
「まあ、春ちゃんがギネヴィアとか雷君だったら、歌ちゃんは頑張ってたかもねぇ。」
反響ってヤツ。
歌ちゃんっていうのは、他人の願いの強さに比例して強くなるタイプなのよね。
春ちゃんはどっちかって言うと保守派だから、「来るなら来い、来ないなら来るな」っていうカンジ。そんな二人がペアになっても、なかなかやる気は出ないってコト。
「じゃぁさ、踊ろっか。ね?」
弄んでいたダガーをぽーい、と投げる。今は戦いとか、いらない。代わりに歌ちゃんの手を取って、くるりとターン。
「もうちょっとだけ、恋しようよ。」
今は、歌ちゃんのこと好きでいたい。歌ちゃんに、あたしのこと好きにさせたい。
世界の何に怒られたって、恋したいから恋するの。